説明

回転駆動装置、ロボットの関節構造及びロボットアーム

【課題】遊星歯車と可動内歯歯車及び固定内歯歯車との間のバックラッシュを簡便且つ安価に除去、低減することができるとともに、この可動内歯歯車の出力軸の回転方向の位置精度を向上させることができる回転駆動装置と、この回転駆動装置を用いたロボットの関節構造及びこのロボットの関節構造を備えたロボットアームを提供することにある。
【解決手段】太陽歯車11と、前記太陽歯車11の中心軸Oを中心として公転する遊星歯車14と、前記遊星歯車14に噛み合う固定内歯歯車15と、前記固定内歯歯車15と異なる歯数とされ、前記太陽歯車11と同軸上に回転可能に配置されるとともに前記遊星歯車14に噛み合う可動内歯歯車16と、前記太陽歯車11を前記中心軸O周りに回転させる駆動モータ2と、前記遊星歯車14を前記可動内歯歯車16に向け付勢するための付勢手段17と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動モータとこの駆動モータの回転を減速させる減速機とを備えた回転駆動装置、この回転駆動装置によって構成されるロボットの関節構造及びロボットアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転駆動装置としては、例えば特許文献1に開示されているように、所謂不思議遊星歯車を利用した減速機と太陽歯車を回転駆動させる駆動モータとを備えて構成されたものが提案されている。
不思議遊星歯車は、太陽歯車と、前記太陽歯車と噛み合うとともにこの太陽歯車の中心軸を中心として公転する遊星歯車と、この遊星歯車の外方に噛み合うとともに前記太陽歯車と同軸上に固定配置された固定内歯歯車と、この固定内歯歯車と歯数が異なり前記遊星歯車に噛み合うとともに前記太陽歯車と同軸上に回転可能に配置された可動内歯歯車とを有しており、この可動内歯歯車には、前記中心軸の同軸上に回転駆動される出力軸が設けられている。
【0003】
太陽歯車が回転すると、遊星歯車は自転しつつこの太陽歯車の中心軸周りに公転する。ここで、遊星歯車と夫々噛み合う固定内歯歯車と可動内歯歯車とは歯数が異なるように構成されているので、遊星歯車の自転及び公転によって固定内歯歯車と可動内歯歯車との回転方向の相対位置がずらされていき、可動内歯歯車が前記中心軸周りに回転するようになっている。そして、このように構成される不思議遊星歯車を用いた減速機を駆動モータで駆動させ、可動内歯歯車の出力軸若しくは該出力軸に連結される部材を回転駆動させる。
【0004】
このような不思議遊星歯車を用いた回転駆動装置では、遊星歯車と可動内歯歯車及び固定内歯歯車との間には予めバックラッシュが設定されており、このバックラッシュにより各歯車同士が円滑に駆動するようになっている。
【特許文献1】特開2000−274495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遊星歯車と可動内歯歯車及び固定内歯歯車とを互いに精度よく位置決めすることは難しく、歯車の噛み合い不良による装置の停止・破損を防止するため、前述のバックラッシュは予め若干大きめに設定されるようになっている。しかしながら、例えばこの回転駆動装置をロボットアームの関節構造に用いた場合には、前記減速機には駆動モータからの駆動力が常時伝達されているわけではない。すなわち、作業に合わせ駆動モータが停止されることがあるが、このように駆動モータからの駆動力が付与されていない状態では、前記各歯車間に大きめに設定されるバックラッシュに起因して出力軸若しくは出力軸側に連結される部材の先端部分が前記中心軸の回転方向にふら付いて、作業精度を低下させる虞があった。
【0006】
このような出力軸の回転方向のふら付きを防止するために、遊星歯車、可動内歯歯車、固定内歯歯車の各歯車の噛み合い部分の歯形の加工精度を向上しバックラッシュを低減する方法が考えられるが、そのための精密加工に要する費用は非常に高価となり、また加工に時間がかかる。よって生産性が悪く、大幅なコストアップとなる。
【0007】
