固定キャリア
【課題】 損傷しやすい被搭載物品や固定を要する部材を適切に輸送等することのできる固定キャリアを提供する。
【解決手段】 基材1と、基材1の表面に積層被覆されて半導体ウェーハを着脱自在に粘着保持する凹凸に変形可能な保持層10とを備え、基材1の周縁部を除く表面から複数の突起を突出させてその先端面を保持層10の裏面に接触させるとともに、基材1に、複数の突起と保持層10の間の区画空間に連通する給排孔を穿孔する。そして、保持層10の変形領域11の一部に、複数の非粘着ライン12を形成する。半導体ウェーハに粘着しない非粘着ライン12を形成するので、保持層10の変形の際、保持層10の表面と半導体ウェーハとの間に空気の流通路を確実かつ迅速に形成し、半導体ウェーハの取り外しの契機とすることができる。
【解決手段】 基材1と、基材1の表面に積層被覆されて半導体ウェーハを着脱自在に粘着保持する凹凸に変形可能な保持層10とを備え、基材1の周縁部を除く表面から複数の突起を突出させてその先端面を保持層10の裏面に接触させるとともに、基材1に、複数の突起と保持層10の間の区画空間に連通する給排孔を穿孔する。そして、保持層10の変形領域11の一部に、複数の非粘着ライン12を形成する。半導体ウェーハに粘着しない非粘着ライン12を形成するので、保持層10の変形の際、保持層10の表面と半導体ウェーハとの間に空気の流通路を確実かつ迅速に形成し、半導体ウェーハの取り外しの契機とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハや石英ガラスに代表される基板やプリント配線板、チップ部品、その他単独ではハンドリングが困難な部材、工程上一時固定を要する部材等を着脱自在に保持する固定キャリアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェーハの口径は200mmから300mmに拡大してきているが、この300mmタイプの半導体ウェーハは、表面に回路が形成され、回路の形成面にバックグラインドテープが貼着された後、積層構造のパッケージ要求等に鑑み裏面が薄くバックグラインドされる。
こうしてバックグラインドテープの粘着された半導体ウェーハは、他の工場に輸送されてICチップ化され、専用のキャリアに搭載された状態でボンディングや封止等の加工が施される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭59−227195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における半導体ウェーハやチップの加工は以上のようになされ、バックグラインドされた半導体ウェーハが非常に割れやすく、反りやすいので、他の工場に傷付けることな
く適切に輸送することがきわめて困難であるという大きな問題がある。この問題を解消す
る手段としては、上記した専用のキャリアを使用するという方法が考えられるが、このキ
ャリアはあくまで工場内の搬送に使用される専用品であり、過酷な輸送条件等を何ら考慮
したものではない。したがって、工場から工場への長時間の輸送に使用することはできな
い。
【0004】
さらに、従来においては、工場から工場への輸送時にバックグラインドテープが長時間粘着していると、回路のバンプにバックグラインドテープの粘着剤が転写してしまうおそれが少なくない。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、損傷しやすい被搭載物品や固定を要する部材を適切に輸送等することのできる固定キャリアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、基材と、この基材に重ね設けられて被搭載物品を着脱自在に保持する変形可能な保持層とを備えたものであって、
基材に、複数の突起を設けてその先端部を保持層に接触させるとともに、これら複数の突起と保持層との間の区画空間に連なる給排孔を設け、保持層の変形領域の少なくとも一部を非粘着処理したことを特徴としている。
なお、保持層の変形領域を、各突起の先端部と接触しない保持層の非接触部における表面とすることが好ましい。
【0007】
ここで、特許請求の範囲における基材や固定キャリアは、平面略円形、略楕円形、略矩形、略多角形等に形成することができ、基板用の収納容器に収納されるものでも良いし、そうでなくても良い。また、被搭載物品には、少なくとも単数複数の精密基板、液晶ガラス、石英ガラス、フォトマスク、回路基板、チップ部品、検査用のリードフレーム、各種の用紙、薄い電子部品等が含まれる。この被搭載物品が精密基板の場合には、口径300mm、400mm、450mmの半導体ウェーハ(SiウェーハやGaPウェーハ)が含まれる。保持層には、可撓性を有する各種のエラストマーやゴムを用いることができる。
【0008】
突起は、円柱形、角柱形、円錐台形、角錐台形等に形成することができ、中空、中実を特に問うものではない。給排孔は単数複数いずれでも良い。また、保持層の変形領域の少なくとも一部は、単数複数の直線、十字形、X字形、螺旋形、格子形、水玉模様、亀甲繋形、鱗繋形、万字繋形の連接パターン、あるいはこれらを組み合わせたパターンに非粘着処理されたり、社名、所定の文字やキャラクター等を表示するよう非粘着処理される。
【0009】
非粘着処理は、少なくとも被搭載物品の取り外しのきっかけとなる程度の大きさ・範囲で行なわれれば良い。さらに、本発明に係る固定キャリアは、工場から他の工場への輸送の際だけではなく、工場内で被搭載物品を搬送する場合等にも使用することができる。
【0010】
