説明

回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物

【課題】高温下で使用された場合であっても、熱・酸化安定性と抗スラッジ性の双方を高水準で達成すると同時に、長寿命で、且つ省エネルギー効果に優れる回転ガス圧縮機用潤滑油組成物を提供すること
【解決手段】本発明の回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物は、粘度指数120以上の潤滑油基油と、フェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体と、p,p’−ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体と、粘度指数向上剤と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
回転式ガス圧縮機等のガス圧縮機に使用される潤滑油は、循環使用され高温の圧縮ガスとの接触が避けられないこと等の理由から、優れた熱・酸化安定性が求められる。そのため、一般的には、高度に精製された鉱油系基油やポリα−オレフィン類の水素添加物に代表される合成系炭化水素油に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤やフェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤を配合した圧縮機油が従来使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
回転式ガス圧縮機用潤滑油の寿命はその酸化安定性と相関するので、寿命を延ばすためには、潤滑油の酸化安定性を向上させる必要がある。潤滑油の酸化安定性を向上させる場合、基油自体の酸化安定性には限界があるため、基油に配合する酸化防止剤の増量あるいは高性能な酸化防止剤の使用およびその配合技術が必要となる。しかし、酸化防止剤の増量は、必然的に酸化防止剤に起因するスラッジを増加させる結果を招き、潤滑油の寿命の低下、あるいは回転式ガス圧縮機に付属する各種フィルターが目詰まりする原因となってしまう。したがって、酸化防止剤を増量することなくスラッジの生成を低く抑え、潤滑油の長寿命化及びフィルター目詰まりを低減する酸化防止剤の使用技術が求められている。
【0004】
一方、回転ガス圧縮機の中でも油冷式スクリュー圧縮機は,容積式でありながら回転式の特性もあわせもち,高効率,コンパクト,長期連続運転性などの特徴により産業界で広く使用されている(例えば、特許文献2を参照)。また、このような圧縮機用の潤滑油としては、一般に粘度指数が120程度の潤滑油が用いられている(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
圧縮機用潤滑油の場合、特に高温での適切な粘度を保持することが機器の寿命を延ばす上で重要なことであるが、一方で低粘度化し、攪拌抵抗を減らすことにより省エネルギー化することができる。したがって、高温域では粘度を確保しつつ、低温域では粘度増加の少ない、すなわち粘度指数の高い潤滑油が省エネルギー、機器の寿命延長の観点から望ましいと言える。従来、粘度指数を高くするために粘度指数向上剤(ポリメタクリレート系粘度指数向上剤など)を配合するという手法が用いられており、圧縮機用潤滑油においても粘度指数向上剤の適用検討はなされている(例えば、特許文献4、特許文献5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−239897号公報
【特許文献2】特開平11−013661号公報
【特許文献3】特開2008−179679号公報
【特許文献4】特開平11−335684号公報
【特許文献5】特開2005−154760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜5に記載されているように、高度に精製された鉱油系基油やポリα−オレフィン類の水素添加物に代表される合成系炭化水素油に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤やフェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤を配合し、省エネルギーの観点から粘度指数向上剤を配合して、機器の長寿命化、省エネ化が図られてきた。しかし、高度な高効性が要求される昨今の状況では、これら従来の技術では高温下で使用された場合であっても、熱・酸化安定性と抗スラッジ性との双方を高水準で達成すると同時に、長寿命で、且つ省エネルギー効果に優れる回転ガス圧縮機用潤滑油組成物を提供することが出来ない。
【0008】
また、本発明者が検討した結果、上記特許文献4、5に記載されているように、粘度指数を高めるために従来の高度精製基油にポリメタクリレート系の粘度指数向上剤を用いると、寿命が低下することが判明した。そのため、この方法では、長時間の運転に耐えられないことが懸念される。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高温下で使用された場合であっても、熱・酸化安定性と抗スラッジ性の双方を高水準で達成すると同時に、長寿命で、且つ省エネルギー効果に優れる回転ガス圧縮機用潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、粘度指数120以上の潤滑油基油と、フェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体と、p,p’−ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体と、粘度指数向上剤と、を含有することを特徴とする回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物を提供する。
【0011】
本発明の回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物において、上記潤滑油基油の粘度指数は、160以上であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物の粘度指数は120以上であることが好ましい。
【0013】
また、フェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体の含有量と、p,p’−ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体の含有量との質量比は、1:0.1〜1:3であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物は、粘度指数向上剤がポリオレフィン系の粘度指数向上剤であっても、寿命の低下を十分に抑制することができるものである。
【発明の効果】
【0015】
以上の通り、本発明によれば、高温下で使用された場合であっても、熱・酸化安定性と抗スラッジ性の双方を高水準で達成すると同時に、長寿命で、且つ省エネルギー効果に優れる回転ガス圧縮機用潤滑油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物は、粘度指数120以上の潤滑油基油と、フェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体と、p,p’−ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体と、粘度指数向上剤と、を含有する。
