説明

回路モジュール

【課題】共通化された電源供給ラインによって電源供給を受ける素子間において、広い周波数帯域で高いアイソレーションを確保する。
【解決手段】第1、第2電源供給ライン201,202は、接続点211で接続されている。接続点211は、バイパスコンデンサ300を介してグランドへ接続されている。第1、第2電源供給ライン201,202は互いに電磁界結合するように形成されており、この相互誘導により、相互インダクタンス−Mからなるインダクタ503が接地ライン110に接続されるのと等価な回路が実現される。接地ライン110の寄生インダクタ401のインダクタンスLおよびバイパスコンデンサ300の寄生インダクタ301のインダクタンスLCBの合成インダクタと相互インダクタ−Mとを一致させるように、第1、第2電源供給ライン201,202を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LC並列共振回路を備えた高周波用の回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話機や無線LAN端末に用いるフロントエンドモジュールが各種考案されている。このようなフロントエンドモジュールでは、共通アンテナを用いて複数の通信信号を送受信するためのスイッチ素子や、送信信号を増幅するためのパワーアンプが備えられている。そして、これらのスイッチ素子やパワーアンプを動作させるためには、電源供給を行わなければならない。
【0003】
ここで、このようなフロントエンドモジュールは、小型化が要求されていることから、電源供給ラインを共通化することがある。例えば、特許文献1に記載のフロントエンドモジュールでは、第1送信信号用のパワーアンプの電源供給ラインと第2送信信号用のパワーアンプの電源供給ラインとが共通化されている。
【0004】
このような共通化を行った場合、共通化された電源供給ラインに接続される素子間でのアイソレーションを高くしなければ、共通化された電源供給ラインを介して、素子間で高周波信号が伝搬しまうという問題がある。
【0005】
このため、従来では、図6に示すように、電源供給ライン201,202の接続点211とグランドとを接続する接地ライン110にバイパスコンデンサ300を直列接続していた。図6は従来の回路モジュールの電源供給ラインの接地構成を示す回路図である。図6に示すように、適宜設定されたキャパシタンスCBからなるバイパスコンデンサ300は、電源供給ライン201,202の接続点211とグランドとを接続する接地ライン110に直列接続されている。この際、バイパスコンデンサ300は、接地ライン110の電源接続用ライン101との接続点よりもグランド側に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−35940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば誘電体層と電極層を積層してなる積層体によって、上述の図6に示すバイパスコンデンサ300を用いた接地構成を実現する場合、接地ライン110を形成する電極パターンによる寄生インダクタと、積層体に実装するバイパスコンデンサ300の寄生インダクタが特性に与える影響を考慮する必要がある。
【0008】
図7は、寄生インダクタの影響を加味した状態での従来の電源供給ラインの接地構成を示す等価回路図である。図7に示すように、現実的には、接続点211とグランドとの間に、接地ライン110の寄生インダクタ401と、バイパスコンデンサ300の寄生インダクタ301と、バイパスコンデンサ300と、が直列接続された構成となる。
【0009】
このような構成では、接続点211が理想的な接地状態にならない。図8は、従来構成の電源供給ライン201,202間、より具体的には電源供給ライン201の接続点211と反対側の端部と、電源供給ライン202の接続点211と反対側の端部との間の通過特性図である。図8に示すように、従来の接地構成では、特定の狭い周波数帯域のみでしか十分な減衰量が得られず、広帯域で高いアイソレーションを確保することができない。
【0010】
このため、電源供給ライン201,202を介して、電源供給ライン201により電源を供給される第1の素子を通過すべき高周波信号が、電源供給ライン202により電源を供給される第2の素子に伝搬したり、また逆に、第2の素子を通過すべき高周波信号が第1の素子に伝搬したりする。このため、これら電源供給ライン201,202によって共通に電源供給される素子の動作に不具合が生じてしまう。
【0011】
