説明

唾液量測定用キット及びそれを用いた唾液量測定方法

【課題】 被験者の口腔内の唾液量を簡易且つ迅速に測定することが可能な唾液量測定用キットを提供する。
【解決手段】 0.5mlの水分を吸収するとその体積が5〜500%に膨潤する素材を用いた唾液吸収部と棒状の把持部とからなる唾液採取具と、膨潤した唾液吸収部の大きさと比較して評価するための手段を備える測定具からなる唾液量測定用キットである。このとき、測定具が、唾液の吸収前の唾液吸収部と同じ大きさから唾液の吸収後の唾液吸収部と同じ大きさの範囲の唾液吸収部と略同外形の1つ以上の印が表記された測定具であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のう蝕のリスク評価や唾液分泌量の変化を判定するため用いる唾液量測定用キット及びそれを用いた唾液量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会を迎え高齢者が薬剤を服用する機会が増えている。特に降圧剤,利尿剤,向精神薬等は唾液減少を副作用として伴うことが多い。唾液の減少はQOLの低下を招き、また、う蝕,歯周病,口臭等にもつながる。そこで、唾液の分泌量を確認するために唾液量を簡便,迅速に測定できる方法が望まれている。
【0003】
自己免疫疾患のシェーグレン症候群用の唾液量検査方法にサクソンテストやガムテストがあるが、サクソンテストは唾液を吸収させたガーゼの重量測定のために0.1g単位以上の精度の高い高価な測定器を用意しなければならないので簡単に実施できない。ガムテストはガムを咀嚼して一度唾液を全て廃棄した後、再度5分間ほど咀嚼して目盛の付いたシリンダーに吐き出した唾液量を測定する方法である。しかし、この方法は時間がかかり、メスシリンダーの目盛を読むことが難しく目盛の読み間違いも多かった。
【0004】
簡易型の唾液検査用具として、唾液の浸透速度が一定範囲内にある支持体を備えている唾液検査用具が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この検査用具は目盛が印字された短冊状の検査紙の一端を口腔内に挿入し、一定時間経過後に検査用紙が吸収した唾液量を検査用紙に印字された目盛から読み取る方法である。しかしながら、この唾液検査用具は、検査時に被験部位に紙が接触する面積が一定とならないので精度の低い測定方法であった。また目盛を読み間違う虞もあった。
【特許文献1】特開2000−329763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、患者の口腔内の唾液量を簡易且つ迅速に測定することが可能な唾液量測定用キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来の簡易型の唾液検査用具は把持部も唾液を吸収し、更にその把持部が目盛を兼ねていたため、これが唾液の吸収にばらつきを生じさせて検査精度が悪化していた不具合を見出した。そして、唾液吸収部と把持部とを分た唾液採取具と測定具とからなる唾液量測定用キットを用いれば、測定の精度が上がり、更に、測定具は唾液の吸収前の唾液吸収部と唾液の吸収後の唾液吸収部の大きさの違いから唾液の吸収具合を評価する方法とすれば、目盛を用いないので測定者の読み間違いがなく、感覚的に素早い測定が可能となるとことを究明して本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、0.5mlの水分を吸収するとその体積が5〜500%に膨潤する素材を用いた唾液吸収部と棒状の把持部とからなる唾液採取具と、膨潤した唾液吸収部の大きさと比較して評価するための手段を備える測定具からなる唾液量測定用キットである。このとき、測定具が、唾液の吸収前の唾液吸収部と同じ大きさから唾液の吸収後の唾液吸収部と同じ大きさの範囲の唾液吸収部と略同外形の1つ以上の印が表記された測定具であったり、測定具が、唾液の吸収前の唾液吸収部と同じ大きさから唾液の吸収後の唾液吸収部と同じ大きさの範囲の穴を1つ以上有する測定具2であったりする形態が好ましい。
【0008】
そしてこの唾液量測定用キットを用いた唾液量測定方法は、0.5mlの水分を吸収するとその体積が5〜500%に膨潤する素材を用いた唾液吸収部を口腔内に挿入し、規定時間経過後に口腔内より取り出した唾液で膨潤した唾液吸収部をその大きさで評価するための手段を備える測定具で評価する方法である。このとき、測定具が、唾液の吸収前の唾液吸収部と同じ大きさから唾液の吸収後の唾液吸収部と同じ大きさの範囲の唾液吸収部と略同外形の1つ以上の印が表記された測定具であり評価方法が該測定具上の印に唾液吸収部を合わせて大きさを比較する方法であったり、測定具が、唾液の吸収前の唾液吸収部と同じ大きさから唾液の吸収後の唾液吸収部と同じ大きさの範囲の穴を1つ以上有する測定具であり評価方法が該穴に唾液で膨潤した唾液吸収部を通す方法であることが好ましい唾液量測定方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る唾液量測定用キットは、患者の口腔内の唾液量を簡易に且つ正確に検査することが可能な優れた唾液量測定用キットである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る唾液量測定用キットのスペーサーの実施例を示す斜視説明図。