本発明は、前述のような事情を鑑みてなされたもので、遊星歯車と可動内歯歯車及び固定内歯歯車との間のバックラッシュを簡便且つ安価に除去、低減することができるとともに、この可動内歯歯車の出力軸の回転方向の位置精度を向上させることができる回転駆動装置と、この回転駆動装置を用いたロボットの関節構造及びこのロボットの関節構造を備えたロボットアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。すなわち本発明は、太陽歯車と、前記太陽歯車に噛み合うとともに前記太陽歯車の中心軸を中心として公転する遊星歯車と、前記太陽歯車と同軸上に固定配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う固定内歯歯車と、前記固定内歯歯車と異なる歯数とされ、前記太陽歯車と同軸上に回転可能に配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う可動内歯歯車と、前記太陽歯車を前記中心軸周りに回転させる駆動モータと、前記遊星歯車を前記可動内歯歯車に向け付勢するための付勢手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る回転駆動装置によれば、遊星歯車には、該遊星歯車をその外方に噛み合わされる可動内歯歯車に向け付勢するための付勢手段が設けられており、この遊星歯車が可動内歯歯車に常時押接された状態とされているので、これら遊星歯車と可動内歯歯車及び固定内歯歯車との間に設けられるバックラッシュが適切に除去、低減されて、駆動モータからの駆動力が伝達されていない状態であっても可動内歯歯車の出力軸が前記中心軸の回転方向にふら付くことなく安定した状態とされて、その位置精度が向上する。
【0010】
また本発明の回転駆動装置において、前記遊星歯車は複数設けられており、前記付勢手段は、前記遊星歯車の軸線を貫通するとともに該遊星歯車を回転可能に軸支する付勢軸と、前記付勢軸を支持する複数の支持部材と、隣接する前記支持部材同士を互いに離間させるようにして反力を付与するとともに、これら支持部材を前記可動内歯歯車に向け付勢させるための第一弾性部材と、を備えることとしてもよい。
また、前記遊星歯車は複数設けられており、前記付勢手段は、前記遊星歯車の軸線を貫通するとともに該遊星歯車を回転可能に軸支する付勢軸と、前記付勢軸を前記可動内歯歯車に向け付勢し支持する複数の第二弾性部材と、前記第二弾性部材を支持する支持部材と、を備えることとしてもよい。
【0011】
この発明に係る回転駆動装置によれば、複数の遊星歯車はその軸線が付勢軸によって夫々回転可能に貫通されており、これら付勢軸は少なくとも複数の支持部材または複数の弾性部材のいずれか一方に支持されるとともに他方の支持部材または弾性部材を用いて前記可動内歯歯車に向け夫々付勢されるようになっている。従って、これら遊星歯車がその外方の可動内歯歯車に向け常時押接された状態とされているので、これら遊星歯車と可動内歯歯車及び固定内歯歯車との間に設けられるバックラッシュがより安定して除去、低減されて、可動内歯歯車の出力軸が前記中心軸の回転方向にふら付くことなく安定した状態とされ位置精度が向上する。
【0012】
また、複数の遊星歯車は夫々に設けられる支持部材または弾性部材により各々付勢されるようになっているので、各遊星歯車に付勢される反力がバランスして、高精度な作動状況が得られる。
【0013】
また本発明の回転駆動装置において、前記遊星歯車は、前記太陽歯車の外周側に周方向均等に配設されるとともに、その数量が3つ以上とされていることとしてもよい。これによれば、これら遊星歯車は、該遊星歯車の内方に噛み合う太陽歯車と外方に噛み合う可動内歯歯車及び固定内歯歯車とに夫々周方向に3点以上支持されるので、これら太陽歯車と可動内歯歯車及び固定内歯歯車との反力がより安定して夫々の回転方向のふら付きが良好に防止される。
【0014】
また、本発明のロボットの関節構造は、前述の回転駆動装置を2つ備え、これら2つの回転駆動装置が、一の回転駆動装置の前記駆動モータと他の回転駆動装置の前記駆動モータとを互いに交差するように、且つ、一の回転駆動装置の前記中心軸と他の回転駆動装置の前記中心軸とを互いに交差するように組み付けられ、2軸方向に回転可能に構成されることを特徴としている。
【0015】
この発明に係るロボットの関節構造によれば、2つの回転駆動装置によって2軸の関節構造が構成されているので、複雑な動作を行うことができるとともに、この関節構造の先端に取り付けられる例えば把持機構からなる作業部等の精度が向上する。また、2つの回転駆動装置の駆動モータを互いに交差するように近接して配置することができ、従って両回転駆動装置を近接して構成できるので、関節構造の小型化を図ることができる。
【0016】
