吸収剤でオーバースプレーを静電分離するための方法及び装置
被覆システム、特に塗装システムの、オーバースプレーを多く含むブース排気からオーバースプレーを分離する方法において、オーバースプレーは空気流によって取り込まれて静電作業式分離装置(42;1042;2042)に搬送される。ここで、固形物の少なくとも大部分は、少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)上でオーバースプレーから分離される。導電性材料又は材料混合物は分離剤として使用され、分離剤は分離装置(42;1042;2042)の少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に付与され且つ分離装置(42;1042;2042)の作業温度でワックス様の稠度を有する。本発明はさらに、このようなワックス様材料を有する分離装置(42;1042;2042)と、物品を被覆するためのシステムとに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆システム、特に塗装システムの、オーバースプレーを多く含むブース排気からオーバースプレーを分離する方法であって、オーバースプレーが空気流によって取り込まれて静電作業式分離装置に搬送され、ここで、固形物の少なくとも大部分が少なくとも1つの分離面上でオーバースプレーから分離される、方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、塗装システムの、オーバースプレーを多く含むブース排気からオーバースプレーを分離するための分離装置であって、
a) 少なくとも1つの分離面であって、少なくとも1つの分離面に沿ってブース排気が搬送されることができ且つ高電圧源の一方の端子に接続される少なくとも1つの分離面と;
b) 電極装置であって、空気流中に配置され、分離面と関連付けられ、且つ高電圧源の他方の端子に接続される電極装置と
を有する分離装置に関する。
【0003】
本発明はさらに、物体、特に車体を被覆、特に塗装するためのシステムであって、
a) 被覆ブースであって、被覆ブース内では物体が被覆材料によって作用されることができ、空気流が、被覆ブースを通って導かれることができ、結果として生じる被覆材料のオーバースプレー粒子を取り込み且つ除去する、被覆ブースと;
b) 静電作業式分離装置と
を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
物体に手動又は自動で塗料を付与するときには、一般に固形物及び/又は結合剤、並びに溶剤の両方を含有する塗料部分流は、その物体には付与されない。この部分流は当業者の間では「オーバースプレー」として知られている。オーバースプレーは、塗装ブース内で空気流によって取り込まれ、且つ、必要ならば、空気が好適なコンディショニング後に被覆ブースに戻されるように分離のために供給されることができる。
【0005】
具体的には、塗料消費量が比較的高いシステム、例えば車体塗装システムにおいて、例えば湿式分離システムを使用するのが好ましい。商業的に周知の湿式分離器では、上方から到来するブース排気と一緒に水が、空気流を加速させるノズルへ流れる。このようなノズル内では、通流するブース排気が水と一緒に渦流形成される。このような動作中、オーバースプレー粒子は大部分が水中に移るので、湿式分離器を出た空気は実質的に清浄化されており、そして、塗料オーバースプレー粒子は分離されて水中に残る。次いでこれらの粒子を水から回収するか又は廃棄することができる。
【0006】
周知の湿式分離器では、極めて大量の所要の水を循環させるために比較的多量のエネルギーが必要である。洗浄水の処理は、塗料結合化学物質及び脱粘着化学物質を多量に使用すること、及び塗料スラッジを廃棄することに起因して高いコストがかかる。さらに洗浄水と強力に接触する結果、空気は大量の湿分を吸収する。この湿分は再循環空気モードでは、空気の処理のためのエネルギー消費量を高くする。
【0007】
対照的に、冒頭で述べたタイプの商業的に周知の装置において、乾式分離プロセスが用いられ、この乾式分離プロセスは、流過するブース排気によって同伴される塗料オーバースプレー粒子が電極装置によってイオン化され、そして分離面と電極装置との間に確立された電界に起因して分離面に移動し、この分離面上でこれらの塗料オーバースプレー粒子が分離されることによって行われる。その後、分離面に付着した塗料オーバースプレー粒子を、分離面から機械的に剥離し、例えば搬出することができる。
【0008】
このような分離装置の清浄化効果は極めて良好である。しかしながら、連続的な作業のためには、分離面と電極装置との間に十分に強い電界が形成され得るのを常に保証することが必要であり、このことは、分離面上の塗料オーバースプレーのある程度の層厚までしか可能ではない。なぜならば、このような層は絶縁効果を有するからである。とはいえ、塗料オーバースプレーを分離面から連続的に除去することは、複雑な構造手段を伴い、故障を招きやすくなる。さらに、オーバースプレーは、分離面上で反応し、硬化し、又は乾燥して、分離面から剥離されることによってはもはや単純に除去されなくなるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、これらの問題点に対処する、冒頭で述べたタイプの方法、分離装置、及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、冒頭で述べたタイプの方法において、導電性材料又は材料混合物が分離剤として使用され、分離剤が分離装置の少なくとも1つの分離面に付与され且つ分離装置の作業温度でワックス様の稠度を有することにより達成される。
【0011】
従って本発明によれば、分離面とオーバースプレーとの間の分離層としてワックス様材料が使用されるので、オーバースプレーは分離面と接触することができない。分離剤の規定された性質は、分離面から分離剤を容易に剥離し又は削り取ることができることを意味する。この場合、分離剤に付着したオーバースプレーは、分離面から除去され、且つ、廃棄のため、又は必要な場合には処理のために供給されることができる。
【0012】
分離剤の稠度は、分離剤が所望の使用期間にわたって分離面に付着するが粘着はしないように選択される。ここで、作業温度における材料の粘度が約2000mPa・sよりも大きい場合、その材料はワックス様であると考えられる。分離剤の粘度は、好ましくは2500mPa・sよりも大きく、より好ましくは3000mPa・sよりも大きく、特に好ましくは4000mPa・sよりも大きい。
【0013】
分離剤の稠度は好ましくは作業温度で固形パラフィンの稠度に匹敵する。例えばチョコレートの塊も同様の稠度を有している。このことは、分離剤が作業温度で実質的に固形であり且つ分離剤を削ってフレーク状にすることが可能なことを意味する。
【0014】
分離剤は或いは、作業温度でプラスチック稠度を有している。例えば、好適な稠度は、グリース、パラフィン(例えばワセリン)、石けん、ワックス、又はゲルの稠度に匹敵する。このようなタイプの分離剤は作業温度で混練可能又は展延可能である。
【0015】
作業温度は通常は約28℃未満である。
【0016】
分離剤の粘度が作業温度よりも高い温度で減少するならば、このことは、より高温の状態においてより液状の形態で分離剤を分離面に付与するために利用することができる。この場合、分離剤は、作業温度で粘度が高くなり、そして実質的に寸法安定であり続ける。分離剤がより高温の状態で展延可能であるならば、分離剤は噴霧によって相応に付与されることができる。
【0017】
分離剤が、分離された固形物に対して実質的に不活性であることが好ましい。このことは、分離剤とオーバースプレーとの間の望ましくない反応を最初から防止する。
【0018】
分離剤が、グリース、パラフィン、石けん、ワックス、又はゲルを含むならば好都合であることが判っている。
【0019】
オーバースプレーの連続的な剥離を回避することを目的にするのであれば、ワックス様材料を分離剤として使用すると、少なくとも1つの分離面上に存在する、分離された固形物を有する分離剤が作業時間後に除去され、空荷の分離剤(unladen separating agent)が少なくとも1つの分離面に付与されることが可能である。従って、分離面は所定の時間間隔で清浄化されることができる。
【0020】
分離された固形物を有する分離剤が剥離エレメントによって除去され、このために、少なくとも1つの分離面と、剥離エレメントとが互いに対して移動せしめられることが有利である。この場合、分離面は、静止した剥離エレメントに対して移動せしめられることが好ましい。しかし、相対的な移動は逆に行われてもよい。
【0021】
少なくとも1つの剥離エレメントが少なくとも1つの出口、特に出口スロットを含み、出口から、流体、特に圧縮空気が出ることができるならば、剥離エレメントと分離面との直接の接触を回避することが可能である。このことは、時間とともに増大する剥離エレメントの汚染を少なくとも遅らせる。
【0022】
空荷の分離剤は、少なくとも1つの分離面を、分離剤で充填された浸漬浴内に移動させ、再び浸漬浴から外に移動させることにより、特に有利に付与される。この場合、分離剤は、その粘度が作業温度における粘度よりも低くなるような温度であることが好ましい。
【0023】
或いは、分離剤は少なくとも1つの分離面上に噴霧又は噴射されることもできる。
【0024】
作業時間は約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、又は約12時間であることが可能である。分離剤がオーバースプレーをさほど含んでいない場合、数日間までのより長い作業時間も、オーバースプレーの絶縁効果が力線の形成に影響を及ぼして分離装置の適正な作業がもはやできなくなることがない限り可能である。コロナ電流はここでは、分離面に対するオーバースプレーの負荷の指標である。分離剤に付着するオーバースプレーの絶縁効果は、オーバースプレー層の厚さが増大するにつれて、コロナ電流を減少させる。コロナ電流の限界値は、一般に実験的に定められ、通常、高電圧電極当たり数ミリアンペアである。
【0025】
冒頭で述べたタイプの装置において、上述の目的は、
c) 導電性材料又は材料混合物が分離剤として少なくとも1つの分離面に付与され且つ分離装置の作業温度でワックス様の稠度を有する
ことにより達成される。
【0026】
上記方法に関して述べたことが分離剤に当てはまる。
【0027】
装置は有利には、分離装置が分離剤再生装置を含み、分離剤再生装置によって、少なくとも1つの分離面上に存在する、分離された固形物を有する分離剤が除去されることができ、且つ/又は、空荷の分離剤が少なくとも1つの分離面に付与されることができる。
【0028】
ここで、分離剤再生装置が少なくとも1つの剥離エレメントを含み、剥離エレメントは少なくとも1つの分離面に対して移動せしめられることができることが好ましい。これは、剥離エレメントを静止した分離面に対して移動させることができること、又は分離面を静止した剥離エレメントに対して移動させることができることを意味する。
【0029】
ここで、少なくとも1つの剥離エレメントが線状鎖駆動装置に結合されていることは有利である。
【0030】
保持手段が設けられており、保持手段によって、少なくとも1つの剥離エレメントが少なくとも1つの分離面と少なくとも一時的に接触した状態で保持されることができると、剥離効果は有利に増大する。
【0031】
保持手段が、磁石、特に電磁石を含むことがここでは好ましいことが判っている。
【0032】
分離剤再生装置が、分離剤で充填された浸漬浴と、運搬装置とを含み、運搬装置によって、少なくとも1つの分離面が浸漬浴内に移動せしめられ且つ再び浸漬浴の外に移動せしめられることができることは特に有利である。
【0033】
或いは、分離剤再生装置はノズル装置を含み、ノズル装置によって、分離剤は少なくとも1つの分離面上に噴霧又は噴射されることもできる。
【0034】
少なくとも1つの分離面が板状の分離エレメントの外面であることが好ましい。このタイプの分離エレメントは取り扱いが簡単であり且つその体積に対して大きい分離面を提供する。
【0035】
電極装置がコロナ部分と電界部分とを有しており、コロナ部分が、オーバースプレーを多く含むブース空気の流れ方向において電界部分の上流側に配置されていると、効果的な分離が達成されることができる。
【0036】
冒頭で述べたシステムにおいて、上記目的は、
c) 静電作業式分離装置が、請求項15から32までのいずれか1項に記載のように構成されている
ことによって達成される。
【0037】
従って、本発明によるシステムは、装置に関して述べた特徴のうちの1つ以上を有する分離装置を含む。これにより達成することができる利点は、方法及び装置に関して上述した利点に相当する。
【0038】
図面を参照しながら、本発明の模範実施態様をより詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、オーバースプレー分離装置の第1模範実施態様を有する表面処理システムの塗装ブースを示す正面図である。
【図2】図2は、図1の分離装置の4つの分離ユニット及び4つの電極装置を示す斜視図である。
【図3】図3A〜3Dは、分離剤再生装置を種々異なる作業段階で、図1の断面線III−IIIに沿って示す断面図である。
【図4】図4は、変更されたオーバースプレー分離装置を有する塗装ブースを第2模範実施態様として示す、図1に対応する図である。
【図5】図5は、再び変更されたオーバースプレー分離装置を有する塗装ブースを第3模範実施態様として示す、図1及び4に対応する図である。
【図6】図6A〜6Dは、変更された分離剤再生装置を種々異なる作業段階で示す、図3A〜3Dに対応する断面図である。
【図7】図7A〜7Cは、変更された分離剤再生装置を種々異なる作業段階で示す、図3A〜3Dに対応する断面図である。
【図8】図8は、剥離装置の剥離エレメントの区分を拡大して示す斜視図であり、前記剥離エレメントは圧縮空気ノズルとして形成されている。
【図9】図9は、図10の断面線IX−IXに沿って示す剥離装置を示す断面図である。
【図10】図10は、図9の剥離装置を示す側面図である。
【図11】図11は、図9及び10の剥離装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
最初に図1〜3を参照する。これらの図面では、符号2は表面処理システムの塗装ブースを全体的に示している。この塗装ブース内では車体4が、これらが例えば、塗装ブース2内の上流側に配置された前処理ステーション(具体的には示さない)内で清浄化されて脱脂された後で、塗装される。塗装ブース2は、それ自体は周知の鋼構造6に設けられている。
【0041】
塗装ブース2は塗装トンネル8を含んでいる。塗装トンネル8は頂部に配置されており、鉛直方向の側壁10と、水平方向のブース天井12とによって仕切られているが、しかし端面で底部に向かって開いているので。オーバースプレーを多く含むブース排気は下方に向かって流れることができる。ブース天井12は、フィルタ・カバーを有する空気供給チャンバ(図示せず)の下側の仕切りとして、従来の態様において構成されている。
【0042】
側壁10の下縁部を側方に有する、塗装トンネル8の下側開口14の高さには、鋼構造16が配置されている。鋼構造16はコンベア・システム18を支持しており、コンベア・システムはそれ自体周知であり、ここでさらに詳しく説明することはしない。コンベア・システムを使用して、塗装されるべき車体4を塗装トンネル8の入口側から出口側へ搬送することができる。それ自体周知の形式で塗料によって車体4に作用することができる付与装置(具体的には図示しない)が、塗装トンネル8内部に位置している。塗装トンネル8の下側開口14は、アクセス可能な格子(具体的には図示しない)によって覆われている。
【0043】
ブース空気によって同伴されたオーバースプレー粒子がブース空気から分離されるシステム領域20が、塗装ブース2の下方に位置している。システム領域20はハウジングによって仕切られている。ハウジングは具体的な符号が付けられておらず、図1において破線として示されているにすぎない。
【0044】
システム領域20は流動領域22を含んでいる。流動領域22は、頂部で塗装ブース2に向かって開いており、2つの空気偏向板24及び26によって形成されている。図1の左側の空気偏向板は、外方から内方へ向かって見て、先ず下方に向かって軽く傾斜した区分24aを有している。この区分24aは、下方に向いた急勾配を有する部分24bに移行する。図1の右側の空気偏向板26はこれに対応して、比較的僅かな下方勾配を有する部分26aと、急勾配の部分26bとを有している。
【0045】
空気偏向板24及び26は下方に向かって偏向領域28内に延びている。偏向領域28内では、下側偏向板30と、空気偏向板26から続く湾曲部分32とが、頂部から底部に向かって流れるブース空気が底部から図1の右側に配置された分離チャンバ34を通って頂部に向かって流れることを保証する。
【0046】
