説明

回転ドラム

【課題】巻き取られた線材を容易に取り外しうる回転ドラム2の提供。
【解決手段】この回転ドラム2は、長尺の線材が巻かれる巻取部10を備える。この巻取部10は、この巻取部10の外周に沿って配置される複数のセグメント16と、これらのセグメント16の内側に位置している伸縮部材26と、このセグメント16を内向きに引っ張る弾性部材とを備える。この伸縮部材26は、この弾性部材の引張力に抗して、このセグメント16を外向きに動かしうる。好ましくは、この回転ドラムでは、上記巻取部10は、上記セグメント16が軸支されるヒンジ34をさらに備える。この回転ドラム2では、巻取部10に巻き取られた線材の取り外しは容易である。この回転ドラム2の部品点数は、少ない。この回転ドラム2の形は、小さい。この回転ドラム2は、軽量でしかも安価である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ドラムに関する。詳細には、タイヤに用いられるコードのような長尺の線材が巻き取られる回転ドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、グリーンタイヤから得られる。このグリーンタイヤは、多数のゴム部材が積層されて得られる。この工程は、成形工程と称される。ゴム部材の具体例としては、インナーライナー、カーカスプライ、サイドウォール用ゴムシート、ベルトプライ、トレッド用ゴムシート等が挙げられる。
【0003】
カーカスプライ及びベルトプライのようなゴム部材は、多数のコードとトッピングゴムとからなる。このコードの材質としては、スチール及び有機繊維が例示される。このコードは、多数のフィラメントが撚り合わされて形成される。このコードは、回転ドラムに巻き取られて、次工程に供給される。この回転ドラムは、巻取部と、この巻取部を支持する主軸を備えている。この巻取部は、この主軸を中心にして回転しつつ、コードを巻き取る。この巻取部からコードが容易に取り外されうるように、この回転ドラムはこの巻取部を縮径しうる機能を備えている。このような機能を有するドラムが、特開平5−104142号公報及び特開2004−314357公報に開示されている。
【特許文献1】特開平5−104142号公報
【特許文献2】特開2004−314357公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻取部が縮径しうる回転ドラムには、この巻取部の外径が所定の比率で変化しうるように、通常リンク機構が設けられる。このリンク機構は複雑なので、この回転ドラムに含まれる部品点数は多い。この回転ドラムは、大きな形及び質量を有する。この回転ドラムの生産コストは、高い。この回転ドラムでは、このリンク機構を作動させるために、主軸に特殊な孔加工が施される。この孔加工は、この回転ドラムの製作に要する期間に影響を与える。
【0005】
本発明の目的は、巻き取られた線材を容易に取り外しうる回転ドラムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転ドラムは、長尺の線材が巻かれる巻取部を備えている。この巻取部は、この巻取部の外周に沿って配置される複数のセグメントと、これらのセグメントの内側に位置している伸縮部材と、このセグメントを内向きに引っ張る弾性部材とを備えている。この伸縮部材は、この弾性部材の引張力に抗して、このセグメントを外向きに動かしうる。
【0007】
好ましくは、この回転ドラムでは、上記巻取部は、上記セグメントが軸支されるヒンジをさらに備えている。
【発明の効果】
【0008】
この回転ドラムでは、伸縮部材により、弾性部材の引張力に抗してセグメントが外向きに動かされた状態で、線材が巻き取られる。所定長さの線材が巻取部に巻かれた後、この弾性部材の引張力で、このセグメントは内向きに動かされうる。これにより、巻取部と線材との間に隙間が形成される。この隙間の形成により、コードは弛む。従って、この回転ドラムでは、巻取部に巻き取られた線材の取り外しは容易である。この回転ドラムには、多くの部品点数を有する複雑なリンク機構が設けられる必要はない。従って、この回転ドラムに、複雑な加工が施される必要もない。この回転ドラムの部品点数は、少ない。この回転ドラムの形は、小さい。このような回転ドラムは、軽量でしかも安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転ドラム2が示された側面図である。図2は、図1の回転ドラム2の一部が示された正面図である。この回転ドラム2は、台座4と、2の軸受6と、主軸8と、巻取部10とを備えている。これらの軸受6は、この台座4に固定されており、この主軸8の一方の側を片持ちで支持している。この主軸8の他方の側に、この巻取部10が設けられている。図1中、一点鎖線CLはこの主軸8の回転軸を表している。
【0011】
主軸8は、回転軸CLを中心にして回転しうる。図1に示されているように、この主軸8はチューブ12を備えている。この回転ドラム2では、この主軸8の一方の端面に開口部14が設けられている。このチューブ12は、この開口部14からこの主軸8の内部に通されて巻取部10まで配されている。