また、本発明のロボットアームは、前述のロボットの関節構造を備えることを特徴としている。この場合、回転駆動装置が減速比の大きな不思議遊星歯車機構を備えているので、小型の駆動モータであっても比較的大きなトルクを出力することができ、小型、且つ高出力のロボットアームを構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る回転駆動装置、ロボットの関節構造及びロボットアームによれば、遊星歯車と可動内歯歯車及び固定内歯歯車との間のバックラッシュを簡便且つ安価に除去、低減することができるとともに、この可動内歯歯車の出力軸の回転方向の位置精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る回転駆動装置を示す分解斜視図、図2は回転駆動装置の概略構成を示す正断面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る回転駆動装置10は、取付プレート1と、駆動モータ2と、所謂不思議遊星歯車機構からなる減速機3と、を備えている。取付プレート1は略矩形平板状をなしており、図2に示すように4つのコーナ部に取付用のボルト孔1aが穿設されるとともに、その中央部に比較的大径の貫通孔1bが設けられている。またこの取付プレート1の一方側(図1及び図3において左側)には減速機3が配置され、他方側(図1及び図3において右側)には駆動モータ2が配置されている。
【0020】
また図2に示すように、駆動モータ2は、その駆動軸2cの回転中心が後述する太陽歯車11の中心軸Oに対して偏倚して配置されている。また駆動軸2cの先端には、太陽歯車11に噛み合うピニオン2dが設けられている。
【0021】
また、減速機3は、中心軸Oを中心として回転可能に配置された太陽歯車11を備えている。この太陽歯車11は環状をなしておりその外周面に歯形が形成されている。また太陽歯車11は、その内周側に配設された環状のボールベアリング12により支持されている。このボールベアリング12のさらに内周側には、中心軸Oを中心として太陽歯車11と回転自在に配設される略円筒状の出力軸13が設けられている。
【0022】
そして、図1に示すように、この出力軸13の一方側(図1において左側)の端面には突出した突出部13cが形成されており、また出力軸13の内周面は中心軸O方向に貫通する貫通孔13dとされている。またこの貫通孔13dの内径は前述の取付プレート1の貫通孔1bの内径よりも小径とされている。
【0023】
また図2に示すように、太陽歯車11の外周側には、この太陽歯車11に噛み合う歯形を備える3つの遊星歯車14が配設されている。本実施形態においては、これら3つの遊星歯車14が周方向に等間隔(120°間隔)に配置されている。
【0024】
また図1に示すように、これら遊星歯車14の外方には、内周面に遊星歯車14に噛み合う歯形を夫々備えた固定内歯歯車15及び可動内歯歯車16が、中心軸O方向に重なるようにして配置され、夫々が遊星歯車14に中心軸O方向に略半分ずつ噛み合わされるようにして配置されている。
固定内歯歯車15は、太陽歯車11の中心軸Oがその中心にくるように同軸とされて取付プレート1に接合されて固定されており、また遊星歯車14の他方側(図1において右側)部分と噛み合わされている。
【0025】
また可動内歯歯車16は、同じく中心軸Oがその中心にくるように同軸に、且つ中心軸O周りに回転可能に配設されており、遊星歯車14の一方側(図1において左側)部分と噛み合わされている。この可動内歯歯車16の歯数と前述の固定内歯歯車15の歯数とは異なるように設定されており、本実施形態ではその歯数差は3とされている。またこの可動内歯歯車16の一方側の端面は中心軸Oに直交する円板面16aとされており、またその中央部には孔部16bが設けられている。
【0026】
孔部16bには、出力軸13の一方側の端面に設けられる突出部13cが挿入されて、嵌め合わされるようになっている。そして、可動内歯歯車16と出力軸13とが螺合等により連結されて、可動内歯歯車16の回転駆動が出力軸13へと伝達されるようになっている。
【0027】
また図1、図2に示すように、この回転駆動装置10には、遊星歯車14をその外方の可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15に向け付勢するための付勢手段17が備えられている。この付勢手段17は、遊星歯車14の軸線を貫通するとともにこの遊星歯車14を回転自在に支える付勢軸17aと、この付勢軸17aを軸支する湾曲した略円弧平板状若しくは略扇状の支持部材17bと、隣接する支持部材17b同士を互いに離間させるようにして反力を付与する第一弾性部材17cとを備えている。