【0018】
本実施形態で用いられる潤滑油基油は、粘度指数が120以上であれば特に制限されず、鉱油系基油、ワックス分解系基油、合成系基油、あるいはそれらの混合油のいずれでもよい。具体的には、鉱油あるいはワックス分解油として、原油を常圧蒸留及び/又は減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油;あるいは、潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)やガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)を原料としハイドロクラッキング処理して得られた潤滑油留分の基油;などのうち、粘度指数が120以上を満たすものが挙げられる。これらの潤滑油基油は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
潤滑油基油の好ましい例としては、以下に示す(1)〜(8)を原料とし、この原料及び/又はこの原料から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。
(1)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留による留出油
(2)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(3)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)及び/又はガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(4)原料(1)〜(3)から選ばれる1種又は2種以上の原料及び/又は当該混合原料のマイルドハイドロクラッキング処理油
(5)原料(1)〜(4)から選ばれる2種以上の混合油
(6)原料(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の脱れき油(DAO)
(7)原料(6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(8)原料(1)〜(7)から選ばれる2種以上の混合油。
【0020】
なお、上記所定の精製方法としては、水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製;フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製;溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう;酸性白土や活性白土などによる白土精製;硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸又はアルカリ)洗浄などが好ましい。本発明では、これらの精製方法のうちの1種を単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。また、2種以上の精製方法を組み合わせる場合、その順序は特に制限されず、適宜選定することができる。
【0021】
また、合成油としては、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物のうち粘度指数が120以上のものが挙げられる。
【0022】
潤滑油基油の粘度指数は、120以上であり、好ましくは130以上、より好ましくは140以上である。なお、潤滑油基油の粘度指数が120未満であると、寿命が短くなるため好ましくない。
【0023】
潤滑油基油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度は、好ましくは8〜30mm/s、より好ましくは10〜25mm/s、さらに好ましくは12〜20mm/sである。40℃における動粘度が8より低いと摺動部での摩耗が増大するため好ましくなく、30より高いと攪拌抵抗が増大し、エネルギー消費が増すため好ましくない。
また、100℃における動粘度は、好ましくは2〜7mm/s、より好ましくは3〜6mm/s、さらに好ましくは3.5〜4.5mm/sである。100℃における動粘度が2より低いと摺動部での摩耗が増大するため好ましくなく、7より高いと攪拌抵抗が増大し、エネルギー消費が増すため好ましくない。
【0024】
本実施形態で用いられるフェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体およびp,p’−ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体は、酸化防止剤としての機能を有する。なお、潤滑油組成物がフェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体を含有しない場合あるいはp,p’−ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体を含有しない場合のいずれの場合も、所望の効果を得ることができない。
【0025】
フェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体としては、下記一般式(1)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンが好ましく用いられる。
【化1】


[一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示す。]
【0026】
一般式(1)中、Rで示される炭素数1〜16の直鎖上又は分岐状のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシ基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、及びヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。なお、Rの炭素数が16を超える場合には分子中に占める官能基の割合が小さくなり、酸化防止性能に悪影響を与える恐れがある。
【0027】
一般式(1)中のRがアルキル基である場合、溶解性に優れる点から、Rは、炭素数8〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3又は4のオレフィンのオリゴマーから誘導される炭素数8〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレンが挙げられるが、溶解性に優れる点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。更に優れた溶解性を得るためには、R1は、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましく、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が特に好ましい。
【0028】
また、ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体としては、下記一般式(2)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンが好ましく用いられる。
【化2】


