説明

回折格子記録媒体

【課題】 偽造防止性が高く、セキュリティ的にも信頼性がさらに高い回折格子記録媒体を提供する。
【解決手段】 回折格子記録媒体3は、光回折構造を有する観察画像用単位セル11a,12a,13aを含む第1の記録部分31と、光回折構造を有する隠し画像用単位セル2R,2G,2Bを含む第2の記録部分32と、を備え、第1の記録部分31の観察画像用単位セルは、可視光の波長以上の格子ピッチを有し、第2の記録部分32の隠し画像用単位セルは、可視光の波長以下の格子ピッチであり曲線の回折格子を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品等に貼付又は転写することで、物品の偽造を防止する回折格子記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャッシュカード、クレジットカード、小切手カード等のカード類、金券類、身分証明書、重要書類等のような認証とともに偽造防止を必要とする物品に対して、各種の偽造防止手段が図られている。例えば、クレジットカードにおいては、金属反射層を有するレリーフホログラムからなるレインボーホログラムが、目視によるカードの真贋判定のための認証構造としてカードの表面に設けられている。このようなホログラムの記録装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭60−30948号公報
【特許文献2】特開2004−212927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホログラムのような回折格子のうち、格子ピッチが比較的粗いものは、二光束干渉又はドットマトリクス法などにより、比較的容易に作成することが可能である。したがって、一見似ているレベルの回折格子が簡単に作製されるおそれがあった。
【0005】
本発明は、偽造防止性が高く、セキュリティ的にも信頼性がさらに高い回折格子記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の回折格子記録媒体は、光回折構造を有する観察画像用単位セルを含む第1の記録部分と、光回折構造を有する隠し画像用単位セルを含む第2の記録部分と、を備え、前記第1の記録部分の前記観察画像用単位セルは、可視光の波長以上の格子ピッチを有し、前記第2の記録部分の前記隠し画像用単位セルは、可視光の波長以下の格子ピッチであり曲線の回折格子を有することを特徴とする。
【0007】
さらに、上記目的を達成する本発明の回折格子記録媒体は、第1の観察画像用光回折構造を有する第1の観察画像用単位セル及び第2の観察画像用光回折構造を有する第2の観察画像用単位セルを含む第1の記録部分と、第1の隠し画像用光回折構造を有する第1の隠し画像用単位セル、第2の隠し画像用光回折構造を有する第2の隠し画像用単位セルを含む第2の記録部分、及び第3の隠し画像用光回折構造を有する第3の隠し画像用単位セルを含む第2の記録部分と、を備え、前記第1の観察画像用単位セル及び前記第2の観察画像用単位セルの格子ピッチは、可視光の波長以上であり、前記第1の隠し画像用単位セル、前記第2の隠し画像用単位セル、及び前記第3の隠し画像用単位セルは、可視光の波長以下の格子ピッチであり曲線の回折格子を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記第1の隠し画像用単位セルの格子ピッチは、一次回折光の波長が赤色に対応する波長となるように形成され、前記第2の隠し画像用単位セルの格子ピッチは、一次回折光の波長が緑色に対応する波長となるように形成され、前記第3の隠し画像用単位セルの格子ピッチは、一次回折光の波長が青色に対応する波長となるように形成されることを特徴とする。
【0009】
また、前記第1の隠し画像用単位セル、前記第2の隠し画像用単位セル、及び前記第3の隠し画像用単位セルは、任意に一様に同じ割合で形成され、輝度最大値に対する各単位セルの色の輝度の割合に応じた面積を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記第2の記録部分は、前記第1の記録部分よりも小さく、前記第1の記録部分に対して平行な直線状に形成されることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記隠し画像用単位セルを構成する微細凹凸は、計算機合成ホログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、偽造防止性が高く、セキュリティ的にも信頼性がさらに高い回折格子記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の元画像の画像データを示す図である。
【図2】第1実施形態の画像データの各部分の単位セルを示す図である。
【図3】第1実施形態の立体隠し画像の画像データを示す図である。
【図4】第1実施形態の立体隠し画像の単位セルを示す図である。
【図5】回折格子に対する光源と観察者の関係を示す図である。
【図6】回折格子に対する光源と観察者の第1の観察状態を示す図である。
【図7】回折格子に対する光源と観察者の第2の観察状態を示す図である。
【図8】第1実施形態の回折格子記録媒体を示す図である。
【図9】第1実施形態の図10の領域Aの部分を拡大した図である。
【図10】第1実施形態の図10の領域Bの部分を拡大した図である。
【図11】第1実施形態の図10の領域Cの部分を拡大した図である。
【図12】第1実施形態の図10の領域Dの部分を拡大した図である。
【図13】第1実施形態の回折格子記録媒体の他の例の一部を示す図である。
【図14】第1実施形態の回折格子記録媒体の隠し画像を観察した図である。
【図15】第2実施形態のカラーの立体隠し画像の各色の単位セルを示す図である。
【図16】第2実施形態のカラーの立体隠し画像の任意の一部分の各色の単位セルの輝度の関係を示す図である。
【図17】第2実施形態のカラーの立体隠し画像の任意の一部分の各色の単位セル面積の関係を示す図である。
