説明

呼気捕集シリンジ容器

【課題】使用前後の判別が容易で、かつ使用前の状態でコンパクトである呼気捕集シリンジ容器を提供すること。
【解決手段】上端部から導入された呼気を内部に捕集するシリンダ2と、シリンダ2の内側に、その下端部から挿入されたピストン3と、上端部に設けられると共に、呼気をシリンダ2内に導入する導入口47Aが形成された導入筒31と、導入筒31内において導入口47Aよりも下側に配設され、導入筒31に呼気が導入されたときに呼気の導入圧により導入口47Aを開放すると共に、呼気の導入を停止したときに導入口47Aを閉塞する弁部材32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気捕集シリンジ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば病気や飲酒などの呼気検査において、使用者から吹き込まれる呼気を捕集する呼気捕集容器として、伸縮自在な袋状部材により構成された本体部を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−304245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような呼気捕集容器では、本体部内に呼気を吹き込んでも、単に本体部が膨張変形するだけであるため、この呼気捕集容器が使用前であるか使用後であるかを判別することが困難であった。
また、このような呼気捕集容器では、搬送時や保管時など使用前にコンパクトであることが望まれている。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、使用前後の判別が容易で、かつ使用前の状態でコンパクトである呼気捕集シリンジ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の呼気捕集シリンジ容器は、軸方向先端部から導入された呼気を内部に捕集するシリンダと、前記シリンダの内側に、その軸方向基端側から挿入されたピストンと、前記軸方向先端部に設けられると共に、呼気を前記シリンダ内に導入する導入口が形成された導入筒と、前記導入筒内において前記導入口よりも軸方向基端側に配設され、前記導入筒に呼気が導入されたときに呼気の導入圧により前記導入口を開放すると共に、呼気の導入を停止したときに前記導入口を閉塞する弁部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明では、導入口からシリンダ内に呼気を導入すると、ピストンが軸方向基端側に後退するので、ピストンが後退しているか否かにより、この呼気捕集シリンジ容器が使用されているか否かの判別が容易に行える。すなわち、導入筒内に配設されている弁部材が呼気の導入圧によって導入口を開放すると、導入口を介してシリンダ内に呼気が導入される。この呼気の導入に伴って、ピストンがシリンダ内を軸方向基端側に後退する。そして、導入口からの呼気の導入を停止すると、弁部材が導入口を閉塞し、導入口を介したシリンダ内への呼気の導入が規制される。
また、使用前の状態では、ピストンがシリンダの軸方向基端側から挿入されているため、呼気捕集シリンジ容器を減容化することが可能となる。
このように、ピストンの軸方向基端側への突出量を視認することにより、呼気捕集シリンジ容器の使用の前後を確認できるので、使用しているのか否かの判別が容易になると共に、使用前の状態で呼気捕集シリンジ容器がコンパクトになる。
【0008】
また、本発明の呼気捕集シリンジ容器では、前記弁部材が、軸方向に変位して前記導入口を軸方向基端側から開閉する弁体部と、前記導入筒内に固定される支持部と、前記弁体が軸方向で変位可能となるように前記弁体と前記支持体とを連結する連結部と、を有し、前記導入筒内のうち前記弁体部よりも軸方向基端側に、前記弁体部における軸方向基端側への変位量を制限すると共に前記導入口と前記シリンダの内側とを連通する連通路が形成された制限部材が配設されてもよい。
この場合では、弁体部が呼気の導入圧によって軸方向基端側に変位して導入口を開放するときに、弁体部が制限部材に当接することにより、弁体部の軸方向基端側へのさらなる変位が規制される。このとき、呼気は、導入口から連通路を通してシリンダ内に導入される。これにより、弁体部が軸方向基端側に過剰に変位することを防止すると共に、連結部が損傷することを抑制する。さらに、呼気の導入を停止したときに弁体部が軸方向先端側に変位して導入口を閉塞することをより確実に行わせることができる。
