説明

回転式電動歯ブラシ

【課題】歯ブラシの部分が嵩張らずしかも磨く面積が広い回転式電動歯ブラシを提供する。
【解決手段】2本の回転軸の先端部に放射状に植毛した歯ブラシを形成して、両方のブラシの毛先が交差するように歯ブラシを左右2本接近して配置すると共に、前記回転軸の基端部をハンドル部に内蔵したモータに連結して、前記歯ブラシを両者逆方向に回転する。歯ブラシが2本並んでいるため磨く面積が広い。回転軸とその軸受け部を可撓性材料で形成して2本の歯ブラシの間が自由に広がるため、歯をいろいろな角度から磨くことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータでブラシが回転する形式の歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の歯ブラシには2つのタイプがある。ブラシの毛が回転軸に対し放射状のタイプと平行なタイプである。放射状タイプは磨く面積を広く設計しにくいが、平行タイプは毛先が平面的に並ぶため磨く面積を広くし易い利点がある。
平行タイプの例として特許4073957号がある。この例はモータを内蔵したハンドルの先にブラシを植えた円板を取付け、モータで円板を回転する構造である。ハンドルを握ったときブラシの毛先が正面に向くように、円板はハンドルに対し横向きに取付けられている。このためハンドルの長さ方向に沿って設けたモータの出力軸に対し円板の回転軸は直角に交差し、伝動はべべルギアで行っている。
【0003】
このことから平行タイプにおいては、毛先とは反対側の歯ブラシ裏側にべべルギアの収容空間を設ける必要があり、この空間のためにブラシ全体が嵩張り、奥歯を磨くとき口を大きく開けなければならないなど、歯ブラシの使用感が優れないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4073957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するもので、放射状タイプを採用することにより平行タイプに必須のベベルギア用の空間を省略し、そのうえで従来の放射状タイプと違って磨く面積を広く確保することを目的とする。
さらに従来困難であった歯の噛み合わせ面と側面の同時磨きを可能にするなど、使い勝手の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1の回転式電動歯ブラシは、2本の回転軸の先端部に放射状に植毛した歯ブラシを形成して、両方のブラシの毛先が交差するように歯ブラシを左右2本接近して配置すると共に、前記回転軸の基端部をハンドル部に内蔵したモータに連結して、前記歯ブラシを両者逆方向に回転することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2は、前記歯ブラシを具備する歯ブラシ支持部をハンドル部に対し取外し可能に連結すると共に、歯ブラシ支持部と連結し合う前記ハンドル部の連結端面に、モータ側の出力軸の軸端部を露出させ、この軸端部と前記回転軸の基端部をスプライン結合により着脱自在に連結することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3は、歯ブラシ支持部の先端部にブラシ軸受け部を取付け、ブラシ軸受け部には正面に向けて4本のアームを一体的に張り出し、各アームには軸穴を形成し、これらの軸穴に前記歯ブラシの先端部を挿通して各歯ブラシの根本側と先端側の2箇所をそれぞれ支承すると共に、これらアーム4本及び回転軸2本を可撓性材料により形成することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4は、前記可撓性材料が熱可塑性エラストマーであることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項5は、2本の回転軸の先端部に放射状に植毛した歯ブラシを形成して、両方のブラシの毛先が交差するように歯ブラシを左右2本接近して配置すると共に、前記回転軸の基端部をハンドル部に内蔵したモータに連結して、前記歯ブラシを両者逆方向に回転するように構成し、そして前記ハンドル部内にモータに給電する充電器とこれに接続する誘導コイルを設ける一方、ハンドル部の基底部を嵌合してハンドル部を起立するスタンド部を備え、このスタンド部の内部に、家庭用コンセントに接続すべき電磁コイルを設けて、両コイル間の電磁誘導により前記充電器を充電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、放射状の歯ブラシを左右2本に並べた構造なので、歯ブラシ1本に比べ磨く面積を広く設計できる。また歯ブラシの裏側にベベルギア用の収容空間を設ける必要がないから、口を大きく開かなくても、奥歯まで歯ブラシを容易に挿入でき使用感が良い。さらに2本の歯ブラシは逆方向に回転するので、歯の汚れを落し易いし、また歯ブラシの毛先が交差するので、歯ブラシ自身の汚れも落ち易く、清潔に使用できる。