【図18】第2実施形態のカラーの立体隠し画像の各色の単位セルの概念図である。
【図19】第2実施形態の図10の領域Aの部分を拡大した図である。
【図20】第2実施形態の図10の領域Bの部分を拡大した図である。
【図21】第2実施形態の図10の領域Cの部分を拡大した図である。
【図22】第2実施形態の図10の領域Dの部分を拡大した図である。
【図23】第2実施形態の回折格子記録媒体の他の例の一部を示す図である。
【図24】第3実施形態の計算機合成ホログラムの単位セルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照にして本発明にかかる回折格子記録媒体について説明する。
【0015】
図1は、第1実施形態の元画像1の画像データを示す図である。
【0016】
第1実施形態の元画像1は、コンピュータ上で電子情報として作製される図柄であって、第1の図柄部分11と、第2の図柄部分12と、第3の図柄部分13とを有する。
【0017】
図2は、第1実施形態の画像データの各部分の単位セルを示す図である。
【0018】
図2(a)は、第1の図柄部分11に対応する第1の観察画像用単位セル11aを示している。第1の図柄部分11に対応する第1の観察画像用単位セル11aは、格子ピッチ1.0μm、格子角度45°で形成されている。図2(b)は、第2の図柄部分12に対応する第2の観察画像用単位セル12aを示している。第2の図柄部分12に対応する第2の観察画像用単位セル12aは、格子ピッチ1.0μm、格子角度0°で形成されている。図2(c)は、第3の図柄部分13に対応する第3の観察画像用単位セル13aを示している。第3の図柄部分13に対応する第3の観察画像用単位セル13aは、格子ピッチ1.0μm、格子角度90°で形成されている。
【0019】
なお、図1に示すように、元画像1は、第1実施形態では、第1の図柄部分11と、第2の図柄部分12と、第3の図柄部分13との3種類の部分を有するが、少なくとも第1の図柄部分11を有すればよい。
【0020】
図3は、第1実施形態の立体隠し画像2の画像データを示す図である。
【0021】
図3に示すように、第1実施形態の立体隠し画像2は、所定の観察条件でのみ確認可能な立体の画像、図形、又は文字等が好ましい。立体隠し画像2は、図1に示した元画像1に対して、元画像1の特徴を損なわないように埋め込まれ、視認可能な元画像1とは別の情報をいう。
【0022】
図4は、第1実施形態の立体隠し画像2の単位セルを示す図である。
【0023】
図4に示すように、立体隠し画像2を構成する隠し画像用単位セル2aは、曲線回折格子から形成される。
回折格子の曲線は、半径rの円周の一部であり、隠し画像用単位セル2a内に同一のピッチdaで形成される。
【0024】
次に、単位セルの格子ピッチについて説明する。
【0025】
図5は回折格子Dに対する光源Lと観察者Eの関係を示す図、図6は第1の観察状態の場合を示す図、図7は第2の観察状態の場合を示す図である。
【0026】
回折格子Dに対する光源Lからの光L1の入射角をθ1とし、回折角θ2の位置で観察者Eが回折格子Dによる回折格子図柄を観察する場合、回折の次数をnとすると、以下の式(1)が成り立つ。
λ=d(sinθ1+sinθ2)/n (1)
ここで、
λは回折光の波長、
dは回折格子の格子ピッチ、
θ1は入射角、
θ2は回折角、
nは回折の次数、
である。
【0027】
本実施形態では、図6に示すように、通常、人間が元画像1を観察しやすい第1の観察状態と、図7に示すように、立体隠し画像2を確認するための第2の観察状態とを設定する。
【0028】
第1の観察状態は、図6に示すように、光源からの入射光L1を入射角θ1=0°として、回折格子Dに入射する。この場合、回折格子Dの格子ピッチd=1μmの部分の1次回折光は、λ=400nmの場合、実線a11のように回折し、λ=700nmの場合、破線b11のように回折する。
【0029】
図2に示した第1の観察画像用単位セル11a、第2の観察画像用単位セル12a、及び第3の観察画像用単位セル13aの格子ピッチdを1μmと設定したので、観察者は、第1領域αの範囲であれば、図1に示した元画像1を容易に観察することができる。
【0030】
しかしながら、回折格子Dの格子ピッチd=400nmの部分の1次回折光は、λ=400nmの場合、実線a21のように回折し、λ=700nmの場合、式(1)より、存在しない。図4に示した隠し画像用単位セル2aの格子ピッチdを400nmと設定したので、λ=400nm及びλ=700nmのどちらの場合でも、観察者は、図3に示した隠し画像2を観察することができない。
【0031】
第2の観察状態は、図7に示すように、光源からの入射光L1を入射角θ1=90°として、回折格子Dに入射する。この場合、回折格子Dの格子ピッチd=1μmの部分の1次回折光は、λ=400nmの場合、実線a11のように回折し、λ=700nmの場合、破線b11のように回折する。また、回折格子Dの格子ピッチd=1μmの部分の2次回折光は、λ=400nmの場合、実線a12のように回折し、λ=700nmの場合、破線b12のように回折する。
【0032】
図2に示した第1の観察画像用単位セル11a、第2の観察画像用単位セル12a、及び第3の観察画像用単位セル13aの格子ピッチdを1μmと設定したので、観察者は、第1領域α及び第2領域βの範囲であれば、図1に示した元画像1を容易に観察することができる。
【0033】
次に、回折格子Dの格子ピッチd=400nmの部分の1次回折光は、λ=400nmの場合、実線a21のように回折し、λ=700nmの場合、破線b21のように回折する。図4に示した隠し画像用単位セル2aの格子ピッチdを400nmと設定したので、観察者は、第3領域γの範囲であれば、隠し画像2を観察することができる。しかしながら、実際には、第2領域βと重なっている第3b領域γ2では、図1に示した元画像1と重なってしまい、図3に示した隠し画像2はほとんど観察できない。したがって、第3a領域γ1で図3に示した隠し画像2を観察することができる。
【0034】