分離流体は、空気偏向板24及び26に側方に隣接して設けられた分配通路36a,36bから、空気偏向板24及び26上に流れ、そして下方に向かって、塗装ブース2に向いた外面に沿って、実質的に凝集した層を成して流れる。分離流体は、ブース空気によって同伴されたオーバースプレーのいくらかを取り込み、一方、ブース空気は塗装ブース2から偏向領域28へ下方に向かって流れる。
【0047】
オーバースプレーを多く含む分離流体は、下側偏向板30を介して捕集タンク38内に流入する。捕集タンク38は、空気偏向板24の、分離チャンバ34から遠い側に配置されている。そこから分離流体を清浄化・処理プロセスに供給することができる。この清浄化・処理プロセスにおいて、それ自体周知の形式で、分離流体から塗料オーバースプレーが取り除かれる。その後、分離流体を循環して分配通路36に戻すことができる。
【0048】
静電作業式分離装置42の分離ユニット40は分離チャンバ34内に配置されている。ブース空気は分離ユニット40を通流した後、分離ユニット40の上方から空気コンディショニング装置(図示せず)に搬送される。空気コンディショニング装置によって、清浄化済空気は正確な温度及び湿度に戻されるので、清浄化済空気を塗装ブース2の上方の空気供給チャンバに再び導くことができ、ここで清浄化済空気は必要な場合には未使用の新鮮な空気と混合される。捕集タンク38から遠い側では、第3の分配通路36cが下側偏向板30に設けられており、この第3の分配通路36cから、分離流体が、分離ユニット40の下方に延びる下側偏向板30の部分の上を流れる。
【0049】
分離ユニット40は、分離チャンバ34の長手方向に連続して配置された複数の方形の分離板44(これらのうち4つが図2に示されている)を含む。分離板44のそれぞれの対向する外面は分離面46及び48を形成する。最も左側に示された分離板44の分離面だけに、図2において符号が付けられている。
【0050】
分離板44の上縁部は各側に複数のローラ50を支持している。これらのローラのうち1つを両側に図2においてのみ見ることができ、またこの場合も図面の最も左側に示された分離板44のローラだけが符号を有している。それぞれの分離板44に対して、分離ユニット40は、C字形断面を有する輪郭として形成されたそれぞれのガイドレール52を含んでいる。ガイドレール52は水平方向に、そして「C」の先端の開口が下方に向くように配置されている。分離板44は、これらのローラ50と一緒にそれぞれのガイドレール52内を走行し、図1の右側に向かって分離チャンバ34から分離剤再生領域54内に移動せしめられることができる(図1参照)。分離板44は作業位置では、関連するガイドレール52内で分離チャンバ34内に配置され、この分離チャンバ内でロックされる。
【0051】
分離ユニット40内で、ガイドレール52は互いに平行に相並んで配置されて、2つの隣接する分離板44がこれらの間にそれぞれの電極装置56を受容するのを可能にするのに十分なそれぞれの間隔が、2つの隣接する分離板44の間に残されるようになっている。これらの電極装置のうち、図2の最も右側に示された電極装置だけに符号が付けられている。
【0052】
各電極装置56は、これと関連する高電圧源58の一方の端子に接続されている。これらの高電圧源58のうち1つだけが図1に概略的に示されている。分離板44は高電圧源58の他方の端子を介して接地電位にある。
【0053】
変更形において、全ての電極装置56は、ただ1つの共通の高電圧源によって給電されることもできる。
【0054】
各電極装置56は、線状に互いに平行に延びる2つの電極ストリップ60a,60bを有している。これらの電極ストリップは、電極装置56の電界部分62内にグリッド電極64を保持する。グリッド電極の、電極ストリップ60a,60b間に延びる縁部は電極ストリップ60a,60bに対して垂直である。電極装置56のコロナ部分66内で、電極ストリップ60a,60bは、放電電極として作用する複数のコロナ・ワイヤ68を保持している。コロナ・ワイヤ68は、電極ストリップ60a,60bによって規定された平面内に電極ストリップ60a,60bに対して垂直に延びており、互いに同一の間隔を置いて配置されている。
【0055】
電極装置56のコロナ・ワイヤ68の数及び相互の間隔は、オーバースプレー粒子の分離挙動に応じて変化することができる。この模範実施態様では、1つの電極装置56当たり、4つのコロナ・ワイヤ68が設けられている。
【0056】
図1及び2に示されているように、電極装置56は全体として、分離ユニット40の分離板44の延在長さにほぼ相当する延在長さを有している。
【0057】
各分離板の両分離面46及び48には、導電性ワックス様材料又は材料混合物から成るそれぞれの層70が設けられている。導電性ワックス様材料又は材料混合物は、分離剤として作用し、分離されたオーバースプレーが分離板44の分離面46,48上に堆積するのを防止する。層70はそれぞれ0.2mm〜2mm厚である。実際には1mm厚の層70が好都合であることが判っている。
【0058】
ワックス様材料という用語はここでは、分離装置38の作業温度でプラスチック稠度(plastic consistency)を有する材料を表すために使用される。分離剤は好ましくは作業温度で混練可能又は展延可能である。ワックス様材料は従って、分離装置38の作業温度で比較的柔軟ではあるものの、実質的に寸法安定であることが望ましく、また、流動挙動を、これが存在するとしても、極めて制限された状態でのみ呈することが望ましい。分離装置38の作業温度は、一般に28℃未満であるが、用途に応じてこれよりも高くてもよい。
【0059】
ここで、粘度が作業温度を上回る温度でさらに減少し且つ作業温度のときよりも作業温度を上回る温度において低い材料が選択される。
【0060】
実際には、例えばグリース、特にパラフィン、石けん、ワックス、及びゲルが、分離剤として有用であることが判っている。パラフィンとしては、ワセリンを用いて良好な結果を達成することが可能である。ワックスは、天然源からも合成的にも製造されることができ、いくつかの機械物理特性に従って定義されることができる。ワックスという用語は具体的にはここでは、分離装置40の作業温度で混練可能であり、より高い温度で分解することなしに溶融し、溶融点を僅かに上回ると粘度が低くなり、すなわち僅かに液状になる材料を表すために使用される。
【0061】
分離剤の導電率は、本質的に電荷が流れることができるようになっており、好ましくは50〜5000μS/cm、特に1000〜3000μS/cmである。必要な場合には、分離剤の導電率は、添加される物質、例えば塩で調節されることができる。
【0062】
分離ユニット40に加えて、分離装置42は分離剤再生装置72を有している。分離剤再生装置72は分離剤再生領域54内に配置されている(図1参照)。
【0063】
分離剤再生装置72はキャリッジ74を含んでいる。キャリッジ74はレール対76上を動くことができる。レール対76は塗装ブース2の長手方向に延びているので、キャリッジ74は分離ユニット40全体に沿って移動することができる。キャリッジ74はモータ/制御ユニット78によって駆動される。モータ/制御ユニット78は同時に、伸縮装置80を操作するのにも役立ち、伸縮装置80はキャリッジ74によって一緒に運ばれる。伸縮装置80によって、水平方向に延びるレールプロファイル(rail profile)82を鉛直方向に昇降させることができる。このことは、対応する複矢印によって図1に示されている。レールプロファイル82は断面が分離ユニット40のガイドレール52に対応する。伸縮装置80は、キャリッジ74の、分離ユニット40から遠い側に配置されている。
【0064】
図1の複矢印によって示されているように、レールプロファイル82内で締め付けシュー84が移動可能に案内されている。締め付けシュー84もモータ/制御ユニット78によって制御される。キャリッジ74はさらに浸漬浴88を支持する。浸漬浴88は、加熱装置86によって加熱されることができ、分離剤90で充填されている。浸漬浴88内の分離剤90は、分離板44が分離剤90中に浸漬されることによって被覆されるのを可能にする粘度を有するときの温度まで加熱される。キャリッジ74の運動方向に対して水平方向及び垂直方向に延びる、浸漬浴88の縁部は、剥離装置94の剥離エレメント92を支持している(図3に断面が示されている)。これらの剥離エレメント92は縁部に対して長手方向に延びている。剥離エレメント92は浸漬浴88のそれぞれの縁部に旋回可能に設けられており、剥離エレメントの上側剥離縁部96は互いに向かう方向及び互いに離れる方向に剥離位置と解放位置との間で移動することができる。剥離位置では、剥離縁部96間に、分離板44の厚さに相当する間隔が維持される。
【0065】
レール対76の下方には、循環式連続コンベア・ベルト98が設けられる。この循環式連続コンベア・ベルト98も、塗装ブース2の長手方向に延びており、そして捕集領域(詳細には図示されていない)に至っている。
【0066】
上記塗装ブース2は以下のように機能する:
塗装トンネル8内で車体4を塗装すると、そこに位置するブース空気には、塗料オーバースプレー粒子が多く含まれる。これらの粒子はまだ液状且つ/又は粘着性であり、又は、これらは多かれ少なかれ固形であることもある。塗料オーバースプレーを多く含むブース排気は、塗装トンネル8の下側開口14を通って、下側システム領域20の第1の流動領域22内に流入する。この空気は、空気偏向板24,26によって偏向領域28に導かれる。オーバースプレーのいくらかは、空気偏向板24,26上に流れ落ちた分離流体によって既に取り込まれている。ブース空気は、偏向領域28を通って分離装置の分離ユニット40の方向に偏向される。分離ユニット40において、ブース空気は、隣接する分離板44間を通流する。
【0067】
電極装置56のコロナ・ワイヤ68で、それ自体周知の形式でコロナ放電が行われる。その結果、流過するブース排気中のオーバースプレー粒子が効果的にイオン化される。
【0068】
イオン化されたオーバースプレー粒子は、接地電位にある分離板44と、電極装置56の電界区分62内の、分離板44間に延びるグリッド電極64とを通過する。グリッド電極64と分離板44との間に電界が形成される結果として、イオン化されたオーバースプレー粒子は、分離板44上の分離剤層70上に分離し、そして大部分が分離剤層70に付着したままとなる。
【0069】
分離板44から下方に向かって滴下しうるオーバースプレーは、下側偏向板30上を流れる分離流体によって取り込まれ、そして捕集タンク38に導かれる。
【0070】
イオン化されたオーバースプレー粒子のほとんどは、電極装置56のコロナ部分66内で、分離板44上に既に分離されている。しかしながら、コロナ・ワイヤ68と、分離ユニット40のそれぞれの分離板44との間に存在する電界は、グリッド電極64の領域内の電界よりも不均質である。それゆえ、イオン化されたオーバースプレー粒子の指向性のより高い分離が、対応する分離板44で行われる。結果として、コロナ部分66を通過したオーバースプレー粒子は電界部分62内で効果的に分離される。
【0071】
上述のように、分離ユニット40を通流するにつれて清浄化される空気は、所定のコンディショニング後、塗料トンネル8に戻される。
【0072】
分離ユニット40の正確な作業のために、分離板44と電極装置56との間に十分に強力な電界を形成し得ることを保証することが必要である。このことは、分離面上の分離済み塗料オーバースプレーのある程度の層厚までしか可能ではない。なぜならば、このような層は絶縁効果を有するからである。蓄積されたオーバースプレー層の絶縁効果の強さは、対応するコロナ電流を発生させる分離ユニット40の所要電流によって定められることができる。コロナ電流は時間とともに減少する。
【0073】
さらに、分離されたオーバースプレーに由来する固形粒子及び結合剤成分が、分離剤層70の表面から分離剤中に移動する。所定の作業時間後、固形粒子が分離面46,48まで移動してそこに堆積するおそれがある。このことは、分離ユニット40の機能能力に実質的な悪影響を及ぼし、高いコストのかかる清浄化及びメンテナンスを必要とすることになる。
【0074】
従って、分離されたオーバースプレーの絶縁効果があまりにも大きく、且つ/又は、分離ユニットの完全な作業を保証することがもはやできない場合、目下オーバースプレーが付着している分離剤層70が分離板44から除去され、そして分離板44の分離面46,48には、新しい未使用の分離剤が施される。
【0075】
これを目的として、分離剤再生装置72の伸縮装置80に設けられたレールプロファイル82が、清浄化されるべき分離板44のガイドレール52と整合させられる位置にもたらされる。この目的のために、一方ではキャリッジ74がレール対76上の対応する位置に動かされ、他方では伸縮装置80が相応に伸長させられる。
【0076】
締め付けシュー84が、レールプロファイル82内で、前方に向かって分離板44の方向に動かされ、その場所で分離板と係合する。ガイドレール52内の分離板44の上述のロック状態は解放される。締め付けシューは今や再び伸縮装置80の方向に戻され、分離板44を引っ張って進む。レールプロファイル82と対応するガイドレール52との間の間隔は、分離板44がそのローラ50上で、容易にガイドレール52から進出してレールプロファイル82内に進入すべく十分に小さい。
【0077】
分離板44は、レールプロファイル82内で、剥離装置94を有する浸漬浴88の上方にある位置に動かされる。分離板44のこのような位置は図1において破線によって示されている。
【0078】
剥離装置94の剥離エレメント92は剥離位置にもたらされ、分離板44は伸縮装置80によって、浸漬浴88内の加熱された分離剤90中に浸漬される。このことは図3Aに示されている。
【0079】
この図に見ることができるように、分離板44は下方に向かう行程において、剥離エレメント92の傍らを移動する。結果として、分離板44に付着している分離剤層70は、分離剤層上に分離されたオーバースプレー100とともに、分離板44から剥離され、そしてコンベア・ベルト98上に落下する。このことは図3A〜3Dには示されていない。
【0080】
上述のように、オーバースプレーとともに分離板44から落下した分離剤は、コンベア・ベルト98によって捕集領域に搬送される。その場所から、分離剤は処理のために供給される。これを目的として、材料混合物を加熱することができ、例えば分離剤を液状にすることができる。結果として得られた、液化された分離剤とオーバースプレーとの材料混合物は次いで例えば適宜のフィルタによって除去されることができる。
【0081】
代替的に、分離剤/オーバースプレー混合物を場合によっては加圧下で遠心分離することもでき、そして結果として得られた相をその後、互いに分離することができる。こうして清浄化された分離剤は次いで、対応する熱供給によって流動可能な状態に保たれ、循環させて浸漬浴88に戻るように案内されることができる。濾過により除去されたオーバースプレーは、それ自体周知のように、必要な場合には更なる処理のために、又は廃棄のために供給されることができる。
【0082】
図1において破線によって示された最も下側の位置で、分離板44からは今や、オーバースプレー100が付着した使用済み分離剤層70が取り除かれ、そして分離板44は浸漬浴88内の分離剤90中に浸漬される。
【0083】
剥離エレメント92は今や解放位置にもたらされる(図3B及び3C参照)。
【0084】
伸縮装置80をここで使用して分離板44を再び上昇させ、そしてこれを分離剤90から進出させる(図3D参照)。分離板44に付着した分離剤は、浸漬浴よりも低温の環境下で素早く冷めるので、この分離剤は、分離剤浴を出たときにはその作業粘度にあり、そして分離板44が浸漬浴88から完全に進出したときには、新しい分離剤層70として分離板44に付着している。
【0085】
新しい空荷の分離剤層70を今や施された分離板44は、伸縮装置80を相応に伸長させ、そして締め付けシュー84を分離ユニット40の方向に動かすことによって、分離板と関連する分離ユニット40のガイドレール52内に戻される。分離板44はそのガイドレール52の作業位置を占めると、そこでロックされ、締め付けシュー84が分離板44を解放する。次いで、この動作を、オーバースプレーが付着した分離剤を取り除かなければならない別の分離板44で繰り返すことができる。
【0086】
変更形では、分離剤再生装置は複数の浸漬浴88と、レールプロファイル82を備えた複数の伸縮装置80とを含んでいるので、複数の分離板44を同時に処理することができる。
【0087】
第2の模範実施態様として、図4は、分離装置1042が関連付けられる塗装ブース1002を示している。図1〜3に対応する構成部分は同じ符号の数字に1000を足したものを有している。
【0088】
塗装ブース2とは異なり、下側システム領域1020内に偏向領域はない。代わりに、空気偏向板1024及び1026によって形成された流動領域1022に続いて、分離ユニット1040が配置された分離チャンバ1034が配置されている。下側ブース開口1014はここでは空気偏向板1024及び1026の上端部の間に延びている。これらの空気偏向板1024及び1026は次いで、下方に分離チャンバ1034に向かって互いに離れる方向に延びている。