【0009】
また、本発明の呼気捕集シリンジ容器では、前記導入筒が、呼気を捕集する使用者の口でくわえられる外筒部と、前記外筒部よりも径方向内側に配設されると共に内側が前記導入口に連通する内筒部と、を有し、前記外筒部及び前記内筒部に、それぞれ軸方向に沿って延在する溝部が形成されていると共に、前記外筒部に形成された溝部と前記内筒部に形成された溝部とが、それぞれの周方向に沿う位置を異ならせて配置されてもよい。
この場合では、内筒部及び外筒部それぞれに形成された溝部を通して内筒部及び外筒部の内部が連通するので、例えばピストンを手でシリンダの軸方向基端側に引きながら呼気を導入する場合に、ピストンを引くことによって発生した吸引力が内筒部から使用者の口に局所的に強くかかることを防止できる。ここで、内筒部の溝部と外筒部の溝部とのそれぞれの周方向に沿う位置を異ならせて配置することで、シリンダ内から内筒部に作用する吸引力を外筒部と内筒部との間を周方向に迂回させてから外筒部の外側に作用させることができるようになり、周方向に沿う位置を合わせた場合よりも、口にかかる吸引力を緩和させることができる。さらに、外筒部に溝部を形成することで、吸引力によって内筒部及び外筒部の軸方向先端部に例えば舌が密着しても、外筒部の溝部から外気を導入して外筒部内の減圧を解除することによって、密着から容易に解放できる。
【0010】
また、本発明の呼気捕集シリンジ容器では、前記導入筒が、前記軸方向先端部に形成された口部と一体的に形成されてもよい。
この場合では、部品点数を削減できると共に、導入筒とシリンダとを別部材とする場合と比較して、導入筒をシリンダに取り付けるための構造を設ける必要がなくなるので、呼気捕集シリンジ容器をさらにコンパクト化することができる。
【0011】
また、本発明の呼気捕集シリンジ容器では、前記シリンダの軸方向基端部に、径方向外側に向けて突出する突出板部が形成されており、前記ピストンに、径方向内側に向けて陥没する収容凹部と、前記収容凹部内に該ピストンの外周に対して径方向に出没自在に配設された係合片部と、が形成されてもよい。
この場合では、係合片部をシリンダから軸方向基端側に突出させた状態で、係合片部をピストンの外周から径方向外側に突出させて突出板部と係合させることにより、ピストンがシリンダ内で軸方向先端側に向けて進行することを規制することができる。これにより、シリンダ内に呼気を捕集した後に、シリンダ内に捕集した呼気が導入口を通して呼気捕集シリンジ容器の外部に流出されることを抑制できる。
【0012】
また、本発明の呼気捕集シリンジ容器では、前記ピストンが、軸方向に沿って延在すると共に径方向外側に向けて突出する複数の突リブ部を有し、前記突リブ部の少なくとも1つの径方向先端部に、周方向に突出する周方向突出部が形成され、前記シリンダの軸方向基端部に、周方向に間隔をあけて複数の突出板部が径方向の外側に向けて突設されてもよい。
この場合では、シリンダ内に呼気を捕集した後にシリンダのうち突出板部が形成されていない部分をピストンの周方向突出部と周方向で位置合わせすることで、シリンダの外周面と周方向突出部とがほぼ同一面となり、シリンダの外周面から周方向突出部にわたって、例えば使用者の情報などを記載したラベルを貼付できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明にかかる呼気捕集シリンジ容器によれば、シリンダからのピストンの突出量を視認することによって呼気捕集シリンジ容器の使用の前後の判別が容易になると共に、ピストンをシリンダの内側に挿入することによって呼気捕集シリンジ容器が使用前の状態でコンパクトになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態における呼気捕集シリンジ容器を示す軸方向断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1の外筒部及び内筒部を示す斜視図である。
【図4】図1の制限部を示す斜視図である。
【図5】図1の呼気捕集シリンジ容器の変形例を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態における呼気捕集シリンジ容器を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態における呼気捕集シリンジ容器を示す部分拡大断面図である。