立体隠し画像2を構成する単位セル2aの場合、例えば、一次回折光の波長λが可視光の波長λaである約400nm〜670nmになるように格子ピッチdaを設定すればよい。例えば、図7に示した第2の観察状態において、一次回折光の波長λを赤色の波長λRである約670nmにするためには、式(1)より、単位セル2aの格子ピッチdaは、400nmと設定すればよい。なお、一般に、赤色に対応する波長λRは、625nm〜740nmである。
【0035】
また、単位セル2aの格子ピッチdaを400nm以下に設定すると、式(1)より、第1の観察状態では、それぞれの1次回折光の波長λが280nm以下となり、可視光が回折しないため、観察することが困難である。
【0036】
さらに、元画像1を回折する第1の観察画像用単位セル11a、第2の観察画像用単位セル12a、及び第3の観察画像用単位セル13aの格子ピッチdは、1μmと設定したので、式(1)より、第2の観察状態では、二次回折光による回折像が生じる。しかしながら、二次回折光の波長は850nmであるが、二次回折光は一次回折光と比較して光強度が数%程度であり、波長も赤外領域にあるため、二次回折光による元画像1は暗くて観察することが困難である。
【0037】
このように、隠し画像を、通常の観察状態では観察できず、所定の角度で観察した場合のみに観察可能とするので、従来技術よりも偽造防止性がさらに高く、セキュリティ的にも信頼性がさらに高い回折格子記録媒体を提供することが可能となる。
【0038】
また、単位セル2aの格子ピッチは、一次回折光の波長が可視光に対応する波長となるように形成されるので、隠し画像を再現することが可能となる。
【0039】
図8は第1実施形態の回折格子記録媒体3を示す図、図9は図8の領域Aの部分を拡大した図である。
【0040】
図8に示すように、回折格子記録媒体3は、図1に示した元画像1を形成する回折格子に対して、図3に示した立体隠し画像2を形成する微細凹凸が埋め込まれたように記録された媒体である。
【0041】
回折格子記録媒体3は、図1に示した元画像1に対応する第1の記録部分31と、図3に示した立体隠し画像2に対応する第2の記録部分32と、を分割して配置している。例えば、図9に示すように、本実施形態では、回折格子記録媒体3における第1の記録部分31と第2の記録部分32の割合は、面積比5:1で設定されている。なお、第1の記録部分31と第2の記録部分32の割合は5:1〜10:1程度が好ましい。
【0042】
このように、第2の記録部分32は、第1の記録部分31よりも小さく、第1の記録部分31に対して平行な直線状に形成されるので、第1の観察状態で元画像1の再生画像を損ねることなく、第2の観察状態で立体隠し画像2を見やすくすることが可能となる。
【0043】
次に、第1実施形態の回折格子記録媒体3の各部分について説明する。
【0044】
図9は、第1実施形態の図8の領域Aの部分を拡大した図である。
【0045】
領域Aは、立体隠し画像2を含まない元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分である。領域Aの第1の記録部分31において、元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分には第1の観察画像用単位セル11aが形成される。また、領域Aは、立体隠し画像2を含まないので、領域Aの第2の記録部分32は、空白セル32Sとなっている。
【0046】
なお、空白セル32Sとせず、第1の観察画像用単位セル11aを形成してもよい。空白セル32Sを形成した場合、空白セル32Sの部分が境界のように見えてしまう可能性があるが、第1の観察画像用単位セル11aを形成することによって境界のように空白が見えてしまう可能性を防ぐことができる。また、可視光の波長以下のピッチからなり格子角度が観察方向に対して90°程度の角度をなす回折格子セルであってもよい。この場合、一次回折光は存在しないが、セルが空白ではないので、境界のように見えてしまう可能性を防ぐことができる。
【0047】
図10は、第1実施形態の図8の領域Bの部分を拡大した図である。
【0048】
領域Bは、立体隠し画像2を含む元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分及び立体隠し画像2を含まない元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分の両方を有する。
【0049】
領域Bの第1の記録部分31において、元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分には、第1の観察画像用単位セル11aが形成される。また、領域Bの立体隠し画像2を含む第2の記録部分32には、赤色単位セル2Rが形成されている。さらに、領域Bのカラー隠し画像2を含まない第2の記録部分32は、空白セル32Sとなっている。
【0050】
なお、空白セル32Sとせず、第1の観察画像用単位セル11aを形成してもよい。空白セル32Sを形成した場合、空白セル32Sの部分が境界のように見えてしまう可能性があるが、第1の観察画像用単位セル11aを形成することによって境界のように空白が見えてしまう可能性を防ぐことができる。また、可視光の波長以下のピッチからなり格子角度が観察方向に対して90°程度の角度をなす回折格子セルであってもよい。この場合、一次回折光は存在しないが、セルが空白ではないので、境界のように見えてしまう可能性を防ぐことができる。また、第1実施形態では、領域Bの立体隠し画像2を含む第2の記録部分32に赤色単位セル2Rを形成したが、赤色である必要はなく、緑色又は青色等の可視光に対応するものであればよい(以下の第1実施形態の赤色単位セル2Rに関しても同様である。)。
【0051】
図11は、第1実施形態の図8の領域Cの部分を拡大した図である。
【0052】
