噴霧ノズルヘッドの霧化性能検査方法および装置
【課題】 本発明は、噴霧ノズルヘッドの霧化性能を噴射物へ接触することなく自動で客観的に判定する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 レーザーを発生する装置と、そのレーザーの減衰量を測定するセンサを一対とする装置を備える。この一対の装置を横並びに複数配置することで空間の一方向での減衰量を測定できる。減衰量から一方向の濃度を計算できる。前記の一軸計測装置を、角度を変えて複数配置することで複数方向での減衰を測定できる。複数方向の減衰量から二次元平面の濃度を計算できる。ノズルヘッドにより検査用噴射物を噴霧して、前記の濃度測定装置を用いて検査用噴射物の濃度を測定することで霧化性能を判定する。判定は霧化されずに高濃度となっていないことと、規定する噴射範囲および噴射形状であることを判定論理により自動で判定する。
【解決手段】 レーザーを発生する装置と、そのレーザーの減衰量を測定するセンサを一対とする装置を備える。この一対の装置を横並びに複数配置することで空間の一方向での減衰量を測定できる。減衰量から一方向の濃度を計算できる。前記の一軸計測装置を、角度を変えて複数配置することで複数方向での減衰を測定できる。複数方向の減衰量から二次元平面の濃度を計算できる。ノズルヘッドにより検査用噴射物を噴霧して、前記の濃度測定装置を用いて検査用噴射物の濃度を測定することで霧化性能を判定する。判定は霧化されずに高濃度となっていないことと、規定する噴射範囲および噴射形状であることを判定論理により自動で判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を霧状に射出するノズルヘッドの霧化状態を検出し性能を測定する方法および装置に関するものである。
【技術背景】
【0002】
従来は水を用いて手動で水を霧状に噴射し、霧化状態を目視によって評価することでノズルヘッドの性能を検査していた。
【0003】
装置による自動判定方法として液体の代わりにガスを用いて、温度を検出する検出板に噴射し、温度変化の状態から霧化性能を判定する方法および装置が提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開平5−99802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手動による噴射と目視確認による性能検査では、実施者の技量や経験によるばらつきが生じる。
【0005】
手動による方法では人的検査速度の限界があるため、検査数量が多い場合に不向きである。
【0006】
温度を検出する検出板にガスを噴きつけることで噴霧性能を判定する方法では、温度の伝搬の影響や検出板へ衝突したガスの反射や回り込みの影響を除去しなければならない。
【0007】
本発明は、噴霧ノズルヘッドの霧化性能を噴射物へ接触することなく自動で客観的に判定する方法を提供する。
【問題を解決するための手段】
【0008】
レーザーを発生する装置と、そのレーザーの減衰量を測定するセンサを一対とする装置を備える。この一対の装置を横並びに複数配置することで空間の一方向での減衰量を測定できる。減衰量から一方向の濃度を計算できる。以後は一対の装置を横並びに複数配置した装置を一軸計測装置と称する。
【0009】
前記の一軸計測装置を、角度を変えて複数配置することで複数方向での減衰を測定できる。複数方向の減衰量から二次元平面の濃度を計算できる。以後は一軸計測装置を、角度を変えて複数軸での計測を行い時々刻々における二次元平面の濃度を計算する装置を濃度測定装置と称する。
【0010】
ノズルヘッドにより水を噴霧して、前記の濃度測定装置を用いて水分濃度を測定することで霧化性能を判定する。判定は霧化されずに高濃度となっていないことと、規定する噴射範囲および噴射形状であることを判定論理により自動で判定する。検査用噴射物として水を採用する場合には、レーザーとして可視光を用いる。
【0011】
前記の検査用噴射物を水の代わりに二酸化炭素を用いることができる。検査用噴射物として二酸化炭素を用いる場合にはレーザーとして赤外線を用いる。検査用噴射物に二酸化炭素を用いた場合に赤外線を用いる理由は、二酸化炭素が大気比較にて赤外線領域のレーザー光を良く吸収するため、噴霧ノズルヘッドから射出された二酸化炭素量をレーザーの減衰量により計算できるためである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の性能検査方法によれば、噴霧ノズルヘッドの霧化性能を自動で客観的に判定することができる。