【図8】図7の制限部材を示す斜視図である。
【図9】本発明の第4実施形態における呼気捕集シリンジ容器を示す部分拡大断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態における呼気捕集シリンジ容器を示す、(A)が部分拡大側面図であり、(B)が(A)のX−X矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明における呼気捕集シリンジ容器の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0016】
本実施形態における呼気捕集シリンジ容器1は、図1及び図2に示すように、呼気が内部に充填される円筒状のシリンダ2と、シリンダ2の内側にその軸方向基端側から挿入された棒状のピストン3と、シリンダ2に装着された開閉弁4と、開閉弁4に着脱自在に装着されるキャップ5と、を備えている。
なお、本実施形態では、シリンダ2の中心軸線を中心軸Oとし、中心軸Oに沿ってピストン3の挿入方向を上側、その反対側を下側とする。また、中心軸Oに直交する方向を径方向、中心軸O回りの方向を周方向とする。
【0017】
シリンダ2は、呼気が充填される円筒状の摺動筒部11と、摺動筒部11の上端部に配設された円筒状の口部12と、口部12よりも径方向外側に配設された円筒状の螺着筒部13と、を備えている。これら摺動筒部11及び口部12は、中心軸Oと同軸に配設されている。
摺動筒部11の下端部には、径方向外側に向けて突出する突出板部14が全周にわたって形成されている。この突出板部14の下面には、上側に向けて陥没する環状溝部14Aが全周にわたって形成されている。
口部12の内径は、摺動筒部11の内径よりも小さくなっており、口部12の内側は、摺動筒部11の内側に連通している。
螺着筒部13は、上側に向けて突設されており、その内周面には、雌ネジ部が形成されている。
【0018】
ピストン3は、摺動筒部11の内側にその下端部側から挿入されており、シリンダ2に対して相対的に中心軸Oに沿って往復移動する。そして、ピストン3は、中心軸Oに沿って延在するピストン本体部21と、ピストン本体部21の下端部に設けられた操作部22と、ピストン本体部21の上端部に取り付けられた摺動部23と、を備えている。
ピストン本体部21は、中心軸Oに沿って延在する4つの突リブ部24を横断面十字状に配設した形状をなしており、摺動筒部11の内側において中心軸Oに沿って往復移動可能に挿入されている。
【0019】
操作部22は、ピストン本体部21の下端部から全周にわたって径方向外側に向けて突出している。
摺動部23は、上端面がテーパ状をなす円柱状をなしており、ゴムや樹脂などから形成されている。また、摺動部23は、摺動筒部11の内周面に対して中心軸Oに沿って摺動移動可能に摺接している。
【0020】
開閉弁4は、図2に示すように、口部12に装着された導入筒31と、導入筒31の内側に配設された弁部材32と、を備えている。
導入筒31は、口部12に装着される装着筒35と、装着筒35の内側に配設された連通筒36と、を有する。
装着筒35は、上面視で円環状の底壁部41と、底壁部41の内周縁部から下側に向けて突設された円筒状の装着筒部42と、装着筒部42よりも径方向外側において底壁部41から下側に向けて突設された円筒状の囲繞筒部43と、底壁部41の外周縁部から上側に向けて突設された外筒部44と、外筒部44よりも径方向内側に配設された制限部(制限部材)45と、を有する。これら底壁部41、装着筒部42、囲繞筒部43及び外筒部44は、中心軸Oと同軸上に配設されている。
【0021】
装着筒部42の外周面には、螺着筒部13の雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が形成されており、装着筒部42は、口部12と螺着筒部13との間に配設されている。また、装着筒部42の上端部は、底壁部41よりも上側に突出している。
囲繞筒部43は、螺着筒部13を径方向外側から囲っている。
外筒部44の上下方向中央部の内面には、陥没するように形成された係合凹部44Aが全周にわたって形成されている。また、外筒部44には、図2及び図3に示すように、上端部から中心軸Oに沿って下側に向けて延在する連通溝部44Bが形成されている。
