説明

周波数選択方法およびコグニティブ無線システム

【課題】コグニティブ無線システムにおいて利用する周波数を適切に決定する。
【解決手段】DB装置は、周波数ごとのホワイトスペース(WS)を管理しており、周波数ごとのWSベクトル(移動端末位置から東西南北の4方向について干渉領域までの距離)を算出して移動端末に通知する。移動端末は、WSベクトルを参照して、移動方向について最も長い利用可能距離を与える周波数を利用する。利用可能距離算出は、WS境界を種々の方法により補間(三角補間、楕円補間、矩形補間)して求める。移動端末が走行方向をDB装置に通知し、DB装置はこの移動方向に近い2方向についてのみ干渉領域までの距離を通知することも好ましい。また、WSベクトルに2方向の干渉領域が同一であるか異なるものであるかを示す情報を付加し、それに応じて移動端末装置が採用する補間処理方法を変化させることも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コグニティブ無線システムにおける周波数選択技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数の利用効率を高めるために、周囲の電波環境を認識・認知して、無線通信に利用する周波数や無線方式などを無線通信装置が適応的に変更するコグニティブ無線の研究が進められている。特に免許者(プライマリーユーザ)に割り当てられているが実際には使用されていない周波数を無免許者(セカンダリーユーザ)が使用する形態が考えられる。このような周波数は、2次的に使用可能な周波数、あるいはホワイトスペースなどと称される。セカンダリーユーザはこのようなホワイトスペースを利用する場合には、利用可能な周波数を検出する必要や、さらにはどの周波数を利用することが好ましいのかを決定する必要がある。
【0003】
近年、使用可能な周波数を迅速に決定することを支援するために、スペクトラム(ホワイトスペース)データベースの利用が検討されている(非特許文献1)。このデータベースから使用可能な周波数を取得することで、セカンダリーユーザは、通信に利用する周波数を迅速に決定することが期待される。
【0004】
また、ホワイトスペースを使ったコグニティブ無線を車両(移動体)向けの通信に応用することも検討されている。車両向けのコグニティブ無線に特徴的な点は、車両が頻繁にその位置が変化することであり、それにしたがって使用可能な周波数も頻繁に変化することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−200773号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Google Inc. "Proposal by Google Inc. to Provide a TV Band Device Database Management Solution", [online], [平成23年10月17日検索], <URL: http://www.scribd.com/doc/24784912/01-04-10-Google-White-Spaces-Database-Proposal>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載のホワイトスペースデータベースは、情報の提供先として固定端末を想定しており、車両のような高速移動端末への情報提供方法については検討されていない。車両の移動によって、2次的に利用可能な周波数は時間的にも空間的にも激しく変化する。このような変化をデータベースから車両に伝えるためには情報量が膨大となるので効率的に伝える必要がある。
【0008】
情報伝達の効率性のためには、ホワイトスペース情報を圧縮して(情報量を落として)送信すればよいが、そうすると情報の詳細が失われてしまい、セカンダリーユーザがホワイトスペース情報を的確に取得することができなくなる。その結果、プライマリーユーザに干渉を与えてしまったり、逆に過剰に使用中のチャネルを切り替える必要が生じたりするという問題が生じうる。したがって、周波数選択の精度悪化を抑制可能な情報圧縮や、圧縮された情報から適切な周波数選択が可能な選択方法が望まれる。
【0009】
本発明は、ホワイトスペース情報を有するデータベース装置から移動端末に対して、効率よくホワイトスペース情報を提供し、移動端末において通信に利用する周波数を適切に決定可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる周波数決定方法は、免許者が電波を使用している領域である禁止領域を周波数ごとに記憶するデータベース装置と、前記データベース装置と無線通信可能な移動通信装置とから構成される無線通信システムにおいて前記移動通信装置が通信に利用する周波数を決定する周波数決定方法である。
【0011】
本発明にかかる周波数決定方法は、移動通信装置が、自装置の位置情報を取得するステップと、移動通信装置が、位置情報をデータベース装置へ通知するステップと、データベース装置が、周波数ごとに距離情報を生成するステップと、データベース装置が、周波数ごとの距離情報を移動通信装置へ通知するステップと、移動通信装置が、通知された距離情報および自装置の移動方向に基づいて、通信に利用する周波数を決定するステップと、を含む。ここで、距離情報は、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第1の方向の距離である第1の距離と、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第2の方向の距離である第2の距離とを含む情報である。
【0012】
このような構成により、データベース装置から移動通信装置へ送信するデータ量を削減することができる。また、補間処理によって移動通信装置の移動方向に関する禁止領域までの距離を求めているので、データ量削減による影響を抑制し、精度の良い利用可能距離算出が可能となる。
【0013】
本発明における、通信に利用する周波数を決定するステップは、周波数ごとに、移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を、距離情報に含まれる第1の距離および第2の距離に基づいて補間によって求める利用可能距離算出工程と、利用可能距離算出工程によって求められた距離のうち最も長い距離を与える周波数を、通信に利用する周波数として決定する周波数選択工程と、を含むことが好ましい。
【0014】
このように、利用可能な距離が最も長い周波数を採用することで、周波数間のハンドオーバー(一般に、垂直ハンドオーバーと称される)の回数を抑制することが出来る。なお、周波数選択の基準は利用可能距離だけに限定する必要はない。利用可能距離とその他の要素とを考慮して、利用する周波数を決定することも好ましい。例えば、利用不可能になるまでの間に通信可能なデータ量を基準として利用する周波数を決定することも好ましい。この場合は、利用可能な距離と通信速度とを考慮して、利用する周波数を決定することになる。
【0015】
上記の補間処理として、例えば、以下の3つの処理方法が考えられる。
【0016】
第1の補間処理方法は、本明細書において三角補間と称される方法である。三角補間では、禁止領域の境界が、移動通信装置の現在位置から第1の方向に第1の距離だけ離れた点と、移動通信装置の現在位置から第2の方向に第2の距離だけ離れた点とを結ぶ直線であると仮定して、移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を求める。
【0017】
第2の補間処理方法は、本明細書において楕円補間と称される方法である。楕円補間では、禁止領域の境界が、移動通信装置の現在位置から第1の方向に第1の距離だけ離れた点と、移動通信装置の現在位置から第2の方向に第2の距離だけ離れた点とを通る楕円であると仮定して、移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を求める。
【0018】
第3の補間処理方法は、本明細書において矩形補間と称される方法である。矩形補間では、禁止領域の境界が、移動通信装置の現在位置から第1の方向に第1の距離だけ離れた点と、移動通信装置の現在位置から第2の方向に第2の距離だけ離れた点とを通る矩形であると仮定して、移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を求める。
【0019】
また、本発明において、データベース装置が生成する距離情報に、第1の方向にある禁止領域と第2の方向にある禁止領域とが、同じ領域か異なる領域かを示す情報を含めることが好ましい。この場合、移動通信装置では、第1の方向と第2の方向の禁止領域が同じ領域であれば楕円補間を採用し、異なる領域であれば矩形補間を採用することが好ましい。
【0020】