【0013】
本発明の性能検査方法によれば、噴霧ノズルヘッドの霧化性能を検査に用いる噴射物へ接触することがないため、検査装置による検査外乱を低減させることができる。
【0014】
検査用噴射物として二酸化炭素を用いる場合には、検査用噴射物として水を用いた場合にノズルヘッド内に残留する水分を除去する手間を削減できる上に、残留水分に生じる雑菌の繁殖などのリスクを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は噴霧ノズルヘッドを含む噴霧ポンプ一式を表した一例である。図1の噴霧ポンプは噴霧する液体を収めた容器部(図4)と、操作部1を下方にスライドさせることで液体吸入部2から一定量の液体を吸入し、液体射出部3から液体を射出するポンプ部(図3)と、ポンプから射出された液体を霧状にするノズルヘッド(図2)からなる。
【0016】
図5はノズルヘッドの拡大断面図である。液体を霧化する機構部分をアクチュエータと称する。ポンプから射出された液体がアクチュエータ流入部4からアクチュエータ部に流入し、アクチュエータにより霧化され、アクチュエータ流出分5の円筒に射出される。
【0017】
図6は図5のA−A断面図であり、アクチュエータ部の断面図である。アクチュエータ流入部4から流入した液体は流速加速部6により加速されて、アクチュエータ流出部5より円筒へ沿って射出される。流速加速部6はアクチュエータ流出部に向かって狭くなることで液体が加圧され、液体の流速が加速される。流速加速部で加圧されて加速された液体はアクチュエータ流出部で空気中に放出されると共に減圧されるため霧化され、円筒面に沿って回転しながらノズルヘッド出口部まで進みノズルヘッド外部に射出される。外部に放出される際の円運動方向の速度と円筒直進方向の速度によりノズルヘッド性能の項目である噴射範囲と噴射形状が決まる。
【0018】
ノズルヘッドの性能不良の原因としては、前記の円筒内にバリと言われるノズルヘッド製造過程で生成される微小突起や傷部分により、円筒内を回転運動しながら外部へ向かって運動中の霧化された微小液体がバリや傷部分により特定方向に集中されてしまい、ジェット(図9)と称する一端霧化された液体が集合して一定方向に高濃度で射出される性能不良を発生させる。
【0019】
前記の原因が最も不良を発生させる要因であるが、それ以外にもノズルヘッド各部の製造過程における製造不良によってジェット(図9)や、規定の噴霧状態(図7)に対して噴霧方向が傾いている傾き噴霧(図8)、規定範囲より狭い範囲へ噴霧してしまう狭角噴霧(図10)、規定範囲より広い範囲へ噴霧してしまう広角噴霧(図11)と言う性能不良が発生する。
【0020】
図12は霧化状態を測定する装置を正面から見た図である。霧化状態を測定する装置は特定の断面の時々刻々の噴射物の濃度を測定するものであり、一断面測定の場合の測定位置は検査を行うノズルヘッドの実際使用時において実塗布面として想定した位置とする。本例では一断面の測定と判定を説明するが、複数断面を全て規定して性能評価を厳しく実施することもできる。
【0021】
図13は図12のB−B断面図である。レーザーを発生する装置と、そのレーザーの減衰量を測定するセンサを一対とする装置を表している。この一対の装置を横並びに複数配置することで空間の一方向での減衰量を測定できる。減衰量から一方向の濃度を計算できる。以後は一対の装置を横並びに複数配置した装置を一軸計測装置と称する。
【0022】
前記の一軸計測装置を、角度を変えて複数配置することで複数方向での減衰を測定できる。複数方向の減衰量から二次元平面の濃度を計算できる。以後は一軸計測装置を、角度を変えて複数軸での計測を行い時々刻々における二次元平面の濃度を計算する装置を濃度測定装置と称する。
【0023】
レーザーの減衰量から濃度を測定する装置として最も知られているものとして人体の断面を撮影するCTスキャンが挙げられる。人体の断面を撮影するCTスキャンは前記の一軸計測装置を測定対象物の周り一周させることで高い撮影分解能を実現しているが、本発明で要求するノズルヘッドの霧化性能評価の様に瞬間的事象を撮影することができない。本発明で採用する複数軸による計測では時々刻々の瞬間的な事象を計測できる上に、撮影軸数を増やすことで高い分解能を実現できる。図13の例では四軸の場合を表している。