【0089】
下側ブース開口1014は分離シート1102を側方に有する。これらの分離シート1102は、外側に向かって軽く下向きに傾斜しており、その外側は、捕集通路1102aを形成するように成形されている。分配通路1036から分離シート1102へ分離流体を供給することができる。これらの分配通路1036は、空気偏向板1024及び1026に隣接して配置されている。
【0090】
この模範実施態様の場合、ブース空気は頂部から底部へ分離ユニット1040を通って流れる。それゆえ電極装置1056は、コロナ部分1066が頂部にあり、そして電界部分1062が底部にあるように相応に配置されている。
【0091】
分離板1044は水平方向のガイドレール内で案内されるのではなく、保持ユニット1104内に取り外し可能に懸架される。保持ユニット1104は、空気偏向板1024及び1026の下端部の下方に短い距離を置いて配置されている。保持ユニット1104は、分離板1044を任意に保持又は解放するように制御されることができる。
【0092】
図1及び3に示された分離剤再生装置72とは異なり、分離剤再生装置72は伸縮装置を含まない。その代わりに、水平方向の回転軸線を中心として回転可能な被駆動締め付けローラ対1106が、分離板1044を昇降させるために設けられている。締め付けローラ対1106は、分離板1044の縁部領域を搬送位置において、対向する分離面1046,1048上で締め付け、そして相応の方向に回転することによってこれらの分離板を昇降させることができる。側方のガイドレール1101が、分離板1044が横方向で案内されるのを保証する。
【0093】
或いは、分離板1044の縁部領域には例えば付加的に溝を形成するか又は切欠きを設けることができ、そして締め付けローラ対1106の代わりに溝又は切欠き内に係合するピニオンを使用して、分離板1044の搬送をフィルムの搬送と同様に行うことも可能である。この場合には、分離板1044が鉛直方向のガイドレール1101なしで横方向に案内されるのを保証することもできる。
【0094】
キャリッジ1074を塗装ブース1002の長手方向に動かすときに、締め付けローラ対1106が妨害しないようにするために、締め付けローラ対1106をさらに水平方向において側方に分離ユニット1040と並ぶように動かすこともできる。
【0095】
従って、分離板1004が清浄化される必要がある場合には、締め付けローラ対1106は搬送位置に動かされ、分離板1044は保持ユニット1104から解放され、そして締め付けローラ対1106の相応の回転によって、下方に向かって浸漬浴1088内に動かされる。剥離エレメント1092はここで剥離位置を占める。
【0096】
その他の点では、分離板1044は、図1〜3を参照しながら上述した手順と同様に、清浄化され、そして新たに分離剤で被覆される。
【0097】
第3の模範実施態様として、図5には、分離装置2042が関連付けられる塗装ブース2002が示されている。図1〜3に対応する構成部分は同じ符号の数字に2000を足したものを有している。
【0098】
基本構造は、図1に示された塗装ブース2に相当する。しかしこれとは異なり、分離剤再生領域2054は、分離ユニット2040の上方に配置されている。これを目的として、分離ユニット2040の上方の右側及び左側に、それぞれ水平方向レール2108が設けられており、この水平方向レール2108は、変更された分離剤再生装置2110を支持して、この分離剤再生装置が塗装ブース2002の長手方向に移動できるようになっている。
【0099】
分離剤再生装置2110は、剥離エレメント2092を有する下方に向いた剥離装置2094を含んでいる。剥離エレメント2092のうちの1つだけを図5において見ることができる。これらの剥離エッジ(図5には示されていない)は下方に向いている。さらに、複数のノズル2114を含むノズル装置2112が設けられている。これらのノズルは破線で描かれた円として示されており、貫通スロットの両側に配置されている。この貫通スロットを通して分離板2044を案内することができる。図5では、ノズルのうちの1つだけに符号が付けられている。
【0100】
分離板2044を昇降させるために、剥離装置2092の下方に配置された2つの締め付けローラ対2106aと、ノズル装置2112の上方に配置された2つの締め付けローラ対2106bとが設けられているので、下側締め付けローラ対2106aから上側締め付けローラ対2106bへ且つその逆に分離板を移すことができる。ここでは下側締め付けローラ対2106aの下方に保持ユニット2104が配置されている。
【0101】
清浄化されるべき分離板2044を昇降させるために、分離剤再生装置2110は先ず分離板2044の上方の位置に移される。分離板2044は次いで、下側締め付けローラ対2106aによって把持され、そして保持ユニット2104が分離板2044を解放した後に上方に向かって搬送される。剥離エレメント2092はここで剥離位置を占めるので、オーバースプレーが付着した分離剤は分離板2044から剥離されてコンベア・ベルト2098上に落下する。
【0102】
分離板2044から分離剤が取り除かれた後、分離板は下方に戻される。このときノズル装置2112が作動させられる。ノズル2114は、加熱可能な分離剤リザーバ2116から分離剤を供給され、分離剤を分離板2044の両分離面2046,2048上に噴霧又は噴射する。必要な場合には、ノズル2114を加熱することにより、分離剤を、噴霧又は噴射することのできる温度に保つこともできる。
【0103】
ここで具体的には図示されていない変更形において、ノズル装置2112の代わりに、ローラ装置又はドクタ・ブレード装置(doctor-blade arrangement)が設けられており、これらの装置によって、ローラ又はドクタ・ブレードにより分離板2044に分離剤を付与することができる。
【0104】
相応のローラ装置の場合、例えばその都度分離剤浴内に浸かるそれぞれの回転ローラが、分離板2044のそれぞれの側に配置されることが可能である。分離板2044はこれらの回転ローラの間に押し通される。回転ローラは、分離面2046及び2048が分離剤で均一に湿潤されるように配置されている。
【0105】
相応のドクタ・ブレード装置の場合、分離剤は好ましくは、ドクタ・ブレードによってペースト状に分離面2046及び2048に付与される。
【0106】
作業時間、つまりその作業時間にわたって、新たに分離剤で被覆された分離板44,1044,2044を使用することができ、そしてその作業時間後に、分離された固形物を有する既存の分離剤が除去され、そして空荷の分離剤が分離板44,1044,2044に付与されるような作業時間は、とりわけ、オーバースプレーの挙動に依存する。実際には2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、又は数日間の作業時間が可能であることが判っている。
【0107】
図6A〜6D及び図7A〜7Cは、分離剤再生装置72の変更形としての分離剤再生装置3118を示している。これらの図面において、分離剤再生装置72の構成部分に相当する構成部分は、同じ符号の数字に3000を足したものを有している。図示の分離板3044の分離面3046及び3048は、図6Aにおいてのみ符号が付けられている。
【0108】
分離剤再生装置3118において、浸漬浴3088及び剥離装置3094は、塗装ブース2の長手方向で見て連続してキャリッジ3074上に配置されている。これを目的として、キャリッジ3074は分離剤再生装置72のキャリッジ74よりも相応に大きい寸法を有している。
【0109】
剥離装置3094は分離剤及びオーバースプレーのための受容領域3120を含んでいる。受容領域3120は剥離エレメント3092の下方に配置されており、保護ボックス3122を形成する4つの側壁3124によって仕切られている。保護ボックス3122は頂部及び底部で開いている。
【0110】
キャリッジ3072はさらに貫通口3126を有している。この貫通口3126は、保護ボックス3122の内側断面を補完する。
【0111】
伸縮装置3080は位置決めキャリッジ3128上に位置している。位置決めキャリッジ3128はキャリッジ3074上で、キャリッジの運動方向に対して平行に動くことができる。位置決めキャリッジ3128は、図6及び7において概略的に破線で示されているにすぎない。
【0112】
分離剤再生装置3118において、分離板3044は、レールプロファイル3082内で、剥離装置3094を備えた保護ボックス3122の上方にある位置に移動される。これを目的として、位置決めキャリッジ3128はキャリッジ3074上の相応の位置に動かされる。
【0113】
剥離装置3094の剥離エレメント3092は先ず解放位置にある。伸縮装置3080を使用して、分離板3044を、下方に向かって保護ボックス3122内の剥離エレメント3092の間に、剥離エレメント3092が分離剤層3070又はこれに付着したオーバースプレー3100と接触することなしに動かす。このことは図6Aに示されている。
【0114】
分離板3044がその最も低い位置を占めると(図6Bに示されている)、剥離エレメント3092は剥離位置にもたらされる。
【0115】
分離板3044は次いで、伸縮装置3080によって上方に向かって戻され、そしてその上方へ向かう行程で、剥離エレメント3092の傍らを移動する。剥離エレメントは今や、それらの剥離エッジ3096が分離板3044に当て付けられた状態にある。分離板3044に付着した分離剤層3070は、これらに付着したオーバースプレー3100と一緒に、こうして分離板3044から剥離され、そして保護ボックス3122と、キャリッジ3074に設けられた貫通口3126とを通して、図6A〜6Dには示されていないコンベア・ベルト98,1098,2098上に落下する。このことは材料片3130によって示されている(図6C及び6D参照)。
【0116】
使用済み分離剤層3070及びこれに付着したオーバースプレー3100が取り除かれた分離板3044は今や剥離装置3094の上方の最も高い位置に位置している。
【0117】
位置決めキャリッジ3128は次いで、分離板3044が浸漬浴3088の上方に配置されるような位置に動かされる(図6D及び7A参照)。分離板3044は先ず、伸縮装置3080によって、分離剤3090を含有する浸漬浴3088内に浸漬され(図7B参照)、次いでこれから戻される(図7C参照)。
【0118】
すでに上述したように、分離板3044に付着した分離剤は、浸漬浴よりも低温の環境下で素早く冷めるので、分離剤浴を出たときにはその作業粘度にあり、そして分離板3044が浸漬浴3088から完全に進出したときには、新しい分離剤層3070として分離板3044に付着している。
【0119】
図8は、図1及び図3〜7に示された剥離装置94,1094,2094及び3094の代わりとして用いることができる変更形としての剥離エレメント4092を示している。
【0120】
剥離エレメント4092は、剥離縁部4096に沿って延びる空気出口スロット4132を含んでいる。この空気出口スロット4132は圧縮空気接続物4134と連通している。この圧縮空気接続物4134によって剥離エレメント4092に圧縮空気源4136から圧縮空気を供給することができる。圧縮空気は次いで空気出口スロット4132から放出される。このことは図8の矢印によって示されている。この圧縮空気は、分離剤が、加熱された圧縮空気と接触するとより液状になるような温度に、任意に加熱されることができる。
【0121】
このようなタイプの剥離エレメント4092が、オーバースプレーを多く含む分離剤層を剥離するために使用されるならば、剥離縁部4096は、それぞれの分離板44,1044,2044又は3044ともはや機械的に接触する必要はなくなる。その代わりに、空気出口スロット4132を有するそれぞれの剥離縁部4096と分離板44,1044,2044又は3044との間には所定の間隔が残されてもよい。オーバースプレーを多く含む分離剤層はいわば、発生した空気流によって分離板44,1044,2044又は3044から吹き飛ばされる。残された間隔は、分離剤及びオーバースプレーと直接に接触する剥離エレメント92,1092,2092,又は3092と比較して、剥離エレメント4092の汚染が低減されることを可能にする。
【0122】
分離板44,1044,2044又は3044から、オーバースプレーを多く含む分離剤層を除去するための別の選択肢は、分離剤を加熱によって変化させて分離剤がそれぞれの分離板44,1044,2044又は3044からオーバースプレーとともに流れ去る液体状態にすることにある。このことは、剥離エレメント92,1092,2092,3092又は4092の代わりに、又はこれに加えて、例えば加熱エレメント又はIR線への曝露を利用することによって行うことができる。分離板44,1044,2044又は3044の誘導加熱も考えられる。
【0123】
図9〜11において、剥離装置の更なる模範実施態様が符号5094によって示されている。上記剥離装置94,1094,2094及び3094では、分離板44,1044,2044及び3044が、それぞれ定置の剥離エレメント92,1092,2092及び3092に対して動かされるのに対して、剥離装置5094では、関連する剥離エレメント5092a,5092bが、清浄化されるべき分離板5044に対して頂部から底部に動かされる。
【0124】
図1〜3に示された分離剤再生装置72を参照しながら、以下に剥離装置5094について説明する。しかしながら、分離剤再生装置72は、剥離装置1094,2094及び3094の代わりに、分離剤再生装置1072,2110又は3118において相応に使用されることもできる。便宜上、分離剤再生装置72のレールプロファイル82だけが図9及び10に示されている。
【0125】
剥離装置5094は支持フレーム5138を含んでいる。支持フレーム5138はキャリッジ74によって一緒に運ばれ、レールプロファイル82の最も高い位置の上方に静止して配置されている。
【0126】
支持フレーム5138は、支持フレーム5138の組立状態においてレールプロファイル82の長手方向軸線を通って延びる鉛直方向平面に対して対称的である。支持フレーム5138は、この平面に対して垂直に延びる2つの外側横方向ビーム5140を含んでいる。これらの横方向ビーム5140の間に、2つの外側長手方向ビーム5142a,5142b及び2つの内側連結ビーム5144が延びている。このことは図11において特に明らかに示されている。
【0127】
長手方向ビーム5142a,5142bは、2つの剥離エレメント5092a,5092bのそれぞれ1つに対してそれぞれ1つの上昇/下降装置5146a,5146bを支持している。各上昇/下降装置5146a,5146bは、長手方向ビーム5142に対して平行に延びる回転軸5150a,5150bを駆動する。回転軸5150a,5150bはそれぞれの端部で、それぞれの駆動ブロック5152a,5152b内に延びている。駆動ブロック5152a,5152bはそれぞれの線状鎖5154a,5154bを動かす。上昇/下降装置5146aは従って2つの線状鎖5154aを有しており、そして上昇/下降装置5146bは従って2つの線状鎖5154bを有している。上昇/下降装置5146a,5146bはこうして、剥離エレメント5092a,5092bのための線状鎖駆動装置を形成する。
【0128】
駆動ブロック5152a,5152bが回転軸5150a,5150bの回転運動を周知の形式で線状鎖5154a,5154bに伝達するので、これらの線状鎖は、回転軸5150a,5150bの回転方向に従って駆動される。線状鎖5154a,5154bは、力を引張り方向及び押し出し方向の両方に伝達できるように周知の形式で構成されている。
【0129】
2つの線状鎖5154aのそれぞれは一方の端部で支持フレーム5138に連結され且つ他方の端部で剥離エレメント5092aに連結されている。相応に、2つの線状鎖5154bのそれぞれは一方の端部で支持フレーム5138に連結され且つ他方の端部で剥離エレメント5092bに連結されている。
【0130】
上昇/下降装置5146aの駆動ブロック5152aは、長手方向ビーム5142a上において、長手方向ビーム5142b上の駆動ブロック5152b同士よりも、互いに近接して配置されているので、線状鎖5154a及び5154bは、横方向ビーム5140の方向で見て互いにずらされた状態で延びている。このことは図11において特に明らかに示されている。
【0131】
線状鎖5154a,5154bは、支持フレーム5138の上方の駆動ブロック5152a,5152bからそれぞれ鉛直方向下向きに、アイドル・ローラ(idle roller)5156a,5156bを介して、それぞれ関連する剥離エレメント5092a及び5092bに向かって走行する。
【0132】
剥離エレメント5092a及び5092bは、同一の構造を有しており、以下、図9において右側に示された剥離エレメント5092bの例を用いて説明される。剥離エレメント5092aと5092bとの間に配置された分離板5044が基準として用いられる。