本発明によれば、固定キャリアの保持層に被搭載物品を搭載して押せば、基材上の保持層に被搭載物品を保持させることができる。この際、被搭載物品は、固定キャリアに密着するので、例え薄くても下方に撓んで反ることが少ない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、損傷しやすい被搭載物品を適切に移動、運搬、搬送、輸送等することができるという効果がある。
また、保持層の変形領域を、各突起の先端部と接触しない保持層の非接触部における表面とし、この変形領域の少なくとも一部を非粘着処理すれば、保持層の変形の際、保持層の非粘着処理部分と被搭載物品との間に空気の流通路を素早く形成し、被搭載物品の取り外しのきっかけとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における固定キャリアは、図1ないし図14に示すように、剛性を有する平面円形の基材1と、この基材1の表面3に積層被覆されて口径300mm(12インチ)タイプの薄い半導体ウェーハ20を着脱自在に粘着保持する凹凸に弾性変形可能な保持層10とを備え、半導体ウェーハ用の基板収納容器30に収納される。
【0013】
固定キャリアの全体の厚さは、0.3〜2.5mmの範囲、好ましくは0.5〜1.2mmの範囲が良い。これは固定キャリアの厚さが係る範囲内であれば、半導体ウェーハ20に関する補強性を十分に確保することができるし、基板収納容器30に収納したり取り出す際、図示しない専用のロボットのフォークの挿入間隔を十分に確保することができるからである。また、固定キャリアの軽量化をも図ることができるからである。
【0014】
基材1は、図1ないし図4に示すように、基板収納容器30に確実に収納することができるよう、所定の材料を使用して剛性を有する薄板に形成され、半導体ウェーハ20と同じ大きさか、あるいは僅かに拡径の円板とされる。この基材1の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば耐衝撃性等に優れるポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、塩ビ、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ガラス、ステンレス等があげられる。
【0015】
基材1の周縁部2を除く表面3は浅く凹み形成され、この凹んだ表面3から複数の突起4が間隔をおき上方に突出してその平坦な先端面5を保持層10の裏面に接触させており、これら複数の突起4と保持層10の裏面との間には、空気流動用の区画空間6が形成される(図4、図6参照)。複数の突起4は、基材1の周縁部2と略同じ0.05mm以上の高さに揃えられ、各突起4が剛性の円柱形あるいは円錐台形に形成されており、半導体ウェーハ20を保持層10を介し間接的に支持する。
【0016】
突起4の高さは0.05mm以上とされるが、これは、高さが0.05mm未満の場合には、十分な区画空間6を形成することができず、保持層10の変形に支障を来たすおそれがあるからである。
【0017】
基材1の厚さ方向には、区画空間6に連通する半導体ウェーハ20取り外し用の給排孔7が穿孔され、この複数の突起4間に位置する給排孔7には、図4や図6に示すバキューム装置8が着脱自在に接続される。そして、このバキューム装置8が動作し、保持層10が複数の突起4のパターンに応じて凸凹に変形するとともに、この凸凹の保持層10と半導体ウェーハ20との間に空気流入用の隙間が生じることにより、保持層10に粘着保持された半導体ウェーハ20が取り外し可能となる(図4、図6参照)。
【0018】
保持層10は、図1や図4に示すように、例えば可撓性、柔軟性、耐熱性、弾性、粘着性等に優れるウレタン系、フッ素系、シリコーン系の薄いエラストマーを使用して基材1と略同径の平面円形に形成され、変形領域11の一部に複数の非粘着ライン12が形成されるとともに、基材1の表面3の周縁部2に接着剤を介して貼着されており、半導体ウェーハ20の裏面を着脱自在に粘着保持する。この保持層10は、成形時にエラストマーに補強性フィラーや疎水性シリカ等が必要に応じて添加され、カレンダー法やプレス法等により薄膜に成形される。
【0019】
複数の非粘着ライン12は、保持層10の変形領域11、換言すれば、各突起4の先端面5と接触しない保持層10の非接触部(凹む部分)における表面に非粘着処理が部分的に施されることにより、保持層10の中心を通る平面十字形にパターン形成され、各端部が保持層10の周縁部まで伸びており、半導体ウェーハ20の取り外しの契機となるよう機能する。この保持層10に対する非粘着処理としては、例えばUV処理、粗面化処理、非粘着ゴムの積層、非粘着性を有する接着剤のコーティング等があげられる。
【0020】
半導体ウェーハ20は、図4や図5に示すように、基本的には丸いシリコンウェーハからなり、鏡面である表面に回路が形成され、裏面が薄くバックグラインドされており、ロボットにより保持層10の表面に粘着保持される。この半導体ウェーハ20の周縁部には、図5に示すように、結晶方位の判別や位置合わせ用のオリフラ(orientation flat)21やノッチ22が適宜形成される。
【0021】
基板収納容器30は、図7ないし図14に示すように、固定キャリアを収納する容器本体31と、この容器本体31の正面を開閉する着脱自在の蓋体50とを備えたフロントオープンボックスタイプに構成される。容器本体31は、ポリカーボネート等からなる所定の樹脂を使用して透明のフロントオープンボックスに成形され、複数枚(25枚又は26枚)の固定キャリアを上下方向に並べて整列収納するよう機能する。
【0022】