第1の方向と第2の方向の禁止領域が同じか異なるかによって、禁止領域の境界線の形状が異なるので、適切な補間方法も変化する。このように、状況に応じて楕円補間と矩形補間を使い分けることで、より適切に移動方向についての禁止領域までの距離を算出することが出来る。
【0021】
また、本発明において、移動通信装置が、自装置の移動方向をデータベース装置へ通知するステップ、をさらに含み、データベース装置が、あらかじめ定められた方向の中から移動通信装置の移動方向に最も近い2つの方向を、第1の方向および第2の方向として選択する、ことも好ましい。
【0022】
利用する周波数を決定する処理において移動通信装置が必要とする情報は、移動方向に最も近い2つの方向についての禁止領域までの距離である。したがって、移動通信装置からデータベース装置へ移動方向を通知し、データベース装置はこの移動方向に近い2つの方向についての距離情報のみを移動通信装置へ通知する。こうすることで、データベース装置と移動通信装置との間のデータ通信量を削減することが出来る。
【0023】
本発明において、第1の方向と第2の方向は直交する方向とすることが出来る。例えば、第1の方向と第2の方向は、予め定められた90度ずつずれた4つの方向の中から選択されるようにしても良い。また、この4つの方向は、東西南北方向とすることが出来る。
【0024】
ただし、本発明において、第1の方向と第2の方向は必ずしも直交する方向とする必要はない。例えば、予め定められた45度ずつずれた8つの方向の中から選択されるようにしても良い。一般的には、予め定められた360/N度(Nは整数)のN個の方向の中から選択されるようにすることができる。また、これらN個の方向は必ずしも360度を等分したものでなくても良い。
【0025】
また、本発明においては、移動通信装置が、自装置の予定移動経路も考慮して通信に利用する周波数を決定することも好ましい。
【0026】
より具体的には、自装置の予定移動経路を取得する工程と、予定移動経路上に中間点を設定する工程と、中間点における距離情報を前記データベース装置から取得する工程と、周波数ごとに、現在位置における距離情報に基づいて現在位置の移動方向についての禁止領域までの距離を求め、当該距離が予定移動経路上の次の中間点までの距離を超える場合には、次の中間点における距離情報と当該次の中間点における移動方向に基づいて当該次の中間点の移動方向についての禁止領域までの距離を求め、前記移動通信装置の現在位置から前記次の中間点までの距離と、前記次の中間点において求められた禁止領域までの距離の和を、当該周波数を利用可能な距離として算出する利用可能距離算出工程と、前記利用可能距離算出工程によって求められた距離のうち最も長い距離を与える周波数を、通信に利用する周波数として決定する周波数選択工程と、によって利用する周波数を決定する
ことが好ましい。
【0027】
なお、上記の処理において、次の中間点における利用可能距離が、さらに次の中間点までの距離を超える場合には、必要に応じてさらに次の中間点を基準として利用可能距離を算出するようにしても良い。この繰り返しは、必要な回数だけ行うことが出来る。
【0028】
このような構成によれば、移動通信装置の予定移動経路を考慮して各周波数の利用可能距離を算出できるので、より適切な周波数を選択することが出来る。
【0029】
なお、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む周波数決定方法として捉えることができる。また、本発明は、この方法を実行するコンピュータプログラムとして捉えることもできる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を実行する手段を有する無線通信システム、移動通信装置あるいはデータベース装置として捉えることができる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【0030】
例えば、本発明の一態様としての無線通信システムは、
データベース装置と移動通信装置とから構成され、移動通信装置が使用可能な周波数の中から周波数を選択して通信を行う無線通信システムであって、
前記データベース装置は、
免許者が電波を使用している領域である禁止領域を周波数ごとに記憶する禁止領域記憶手段と、
前記移動通信装置から通知される位置情報に基づいて、周波数ごとに、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第1の方向の距離である第1の距離と、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第2の方向の距離である第2の距離とを求め、第1の距離および第2の距離を含む距離情報を生成する距離情報生成手段と、
を有し、
前記移動通信装置は、
位置情報を取得する位置情報取得手段と、
位置情報を前記データベース装置へ通知して、前記距離情報を取得する距離情報要求手段と、
通知された距離情報および自装置の移動方向に基づいて通信に利用する周波数を決定する利用周波数決定手段と、
を有する。
【0031】
また、本発明の一態様として移動通信装置は、
免許者が電波を使用している領域である禁止領域を周波数ごとに記憶するデータベース装置から通知される距離情報に基づいて、使用する周波数を決定して通信する移動通信装置であって、
位置情報を取得する位置情報取得手段と、
位置情報を前記データベース装置へ通知して、当該位置情報が示す位置から禁止領域までの第1の方向の距離である第1の距離と、当該位置情報が示す位置から禁止領域までの第2の方向の距離である第2の距離とを含む距離情報を取得する距離情報要求手段と、
通知された距離情報および自装置の移動方向に基づいて通信に利用する周波数を決定する利用周波数決定手段と、
を有する。
【0032】
また、本発明の一態様としてのデータベース装置は、
免許者が電波を使用している領域である禁止領域を周波数ごとに記憶する禁止領域記憶手段と、
移動通信装置から通知される位置情報に基づいて、周波数ごとに、通知された位置情報
が示す位置から禁止領域までの第1の方向の距離である第1の距離と、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第2の方向の距離である第2の距離とを求め、第1の距離および第2の距離を含む距離情報を生成する距離情報生成手段と、
を有する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ホワイトスペース情報を有するデータベース装置から移動端末に対して、効率よくホワイトスペース情報を提供すると共に、提供されたホワイトスペース情報に基づいて移動端末が通信に利用する周波数を適切に決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態にかかる無線通信システムのシステム概要を示す図。
【図2】周波数決定方法の概要を説明する図。
【図3】ホワイトスペースを説明する図。
【図4】ホワイトスペースベクトルによるホワイトスペースの表現を説明する図。
【図5】第1の実施形態におけるホワイトスペース情報のデータ構造を示す図。
【図6】車両の移動方向についての干渉領域までの距離を算出する方法を説明する図。(A)は三角補間、(B)は楕円補間、(C)は矩形補間による方法を示す。
【図7】実施形態にかかる無線通信システムの機能ブロックを示す図。
【図8】第1〜第4の実施形態における、車載端末が行う無線通信処理の全体の流れを示すフローチャート。
【図9A】第1の実施形態における、車載端末における周波数選択処理の詳細を示すフローチャート。
【図9B】第1の実施形態における、データベース装置におけるホワイトスペース情報生成処理を示すフローチャート。
【図10】第2の実施形態におけるホワイトスペースベクトルの成分を選択する処理を説明する図。
【図11】第2の実施形態におけるホワイトスペース情報のデータ構造を説明する図。
【図12A】第2の実施形態における、車載端末における周波数選択処理の詳細を示すフローチャート。
【図12B】第2の実施形態における、データベース装置におけるホワイトスペース情報生成処理を示すフローチャート。
【図13】(A)2方向の干渉領域が同一領域である場合には楕円補間が好適であることを示す図。(B)2方向の干渉領域が異なる領域である場合には矩形補間が好適であることを示す図。
【図14】第3の実施形態におけるホワイトスペース情報のデータ構造を説明する図。
【図15A】第3の実施形態における、車載端末における周波数選択処理の詳細を示すフローチャート。
【図15B】第3の実施形態における、データベース装置におけるホワイトスペース情報生成処理を示すフローチャート。
【図16】走行経路が直線ではない場合の利用可能距離の算出を説明する図。
【図17】第4の実施形態における、車載端末における周波数選択処理の詳細を示すフローチャート。
【図18】第4の実施形態における、走行経路上に中間点を設定する処理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1の実施形態)