【0133】
剥離エレメント5092bは剥離シート5158を含んでおり、剥離シート5158は、使用時には水平方向に延び、そして分離板5044を両側で超えて張り出すのに十分に長い。剥離シート5158は、分離板5044に向かって所定の角度を成して下向きに延びる固定用部分5160を含み、そして傾斜がより少ない縁部分5162に移行する。この縁部分は最後に剥離縁部5096に至る。
【0134】
剥離シート5158を保持ストリップ5166に固定用部分5160を介してねじ固定するために、締め付けストリップ5164が使用される。保持ストリップ5166は、分離板5044から遠い縁部で、隣接して配置された2つの鉛直方向の支持板5168に固定されている(図10も参照)ので、保持ストリップ5166と分離板5044との間に間隙が残る(図9参照)。
【0135】
保持ストリップ5164は剥離シート5158から遠い側で剥離ストリップ5170を支持している。剥離ストリップ5170は剥離エレメント5092bの剥離効果を高める。
【0136】
支持板5168は、分離板5044に面した側で複数の電磁石5172を支持している。これらの電磁石は、長手方向に配置されていて、分離板5044の対向する側に配置された剥離エレメント5092aの対応電磁石と協働することができる。
【0137】
支持板5168は上縁領域でカップリング・ウェブ5174に連結されている。このカップリング・ウェブ5174を介して、線状鎖5154bは剥離エレメント5092bに結合されている。
【0138】
剥離エレメント5092が分離板5044に沿って走行できるように、カップリング・ウェブ上に4つのローラ5176が回転可能に取り付けられている。
【0139】
剥離シート5158の代わりに、図8に示された剥離エレメント4092の事例のように、剥離エレメント5092内には、空気流を使用する剥離構成部分が存在していてもよい。
【0140】
剥離装置5094は下記のように機能する:
最初に、剥離エレメント5092a及び5092bの電磁石5172が不活化される。分離剤及び分離剤上に分離しているオーバースプレーが取り除かれるべき分離板5044は、締め付けシュー84によってレールプロファイル82内に引き込まれるので、分離板5044は剥離エレメント5092aと5092bとの間に位置するようになる(図9参照)。必要な場合には、剥離エレメント5092a,5092bを互いに所定の間隔を置いて保持することができるので、分離板5044がレールプロファイル82内に走入する時に、剥離エレメント5092a又は5092bに衝突するおそれはない。これを目的として、剥離エレメント5092a,5092bは、例えば少なくともレールプロファイル82の下流側の領域において、側方のガイドレール内で走行する。これらのガイドレールは、2つの剥離エレメント5092a,5092bを互いに離反する方向に案内する。
【0141】
分離板5044がレールプロファイル82内において所望の位置を占めると、電磁石5172が作動させられる。剥離エレメント5092a,5092bはこうして分離板5044に引き付けられる。
【0142】
上昇/下降装置5146aの電動モータ5148は次いで、剥離エレメント5092a,5092bが線状鎖5154a,5154bによって分離板5044に沿って下方に向かって押されるように作動させられる。剥離エレメント5092a,5092bの剥離シート5158は、磁力によって分離板5044との不変の接触状態を保たれ、剥離エレメント5092a,5092bのローラ5176は分離板5044の分離面5046及び5048上を転動する。
【0143】
剥離エレメント5092a,5092bの下方に向かう行程において、分離剤が、分離剤上に分離されたオーバースプレーとともに、分離板5044の分離面5046及び5048から掻き取られる。
【0144】
剥離エレメント5092a,5092bが最も低い位置に達すると、電動モータ5148は反対方向に操作されるので、剥離エレメント5092a,5092bは、線状鎖5154a及び5154bによって上方に向かって引き戻される。
【0145】
分離板5044にまだ付着しているおそれのある分離剤残留物は、分離ストリップ5170によって検出されて除去されることができる。
【0146】
分離板5044上の分離剤層の再生は、その他の点では図1〜8を参照して上述したように行われる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆システム、特に塗装システムの、オーバースプレーを多く含むブース排気からオーバースプレーを分離する方法であって、オーバースプレーが空気流によって取り込まれて静電作業式分離装置に搬送され、ここで、固形物の少なくとも大部分が少なくとも1つの分離面上でオーバースプレーから分離される、方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、塗装システムの、オーバースプレーを多く含むブース排気からオーバースプレーを分離するための分離装置であって、
a) 少なくとも1つの分離面であって、少なくとも1つの分離面に沿ってブース排気が搬送されることができ且つ高電圧源の一方の端子に接続される少なくとも1つの分離面と;
b) 電極装置であって、空気流中に配置され、分離面と関連付けられ、且つ高電圧源の他方の端子に接続される電極装置と
を有する分離装置に関する。
【0003】
本発明はさらに、物体、特に車体を被覆、特に塗装するためのシステムであって、
a) 被覆ブースであって、被覆ブース内では物体が被覆材料によって作用されることができ、空気流が、被覆ブースを通って導かれることができ、結果として生じる被覆材料のオーバースプレー粒子を取り込み且つ除去する、被覆ブースと;
b) 静電作業式分離装置と
を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
物体に手動又は自動で塗料を付与するときには、一般に固形物及び/又は結合剤、並びに溶剤の両方を含有する塗料部分流は、その物体には付与されない。この部分流は当業者の間では「オーバースプレー」として知られている。オーバースプレーは、塗装ブース内で空気流によって取り込まれ、且つ、必要ならば、空気が好適なコンディショニング後に被覆ブースに戻されるように分離のために供給されることができる。
【0005】
具体的には、塗料消費量が比較的高いシステム、例えば車体塗装システムにおいて、例えば湿式分離システムを使用するのが好ましい。商業的に周知の湿式分離器では、上方から到来するブース排気と一緒に水が、空気流を加速させるノズルへ流れる。このようなノズル内では、通流するブース排気が水と一緒に渦流形成される。このような動作中、オーバースプレー粒子は大部分が水中に移るので、湿式分離器を出た空気は実質的に清浄化されており、そして、塗料オーバースプレー粒子は分離されて水中に残る。次いでこれらの粒子を水から回収するか又は廃棄することができる。
【0006】
周知の湿式分離器では、極めて大量の所要の水を循環させるために比較的多量のエネルギーが必要である。洗浄水の処理は、塗料結合化学物質及び脱粘着化学物質を多量に使用すること、及び塗料スラッジを廃棄することに起因して高いコストがかかる。さらに洗浄水と強力に接触する結果、空気は大量の湿分を吸収する。この湿分は再循環空気モードでは、空気の処理のためのエネルギー消費量を高くする。
【0007】
対照的に、冒頭で述べたタイプの商業的に周知の装置において、乾式分離プロセスが用いられ、この乾式分離プロセスは、流過するブース排気によって同伴される塗料オーバースプレー粒子が電極装置によってイオン化され、そして分離面と電極装置との間に確立された電界に起因して分離面に移動し、この分離面上でこれらの塗料オーバースプレー粒子が分離されることによって行われる。その後、分離面に付着した塗料オーバースプレー粒子を、分離面から機械的に剥離し、例えば搬出することができる。
【0008】
このような分離装置の清浄化効果は極めて良好である。しかしながら、連続的な作業のためには、分離面と電極装置との間に十分に強い電界が形成され得るのを常に保証することが必要であり、このことは、分離面上の塗料オーバースプレーのある程度の層厚までしか可能ではない。なぜならば、このような層は絶縁効果を有するからである。とはいえ、塗料オーバースプレーを分離面から連続的に除去することは、複雑な構造手段を伴い、故障を招きやすくなる。さらに、オーバースプレーは、分離面上で反応し、硬化し、又は乾燥して、分離面から剥離されることによってはもはや単純に除去されなくなるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、これらの問題点に対処する、冒頭で述べたタイプの方法、分離装置、及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、冒頭で述べたタイプの方法において、導電性材料又は材料混合物が分離剤として使用され、分離剤が分離装置の少なくとも1つの分離面に付与され且つ分離装置の作業温度でワックス様の稠度を有することにより達成される。
【0011】
従って本発明によれば、分離面とオーバースプレーとの間の分離層としてワックス様材料が使用されるので、オーバースプレーは分離面と接触することができない。分離剤の規定された性質は、分離面から分離剤を容易に剥離し又は削り取ることができることを意味する。この場合、分離剤に付着したオーバースプレーは、分離面から除去され、且つ、廃棄のため、又は必要な場合には処理のために供給されることができる。
【0012】
分離剤の稠度は、分離剤が所望の使用期間にわたって分離面に付着するが粘着はしないように選択される。ここで、作業温度における材料の粘度が約2000mPa・sよりも大きい場合、その材料はワックス様であると考えられる。分離剤の粘度は、好ましくは2500mPa・sよりも大きく、より好ましくは3000mPa・sよりも大きく、特に好ましくは4000mPa・sよりも大きい。
【0013】
分離剤の稠度は好ましくは作業温度で固形パラフィンの稠度に匹敵する。例えばチョコレートの塊も同様の稠度を有している。このことは、分離剤が作業温度で実質的に固形であり且つ分離剤を削ってフレーク状にすることが可能なことを意味する。
【0014】
分離剤は或いは、作業温度でプラスチック稠度を有している。例えば、好適な稠度は、グリース、パラフィン(例えばワセリン)、石けん、ワックス、又はゲルの稠度に匹敵する。このようなタイプの分離剤は作業温度で混練可能又は展延可能である。
【0015】
作業温度は通常は約28℃未満である。
【0016】
分離剤の粘度が作業温度よりも高い温度で減少するならば、このことは、より高温の状態においてより液状の形態で分離剤を分離面に付与するために利用することができる。この場合、分離剤は、作業温度で粘度が高くなり、そして実質的に寸法安定であり続ける。分離剤がより高温の状態で展延可能であるならば、分離剤は噴霧によって相応に付与されることができる。
【0017】
分離剤が、分離された固形物に対して実質的に不活性であることが好ましい。このことは、分離剤とオーバースプレーとの間の望ましくない反応を最初から防止する。
【0018】
分離剤が、グリース、パラフィン、石けん、ワックス、又はゲルを含むならば好都合であることが判っている。
【0019】
オーバースプレーの連続的な剥離を回避することを目的にするのであれば、ワックス様材料を分離剤として使用すると、少なくとも1つの分離面上に存在する、分離された固形物を有する分離剤が作業時間後に除去され、空荷の分離剤(unladen separating agent)が少なくとも1つの分離面に付与されることが可能である。従って、分離面は所定の時間間隔で清浄化されることができる。
【0020】
分離された固形物を有する分離剤が剥離エレメントによって除去され、このために、少なくとも1つの分離面と、剥離エレメントとが互いに対して移動せしめられることが有利である。この場合、分離面は、静止した剥離エレメントに対して移動せしめられることが好ましい。しかし、相対的な移動は逆に行われてもよい。
【0021】
少なくとも1つの剥離エレメントが少なくとも1つの出口、特に出口スロットを含み、出口から、流体、特に圧縮空気が出ることができるならば、剥離エレメントと分離面との直接の接触を回避することが可能である。このことは、時間とともに増大する剥離エレメントの汚染を少なくとも遅らせる。
【0022】
空荷の分離剤は、少なくとも1つの分離面を、分離剤で充填された浸漬浴内に移動させ、再び浸漬浴から外に移動させることにより、特に有利に付与される。この場合、分離剤は、その粘度が作業温度における粘度よりも低くなるような温度であることが好ましい。
【0023】
或いは、分離剤は少なくとも1つの分離面上に噴霧又は噴射されることもできる。
【0024】
作業時間は約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、又は約12時間であることが可能である。分離剤がオーバースプレーをさほど含んでいない場合、数日間までのより長い作業時間も、オーバースプレーの絶縁効果が力線の形成に影響を及ぼして分離装置の適正な作業がもはやできなくなることがない限り可能である。コロナ電流はここでは、分離面に対するオーバースプレーの負荷の指標である。分離剤に付着するオーバースプレーの絶縁効果は、オーバースプレー層の厚さが増大するにつれて、コロナ電流を減少させる。コロナ電流の限界値は、一般に実験的に定められ、通常、高電圧電極当たり数ミリアンペアである。
【0025】
冒頭で述べたタイプの装置において、上述の目的は、
c) 導電性材料又は材料混合物が分離剤として少なくとも1つの分離面に付与され且つ分離装置の作業温度でワックス様の稠度を有する
ことにより達成される。
【0026】
上記方法に関して述べたことが分離剤に当てはまる。
【0027】
装置は有利には、分離装置が分離剤再生装置を含み、分離剤再生装置によって、少なくとも1つの分離面上に存在する、分離された固形物を有する分離剤が除去されることができ、且つ/又は、空荷の分離剤が少なくとも1つの分離面に付与されることができる。
【0028】
ここで、分離剤再生装置が少なくとも1つの剥離エレメントを含み、剥離エレメントは少なくとも1つの分離面に対して移動せしめられることができることが好ましい。これは、剥離エレメントを静止した分離面に対して移動させることができること、又は分離面を静止した剥離エレメントに対して移動させることができることを意味する。
【0029】
ここで、少なくとも1つの剥離エレメントが線状鎖駆動装置に結合されていることは有利である。
【0030】
保持手段が設けられており、保持手段によって、少なくとも1つの剥離エレメントが少なくとも1つの分離面と少なくとも一時的に接触した状態で保持されることができると、剥離効果は有利に増大する。
【0031】
保持手段が、磁石、特に電磁石を含むことがここでは好ましいことが判っている。
【0032】
分離剤再生装置が、分離剤で充填された浸漬浴と、運搬装置とを含み、運搬装置によって、少なくとも1つの分離面が浸漬浴内に移動せしめられ且つ再び浸漬浴の外に移動せしめられることができることは特に有利である。
【0033】
或いは、分離剤再生装置はノズル装置を含み、ノズル装置によって、分離剤は少なくとも1つの分離面上に噴霧又は噴射されることもできる。
【0034】
少なくとも1つの分離面が板状の分離エレメントの外面であることが好ましい。このタイプの分離エレメントは取り扱いが簡単であり且つその体積に対して大きい分離面を提供する。
【0035】
電極装置がコロナ部分と電界部分とを有しており、コロナ部分が、オーバースプレーを多く含むブース空気の流れ方向において電界部分の上流側に配置されていると、効果的な分離が達成されることができる。
【0036】
冒頭で述べたシステムにおいて、上記目的は、
c) 静電作業式分離装置が、請求項15から32までのいずれか1項に記載のように構成されている
ことによって達成される。
【0037】
従って、本発明によるシステムは、装置に関して述べた特徴のうちの1つ以上を有する分離装置を含む。これにより達成することができる利点は、方法及び装置に関して上述した利点に相当する。
【0038】
図面を参照しながら、本発明の模範実施態様をより詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、オーバースプレー分離装置の第1模範実施態様を有する表面処理システムの塗装ブースを示す正面図である。
【図2】図2は、図1の分離装置の4つの分離ユニット及び4つの電極装置を示す斜視図である。
【図3】図3A〜3Dは、分離剤再生装置を種々異なる作業段階で、図1の断面線III−IIIに沿って示す断面図である。
【図4】図4は、変更されたオーバースプレー分離装置を有する塗装ブースを第2模範実施態様として示す、図1に対応する図である。
【図5】図5は、再び変更されたオーバースプレー分離装置を有する塗装ブースを第3模範実施態様として示す、図1及び4に対応する図である。