領域Cは、立体隠し画像2を含む元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分、立体隠し画像2を含む元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分、立体隠し画像2を含まない元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分、及び立体隠し画像2を含まない元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分を有する。
【0053】
領域Cの第1の記録部分31において、元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分には第1の観察画像用単位セル11aが形成され、元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分には第2の観察画像用単位セル12aが形成される。
【0054】
また、領域Cの立体隠し画像2を含む第2の記録部分32には、赤色単位セル2Rが形成されている。さらに、領域Cの立体隠し画像2を含まない第2の記録部分32は、空白セル32Sとなっている。
【0055】
なお、空白セル32Sとせず、元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分には第1の観察画像用単位セル11aを形成し、元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分には第2の観察画像用単位セル12aを形成してもよい。空白セル32Sを形成した場合、空白セル32Sの部分が境界のように見えてしまう可能性があるが、第1の観察画像用単位セル11a又は第2の観察画像用単位セル12aを形成することによって境界のように空白が見えてしまう可能性を防ぐことができる。また、可視光の波長以下のピッチからなり格子角度が観察方向に対して90°程度の角度をなす回折格子セルであってもよい。この場合、一次回折光は存在しないが、セルが空白ではないので、境界のように見えてしまう可能性を防ぐことができる。
【0056】
図12は、第1実施形態の図8の領域Dの部分を拡大した図である。
【0057】
領域Dは、立体隠し画像2を含む元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分、立体隠し画像2を含む元画像1の第3の図柄部分13に対応する部分、立体隠し画像2を含まない元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分、及び立体隠し画像2を含まない元画像1の第3の図柄部分13に対応する部分を有する。
【0058】
領域Dの第1の記録部分31において、元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分には第2の観察画像用単位セル12aが形成され、第3の図柄部分13に対応する部分には第3の観察画像用単位セル13aが形成される。また、領域Cの立体隠し画像2を含む第2の記録部分32には、赤色単位セル2Rが形成されている。さらに、領域Cの立体隠し画像2を含まない第2の記録部分32は、空白セル32Sとなっている。
【0059】
なお、空白セル32Sとせず、元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分には第2の観察画像用単位セル12aを形成し、元画像1の第3の図柄部分13に対応する部分には第3の観察画像用単位セル13aを形成してもよい。空白セル32Sを形成した場合、空白セル32Sの部分が境界のように見えてしまう可能性があるが、第2の観察画像用単位セル12a又は第3の観察画像用単位セル13aを形成することによって境界のように空白が見えてしまう可能性を防ぐことができる。また、可視光の波長以下のピッチからなり格子角度が観察方向に対して90°程度の角度をなす回折格子セルであってもよい。この場合、一次回折光は存在しないが、セルが空白ではないので、境界のように見えてしまう可能性を防ぐことができる。
【0060】
図13は、第1実施形態の他の例の回折格子記録媒体3を示す図である。
【0061】
なお、第1実施形態では、図9〜図12に示したように、第1の記録部分31に直線上の第2の記録部分32を水平に並べて形成したが、図13に示すように、他の例として、第1の記録部分31に傾斜した直線上の第2の記録部分32を並べて形成してもよい。
【0062】
図14は、第1実施形態の回折格子記録媒体の隠し画像を観察した図である。
【0063】
形成した回折格子記録媒体3を、第1の観察状態及び第2の観察状態で観察した場合について説明する。
【0064】
まず、図6で示した第1の観察状態で回折格子記録媒体3を観察した場合、観察者は、図1に示した元画像1を観察することが可能である。第1の状態では、立体隠し画像2は、観察することができない。
【0065】
次に、図7で示した第2の観察状態で回折格子記録媒体3を観察した場合、観察者は、図14に示したように、暗い元画像1に明るい立体隠し画像2が浮き出ているように観察することが可能である。
【0066】
次に、第2実施形態について説明する。
【0067】
第2実施形態では、図3に示した立体隠し画像2を、カラーで観察できるように形成する。すなわち、第2実施形態のカラーの立体隠し画像2は、所定の観察条件でのみ確認可能な立体且つカラーの画像、図形、又は文字等が好ましい。カラーの立体隠し画像2は、図1に示した元画像1に対して、元画像1の特徴を損なわないように埋め込まれ、視認可能な元画像1とは別の情報をいう。なお、第2実施形態の元画像1は図1及び図2に示したものと同様の構成でよい。
【0068】
図15は、第2実施形態のカラーの立体隠し画像2の各色の単位セルを示す図である。
【0069】
図15(a)は、カラーの立体隠し画像2の赤色を構成する第1の隠し画像用単位セルとしての赤色単位セル2Rを示している。また、図15(b)は、カラーの立体隠し画像2の緑色を構成する第2の隠し画像用単位セルとしての緑色単位セル2Gを示している。さらに、図15(c)は、カラーの立体隠し画像2の青色を構成する第3の隠し画像用単位セルとしての青色単位セル2Bを示している。