【0024】
霧化性能の測定は濃度測定装置を用いて、濃度測定装置の測定面へ向けて検査用噴射物を、検査を行うノズルヘッドを用いて射出し、射出物の濃度分布を測定する。
【0025】
検査用射出物としては水を用いる。検査用射出物として水を用いる場合に使用するレーザーは可視光を用いる。レーザー発生装置から発生した可視光はノズルヘッドから射出された水により吸収および散乱されて減衰しセンサに入る。センサは減衰量からレーザーライン上の時々刻々の水の存在量を測定する。
【0026】
検査用射出物として二酸化炭素を用いることができる。検査用射出物として二酸化炭素を用いる場合に使用するレーザーは赤外線を用いる。レーザー発生装置から発生した赤外線はノズルヘッドから射出された二酸化炭素により吸収されて減衰しセンサに入る。センサは減衰量からレーザーライン上の時々刻々の二酸化炭素の存在量を測定する。
【0027】
図14は判定用のマップの一例を表している。測定面を図14の様にセグメント化し、濃度測定装置によって測定された濃度をセグメント毎に平均して計算し、各セグメント平均濃度として各種判定条件に用いる。判定用マップのセグメント分割は判定するノズルヘッドの規定する形状と範囲に応じて設定する。図14の例では円形状を規定形状とし、合格範囲基準9を図14の位置に設定する。
【0030】
濃度測定装置により測定された濃度から噴霧ノズルヘッドの性能を、コンピュータを用いて噴霧状態の濃度異常と範囲不良を図15と図16の判定フローチャートによりそれぞれ自動判定する。図15と図16の判定フローチャートはコンピュータのスレッド周期(一例として10ms)により毎ステップの判定および計算処理を行う。
【0029】
図15は濃度異常を判定するフローチャートを表している。以下で濃度異常を判定するフローチャートについて説明する。検査対象のノズルヘッドに検査用噴射物を検査対象のノズルヘッドに組み合わせて使用するポンプと同一の圧力および流量にて流入させる。この時点を噴射開始と判断し、濃度測定装置により測定面の濃度データ計測と記録を開始すると共に過去の濃度データを廃棄し、判定カウントをリセットして次のステップに進む。
【0030】
記録開始と判断後でノズルヘッドから検査用噴射物が射出完了したと判断できる一定時間経過前である場合かつデータ記録中の場合は、図14の判定用マップの各セグメント濃度を検出し、規定濃度上限以上の濃度のセグメント数が高濃度と判断できる一定セグメント数以上の場合に判定カウントをカウントアップし次のステップに進む。以後は一定時間経過するまで本ステップを繰り返して判定カウント数を計算する。
【0031】
記録開始と判断後でノズルヘッドから検査用噴射物が射出完了したと判断できる一定時間経過後である場合は、データ記録を終了し、前ステップまで計算された判定カウント数が一定数以上の場合に本検査のノズルヘッドは濃度異常を発生させるノズルヘッドとして判断する。前記の判定カウントが一定数以上であることの判断の目的は瞬時的に高濃度となった場合等のノイズを除去することを目的としている。
【0032】
図16は噴射形状および噴射範囲を判定するフローチャートを表している。以下で噴射形状および噴射範囲を判定するフローチャートについて説明する。検査対象のノズルヘッドに検査用噴射物を検査対象のノズルヘッドに組み合わせて使用するポンプと同一の圧力および流量にて流入させる。この時点を噴射開始と判断し、濃度測定装置により測定面の濃度データを計測開始し、規定範囲カウントおよび外側NGカウントをリセットし、判定を開始して次のステップに進む。
【0033】
判定開始と判断後でノズルヘッドから検査用噴射物が射出完了したと判断できる一定時間経過前である場合は、規定範囲カウント判定と外側NGカウント判定を行う。各セグメントの濃度が一定以上の場合、そのセグメントの規定量の噴射物が存在したとしてセグメントがONと規定する。合格範囲基準9のセグメントラインが一定数以上ON(一例として75%以上ON)かつ合格範囲基準9のセグメントラインより内側のセグメントが一定数以上ON(一例として75%以上ON)の場合に規定範囲カウントをカウントアップする。
【0034】
さらに合格範囲基準9のセグメントラインより外側のセグメントが一定数以上ON(一例として8セグメント以上ON)の場合には、そのステップが範囲オーバーとして外側NGカウントをカウントアップする。以後は一定時間経過するまで本ステップを繰り返して規定範囲カウント数と外側NGカウントを計算する。