また、電源供給ラインに限らず、複数の素子を共通の接地ラインで接地する場合にも、接地ラインを介して高周波信号が伝搬してしまうことがある。
【0012】
このような問題に鑑みて、本発明の目的は、共通化された接地ラインによって接地される素子間や、共通化された電源供給ラインによって電源供給を受ける素子間において、取り扱う高周波信号の周波数帯域を含む広い周波数帯域で高いアイソレーションを確保する構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の回路モジュールは、第1素子に接続する第1接続ラインと、第2素子に接続する第2接続ラインと、第1接続ラインと第2接続ラインとの接続点をグランドへ接続する接地ラインと、を備える。この回路モジュールの第1接続ラインには、第1インダクタが直列接続されている。第2接続ラインには、第2インダクタが直列接続されている。第1インダクタと第2インダクタとは、接地ラインの寄生インダクタに対して同じインダクタンスであり正負逆の値となる相互誘導が生じるように配置されている。
【0014】
この構成では、相互インダクタンスと寄生インダクタンスとが相殺されるので、第1接続ラインと第2接続ラインとの接続点は、理想的な接地状態となる。これにより、第1、第2接続ラインを介した第1素子と第2素子との間のアイソレーションが、広い周波数帯域で確保される。
【0015】
また、この発明の回路モジュールは、第1素子に接続する第1接続ラインと、第2素子に接続する第2接続ラインと、第1接続ラインと第2接続ラインとの接続点をグランドへ接続する接地ラインと、接地ラインに直列接続されたコンデンサと、を備える。第1接続ラインには、第1インダクタが直列接続されている。第2接続ラインには、第2インダクタが直列接続されている。第1インダクタと第2インダクタとは、接地ラインの寄生インダクタとコンデンサの寄生インダクタとの合成インダクタに対して同じインダクタンスであり正負逆の値となる相互誘導が生じるように配置されている。
【0016】
この構成では、各寄生インダクタの合成インダクタと相互インダクタとが相殺されるので、第1接続ラインと第2接続ラインとの接続点は、バイパスコンデンサを介した理想的な接地状態となる。これにより、第1、第2接続ラインを介した第1素子と第2素子との間のアイソレーションが、広い周波数帯域で確保される。
【0017】
また、この発明の回路モジュールでは、次の構成であってもよい。接地ラインのコンデンサと接続点との間に、外部の直流電源に接続する電源接続用ラインが接続されている。
【0018】
この構成では、直流電源からの電源供給を受ける回路モジュールにおいて、部分的に共通化された電源供給ラインを用いても、第1素子と第2素子との間のアイソレーションが、広い周波数帯域で確保される。
【0019】
また、この発明の回路モジュールの第1インダクタと第2インダクタは、巻回方向が逆であることが好ましい。
【0020】
この構成では、上述の相互誘導を生じる具体的な構造を容易に実現することができる。
【0021】
また、この発明の回路モジュールでは、次の構成に好適である。第1素子と第2素子は、回路モジュールで伝送する高周波信号の伝送経路に対して直列接続された複数の増幅素子である。
【0022】
この構成では、第1素子、第2素子が増幅素子の場合、例えば、第1素子、第2素子が高周波信号用のパワーアンプ内の前段増幅器と後段増幅器に適用されるような場合を示している。このような構成により、増幅素子間の不要な高周波信号の伝搬が抑制され、それぞれの増幅素子が適正に動作する。
【0023】
また、この発明の回路モジュールの第1インダクタおよび第2インダクタは、誘電体層を複数枚積層してなる積層体に形成したループ形状の電極パターンからなり、第1インダクタを形成するループ形状の電極パターンと第2インダクタを形成するループ形状の電極パターンとは、積層方向に沿って部分的に対向している構成であるとよい。
【0024】
この構成では、上述の相互誘導を発生する構造を積層体内で実現でき、回路モジュールを小型化することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、共通化された接地ラインによって接地される素子間や、電源供給ラインが共通化された素子間において、取り扱う高周波信号の周波数帯域を含む広い周波数帯域で高いアイソレーションを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る回路モジュール10の電源供給ラインの接地構成を回路図である。