【0070】
単位セルの格子ピッチについては、図5〜図7で説明したものと同様であるが、カラーの立体隠し画像2は、カラーにするため、赤色、緑色、及び青色のそれぞれに対して格子ピッチを設定する。
【0071】
まず、通常、人間が元画像1を観察しやすい第1の観察状態と、カラーの立体隠し画像2を確認するための第2の観察状態とを設定する。
【0072】
第1の観察状態は、図6に示すように、入射角θ1が0°、回折角が45°とする。この場合、図1に示した元画像1を構成する第1の観察画像用単位セル11a、第2の観察画像用単位セル12a、及び第3の観察画像用単位セル13aの格子ピッチdを1μmと設定したので、λ=約700nmの可視光の波長内の一次回折光が生じ、元画像1が容易に観察できる。
【0073】
カラーの立体隠し画像2は、第1の観察状態では観察することが困難であり、第2の観察状態で観察できるように設定する。第2の観察状態は、図7に示すように、入射角θ1が80°、回折角が45°とする。
【0074】
カラーの立体隠し画像2の赤色を構成する赤色単位セル2Rの場合、一次回折光の波長λが赤色の波長λRである約670nmになるように格子ピッチdRを設定すればよい。図7に示した第2の観察状態において、一次回折光の波長λを赤色の波長λRである約670nmにするためには、式(1)より、赤色単位セル2Rの格子ピッチdRは、400nmと設定すればよい。なお、一般に、赤色に対応する波長λRは、625nm〜740nmである。
【0075】
次に、カラーの立体隠し画像2の緑色を構成する緑色単位セル2Gの場合、一次回折光の波長λが緑色の波長λGである約555nmになるように格子ピッチdGを設定すればよい。図7に示した第2の観察状態において、一次回折光の波長λを緑色の波長λGである約555nmにするためには、式(1)より、緑色単位セル2Gの格子ピッチdGは、330nmと設定すればよい。なお、一般に、緑色に対応する波長λGは、500nm〜565nmである。
【0076】
次に、カラーの立体隠し画像2の青色を構成する青色単位セル2Bの場合、一次回折光の波長λが青色の波長λBである約454nmになるように格子ピッチdBを設定すればよい。図7に示した第2の観察状態において、一次回折光の波長λを青色の波長λBである約454nmにするためには、式(1)より、青色単位セル2Bの格子ピッチdBは、270nmと設定すればよい。なお、一般に、青色に対応する波長λBは、450nm〜485nmである。
【0077】
また、赤色単位セル2Rの格子ピッチdRを400nm、緑色単位セル2Gの格子ピッチdGを330nm、及び青色単位セル2Bの格子ピッチdBを270nmと設定すると、式(1)より、第1の観察状態では、それぞれの1次回折光の波長λが280nm以下となり、可視光が回折しないため、観察することが困難である。
【0078】
さらに、元画像1を回折する第1の観察画像用単位セル11a、第2の観察画像用単位セル12a、及び第3の観察画像用単位セル13aの格子ピッチdは、1μmと設定したので、式(1)より、第2の観察状態では、二次回折光による回折像が生じる。しかしながら、二次回折光の波長は850nmであるが、二次回折光は一次回折光と比較して光強度が数%程度であり、波長も赤外領域にあるため、二次回折光による元画像1は暗くて観察することが困難である。
【0079】
このように、隠し画像を、通常の観察状態では観察できず、所定の角度で観察した場合のみに観察可能とするので、従来技術よりも偽造防止性がさらに高く、セキュリティ的にも信頼性がさらに高い回折格子記録媒体を提供することが可能となる。
【0080】
また、赤色単位セル2Rの格子ピッチは、一次回折光の波長が赤色に対応する波長となるように形成され、緑色単位セル2Gの格子ピッチは、一次回折光の波長が緑色に対応する波長となるように形成され、青色単位セル2Bの格子ピッチは、一次回折光の波長が青色に対応する波長となるように形成されるので、隠し画像を立体且つカラーで再現することが可能となる。
【0081】
次に、この立体カラー隠し画像の各色の色単位セルの面積を求める方法について説明する。
【0082】
図16は第2実施形態の立体カラー隠し画像の任意の一部分の各色の単位セルの輝度の関係を示す図、図17は第2実施形態の立体カラー隠し画像の任意の一部分の各色の単位セルの面積の関係を示す図である。
【0083】
赤色単位セル2R、緑色単位セル2G、及び青色単位セル2Bは、カラーの立体隠し画像2内で、一様に同じ割合で形成される。赤色単位セル2R、緑色単位セル2G、及び青色単位セル2Bは、カラーの立体隠し画像2のR値、G値、又はB値のうち選択された色に対応するR値、G値、又はB値の輝度に応じた面積を有する。
【0084】
例えば、まず、単位セルそれぞれに、任意の一様に同じ割合で形成される赤色単位セル2R、緑色単位セル2G、及び青色単位セル2Bを当てはめる。次に、カラーの立体隠し画像2の各単位セルの色ごとの輝度を求める。
【0085】
次に、輝度最大値255に対する各単位セルに当てはめられた色の輝度の割合を求める。例えば、図16の左上の緑色単位セル2Gは、R=10,G=10,B=220のうち、G=10の値をとり、10/255である。また、図16の右下の青色単位セル2Bは、R=10,G=10,B=220のうち、B=220の値をとり、220/255である。
【0086】
次に、図17に示すように、求めた各単位セルに当てはめられた色の輝度の割合に応じて、各単位セルの面積を決めて、各単位セルを形成する。例えば、図16の左上の緑色単位セル2Gは、10/255の割合であったので、図17の左上に示すように、全面積の10/255の面積となる。また、図16の右下の青色単位セル2Bは、220/255の割合であったので、図17の右下に示すように、全面積の220/255の面積となる。
【0087】
このように、赤色単位セル2R、緑色単位セル2G、及び青色単位セル2Bは、カラー隠し画像2の輝度最大値255に対する各単位セルに当てはめられた色の輝度の割合に応じた面積を有するので、3D写真のようにきれいで立体的な立体カラー隠し画像を再現することが可能となる。