【0012】
巻取部10は、略円筒状である。この巻取部10は、複数のセグメント16と、第一の支持部18と、第二の支持部20とを備えている。セグメント16は、その断面が湾曲状とされたプレートである。図2に示されているように、この回転ドラム2は4枚のセグメント16を有している。これらのセグメント16は、この巻取部10の外周に沿って配置されている。この回転ドラム2では、4枚のセグメント16のうち、2枚のセグメント16aは、上下方向に主軸8を挟んで互いに向き合うように配置されている。残りの2枚のセグメント16bは、左右方向に主軸8を挟んで互いに向き合うように配置されている。
【0013】
第一の支持部18は、主軸8の他方の端22の側に位置している。この第一の支持部18は、セグメント16の内側に位置している。この第一の支持部18は、支持プレート24と、2の伸縮部材26とを備えている。この支持プレート24は、この主軸8に固定されている。この主軸8は、この支持プレート24の中心に位置している。換言すれば、この第一の支持部18はこの主軸8に固定されている。この図2において、これらの伸縮部材26は、この主軸8の左右両側に位置している。前述したように、この第一の支持部18はセグメント16の内側にあるので、これらの伸縮部材26もセグメント16の内側に位置している。これらの伸縮部材26は、同一である。これらの伸縮部材26は、その上下が反対になるようにこの支持プレート24に取り付けられている。この伸縮部材26は、単動型シリンダーである。この伸縮部材26は、シリンダー28と、ピストン30とを備えている。このシリンダー28は、この支持プレート24に固定される。このピストン30は、このシリンダー28に挿入される。
【0014】
第二の支持部20は、巻取部10の、軸受6の側に位置している。この第二の支持部20は、セグメント16の内側に位置している。この第二の支持部20は、支持プレート32と、一対のヒンジ34とを備えている。この支持プレート32は、円盤状である。この支持プレート32は、主軸8に固定されている。この主軸8は、この支持プレート32の中心に位置している。換言すれば、この第二の支持部20は、この主軸8に固定されている。ヒンジ34は、この支持プレート32に固定されている。なお、この第二の支持部20には、第一の支持部18のように伸縮部材26は設けられていない。この第二の支持部20に、この伸縮部材26が設けられてもよい。
【0015】
図2に示されているように、この回転ドラム2では、主軸8の上下に位置する2枚のセグメント16aは、この第一の支持部18のピストン30にそれぞれ固定されている。この第一の支持部18は、この2枚のセグメント16aを支持している。この回転ドラム2では、左右方向において主軸8の両側に位置する2枚のセグメント16bは、支持プレート24に固定されている。
【0016】
この回転ドラム2では、セグメント16aは、その軸受6の側の端において、第二の支持部20のヒンジ34に取り付けられている。このセグメント16aは、このヒンジ34に軸支されている。セグメント16bは、支持プレート32に固定されている。
【0017】
この回転ドラム2では、第一の支持部18はセグメント16を支持しつつ、主軸8に固定されている。第二の支持部20も、セグメント16を支持しつつ、主軸8に固定されている。この回転ドラム2では、巻取部10はこの主軸8に固定されている。前述したように、この主軸8は回転軸CLを中心に回転しうる。従って、この巻取部10は、この主軸8を中心にして回転しうる。
【0018】
この回転ドラム2では、主軸8の開口部14を通じて配されたチューブ12は、巻取部10の内部において、2のチューブ12に分岐されている。この2のチューブ12は、第一の支持部18にある伸縮部材26のシリンダー28に接続されている。従って、圧力の調節された空気は、このチューブ12を通じてそれぞれのシリンダー28に供給される。
【0019】
図示されていないが、この回転ドラム2では、伸縮部材26に弾性部材としてのスプリングがさらに設けられている。このスプリングは、ピストン30とシリンダー28とを連結している。この伸縮部材26において、このスプリングはこのピストン30をシリンダー28の内部に引き込むように作用する。前述したように、この回転ドラム2では、このピストン30はセグメント16aに取り付けられている。従って、このスプリングは、セグメント16aを内向きに引っ張っている。なお、この伸縮部材26と弾性部材とが、別個独立にこの回転ドラム2に設けられてもよい。
【0020】
この回転ドラム2では、この伸縮部材26のシリンダー28に空気が導入されて、シリンダー28内の圧力が高められると、ピストン30はスプリングの引張力に抗してこのシリンダー28の外部に押し出される。逆に、このシリンダー28内の空気が排出されて、シリンダー28内の圧力が大気圧になると、スプリングの引張力により、ピストン30はシリンダー28の内部に引き込まれる。この回転ドラム2では、このピストン30はこのシリンダー28に対して動きうる。
【0021】