【0035】
判定開始と判断後でノズルヘッドから検査用噴射物が射出完了したと判断できる一定時間経過後である場合は、判定を終了し、前ステップまで計算された規定範囲カウント数が一定数以上かつ外側NGカウント数が一定未満の場合に本検査のノズルヘッドは規定範囲と判断する。逆に規定範囲カウント一定数未満又は外側NGカウントが一定上の場合には本検査のノズルヘッドは範囲不良と判断する。前記の規定範囲カウントが一定数以上かつ外側NGカウントが一定数未満であることの判断の目的は瞬時的にONとなった場合等のノイズを除去することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ノズルヘッドを含む噴射ポンプの正面図
【図2】ノズルヘッドの正面図
【図3】ポンプ部の正面図
【図4】容器部の正面図
【図5】図2の拡大断面図
【図6】図5のA−A断面図
【図7】規定の噴霧状態の図
【図8】傾き噴霧状態の図
【図9】ジェット噴射を含む噴霧状態の図
【図10】狭角噴霧の図
【図11】広角噴霧の図
【図12】噴霧状態の性能試験実施図
【図13】図12のB−B断面図
【図14】判定用マップの図
【図15】濃度異常を判定するフローチャート
【図16】噴射形状および噴射範囲を判定するフローチャート
【符号の説明】
【0037】
1 液体射出部
2 操作部
3 液体吸入部
4 アクチュエータ流入部
5 アクチュエータ流出部
6 流速加速部
7 レーザー発生装置
8 センサ
9 合格範囲基準
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を霧状に射出するノズルヘッドの霧化状態を検出し性能を測定する方法および装置に関するものである。
【技術背景】
【0002】
従来は水を用いて手動で水を霧状に噴射し、霧化状態を目視によって評価することでノズルヘッドの性能を検査していた。
【0003】
装置による自動判定方法として液体の代わりにガスを用いて、温度を検出する検出板に噴射し、温度変化の状態から霧化性能を判定する方法および装置が提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開平5−99802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手動による噴射と目視確認による性能検査では、実施者の技量や経験によるばらつきが生じる。
【0005】
手動による方法では人的検査速度の限界があるため、検査数量が多い場合に不向きである。
【0006】
温度を検出する検出板にガスを噴きつけることで噴霧性能を判定する方法では、温度の伝搬の影響や検出板へ衝突したガスの反射や回り込みの影響を除去しなければならない。
【0007】
本発明は、噴霧ノズルヘッドの霧化性能を噴射物へ接触することなく自動で客観的に判定する方法を提供する。
【問題を解決するための手段】
【0008】
レーザーを発生する装置と、そのレーザーの減衰量を測定するセンサを一対とする装置を備える。この一対の装置を横並びに複数配置することで空間の一方向での減衰量を測定できる。減衰量から一方向の濃度を計算できる。以後は一対の装置を横並びに複数配置した装置を一軸計測装置と称する。
【0009】
前記の一軸計測装置を、角度を変えて複数配置することで複数方向での減衰を測定できる。複数方向の減衰量から二次元平面の濃度を計算できる。以後は一軸計測装置を、角度を変えて複数軸での計測を行い時々刻々における二次元平面の濃度を計算する装置を濃度測定装置と称する。
【0010】
ノズルヘッドにより水を噴霧して、前記の濃度測定装置を用いて水分濃度を測定することで霧化性能を判定する。判定は霧化されずに高濃度となっていないことと、規定する噴射範囲および噴射形状であることを判定論理により自動で判定する。検査用噴射物として水を採用する場合には、レーザーとして可視光を用いる。
【0011】
前記の検査用噴射物を水の代わりに二酸化炭素を用いることができる。検査用噴射物として二酸化炭素を用いる場合にはレーザーとして赤外線を用いる。検査用噴射物に二酸化炭素を用いた場合に赤外線を用いる理由は、二酸化炭素が大気比較にて赤外線領域のレーザー光を良く吸収するため、噴霧ノズルヘッドから射出された二酸化炭素量をレーザーの減衰量により計算できるためである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の性能検査方法によれば、噴霧ノズルヘッドの霧化性能を自動で客観的に判定することができる。