【0028】
支持部材17bは、平板状の円環を周方向均等に120°ずつ3分割したようにして、計3つ配置されている。また各支持部材17bの平板部分の中央近傍には付勢軸17aを軸支するための軸支孔17dが設けられている。また、これら支持部材17bの両端部分には、取付プレート1の側に向けその平板部分の厚みを増大させるようにして形成される肉厚の端部17eが設けられており、この端部17eの端面に開口されて有底円柱穴状の弾性部材取付穴17fが形成されている。
【0029】
これら弾性部材取付穴17fは、図2のように3つの支持部材17bが円環状に配置された状態で互いに隣り合う支持部材17bの弾性部材取付穴17fと対向配置されており、その内部に、例えば圧縮コイルばねからなる第一弾性部材17cが付勢された状態で挿入されている。そしてこの第一弾性部材17cは、互いに隣り合う支持部材17b同士を離間させるようにして反力を付与するようになっている。
【0030】
次に、この回転駆動装置10の動作について説明する。
まず、駆動モータ2の駆動軸2cの回転に伴ってピニオン2dがその噛み合う太陽歯車11を中心軸O周りに回転させる。そして太陽歯車11の回転にともなって、遊星歯車14が自転を始める。ここで、遊星歯車14と噛み合う固定内歯歯車15は取付プレート1に固定されているので、遊星歯車14は中心軸Oを中心に公転する。
【0031】
付勢手段17の隣り合う支持部材17b同士は、互いに離間されるようにして第一弾性部材17cから反力を付与されており、これによって、夫々の支持部材17bは中心軸Oの外方へと付勢された状態とされている。そして、これら支持部材17bの付勢軸17aに貫通されて支持される遊星歯車14は、この付勢力によって外方へと付勢されて可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15に常時押接させられた状態とされている。
【0032】
遊星歯車14に噛み合う固定内歯歯車15と可動内歯歯車16とは、その夫々の内周面に形成される歯形の数が異なっているため、遊星歯車14が中心軸O周りに1回公転した際に、可動内歯歯車16は固定内歯歯車15に対しこの歯数分だけ回転させられるようになっている。そして可動内歯歯車16が回転すると、この可動内歯歯車16に連結される出力軸13にも回転力が伝達されて、出力軸13が回転するようになっている。また、このように構成される不思議遊星歯車機構では、駆動モータ2と出力軸13との減速比が非常に大きく設定されている。
【0033】
また、駆動モータ2を停止すると可動内歯歯車16の回転も停止するが、このような駆動モータ2の駆動・停止に関わらず、遊星歯車14は前記付勢力によって常時外方へと付勢されており、可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15に押接させられた状態とされている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る回転駆動装置10によれば、該回転駆動装置10には付勢手段17が設けられており、3つの遊星歯車14は付勢軸17aによって夫々回転可能に貫通されるとともに、これら付勢軸17aを軸支する支持部材17bが第一弾性部材17cの反力により外方の可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15に向け付勢されるので、これら遊星歯車14は可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15に向け常時押接させられるようになっている。
【0035】
ここで、可動内歯歯車16は遊星歯車14に押接されており、また遊星歯車14は固定内歯歯車15を押接している状態である。この固定内歯歯車15は、取付プレート1に固定されているので、これに押接される遊星歯車14と該遊星歯車14に押接される可動内歯歯車16とがこれに伴って共に固定された状態とされている。
【0036】