【0022】
制限部45は、図4に示すように、中心軸O及び径方向の双方向に沿って延在する4つの板状の制限板部46を有している。これら制限板部46の上端部には、図2に示すように、弁部材32の後述する弁体部(弁体)52の外周縁部が当接可能となっている。また、周方向で隣り合う2つの制限板部46間には、図2及び図4に示すように、制限部45よりも上側とシリンダ2の内側とを連通する連通路46Aが形成されている。
【0023】
連通筒36は、図2に示すように、上面視で円環状をなす環状壁部47と、環状壁部47の内周縁部から上側に向けて突設された円筒状の内筒部48と、環状壁部47の外周縁部から下側に向けて突設された下筒部49と、を有する。これら環状壁部47、内筒部48及び下筒部49は、中心軸Oと同軸上に配設されている。
【0024】
環状壁部47の内側開口は、導入口47Aを形成している。そして、環状壁部47の内周縁部は、後述する弁体部52の弁座を形成している。
内筒部48は、外筒部44よりも径方向内側に配設されている。また、内筒部48には、図2及び図3に示すように、上端部から中心軸Oに沿って下側に向けて延在する連通溝部48Aが形成されている。内筒部48における連通溝部48Aは、外筒部44における連通溝部44Bとは周方向で90°ずらした位置に配設されている。
下筒部49は、図2に示すように、外筒部44の内側に取り付けられており、その下端部は、底壁部41に当接している。また、下筒部49の上下方向中央部には、径方向外側に向けて突出すると共に係合凹部44Aと係合する係合突部49Aと、係合突部49Aよりも下側において径方向内側に向け突出する係合突部49Bと、がそれぞれ全周にわたって形成されている。
【0025】
弁部材32は、下筒部49の上端部に内嵌された扁平な円筒状の支持筒部(支持部)51と、内筒部48の導入口47Aを下側から閉塞する円板状の弁体部52と、支持筒部51と弁体部52とを連結する弾性連結部(連結部)53と、を備える。これら支持筒部51及び弁体部52は、中心軸Oと同軸上に配設されている。
支持筒部51は、下筒部49の内側に取り付けられており、その下端部は、制限板部46の上端部に当接している。また、支持筒部51の下端部には、径方向外側に向けて突出すると共に係合突部49Bと係合する係合突部51Aが全周にわたって形成されている。
【0026】
弁体部52は、外径が環状壁部47の内径よりも大径とされており、環状壁部47の内周縁部に下側から着座している。この弁体部52には、内筒部48に呼気が導入されたときに、呼気の導入圧が導入口47Aを通して作用する。
弾性連結部53は、周方向で等間隔に複数(本実施形態では3つ)配設されており、弁体部52に呼気の導入圧が作用したときに弾性変形して弁体部52を下側に向けて変位させる。これにより、導入口47Aが開放され、開閉弁4が開状態となる。また、呼気の導入を停止すると、弾性連結部53が復元変形して弁体部52を上側に復元変位させる。これにより、導入口47Aが閉塞され、開閉弁4が閉状態となる。
【0027】
本実施形態の開閉弁4では、シリンダ2の口部12を通して呼気が流出しようとしても、弁体部52に呼気の流出圧が下側から作用することによって、環状壁部47の内周縁部に弁体部52の外周縁部が押し付けられるので、口部12を通した呼気の流出が阻止される。したがって、開閉弁4は、口部12を通したシリンダ2の内側への呼気の導入を許容し、かつシリンダ2から口部12を通して呼気が流出することを阻止する逆止弁となっている。
【0028】
次に、以上のような構成の呼気捕集シリンジ容器1による呼気の捕集方法について説明する。
導入筒31に呼気を吹き込むと、呼気の導入圧によって、弁体部52が下側に向けて変位して環状壁部47の内周縁部から離間し、導入口47Aが開放される。このとき、弁体部52の外周縁部は、制限板部46の上端部に当接することで、さらに下側に変位することが規制されている。そのため、弁体部52と支持筒部51とを連結する弾性連結部53が過度に弾性変形することが抑制される。
【0029】
導入筒31に吹き込まれた呼気は、開閉弁4における連通筒36の内側、導入口47A、連通路46A及び口部12の下端開口を通してシリンダ2内に導入される。このとき、内筒部48及び外筒部44それぞれに連通溝部48A、44Bを形成しており、内筒部48と外筒部44とが連通しているので、外筒部44に吹き込まれた呼気も、内筒部48の連通溝部48A及び内筒部48内を通してシリンダ2内に導入される。