【0013】
本発明の性能検査方法によれば、噴霧ノズルヘッドの霧化性能を検査に用いる噴射物へ接触することがないため、検査装置による検査外乱を低減させることができる。
【0014】
検査用噴射物として二酸化炭素を用いる場合には、検査用噴射物として水を用いた場合にノズルヘッド内に残留する水分を除去する手間を削減できる上に、残留水分に生じる雑菌の繁殖などのリスクを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は噴霧ノズルヘッドを含む噴霧ポンプ一式を表した一例である。図1の噴霧ポンプは噴霧する液体を収めた容器部(図4)と、操作部1を下方にスライドさせることで液体吸入部2から一定量の液体を吸入し、液体射出部3から液体を射出するポンプ部(図3)と、ポンプから射出された液体を霧状にするノズルヘッド(図2)からなる。
【0016】
図5はノズルヘッドの拡大断面図である。液体を霧化する機構部分をアクチュエータと称する。ポンプから射出された液体がアクチュエータ流入部4からアクチュエータ部に流入し、アクチュエータにより霧化され、アクチュエータ流出分5の円筒に射出される。
【0017】
図6は図5のA−A断面図であり、アクチュエータ部の断面図である。アクチュエータ流入部4から流入した液体は流速加速部6により加速されて、アクチュエータ流出部5より円筒へ沿って射出される。流速加速部6はアクチュエータ流出部に向かって狭くなることで液体が加圧され、液体の流速が加速される。流速加速部で加圧されて加速された液体はアクチュエータ流出部で空気中に放出されると共に減圧されるため霧化され、円筒面に沿って回転しながらノズルヘッド出口部まで進みノズルヘッド外部に射出される。外部に放出される際の円運動方向の速度と円筒直進方向の速度によりノズルヘッド性能の項目である噴射範囲と噴射形状が決まる。
【0018】
ノズルヘッドの性能不良の原因としては、前記の円筒内にバリと言われるノズルヘッド製造過程で生成される微小突起や傷部分により、円筒内を回転運動しながら外部へ向かって運動中の霧化された微小液体がバリや傷部分により特定方向に集中されてしまい、ジェット(図9)と称する一端霧化された液体が集合して一定方向に高濃度で射出される性能不良を発生させる。
【0019】
前記の原因が最も不良を発生させる要因であるが、それ以外にもノズルヘッド各部の製造過程における製造不良によってジェット(図9)や、規定の噴霧状態(図7)に対して噴霧方向が傾いている傾き噴霧(図8)、規定範囲より狭い範囲へ噴霧してしまう狭角噴霧(図10)、規定範囲より広い範囲へ噴霧してしまう広角噴霧(図11)と言う性能不良が発生する。
【0020】
図12は霧化状態を測定する装置を正面から見た図である。霧化状態を測定する装置は特定の断面の時々刻々の噴射物の濃度を測定するものであり、一断面測定の場合の測定位置は検査を行うノズルヘッドの実際使用時において実塗布面として想定した位置とする。本例では一断面の測定と判定を説明するが、複数断面を全て規定して性能評価を厳しく実施することもできる。
【0021】
図13は図12のB−B断面図である。レーザーを発生する装置と、そのレーザーの減衰量を測定するセンサを一対とする装置を表している。この一対の装置を横並びに複数配置することで空間の一方向での減衰量を測定できる。減衰量から一方向の濃度を計算できる。以後は一対の装置を横並びに複数配置した装置を一軸計測装置と称する。
【0022】
前記の一軸計測装置を、角度を変えて複数配置することで複数方向での減衰を測定できる。複数方向の減衰量から二次元平面の濃度を計算できる。以後は一軸計測装置を、角度を変えて複数軸での計測を行い時々刻々における二次元平面の濃度を計算する装置を濃度測定装置と称する。
【0023】
レーザーの減衰量から濃度を測定する装置として最も知られているものとして人体の断面を撮影するCTスキャンが挙げられる。人体の断面を撮影するCTスキャンは前記の一軸計測装置を測定対象物の周り一周させることで高い撮影分解能を実現しているが、本発明で要求するノズルヘッドの霧化性能評価の様に瞬間的事象を撮影することができない。本発明で採用する複数軸による計測では時々刻々の瞬間的な事象を計測できる上に、撮影軸数を増やすことで高い分解能を実現できる。図13の例では四軸の場合を表している。