従って、これら遊星歯車14と可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15との間に予め大きめに設けられるバックラッシュが適切に除去、低減されるので、駆動モータ2を停止し可動内歯歯車16に駆動力が伝達されなくなった状態でも、該可動内歯歯車16に連結される出力軸13はその中心軸O周りの回転方向にふら付くことなく安定した状態とされて、その位置精度が向上する。
【0037】
また、3つの遊星歯車14は、太陽歯車11の外周側に周方向等間隔になるように配設されているので、該遊星歯車14の内方に噛み合う太陽歯車11と外方に噛み合う可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15とを夫々周方向に3点支持することができ、これら太陽歯車11と可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15とが安定されるので、より回転方向のふら付きを防止する効果が得られる。
【0038】
次に、第2の実施形態の回転駆動装置について説明する。図3は本発明の第2の実施形態に係る回転駆動装置を示す分解斜視図である。尚、前述の第1の実施形態の回転駆動装置と同一部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
この回転駆動装置20における付勢手段27は、3つの遊星歯車14の軸線を夫々貫通するとともにこの遊星歯車14を回転自在に支持する付勢軸27aと、これら付勢軸27aを夫々その先端で軸支する3つの湾曲した略円弧平板状の第二弾性部材27cと、これら第二弾性部材27cの基端を支持する略円環平板状の支持部材27bとを備えている。
【0039】
第二弾性部材27cは、3つの遊星歯車14が周方向等間隔に120°毎に配置されるのにともなって3つ配設されている。また第二弾性部材27cの先端で付勢軸27aを軸支する軸支孔27dは、その孔の穿設される位置が予め遊星歯車14の軸線の位置よりも若干中心軸Oを中心とする径方向外方にくるように設定されている。そして、第二弾性部材27cはその先端の軸支孔27dを中心軸Oに向け内方に撓ませるようにして、外方に反力を付与されながら付勢軸27aを介して遊星歯車14と連結されている。これによって、遊星歯車14は、常時その外方の可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15に向け付勢力を付与された状態とされている。
【0040】
この回転駆動装置20によれば、3つの遊星歯車14は付勢軸27aによって夫々回転可能に貫通されるとともに、これら付勢軸27aを軸支する第二弾性部材27cは外方に向け反力を付与された状態とされているので、これら遊星歯車14は付勢手段27により付勢力を付与されて、可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15に向け常時押接させられるようになっている。
【0041】
ここで、可動内歯歯車16は遊星歯車14に押接されており、また遊星歯車14は固定内歯歯車15を押接している状態である。この固定内歯歯車15は、取付プレート1に固定されているので、これに押接される遊星歯車14と該遊星歯車14に押接される可動内歯歯車16とがこれに伴って共に固定された状態とされている。
【0042】
従って、これら遊星歯車14と可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15との間に設けられるバックラッシュが適切に除去、低減されるので、駆動モータ2を停止し可動内歯歯車16に駆動力が伝達されなくなった状態でも、該可動内歯歯車16に連結される出力軸13はその中心軸O周りの回転方向にふら付くことなく安定した状態とされて、その位置精度が向上する。
【0043】
また、前述の第1、第2の実施形態の減速機3は、不思議遊星歯車機構とされているので、遊星歯車14が前述のように付勢されその外方の可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15に押接された状態においても、遊星歯車14と太陽歯車11との間、及び遊星歯車14とピニオン2dとの間には夫々充分なバックラッシュが確保されている。すなわち、減速機3の高速回転・低トルク部分を構成する各歯車間においては、互いに押接されることがなく、回転損失を生じさせることがないように構成されている。
【0044】
次に、本発明の実施形態に係るロボットの関節構造30と、これを備えたロボットアーム40とについて説明する。