【0088】
次に、第2実施形態の回折格子記録媒体3について説明する。
【0089】
第1実施形態と同様に、図10に示したように、第2実施形態の回折格子記録媒体3は、図1に示した元画像1を形成する回折格子に対して、図3に示したカラーの立体隠し画像2を形成する回折格子が埋め込まれたように記録された媒体である。
【0090】
回折格子記録媒体3は、図1に示した元画像1に対応する第1の記録部分31と、図3に示したカラーの立体隠し画像2に対応する第2の記録部分32と、を分割して配置している。例えば、第2実施形態では、回折格子記録媒体3における第1の記録部分31と第2の記録部分32の割合は、面積比5:1で設定されている。なお、第1の記録部分31と第2の記録部分32の割合は5:1〜10:1程度が好ましい。
【0091】
このように、第2の記録部分32は、第1の記録部分31よりも小さく、第1の記録部分31に対して平行な直線状に形成されるので、第1の観察状態で元画像1の再生画像を損ねることなく、第2の観察状態でカラーの立体隠し画像2を見やすくすることが可能となる。
【0092】
次に、第2実施形態の回折格子記録媒体3の各部分について説明する。
【0093】
図18は、第2実施形態のカラーの立体隠し画像の各色の単位セルの概念図である。
【0094】
第2実施形態の回折格子記録媒体3の各部分の説明では、区別を明確にするため、赤色単位セル2R、緑色単位セル2G、及び青色単位セル2Bをそれぞれ図18のように示す。
【0095】
図18(a)は、カラーの立体隠し画像2の赤色を構成する第1の隠し画像用単位セルとしての赤色単位セル2Rを示している。また、図18(b)は、カラーの立体隠し画像2の緑色を構成する第2の隠し画像用単位セルとしての緑色単位セル2Gを示している。さらに、図18(c)は、カラーの立体隠し画像2の青色を構成する第3の隠し画像用単位セルとしての青色単位セル2Bを示している。
【0096】
図19は、第2実施形態の図10の領域Aの部分を拡大した図である。
【0097】
領域Aは、カラーの立体隠し画像2を含まない元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分である。領域Aの第1の記録部分31において、元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分には第1の観察画像用単位セル11aが形成される。また、領域Aは、カラーの立体隠し画像2を含まないので、領域Aの第2の記録部分32は、空白セル32Sとなっている。
【0098】
なお、空白セル32Sとせず、第1の観察画像用単位セル11aを形成してもよい。空白セル32Sを形成した場合、空白セル32Sの部分が境界のように見えてしまう可能性があるが、第1の観察画像用単位セル11aを形成することによって境界のように空白が見えてしまう可能性を防ぐことができる。また、可視光の波長以下のピッチからなり格子角度が観察方向に対して90°程度の角度をなす回折格子セルであってもよい。この場合、一次回折光は存在しないが、セルが空白ではないので、境界のように見えてしまう可能性を防ぐことができる。
【0099】
図20は、第2実施形態の図10の領域Bの部分を拡大した図である。
【0100】
領域Bは、カラーの立体隠し画像2を含む元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分及びカラーの立体隠し画像2を含まない元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分の両方を有する。
【0101】
領域Bの第1の記録部分31において、元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分には、第1の観察画像用単位セル11aが形成される。また、領域Bのカラーの立体隠し画像2を含む第2の記録部分32には、赤色単位セル2R、緑色単位セル2G、及び青色単位セル2Bが形成されている。さらに、領域Bのカラーの立体隠し画像2を含まない第2の記録部分32は、空白セル32Sとなっている。
【0102】
なお、空白セル32Sとせず、第1の観察画像用単位セル11aを形成してもよい。空白セル32Sを形成した場合、空白セル32Sの部分が境界のように見えてしまう可能性があるが、第1の観察画像用単位セル11aを形成することによって境界のように空白が見えてしまう可能性を防ぐことができる。また、可視光の波長以下のピッチからなり格子角度が観察方向に対して90°程度の角度をなす回折格子セルであってもよい。この場合、一次回折光は存在しないが、セルが空白ではないので、境界のように見えてしまう可能性を防ぐことができる。
【0103】
図21は、第2実施形態の図10の領域Cの部分を拡大した図である。
【0104】
領域Cは、カラーの立体隠し画像2を含む元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分、カラーの立体隠し画像2を含む元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分、カラーの立体隠し画像2を含まない元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分、及びカラーの立体隠し画像2を含まない元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分を有する。
【0105】
領域Cの第1の記録部分31において、元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分には第1の観察画像用単位セル11aが形成され、元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分には第2の観察画像用単位セル12aが形成される。
【0106】
また、領域Cのカラーの立体隠し画像2を含む第2の記録部分32には、赤色単位セル2R、緑色単位セル2G、及び青色単位セル2Bが形成されている。さらに、領域Cのカラー隠し画像2を含まない第2の記録部分32は、空白セル32Sとなっている。