容器本体31の開口した正面は、図7ないし図9に示すように、外方向に断面略L字形に屈曲形成されて横長のリム部32を形成し、このリム部32の内周面の上下両側には、蓋体施錠用の係止穴33がそれぞれ凹み形成される。また、容器本体31の背面壁の内面には、基材1の後部周縁を保持溝を介し保持する複数のリヤリテーナ34が所定の間隔をおいて上下方向に並設され、容器本体31の両側壁の内面には、基材1を水平に支持するティース35がそれぞれ突出形成されており、この左右一対のティース35が所定の間隔をおいて上下方向に並設される。
【0023】
各ティース35は、図12等に示すように、平面略く字形あるいは半円弧形に形成されて基材1の側部周縁に沿う平板36と、この平板36の前部内側に一体形成されて基材1を支持する略平坦な前部中肉領域37と、平板36の前部外側に一体形成されて前部中肉領域37の外側、換言すれば、容器本体31の側壁寄りに位置する前部厚肉領域38と、平板36の後部に形成されて基材1を支持する後部中肉領域39と、平板36の後部に形成されて後部中肉領域39の前方に位置し、容器本体31の側壁寄りに僅かな面積で位置する平坦な後部厚肉領域40とを備えて形成される。
【0024】
ティース35の前部中肉領域37と前部厚肉領域38との間には、基材1の側部周縁に接触する垂直の段差41が僅かに形成される。また、前部厚肉領域38は、固定キャリアの厚さに半導体ウェーハ20の厚さを加えた高さ、具体的には0.3〜2.5mm+α程度の高さに形成され、蓋体50の取り外し時に基材1が容器本体31から前方に飛び出すのをストッパとして防止するよう機能する。
【0025】
前部中肉領域37と後部中肉領域39との間には、僅かに凹んだ薄肉領域が形成され、この薄肉領域が基材1の側部周縁に僅かな隙間を介して対向する。このような構成のティース35は、平坦な前部中肉領域37と後部中肉領域39とに、基材裏面の側部周縁を高精度を維持しつつ水平に支持する。
【0026】
容器本体31の底面の前部両側と後部中央には図13に示すように、基板収納容器30を搭載する加工装置の位置決めピンに嵌合する位置決め具42が配設され、容器本体31の底面の略中央部には、平面略Y字形のボトムプレート43が着脱自在に装着されており、このボトムプレート43の後部に着脱自在に嵌合された識別体が加工装置のセンサに検知されることにより、基板収納容器30の種類や半導体ウェーハ20の枚数等が把握される。
【0027】
容器本体31の天井の中央部には、自動搬送機に把持される平面略矩形のロボティックフランジ44が着脱自在に装着され、容器本体31の両側壁外面には、肉厚の円柱形あるいは略U字形のハンドル45がそれぞれ着脱自在に装着されており、この一対のハンドル45が作業者に握持されることにより基板収納容器30が搬送される。
【0028】
蓋体50は、図7、図8、図14に示すように、容器本体31のリム部32に着脱自在に嵌合される断面略皿形の筐体51と、この筐体51の表面を被覆する正面略矩形のカバー52と、これら筐体51とカバー52との間に介在され、容器本体31の正面に嵌合された蓋体50を施錠する左右一対の施錠機構53とを備えて構成される。
【0029】
筐体51は、四隅部が面取りされた正面略矩形に形成され、裏面の中央部には、基材1の前部周縁を挟持溝を介し挟持する弾性のフロントリテーナが上下方向に並設される。この筐体51の周壁には、容器本体31のリム部32に圧接されるエンドレスのシールガスケットが変形可能に嵌合されるとともに、周壁の上下両側には、容器本体31の係止穴33に対応する貫通孔がそれぞれ穿孔される。
【0030】
各施錠機構53は、図14に示すように、例えば筐体51の表面側部に支持されて加工装置の蓋体開閉装置のカバー52を貫通した操作キーにより回転操作される回転プレート54と、この回転プレート54の外周に穿孔された一対の溝孔に挿入され、回転プレート54の回転に伴い蓋体50の内外上下方向に直線的にスライドする一対の進退動プレート55と、各進退動プレート55の先端部に連結支持され、回転プレート54の回転に伴い蓋体50の貫通孔から出没して容器本体31の係止穴33に嵌合係止する係止爪56とを備えて構成される。
【0031】
上記において、固定キャリアを製造する場合には、例えば熱可塑性樹脂シートの成形により、基材1に複数の突起4と給排孔7とを一体成形し、この基材1の表面3の少なくとも周縁部2に薄膜の保持層10を接着して各突起4の平坦な先端面5を被覆し、これら複数の突起4と保持層10との間に区画空間6を形成すれば、固定キャリアを製造することができる。この製造作業の際、保持層10の変形領域11の一部には、複数の非粘着ライン12が事前に形成される。
【0032】
上記において、バックグラインドされた半導体ウェーハ20を他の工場に輸送する場合には、先ず、固定キャリアの保持層10に半導体ウェーハ20をロボットにより押圧して密着保持させ、この固定キャリアを基板収納容器30の容器本体31にロボットを介して収納し、容器本体31の正面に蓋体50を嵌合し、その後、施錠機構53を作動させて蓋体50を施錠すれば、バックグラインドされた半導体ウェーハ20を他の工場に輸送することができる。
【0033】
上記収納の際、半導体ウェーハ20は、固定キャリアに隙間なく密着して搭載されているので、薄くても下方に撓んで反ることがなく、基板収納容器30の容器本体31に確実に収納される。
【0034】
次に、輸送された半導体ウェーハ20を取り出してボンディングや封止の加工を施したい場合には、先ず、蓋体50の施錠機構53を解錠作動させて容器本体31から蓋体50を取り外し、容器本体31から固定キャリアをロボットを介して取り出した後、固定キャリアの給排孔7にバキューム装置8を接続して吸引動作させれば、固定キャリアの変形した保持層10から半導体ウェーハ20をロボットにより簡単に吸着して取り外すことができる。