図4は本発明の実施形態に係るロボットの関節構造を示す斜視図、図5は本発明の実施形態に係るロボットアームを示す説明図である。
【0045】
図4に示すように、このロボットの関節構造30は、前述の実施形態に係る回転駆動装置10(20)を2つ組み合わせることで構成されている。このロボットの関節構造30は、一の回転駆動装置10a(図4において右側)に備える駆動モータ2aと他の回転駆動装置10b(図4において左側)に備える駆動モータ2bとが夫々の中心軸Oa、Obに対して偏倚するように配置されており、互いの駆動モータ2a、2b同士が交差するようにして近接して配置されている。そして、一の回転駆動装置10aの中心軸Oaは、他の回転駆動装置の10bの中心軸Obに対し直交するように配置され、直交2軸方向に夫々の出力軸13a,13bを回転可能な関節構造とされている。
【0046】
また、図5に示すように、ロボットアーム40は、第1構成部材41と第2構成部材42とを接続する第1関節部31と、第2構成部材42と第3構成部材43とを接続する第2関節部32と、第3構成部材43の先端に配設された第3関節部33と、を有している。またこのロボットアーム40は、第1関節部31が肩関節、第2関節部32が肘関節、第3関節部33が手首関節に相当するものとされており、これら各関節部が前述のロボットの関節構造30によって構成されている。
【0047】
第1関節部31においては、第1構成部材41の端部から上方に向け突出された取付軸44が一の回転駆動装置10aの略円筒状をなす出力軸13aに接続され、第2構成部材42の基端側から突出された取付軸45が他の回転駆動装置10bの略円筒状をなす出力軸13bに接続されている。
【0048】
第2関節部32においては、一の回転駆動装置10aの出力軸13aの内周側にヒンジ軸46が挿通されて接続されている。また第2構成部材42の先端にはコの字状をなす接続部材47が設けられており、この接続部材47によってヒンジ軸46の両端が軸支されている。また、他の回転駆動装置10bの出力軸13bには、第3構成部材43の基端部が接続されている。
【0049】
第3関節部33においては、一の回転駆動装置10aの出力軸13aの内周側にヒンジ軸48が挿通されて接続されている。また第3構成部材43の先端にはコの字状をなす接続部材49が設けられており、この接続部材49によってヒンジ軸48の両端が軸支されている。
【0050】
このような構成とされたロボットアーム40においては、2つの回転駆動装置10a、10bが、それぞれの中心軸Oa,Obが互いに直交するようにして配置されているので、直交2軸の関節構造が構成され、複雑な動作を行うことができる。
また、これらの回転駆動装置10a、10bが減速比の大きな不思議遊星歯車機構を備えて構成されているので、小型の駆動モータ2a,2bであっても比較的大きなトルクを出力することができ、従って、小型且つ高出力のロボットアーム40を構成することができる。
【0051】
さらに、2つの回転駆動装置10a、10bの駆動モータ2a,2bが互いに交差するように近接して配置されているので、この関節構造のさらなる小型化を図ることができる。
また、回転駆動装置10a、10bの出力軸13a,13bの貫通孔を通じて電源ケーブルや信号ケーブルを配線することにより、複雑な動作をした場合でもこれらケーブル等が大きく移動せず、断線等のトラブルを防止できる。
【0052】
以上、本発明の実施形態である回転駆動装置、この回転駆動装置によって構成されるロボットの関節構造及びロボットアームについて説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態においては、回転駆動装置10(20)は遊星歯車14を周方向等間隔に3つ備えたものとして説明したが、遊星歯車の数や配置に制限はなく、1つの遊星歯車であってもよい。ただし、遊星歯車を周方向に等間隔に3つ以上配設することにより、太陽歯車や可動内歯歯車の回転を安定させることができるので好ましい。尚、太陽歯車11の形状は、本実施形態で説明した環状に限られるものではない。
【0053】
また、本実施形態の回転駆動装置10(20)では、駆動モータ2が1つ設けられるとして説明したが、複数の駆動モータを太陽歯車11の周りに設けて駆動させてもよく、この場合、回転駆動装置10(20)の出力がより増大される。
【0054】