<システム概要>
本発明の第一の実施形態は、車載通信装置(車載端末)を備えた車両とデータベース装置とから構成される無線通信システムである。図1に、本実施形態にかかる無線通信シス
テムの概要図を示す。無線通信システムは、大略、データベース装置10と、車載端末21を備える車両20とから構成される。
【0036】
車載端末21は、他の車載端末との通信を、ホワイトスペースを利用して行う。ホワイトスペースとは、プライマリーユーザ(免許者)が利用していない周波数であり、セカンダリーユーザが利用可能な周波数である。車載端末21はセカンダリーユーザとしてプライマリーユーザに干渉を与えない範囲でホワイトスペースを利用する。車載端末21は、データベース装置10から得られるホワイトスペース情報を利用して、現在位置において使用可能な周波数を決定する。
【0037】
データベース装置10は、種々の周波数について、現時点でその周波数が利用可能な領域および利用不可能な領域を識別可能な情報(ホワイトスペース情報)を有している。本発明においては、データベース装置10がどのようにしてホワイトスペース情報を作成するかは問わず、データベース装置10がホワイトスペース情報を有していることを前提として説明する。ホワイトスペース情報の作成方法としては、例えば、プライマリーユーザが固定された電波塔を有する放送業者であれば、電波塔の位置、送信電力の強度(電波の到達距離)、および放送時刻を収集して、これらの情報に基づいて作成することが考えられる。その他にも、各位置での周波数利用状況をリアルタイムで収集してデータベース装置10に集約したり、収集した情報に統計処理を施したりしてホワイトスペース情報を作成することが考えられる。
【0038】
ホワイトスペースに関する情報を利用することで、図2に示すように、車両20の現在位
置と移動方向を考慮して、車両20がこの周波数を利用可能な距離を算出できる。車両20にとって好ましい周波数の定義は、アプリケーションの要求などによっても変化するが、ここでは最も長い距離(あるいは時間)利用可能な周波数を好ましいものと考える。
【0039】
また、本実施形態では、データベース装置10への処理負荷の集中を回避するために、周波数選択処理は車両20で行うこととする。したがって、データベース装置10は、基本的に、車両20に対してホワイトスペースに関する情報を通知する処理のみを行う。
【0040】
<ホワイトスペース情報の通知方法>
ここで問題となるのは、データベース装置10から車両20に対して、どのようにホワイトスペースに関する情報を伝達するのかという点である。図3に示すように、現在の車両20
の位置から各方向について干渉領域までの距離を車両20に通知すれば、周波数の利用可能を正確に算出できることが分かる。しかしながら、全方向についての情報を送ることは通信データ量の観点から現実的に不可能であり、データ量の削減が必要となる。
【0041】
そこで、本実施形態では、データベース装置10は、図4Aまたは図4Bに示すように、車
両20の現在位置を中心として、予め定められた所定方向についての干渉領域までの距離を車両20に通知する。
【0042】
図4Aでは、互いに90度ずつずれた4つの方向401〜404(例えば、方向401は東方向、方向402は北方向、方向403は西方向、方向404は南方向)について、干渉領域までの距離を車
両20へ通知する。図4Aに示す例では、各方向401〜404の干渉領域までの距離は、それぞれ100m, 350m, 250m, 150mなので、(100, 350, 250, 150)というデータがデータベース装置10から車両20へ通知される。本明細書では、このような各方向についての干渉領域までの距離を組み合わせた情報を、ホワイトスペースベクトル(あるいは省略して、WSV)と称
する。このホワイトスペースベクトルが、本発明における距離情報に相当する。
【0043】
図4Bでは、互いに45度ずつずれた8つの方向の方向411〜418について、干渉領域までの
距離を車両20へ通知する。図4Bの例では、(100, 370, 350, 410, 250, 220, 150, 180)というWSVが車両20へ通知される。
【0044】
方向の分解能については、細かくするほどホワイトスペースの形状を車両20に通知することができるが、その分通信データ量が増えてしまうし、データベース装置10での計算量が増えるという問題も生じる。本発明では、方向の分解能に上限は設けない。ただし、図4Bに示すように8つ(45度単位)程度でも十分な効果が得られる。
【0045】
各周波数について、WSVが1つ求められる。データベース装置10は、複数の周波数につ
いてWSVを算出して、車両20へ送信する。図5に、データベース装置10から車両20に送信されるホワイトスペース情報のデータ構造を示す。図5は、図4Aに示すように、4成分からなるWSVを採用する場合の例である。ホワイトスペース情報は、周波数f1からfnのそれぞれ
について、上記4方向のそれぞれについての干渉領域までの数値から構成される。この数
値は、適当な距離(例えば10メートル)を単位として量子化して表現することで、ホワイトスペース情報のデータ量を削減することができる。
【0046】
<周波数決定方法>
データベース装置10からホワイトスペース情報を取得した車両20は、この情報に基づいて、通信に最適な周波数を決定する。この周波数決定処理は、以下の2つのステップから
構成される。
1.周波数ごとに、利用可能距離を算出する
2.最大の利用可能距離を与える周波数を選択する
【0047】
ここでは、上記のステップ1、すなわち、ある周波数についてのホワイトスペースベク
トル(WSV)から、その周波数の利用可能距離を算出する処理について説明する。なお、
ここでは車両の移動方向は一定であり途中で変化しないことを仮定して算出する。車両の移動経路を考慮して算出する方法について、別の実施形態で説明する。
【0048】
WSVは特定の方向についての干渉領域までの距離しか与えないので、一般に車両20の移
動方向とWSVの各成分の方向は一致しない。したがって、車両20の移動方向についての干
渉領域までの距離を求めるためには、補間による推測が必要となる。主に3つの補間方法
が考えられる。これら3つの補間処理の例を図6A〜図6Cに示す。
【0049】
第1の方法は、干渉領域の境界が直線であることを仮定して、利用可能距離を求める方
法である。本明細書では、この第1の方法を「三角補間」と称する。図6Aは三角補間を説
明する図である。図6Aのうち、点601は車両の位置を示し、角度φは車両の移動方向を示
す。θiとθi+1は、WSV成分のうち車両の移動方向に最も近い2方向であり、dθiおよびd
θi+1は、θi方向とθi+1方向についての干渉領域までの距離である。したがって、車両
の現在位置601からθi方向にdθiだけ離れた点602と、車両の現在位置601からθi+1方向
にdθi+1だけ離れた点603は、干渉領域と非干渉領域の境界であることがわかる。しかし
、点602と点603以外については、干渉領域と非干渉領域の境界は不明である。そこで、図6Aに示す手法では、干渉領域の境界が点602と点603とを結ぶ直線であることを仮定して
、車両移動方向についての干渉領域までの距離を求める。
【0050】
上記のような仮定に基づくと、車両の移動方向φについての干渉領域までの距離destは、下記式によって表される。
【数1】

【0051】
第2の方法、干渉領域の境界が楕円曲線であることを仮定して、利用可能距離を求める
方法である。本明細書では、この第2の方法を「楕円補間」と称する。図6Bは楕円補間を
説明する図である。図6Bの各要素のうち、図6Aと同じものについては同一の符号を付し、その説明は省略する。図6B内の点604は、点601,602,603とともに長方形を作る点である。図6Bに示す手法では、干渉領域と非干渉領域の境界が、点604を中心とし、線分602-604と線分603-604をそれぞれ半径とする楕円であると仮定する。
【0052】
このような仮定に基づくと、車両の移動方向φについての干渉領域までの距離destは、下記式によって表される。
【数2】

【0053】
第3の方法、干渉領域の境界が矩形であることを仮定して、利用可能距離を求める方法
である。本明細書では、この第3の方法を「矩形補間」と称する。図6Cは矩形補間を説明
する図である。図6Cの各要素のうち、図6A、図6Bと同じものについては同一の符号を付し、その説明は省略する。図6Cに示す手法では、干渉領域と非干渉領域の境界が、点602と
点604を両端とする線分、および点603と点604を両端とする線分であると仮定する。
【0054】
このような仮定に基づくと、車両の移動方向φについての干渉領域までの距離destは、下記式によって表される。
【数3】

【0055】
これら3つの補間方法を比較すると、楕円補間(図6B)が最も短い距離を与え、矩形補