【0107】
なお、空白セル32Sとせず、元画像1の第1の図柄部分11に対応する部分には第1の観察画像用単位セル11aを形成し、元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分には第2の観察画像用単位セル12aを形成してもよい。空白セル32Sを形成した場合、空白セル32Sの部分が境界のように見えてしまう可能性があるが、第1の観察画像用単位セル11a又は第2の観察画像用単位セル12aを形成することによって境界のように空白が見えてしまう可能性を防ぐことができる。また、可視光の波長以下のピッチからなり格子角度が観察方向に対して90°程度の角度をなす回折格子セルであってもよい。この場合、一次回折光は存在しないが、セルが空白ではないので、境界のように見えてしまう可能性を防ぐことができる。
【0108】
図22は、第2実施形態の図10の領域Dの部分を拡大した図である。
【0109】
領域Dは、カラーの立体隠し画像2を含む元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分、カラーの立体隠し画像2を含む元画像1の第3の図柄部分13に対応する部分、カラーの立体隠し画像2を含まない元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分、及びカラーの立体隠し画像2を含まない元画像1の第3の図柄部分13に対応する部分を有する。
【0110】
領域Dの第1の記録部分31において、元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分には第2の観察画像用単位セル12aが形成され、第3の図柄部分13に対応する部分には第3の観察画像用単位セル13aが形成される。また、領域Cのカラーの立体隠し画像2を含む第2の記録部分32には、赤色単位セル2R、緑色単位セル2G、及び青色単位セル2Bが形成されている。さらに、領域Cのカラーの立体隠し画像2を含まない第2の記録部分32は、空白セル32Sとなっている。
【0111】
なお、空白セル32Sとせず、元画像1の第2の図柄部分12に対応する部分には第2の観察画像用単位セル12aを形成し、元画像1の第3の図柄部分13に対応する部分には第3の観察画像用単位セル13aを形成してもよい。空白セル32Sを形成した場合、空白セル32Sの部分が境界のように見えてしまう可能性があるが、第2の観察画像用単位セル12a又は第3の観察画像用単位セル13aを形成することによって境界のように空白が見えてしまう可能性を防ぐことができる。また、可視光の波長以下のピッチからなり格子角度が観察方向に対して90°程度の角度をなす回折格子セルであってもよい。この場合、一次回折光は存在しないが、セルが空白ではないので、境界のように見えてしまう可能性を防ぐことができる。
【0112】
図23は、第2実施形態の回折格子記録媒体3の他の例を示す図である。
【0113】
なお、第2実施形態では、図19〜図22に示したように、第1の記録部分31に直線上の第2の記録部分32を水平に並べて形成したが、図23に示すように、他の例として、第1の記録部分31に傾斜した直線上の第2の記録部分32を並べて形成してもよい。
【0114】
第2実施形態のように形成した回折格子記録媒体3を、第1の観察状態及び第2の観察状態で観察した場合について説明する。
【0115】
まず、図6で示した第1の観察状態で回折格子記録媒体3を観察した場合、第1実施形態と同様、観察者は、図1に示した元画像1を観察することが可能である。第1の状態では、カラーの立体隠し画像2は、観察することができない。
【0116】
続いて、図7で示した第2の観察状態で回折格子記録媒体3を観察した場合、観察者は、図14に示したように、暗い元画像1に明るいカラーの立体隠し画像2が浮き出ているように観察することが可能である。
【0117】
次に、第3実施形態について説明する。
【0118】
図24は、第3実施形態の計算機合成ホログラムの単位セルを示す図である。
【0119】
図24に示すように、例えば、隠し画像用単位セルを構成する微細な凹凸を計算機合成ホログラムによって形成してもよい。
【0120】
立体隠し画像2を構成する計算機合成ホログラムの単位セル2cの場合、例えば、一次回折光の波長λが可視光の波長λaである約400nm〜670nmになるように格子ピッチdcを設定すればよい。例えば、図7に示した第2の観察状態において、一次回折光の波長λを赤色の波長λRである約670nmにするためには、式(1)より、計算機合成ホログラムの単位セル2cの格子ピッチdcは、400nmと設定すればよい。なお、一般に、赤色に対応する波長λRは、625nm〜740nmである。
【0121】
また、計算機合成ホログラムの単位セル2cの格子ピッチdaを400nm以下に設定すると、式(1)より、第1の観察状態では、それぞれの1次回折光の波長λが280nm以下となり、可視光が回折しないため、観察することが困難である。
【0122】
さらに、元画像1を回折する第1の観察画像用単位セル11a、第2の観察画像用単位セル12a、及び第3の観察画像用単位セル13aの格子ピッチdは、1μmと設定したので、式(1)より、第2の観察状態では、二次回折光による回折像が生じる。しかしながら、二次回折光の波長は850nmであるが、二次回折光は一次回折光と比較して光強度が数%程度であり、波長も赤外領域にあるため、二次回折光による元画像1は暗くて観察することが困難である。
【0123】
このように、隠し画像を、通常の観察状態では観察できず、所定の角度で観察した場合のみに観察可能とするので、従来技術よりも偽造防止性がさらに高く、セキュリティ的にも信頼性がさらに高い回折格子記録媒体を提供することが可能となる。
【0124】
また、計算機合成ホログラムの単位セル2cの格子ピッチは、一次回折光の波長が可視光に対応する波長となるように形成されるので、隠し画像を再現することが可能となる。したがって、立体で解像度が高く精細な隠し画像を再現することが可能となる。