【0030】
シリンダ2内に呼気が導入されると、シリンダ2の内圧が上昇し、シリンダ2の内周面に気密に摺接しているピストン3の摺動部23が下側に向けて摺動する。このようにして所定量の呼気をシリンダ2内に吹き込む。その後、呼気の吹き込みを停止すると、弁体部52にかかる呼気の導入圧が解除され、弾性連結部53が復元変形する。これにより、弁体部52が上側に向けて変位して環状壁部47の内周縁部に再び着座する。ここで、弁体部52が下側から環状壁部47の内周縁部に着座しており、シリンダ2の内圧によって弁体部52が上側に変位しないので、例えばピストン3をシリンダ2内に押し込んでシリンダ2の内圧が上昇しても、シリンダ2内から導入口47Aを通した呼気の流出が規制される。
以上のようにして、呼気の捕集を行う。このように、シリンダ2内に呼気を捕集すると、シリンダ2からのピストン3の突出量が増大する。そして、このピストン3の突出量を視認することによって、呼気捕集シリンジ容器1が使用前か使用後であるかの判別が行える。
【0031】
なお、導入筒31に呼気を吹き込むことによってシリンダ2内に呼気を導入しているが、ピストン3を下側に引くことによって呼気を捕集してもよい。この場合、ピストン3を下側に引くと、シリンダ2の内圧が低下するので、弁体部52が下側に向けて変位して環状壁部47の内周縁部から離間する。これにより、導入口47Aが開放される。
導入口47Aを開放すると、導入筒31の内筒部48の内側が負圧となるので、内筒部48から導入口47Aを通してシリンダ2内に呼気が吸入される。その後、ピストン3を下方に引っ張ることを停止すると、弁体部52が上側に向けて変位して環状壁部47の内周縁部に再び着座する。
さらに、呼気の吹き込みと、ピストン3を下側に引くこととを併せて呼気を捕集してもよい。
【0032】
このとき、上述と同様に、内筒部48と外筒部44とが連通しているので、外筒部44からも呼気がシリンダ2内に導入されると共に、負圧による吸引力が内筒部48に対して局所的に強く作用することが抑制される。また、連通溝部44B、48Aの周方向に沿う配置位置をずらしているので、外筒部44と内筒部48との間を周方向に迂回させてから吸引力が外筒部44に作用する。これにより、外筒部44をくわえる口にかかる吸引力が緩和される。さらに、吸引力によって装着筒35の上端部に例えば舌が密着しても、外筒部44の連通溝部44Bから外気を導入して減圧を解除することによって、この密着を解放する。
【0033】
以上のような構成の呼気捕集シリンジ容器1によれば、呼気の捕集後にシリンダ2からのピストン3の突出量が増大するので、この突出量を視認するだけで呼気捕集シリンジ容器1が使用前であるか否かの判別が可能になる。また、ピストン3がシリンダ2の内側に挿入されているので、使用前の呼気捕集シリンジ容器1がコンパクト化される。
さらに、弁体部52の下側への変位量を制限部45で制限して弾性連結部53が過度に弾性変形することを防止することにより、呼気の導入を停止したときに、弁体部52を環状壁部47の内周縁部により確実に着座させることができる。
また、ピストン3を下側に引くことによって呼気をシリンダ2内に捕集する場合に、外筒部44をくわえる使用者の例えば舌などが内筒部48及び外筒部44に吸引されることを抑制すると共に、舌などが内筒部48及び外筒部44に密着した場合に、この密着を容易に解除することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、装着筒35がシリンダ2の螺着筒部13に螺着されているが、例えば図5に示すように、導入筒60の装着筒61が円筒状の外嵌筒部62を有しており、この外嵌筒部62をシリンダ2の口部12に外嵌することによって装着する構成など、他の構成でシリンダ2に装着されてもよい。この場合、シリンダ2及びピストン3の形状を変更する必要はない。
【0035】
次に、本発明による呼気捕集シリンジ容器の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図6においては、図1から図4と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
本実施形態における呼気捕集シリンジ容器100では、図6に示すように、導入筒101が口部12内に配設されている。