【図2】相互インダクタおよび各寄生インダクタを加味した状態での本実施形態の回路モジュール10の電源供給ラインの接地構成を示す等価回路図である。
【図3】本実施形態の構成及び従来構成の電源供給ライン201,202間の通過特性図である。
【図4】本実施形態の回路モジュール10を用いた増幅回路モジュール90の構成図である。
【図5】本実施形態の回路モジュール10を用いた増幅回路モジュール90の積層図である。
【図6】従来の回路モジュールの電源供給ラインの接地構成を示す回路図である。
【図7】寄生インダクタを加味した状態での従来の電源供給ラインの接地構成を示す等価回路図である。
【図8】従来構成の電源供給ライン201,202間の通過特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る回路モジュールについて、図を参照して説明する。図1は本発明の実施形態に係る回路モジュール10の電源供給ラインの接地構成を回路図である。
【0028】
本実施形態の回路モジュール10は、詳細な形状および電極パターンは後述するが、複数の誘電体層を積層してなる積層体によって形成され、以下の各ラインは、積層体の内部電極パターンによって形成されている。
【0029】
回路モジュール10は、第1電源供給ライン201、第2電源供給ライン202を備える。第1電源供給ライン201は、一方端が図示しない第1素子の電源入力端子に接続している。第2電源供給ライン202は、一方端が図示しない第2素子の電源入力端子に接続している。第1電源供給ライン201と第2電源供給ライン202とは、両者の他方端同士が接続されている。この接続位置が接続点211となる。
【0030】
接続点211は、接地ライン110を介してグランドに接続されている。接地ライン110の途中位置には、バイパスコンデンサ300が直列接続されている。
【0031】
接地ライン110における接続点211とバイパスコンデンサ300との途中位置には、電源接続用ライン101が接続されている。この接地ライン110と電源接続用ライン101との接続位置が接続点111となる。電源接続用ライン101の接続点111と反対側の端部は、外部の直流電源に接続されている。
【0032】
このような構成において、第1電源供給ライン201と第2電源供給ライン202とは、部分的に巻回形状もしくはループ形状に形成されている。ループ形状とは、切り欠きを有する環状のことを意味する。第1電源供給ライン201と、第2電源供給ライン202とは、巻回方向が逆になるように形成されている。なお、ループ形状の場合には、第1電源供給ライン201と第2電源供給ライン202との接続点を始点として、電極パターンの湾曲する方向が逆になるように、第1電源供給ライン201と第2電源供給ライン202は形成されている。
【0033】
さらに、第1電源供給ライン201の巻回部(ループ部)と、第2電源供給ライン202の巻回部(ループ部)とは、相互に電磁界結合するように形成されている。
【0034】
この構成により、第1電源供給ライン201には所定のインダクタンスL1からなるインダクタ501が接続され、第2電源供給ライン202には所定のインダクタンスL2からなるインダクタ502が接続された構成が実現される。
【0035】
また、これらインダクタ501とインダクタ502とに高周波信号が流れると、相互誘導が生じ、相互インダクタンスMが生じる。
【0036】
以上のような構成からなる図1に示す回路モジュール10は、図2に示す等価回路で示すことができる。図2は、相互インダクタおよび各寄生インダクタを加味した状態での本実施形態の回路モジュール10の電源供給ラインの接地構成を示す等価回路図である。
【0037】
図2に示すように、本実施形態の構成では、高周波信号が第1電源供給ライン201および第2電源供給ライン202を介して流れたとした場合に次のような回路構成とみなすことができる。
【0038】
第1電源供給ライン201の第1素子への接続点と接続点211との間には、インダクタンスLからなるインダクタ501と、相互インダクタンスMからなるインダクタ511との直列回路が接続される。第2電源供給ライン202の第2素子への接続点と接続点211との間には、インダクタンスLからなるインダクタ502と、相互インダクタンスMからなるインダクタ512との直列回路が接続される。
【0039】
接地ライン110の接続点211と接続点111との間には、逆方向に巻回するインダクタ501,502間の相互誘導で生じる相互インダクタンス−Mからなるインダクタ503と、インダクタンスLからなる接地ライン110の寄生インダクタ401との直列回路が接続される。
【0040】