この回転ドラム2は、次のようにして用いられる。まず、コンプレッサーが用いられて圧力が調整された空気が、チューブ12を通じてシリンダー28に供給される。この空気の圧力により、ピストン30がスプリングの引張力に抗してシリンダー28に対して動く。これにより、このピストン30が取り付けられているセグメント16aは、この巻取部10の半径方向外側に向かって動く。換言すれば、この伸縮部材26は、スプリングの力に抗してセグメント16aを外向きに動かしうる。この回転ドラム2では、このセグメント16aは図2に示された状態で保持される。この図2には、この巻取部10の拡径状態が示されている。このセグメント16の外面は、円弧状に湾曲している。この回転ドラム2は、この拡径状態において、セグメント16の外面が同一円周上に位置するように構成されている。
【0022】
次に、主軸8が、モーター等の回転機(図示されず)により回転させられる。この主軸8の回転により、巻取部10がこの主軸8を中心にして回転する。フィラメントが撚り合わされて形成されたコードは、この拡径状態にある巻取部10に巻かれる。この回転ドラム2では、この巻取部10は回転しつつ、コードを巻き取る。このコードが所定長さこの巻取部10に巻き取られると、回転機が止められる。巻取部10の回転が止まると、シリンダー28に供給されている空気が、排出される。この排出により、伸縮部材26に設けられるスプリングの引張力で、ピストン30がシリンダー28内に引き込まれる。
【0023】
図3は、伸縮部材26のピストン30がシリンダー28内に引き込まれている状態が示された正面図である。前述したように、シリンダー28内の空気が排出されると、スプリングの引張力により、ピストン30はシリンダー28の内部に引き込まれる。従って、このピストン30に取り付けられているセグメント16aはこのスプリングの引張力により主軸8に向かって動く。これにより、このセグメント16aと主軸8との間の距離が縮みうる。換言すれば、この回転ドラム2では、第一の支持部18に設けられている2のピストン30の動きにより、これらのピストン30に取り付けられている2枚のセグメント16aの間の距離が縮みうる。この図3には、巻取部10の縮径状態が示されている。
【0024】
前述したように、この回転ドラム2では、セグメント16aは第二の支持部20のヒンジ34に軸支されている。従って、縮径状態にある巻取部10では、図1において二点鎖線で示されているように、このセグメント16aの外面がこの主軸8の他方の側に向かって先細りとなるように、このセグメント16aは配置される。
【0025】
図示されていないが、この回転ドラム2では、縮径状態にある巻取部10では、この巻取部10のセグメント16aの外面と、この巻取部10に巻かれているコードとの間に隙間が形成される。この隙間の形成によりコードは弛むので、この巻取部10に巻かれているコードが容易に取り外されうる。
【0026】
この回転ドラム2では、巻取部10の縮径及び拡径が2の伸縮部材26によりなされる。この回転ドラム2には、巻取部10が縮径及び拡径されうるために、多くの部品点数を有する複雑なリンク機構が設けられる必要はない。従って、この回転ドラム2に設けられる主軸8に、複雑な孔加工が施される必要もない。この回転ドラム2の部品点数は、少ない。この回転ドラム2の形は、小さい。この回転ドラム2は、軽量でしかも安価である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る回転ドラムは、種々のタイヤ構成部材を巻き取るために適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る回転ドラムが示された側面図である。
【図2】図2は、図1の回転ドラムの一部が示された正面図である。
【図3】図3は、伸縮部材のピストンがシリンダー内に引き込まれている状態が示された正面図である。
【符号の説明】
【0029】
2・・・回転ドラム
4・・・台座
6・・・軸受
8・・・主軸
10・・・巻取部
12・・・チューブ
14・・・開口部
16、16a、16b・・・セグメント
18・・・第一の支持部
20・・・第二の支持部
22・・・端
24、32・・・支持プレート
26・・・伸縮部材
28・・・シリンダー
30・・・ピストン
34・・・ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の線材が巻かれる巻取部を備えており、
この巻取部が、この巻取部の外周に沿って配置される複数のセグメントと、これらのセグメントの内側に位置している伸縮部材と、このセグメントを内向きに引っ張る弾性部材とを備えており、
この伸縮部材が、この弾性部材の引張力に抗して、このセグメントを外向きに動かしうる回転ドラム。
【請求項2】
上記巻取部が、上記セグメントが軸支されるヒンジをさらに備えている請求項1に記載の回転ドラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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