間(図6C)が最も長い距離を与え、三角補間(図6A)が中間的な距離を与える。ホワイトスペースの形状についての情報がない場合には、中間的な評価を与える三角補間が最も妥当な推定結果を与えるものと推定できる。したがって、本実施形態の以下の説明では、三角補間を用いて利用可能距離を求めるものとして説明する。
【0056】
もっとも、三角補間ではなく楕円補間や矩形補間を採用しても構わないし、これら3つ
の手法のうちの2つまたは3つの計算結果の平均などを採用しても構わない。また、ホワイ
トスペースの形状についての情報が得られる場合には、この情報に基づいて採用する補間方法を変更することも好ましい。この手法は、別の実施形態で説明する。
【0057】
上記のような推定によって、車両の移動方向についての利用可能距離を求める。この利用可能距離の算出は、全ての周波数について行う。そして、周波数ごとに求めた利用可能距離のうち、最も長い利用可能距離を与える周波数を最も好ましい周波数と捉えて、この周波数を利用周波数として決定する(上記処理2)。
【0058】
<システム詳細>
[機能構成]
図7に、本実施形態にかかる無線通信システムを構成するデータベース装置10と車両20
の機能ブロック図を示す。データベース装置10は、CPU、RAM、HDDなどの補助記憶装置な
どを有するコンピュータ(電子計算機)であり、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどのコンピュータプログラムをCPUが読み込んで実行することで、以
下の機能部として動作する。すなわち、データベース装置10は、無線通信部11、ホワイトスペース情報作成部12、干渉領域情報記憶部13として機能する。
【0059】
無線通信部11は、車両20の車載端末21と通信するためのインタフェースである。車載端末21と通信ができれば任意の無線通信方式を採用することができ、例えば、LTE (Long Term Evolution)、Mobile WiMax (IEEE 802.16e)、WAVE (IEEE 802.16p)、iBurst (IEEE 802.20)などを採用することができる。
【0060】
ホワイトスペース情報作成部12は、車両の位置情報を取得して、また、干渉領域情報記憶部13を参照して、車両位置における周囲の干渉領域までの距離を示す情報を作成する。この距離は、所定数(例えば4つ)の方向についてのみ計算される。これらの距離の値の
組み合わせが、上記で説明したホワイトスペースベクトルである。
【0061】
干渉領域情報記憶部13には、複数の周波数について、任意の地点における各時刻でのプライマリーユーザの周波数使用領域が格納されている。言い換えると、干渉領域情報記憶部13は、複数の周波数について、任意の地点における各時刻での、セカンダリーユーザが利用できない(利用するとプライマリーユーザに干渉を与える)領域を記憶している。本実施形態では、干渉領域情報記憶部13の作成方法は問わない。電波塔の位置や送信出力および放送時間帯などの情報から干渉領域を取得しても良いし、リアルタイムに計測して干渉領域を取得しても良いし、一定期間の計測に統計処理を施して干渉領域を取得しても良い。また、本実施形態では、データベース装置10における干渉領域情報の具体的なデータ保持方法も問わない。データ保持の方法は、分散リレーショナルデータベースなど任意の既存の手法を用いることができる。
【0062】
なお、データベース装置10は、1台のコンピュータのみから構成される必要はなく、互
いにネットワーク接続された複数のコンピュータから構成される分散システムとして構成されても構わない。
【0063】
車両20は、車載端末21と車車間通信装置25とGPS装置26を備える。車載端末は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータであり、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどのコンピュータプログラムをCPUが読み込んで実行することで、以下の機能
として動作する。すなわち、無線通信部22、ホワイトスペース情報要求部23、利用周波数帯決定部24として動作する。
【0064】
無線通信部22は、データベース装置10と通信するためのインタフェースである。データベース装置10と通信ができれば任意の無線通信方式を採用することができ、例えば、LTE
(Long Term Evolution)、Mobile WiMax (IEEE 802.16e)、WAVE (IEEE 802.16p)、iBurst (IEEE 802.20)などを採用することができる。
【0065】
ホワイトスペース情報要求部23は、GPS装置26から得られる位置情報を取得し、その位
置情報を含むホワイトスペース情報要求を作成する。作成されたホワイトスペース情報要求は、無線通信部22を介してデータベース装置10へ送られる。なお、ホワイトスペース情報要求の送信タイミングは、通信を開始する場合やそれまで利用していた周波数が利用不可能になった場合など、通信に利用する周波数を決定する必要が生じたタイミングである。
【0066】
利用周波数帯決定部24は、ホワイトスペース情報要求の結果としてデータベース装置10から得られるホワイトスペース情報と、GPS装置26から得られる現在位置とに基づいて、
利用する周波数を決定する。利用周波数の決定方法については上記で説明したので、ここでは繰り返さない。
【0067】
車車間通信装置25は、他の車両との間で無線通信を行う装置である。無線通信方式は任意のものであって良いが、より多くのホワイトスペースを利用可能なように、広い周波数帯に対応していることが好適である。また、車車間通信装置25は、現時点で利用可能な周波数を検出するための、スペクトラムセンシングを行う機能を有する。スペクトラムセンシングは、できるだけ広い周波数帯をできるだけ早く実行できることが好ましい。スペクトラムセンシング方法として既存の任意の手法が採用可能である。例えば、検出する無線通信方式に応じて、エネルギー検出、ウェーブレット分解技法、パイロットベースのスペクトラムセンシング、固有値に基づくスペクトラムセンシング、特徴(feature)検出、
マッチドフィルター(matched filter)方法などによって、周波数が使用中であるか未使用であるかを判別することができる。
【0068】
[処理詳細]
図8は、本実施形態における車両20による車車間通信方法の処理を示すフローチャート
である。車両20が通信を開始する際には、まず、車車間通信装置25が現在位置で利用可能な周波数の検出を行う(S801)。ここで、利用可能な周波数が検出されない場合(S802-NOかつS803-YES)には、時間をおいて再度利用可能な周波数を検出する。一方、利用可能な周波数が1つのみ検出された場合(S802-NOかつS803-NO)には、その周波数を利用してデ
ータ通信を開始する(S805)。
【0069】
利用可能な周波数が複数検出された場合(S802-YES)には、ステップS804に進む。ステップS804では、車載端末21が、データベース装置10にホワイトスペース情報を要求して、得られるホワイトスペース情報に基づいて使用する周波数を決定する。そして、その車車間通信装置25が決定された周波数を用いて、データ通信を行う(S805)。なお、ステップS804の周波数選択処理の詳細は、図9Aおよび図9Bを参照して後ほど詳しく説明する。
【0070】
データ通信中にも、車車間通信装置25は、周囲のスペクトラムセンシングを継続する(S806)。現在使用している周波数が利用可能であれば(S807-YES)、そのままデータ通信を継続する(S811)。一方、現在使用している周波数が利用不可能な場合、または利用不可能となることが予想される場合(S807-NO)は、周波数の変更処理を実施する。複数の
使用可能な周波数が検出された場合(S808-YES)には、車載端末21が、ホワイトスペース情報に基づく周波数選択処理を実行し(S809)、周波数切り替えのハンドオーバー(垂直ハンドオーバー)を実施する(S810)。なお、ステップS809の処理は、ステップS804の処理と同一である。
【0071】
垂直ハンドオーバーが完了したら、データ通信を再開する(S811)。データ通信中もス
ペクトラムセンシング(S806)は継続しており、データ通信が終了するまで(S812-YESとなるまで)必要に応じて垂直ハンドオーバーを繰り返す。
【0072】
次に、ステップS804およびステップS809における周波数選択処理の詳細を、図9Aおよび図9Bを参照して説明する。図9Aは車載端末21にて行われる処理のフローチャートであり、図9Bはデータベース装置10にて行われる処理のフローチャートである。
【0073】
まず図9Aを説明する。周波数選択処理が開始されると、車載端末21はGPS装置26から現
在位置を取得する(S901)。ホワイトスペース情報要求部23は、現在位置を含むホワイトスペース情報要求を生成して、無線通信部22を介してこの要求をデータベース装置10に送信する(S902)。
【0074】
