説明

固形粉末化粧料

【課題】 使用時の伸び広がりが良好であり、化粧膜が均一で、化粧持続性が良好な固形粉末化粧料を提供する。
【解決手段】 粉体成分と油性成分とを含む化粧料基材に、揮発性溶剤を添加してスラリー状とし、これを容器又は中皿に充填した後、該揮発性溶剤を除去することにより成型される化粧料において、該化粧料基材中に、次の成分(a)〜(c);(a)デキストリンと脂肪酸とのエステル化物であって、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、脂肪酸が炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を全脂肪酸に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を全脂肪酸に対して0mol%以上50mol%未満を含有し、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0〜3.0であるデキストリン脂肪酸エステルと、(b)不揮発性油剤と、(c)粉体、を配合することを特徴とする固形粉末化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なデキストリン脂肪酸エステルを配合する固形粉末化粧料に関するものであり、更に詳しくは、成形性に優れ、使用時の伸び広がりが良好であり、化粧膜が均一で、化粧持続性が良好な固形粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パウダーファンデーションやアイカラー等の固形粉末化粧料は、粉体成分に油性成分を添加混合した化粧料基材を、皿等の容器に充填成型してなる化粧料であり、使用方法が簡便な上に携帯性にも優れるため、消費者に好まれている。このため、固形粉末化粧料の開発においては様々な工夫がなされており、成型性に関しては、薄片状粉体や球状粉体を多量に配合しても成型性の良い方法として、湿式成型法(化粧料基剤に溶剤を過剰に添加し、スラリー状として容器に充填した後、過剰の溶剤を揮発や吸引により除去する方法)が提案されている(特許文献1、2)。
一方、デキストリン脂肪酸エステルは油ゲル化剤として知られており、固形粉末化粧料においても、使用感や安定性を向上させるために用いられている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−255528号公報
【特許文献2】特開2002−128637号公報
【特許文献3】特開2003−095847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2のような湿式成型法には、過剰の溶剤を除去する際に、成形品の表面にひびを生じやすいという問題があり、また、粒径の大きな真珠光沢顔料等を多量に配合すると、肌上での伸び広がりを悪化させ化粧持続性が悪くなる場合があった。特許文献3の化粧料においても、使用感の向上はみられるものの、化粧持続性は十分なものではなかった。このため、湿式成型法による成形が容易で、塗布時の伸び広がりと化粧膜の均一性が良好で、さらに化粧持続性にも優れる固形粉末化粧料の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記実状に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、湿式成型法において、新規なデキストリン脂肪酸エステルと、不揮発性油剤と、粉体とを配合する固形粉末化粧料を得ることにより、新規なデキストリン脂肪酸エステルの持つ柔軟な皮膜性能が発揮され、上記課題を解決する固形粉末化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)粉体成分と油性成分とを含む化粧料基材に、揮発性溶剤を添加してスラリー状とし、これを容器又は中皿に充填した後、該揮発性溶剤を除去することにより成型される化粧料において、該化粧料基材中に、次の成分(a)〜(c);
(a)デキストリンと脂肪酸とのエステル化物であって、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、脂肪酸が炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を全脂肪酸に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を全脂肪酸に対して0mol%以上50mol%未満を含有し、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0〜3.0であるデキストリン脂肪酸エステル
(b)不揮発性油剤
(c)粉体
を配合することを特徴とする固形粉末化粧料に関するものである。
【0007】
また、本発明は、
(2)成分(a)の分岐飽和脂肪酸が、炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の固形粉末化粧料、
(3)成分(a)が、ASTM D445測定方法による40℃における動粘度が8mm/sである流動パラフィンのゲル化能を有しないことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の固形粉末化粧料、
(4)成分(a)を40質量%含有する軽質流動イソパラフィン溶液をガラス板に400μm厚のアプリケーターで成膜し、乾燥させた皮膜に、テクスチャーアナライザーを用いて100gの荷重をかけ、10秒保持後に0.5mm/秒で離したときの接触点にかかる荷重変化(最大応力値)が、30〜1000gであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の固形粉末化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固形粉末化粧料は、優れた成形性を確保しながら、新規なデキストリン脂肪酸エステルの持つ柔軟な皮膜性により、使用時の伸び広がりが良好であり、化粧膜が均一で、化粧持続性が良好な固形粉末化粧料となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の固形粉末化粧料に使用される成分(a)のデキストリンと脂肪酸エステルは、デキストリンと脂肪酸とのエステル化物であり、デキストリンへの脂肪酸の置換度は、グルコース単位当たり1.0〜3.0であり、好ましくは1.2〜2.8である。この置換度が1.0未満であると液状油等への溶解温度が100℃以上と高くなり、着色や特異な臭いが生じ、好ましくない。
【0010】
また、成分(a)のデキストリン脂肪酸エステルは、次の特性を有する。