【0125】
さらに、第2実施形態のように、計算機合成ホログラムの赤色単位セル2Rの格子ピッチを一次回折光の波長が赤色に対応する波長となるように形成し、計算機合成ホログラムの緑色単位セル2Gの格子ピッチを一次回折光の波長が緑色に対応する波長となるように形成し、計算機合成ホログラムの青色単位セル2Bの格子ピッチを一次回折光の波長が青色に対応する波長となるように形成することで、立体且つカラーで解像度が高く精細な隠し画像を再現することが可能となる。
【0126】
次に、本実施形態の回折格子記録媒体3の使用方法について説明する。
【0127】
通常、印刷物等に貼着して用いる回折格子記録媒体3としては、凹凸のレリーフ構造の回折格子のレリーフ面あるいは平面に蒸着等で金属反射膜を設けて反射型とした回折格子が用いられるが、それ以外に、振幅が周期的に変化する振幅型回折格子を構成するもの又は屈折率が周期的に変化して位相型回折格子を構成するものの裏面に金属反射膜を設けて反射型とした回折格子、体積型感光材料中に干渉縞で回折格子を構成した体積型回折格子等を用いてもよい。
【0128】
もちろん、反射型でなく透過型のもので構成し、回折格子も透過型の回折格子で構成してもよい。
【0129】
さて、回折格子記録媒体3は、転写箔、ラベル、フィルム等種々の形態に構成することができる。転写箔形態の場合には、例えば商品券、クレジットカード、パッケージ等に適用でき、ラベル形態の場合には、例えばソフトウエア、カートリッジ、医薬品等のパッケージ等に適用でき、フィルム形態の場合には、例えばそのフィルムを1〜2mm程度の幅にマイクロスリットし、用紙の抄造時に紙中に共に抄き込んで偽造防止を図ることができる。また、ラベル形態の場合には、脆質層を層構成中に介在させて、偽造のためにラベルを剥離しようとしたときにその脆質層から剥がれるようにして偽造のために表示体を剥がすことを困難にすることができる(脆質ラベル)。
【0130】
本実施形態の光回折構造による隠し画像2を内包する回折格子記録媒体3を、転写箔、ラベル、脆質ラベル、フィルムの各形態に構成する場合の、層構成とその作製工程は、特許文献2等に記載されたものと同様である。
【0131】
以上、回折格子記録媒体をいくつかの実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0132】
1…元画像
11…第1の図柄部分
11a…第1の観察画像用単位セル
12…第2の図柄部分
12a…第2の観察画像用単位セル
13…第3の図柄部分
13a…第3の観察画像用単位セル
2…立体隠し画像
2a…単位セル(隠し画像用単位セル)
2R…赤色単位セル(第1の隠し画像用単位セル)
2G…緑色単位セル(第2の隠し画像用単位セル)
2B…青色単位セル(第3の隠し画像用単位セル)
3…回折格子記録媒体
31…第1の記録部分
32…第2の記録部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光回折構造を有する観察画像用単位セルを含む第1の記録部分と、
光回折構造を有する隠し画像用単位セルを含む第2の記録部分と、
を備え、
前記第1の記録部分の前記観察画像用単位セルは、可視光の波長以上の格子ピッチを有し、
前記第2の記録部分の前記隠し画像用単位セルは、可視光の波長以下の格子ピッチであり曲線の回折格子を有する
ことを特徴とする回折格子記録媒体。
【請求項2】
第1の観察画像用光回折構造を有する第1の観察画像用単位セル及び第2の観察画像用光回折構造を有する第2の観察画像用単位セルを含む第1の記録部分と、
第1の隠し画像用光回折構造を有する第1の隠し画像用単位セル、第2の隠し画像用光回折構造を有する第2の隠し画像用単位セルを含む第2の記録部分、及び第3の隠し画像用光回折構造を有する第3の隠し画像用単位セルを含む第2の記録部分と、
を備え、
前記第1の観察画像用単位セル及び前記第2の観察画像用単位セルの格子ピッチは、可視光の波長以上であり、
前記第1の隠し画像用単位セル、前記第2の隠し画像用単位セル、及び前記第3の隠し画像用単位セルは、可視光の波長以下の格子ピッチであり曲線の回折格子を有する
ことを特徴とする回折格子記録媒体。
【請求項3】
前記第1の隠し画像用単位セルの格子ピッチは、一次回折光の波長が赤色に対応する波長となるように形成され、
前記第2の隠し画像用単位セルの格子ピッチは、一次回折光の波長が緑色に対応する波長となるように形成され、
前記第3の隠し画像用単位セルの格子ピッチは、一次回折光の波長が青色に対応する波長となるように形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の回折格子記録媒体。
【請求項4】
前記第1の隠し画像用単位セル、前記第2の隠し画像用単位セル、及び前記第3の隠し画像用単位セルは、
任意に一様に同じ割合で形成され、輝度最大値に対する各単位セルの色の輝度の割合に応じた面積を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の回折格子記録媒体。
【請求項5】
前記第2の記録部分は、前記第1の記録部分よりも小さく、前記第1の記録部分に対して平行な直線状に形成される
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1つに記載の回折格子記録媒体。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1つに記載の隠し画像用単位セルを構成する微細な凹凸は、計算機合成ホログラムであることを特徴とする回折格子記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−101302(P2013−101302A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128702(P2012−128702)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】