【0012】
また請求項2では、歯ブラシ支持部をハンドル部に対し取外し可能に連結するので、歯ブラシ支持部を付け替えれば、ハンドル部を家族など複数人で共用できるし、使い古した歯ブラシを新しいものに簡単に交換することも出来る。また歯ブラシの回転軸とハンドル部の出力軸をスプライン結合するので、歯ブラシ支持部をハンドル部に組み付けるだけで歯ブラシの回転軸をモータの出力軸に連結できる。
【0013】
また請求項3では、歯ブラシの根本側と先端側の2箇所を支承するアームを可撓性材料で形成するので、歯ブラシを歯に押し付けると反力でアームが側方に曲がって左右に広がり、2本の歯ブラシの距離が離れる。そのため、歯の噛み合わせ面と歯の側面を同時に磨くなど多様な使用法が可能となる。また回転軸も可撓性材料で形成するので、アームが曲がって歯ブラシの軸位置が定位置からずれても、出力軸の回転が回転軸に円滑に伝わる。
【0014】
また請求項4では、可撓性材料が熱可塑性エラストマーであるから複雑な形状も容易に成型できる。
【0015】
さらに請求項5では、ハンドル部の充電器をスタンド部と非接触で充電するので、洗面台等の水を使う場所で使用しても感電することなく安全であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を実施した歯ブラシ支持部の正面図で仮想線は変形状態を示す。
【図2】図1の平面図
【図3】図1の側面図
【図4】図1の背面図
【図5】図1の底面図
【図6】図1の歯ブラシ支持部をスタンド部に取付けた状態の全体側面図
【図7】本発明を実施した回転式電動歯ブラシの回路図
【図8】本発明の動力伝達経路を示す機構図
【図9】本発明の使用状態説明図
【図10】本発明の使用状態説明図
【図11】本発明の使用状態説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図に示して説明する。
1は左右1対の回転軸で、先端部は複数本の金属細線を撚り合わせた構造で、これら細線間にブラシの毛を挟むことにより、放射状の歯ブラシ2が形成してある。2本の歯ブラシ2は正面から見て左右に接近して並び互いのブラシの毛先が交差している(図1、2)。
3は歯ブラシ支持部で先細りの形状をしている。この先細りの先端部にブラシ軸受け部4を取付ける。ブラシ軸受け部4には正面に向けて4本のアーム5を一体的に張り出し、各アーム5には軸穴を形成し、これらの軸穴に前記回転軸1を挿通して各歯ブラシ2の根本側と先端側の2箇所を支承する。
そしてこれら4本のアーム5を含むブラシ軸受け部4、及び2本の回転軸1を、可撓性材料、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)のような軟質樹脂により形成する。他方、それ以外の歯ブラシ支持部3は硬質材料、例えばポリプロピレンのような熱可塑性樹脂により形成する。
【0018】
歯ブラシ支持部3の基部は外径が末広がりに太くなっている。回転軸1はこの太い基部に形成した上下方向の通孔6を貫いて歯ブラシ支持部3の内部に突き出て、その底部において基端部7が遊離端となっている。基端部7の断面は四角形である。
8は円柱形のハンドル部で、これに歯ブラシ支持部3を取外し可能に連結する。すなわちハンドル部8の連結端面に係合片(図時省略)を起立し、これに歯ブラシ支持部3の底部内周の突起9を着脱試合に係止して連結する。ハンドル部8にはモータ10が内蔵され、その出力側の軸端部11がハンドル部8の連結端面に露出している。この軸端部11の中心には角穴が穿ってあり、歯ブラシ支持部3をハンドル部8に連結すると、回転軸1の基端部7が、この角穴に挿入され、回転軸1とモータ10の出力側がスプライン結合する。
左右の軸端部11はギア12で連結され、双方、等速で逆方向に回転するようになっている(図2、8)。