導入筒101は、上面視で円環状の環状壁部102と、環状壁部102の内周縁部から上側に向けて突設された円筒状の内嵌筒部103と、環状壁部102の外周縁部から下側に向けて突設された円筒状の下筒部104と、を備えている。これら環状壁部102、内嵌筒部103及び下筒部104は、中心軸Oと同軸に配設されている。
【0037】
環状壁部102は、口部12よりも下側に配設されており、その内側開口は、導入口102Aを形成している。また、環状壁部102の内周縁部は、弁体部52の弁座を形成している。
内嵌筒部103は、口部12の内周面に内嵌されており、その下端部は、口部12よりも下側に向けて突出している。
下筒部104の下端部には、径方向内側に向けて突出する係合突部104Aが全周にわたって形成されている。
【0038】
弁部材32の弁体部52は、外径が環状壁部102の内径よりも大径とされており、環状壁部102の内周縁部に下側から着座している。
支持筒部51は、下筒部104の内側に取り付けられており、支持筒部51の係合突部51Aは、下筒部104の係合突部104Aと係合している。
【0039】
以上のような構成の呼気捕集シリンジ容器100においても、上述した第1実施形態における呼気捕集シリンジ容器1と同様の作用、効果を奏するが、導入筒101及び弁部材32をシリンダ2の内側に配設しているため、シリンダ2及びピストン3の形状を大幅に変更する必要がなくなる。
【0040】
次に、本発明による呼気捕集シリンジ容器の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図7及び図8においては、図1から図4と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
本実施形態における呼気捕集シリンジ容器110では、図7に示すように、シリンダ111の口部112が第1実施形態における装着筒35と口部12とを一体的にした形状をなしている。
口部112は、円筒状の外筒部113と、外筒部113よりも径方向内側に配設された円筒状の内筒部114と、外筒部113と内筒部114とを連結する上面視で円環状の環状壁部115と、を備えている。これら外筒部113、内筒部114及び環状壁部115は、中心軸Oと同軸上に配設されている。そして、口部112の内側には、弁部材32と制限部材116とが配設されている。
【0042】
外筒部113には、中心軸Oに沿って上端部から下側に向けて延在する連通溝部113Aが形成されている。また、外筒部113の内周面には、径方向内側に向けて突出する係合突部113Bと、係合突部113Bよりも下側において径方向内側に向けて突出する係合突部113Cと、が全周にわたって形成されている。
内筒部114には、中心軸Oに沿って上端部から下側に向けて延在する連通溝部114Aが形成されている。内筒部114の連通溝部114Aの形成位置と外筒部113の連通溝部113Aの形成位置とは、上述した第1実施形態と同様に、周方向でずらされている。
環状壁部115の内側開口は、導入口115Aを形成している。また、環状壁部115の内周縁部は、弁体部52の弁座を形成している。
【0043】
弁部材32の弁体部52は、外径が環状壁部115の内径よりも大径となっており、環状壁部115の内周縁部に下側から着座している。
支持筒部51は、環状壁部115より下方における外筒部113の内側に取り付けられており、支持筒部51の係合突部51Aは、外筒部113の係合突部113Bと係合している。
【0044】
制限部材116は、円筒状をなす筒壁部117と、筒壁部117の内側に配設された4つの制限板部118と、を備えている。
筒壁部117は、外筒部113の内側に取り付けられている。そして、筒壁部117の下端部は、径方向外側に向けて全周にわたって突出しており、外筒部113の係合突部113Cと係合している。
4つの制限板部118は、横断面十字状に配設されており、周方向で隣り合う2つの制限板部118と筒壁部117とによって連通路118Aを画定する。
【0045】
以上のような構成の呼気捕集シリンジ容器110においても、上述した第1実施形態における呼気捕集シリンジ容器1と同様の作用、効果を奏するが、口部112が第1実施形態における導入筒31と口部12とを一体化した構成となることで、部品点数の削減が図れる。また、例えば第1実施形態における装着筒部42のような導入筒31をシリンダ2の口部12に装着するための構造を設ける必要がなくなるので、呼気捕集シリンジ容器110が低背化し、さらなるコンパクト化が図れる。