(1)液状油に混合したときに液状油がゲル化しない。
「液状油がゲル化しない」とは、ASTM D445測定方法による40℃における動粘度が8mm/sである流動パラフィンを液状油とする場合、デキストリン脂肪酸エステルを5質量%含有する該流動パラフィンを100℃で溶解し、24時間後25℃で粘度を測定したとき、粘度が、Yamco DIGITAL VISCOMATE粘度計VM−100A(振動式)(山一電機社製)の検出限界以下であることを意味する。なお、ゲル化する場合には、粘度が検出されることで確認できる。
【0011】
(2)成分(a)のデキストリン脂肪酸エステルが形成する皮膜が特定範囲のタック性を有する。
「タック性」を、支持体に該デキストリン脂肪酸エステルを塗布し、もうひとつの支持体を相互に離れた状態から面接触させた後に、後退させて別離させ、後退を開始してから完全に別離するまでの接触点にかかる荷重変化(最大応力値)で表す場合、該デキストリン脂肪酸エステルを40質量%含有する軽質流動イソパラフィン溶液をガラス板に400μm厚のアプリケーターで成膜し、乾燥させた皮膜に、テクスチャーアナライザー、たとえば、テクスチャーアナライザーTA.XTplus(Stable Micro Systems社製)を用いて、プローブとして直径12.5mm円柱状のポリアセタール樹脂(Delrin(登録商標)デュポン社製)製プローブを使用し、100gの荷重をかけ10秒保持後に0.5mm/秒で離したときの荷重変化、すなわちタック性が30〜1,000gである。
【0012】
成分(a)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられるデキストリンは、グルコース平均重合度3〜150、特に10〜100のデキストリンが好ましい。グルコース平均重合度が2以下では、得られたデキストリン脂肪酸エステルがワックス様となって油剤への溶解性が低下する。また、グルコース平均重合度が150を超えると、デキストリン脂肪酸エステルの油剤への溶解温度が高くなる、又は溶解性が悪くなる等の問題を生ずることがある。デキストリンの糖鎖は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0013】
成分(a)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸は、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を必須とし、さらに炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸、及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上(以下、これら炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸以外の脂肪酸をまとめて表すときは「その他の脂肪酸」という)を含有してもよいものである。
【0014】
脂肪酸の組成割合は、全脂肪酸に対して、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上が50mol%より多く100mol%以下、好ましくは55mol%以上100mol%以下であり、その他の脂肪酸は、0mol%以上50mol%未満、好ましくは、0mol%以上45mol%以下である。
炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチル酪酸、エチルメチル酢酸、イソヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、イソヘキサコサン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜選択又は組み合わせて使用することができる。これらのうち、炭素数12〜22のものが好ましく、特にイソステアリン酸が好ましく、構造の違い等の限定は特にない。
【0015】
本発明において、イソステアリン酸とは、分岐したステアリン酸の1種、又は2種以上の混合物を意味する。例えば5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−オクタン酸は、イソブチレン2量体のオキソ反応により炭素数9の分岐アルデヒドとし、次いでこのアルデヒドのアルドール縮合により炭素数18の分岐不飽和アルデヒドとし、次いで水素添加、酸化することにより製造することができ(以下、「アルドール縮合型」と略す)、これは例えば日産化学工業社より市販されている。2−ヘプチルウンデカン酸はノニルアルコールをガーベット反応(Guerbet反応、ゲルベ反応ともいう)により二量化し、酸化することにより製造することができ、これは例えば三菱化学社より市販されており、分岐位置の若干異なる類似混合物として、日産化学工業社より市販され、さらに出発アルコールが直鎖飽和ではない2箇所メチル分岐したタイプも同様に日産化学社より市販されている(以下総じて「ガーベット反応型」と略す)。また、メチル分岐イソステアリン酸は、例えばオレイン酸のダイマー製造時の副産物として得られるもので〔例えばJ.Amer.Oil Chem.Soc.,51,522(1974)に記載〕、例えば米国エメリー社などから市販されていたものがあげられる(以下「エメリー型」と略す)。エメリー型イソステアリン酸の出発物質であるダイマー酸のさらに出発物質は、オレイン酸だけでなく、リノール酸、リノレン酸等も含まれる場合がある。本発明においては特にこのエメリー型がより好ましい。
【0016】
また、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜、選択又は組み合わせて使用することができる。これらの中でも、炭素数8〜22のものが好ましく、特に炭素数12〜22のものが好ましい。
【0017】
炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸としては、例えば、モノエン不飽和脂肪酸としては、シス−4−デセン(オブツシル)酸、9−デセン(カプロレイン)酸、シス−4−ドデセン(リンデル)酸、シス−4−テトラデセン(ツズ)酸、シス−5−テトラデセン(フィセテリン)酸、シス−9−テトラデセン(ミリストレイン)酸、シス−6−ヘキサデセン酸、シス−9−ヘキサデセン(パルミトレイン)酸、シス−9−オクタデセン(オレイン)酸、トランス−9−オクタデセン酸(エライジン酸)、シス−11−オクタデセン(アスクレピン)酸、シス−11−エイコセン(ゴンドレイン)酸、シス−17−ヘキサコセン(キシメン)酸、シス−21−トリアコンテン(ルメクエン)酸等が挙げられ、ポリエン不飽和脂肪酸としては、ソルビン酸、リノール酸、ヒラゴ酸、プニカ酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、EPA、イワシ酸、DHA、ニシン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸等が挙げられる。