[一般式(2)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜16のアルキル基を示す。]
【0029】
及びRで表されるアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシ基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。これらの中でも、高温での酸化防止性をより長期にわたって維持できる点から、R及びRとしては、炭素数3〜16の分枝アルキル基が好ましく、炭素数3又は4のオレフィン又はそのオリゴマーから誘導される炭素数3〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレン等が挙げられるが、高温での酸化防止性をより長期にわたって維持できる点から、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。また、R又はRとしては、更に優れた酸化防止性が得られることから、それぞれプロピレンから誘導されるイソプロピル基、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらにより好ましく、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、プロピレンの2量体から誘導される分枝ヘキシル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基が最も好ましい。
【0030】
なお、R及びRの一方又は双方が水素原子である化合物を用いると、当該化合物自体の酸化によりスラッジが発生する恐れがある。また、アルキル基の炭素数が16を超える場合には、分子中に占める官能基の割合が小さくなり、高温での酸化防止性が低下する恐れがある。
【0031】
フェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体の含有量と、p,p’−ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体の含有量との質量比は、好ましくは質量比が1:0.1〜1:3であり、より好ましくは1:0.3〜1:1.5、さらに好ましくは1:0.4〜1:1.2、特に好ましくは1:0.5〜1:1.0である。なお、当該質量比が1:0.1より小さい場合は、寿命が短くなるおそれがあり、また、1:1.5を超える場合は、スラッジの発生量が多くなるおそれがある。
【0032】
本実施形態に係る粘度指数向上剤は、任意のポリマーを用いることができるが、中でも好ましいのはポリメタクリレートとオレフィンポリマーであり、より好ましくはオレフィンポリマーであり、炭素数2〜20のオレフィンから選ばれる1種または2種以上のオレフィン単量体のオレフィンホモポリマー(オレフィン重合体)あるいはオレフィンコポリマー(OCP;オレフィン共重合体)であり、ランダム重合でもブロック重合でもよい。また、重量平均分子量は、オレフィン重合体の場合は、5,000〜300,000、オレフィン共重合体の場合は、20,000〜250,000である。中でも、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−イソブチレンコポリマーが好ましく用いられ、特に好ましくはエチレン−プロピレンコポリマーが用いられる。
【0033】
回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物における粘度指数向上剤の含有量は任意であり、配合するポリマーの分子量あるいは動粘度によってその配合量を適宜調整すればよい。
【0034】
また、本実施形態に係る回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物は、その各種性能を更に向上させる目的で、上記以外の公知の潤滑油添加剤、例えばフェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体およびp,p’−ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体以外の酸化防止剤、さび止め剤、腐食防止剤、流動点降下剤、極圧剤、金属不活性剤、油性剤、消泡剤、清浄分散剤などのうち1種又は2種以上を含有してもよい。
【0035】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤、フェノチアジン系酸化防止剤等などが挙げられる。
【0036】
さび止め剤としては、例えば、脂肪族アミン類、有機スルホン酸金属塩、有機リン酸金属塩、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステルなどが挙げられる。
【0037】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0038】
流動点降下剤としては、例えば、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン等の流動点降下剤などが挙げられる。
【0039】
極圧剤としては、例えば、リン系極圧剤及び/又はホスフォロチオネートなどが挙げられる。リン系極圧剤としては、正リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステルが好ましく用いられる。
【0040】
金属不活性剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール又はその誘導体等の金属不活性化剤などが挙げられる。
【0041】
油性剤としては、例えば、エステル油性剤、アルコール油性剤、エーテル油性剤などが挙げられる。
エステル油性剤は、天然物( 通常は動植物などに由来する天然油脂に含まれるもの) であっても合成物であってもよが、合成エステルであることが好ましい。
アルコール油性剤としては、炭素数1〜24の1価アルコール及び2〜10価の多価アルコールなどが挙げられる。
【0042】
消泡剤としては、例えば、ポリアクリレート等のアクリレート系消泡剤、アルキルポリシロキサン等のシロキサン系消泡剤などの消泡剤が挙げられる。
【0043】
清浄分散剤としては、スルフォネート、フェネート、サリシレート等の金属系清浄剤、コハク酸イミド等の無灰分散剤が挙げられる。中でも好ましいのはカルシウムサリシレートである。
【0044】
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属フェネート又はアルカリ土類金属フェネート、アルカリ金属サリシレート又はアルカリ土類金属サリシレート、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0045】
アルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネートとしては、より具体的には、分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられ、アルキル芳香族スルホン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。
【0046】