また、バイパスコンデンサ300には、インダクタンスLCBからなる当該バイパスコンデンサ300と寄生インダクタ301が直列接続される。
【0041】
このような構成により、第1電源供給ライン201と第2電源供給ライン202との接続点211とグランドとの間には、相互インダクタンス−Mからなるインダクタ503、インダクタンスLからなる接地ライン110の寄生インダクタ401、インダクタンスLCBからなる当該バイパスコンデンサ300の寄生インダクタ301、およびキャパシタCからなるバイパスコンデンサ300の直列回路が接続される。すなわち、接地ライン110に接続されるインダクタ群の合成インダクタンスは、−M+L+LCBとなる。
【0042】
ここで、相互インダクタンス−Mの絶対値が、接地ライン110の寄生インダクタ401のインダクタンスLとバイパスコンデンサ300の寄生インダクタ301のインダクタンスLCBとの合成インダクタンス(加算値)の絶対値に一致するように、第1電源供給ライン201および第2電源供給ライン202の形状、または、その間の磁界の結合状態を決定する。これにより、相互インダクタンス−Mと、インダクタンスL,LCBの合成インダクタンスが相殺して「0」となる。このため、第1電源供給ライン201と第2電源供給ライン202との接続点211は、バイパスコンデンサ300のみを介してグランドへ接続される。すなわち、接続点211が理想的な状態で接地される。これにより、第1電源供給ライン201と第2電源供給ライン202との間のアイソレーションを高くすることができる。言い換えれば、第1素子の電源入力端子と第2素子の電源入力端子との間のアイソレーションを高くすることができる。
【0043】
さらに、このような構成では、第1電源供給ライン201に直列接続されるインダクタンスが増加するとともに、第2電源供給ライン202に直列接続されるインダクタンスも増加する。したがって、第1電源供給ライン201の第1素子への接続端と、第2電源供給ライン202の第2素子への接続端との間において、高周波数信号に対する減衰量をさら高くすることができ、第1の素子と第2の素子との間のアイソレーションを高くすることができる。
【0044】
図3は、本実施形態の構成及び従来構成の電源供給ライン201,202間の通過特性図である。図3において実線が本実施形態の構成を適用した場合を示し、破線が従来構成を用いた場合を示す。図3に示すように、従来構成では、0.9[GHz]付近を減衰極とし、略0.7[GHz]から略1.8[GHz]までの周波数帯域でしか−30[dB]以上の減衰量を得られないが、本実施形態の構成を用いることで、略0.3[GHz]から5.0[GHz]以上の非常に広い周波数帯域で、−30[dB]以上の減衰量を得ることができる。
【0045】
このように、本実施形態の構成を用いれば、非常に広い周波数帯域において、第1、第2電源供給ライン201,202間で、高いアイソレーションを確保することができる。したがって、第1素子、第2素子間で、第1、第2電源供給ライン201,202を介して高周波信号が伝搬されることを大幅に抑制でき、第1、第2素子間の相互干渉を大幅に抑圧できる。
【0046】
なお、本実施形態の構成では、電源接続用ライン101の外部直流電源への接続端と第1電源供給ライン201の第1素子への接続端との間、および、電源接続用ライン101の外部直流電源への接続端と第2電源供給ライン202の第2素子への接続端との間には、インダクタしか接続されないため、直流電源電圧は、減衰することなく、第1素子および第2素子へ供給することができる。
【0047】
このような構成からなる回路モジュール10は、図4に示すような増幅回路モジュール90の一部に利用できる。図4は、本実施形態の回路モジュール10を用いた増幅回路モジュール90の構成図である。
【0048】
増幅回路モジュール90は、パワーアンプ900と上述の回路モジュール10とを備える。パワーアンプ900は前段増幅素子901と後段増幅素子902とを備える。前段増幅素子901と後段増幅素子902とは、具体的な仕様の説明は省略するが異なる仕様のものである。
【0049】
前段増幅素子901の電源入力端子には、回路モジュール10の第1電源供給ライン201が接続されている。後段増幅素子902の電源入力端子には、回路モジュール10の第2電源供給ライン202が接続されている。
【0050】