【図6】図6A〜6Dは、変更された分離剤再生装置を種々異なる作業段階で示す、図3A〜3Dに対応する断面図である。
【図7】図7A〜7Cは、変更された分離剤再生装置を種々異なる作業段階で示す、図3A〜3Dに対応する断面図である。
【図8】図8は、剥離装置の剥離エレメントの区分を拡大して示す斜視図であり、前記剥離エレメントは圧縮空気ノズルとして形成されている。
【図9】図9は、図10の断面線IX−IXに沿って示す剥離装置を示す断面図である。
【図10】図10は、図9の剥離装置を示す側面図である。
【図11】図11は、図9及び10の剥離装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
最初に図1〜3を参照する。これらの図面では、符号2は表面処理システムの塗装ブースを全体的に示している。この塗装ブース内では車体4が、これらが例えば、塗装ブース2内の上流側に配置された前処理ステーション(具体的には示さない)内で清浄化されて脱脂された後で、塗装される。塗装ブース2は、それ自体は周知の鋼構造6に設けられている。
【0041】
塗装ブース2は塗装トンネル8を含んでいる。塗装トンネル8は頂部に配置されており、鉛直方向の側壁10と、水平方向のブース天井12とによって仕切られているが、しかし端面で底部に向かって開いているので。オーバースプレーを多く含むブース排気は下方に向かって流れることができる。ブース天井12は、フィルタ・カバーを有する空気供給チャンバ(図示せず)の下側の仕切りとして、従来の態様において構成されている。
【0042】
側壁10の下縁部を側方に有する、塗装トンネル8の下側開口14の高さには、鋼構造16が配置されている。鋼構造16はコンベア・システム18を支持しており、コンベア・システムはそれ自体周知であり、ここでさらに詳しく説明することはしない。コンベア・システムを使用して、塗装されるべき車体4を塗装トンネル8の入口側から出口側へ搬送することができる。それ自体周知の形式で塗料によって車体4に作用することができる付与装置(具体的には図示しない)が、塗装トンネル8内部に位置している。塗装トンネル8の下側開口14は、アクセス可能な格子(具体的には図示しない)によって覆われている。
【0043】
ブース空気によって同伴されたオーバースプレー粒子がブース空気から分離されるシステム領域20が、塗装ブース2の下方に位置している。システム領域20はハウジングによって仕切られている。ハウジングは具体的な符号が付けられておらず、図1において破線として示されているにすぎない。
【0044】
システム領域20は流動領域22を含んでいる。流動領域22は、頂部で塗装ブース2に向かって開いており、2つの空気偏向板24及び26によって形成されている。図1の左側の空気偏向板は、外方から内方へ向かって見て、先ず下方に向かって軽く傾斜した区分24aを有している。この区分24aは、下方に向いた急勾配を有する部分24bに移行する。図1の右側の空気偏向板26はこれに対応して、比較的僅かな下方勾配を有する部分26aと、急勾配の部分26bとを有している。
【0045】
空気偏向板24及び26は下方に向かって偏向領域28内に延びている。偏向領域28内では、下側偏向板30と、空気偏向板26から続く湾曲部分32とが、頂部から底部に向かって流れるブース空気が底部から図1の右側に配置された分離チャンバ34を通って頂部に向かって流れることを保証する。
【0046】
分離流体は、空気偏向板24及び26に側方に隣接して設けられた分配通路36a,36bから、空気偏向板24及び26上に流れ、そして下方に向かって、塗装ブース2に向いた外面に沿って、実質的に凝集した層を成して流れる。分離流体は、ブース空気によって同伴されたオーバースプレーのいくらかを取り込み、一方、ブース空気は塗装ブース2から偏向領域28へ下方に向かって流れる。
【0047】
オーバースプレーを多く含む分離流体は、下側偏向板30を介して捕集タンク38内に流入する。捕集タンク38は、空気偏向板24の、分離チャンバ34から遠い側に配置されている。そこから分離流体を清浄化・処理プロセスに供給することができる。この清浄化・処理プロセスにおいて、それ自体周知の形式で、分離流体から塗料オーバースプレーが取り除かれる。その後、分離流体を循環して分配通路36に戻すことができる。
【0048】
静電作業式分離装置42の分離ユニット40は分離チャンバ34内に配置されている。ブース空気は分離ユニット40を通流した後、分離ユニット40の上方から空気コンディショニング装置(図示せず)に搬送される。空気コンディショニング装置によって、清浄化済空気は正確な温度及び湿度に戻されるので、清浄化済空気を塗装ブース2の上方の空気供給チャンバに再び導くことができ、ここで清浄化済空気は必要な場合には未使用の新鮮な空気と混合される。捕集タンク38から遠い側では、第3の分配通路36cが下側偏向板30に設けられており、この第3の分配通路36cから、分離流体が、分離ユニット40の下方に延びる下側偏向板30の部分の上を流れる。
【0049】
分離ユニット40は、分離チャンバ34の長手方向に連続して配置された複数の方形の分離板44(これらのうち4つが図2に示されている)を含む。分離板44のそれぞれの対向する外面は分離面46及び48を形成する。最も左側に示された分離板44の分離面だけに、図2において符号が付けられている。
【0050】
分離板44の上縁部は各側に複数のローラ50を支持している。これらのローラのうち1つを両側に図2においてのみ見ることができ、またこの場合も図面の最も左側に示された分離板44のローラだけが符号を有している。それぞれの分離板44に対して、分離ユニット40は、C字形断面を有する輪郭として形成されたそれぞれのガイドレール52を含んでいる。ガイドレール52は水平方向に、そして「C」の先端の開口が下方に向くように配置されている。分離板44は、これらのローラ50と一緒にそれぞれのガイドレール52内を走行し、図1の右側に向かって分離チャンバ34から分離剤再生領域54内に移動せしめられることができる(図1参照)。分離板44は作業位置では、関連するガイドレール52内で分離チャンバ34内に配置され、この分離チャンバ内でロックされる。
【0051】
分離ユニット40内で、ガイドレール52は互いに平行に相並んで配置されて、2つの隣接する分離板44がこれらの間にそれぞれの電極装置56を受容するのを可能にするのに十分なそれぞれの間隔が、2つの隣接する分離板44の間に残されるようになっている。これらの電極装置のうち、図2の最も右側に示された電極装置だけに符号が付けられている。
【0052】
各電極装置56は、これと関連する高電圧源58の一方の端子に接続されている。これらの高電圧源58のうち1つだけが図1に概略的に示されている。分離板44は高電圧源58の他方の端子を介して接地電位にある。
【0053】
変更形において、全ての電極装置56は、ただ1つの共通の高電圧源によって給電されることもできる。
【0054】
各電極装置56は、線状に互いに平行に延びる2つの電極ストリップ60a,60bを有している。これらの電極ストリップは、電極装置56の電界部分62内にグリッド電極64を保持する。グリッド電極の、電極ストリップ60a,60b間に延びる縁部は電極ストリップ60a,60bに対して垂直である。電極装置56のコロナ部分66内で、電極ストリップ60a,60bは、放電電極として作用する複数のコロナ・ワイヤ68を保持している。コロナ・ワイヤ68は、電極ストリップ60a,60bによって規定された平面内に電極ストリップ60a,60bに対して垂直に延びており、互いに同一の間隔を置いて配置されている。
【0055】
電極装置56のコロナ・ワイヤ68の数及び相互の間隔は、オーバースプレー粒子の分離挙動に応じて変化することができる。この模範実施態様では、1つの電極装置56当たり、4つのコロナ・ワイヤ68が設けられている。
【0056】
図1及び2に示されているように、電極装置56は全体として、分離ユニット40の分離板44の延在長さにほぼ相当する延在長さを有している。
【0057】
各分離板の両分離面46及び48には、導電性ワックス様材料又は材料混合物から成るそれぞれの層70が設けられている。導電性ワックス様材料又は材料混合物は、分離剤として作用し、分離されたオーバースプレーが分離板44の分離面46,48上に堆積するのを防止する。層70はそれぞれ0.2mm〜2mm厚である。実際には1mm厚の層70が好都合であることが判っている。
【0058】
ワックス様材料という用語はここでは、分離装置38の作業温度でプラスチック稠度(plastic consistency)を有する材料を表すために使用される。分離剤は好ましくは作業温度で混練可能又は展延可能である。ワックス様材料は従って、分離装置38の作業温度で比較的柔軟ではあるものの、実質的に寸法安定であることが望ましく、また、流動挙動を、これが存在するとしても、極めて制限された状態でのみ呈することが望ましい。分離装置38の作業温度は、一般に28℃未満であるが、用途に応じてこれよりも高くてもよい。
【0059】
ここで、粘度が作業温度を上回る温度でさらに減少し且つ作業温度のときよりも作業温度を上回る温度において低い材料が選択される。
【0060】
実際には、例えばグリース、特にパラフィン、石けん、ワックス、及びゲルが、分離剤として有用であることが判っている。パラフィンとしては、ワセリンを用いて良好な結果を達成することが可能である。ワックスは、天然源からも合成的にも製造されることができ、いくつかの機械物理特性に従って定義されることができる。ワックスという用語は具体的にはここでは、分離装置40の作業温度で混練可能であり、より高い温度で分解することなしに溶融し、溶融点を僅かに上回ると粘度が低くなり、すなわち僅かに液状になる材料を表すために使用される。
【0061】
分離剤の導電率は、本質的に電荷が流れることができるようになっており、好ましくは50〜5000μS/cm、特に1000〜3000μS/cmである。必要な場合には、分離剤の導電率は、添加される物質、例えば塩で調節されることができる。
【0062】
分離ユニット40に加えて、分離装置42は分離剤再生装置72を有している。分離剤再生装置72は分離剤再生領域54内に配置されている(図1参照)。
【0063】
分離剤再生装置72はキャリッジ74を含んでいる。キャリッジ74はレール対76上を動くことができる。レール対76は塗装ブース2の長手方向に延びているので、キャリッジ74は分離ユニット40全体に沿って移動することができる。キャリッジ74はモータ/制御ユニット78によって駆動される。モータ/制御ユニット78は同時に、伸縮装置80を操作するのにも役立ち、伸縮装置80はキャリッジ74によって一緒に運ばれる。伸縮装置80によって、水平方向に延びるレールプロファイル(rail profile)82を鉛直方向に昇降させることができる。このことは、対応する複矢印によって図1に示されている。レールプロファイル82は断面が分離ユニット40のガイドレール52に対応する。伸縮装置80は、キャリッジ74の、分離ユニット40から遠い側に配置されている。
【0064】
図1の複矢印によって示されているように、レールプロファイル82内で締め付けシュー84が移動可能に案内されている。締め付けシュー84もモータ/制御ユニット78によって制御される。キャリッジ74はさらに浸漬浴88を支持する。浸漬浴88は、加熱装置86によって加熱されることができ、分離剤90で充填されている。浸漬浴88内の分離剤90は、分離板44が分離剤90中に浸漬されることによって被覆されるのを可能にする粘度を有するときの温度まで加熱される。キャリッジ74の運動方向に対して水平方向及び垂直方向に延びる、浸漬浴88の縁部は、剥離装置94の剥離エレメント92を支持している(図3に断面が示されている)。これらの剥離エレメント92は縁部に対して長手方向に延びている。剥離エレメント92は浸漬浴88のそれぞれの縁部に旋回可能に設けられており、剥離エレメントの上側剥離縁部96は互いに向かう方向及び互いに離れる方向に剥離位置と解放位置との間で移動することができる。剥離位置では、剥離縁部96間に、分離板44の厚さに相当する間隔が維持される。
【0065】
レール対76の下方には、循環式連続コンベア・ベルト98が設けられる。この循環式連続コンベア・ベルト98も、塗装ブース2の長手方向に延びており、そして捕集領域(詳細には図示されていない)に至っている。
【0066】
上記塗装ブース2は以下のように機能する:
塗装トンネル8内で車体4を塗装すると、そこに位置するブース空気には、塗料オーバースプレー粒子が多く含まれる。これらの粒子はまだ液状且つ/又は粘着性であり、又は、これらは多かれ少なかれ固形であることもある。塗料オーバースプレーを多く含むブース排気は、塗装トンネル8の下側開口14を通って、下側システム領域20の第1の流動領域22内に流入する。この空気は、空気偏向板24,26によって偏向領域28に導かれる。オーバースプレーのいくらかは、空気偏向板24,26上に流れ落ちた分離流体によって既に取り込まれている。ブース空気は、偏向領域28を通って分離装置の分離ユニット40の方向に偏向される。分離ユニット40において、ブース空気は、隣接する分離板44間を通流する。
【0067】
電極装置56のコロナ・ワイヤ68で、それ自体周知の形式でコロナ放電が行われる。その結果、流過するブース排気中のオーバースプレー粒子が効果的にイオン化される。
【0068】
イオン化されたオーバースプレー粒子は、接地電位にある分離板44と、電極装置56の電界区分62内の、分離板44間に延びるグリッド電極64とを通過する。グリッド電極64と分離板44との間に電界が形成される結果として、イオン化されたオーバースプレー粒子は、分離板44上の分離剤層70上に分離し、そして大部分が分離剤層70に付着したままとなる。
【0069】
分離板44から下方に向かって滴下しうるオーバースプレーは、下側偏向板30上を流れる分離流体によって取り込まれ、そして捕集タンク38に導かれる。
【0070】
イオン化されたオーバースプレー粒子のほとんどは、電極装置56のコロナ部分66内で、分離板44上に既に分離されている。しかしながら、コロナ・ワイヤ68と、分離ユニット40のそれぞれの分離板44との間に存在する電界は、グリッド電極64の領域内の電界よりも不均質である。それゆえ、イオン化されたオーバースプレー粒子の指向性のより高い分離が、対応する分離板44で行われる。結果として、コロナ部分66を通過したオーバースプレー粒子は電界部分62内で効果的に分離される。
【0071】
上述のように、分離ユニット40を通流するにつれて清浄化される空気は、所定のコンディショニング後、塗料トンネル8に戻される。
【0072】
分離ユニット40の正確な作業のために、分離板44と電極装置56との間に十分に強力な電界を形成し得ることを保証することが必要である。このことは、分離面上の分離済み塗料オーバースプレーのある程度の層厚までしか可能ではない。なぜならば、このような層は絶縁効果を有するからである。蓄積されたオーバースプレー層の絶縁効果の強さは、対応するコロナ電流を発生させる分離ユニット40の所要電流によって定められることができる。コロナ電流は時間とともに減少する。
【0073】
さらに、分離されたオーバースプレーに由来する固形粒子及び結合剤成分が、分離剤層70の表面から分離剤中に移動する。所定の作業時間後、固形粒子が分離面46,48まで移動してそこに堆積するおそれがある。このことは、分離ユニット40の機能能力に実質的な悪影響を及ぼし、高いコストのかかる清浄化及びメンテナンスを必要とすることになる。
【0074】
従って、分離されたオーバースプレーの絶縁効果があまりにも大きく、且つ/又は、分離ユニットの完全な作業を保証することがもはやできない場合、目下オーバースプレーが付着している分離剤層70が分離板44から除去され、そして分離板44の分離面46,48には、新しい未使用の分離剤が施される。
【0075】
これを目的として、分離剤再生装置72の伸縮装置80に設けられたレールプロファイル82が、清浄化されるべき分離板44のガイドレール52と整合させられる位置にもたらされる。この目的のために、一方ではキャリッジ74がレール対76上の対応する位置に動かされ、他方では伸縮装置80が相応に伸長させられる。
【0076】
締め付けシュー84が、レールプロファイル82内で、前方に向かって分離板44の方向に動かされ、その場所で分離板と係合する。ガイドレール52内の分離板44の上述のロック状態は解放される。締め付けシューは今や再び伸縮装置80の方向に戻され、分離板44を引っ張って進む。レールプロファイル82と対応するガイドレール52との間の間隔は、分離板44がそのローラ50上で、容易にガイドレール52から進出してレールプロファイル82内に進入すべく十分に小さい。
【0077】
分離板44は、レールプロファイル82内で、剥離装置94を有する浸漬浴88の上方にある位置に動かされる。分離板44のこのような位置は図1において破線によって示されている。
【0078】
剥離装置94の剥離エレメント92は剥離位置にもたらされ、分離板44は伸縮装置80によって、浸漬浴88内の加熱された分離剤90中に浸漬される。このことは図3Aに示されている。