【0035】
上記構成によれば、割れやすく、反りやすく、脆い半導体ウェーハ20を容器本体31に直接収納するのではなく、固定キャリアに保持させて間接的に収納するので、他の工場に安全、かつ適切に輸送することができる。特に、固定キャリアが強度や剛性に優れ、気圧変化等の過酷な輸送条件にも十分耐えることができるので、例え工場から工場への輸送に長時間を要しても、安全に輸送することができる。また、バックグラインドテープの粘着時間を短縮したり、省略することができるので、回路のバンプにバックグラインドテープの粘着剤が転写してしまうおそれが非常に少ない。
【0036】
また、保持層10の変形領域11の一部に、半導体ウェーハ20の裏面に密着しない非粘着ライン12を形成するので、保持層10の粘着強度にかかわらず、変形する保持層10の非粘着ライン12と半導体ウェーハ20との間に空気の流通路を迅速かつ確実に形成して空気を直ちに導入し、半導体ウェーハ20の取り外しの契機とすることができる。したがって、保持層10の変形領域11に非粘着ライン12を形成せず、密着した半導体ウェーハ20の取り外しに時間がかかる場合に比べ、半導体ウェーハ20の素早い取り外しが大いに期待できる。
【0037】
さらに、ティース35の前部中肉領域37と後部中肉領域39とに固定キャリア裏面の側部周縁を高い精度を維持しつつ水平に支持させるので、固定キャリアが上下方向に傾斜してロボットのフォークによる出し入れが困難になるのを防止することが可能になる。さらにまた、固定キャリアやその基材1が半導体ウェーハ20と略同サイズで薄いから、バックグラインドされていない半導体ウェーハ20の収納を前提とした既存の基板収納容器30の寸法や形状等を特に変更することなく、自動的に収納したり、取り出すことが可能になる。
【0038】
なお、上記実施形態では基材1、複数の突起4、及び給排孔7を一体形成したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、基材1上にフォトレジスト層を積層してエッチングすることにより、周縁部2と複数の突起4を形成することもできる。また、基材1と複数の突起4とを一体化した後、給排孔7をドリル等で穿孔することもできる。また、基材1の周縁部2に保持層10を接着しても良いが、基材1の周縁部2と各突起4の先端面5とに保持層10の裏面を接着しても良い。
【0039】
また、基材1と保持層10とは、同径の大きさでも良いし、そうでなくても良い。また、変形領域11の大部分に複数の非粘着ライン12を設けても良い。さらに、複数の非粘着ライン12は、同じ長さや幅でも良いし、そうでなくても良く、又断続や連続の有無を特に問うものではない。さらにまた、密着保持する部材の大きさに応じ、非粘着ライン12の形状、長さ、幅等を設計しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る固定キャリアの実施形態を示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る固定キャリアの実施形態における半導体ウェーハの粘着保持状態を示す平面説明図である。
【図3】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基材等を示す部分断面説明図である。
【図4】本発明に係る固定キャリアの実施形態における半導体ウェーハの粘着保持状態を示す部分断面説明図である。
【図5】本発明に係る固定キャリアの実施形態における半導体ウェーハを示す平面説明図である。
【図6】本発明に係る固定キャリアの実施形態における保持層の変形状態を示す部分断面説明図である。
【図7】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器を示す斜視全体説明図である。
【図8】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器を示す正面説明図である。
【図9】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器の容器本体を示す断面側面図である。
【図10】本発明に係る固定キャリアの実施形態における容器本体に半導体ウェーハを収納した状態を示す断面説明図である。
【図11】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器の容器本体を示す断面説明図である。
【図12】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器のティースを示す斜視説明図である。
【図13】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器の容器本体を示す底面説明図である。
【図14】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器の施錠機構を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 基材
2 周縁部
3 表面
4 突起
5 先端面(先端部)
6 区画空間
7 給排孔
8 バキューム装置
10 保持層
11 変形領域
12 非粘着ライン(非粘着処理された変形領域の少なくとも一部)
20 半導体ウェーハ(被搭載物品)
30 基板収納容器
31 容器本体
50 蓋体