石油スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルホン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ベンゼンをポリオレフィンでアルキル化することにより得られる、分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレンをスルホン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては特に制限はないが、通常発煙硫酸や硫酸が用いられる。ベンゼンのアルキル化に用いるポリオレフィンとしては、具体的にはプロピレンやブテンのオリゴマーを挙げることができる。
【0047】
アルカリ金属フェネート又はアルカリ土類金属フェネートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと元素硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。アルキルフェノールのアルキル基成分としては、具体的にはプロピレンやブテンのオリゴマーを挙げることができる。
【0048】
アルカリ金属サリシレート又はアルカリ土類金属サリシレートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。アルキルサリチル酸のアルキル基成分としては、具体的にはプロピレンやブテンのオリゴマーを挙げることができる。
【0049】
また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネート及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートには、アルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、直接、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる中性塩(正塩)だけでなく、さらにこれら中性塩(正塩)と過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩やアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基(アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で中性塩(正塩)をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)も含まれる。なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。
【0050】
これらの添加剤の含有量は任意であるが、組成物全量基準で、酸化防止剤の場合は、0.01〜3質量%、さび止め剤及び腐食防止剤の場合は0.01〜0.1質量%、流動点降下剤及び油性剤の場合は、0.1〜3質量%、極圧剤及び金属不活性化剤の場合は0.005〜1質量%、消泡剤の場合は0.00001〜0.05質量%であることが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る圧縮機油回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは120以上であり、より好ましくは130以上、さらに好ましくは140以上である。
【0052】
本実施形態に係る圧縮機用潤滑油組成物は、熱・酸化安定性、抗スラッジ性を高水準で両立することができるものであり、また長寿命で省エネルギー効果があるため、様々な圧縮機において好適に使用することができ、中でも高温下で使用される回転型圧縮機用潤滑油として非常に有用である。更に、回転型圧縮機の中でも、スクロール型圧縮機用の圧縮機油として使用した場合にその効果を最大限に発揮することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
[実施例1〜10、比較例1〜4]
実施例1〜10および比較例1〜4においては、それぞれ以下に示す潤滑油基油および添加剤を用いて、表2〜4に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。
【0055】
<潤滑油基油>
潤滑油基油A1〜A4の性状を表1に示す。A1及びA2はワックス分解系高度精製油、A3は高度水素化精製油、A4は溶剤精製基油である。表1中、40℃における動粘度、100℃における動粘度および粘度指数はJIS K 2283に準拠して測定された値である。また、n−d−M環分析の結果は、ASTM D3238−85(n−d−M環分析)に準拠して測定したものであり、%Cはパラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率、%Cはナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率、%Cは芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率である。
【0056】
【表1】

【0057】
<添加剤>
酸化防止剤:
B1:炭素数8の分枝アルキル基を有するアルキルフェニルα−ナフチルアミン
B2:炭素数12の分枝アルキル基を有するアルキルフェニルα−ナフチルアミン
B3:炭素数4の分枝アルキル基と炭素数8分枝アルキル基を有するジアルキルジフェニルアミン
B4:炭素数8分枝アルキル基を有するジアルキルジフェニルアミン
B5:炭素数9分枝アルキル基を有するジアルキルジフェニルアミン
B6:炭素数12分枝アルキル基を有するジアルキルジフェニルアミン
粘度指数向上剤:
C1:エチレンプロピレンコポリマー(三井化学製ルーカントHC2000、100℃における動粘度:2000mm/s、粘度指数:300)
C2:ポリα―オレフィン(100℃動粘度:39 mm/s、粘度指数147)
D1:カルシウムサリシレート
【0058】
次に、実施例1〜10及び比較例1〜4の各潤滑油組成物について、下記の実験方法により、寿命の評価及び消費電力量の測定を行った。
【0059】
<寿命評価試験>
日立製作所社製回転式ガス圧縮機OSPA−5.5Uを使用して、平均運転温度80℃、平均運転圧力0.7MPa、試験途中での試料油の補給は無い条件で連続運転を実施した。連続運転中、2,000時間毎に試料油を採取し、JIS K 2514「回転ボンベ式酸化安定度試験(RBOT)」に準拠して安定度試験を実施し、RBOT値が100分未満になるまでの時間を実機寿命時間(h)とした。得られた結果を表2〜4に示す。なお、表4中、「中止」は、200時間で異音が発生したため試験を中止したことを意味する。
【0060】
<消費電力量測定>
神戸製鋼製回転式ガス圧縮機CM11BD5を使用いて、平均運転温度90℃、平均運転圧力0.7MPaで運転し、運転時間200時間経過時点での消費電力量(kWH)を測定した。得られた結果を表2〜4に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度指数120以上の潤滑油基油と、
フェニル−α−ナフチルアミンまたはその誘導体と、
p,p’−ジアルキルジフェニルアミンまたはその誘導体と、
粘度指数向上剤と、
を含有することを特徴とする回転式ガス圧縮機用潤滑油組成物。

【公開番号】特開2011−162629(P2011−162629A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25519(P2010−25519)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】