【0079】
この図に見ることができるように、分離板44は下方に向かう行程において、剥離エレメント92の傍らを移動する。結果として、分離板44に付着している分離剤層70は、分離剤層上に分離されたオーバースプレー100とともに、分離板44から剥離され、そしてコンベア・ベルト98上に落下する。このことは図3A〜3Dには示されていない。
【0080】
上述のように、オーバースプレーとともに分離板44から落下した分離剤は、コンベア・ベルト98によって捕集領域に搬送される。その場所から、分離剤は処理のために供給される。これを目的として、材料混合物を加熱することができ、例えば分離剤を液状にすることができる。結果として得られた、液化された分離剤とオーバースプレーとの材料混合物は次いで例えば適宜のフィルタによって除去されることができる。
【0081】
代替的に、分離剤/オーバースプレー混合物を場合によっては加圧下で遠心分離することもでき、そして結果として得られた相をその後、互いに分離することができる。こうして清浄化された分離剤は次いで、対応する熱供給によって流動可能な状態に保たれ、循環させて浸漬浴88に戻るように案内されることができる。濾過により除去されたオーバースプレーは、それ自体周知のように、必要な場合には更なる処理のために、又は廃棄のために供給されることができる。
【0082】
図1において破線によって示された最も下側の位置で、分離板44からは今や、オーバースプレー100が付着した使用済み分離剤層70が取り除かれ、そして分離板44は浸漬浴88内の分離剤90中に浸漬される。
【0083】
剥離エレメント92は今や解放位置にもたらされる(図3B及び3C参照)。
【0084】
伸縮装置80をここで使用して分離板44を再び上昇させ、そしてこれを分離剤90から進出させる(図3D参照)。分離板44に付着した分離剤は、浸漬浴よりも低温の環境下で素早く冷めるので、この分離剤は、分離剤浴を出たときにはその作業粘度にあり、そして分離板44が浸漬浴88から完全に進出したときには、新しい分離剤層70として分離板44に付着している。
【0085】
新しい空荷の分離剤層70を今や施された分離板44は、伸縮装置80を相応に伸長させ、そして締め付けシュー84を分離ユニット40の方向に動かすことによって、分離板と関連する分離ユニット40のガイドレール52内に戻される。分離板44はそのガイドレール52の作業位置を占めると、そこでロックされ、締め付けシュー84が分離板44を解放する。次いで、この動作を、オーバースプレーが付着した分離剤を取り除かなければならない別の分離板44で繰り返すことができる。
【0086】
変更形では、分離剤再生装置は複数の浸漬浴88と、レールプロファイル82を備えた複数の伸縮装置80とを含んでいるので、複数の分離板44を同時に処理することができる。
【0087】
第2の模範実施態様として、図4は、分離装置1042が関連付けられる塗装ブース1002を示している。図1〜3に対応する構成部分は同じ符号の数字に1000を足したものを有している。
【0088】
塗装ブース2とは異なり、下側システム領域1020内に偏向領域はない。代わりに、空気偏向板1024及び1026によって形成された流動領域1022に続いて、分離ユニット1040が配置された分離チャンバ1034が配置されている。下側ブース開口1014はここでは空気偏向板1024及び1026の上端部の間に延びている。これらの空気偏向板1024及び1026は次いで、下方に分離チャンバ1034に向かって互いに離れる方向に延びている。
【0089】
下側ブース開口1014は分離シート1102を側方に有する。これらの分離シート1102は、外側に向かって軽く下向きに傾斜しており、その外側は、捕集通路1102aを形成するように成形されている。分配通路1036から分離シート1102へ分離流体を供給することができる。これらの分配通路1036は、空気偏向板1024及び1026に隣接して配置されている。
【0090】
この模範実施態様の場合、ブース空気は頂部から底部へ分離ユニット1040を通って流れる。それゆえ電極装置1056は、コロナ部分1066が頂部にあり、そして電界部分1062が底部にあるように相応に配置されている。
【0091】
分離板1044は水平方向のガイドレール内で案内されるのではなく、保持ユニット1104内に取り外し可能に懸架される。保持ユニット1104は、空気偏向板1024及び1026の下端部の下方に短い距離を置いて配置されている。保持ユニット1104は、分離板1044を任意に保持又は解放するように制御されることができる。
【0092】
図1及び3に示された分離剤再生装置72とは異なり、分離剤再生装置72は伸縮装置を含まない。その代わりに、水平方向の回転軸線を中心として回転可能な被駆動締め付けローラ対1106が、分離板1044を昇降させるために設けられている。締め付けローラ対1106は、分離板1044の縁部領域を搬送位置において、対向する分離面1046,1048上で締め付け、そして相応の方向に回転することによってこれらの分離板を昇降させることができる。側方のガイドレール1101が、分離板1044が横方向で案内されるのを保証する。
【0093】
或いは、分離板1044の縁部領域には例えば付加的に溝を形成するか又は切欠きを設けることができ、そして締め付けローラ対1106の代わりに溝又は切欠き内に係合するピニオンを使用して、分離板1044の搬送をフィルムの搬送と同様に行うことも可能である。この場合には、分離板1044が鉛直方向のガイドレール1101なしで横方向に案内されるのを保証することもできる。
【0094】
キャリッジ1074を塗装ブース1002の長手方向に動かすときに、締め付けローラ対1106が妨害しないようにするために、締め付けローラ対1106をさらに水平方向において側方に分離ユニット1040と並ぶように動かすこともできる。
【0095】
従って、分離板1004が清浄化される必要がある場合には、締め付けローラ対1106は搬送位置に動かされ、分離板1044は保持ユニット1104から解放され、そして締め付けローラ対1106の相応の回転によって、下方に向かって浸漬浴1088内に動かされる。剥離エレメント1092はここで剥離位置を占める。
【0096】
その他の点では、分離板1044は、図1〜3を参照しながら上述した手順と同様に、清浄化され、そして新たに分離剤で被覆される。
【0097】
第3の模範実施態様として、図5には、分離装置2042が関連付けられる塗装ブース2002が示されている。図1〜3に対応する構成部分は同じ符号の数字に2000を足したものを有している。
【0098】
基本構造は、図1に示された塗装ブース2に相当する。しかしこれとは異なり、分離剤再生領域2054は、分離ユニット2040の上方に配置されている。これを目的として、分離ユニット2040の上方の右側及び左側に、それぞれ水平方向レール2108が設けられており、この水平方向レール2108は、変更された分離剤再生装置2110を支持して、この分離剤再生装置が塗装ブース2002の長手方向に移動できるようになっている。
【0099】
分離剤再生装置2110は、剥離エレメント2092を有する下方に向いた剥離装置2094を含んでいる。剥離エレメント2092のうちの1つだけを図5において見ることができる。これらの剥離エッジ(図5には示されていない)は下方に向いている。さらに、複数のノズル2114を含むノズル装置2112が設けられている。これらのノズルは破線で描かれた円として示されており、貫通スロットの両側に配置されている。この貫通スロットを通して分離板2044を案内することができる。図5では、ノズルのうちの1つだけに符号が付けられている。
【0100】
分離板2044を昇降させるために、剥離装置2092の下方に配置された2つの締め付けローラ対2106aと、ノズル装置2112の上方に配置された2つの締め付けローラ対2106bとが設けられているので、下側締め付けローラ対2106aから上側締め付けローラ対2106bへ且つその逆に分離板を移すことができる。ここでは下側締め付けローラ対2106aの下方に保持ユニット2104が配置されている。
【0101】
清浄化されるべき分離板2044を昇降させるために、分離剤再生装置2110は先ず分離板2044の上方の位置に移される。分離板2044は次いで、下側締め付けローラ対2106aによって把持され、そして保持ユニット2104が分離板2044を解放した後に上方に向かって搬送される。剥離エレメント2092はここで剥離位置を占めるので、オーバースプレーが付着した分離剤は分離板2044から剥離されてコンベア・ベルト2098上に落下する。
【0102】
分離板2044から分離剤が取り除かれた後、分離板は下方に戻される。このときノズル装置2112が作動させられる。ノズル2114は、加熱可能な分離剤リザーバ2116から分離剤を供給され、分離剤を分離板2044の両分離面2046,2048上に噴霧又は噴射する。必要な場合には、ノズル2114を加熱することにより、分離剤を、噴霧又は噴射することのできる温度に保つこともできる。
【0103】
ここで具体的には図示されていない変更形において、ノズル装置2112の代わりに、ローラ装置又はドクタ・ブレード装置(doctor-blade arrangement)が設けられており、これらの装置によって、ローラ又はドクタ・ブレードにより分離板2044に分離剤を付与することができる。
【0104】
相応のローラ装置の場合、例えばその都度分離剤浴内に浸かるそれぞれの回転ローラが、分離板2044のそれぞれの側に配置されることが可能である。分離板2044はこれらの回転ローラの間に押し通される。回転ローラは、分離面2046及び2048が分離剤で均一に湿潤されるように配置されている。
【0105】
相応のドクタ・ブレード装置の場合、分離剤は好ましくは、ドクタ・ブレードによってペースト状に分離面2046及び2048に付与される。
【0106】
作業時間、つまりその作業時間にわたって、新たに分離剤で被覆された分離板44,1044,2044を使用することができ、そしてその作業時間後に、分離された固形物を有する既存の分離剤が除去され、そして空荷の分離剤が分離板44,1044,2044に付与されるような作業時間は、とりわけ、オーバースプレーの挙動に依存する。実際には2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、又は数日間の作業時間が可能であることが判っている。
【0107】
図6A〜6D及び図7A〜7Cは、分離剤再生装置72の変更形としての分離剤再生装置3118を示している。これらの図面において、分離剤再生装置72の構成部分に相当する構成部分は、同じ符号の数字に3000を足したものを有している。図示の分離板3044の分離面3046及び3048は、図6Aにおいてのみ符号が付けられている。
【0108】
分離剤再生装置3118において、浸漬浴3088及び剥離装置3094は、塗装ブース2の長手方向で見て連続してキャリッジ3074上に配置されている。これを目的として、キャリッジ3074は分離剤再生装置72のキャリッジ74よりも相応に大きい寸法を有している。
【0109】
剥離装置3094は分離剤及びオーバースプレーのための受容領域3120を含んでいる。受容領域3120は剥離エレメント3092の下方に配置されており、保護ボックス3122を形成する4つの側壁3124によって仕切られている。保護ボックス3122は頂部及び底部で開いている。
【0110】
キャリッジ3072はさらに貫通口3126を有している。この貫通口3126は、保護ボックス3122の内側断面を補完する。
【0111】
伸縮装置3080は位置決めキャリッジ3128上に位置している。位置決めキャリッジ3128はキャリッジ3074上で、キャリッジの運動方向に対して平行に動くことができる。位置決めキャリッジ3128は、図6及び7において概略的に破線で示されているにすぎない。
【0112】
分離剤再生装置3118において、分離板3044は、レールプロファイル3082内で、剥離装置3094を備えた保護ボックス3122の上方にある位置に移動される。これを目的として、位置決めキャリッジ3128はキャリッジ3074上の相応の位置に動かされる。
【0113】
剥離装置3094の剥離エレメント3092は先ず解放位置にある。伸縮装置3080を使用して、分離板3044を、下方に向かって保護ボックス3122内の剥離エレメント3092の間に、剥離エレメント3092が分離剤層3070又はこれに付着したオーバースプレー3100と接触することなしに動かす。このことは図6Aに示されている。
【0114】
分離板3044がその最も低い位置を占めると(図6Bに示されている)、剥離エレメント3092は剥離位置にもたらされる。
【0115】
分離板3044は次いで、伸縮装置3080によって上方に向かって戻され、そしてその上方へ向かう行程で、剥離エレメント3092の傍らを移動する。剥離エレメントは今や、それらの剥離エッジ3096が分離板3044に当て付けられた状態にある。分離板3044に付着した分離剤層3070は、これらに付着したオーバースプレー3100と一緒に、こうして分離板3044から剥離され、そして保護ボックス3122と、キャリッジ3074に設けられた貫通口3126とを通して、図6A〜6Dには示されていないコンベア・ベルト98,1098,2098上に落下する。このことは材料片3130によって示されている(図6C及び6D参照)。
【0116】
使用済み分離剤層3070及びこれに付着したオーバースプレー3100が取り除かれた分離板3044は今や剥離装置3094の上方の最も高い位置に位置している。
【0117】
位置決めキャリッジ3128は次いで、分離板3044が浸漬浴3088の上方に配置されるような位置に動かされる(図6D及び7A参照)。分離板3044は先ず、伸縮装置3080によって、分離剤3090を含有する浸漬浴3088内に浸漬され(図7B参照)、次いでこれから戻される(図7C参照)。
【0118】
すでに上述したように、分離板3044に付着した分離剤は、浸漬浴よりも低温の環境下で素早く冷めるので、分離剤浴を出たときにはその作業粘度にあり、そして分離板3044が浸漬浴3088から完全に進出したときには、新しい分離剤層3070として分離板3044に付着している。
【0119】
図8は、図1及び図3〜7に示された剥離装置94,1094,2094及び3094の代わりとして用いることができる変更形としての剥離エレメント4092を示している。
【0120】
剥離エレメント4092は、剥離縁部4096に沿って延びる空気出口スロット4132を含んでいる。この空気出口スロット4132は圧縮空気接続物4134と連通している。この圧縮空気接続物4134によって剥離エレメント4092に圧縮空気源4136から圧縮空気を供給することができる。圧縮空気は次いで空気出口スロット4132から放出される。このことは図8の矢印によって示されている。この圧縮空気は、分離剤が、加熱された圧縮空気と接触するとより液状になるような温度に、任意に加熱されることができる。
【0121】
このようなタイプの剥離エレメント4092が、オーバースプレーを多く含む分離剤層を剥離するために使用されるならば、剥離縁部4096は、それぞれの分離板44,1044,2044又は3044ともはや機械的に接触する必要はなくなる。その代わりに、空気出口スロット4132を有するそれぞれの剥離縁部4096と分離板44,1044,2044又は3044との間には所定の間隔が残されてもよい。オーバースプレーを多く含む分離剤層はいわば、発生した空気流によって分離板44,1044,2044又は3044から吹き飛ばされる。残された間隔は、分離剤及びオーバースプレーと直接に接触する剥離エレメント92,1092,2092,又は3092と比較して、剥離エレメント4092の汚染が低減されることを可能にする。
【0122】
分離板44,1044,2044又は3044から、オーバースプレーを多く含む分離剤層を除去するための別の選択肢は、分離剤を加熱によって変化させて分離剤がそれぞれの分離板44,1044,2044又は3044からオーバースプレーとともに流れ去る液体状態にすることにある。このことは、剥離エレメント92,1092,2092,3092又は4092の代わりに、又はこれに加えて、例えば加熱エレメント又はIR線への曝露を利用することによって行うことができる。分離板44,1044,2044又は3044の誘導加熱も考えられる。
【0123】
図9〜11において、剥離装置の更なる模範実施態様が符号5094によって示されている。上記剥離装置94,1094,2094及び3094では、分離板44,1044,2044及び3044が、それぞれ定置の剥離エレメント92,1092,2092及び3092に対して動かされるのに対して、剥離装置5094では、関連する剥離エレメント5092a,5092bが、清浄化されるべき分離板5044に対して頂部から底部に動かされる。
【0124】
図1〜3に示された分離剤再生装置72を参照しながら、以下に剥離装置5094について説明する。しかしながら、分離剤再生装置72は、剥離装置1094,2094及び3094の代わりに、分離剤再生装置1072,2110又は3118において相応に使用されることもできる。便宜上、分離剤再生装置72のレールプロファイル82だけが図9及び10に示されている。