【0024】
霧化性能の測定は濃度測定装置を用いて、濃度測定装置の測定面へ向けて検査用噴射物を、検査を行うノズルヘッドを用いて射出し、射出物の濃度分布を測定する。
【0025】
検査用射出物としては水を用いる。検査用射出物として水を用いる場合に使用するレーザーは可視光を用いる。レーザー発生装置から発生した可視光はノズルヘッドから射出された水により吸収および散乱されて減衰しセンサに入る。センサは減衰量からレーザーライン上の時々刻々の水の存在量を測定する。
【0026】
検査用射出物として二酸化炭素を用いることができる。検査用射出物として二酸化炭素を用いる場合に使用するレーザーは赤外線を用いる。レーザー発生装置から発生した赤外線はノズルヘッドから射出された二酸化炭素により吸収されて減衰しセンサに入る。センサは減衰量からレーザーライン上の時々刻々の二酸化炭素の存在量を測定する。
【0027】
図14は判定用のマップの一例を表している。測定面を図14の様にセグメント化し、濃度測定装置によって測定された濃度をセグメント毎に平均して計算し、各セグメント平均濃度として各種判定条件に用いる。判定用マップのセグメント分割は判定するノズルヘッドの規定する形状と範囲に応じて設定する。図14の例では円形状を規定形状とし、合格範囲基準9を図14の位置に設定する。
【0030】
濃度測定装置により測定された濃度から噴霧ノズルヘッドの性能を、コンピュータを用いて噴霧状態の濃度異常と範囲不良を図15と図16の判定フローチャートによりそれぞれ自動判定する。図15と図16の判定フローチャートはコンピュータのスレッド周期(一例として10ms)により毎ステップの判定および計算処理を行う。
【0029】
図15は濃度異常を判定するフローチャートを表している。以下で濃度異常を判定するフローチャートについて説明する。検査対象のノズルヘッドに検査用噴射物を検査対象のノズルヘッドに組み合わせて使用するポンプと同一の圧力および流量にて流入させる。この時点を噴射開始と判断し、濃度測定装置により測定面の濃度データ計測と記録を開始すると共に過去の濃度データを廃棄し、判定カウントをリセットして次のステップに進む。
【0030】
記録開始と判断後でノズルヘッドから検査用噴射物が射出完了したと判断できる一定時間経過前である場合かつデータ記録中の場合は、図14の判定用マップの各セグメント濃度を検出し、規定濃度上限以上の濃度のセグメント数が高濃度と判断できる一定セグメント数以上の場合に判定カウントをカウントアップし次のステップに進む。以後は一定時間経過するまで本ステップを繰り返して判定カウント数を計算する。
【0031】
記録開始と判断後でノズルヘッドから検査用噴射物が射出完了したと判断できる一定時間経過後である場合は、データ記録を終了し、前ステップまで計算された判定カウント数が一定数以上の場合に本検査のノズルヘッドは濃度異常を発生させるノズルヘッドとして判断する。前記の判定カウントが一定数以上であることの判断の目的は瞬時的に高濃度となった場合等のノイズを除去することを目的としている。
【0032】
図16は噴射形状および噴射範囲を判定するフローチャートを表している。以下で噴射形状および噴射範囲を判定するフローチャートについて説明する。検査対象のノズルヘッドに検査用噴射物を検査対象のノズルヘッドに組み合わせて使用するポンプと同一の圧力および流量にて流入させる。この時点を噴射開始と判断し、濃度測定装置により測定面の濃度データを計測開始し、規定範囲カウントおよび外側NGカウントをリセットし、判定を開始して次のステップに進む。
【0033】
判定開始と判断後でノズルヘッドから検査用噴射物が射出完了したと判断できる一定時間経過前である場合は、規定範囲カウント判定と外側NGカウント判定を行う。各セグメントの濃度が一定以上の場合、そのセグメントの規定量の噴射物が存在したとしてセグメントがONと規定する。合格範囲基準9のセグメントラインが一定数以上ON(一例として75%以上ON)かつ合格範囲基準9のセグメントラインより内側のセグメントが一定数以上ON(一例として75%以上ON)の場合に規定範囲カウントをカウントアップする。
【0034】
さらに合格範囲基準9のセグメントラインより外側のセグメントが一定数以上ON(一例として8セグメント以上ON)の場合には、そのステップが範囲オーバーとして外側NGカウントをカウントアップする。以後は一定時間経過するまで本ステップを繰り返して規定範囲カウント数と外側NGカウントを計算する。