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハや石英ガラスに代表される基板やプリント配線板、チップ部品、その他単独ではハンドリングが困難な部材、工程上一時固定を要する部材等を着脱自在に保持する固定キャリアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェーハの口径は200mmから300mmに拡大してきているが、この300mmタイプの半導体ウェーハは、表面に回路が形成され、回路の形成面にバックグラインドテープが貼着された後、積層構造のパッケージ要求等に鑑み裏面が薄くバックグラインドされる。
こうしてバックグラインドテープの粘着された半導体ウェーハは、他の工場に輸送されてICチップ化され、専用のキャリアに搭載された状態でボンディングや封止等の加工が施される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭59−227195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における半導体ウェーハやチップの加工は以上のようになされ、バックグラインドされた半導体ウェーハが非常に割れやすく、反りやすいので、他の工場に傷付けることな
く適切に輸送することがきわめて困難であるという大きな問題がある。この問題を解消す
る手段としては、上記した専用のキャリアを使用するという方法が考えられるが、このキ
ャリアはあくまで工場内の搬送に使用される専用品であり、過酷な輸送条件等を何ら考慮
したものではない。したがって、工場から工場への長時間の輸送に使用することはできな
い。
【0004】
さらに、従来においては、工場から工場への輸送時にバックグラインドテープが長時間粘着していると、回路のバンプにバックグラインドテープの粘着剤が転写してしまうおそれが少なくない。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、損傷しやすい被搭載物品や固定を要する部材を適切に輸送等することのできる固定キャリアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、基材と、この基材に重ね設けられて被搭載物品を着脱自在に保持する変形可能な保持層とを備えたものであって、
基材に、複数の突起を設けてその先端部を保持層に接触させるとともに、これら複数の突起と保持層との間の区画空間に連なる給排孔を設け、保持層の変形領域の少なくとも一部を非粘着処理したことを特徴としている。
なお、保持層の変形領域を、各突起の先端部と接触しない保持層の非接触部における表面とすることが好ましい。
【0007】
ここで、特許請求の範囲における基材や固定キャリアは、平面略円形、略楕円形、略矩形、略多角形等に形成することができ、基板用の収納容器に収納されるものでも良いし、そうでなくても良い。また、被搭載物品には、少なくとも単数複数の精密基板、液晶ガラス、石英ガラス、フォトマスク、回路基板、チップ部品、検査用のリードフレーム、各種の用紙、薄い電子部品等が含まれる。この被搭載物品が精密基板の場合には、口径300mm、400mm、450mmの半導体ウェーハ(SiウェーハやGaPウェーハ)が含まれる。保持層には、可撓性を有する各種のエラストマーやゴムを用いることができる。
【0008】
突起は、円柱形、角柱形、円錐台形、角錐台形等に形成することができ、中空、中実を特に問うものではない。給排孔は単数複数いずれでも良い。また、保持層の変形領域の少なくとも一部は、単数複数の直線、十字形、X字形、螺旋形、格子形、水玉模様、亀甲繋形、鱗繋形、万字繋形の連接パターン、あるいはこれらを組み合わせたパターンに非粘着処理されたり、社名、所定の文字やキャラクター等を表示するよう非粘着処理される。
【0009】
非粘着処理は、少なくとも被搭載物品の取り外しのきっかけとなる程度の大きさ・範囲で行なわれれば良い。さらに、本発明に係る固定キャリアは、工場から他の工場への輸送の際だけではなく、工場内で被搭載物品を搬送する場合等にも使用することができる。
【0010】
本発明によれば、固定キャリアの保持層に被搭載物品を搭載して押せば、基材上の保持層に被搭載物品を保持させることができる。この際、被搭載物品は、固定キャリアに密着するので、例え薄くても下方に撓んで反ることが少ない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、損傷しやすい被搭載物品を適切に移動、運搬、搬送、輸送等することができるという効果がある。
また、保持層の変形領域を、各突起の先端部と接触しない保持層の非接触部における表面とし、この変形領域の少なくとも一部を非粘着処理すれば、保持層の変形の際、保持層の非粘着処理部分と被搭載物品との間に空気の流通路を素早く形成し、被搭載物品の取り外しのきっかけとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における固定キャリアは、図1ないし図14に示すように、剛性を有する平面円形の基材1と、この基材1の表面3に積層被覆されて口径300mm(12インチ)タイプの薄い半導体ウェーハ20を着脱自在に粘着保持する凹凸に弾性変形可能な保持層10とを備え、半導体ウェーハ用の基板収納容器30に収納される。
【0013】
固定キャリアの全体の厚さは、0.3〜2.5mmの範囲、好ましくは0.5〜1.2mmの範囲が良い。これは固定キャリアの厚さが係る範囲内であれば、半導体ウェーハ20に関する補強性を十分に確保することができるし、基板収納容器30に収納したり取り出す際、図示しない専用のロボットのフォークの挿入間隔を十分に確保することができるからである。また、固定キャリアの軽量化をも図ることができるからである。