このような構成とすることで、パワーアンプ900を構成する前段増幅素子901と後段増幅素子902との間における、電源供給ラインを介したアイソレーションを高く確保できる。これにより、前段増幅素子901と後段増幅素子902との電源供給ラインを介した相互干渉を大幅に抑圧することができる。したがって、パワーアンプ900を構成する前段増幅素子901と後段増幅素子902への電源供給ライン202を部分的に共通化しても、パワーアンプ900を適正に動作させることができる。
【0051】
次に、上述の回路モジュール10を備える増幅回路モジュールを積層体で形成する場合の具体的な構造について説明する。図5は、本実施形態の回路モジュール10を用いた増幅回路モジュールの積層図である。なお、図5は図4に示したようなパワーアンプではなく、第1のローノイズアンプ901Aおよび第2のローノイズアンプ902Aを備える増幅回路モジュールを示す。
【0052】
図5において、各数字で表す枠内の図が、それぞれの誘電体層と当該誘電体層に形成された電極パターンを示している。また、誘電体層に描かれている円は誘電体層を積層方向に接続する導電性ビアホールを示している。これら各誘電体層の電極パターンおよび導電性ビアホールと、積層体に実装された実装型部品のバイパスコンデンサ300とによって、図1に示す回路モジュール10の回路構成が実現される。
【0053】
また、図5では、「1」の誘電体層Layer1が積層体の最上層となり、「8」の誘電体層Layer8が積層体の最下層となる。そして、各誘電体層に形成された電極パターンは、「1」の誘電体層側、すなわち積層体の上側から見た形状を示している。
【0054】
積層体の最上層である「1」の誘電体層Layer1には、各実装型素子が実装される電極パターンが形成されている。具体的には、第1のローノイズアンプ901Aおよび第2のローノイズアンプ902Aを実装するためのランド電極が形成されている。また、バイパスコンデンサ300を実装するためのランド電極が形成されている。
【0055】
「2」の誘電体層Layer2には、第1電源供給ライン201の一部を実現する線状電極パターンおよび、第2電源供給ライン202の一部を実現する線状電極パターンが形成されている。
【0056】
「3」の誘電体層Layer3には、略全面に内層グランド電極GNDが形成されている。
【0057】
「4」の誘電体層Layer4には、第2電源供給ライン202の一部を実現する線状電極パターンが形成されている。この線状電極パターンの一方端は、ループ状に湾曲している。このループ状の湾曲部により、上述のインダクタ502におけるインダクタ501と主に電磁界結合する部分が形成される。
【0058】
「5」の誘電体層Layer5には、第1電源供給ライン201の一部を実現する線状電極パターンが形成されている。この線状電極パターンの一方端は、ループ状に湾曲している。このループ状の湾曲部により、上述のインダクタ501におけるインダクタ502と主に電磁界結合する部分が形成される。
【0059】
ここで、第1電源供給ライン201のループ状の湾曲部と、第2電源供給ライン202のループ状の湾曲部とは、積層方向に沿って対向するように形成されている。これにより、第1電源供給ライン201と第2電源供給ライン202との間に相互誘導が発生する。また、第1電源供給ライン201のループ状の湾曲部と、第2電源供給ライン202のループ状の湾曲部とは導電性ビアホールを介して接続されており、当該接続点を始点として、湾曲する方向が逆になるように形成されている。この構成により、上述の相互インダクタンスMからなるインダクタ511,512および、相互インダクタンス−Mからなるインダクタ503が構成される。
【0060】
「6」の誘電体層Layer6には、各種の引き回し電極が形成されている。「7」の誘電体層Layer7には、略全面に内層グランド電極GNDが形成されている。
【0061】
積層体の最下層となる「8」の誘電体層Layer8には、外部グランド接続用ランドPGND、外部電源接続用ランドPVDDを含む外部接続用ランドが所定パターンで配列して形成されている。
【0062】
このような構成において、「8」の誘電体層Layer8の外部電源接続用ランドPVDDは、「6」、「7」、「8」の誘電体層Layer6,7,8に形成された導電性ビアホールと、「6」の誘電体層Layer6に形成された引き回し電極と、「4」、「5」の誘電体層Layer4,5に形成された導電性ビアホールと、により、「5」の誘電体層Layer5の第1電源供給ライン201および「4」の誘電体層Layer4の第2電源供給ライン202に接続されている。
【0063】
なお、積層体を構成する誘電体層の積層数および電極パターンは一例であり、「4」の誘電体層Layer4の電極パターンにおける湾曲部の構造と「5」の誘電体層Layer5の電極パターンにおける湾曲部の構造に類似する構成を備えれば、他の構造であってもよい。