【0125】
剥離装置5094は支持フレーム5138を含んでいる。支持フレーム5138はキャリッジ74によって一緒に運ばれ、レールプロファイル82の最も高い位置の上方に静止して配置されている。
【0126】
支持フレーム5138は、支持フレーム5138の組立状態においてレールプロファイル82の長手方向軸線を通って延びる鉛直方向平面に対して対称的である。支持フレーム5138は、この平面に対して垂直に延びる2つの外側横方向ビーム5140を含んでいる。これらの横方向ビーム5140の間に、2つの外側長手方向ビーム5142a,5142b及び2つの内側連結ビーム5144が延びている。このことは図11において特に明らかに示されている。
【0127】
長手方向ビーム5142a,5142bは、2つの剥離エレメント5092a,5092bのそれぞれ1つに対してそれぞれ1つの上昇/下降装置5146a,5146bを支持している。各上昇/下降装置5146a,5146bは、長手方向ビーム5142に対して平行に延びる回転軸5150a,5150bを駆動する。回転軸5150a,5150bはそれぞれの端部で、それぞれの駆動ブロック5152a,5152b内に延びている。駆動ブロック5152a,5152bはそれぞれの線状鎖5154a,5154bを動かす。上昇/下降装置5146aは従って2つの線状鎖5154aを有しており、そして上昇/下降装置5146bは従って2つの線状鎖5154bを有している。上昇/下降装置5146a,5146bはこうして、剥離エレメント5092a,5092bのための線状鎖駆動装置を形成する。
【0128】
駆動ブロック5152a,5152bが回転軸5150a,5150bの回転運動を周知の形式で線状鎖5154a,5154bに伝達するので、これらの線状鎖は、回転軸5150a,5150bの回転方向に従って駆動される。線状鎖5154a,5154bは、力を引張り方向及び押し出し方向の両方に伝達できるように周知の形式で構成されている。
【0129】
2つの線状鎖5154aのそれぞれは一方の端部で支持フレーム5138に連結され且つ他方の端部で剥離エレメント5092aに連結されている。相応に、2つの線状鎖5154bのそれぞれは一方の端部で支持フレーム5138に連結され且つ他方の端部で剥離エレメント5092bに連結されている。
【0130】
上昇/下降装置5146aの駆動ブロック5152aは、長手方向ビーム5142a上において、長手方向ビーム5142b上の駆動ブロック5152b同士よりも、互いに近接して配置されているので、線状鎖5154a及び5154bは、横方向ビーム5140の方向で見て互いにずらされた状態で延びている。このことは図11において特に明らかに示されている。
【0131】
線状鎖5154a,5154bは、支持フレーム5138の上方の駆動ブロック5152a,5152bからそれぞれ鉛直方向下向きに、アイドル・ローラ(idle roller)5156a,5156bを介して、それぞれ関連する剥離エレメント5092a及び5092bに向かって走行する。
【0132】
剥離エレメント5092a及び5092bは、同一の構造を有しており、以下、図9において右側に示された剥離エレメント5092bの例を用いて説明される。剥離エレメント5092aと5092bとの間に配置された分離板5044が基準として用いられる。
【0133】
剥離エレメント5092bは剥離シート5158を含んでおり、剥離シート5158は、使用時には水平方向に延び、そして分離板5044を両側で超えて張り出すのに十分に長い。剥離シート5158は、分離板5044に向かって所定の角度を成して下向きに延びる固定用部分5160を含み、そして傾斜がより少ない縁部分5162に移行する。この縁部分は最後に剥離縁部5096に至る。
【0134】
剥離シート5158を保持ストリップ5166に固定用部分5160を介してねじ固定するために、締め付けストリップ5164が使用される。保持ストリップ5166は、分離板5044から遠い縁部で、隣接して配置された2つの鉛直方向の支持板5168に固定されている(図10も参照)ので、保持ストリップ5166と分離板5044との間に間隙が残る(図9参照)。
【0135】
保持ストリップ5164は剥離シート5158から遠い側で剥離ストリップ5170を支持している。剥離ストリップ5170は剥離エレメント5092bの剥離効果を高める。
【0136】
支持板5168は、分離板5044に面した側で複数の電磁石5172を支持している。これらの電磁石は、長手方向に配置されていて、分離板5044の対向する側に配置された剥離エレメント5092aの対応電磁石と協働することができる。
【0137】
支持板5168は上縁領域でカップリング・ウェブ5174に連結されている。このカップリング・ウェブ5174を介して、線状鎖5154bは剥離エレメント5092bに結合されている。
【0138】
剥離エレメント5092が分離板5044に沿って走行できるように、カップリング・ウェブ上に4つのローラ5176が回転可能に取り付けられている。
【0139】
剥離シート5158の代わりに、図8に示された剥離エレメント4092の事例のように、剥離エレメント5092内には、空気流を使用する剥離構成部分が存在していてもよい。
【0140】
剥離装置5094は下記のように機能する:
最初に、剥離エレメント5092a及び5092bの電磁石5172が不活化される。分離剤及び分離剤上に分離しているオーバースプレーが取り除かれるべき分離板5044は、締め付けシュー84によってレールプロファイル82内に引き込まれるので、分離板5044は剥離エレメント5092aと5092bとの間に位置するようになる(図9参照)。必要な場合には、剥離エレメント5092a,5092bを互いに所定の間隔を置いて保持することができるので、分離板5044がレールプロファイル82内に走入する時に、剥離エレメント5092a又は5092bに衝突するおそれはない。これを目的として、剥離エレメント5092a,5092bは、例えば少なくともレールプロファイル82の下流側の領域において、側方のガイドレール内で走行する。これらのガイドレールは、2つの剥離エレメント5092a,5092bを互いに離反する方向に案内する。
【0141】
分離板5044がレールプロファイル82内において所望の位置を占めると、電磁石5172が作動させられる。剥離エレメント5092a,5092bはこうして分離板5044に引き付けられる。
【0142】
上昇/下降装置5146aの電動モータ5148は次いで、剥離エレメント5092a,5092bが線状鎖5154a,5154bによって分離板5044に沿って下方に向かって押されるように作動させられる。剥離エレメント5092a,5092bの剥離シート5158は、磁力によって分離板5044との不変の接触状態を保たれ、剥離エレメント5092a,5092bのローラ5176は分離板5044の分離面5046及び5048上を転動する。
【0143】
剥離エレメント5092a,5092bの下方に向かう行程において、分離剤が、分離剤上に分離されたオーバースプレーとともに、分離板5044の分離面5046及び5048から掻き取られる。
【0144】
剥離エレメント5092a,5092bが最も低い位置に達すると、電動モータ5148は反対方向に操作されるので、剥離エレメント5092a,5092bは、線状鎖5154a及び5154bによって上方に向かって引き戻される。
【0145】
分離板5044にまだ付着しているおそれのある分離剤残留物は、分離ストリップ5170によって検出されて除去されることができる。
【0146】
分離板5044上の分離剤層の再生は、その他の点では図1〜8を参照して上述したように行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆システム、特に塗装システムの、オーバースプレーを多く含むブース排気から該オーバースプレーを分離する方法であって、
該オーバースプレーが空気流によって取り込まれて静電作業式分離装置(42;1042;2042)に搬送され、ここで、固形物の少なくとも大部分が少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)上で前記オーバースプレーから分離される、方法において、
導電性材料又は材料混合物が分離剤として使用され、該分離剤が前記分離装置(42;1042;2042)の少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に付与され且つ前記分離装置(42;1042;2042)の作業温度でワックス様の稠度を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記分離剤の粘度が、前記作業温度で2000mPa・sよりも大きく、好ましくは2500mPa・sよりも大きく、より好ましくは3000mPa・sよりも大きく、特に好ましくは4000mPa・sよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離剤が、前記作業温度で固形パラフィンの稠度と類似した稠度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離剤が前記作業温度でプラスチック稠度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記分離剤が前記作業温度で混練可能又は展延可能であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記作業温度が約28℃未満であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分離剤の粘度が、前記作業温度よりも高い温度で減少することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記分離剤が前記分離された固形物に対して実質的に不活性であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分離剤が、グリース、パラフィン、石けん、ワックス、又はゲルを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)上に存在する、分離された固形物を有する分離剤が作業時間後に除去され、空荷の分離剤が前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に付与されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
分離された固形物を有する分離剤の前記除去が剥離エレメント(92;1092;2092;3092;4092;5092)によって行われ、このために、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)と、前記剥離エレメント(92;1092;2092;3092;4092;5092)とが互いに対して移動せしめられることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
空荷の分離剤の前記付与が、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)を、分離剤で充填された浸漬浴(88;1088;2088;3088)内に移動させ、再び該浸漬浴から外に移動させることによって行われることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
空荷の分離剤の前記付与が、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)上に前記分離剤を噴霧又は噴射することによって行われることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記作業時間が、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、又は数日間であることを特徴とする、請求項10から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
塗装システムの、オーバースプレーを多く含むブース排気から該オーバースプレーを分離するための分離装置であって、
a) 少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)であって、該少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に沿って前記ブース排気が搬送されることができ、高電圧源(58;1058;2058)の一方の端子に接続される少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)と;
b) 電極装置(56;1056;2056)であって、空気流中に配置され、前記分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)と関連付けられ、且つ前記高電圧源(58;1058;2058)の他方の端子に接続される電極装置(56;1056;2056)と
を有する分離装置において、
c) 導電性材料又は材料混合物が分離剤として前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に付与され且つ当該分離装置(42;1042;2042)の作業温度でワックス様の稠度を有することを特徴とする、分離装置。
【請求項16】
前記分離剤の粘度が、前記作業温度で2000mPa・sよりも大きく、好ましくは2500mPa・sよりも大きく、より好ましくは3000mPa・sよりも大きく、特に好ましくは4000mPa・sよりも大きいことを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記分離剤が、前記作業温度で固形パラフィンの稠度と類似した稠度を有することを特徴とする、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
前記分離剤が前記作業温度でプラスチック稠度を有することを特徴とする、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項19】
前記分離剤が前記作業温度で混練可能又は展延可能であることを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記分離剤の粘度が、前記作業温度よりも高い温度で減少することを特徴とする、請求項15から19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記分離剤が前記分離された固形物に対して実質的に不活性であることを特徴とする、請求項15から20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記分離剤が、グリース、パラフィン、石けん、ワックス、又はゲルを含むことを特徴とする、請求項15から21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
当該分離装置が分離剤再生装置(72;1072;2110;3118)を含み、該分離剤再生装置(72;1072;2110;3118)によって、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)上に存在する、分離された固形物を有する分離剤が除去されることができ、且つ/又は、空荷の分離剤が前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に付与されることができることを特徴とする、請求項15から22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記分離剤再生装置(72;1072;2110;3118)が少なくとも1つの剥離エレメント(92;1092;2092;3092;4092;5092)を含み、該剥離エレメント(92;1092;2092;3092;4092;5092)が前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に対して移動せしめられることができることを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記少なくとも1つの剥離エレメント(5092)が線状鎖駆動装置(5146)に結合されていることを特徴とする、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
保持手段(5172)が設けられており、該保持手段によって、前記少なくとも1つの剥離エレメント(5092)が前記少なくとも1つの分離面(5046,5048)と少なくとも一時的に接触した状態で保持されることができることを特徴とする、請求項24又は25に記載の装置。