【0046】
次に、本発明による呼気捕集シリンジ容器の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図9においては、図1から図4と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
本実施形態における呼気捕集シリンジ容器120では、図9に示すように、ピストン121のピストン本体部122を構成する4つの突リブ部123のうちの1つの径方向先端部には、径方向内側に向けて陥没する収容凹部123Aと、収容凹部123A内に収容可能な係合片部124と、が形成されている。
係合片部124は、中心軸Oに沿って延在する棒状をなしており、その上下方向の中央部は、ヒンジ部125を介して突リブ部123に接続されている。これにより、係合片部124は、上端部がヒンジ部125回りで径方向外側に突出するように回動可能となっている。なお、ヒンジ部125は、係合片部124の上端部をピストン121の外周から径方向外側に突出させることができれば、係合片部124の下端部に配設されてもよい。
【0048】
次に、以上のような構成の呼気捕集シリンジ容器120による呼気の捕集方法について説明する。
まず、上述した実施形態と同様の方法により、シリンダ2内に呼気を捕集する。そして、呼気の捕集した後に、図9の矢印Aに示すように、シリンダ2から突出している係合片部124をヒンジ部125回りで回動させ、係合片部124の上端部を突出板部14の環状溝部14Aと係合させる。これにより、ピストン3が上側に向けて進行することを規制する。
なお、係合片部124を収容凹部123A内に再度収容することにより、ピストン121をシリンダ2内で上下方向に往復移動させることが可能となる。
【0049】
以上のような構成の呼気捕集シリンジ容器120によれば、呼気を捕集した後に、係合片部124の上端部を突出板部14の環状溝部14Aと係合させることで、ピストン121がシリンダ2内で上側に向けて進行して捕集した呼気を流出させることを抑制できる。
【0050】
次に、本発明による呼気捕集シリンジ容器の第5実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、図10においては、図1から図4と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
本実施形態における呼気捕集シリンジ容器130では、図10A及び図10Bに示すように、ピストン131のピストン本体部132を構成する4つの突リブ部133のうち中心軸Oを径方向で挟む2つの突リブ部133の径方向外側の端部に、周方向に突出する周方向突出部134が形成されている。なお、周方向突出部134は、少なくとも1つの突リブ部133に形成されていればよい。
また、シリンダ135の下端部には、図10に示すように、一対の突出板部136が径方向外側に向けて突設されている。
【0052】
以上のような構成の呼気捕集シリンジ容器130においても、上述した第1実施形態における呼気捕集シリンジ容器1と同様の作用、効果を奏するが、呼気を捕集した後に、シリンダ135のうち一対の突出板部136が形成されていない部分と周方向突出部134とを周方向に位置合わせすることで、シリンダ135の外周面と周方向突出部134とがほぼ同一面になる。そのため、図10Aに示すように、シリンダ135の外周面から周方向突出部134にわたって、使用者の情報などを記載したラベル137を貼付できる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、上述した第4及び第5実施形態の構成は、第1実施形態の構成に限らず、第2または第3実施形態の構成に適用してもよい。
弁部材は、呼気の導入時に導入圧によって導入口を開放すると共に呼気の導入の停止時に導入口を閉塞する構成であれば、他の構成であってもよい。
制限部材または制限部を配設しているが、これらを設けなくてもよい。