また、本実施形態では遊星歯車14を可動内歯歯車16及び固定内歯歯車15に向け付勢するための方法として付勢手段17,27を用いて説明したが、これらに限られるものではなく、それ以外の付勢手段を用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る回転駆動装置を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る回転駆動装置の概略構成を示す正断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る回転駆動装置を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るロボットの関節構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るロボットアームを示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
2(2a,2b) 駆動モータ
10 回転駆動装置(第1実施形態)
11 太陽歯車
14 遊星歯車
15 固定内歯歯車
16 可動内歯歯車
17 付勢手段
17a 付勢軸
17b 支持部材
17c 第一弾性部材(弾性部材)
20 回転駆動装置(第2実施形態)
27 付勢手段
27a 付勢軸
27b 支持部材
27c 第二弾性部材(弾性部材)
30 ロボットの関節構造
40 ロボットアーム
O(Oa,Ob) 太陽歯車の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車と、
前記太陽歯車に噛み合うとともに前記太陽歯車の中心軸を中心として公転する遊星歯車と、
前記太陽歯車と同軸上に固定配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う固定内歯歯車と、
前記固定内歯歯車と異なる歯数とされ、前記太陽歯車と同軸上に回転可能に配置されるとともに前記遊星歯車に噛み合う可動内歯歯車と、
前記太陽歯車を前記中心軸周りに回転させる駆動モータと、
前記遊星歯車を前記可動内歯歯車に向け付勢するための付勢手段と、を備えることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転駆動装置であって、
前記遊星歯車は複数設けられており、
前記付勢手段は、前記遊星歯車の軸線を貫通するとともに該遊星歯車を回転可能に軸支する付勢軸と、
前記付勢軸を支持する複数の支持部材と、
隣接する前記支持部材同士を互いに離間させるようにして反力を付与するとともに、これら支持部材を前記可動内歯歯車に向け付勢させるための第一弾性部材と、を備えることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回転駆動装置であって、
前記遊星歯車は複数設けられており、
前記付勢手段は、前記遊星歯車の軸線を貫通するとともに該遊星歯車を回転可能に軸支する付勢軸と、
前記付勢軸を前記可動内歯歯車に向け付勢し支持する複数の第二弾性部材と、
前記第二弾性部材を支持する支持部材と、を備えることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転駆動装置であって、
前記遊星歯車は、前記太陽歯車の外周側に周方向均等に配設されるとともに、
その数量が3つ以上とされていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転駆動装置を2つ備え、これら2つの回転駆動装置が、一の回転駆動装置の前記駆動モータと他の回転駆動装置の前記駆動モータとを互いに交差するように、且つ、一の回転駆動装置の前記中心軸と他の回転駆動装置の前記中心軸とを互いに交差するように組み付けられ、2軸方向に回転可能に構成されることを特徴とするロボットの関節構造。
【請求項6】
請求項5に記載のロボットの関節構造を備えることを特徴とするロボットアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−74611(P2009−74611A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243917(P2007−243917)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】