【0014】
基材1は、図1ないし図4に示すように、基板収納容器30に確実に収納することができるよう、所定の材料を使用して剛性を有する薄板に形成され、半導体ウェーハ20と同じ大きさか、あるいは僅かに拡径の円板とされる。この基材1の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば耐衝撃性等に優れるポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル樹脂、塩ビ、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ガラス、ステンレス等があげられる。
【0015】
基材1の周縁部2を除く表面3は浅く凹み形成され、この凹んだ表面3から複数の突起4が間隔をおき上方に突出してその平坦な先端面5を保持層10の裏面に接触させており、これら複数の突起4と保持層10の裏面との間には、空気流動用の区画空間6が形成される(図4、図6参照)。複数の突起4は、基材1の周縁部2と略同じ0.05mm以上の高さに揃えられ、各突起4が剛性の円柱形あるいは円錐台形に形成されており、半導体ウェーハ20を保持層10を介し間接的に支持する。
【0016】
突起4の高さは0.05mm以上とされるが、これは、高さが0.05mm未満の場合には、十分な区画空間6を形成することができず、保持層10の変形に支障を来たすおそれがあるからである。
【0017】
基材1の厚さ方向には、区画空間6に連通する半導体ウェーハ20取り外し用の給排孔7が穿孔され、この複数の突起4間に位置する給排孔7には、図4や図6に示すバキューム装置8が着脱自在に接続される。そして、このバキューム装置8が動作し、保持層10が複数の突起4のパターンに応じて凸凹に変形するとともに、この凸凹の保持層10と半導体ウェーハ20との間に空気流入用の隙間が生じることにより、保持層10に粘着保持された半導体ウェーハ20が取り外し可能となる(図4、図6参照)。
【0018】
保持層10は、図1や図4に示すように、例えば可撓性、柔軟性、耐熱性、弾性、粘着性等に優れるウレタン系、フッ素系、シリコーン系の薄いエラストマーを使用して基材1と略同径の平面円形に形成され、変形領域11の一部に複数の非粘着ライン12が形成されるとともに、基材1の表面3の周縁部2に接着剤を介して貼着されており、半導体ウェーハ20の裏面を着脱自在に粘着保持する。この保持層10は、成形時にエラストマーに補強性フィラーや疎水性シリカ等が必要に応じて添加され、カレンダー法やプレス法等により薄膜に成形される。
【0019】
複数の非粘着ライン12は、保持層10の変形領域11、換言すれば、各突起4の先端面5と接触しない保持層10の非接触部(凹む部分)における表面に非粘着処理が部分的に施されることにより、保持層10の中心を通る平面十字形にパターン形成され、各端部が保持層10の周縁部まで伸びており、半導体ウェーハ20の取り外しの契機となるよう機能する。この保持層10に対する非粘着処理としては、例えばUV処理、粗面化処理、非粘着ゴムの積層、非粘着性を有する接着剤のコーティング等があげられる。
【0020】
半導体ウェーハ20は、図4や図5に示すように、基本的には丸いシリコンウェーハからなり、鏡面である表面に回路が形成され、裏面が薄くバックグラインドされており、ロボットにより保持層10の表面に粘着保持される。この半導体ウェーハ20の周縁部には、図5に示すように、結晶方位の判別や位置合わせ用のオリフラ(orientation flat)21やノッチ22が適宜形成される。
【0021】
基板収納容器30は、図7ないし図14に示すように、固定キャリアを収納する容器本体31と、この容器本体31の正面を開閉する着脱自在の蓋体50とを備えたフロントオープンボックスタイプに構成される。容器本体31は、ポリカーボネート等からなる所定の樹脂を使用して透明のフロントオープンボックスに成形され、複数枚(25枚又は26枚)の固定キャリアを上下方向に並べて整列収納するよう機能する。
【0022】
容器本体31の開口した正面は、図7ないし図9に示すように、外方向に断面略L字形に屈曲形成されて横長のリム部32を形成し、このリム部32の内周面の上下両側には、蓋体施錠用の係止穴33がそれぞれ凹み形成される。また、容器本体31の背面壁の内面には、基材1の後部周縁を保持溝を介し保持する複数のリヤリテーナ34が所定の間隔をおいて上下方向に並設され、容器本体31の両側壁の内面には、基材1を水平に支持するティース35がそれぞれ突出形成されており、この左右一対のティース35が所定の間隔をおいて上下方向に並設される。
【0023】
各ティース35は、図12等に示すように、平面略く字形あるいは半円弧形に形成されて基材1の側部周縁に沿う平板36と、この平板36の前部内側に一体形成されて基材1を支持する略平坦な前部中肉領域37と、平板36の前部外側に一体形成されて前部中肉領域37の外側、換言すれば、容器本体31の側壁寄りに位置する前部厚肉領域38と、平板36の後部に形成されて基材1を支持する後部中肉領域39と、平板36の後部に形成されて後部中肉領域39の前方に位置し、容器本体31の側壁寄りに僅かな面積で位置する平坦な後部厚肉領域40とを備えて形成される。
【0024】
ティース35の前部中肉領域37と前部厚肉領域38との間には、基材1の側部周縁に接触する垂直の段差41が僅かに形成される。また、前部厚肉領域38は、固定キャリアの厚さに半導体ウェーハ20の厚さを加えた高さ、具体的には0.3〜2.5mm+α程度の高さに形成され、蓋体50の取り外し時に基材1が容器本体31から前方に飛び出すのをストッパとして防止するよう機能する。