【0019】
13はハンドル部8を立てかけるスタンドで、内部に電磁コイル14が設けられている。電磁コイル14は付属の電源コードを介して家庭用コンセントSに接続する(図7)。
一方、ハンドル部8の内部には、モータ10を起動する充電式バッテリ15とそれを充電する誘電コイル16が設けられ、ハンドル部8をスタンド12の縦穴に差し込んで起立すると、コイル14,16の間の電磁誘導によりバッテリ15が充電される。
17はハンドル部8の正面に設けたスイッチで、防水カバーで覆われている。18は整流器を示す。
【0020】
スイッチ17を押して回路を閉じるとモータ10が回転し、それが軸端部11から回転軸1に伝わり、2本の歯ブラシ2が回転する。
2本の歯ブラシ2の間に歯を差し込むと、歯ブラシの間が広がって歯の裏側を表側と同時に磨くことが出来る(図9)。2本の回転軸1とアーム5は可撓性のため、図1及び2の仮想線で示すように、曲がっても支障なく回転する。
また歯の角に歯ブラシを当てると噛み合わせ面と側面が同時に磨けるし(図10)、歯を上下噛み合わせた状態で歯ブラシを当てると、上下の歯を同時に磨くことも出来る(図11)。
このように本発明の回転式電動歯ブラシは歯を様々な角度から磨けて良好な歯磨き効果が期待できる。
なお歯ブラシ2は左右同一方向に回転させてもよいし、回転速度に差をつけてもよい。これらはギアの組み合わせで任意に設計できる。
【符号の説明】
【0021】
1は回転軸
2は歯ブラシ
3は歯ブラシ支持部
4は歯ブラシ軸受け部
5はアーム
6は通孔
7は基端部
8はハンドル部
10はモータ
11は軸端部
13はスタンド部
14は電磁コイル
15は充電式バッテリ
16は誘電コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の回転軸の先端部に放射状に植毛した歯ブラシを形成して、両方のブラシの毛先が交差するように歯ブラシを左右2本接近して配置すると共に、前記回転軸の各基端部をハンドル部に内蔵したモータに連結して、前記歯ブラシを両者逆方向に回転することを特徴とする回転式電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記歯ブラシを具備する歯ブラシ支持部をハンドル部に対し取外し可能に連結すると共に、
歯ブラシ支持部と連結し合う前記ハンドル部の連結端面に、モータ側の出力軸の軸端部を露出させ、この軸端部と前記回転軸の基端部をスプライン結合により着脱自在に連結することを特徴とする請求項1記載の回転式電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記歯ブラシ支持部の先端部にブラシ軸受け部を取付け、ブラシ軸受け部には正面に向けて4本のアームを一体的に張り出し、各アームには軸穴を形成し、これらの軸穴に前記歯ブラシの先端部を挿通して各歯ブラシの根本側と先端側の2箇所をそれぞれ支承し、
さらにこれらアーム4本及び回転軸2本を可撓性材料により形成することを特徴とする請求項1記載の回転式電動歯ブラシ。
【請求項4】
前記可撓性材料が熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項3記載の回転式電動歯ブラシ。
【請求項5】
2本の回転軸の先端部に放射状に植毛した歯ブラシを形成して、両方のブラシの毛先が交差するように歯ブラシを左右2本接近して配置すると共に、前記回転軸の基端部をハンドル部に内蔵したモータに連結して、前記歯ブラシを両者逆方向に回転するように構成し、
そして前記ハンドル部内にモータに給電する充電器とこれに接続する誘導コイルを設ける一方、ハンドル部の基底部を嵌合してハンドル部を起立するスタンド部を備え、このスタンド部の内部に、家庭用コンセントに接続すべき電磁コイルを設けて、両コイル間の電磁誘導により前記充電器を充電することを特徴とする回転式電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−176165(P2012−176165A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41228(P2011−41228)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000114628)ヤーマン株式会社 (31)
【Fターム(参考)】