ここで図9Bを参照してデータベース装置10における処理を説明する。データベース装置10は、車載端末21からホワイトスペース情報要求を受信する(S909)と、ホワイトスペース情報作成部12がホワイトスペース情報要求に含まれる車両の現在位置を抽出する(S910)。そして、ホワイトスペース情報要求から抽出した車両の現在位置から、所定の各方向(例えば、図4Aに示すように4方向、あるいは図4Bに示すように8方向など)について、その周波数が利用可能な距離(干渉領域までの距離)を算出する(S912)。これらの距離の組合せから、1つの周波数に対するホワイトスペースベクトルが生成される(S913)。ホワイトスペース情報作成部12は、干渉領域情報記憶部13に格納されている全ての周波数についてステップS912からステップS913の処理を繰り返し実行し、各周波数についてのホワイトスペースベクトルを得る。
【0075】
ホワイトスペース情報作成部12は、各周波数についてのホワイトスペースベクトルから図5に示すようなホワイトスペース情報を作成し、無線通信部11を介して車載端末21へ返
信する(S915)。
【0076】
図9Aに戻って車載端末21の処理の説明を続ける。車載端末21がデータベース装置10からホワイトスペース情報を受信する(S903)と、利用周波数帯決定部24は、各周波数についてステップS905およびS906を繰り返し実行して、利用可能な距離を算出する。具体的には、利用周波数帯決定部24は、対象の周波数のホワイトスペースベクトルから、車両の移動方向に最も近い2方向についての成分を選択する(S905)。そして、図6A〜図6Cに示すい
ずれかの補間方法を用いて、現在の位置から移動方向についての干渉領域までの距離を算出する(S906)。ここでは、図6Aに示す補間方法(三角補間)、すなわち数式1を用いて
距離を計算する。
【0077】
全ての周波数について利用可能な距離の算出が完了したら、利用周波数帯決定部24は、最も長い利用可能距離を与える、車車間通信に用いる周波数として決定する(S908)。利用周波数帯決定部24はこの周波数を車車間通信装置25に伝え、車車間通信装置25はこの周波数を用いて車車間通信を実行する。
【0078】
<本実施形態の作用/効果>
本実施形態によれば、データベース装置10から車両20へ送信するホワイトスペースに関する情報を、ホワイトスペースベクトルという情報量を落とした形式で通知するため、データベース装置10と車両20との間の通信量を削減できる。通信量を削減しているが、車両20において補間処理を実施して、各周波数が利用可能な距離を算出しているので情報量削減による精度の劣化を抑制することができる。したがって、データベース装置10と車両20との間の通信量を抑制しつつ、車両20がプライマリーユーザの電波利用状況を考慮して、適切な周波数を選択することが可能となる。
【0079】
なお、車両は移動するため、データベース装置に対するホワイトスペース情報の要求が頻繁になるため、通信量の抑制は効果的であると言える。また、本実施形態では、データベース装置は最小限の処理しか行っていない。これは、データベース装置が、複数の車両からの多くのホワイトスペース情報要求を処理しなければならないことを考慮すると、システム運用上で効率的な手法であると言える。
【0080】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態と比較して、データベース装置10と車両20との間のや
りとりするデータの内容を異ならせる。第1の実施形態では、図4Aや図4Bに示すように、
ホワイトスペースベクトルは4つあるいは8つなど多数の成分を有している。しかしながら、図6A〜図6Cに示すように、周波数の利用可能距離の算出の際には、車両の移動方向に最も近い2つの成分しか使用していない。そこで、本実施形態では、図10Aや図10Bに示すよ
うに、データベース装置10は、車両の移動方向に最も近い2つの成分のみを車両20へ通知
するようにする。
【0081】
例えば、図10Aに示すように、ホワイトスペースベクトルの成分の方向が90度ずつずれ
た4つの方向である場合を考える。ここでは、θ0が東方向(0度)、θ1が北方向(90度)、θ2が西方向(180度)、θ3が南方向(270度)とする。車両の移動方向が60度方向である場合、車両の移動方向に最も近い2つの方向は、θ0(0度)とθ1(90度)である。したがって、θ0方向とθ1方向の距離のみを車両20へ通知して、その他の方向についての距離は車両20に通知しない。
【0082】
図10Bに示すように、45度ずつずれた8つの方向(θ0〜θ7)を利用する場合は、車両の移動方向が60度であれば、それに最も近いθ1(45度)とθ2(90度)が採用される。
【0083】
本実施形態における、ホワイトスペース情報のデータ構造を図11に示す。ホワイトスペース情報が各周波数についてのホワイトスペースベクトルから構成される点では第1の実
施形態と同様であるが、本実施形態ではホワイトスペースベクトルは2つの成分(d1およ
びd2)しか含まない点で異なる。さらに、これら2つの成分(d1およびd2)の方向を明示
するためのデータ(θiとθi+1)が含まれる。なお、データベース装置10と車両20との間
で、ホワイトスペースベクトルに含まれる2方向がどの方向か互いに認識可能であれば、
方向に関するデータは不要である。
【0084】
本実施形態におけるデータベース装置10と車両20の機能構成は、第1の実施形態(図7)と同じであるので説明は省略する。また、本実施形態における通信処理の全体の流れも第1の実施形態(図8)と同じであるので、説明は省略する。
【0085】
図12Aおよび図12Bは、それぞれ、車載端末21およびデータベース装置10における周波数選択処理の流れを示すフローチャートである。基本的には第1の実施形態の処理(図9Aお
よび図9B)と同様であるので、同じ処理を行う部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。以下では、第1の実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0086】
本実施形態では、車載端末21は、ホワイトスペース情報の要求に際して、現在位置だけでなく車両の移動方向をデータベース装置10へ通知する必要がある。そのため、ホワイトスペース情報要求部23は、車両20の移動方向を取得し(S1201)、現在位置と移動方向と
を含むホワイトスペース情報要求を作成してデータベース装置10へ送信する(S1202)。
【0087】
車載端末21からホワイトスペース情報要求を受信したデータベース装置10のホワイトスペース情報作成部12は、ホワイトスペース情報要求から、位置情報および車両の移動方向を抽出する(S1204)。そして、ホワイトスペース情報作成部12は、あらかじめ定められ
た複数の方向の中から、車両の移動方向に最も近い2つの方向を選択する(S1205)。そして、ホワイトスペースベクトルの作成においては、ここで選択した2つの方向についての
み、車両の位置から干渉領域までの距離を算出して(S1206)して、ホワイトスペースベ
クトルを作成する(S1207)。このようにして求めた各周波数についてのホワイトスペー
スベクトルからホワイトスペース情報を作成して、車載端末21へ返信する。
【0088】
データベース装置10から送信されるホワイトスペース情報には、すでに車両の移動方向に近い2つの方向についての成分しか含まれていないので、本実施形態では車載端末21が
車両の移動方向に近い成分を選択する処理(図9AのステップS905)を行う必要はない。利用周波数帯決定部24は、ホワイトスペース情報に含まれる2つの成分から、三角補間など
の手法によって移動方向の利用可能距離を算出する(S1203)。以降の処理は、第1の実施形態と同様である。
【0089】
本実施形態によれば、進行方向の情報を送信しなければならないという点で通信量が増えるが、ホワイトスペースベクトルの2成分だけを送るという点で通信量を減らすことが
できる。また、車両位置から干渉領域までの距離を算出する対象の方向も2つのみに限定
されるため、データベース装置10における計算量も削減することができる。また、このようなさらなる効果を実現しつつ、第1の実施形態による効果も実現可能である。
【0090】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、車両の現在位置から干渉領域までの距離(周波数の利用可能距離)を求める際の補間方法として、三角補間(図6A)、楕円補間(図6B)、矩形補間(図6C)のいずれかの補間方式を採用していた。本実施形態では、状況に応じて適切な補間方式を採用することで、利用可能距離の算出精度をさらに向上させることを目的とする。
【0091】
ホワイトスペースベクトルにおける各成分は、車両の現在位置から所定方向に向かっての干渉領域までの距離を示している。ここで、隣接する2つの方向の成分が指し示す干渉
領域の状態には、図13Aに示すようにそれぞれが同じ干渉領域までの距離を表す場合と、