外筒部及び内筒部それぞれに連通溝部を形成しているが、外筒部に連通溝部を形成しない、または外筒部及び内筒部双方に連通溝部を形成しなくてもよく、また、外筒部及び内筒部それぞれの連通溝部を周方向でずらす角度は、90°に限られず、外筒部及び内筒部それぞれの連通溝部の配置位置を周方向で位置合わせしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明によれば、操作性を維持しつつ、使用前後の判別が容易で、かつ使用前の状態でコンパクトである呼気捕集シリンジ容器に関して、産業上の利用可能性が認められる。
【符号の説明】
【0055】
1,100,110,120,130 呼気捕集シリンジ容器、2,111,135 シリンダ、3,121,131 ピストン、12,112 口部、24,123,133 突リブ部、31,60,101 導入筒、32 弁部材、44,113 外筒部、44B,48A,113A,114A 連通溝部(溝部)、45 制限部(制限部材)、46A,118A 連通路、47A,102A,115A 導入口、48,114 内筒部、51 支持筒部(支持部)、52 弁体部、53 弾性連結部(連結部)、116 制限部材、123A 収容凹部、124 係合片部、134 周方向突出部、136 突出板部、137 ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向先端部から導入された呼気を内部に捕集するシリンダと、
前記シリンダの内側に、その軸方向基端側から挿入されたピストンと、
前記軸方向先端部に設けられると共に、呼気を前記シリンダ内に導入する導入口が形成された導入筒と、
前記導入筒内において前記導入口よりも軸方向基端側に配設され、前記導入筒に呼気が導入されたときに呼気の導入圧により前記導入口を開放すると共に、呼気の導入を停止したときに前記導入口を閉塞する弁部材と、
を備えることを特徴とする呼気捕集シリンジ容器。
【請求項2】
前記弁部材が、軸方向に変位して前記導入口を軸方向基端側から開閉する弁体部と、前記導入筒内に固定される支持部と、前記弁体が軸方向で変位可能となるように前記弁体と前記支持体とを連結する連結部と、を有し、
前記導入筒内のうち前記弁体部よりも軸方向基端側には、前記弁体部における軸方向基端側への変位量を制限すると共に前記導入口と前記シリンダの内側とを連通する連通路が形成された制限部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の呼気捕集シリンジ容器。
【請求項3】
前記導入筒が、呼気を捕集する使用者の口でくわえられる外筒部と、前記外筒部よりも径方向内側に配設されると共に内側が前記導入口に連通する内筒部と、を有し、
前記外筒部及び前記内筒部には、それぞれ軸方向に沿って延在する溝部が形成されていると共に、前記外筒部に形成された溝部と前記内筒部に形成された溝部とが、それぞれの周方向に沿う位置を異ならせて配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の呼気捕集シリンジ容器。
【請求項4】
前記導入筒が、前記軸方向先端部に形成された口部と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の呼気捕集シリンジ容器。
【請求項5】
前記シリンダの軸方向基端部には、径方向外側に向けて突出する突出板部が形成されており、
前記ピストンには、径方向内側に向けて陥没する収容凹部と、前記収容凹部内に該ピストンの外周に対して径方向に出没自在に配設された係合片部と、が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の呼気捕集シリンジ容器。
【請求項6】
前記ピストンが、軸方向に沿って延在すると共に径方向外側に向けて突出する複数の突リブ部を有し、
前記突リブ部の少なくとも1つの径方向先端部には、周方向に突出する周方向突出部が形成され、
前記シリンダの軸方向基端部には、周方向に間隔をあけて複数の突出板部が径方向の外側に向けて突設されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の呼気捕集シリンジ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−177649(P2012−177649A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41587(P2011−41587)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】