【図2】本発明に係る唾液量測定用キットの別の実施例を示す斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る唾液量測定用キットを図面を用いて説明する。図面中1は水を0.5ml吸収した場合に5〜500体積%膨潤する唾液吸収部1aと把持部1bとからなる唾液採取具1である。唾液吸収部1aは口腔内に挿入しやすいよう棒状の把持部1bの先端にあることが好ましい。
【0012】
唾液吸収部1aは唾液を吸収して膨潤する必要がある。その材質としては水を0.5ml吸収した場合に5〜500体積%膨潤するものであって苦み等の味が少なく人体に害の無いものが使用される。例えば、コットン,レーヨン,アセテート,セルロース,ニトロセルロース,ポリウレタン,ポリエステル,ポリエーテルスルホン,ポリスルホン,ナイロン,ナイロン,ポリビニリデンフロライド,ポリプロピレン,セルロース等の材料を繊維や紙状を纏めて圧縮し乾燥させたものが例示できる。
【0013】
また、唾液吸収部1aは一般的な高分子吸収体も使用可能であり、デンプン系,セルロース系,合成ポリマー系が挙げられる。即ち、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体,デンプン−アクリル酸エチルグラフト共重合体のケン化物,デンプン−メタクル酸メチルグラフト共重合体のケン化物,デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物,デンプン−アクリルアミドグラフト共重合体のケン化物,デンプン−アクリロニトリル−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸グラフト共重合体のケン化物,アクリル酸(塩)重合体,アクリル酸で架橋されたポリエチレンオキシド,ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物,ポリビニルアルコール−無水マレイン酸反応物の架橋物等である。ポリアクリル酸ナトリウム系のものが吸収性能の点から最も適当である。
【0014】
吸収体の圧縮方法としては、ガーゼや布等の表地で挟んでから周面が平滑なロールにより、吸収体の密度がその全体にわたり実質的に均等になるように圧縮し、口腔内に挿入しやすい大きさに裁断する方法がある。
【0015】
把持部1bは、棒状をなし唾液吸収部1aを先端に固定可能であって唾液採取具1を操作しやすい形状であって唾液を吸収しない材質であれば各種プラスチック樹脂,ロール紙,木等を特に限定無く使用可能である。
【0016】
図面中2は唾液で膨潤した唾液吸収部1aを評価するための測定具2である。測定具2は唾液の吸収前の唾液吸収部1aと唾液の吸収後の唾液吸収部1aの大きさの違いから唾液の吸収具合(患者の唾液の分泌具合)を評価する。評価は、例えば、図1に示したような、唾液の吸収前の唾液吸収部1aと唾液の吸収後の唾液吸収部1aの範囲の大きさの印2aが表記された測定具2を使用して行う。
【0017】
別の例としては、図2に示したような、測定具2が、唾液の吸収前の唾液吸収部1aと唾液の吸収後の唾液吸収部1aの範囲の大きさと略同じ大きさの穴2bを複数のリングを備えた測定具2を例示できる。
【0018】
本発明に係る唾液量測定用キットを用いた唾液量測定方法は、水を0.5ml吸収した場合に5〜500体積%膨潤する唾液吸収部1aと把持部1bとからなる唾液採取具1の唾液吸収部1aを口腔内に挿入し、規定時間経過後に口腔内より取り出した唾液で膨潤した唾液吸収部1aを測定具2で評価する唾液量測定方法である。
【0019】
測定具2が唾液の「吸収前の唾液吸収部1a」の大きさから「唾液の吸収後の唾液吸収部1a」の大きさとの略同じ大きさの範囲にある印2aが表記された検査用シート2aである場合の唾液量測定方法は、測定具2に表記された、図1の例では大きさの異なる3つの印(2a)に唾液吸収部1aを合わせ、使用前(唾液の吸収前)の唾液吸収部1aの大きさ及び/または使用後(唾液の吸収後)の唾液吸収部1aの大きさを印2aと比較して最も近い大きさの印2aを患者の唾液分泌量として評価する方法である。評価の基準は唾液吸収部1aの材質,口腔内へ挿入している時間等によって異なるが、いずれにしても唾液を吸収した後に、予め測定条件によって定められている基準の大きさに唾液吸収部1aが達しているか否かを比較評価の基準とする。