図13Bに示すようにそれぞれが異なる干渉領域までの距離を表す場合の2つの場合がある。
【0092】
図13Aに示すように、隣接する2つの方向の成分が同一の干渉領域までの距離を表している場合は、その間の角度での干渉領域と非干渉領域の境界は、楕円とみなすことが好適であることが分かる。したがって、このような場合は、利用可能距離の算出に、楕円補間(図6B)を用いることが好適である。
【0093】
一方、図13Bに示すように、隣接する2つの方向の成分が異なる干渉領域までの距離を表している場合は、その間の角度の干渉領域と非干渉領域の境界は、矩形とみなすことができる。したがって、このような場合は、利用可能距離の算出に、矩形補間(図6C)を用いる。なお、図13Bに示す状況では、干渉領域1302の位置や大きさあるいは車両の移動方向
によって利用可能距離は変化する。例えば、干渉領域1302の大きさが図13Bに示すものよ
り小さかったり、位置が左方向にずれていたり、車両の移動方向がより右方向(dθi方向)に向いていたりする場合には、利用可能な距離はより長くなる。このように、2つの方
向に異なる干渉領域がある場合には、その位置関係等によって境界の形状は変化する。しかしながら、本実施形態のように、境界の形状が矩形であることを仮定することで過度に楽観的あるいは悲観的な推測を避けて、平均的に適切な利用可能距離の算出が可能となる。
【0094】
上述のような処理を車載端末で行うためには、ホワイトスペースベクトルの隣接する2
成分が同じ干渉領域までの距離を示すか、異なる干渉領域までの距離を示すかを、データ
ベース装置10から車載端末21へ通知する必要がある。そこで、本実施形態では、ホワイトスペース情報(ホワイトスペースベクトル)に、隣接する方向の干渉領域の関係を表す情報を追加する。この情報は、隣接する方向の干渉領域が同じ干渉領域か異なる干渉領域かを表すだけなので、1ビットの情報で十分である。以下では、この情報のことを隣接判定
ビットと称する。隣接判定ビットは、例えば、「0」であれば同一の干渉領域であること
を示し、「1」であれば異なる干渉領域であることを示す。
【0095】
図14Aおよび図14Bは本実施形態におけるホワイトスペース情報のデータ構造を示す図である。図14Aは第2の実施形態のホワイトスペース情報に、隣接判定ビットを付加した場合の例である。各周波数のホワイトスペースベクトルの最後に、隣接判定ビットが1つ付加
されている。上述のように第2の実施形態では、ホワイトスペース情報には、ホワイトス
ペースベクトルのうちの車両の移動方向に最も近い2方向についてのみの成分が格納され
る。したがって、隣接判定ビットは、この2つの方向にある干渉領域が同じであるか異な
るものであるかを示せば良く、隣接判定ビットは1つだけでよい。
【0096】
図14Bは第1の実施形態のホワイトスペース情報に、隣接判定ビットを付加した場合の例である。この例では、各周波数のホワイトスペースベクトルの最後に、複数の隣接判定ビットが付加されている。第1の実施形態では、ホワイトスペースベクトルの全成分がホワ
イトスペースベクトルに格納される。したがって、隣接する方向の組合せも、ホワイトスペースベクトルの成分と同じ数だけ存在する。そこで、この例では、ホワイトスペースベクトルの成分数と同じ数の隣接判定ビットが付加される。
【0097】
本実施形態におけるデータベース装置10と車両20の機能構成は、第1および第2の実施形態(図7)と同じであるので説明は省略する。また、本実施形態における通信処理の全体
の流れも第1および第2の実施形態(図8)と同じであるので、説明は省略する。
【0098】
図15Aおよび図15Bは、それぞれ、車載端末21およびデータベース装置10における周波数選択処理の流れを示すフローチャートである。図に示す処理は第2の実施形態をベースと
して変更を加えたものなので、基本的には第2の実施形態の処理(図9Aおよび図9B)と同
様であるので、同じ処理を行う部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。以下では、第2の実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0099】
図15Aにおいて、車載端末21からデータベース装置10に対してホワイトスペース情報を
要求する処理(ステップS901、S1201、S1202)は第2の実施形態と同様である。図15Bに
おいて、データベース装置10において、ホワイトスペース情報を作成する処理も第2の実
施形態とほぼ同様であるが、ステップS1207の後にステップS1505がある点が異なる。ステップS1505では、ホワイトスペース情報作成部12が、ステップS1205で選択された2方向に
存在する干渉領域が同一の干渉領域か異なる干渉領域かを判定して、判定結果に応じた隣接判定ビットをホワイトスペースベクトルに付加する。例えば、2方向の干渉領域が同一
の干渉領域であれば隣接判定ビットとして「0」を付加し、異なる干渉領域であれば「1」を付加する。
【0100】
以上のようにして、各ホワイトスペースベクトルに隣接判定ビットが付加されたホワイトスペース情報が生成されて、データベース装置10から車載端末21へ送信される。
【0101】
なお、第1の実施形態のように、ホワイトスペースベクトルに予め定められた方向全て
について干渉領域までの距離を格納する場合には、隣接する2方向のそれぞれの組合せに
ついて、隣接判定ビットを付加する処理を行う。
【0102】
データベース装置10からホワイトスペース情報を受信した車載端末21では、以下のよう
にして周波数ごとの利用可能距離を算出する。まず、ある周波数のホワイトスペースベクトルに付加されている隣接判定ビットを参照して、ホワイトスペースベクトルに含まれる2つの方向にある干渉領域が同一の領域であるか、異なる領域であるか判定する(S1501)。
【0103】
2方向の干渉領域が同一領域である場合(S1502-YES)には、図13Aに示すように楕円補
間(図6B)が好適と考えられるので、数式2にしたがってその周波数の利用可能距離を算
出する(S1503)。
【0104】
一方、2方向の干渉領域が異なる領域である場合(S1502-NO)には、図13Bに示すよう
に矩形補間(図6C)が好適と考えられるので、数式3にしたがってその周波数の利用可能
距離を算出する(S1504)。
【0105】
このように、2方向の干渉領域が同じであるか異なるかに応じて異なる補間方法を用い
て、全周波数についての利用可能距離を算出する。そして、算出された利用可能距離のうちもっと長い距離を与える周波数を、使用する周波数として選択する(S908)。
【0106】
本実施形態によれば、干渉領域の関係に応じて適切な補間方式を採用することで、常に同じ補間方式を採用する場合よりも、利用可能距離の算出精度を高めることができ、したがって周波数選択処理をより的確なものにできる。
【0107】
なお、隣接判定ビットを追加することによりデータベース装置10と車載端末21との間の通信量が増加するが、その増加量はわずか1ビットであり、それほど問題にならない。む
しろ、このごくわずかな通信量の増加によって、周波数選択の精度を格段に向上させることが可能であるため、通信量あたりの改善効果は非常に大きいと言える。
【0108】
(第4の実施形態)
上記第1から第3の実施形態では、車両が常に一定方向に走行することを前提として、周波数の利用可能距離を算出している。しかしながら、実際には車両は常に直進するのではなく方向転換を行う。そこで、本実施形態では車両の予定走行経路も考慮することで、より精度良く周波数の利用可能距離を算出する。
【0109】
図16Aおよび図16Bは、車両の走行方向が常に一定であることを想定した場合に問題となる状況の例を示す図である。図において、点1601は車両20の現在位置であり、線1602はカーナビゲーション装置等から取得される予定走行経路である。
【0110】
図16Aに示す例では、車両20は実際にはこの周波数を比較的長い間使用することができ
るが、第1〜第3の実施形態のように車両が直進することを仮定すると干渉領域1603に進入する時点で、その周波数が使用不可能になると誤判定される。
【0111】
逆に図16Bに示す例では、車両20が方向転換することで干渉領域1605に進入するが、車
両が直進することを仮定すると干渉領域に進入しないので、実際よりも長い間その周波数が利用可能であると誤判定される。
【0112】
そこで、本実施形態では、以下のようにして車両の走行経路を考慮して各周波数の利用可能距離を算出することで、上記のような誤判定の問題を解消する。
【0113】
以下、図17、図18Aおよび図18Bを参照して、本実施形態における各周波数の利用可能距離の算出方法について説明する。なお、本実施形態におけるデータベース装置10と車両20の機能構成は、第1〜第3の実施形態(図7)と同じであるので説明は省略する。また、本
実施形態における通信処理の全体の流れは第1〜第3の実施形態(図8)と同じであり、デ