【請求項27】
前記保持手段(5172)が、磁石(5172)、特に電磁石(5172)を含むことを特徴とする、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記少なくとも1つの剥離エレメント(4092)が、少なくとも1つの出口(4132)、特に出口スロットを含み、該出口(4132)から、流体、特に圧縮空気が出ることができることを特徴とする、請求項24から27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記分離剤再生装置(72;1072;3118)が、分離剤(90;1090;3090)で充填された浸漬浴(88;1088;3088)と、運搬装置(80,82,84;1106;3080,3082,3084)とを含み、該運搬装置(80,82,84;1106;3080,3082,3084)によって、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;3046,3048)が前記浸漬浴(88;1088;3088)内に移動せしめられ且つ再び前記浸漬浴の外に移動せしめられることができることを特徴とする、請求項23から28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記分離剤再生装置(2110)がノズル装置(2112)を含み、該ノズル装置(2112)によって、前記分離剤が前記少なくとも1つの分離面(2046,2048)上に噴霧又は噴射されることができることを特徴とする、請求項23から29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)が板状の分離エレメント(44;1044;2044;3044;5044)の外面であることを特徴とする、請求項15から30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
前記電極装置(56;1056;2056)がコロナ部分(66;1066;2066)と電界部分(62;1062;2062)とを有しており、前記コロナ部分(66;1066;2066)が、前記オーバースプレーを多く含むブース空気の流れ方向において前記電界部分(62;1062;2062)の上流側に配置されていることを特徴とする、請求項15から31のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
物体、特に車体を被覆、特に塗装するためのシステムであって、
a) 被覆ブース(2;1002;2202)であって、該被覆ブース(2;1002;2202)内では物体(4;1004;2004)が被覆材料によって作用されることができ、空気流が、該被覆ブースを通って導かれることができ、結果として生じる前記被覆材料のオーバースプレー粒子を取り込み且つ除去する、被覆ブース(2;1002;2202)と;
b) 静電作業式分離装置(42;1042;2042)と
を有するシステムにおいて、
c) 前記静電作業式分離装置(42;1042;2042)が、請求項15から32のいずれか1項に記載のように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項1】
被覆システム、特に塗装システムの、オーバースプレーを多く含むブース排気から該オーバースプレーを分離する方法であって、
該オーバースプレーが空気流によって取り込まれて静電作業式分離装置(42;1042;2042)に搬送され、ここで、固形物の少なくとも大部分が少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)上で前記オーバースプレーから分離される、方法において、
導電性材料又は材料混合物が分離剤として使用され、該分離剤が前記分離装置(42;1042;2042)の少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に付与され且つ前記分離装置(42;1042;2042)の作業温度でワックス様の稠度を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記分離剤の粘度が、前記作業温度で2000mPa・sよりも大きく、好ましくは2500mPa・sよりも大きく、より好ましくは3000mPa・sよりも大きく、特に好ましくは4000mPa・sよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離剤が、前記作業温度で固形パラフィンの稠度と類似した稠度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離剤が前記作業温度でプラスチック稠度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記分離剤が前記作業温度で混練可能又は展延可能であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記作業温度が約28℃未満であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分離剤の粘度が、前記作業温度よりも高い温度で減少することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記分離剤が前記分離された固形物に対して実質的に不活性であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分離剤が、グリース、パラフィン、石けん、ワックス、又はゲルを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)上に存在する、分離された固形物を有する分離剤が作業時間後に除去され、空荷の分離剤が前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に付与されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
分離された固形物を有する分離剤の前記除去が剥離エレメント(92;1092;2092;3092;4092;5092)によって行われ、このために、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)と、前記剥離エレメント(92;1092;2092;3092;4092;5092)とが互いに対して移動せしめられることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
空荷の分離剤の前記付与が、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)を、分離剤で充填された浸漬浴(88;1088;2088;3088)内に移動させ、再び該浸漬浴から外に移動させることによって行われることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
空荷の分離剤の前記付与が、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)上に前記分離剤を噴霧又は噴射することによって行われることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記作業時間が、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、又は数日間であることを特徴とする、請求項10から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
塗装システムの、オーバースプレーを多く含むブース排気から該オーバースプレーを分離するための分離装置であって、
a) 少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)であって、該少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に沿って前記ブース排気が搬送されることができ、高電圧源(58;1058;2058)の一方の端子に接続される少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)と;
b) 電極装置(56;1056;2056)であって、空気流中に配置され、前記分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)と関連付けられ、且つ前記高電圧源(58;1058;2058)の他方の端子に接続される電極装置(56;1056;2056)と
を有する分離装置において、
c) 導電性材料又は材料混合物が分離剤として前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に付与され且つ当該分離装置(42;1042;2042)の作業温度でワックス様の稠度を有することを特徴とする、分離装置。
【請求項16】
前記分離剤の粘度が、前記作業温度で2000mPa・sよりも大きく、好ましくは2500mPa・sよりも大きく、より好ましくは3000mPa・sよりも大きく、特に好ましくは4000mPa・sよりも大きいことを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記分離剤が、前記作業温度で固形パラフィンの稠度と類似した稠度を有することを特徴とする、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
前記分離剤が前記作業温度でプラスチック稠度を有することを特徴とする、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項19】
前記分離剤が前記作業温度で混練可能又は展延可能であることを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記分離剤の粘度が、前記作業温度よりも高い温度で減少することを特徴とする、請求項15から19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記分離剤が前記分離された固形物に対して実質的に不活性であることを特徴とする、請求項15から20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記分離剤が、グリース、パラフィン、石けん、ワックス、又はゲルを含むことを特徴とする、請求項15から21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
当該分離装置が分離剤再生装置(72;1072;2110;3118)を含み、該分離剤再生装置(72;1072;2110;3118)によって、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)上に存在する、分離された固形物を有する分離剤が除去されることができ、且つ/又は、空荷の分離剤が前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に付与されることができることを特徴とする、請求項15から22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記分離剤再生装置(72;1072;2110;3118)が少なくとも1つの剥離エレメント(92;1092;2092;3092;4092;5092)を含み、該剥離エレメント(92;1092;2092;3092;4092;5092)が前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)に対して移動せしめられることができることを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記少なくとも1つの剥離エレメント(5092)が線状鎖駆動装置(5146)に結合されていることを特徴とする、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
保持手段(5172)が設けられており、該保持手段によって、前記少なくとも1つの剥離エレメント(5092)が前記少なくとも1つの分離面(5046,5048)と少なくとも一時的に接触した状態で保持されることができることを特徴とする、請求項24又は25に記載の装置。
【請求項27】
前記保持手段(5172)が、磁石(5172)、特に電磁石(5172)を含むことを特徴とする、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記少なくとも1つの剥離エレメント(4092)が、少なくとも1つの出口(4132)、特に出口スロットを含み、該出口(4132)から、流体、特に圧縮空気が出ることができることを特徴とする、請求項24から27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記分離剤再生装置(72;1072;3118)が、分離剤(90;1090;3090)で充填された浸漬浴(88;1088;3088)と、運搬装置(80,82,84;1106;3080,3082,3084)とを含み、該運搬装置(80,82,84;1106;3080,3082,3084)によって、前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;3046,3048)が前記浸漬浴(88;1088;3088)内に移動せしめられ且つ再び前記浸漬浴の外に移動せしめられることができることを特徴とする、請求項23から28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記分離剤再生装置(2110)がノズル装置(2112)を含み、該ノズル装置(2112)によって、前記分離剤が前記少なくとも1つの分離面(2046,2048)上に噴霧又は噴射されることができることを特徴とする、請求項23から29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記少なくとも1つの分離面(46,48;1046,1048;2046,2048;3046,3048;5046,5048)が板状の分離エレメント(44;1044;2044;3044;5044)の外面であることを特徴とする、請求項15から30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
前記電極装置(56;1056;2056)がコロナ部分(66;1066;2066)と電界部分(62;1062;2062)とを有しており、前記コロナ部分(66;1066;2066)が、前記オーバースプレーを多く含むブース空気の流れ方向において前記電界部分(62;1062;2062)の上流側に配置されていることを特徴とする、請求項15から31のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
物体、特に車体を被覆、特に塗装するためのシステムであって、
a) 被覆ブース(2;1002;2202)であって、該被覆ブース(2;1002;2202)内では物体(4;1004;2004)が被覆材料によって作用されることができ、空気流が、該被覆ブースを通って導かれることができ、結果として生じる前記被覆材料のオーバースプレー粒子を取り込み且つ除去する、被覆ブース(2;1002;2202)と;
b) 静電作業式分離装置(42;1042;2042)と
を有するシステムにおいて、
c) 前記静電作業式分離装置(42;1042;2042)が、請求項15から32のいずれか1項に記載のように構成されていることを特徴とする、システム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−514160(P2013−514160A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543500(P2012−543500)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007120
【国際公開番号】WO2011/072796
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511056714)アイゼンマン アクチェンゲゼルシャフト (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007120
【国際公開番号】WO2011/072796
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511056714)アイゼンマン アクチェンゲゼルシャフト (15)
【Fターム(参考)】
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