【0035】
判定開始と判断後でノズルヘッドから検査用噴射物が射出完了したと判断できる一定時間経過後である場合は、判定を終了し、前ステップまで計算された規定範囲カウント数が一定数以上かつ外側NGカウント数が一定未満の場合に本検査のノズルヘッドは規定範囲と判断する。逆に規定範囲カウント一定数未満又は外側NGカウントが一定上の場合には本検査のノズルヘッドは範囲不良と判断する。前記の規定範囲カウントが一定数以上かつ外側NGカウントが一定数未満であることの判断の目的は瞬時的にONとなった場合等のノイズを除去することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ノズルヘッドを含む噴射ポンプの正面図
【図2】ノズルヘッドの正面図
【図3】ポンプ部の正面図
【図4】容器部の正面図
【図5】図2の拡大断面図
【図6】図5のA−A断面図
【図7】規定の噴霧状態の図
【図8】傾き噴霧状態の図
【図9】ジェット噴射を含む噴霧状態の図
【図10】狭角噴霧の図
【図11】広角噴霧の図
【図12】噴霧状態の性能試験実施図
【図13】図12のB−B断面図
【図14】判定用マップの図
【図15】濃度異常を判定するフローチャート
【図16】噴射形状および噴射範囲を判定するフローチャート
【符号の説明】
【0037】
1 液体射出部
2 操作部
3 液体吸入部
4 アクチュエータ流入部
5 アクチュエータ流出部
6 流速加速部
7 レーザー発生装置
8 センサ
9 合格範囲基準
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を霧状に噴出させるノズルヘッドの噴霧状態について水を霧状に噴出させて、その噴出させた霧に可視光を照射し、その可視光の吸収と散乱による減衰量を計測することで時々刻々に変化する霧状になった水の濃度分布を計算する手段と、その濃度の時系列データから規定する噴射形状、噴射範囲および濃度であることを判定する手段(S1,S2,S3,S4,S5,S6)を備えた噴霧ノズルヘッドの霧化性能検査方法および装置。
【請求項2】
液体を霧状に噴出させるノズルヘッドの噴霧状態について液体の代わりに二酸化炭素を噴出させて、その噴出させた二酸化炭素に赤外線を照射し、その赤外線の吸収による減衰量を計測することで時々刻々に変化する二酸化炭素の濃度分布を計算する手段と、その濃度の時系列データから規定する噴射形状、噴射範囲および濃度であることを判定する手段(S1,S2,S3,S4,S5,S6)を備えた噴霧ノズルヘッドの霧化性能検査方法および装置。
【請求項1】
液体を霧状に噴出させるノズルヘッドの噴霧状態について水を霧状に噴出させて、その噴出させた霧に可視光を照射し、その可視光の吸収と散乱による減衰量を計測することで時々刻々に変化する霧状になった水の濃度分布を計算する手段と、その濃度の時系列データから規定する噴射形状、噴射範囲および濃度であることを判定する手段(S1,S2,S3,S4,S5,S6)を備えた噴霧ノズルヘッドの霧化性能検査方法および装置。
【請求項2】
液体を霧状に噴出させるノズルヘッドの噴霧状態について液体の代わりに二酸化炭素を噴出させて、その噴出させた二酸化炭素に赤外線を照射し、その赤外線の吸収による減衰量を計測することで時々刻々に変化する二酸化炭素の濃度分布を計算する手段と、その濃度の時系列データから規定する噴射形状、噴射範囲および濃度であることを判定する手段(S1,S2,S3,S4,S5,S6)を備えた噴霧ノズルヘッドの霧化性能検査方法および装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−237395(P2011−237395A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117782(P2010−117782)
【出願日】平成22年5月1日(2010.5.1)
【出願人】(510076535)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月1日(2010.5.1)
【出願人】(510076535)
【Fターム(参考)】
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