ータベース装置10におけるホワイトスペース情報作成処理も第1〜第3実施形態(図9B、図12B、図15Bのいずれか)と同じであるので、説明は省略する。
【0114】
図17は、車載端末21における周波数選択処理(図8のステップS804およびS809)の詳細
を示したフローチャートである。図17のフローチャートは、基本的に第1の実施形態にお
ける処理(図9A)と同様であるので、同じ処理を行う部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。以下では、第1の実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0115】
本実施形態においては、車載端末21は、現在位置を取得する(S901)とともに、カーナビゲーション装置などから走行予定経路を取得して、走行経路上の中間点を決定する(S1701)。中間点は、上述したように、車両20が方向転換するとみなせる位置であり、典型
的には右左折する地点である。
【0116】
中間点の算出方法を図18Aおよび図18Bを参照して説明する。まず、走行経路上に、所定の距離間隔で中間点候補を設定する。図18Aでは、点N1、N2、N3が中間点候補として示さ
れている。なお、点N0は車両20の現在位置である。そして、隣接する2点間(点Ni-1と点Niの間)での車両の走行方向φiを算出し、走行方向の変化φi+1 - φiが所定のしきい値
以上となる点Niを中間点として採用する。
【0117】
上記のようにして中間点を決定することが出来るが、図18Aに示す方法だと徐々に走行
方向を変えるような場合に対応できない。そこで、上記のような方法に加えて、図18Bに
示す方法によっても中間点を決定することが好ましい。すなわち、初期位置N0と候補点Niの間の距離をDiとし、点N0における走行方向と点N0から点Niに向かう方向の差をψiとす
る。そして、Di × sinψi が所定のしきい値以上となる点Niを中間点として採用する。
この方法は、初期位置N0の走行方向に向かって直進した経路と、実際の走行位置とが所定のしきい値以上離れた点と中間点として決定する方法といえる。
【0118】
図17のフローチャートの説明に戻る。ホワイトスペース情報の要求処理は第1の実施形
態等と同じである。ホワイトスペース情報に基づいて、各周波数についての利用可能距離の算出方法(ステップS904〜S907のループ内の処理)が第1の実施形態と大きく異なる。
【0119】
ある周波数についての利用可能距離を求める際に、変数Dを0で初期化する。この変数D
が最終的にその周波数についての利用可能距離を表すことになる。
【0120】
ステップS1703〜S1707は中間点ごとのループである。対象とする中間点をNiとし、対象とする中間点Niと、次の中間点Ni+1とに着目した処理を行う。なお、最初の処理においては、対象中間点は点N0(車両の現在位置)である。
【0121】
ここまでの処理において、車載端末21は地点Niにおけるホワイトスペース情報をデータベース装置10から取得している。したがって、第1の実施形態などと同様に車両が直進す
ることを仮定して、現在地点における利用可能距離を算出する(S905,S906)。なお、本
実施形態においては、ステップS906における「移動方向」は、点Niにおける移動方向を採用する。あるいは、点Niにおける移動方向と点Niから点Ni+1に向かう方向が異なる場合にはこれらの平均などを採用しても良い。
【0122】
このようにして求めた利用可能距離が、点Niと点Ni+1との間の距離よりも大きいか否か判定する(S1704)。なお、点Niと点Ni+1との間の距離は、実際の距離でも良いし、直線距離でも良いし、点Niと点Ni+1を結ぶ線分を点Niにおける移動方向に射影した線分の距離としても良い。ステップS906において求められた利用可能距離が、点Niと点Ni+1との間の距
離よりも大きい場合には、利用周波数帯決定部24は、変数Dに点Niと点Ni+1との間の距離
を加える(S1705)。そして、ホワイトスペース情報要求部23は、次の中間点Ni+1についてのホワイトスペース情報をデータベース装置10に対して要求する(ステップS1706)。そして、次の中間点について、上記の処理を繰り返す。
【0123】
ステップS906において求められた利用可能距離が、点Niと点Ni+1との間の距離以下である場合(S1704-NO)は、変数Dに算出した利用可能距離を加え(ステップS1708)、加算後の変数Dの値を、この周波数における利用可能距離として記憶する。
【0124】
上記の処理を、各周波数について繰り返し行い、最も長い利用可能距離を与える周波数を、使用する周波数として選択する(S1709)。
【0125】
このように、車両の走行予定経路を考慮して各周波数の利用可能距離を算出しているので、より精度良く利用可能距離を算出可能である。したがって、より適切な周波数の選択することが可能となる。
【0126】
なお、上記の説明では、1つの中間点についてのホワイトスペース情報をデータベース
装置10から取得し、計算結果に応じて次の中間点についてのホワイトスペース情報を取得するようにしている。しかしながら、複数の中間点についてのホワイトスペース情報を一括してデータベース装置10から取得するようにしても構わない。例えば、現在位置から所定距離以内にある中間点についてのホワイトスペース情報を一括して取得するようにしても良いし、現在位置から所定数の中間点についてホワイトスペース情報を一括して取得するようにしても良い。
【0127】
(その他)
上記の第1から第4の実施形態は、適宜組み合わせることが可能である。また、上記の実施形態の説明は、本発明を説明する上での例示に過ぎず、本発明の範囲を上記の実施形態に限定するものではない。当業者であれば、本発明の技術思想にしたがって、上記で開示された実施形態に種々の変形を加えることは容易であろう。
【0128】
例えば、上記の説明では、車載通信装置が、他の車両との間でコグニティブ無線を行うものとして説明したが、通信相手は車両に限る必要はなく、任意の装置を通信相手とすることができる。また、移動通信装置が自動車に搭載される通信装置であるものとして説明したが、本発明における移動通信装置は車両以外に、電車、飛行機、船舶などに搭載される通信装置であっても良いし、人間が持ち運んで移動する携帯通信端末や、車両等に持ち込んでその車両等が移動することによって移動する通信装置であっても良い。
【0129】
また、上記の説明では、利用可能な距離がもっと長い周波数を利用する周波数として選択するものとして説明したが、周波数の選択基準はこれに限られない。一般的には、利用可能距離以外の要素も考慮して、周波数選択を行うことが考えられる。例えば、周波数ごとの通信速度も考慮して、利用可能な間に通信可能なデータ量(基本的に、利用可能距離と通信速度の積として評価できる)を基準に周波数選択を行っても良い。
【符号の説明】
【0130】
10 データベース装置
11 無線通信部
12 ホワイトスペース情報作成部
13 干渉領域情報記憶部
20 車両
21 車載端末
22 無線通信部
23 ホワイトスペース情報要求部
24 利用周波数帯決定部
25 車車間通信装置
26 GPS装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免許者が電波を使用している領域である禁止領域を周波数ごとに記憶するデータベース装置と、前記データベース装置と無線通信可能な移動通信装置とから構成される無線通信システムにおいて前記移動通信装置が通信に利用する周波数を決定する周波数決定方法であって、
前記移動通信装置が、自装置の位置情報を取得するステップと、
前記移動通信装置が、前記位置情報を前記データベース装置へ通知するステップと、
前記データベース装置が、周波数ごとに、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第1の方向の距離である第1の距離と、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第2の方向の距離である第2の距離とを求め、第1の距離および第2の距離を含む距離情報を生成するステップと、
前記データベース装置が、周波数ごとの距離情報を前記移動通信装置へ通知するステップと、
前記移動通信装置が、通知された距離情報および自装置の移動方向に基づいて、通信に利用する周波数を決定するステップと、
を含む、周波数決定方法。
【請求項2】
前記通信に利用する周波数を決定するステップでは、
周波数ごとに、前記移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を、前記距離情報に含まれる第1の距離および第2の距離に基づいて補間によって求める利用可能距離算出工程と、
前記利用可能距離算出工程によって求められた距離のうち最も長い距離を与える周波数を、通信に利用する周波数として決定する周波数選択工程と、
を含む、請求項1に記載の周波数決定方法。
【請求項3】