【0025】
前部中肉領域37と後部中肉領域39との間には、僅かに凹んだ薄肉領域が形成され、この薄肉領域が基材1の側部周縁に僅かな隙間を介して対向する。このような構成のティース35は、平坦な前部中肉領域37と後部中肉領域39とに、基材裏面の側部周縁を高精度を維持しつつ水平に支持する。
【0026】
容器本体31の底面の前部両側と後部中央には図13に示すように、基板収納容器30を搭載する加工装置の位置決めピンに嵌合する位置決め具42が配設され、容器本体31の底面の略中央部には、平面略Y字形のボトムプレート43が着脱自在に装着されており、このボトムプレート43の後部に着脱自在に嵌合された識別体が加工装置のセンサに検知されることにより、基板収納容器30の種類や半導体ウェーハ20の枚数等が把握される。
【0027】
容器本体31の天井の中央部には、自動搬送機に把持される平面略矩形のロボティックフランジ44が着脱自在に装着され、容器本体31の両側壁外面には、肉厚の円柱形あるいは略U字形のハンドル45がそれぞれ着脱自在に装着されており、この一対のハンドル45が作業者に握持されることにより基板収納容器30が搬送される。
【0028】
蓋体50は、図7、図8、図14に示すように、容器本体31のリム部32に着脱自在に嵌合される断面略皿形の筐体51と、この筐体51の表面を被覆する正面略矩形のカバー52と、これら筐体51とカバー52との間に介在され、容器本体31の正面に嵌合された蓋体50を施錠する左右一対の施錠機構53とを備えて構成される。
【0029】
筐体51は、四隅部が面取りされた正面略矩形に形成され、裏面の中央部には、基材1の前部周縁を挟持溝を介し挟持する弾性のフロントリテーナが上下方向に並設される。この筐体51の周壁には、容器本体31のリム部32に圧接されるエンドレスのシールガスケットが変形可能に嵌合されるとともに、周壁の上下両側には、容器本体31の係止穴33に対応する貫通孔がそれぞれ穿孔される。
【0030】
各施錠機構53は、図14に示すように、例えば筐体51の表面側部に支持されて加工装置の蓋体開閉装置のカバー52を貫通した操作キーにより回転操作される回転プレート54と、この回転プレート54の外周に穿孔された一対の溝孔に挿入され、回転プレート54の回転に伴い蓋体50の内外上下方向に直線的にスライドする一対の進退動プレート55と、各進退動プレート55の先端部に連結支持され、回転プレート54の回転に伴い蓋体50の貫通孔から出没して容器本体31の係止穴33に嵌合係止する係止爪56とを備えて構成される。
【0031】
上記において、固定キャリアを製造する場合には、例えば熱可塑性樹脂シートの成形により、基材1に複数の突起4と給排孔7とを一体成形し、この基材1の表面3の少なくとも周縁部2に薄膜の保持層10を接着して各突起4の平坦な先端面5を被覆し、これら複数の突起4と保持層10との間に区画空間6を形成すれば、固定キャリアを製造することができる。この製造作業の際、保持層10の変形領域11の一部には、複数の非粘着ライン12が事前に形成される。
【0032】
上記において、バックグラインドされた半導体ウェーハ20を他の工場に輸送する場合には、先ず、固定キャリアの保持層10に半導体ウェーハ20をロボットにより押圧して密着保持させ、この固定キャリアを基板収納容器30の容器本体31にロボットを介して収納し、容器本体31の正面に蓋体50を嵌合し、その後、施錠機構53を作動させて蓋体50を施錠すれば、バックグラインドされた半導体ウェーハ20を他の工場に輸送することができる。
【0033】
上記収納の際、半導体ウェーハ20は、固定キャリアに隙間なく密着して搭載されているので、薄くても下方に撓んで反ることがなく、基板収納容器30の容器本体31に確実に収納される。
【0034】
次に、輸送された半導体ウェーハ20を取り出してボンディングや封止の加工を施したい場合には、先ず、蓋体50の施錠機構53を解錠作動させて容器本体31から蓋体50を取り外し、容器本体31から固定キャリアをロボットを介して取り出した後、固定キャリアの給排孔7にバキューム装置8を接続して吸引動作させれば、固定キャリアの変形した保持層10から半導体ウェーハ20をロボットにより簡単に吸着して取り外すことができる。
【0035】
上記構成によれば、割れやすく、反りやすく、脆い半導体ウェーハ20を容器本体31に直接収納するのではなく、固定キャリアに保持させて間接的に収納するので、他の工場に安全、かつ適切に輸送することができる。特に、固定キャリアが強度や剛性に優れ、気圧変化等の過酷な輸送条件にも十分耐えることができるので、例え工場から工場への輸送に長時間を要しても、安全に輸送することができる。また、バックグラインドテープの粘着時間を短縮したり、省略することができるので、回路のバンプにバックグラインドテープの粘着剤が転写してしまうおそれが非常に少ない。
【0036】
また、保持層10の変形領域11の一部に、半導体ウェーハ20の裏面に密着しない非粘着ライン12を形成するので、保持層10の粘着強度にかかわらず、変形する保持層10の非粘着ライン12と半導体ウェーハ20との間に空気の流通路を迅速かつ確実に形成して空気を直ちに導入し、半導体ウェーハ20の取り外しの契機とすることができる。したがって、保持層10の変形領域11に非粘着ライン12を形成せず、密着した半導体ウェーハ20の取り外しに時間がかかる場合に比べ、半導体ウェーハ20の素早い取り外しが大いに期待できる。
【0037】