【0064】
また、上述の説明では、電源供給用の回路モジュールを例に説明したが、複数の回路素子の接地するための接地ライン(線状電極パターン)を部分的に共通化する回路モジュールに対しても、上述の構成を適用することができる。この場合、電源接続用ライン110は省略すればよい。
【0065】
ただし、上述のような電源供給用の回路モジュールに適用する場合、高周波信号のアイソレーション特性と、直流電源電圧の供給特性との双方で効果的な利点を得られるため、非常に有効であり、好適な態様である。
【0066】
また、上述の説明では、バイパスコンデンサ300を用いる例を示したが、バイパスコンデンサ300を用いない場合にも、上述の構成を適用することができる。この場合、相互インダクタンス−Mが接地ライン110の寄生インダクタンスLに一致するように、第1電源供給ライン201と第2電源供給ライン202を形成すればよい。
【符号の説明】
【0067】
10:回路モジュール、
90:増幅回路モジュール、
101:電源接続用ライン、
110:接地ライン、
201:第1電源供給ライン、202:第2電源供給ライン、
211,111:接続点、
300:バイパスコンデンサ、
301,401:寄生インダクタ、
501,502,503,511,512:インダクタ、
900:パワーアンプ、901:前段増幅素子、902:後段増幅素子、
901A:第1のローノイズアンプ、902A:第2のローノイズアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1素子に接続する第1接続ラインと、
第2素子に接続する第2接続ラインと、
前記第1接続ラインと前記第2接続ラインとの接続点をグランドへ接続する接地ラインと、を備えた回路モジュールであって、
前記第1接続ラインには、第1インダクタが直列接続され、
前記第2接続ラインには、第2インダクタが直列接続され、
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、前記接地ラインの寄生インダクタと同じインダクタンスであり正負逆の値となる相互誘導が生じるように配置されている、回路モジュール。
【請求項2】
第1素子に接続する第1接続ラインと、
第2素子に接続する第2接続ラインと、
前記第1接続ラインと前記第2接続ラインとの接続点をグランドへ接続する接地ラインと、
前記接地ラインに直列接続されたコンデンサと、を備えた回路モジュールであって、
前記第1接続ラインには、第1インダクタが直列接続され、
前記第2接続ラインには、第2インダクタが直列接続され、
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、前記接地ラインの寄生インダクタと前記コンデンサの寄生インダクタとの合成インダクタに対して同じインダクタンスであり正負逆の値となる相互誘導が生じるように配置されている、回路モジュール。
【請求項3】
前記接地ラインの前記コンデンサと前記接続点との間には、外部の直流電源に接続する電源接続用ラインが接続されている、請求項2に記載の回路モジュール。
【請求項4】
前記第1インダクタと前記第2インダクタは、巻回方向が逆である、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記第1素子と前記第2素子は、回路モジュールで伝送する高周波信号の伝送経路に対して直列接続された複数の増幅素子である、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項6】
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、誘電体層を複数枚積層してなる積層体に形成したループ形状の電極パターンからなり、
前記第1インダクタを形成するループ形状の電極パターンと、前記第2インダクタを形成するループ形状の電極パターンとは、積層方向に沿って部分的に対向している、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の回路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77663(P2013−77663A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215839(P2011−215839)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】