【0020】
例えば図1のシートに黒い印が3つ印刷されている検査用具2を用いた唾液量測定用キットの場合には、使用後の唾液吸収部1aと3つの印(2a)とを評価者の視線上に直線に並べて印2aが唾液吸収部1aからはみ出して見える最小の大きさの印2aを患者の唾液分泌量と評価する。このときの印2aの大きさは、予め唾液吸収部1aが吸収する唾液の量から定められているので簡単に患者の唾液分泌量を評価することができるのである。図1の例では3つの印2aを用いて説明したが、印2aは1つであってもよい。
【0021】
測定具2が唾液の「吸収前の唾液吸収部1a」の大きさから「唾液の吸収後の唾液吸収部1a」の大きさとの略同じ大きさの範囲にある穴2bを有する測定具2である場合の唾液量測定方法は、図2の例では大きさの異なる穴(2b,2b,2b)に唾液吸収部1aを通し、または通るか否かを試してみて、使用後(唾液の吸収後)の唾液吸収部1aが通る最小の大きさの穴2bを患者の唾液分泌量として評価する方法である。評価の基準は唾液吸収部1aの材質,口腔内へ挿入している時間等によって異なるが、いずれにしても唾液を吸収した後に予め定めてある基準の大きさに達しているか否かを比較評価の基準とする。
【0022】
例えば図2の穴2bのあいた円盤2cがロッド2dで主柱2eに連結されてなる検査用具2を用いた唾液量測定用キットの場合には、使用後の唾液吸収部1aを3つの穴2bの唾液吸収部1aより大きいと思われる穴2bから唾液吸収部1aが通るか否かを試みて穴2bに使用後(唾液の吸収後)の唾液吸収部1aが通る最小の大きさの穴2bを患者の唾液分泌量として評価する。このときの穴2bの大きさは、予め唾液吸収部1aが吸収する唾液の量から定められているので簡単に患者の唾液分泌量を評価することができるのである。図2の例では3つの穴2bを用いて説明したが、穴2bは1つであってもよい。
【0023】
本発明に係る唾液量測定用キットに用いる測定具2は、図1に示した測定具であれば、印に代えてシートに穴を開けた測定具であってもよいし。同様に、図2に示した測定具であれば、穴に代えて円盤状に印を表記した測定具であってもよい。また、それ以外にも、U字型の測定部に、その間に唾液吸収部を挟むようにして唾液吸収部の大きさを評価する方法、唾液を吸収すると吸収の具合によって形が球状から棒状に変化する測定具等を用いた多くの検査具による評価方法が考えられる。
【符号の説明】
【0024】
1 唾液採取具
1a 唾液吸収部
1b 把持部
2 測定具
2a 印
2b 穴
2c 円盤
2d ロッド
2e 主柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5mlの水分を吸収するとその体積が5〜500%に膨潤する素材を用いた唾液吸収部1aと棒状の把持部1bとからなる唾液採取具1と、膨潤した唾液吸収部1aの大きさと比較して評価するための手段を備える測定具2からなる唾液量測定用キット。
【請求項2】
測定具2が、唾液の吸収前の唾液吸収部1aと同じ大きさから唾液の吸収後の唾液吸収部1aと同じ大きさの範囲の唾液吸収部1aと略同外形の1つ以上の印2aが表記された測定具2である請求項2に記載の唾液量測定用キット。
【請求項3】
測定具2が、唾液の吸収前の唾液吸収部1aと同じ大きさから唾液の吸収後の唾液吸収部1aと同じ大きさの範囲の穴2bを1つ以上有する測定具2である請求項1または2に記載の唾液量測定用キット。
【請求項4】
0.5mlの水分を吸収するとその体積が5〜500%に膨潤する素材を用いた唾液吸収部1aを口腔内に挿入し、規定時間経過後に口腔内より取り出した唾液で膨張した唾液吸収部1aを膨潤した唾液吸収部1aの大きさと比較して評価するための手段を備える測定具2で評価する唾液量測定方法。
【請求項5】
測定具2が、唾液の吸収前の唾液吸収部1aと同じ大きさから唾液の吸収後の唾液吸収部1aと同じ大きさの範囲の唾液吸収部1aと略同外形の1つ以上の印2aが表記された測定具2であり、評価方法が該測定具2上の印2aに唾液吸収部1aを合わせて大きさを比較する方法である請求項4に記載の唾液量測定方法。
【請求項6】
測定具2が、唾液の吸収前の唾液吸収部1aと同じ大きさから唾液の吸収後の唾液吸収部1aと同じ大きさの範囲の穴2bを1つ以上有する測定具2であり、評価方法が該穴2bに唾液で膨張した唾液吸収部1aを通す方法である請求項4に記載の唾液量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−210455(P2010−210455A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57390(P2009−57390)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】