さらに、ティース35の前部中肉領域37と後部中肉領域39とに固定キャリア裏面の側部周縁を高い精度を維持しつつ水平に支持させるので、固定キャリアが上下方向に傾斜してロボットのフォークによる出し入れが困難になるのを防止することが可能になる。さらにまた、固定キャリアやその基材1が半導体ウェーハ20と略同サイズで薄いから、バックグラインドされていない半導体ウェーハ20の収納を前提とした既存の基板収納容器30の寸法や形状等を特に変更することなく、自動的に収納したり、取り出すことが可能になる。
【0038】
なお、上記実施形態では基材1、複数の突起4、及び給排孔7を一体形成したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、基材1上にフォトレジスト層を積層してエッチングすることにより、周縁部2と複数の突起4を形成することもできる。また、基材1と複数の突起4とを一体化した後、給排孔7をドリル等で穿孔することもできる。また、基材1の周縁部2に保持層10を接着しても良いが、基材1の周縁部2と各突起4の先端面5とに保持層10の裏面を接着しても良い。
【0039】
また、基材1と保持層10とは、同径の大きさでも良いし、そうでなくても良い。また、変形領域11の大部分に複数の非粘着ライン12を設けても良い。さらに、複数の非粘着ライン12は、同じ長さや幅でも良いし、そうでなくても良く、又断続や連続の有無を特に問うものではない。さらにまた、密着保持する部材の大きさに応じ、非粘着ライン12の形状、長さ、幅等を設計しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る固定キャリアの実施形態を示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る固定キャリアの実施形態における半導体ウェーハの粘着保持状態を示す平面説明図である。
【図3】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基材等を示す部分断面説明図である。
【図4】本発明に係る固定キャリアの実施形態における半導体ウェーハの粘着保持状態を示す部分断面説明図である。
【図5】本発明に係る固定キャリアの実施形態における半導体ウェーハを示す平面説明図である。
【図6】本発明に係る固定キャリアの実施形態における保持層の変形状態を示す部分断面説明図である。
【図7】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器を示す斜視全体説明図である。
【図8】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器を示す正面説明図である。
【図9】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器の容器本体を示す断面側面図である。
【図10】本発明に係る固定キャリアの実施形態における容器本体に半導体ウェーハを収納した状態を示す断面説明図である。
【図11】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器の容器本体を示す断面説明図である。
【図12】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器のティースを示す斜視説明図である。
【図13】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器の容器本体を示す底面説明図である。
【図14】本発明に係る固定キャリアの実施形態における基板収納容器の施錠機構を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 基材
2 周縁部
3 表面
4 突起
5 先端面(先端部)
6 区画空間
7 給排孔
8 バキューム装置
10 保持層
11 変形領域
12 非粘着ライン(非粘着処理された変形領域の少なくとも一部)
20 半導体ウェーハ(被搭載物品)
30 基板収納容器
31 容器本体
50 蓋体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、この基材に重ね設けられて被搭載物品を着脱自在に保持する変形可能な保持層とを備えた固定キャリアであって、
基材に、複数の突起を設けてその先端部を保持層に接触させるとともに、これら複数の突起と保持層との間の区画空間に連なる給排孔を設け、保持層の変形領域の少なくとも一部を非粘着処理したことを特徴とする固定キャリア。
【請求項2】
保持層の変形領域を、各突起の先端部と接触しない保持層の非接触部における表面とした請求項1記載の固定キャリア。
【請求項1】
基材と、この基材に重ね設けられて被搭載物品を着脱自在に保持する変形可能な保持層とを備えた固定キャリアであって、
基材に、複数の突起を設けてその先端部を保持層に接触させるとともに、これら複数の突起と保持層との間の区画空間に連なる給排孔を設け、保持層の変形領域の少なくとも一部を非粘着処理したことを特徴とする固定キャリア。
【請求項2】
保持層の変形領域を、各突起の先端部と接触しない保持層の非接触部における表面とした請求項1記載の固定キャリア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−315695(P2006−315695A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137537(P2005−137537)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]