前記利用可能距離算出工程では、禁止領域の境界が、前記移動通信装置の現在位置から前記第1の方向に前記第1の距離だけ離れた点と、前記移動通信装置の現在位置から前記第2の方向に前記第2の距離だけ離れた点とを結ぶ直線であると仮定して、前記移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を求める、
請求項2に記載の周波数決定方法。
【請求項4】
前記利用可能距離算出工程では、禁止領域の境界が、前記移動通信装置の現在位置から前記第1の方向に前記第1の距離だけ離れた点と、前記移動通信装置の現在位置から前記第2の方向に前記第2の距離だけ離れた点とを通る楕円であると仮定して、前記移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を求める、
請求項2に記載の周波数決定方法。
【請求項5】
前記利用可能距離算出工程では、禁止領域の境界が、前記移動通信装置の現在位置から前記第1の方向に前記第1の距離だけ離れた点と、前記移動通信装置の現在位置から前記第2の方向に前記第2の距離だけ離れた点とを通る矩形であると仮定して、前記移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を求める、
請求項2に記載の周波数決定方法。
【請求項6】
前記距離情報には、前記移動通信装置から通知された位置情報が示す位置から前記第1の方向にある禁止領域と、前記移動通信装置から通知された位置情報が示す位置から前記第2の方向にある禁止領域とが、同じ領域であるか異なる領域であるかを示す情報が含まれており、
前記利用可能距離算出工程では、
前記第1の方向にある禁止領域と前記第2の方向にある禁止領域とが同じ領域であれば
、禁止領域の境界が、前記移動通信装置の現在位置から前記第1の方向に前記第1の距離だけ離れた点と、前記移動通信装置の現在位置から前記第2の方向に前記第2の距離だけ離れた点とを通る楕円であると仮定して、前記移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を求め、
前記第1の方向にある禁止領域と前記第2の方向にある禁止領域とが異なる領域であれば、禁止領域の境界が、前記移動通信装置の現在位置から前記第1の方向に前記第1の距離だけ離れた点と、前記移動通信装置の現在位置から前記第2の方向に前記第2の距離だけ離れた点とを通る矩形であると仮定して、前記移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を求める、
請求項2に記載の周波数決定方法。
【請求項7】
前記移動通信装置が、自装置の移動方向を前記データベース装置へ通知するステップ、をさらに含み、
あらかじめ定められた複数の方向の中から、前記移動通信装置の移動方向に最も近い2つの方向を、前記第1の方向および第2の方向として選択する、
請求項1〜6のいずれかに記載の周波数決定方法。
【請求項8】
前記第1の方向および第2の方向は直交する、
請求項7に記載の周波数決定方法。
【請求項9】
前記第1の方向および第2の方向は、予め定められた90度ずつずれた4つの方向の中から選択される、
請求項8に記載の周波数決定方法。
【請求項10】
前記距離情報を生成するステップでは、周波数ごとに、前記移動通信装置から通知された位置情報が示す位置から当該周波数が利用不可能な領域までの距離を、予め定められた90度ずつずれた第1〜第4の方向について求め、これらの距離を含む距離情報として生成する、
請求項1〜6のいずれかに記載の周波数決定方法。
【請求項11】
前記通信に利用する周波数を決定するステップでは、前記移動通信装置が、自装置の予定移動経路も考慮して、通信に利用する周波数を決定する、
請求項1〜10のいずれかに記載の周波数決定方法。
【請求項12】
前記通信に利用する周波数を決定するステップは、
自装置の予定移動経路を取得する工程と、
前記予定移動経路上に中間点を設定する工程と、
前記中間点における距離情報を前記データベース装置から取得する工程と、
周波数ごとに、現在位置における距離情報に基づいて現在位置の移動方向についての禁止領域までの距離を求め、当該距離が予定移動経路上の次の中間点までの距離を超える場合には、次の中間点における距離情報と当該次の中間点における移動方向に基づいて当該次の中間点の移動方向についての禁止領域までの距離を求め、前記移動通信装置の現在位置から前記次の中間点までの距離と、前記次の中間点において求められた禁止領域までの距離の和を、当該周波数を利用可能な距離として算出する利用可能距離算出工程と、
前記利用可能距離算出工程によって求められた距離のうち最も長い距離を与える周波数を、通信に利用する周波数として決定する周波数選択工程と、
を含む請求項11に記載の周波数決定方法。
【請求項13】
データベース装置と移動通信装置とから構成され、移動通信装置が使用可能な周波数の中から周波数を選択して通信を行う無線通信システムであって、
前記データベース装置は、
免許者が電波を使用している領域である禁止領域を周波数ごとに記憶する禁止領域記憶手段と、
前記移動通信装置から通知される位置情報に基づいて、周波数ごとに、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第1の方向の距離である第1の距離と、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第2の方向の距離である第2の距離とを求め、第1の距離および第2の距離を含む距離情報を生成する距離情報生成手段と、
を有し、
前記移動通信装置は、
位置情報を取得する位置情報取得手段と、
位置情報を前記データベース装置へ通知して、前記距離情報を取得する距離情報要求手段と、
通知された距離情報および自装置の移動方向に基づいて通信に利用する周波数を決定する利用周波数決定手段と、
を有する、
無線通信システム。
【請求項14】
前記利用周波数決定手段は、
周波数ごとに、前記移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を、前記距離情報に含まれる第1の距離および第2の距離に基づいて補間によって求め、
求められた距離のうち最も長い距離を与える周波数を、通信に利用する周波数として決定する、
請求項13に記載の無線通信システム。
【請求項15】
免許者が電波を使用している領域である禁止領域を周波数ごとに記憶するデータベース装置から通知される距離情報に基づいて、使用する周波数を決定して通信する移動通信装置であって、
位置情報を取得する位置情報取得手段と、
位置情報を前記データベース装置へ通知して、当該位置情報が示す位置から禁止領域までの第1の方向の距離である第1の距離と、当該位置情報が示す位置から禁止領域までの第2の方向の距離である第2の距離とを含む距離情報を取得する距離情報要求手段と、
通知された距離情報および自装置の移動方向に基づいて通信に利用する周波数を決定する利用周波数決定手段と、
を有する移動通信装置。
【請求項16】
前記利用周波数決定手段は、
周波数ごとに、前記移動通信装置の移動方向についての禁止領域までの距離を、前記距離情報に含まれる第1の距離および第2の距離に基づいて補間によって求め、
求められた距離のうち最も長い距離を与える周波数を、通信に利用する周波数として決定する、
請求項15に記載の移動通信装置。
【請求項17】
免許者が電波を使用している領域である禁止領域を周波数ごとに記憶する禁止領域記憶手段と、
移動通信装置から通知される位置情報に基づいて、周波数ごとに、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第1の方向の距離である第1の距離と、通知された位置情報が示す位置から禁止領域までの第2の方向の距離である第2の距離とを求め、第1の距離および第2の距離を含む距離情報を生成する距離情報生成手段と、
を有するデータベース装置。
【請求項18】
前記距離情報生成手段は、前記移動通信装置から通知される移動方向に基づいて、あらかじめ定められた複数の方向の中から、前記移動通信装置の移動方向に最も近い2つの方向を、前記第1の方向および第2の方向として選択する、
請求項17に記載のデータベース装置。
【請求項19】
前記第1の方向および第2の方向は直交する、
請求項18に記載のデータベース装置。
【請求項20】
前記距離情報生成手段は、前記第1の方向にある禁止領域と、前記第2の方向にある禁止領域とが、同じ領域であるか異なる領域であるかを示す情報を前記距離情報に含める、
請求項17〜19のいずれかに記載のデータベース装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−106155(P2013−106155A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247996(P2011−247996)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】