【0018】
炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸は、環状構造を基本骨格の少なくとも一部に有する炭素数6〜30の飽和又は不飽和脂肪酸を意味し、例えば9,10−メチレン−9−オクタデセン酸;アレプリル酸、アレプリン酸、ゴルリン酸、α−シクロペンチル酸、α−シクロヘキシル酸、α−シクロペンチルエチル酸、α−シクロヘキシルメチル酸、ω−シクロヘキシル酸、5(6)−カルボキシ−4−ヘキシル−2−シクロヘキセン−1−オクタン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルピン酸、ショールムーグリン酸などが挙げられる。
【0019】
成分(a)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸として分岐飽和脂肪酸単独の場合のデキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば以下のもの等が挙げられる。
デキストリンイソ酪酸エステル
デキストリンエチルメチル酢酸エステル
デキストリンイソヘプタン酸エステル
デキストリン2−エチルヘキサン酸エステル
デキストリンイソノナン酸エステル
デキストリンイソデカン酸エステル
デキストリンイソパルミチン酸エステル
デキストリンイソステアリン酸エステル
デキストリンイソアラキン酸エステル
デキストリンイソヘキサコサン酸エステル
デキストリン(イソ吉草酸/イソステアリン酸)エステル
【0020】
成分(a)のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸として分岐飽和脂肪酸とその他の脂肪酸との混合脂肪酸を用いた場合のデキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば以下のもの等が挙げられる。
デキストリン(イソ酪酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(イソアラキン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(エチルメチル酢酸/ラウリン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/ラウリン酸)エステル
デキストリン(イソヘプタン酸/ラウリン酸/ベヘン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/ミリスチン酸)エステル
デキストリン(イソヘキサコサン酸/ミリスチン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/イソ吉草酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソノナン酸/パルミチン酸/カプロン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/パルミチン酸/ステアリン酸)エステル
デキストリン(イソデカン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/ステアリン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/アラキン酸)エステル
デキストリン(2−エチルヘキサン酸/アラキン酸)エステル
デキストリン(2−エチル酪酸/ベヘン酸)エステル
デキストリン(イソノナン酸/リノール酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/アラキドン酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/カプリル酸/リノール酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/ステアリン酸/オレイン酸)エステル
デキストリン(イソアラキン酸/パルミチン酸/ショールムーグリン酸)エステル
【0021】
次に、成分(a)のデキストリン脂肪酸エステルの製造方法について説明する。
製造方法としては、特に限定されず、公知の製法を採用することができるが、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0022】
(1)グルコースの平均重合度が3〜150であるデキストリンと、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を全脂肪酸誘導体に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸誘導体、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸誘導体及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上(以下、これらの脂肪酸誘導体をまとめて表すときは「その他の脂肪酸誘導体」という)を全脂肪酸誘導体に対して0mol%以上50mol%未満を含有する脂肪酸誘導体とを反応させる。
【0023】
(2)グルコースの平均重合度が3〜150であるデキストリンと、炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上とを反応させ、次いで、その生成物とその他の脂肪酸誘導体とを反応させる。
その場合、全脂肪酸誘導体に対して炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を50mol%より多く100mol%以下、及び、その他の脂肪酸誘導体を全脂肪酸誘導体に対して0mol%以上50mol%未満使用する。
【0024】
上記デキストリンとのエステル化反応に使用される脂肪酸誘導体としては、例えば、上記脂肪酸のハロゲン化物、酸無水物等が用いられる。
(1)及び(2)のいずれの場合も、まず、デキストリンを反応溶媒に分散し、必要に応じて触媒を添加する。これに、上記脂肪酸のハロゲン化物、酸無水物等を添加して反応させる。(1)の製造法の場合は、これらの酸を混合して同時に添加反応させ、(2)の製造法の場合は、まず反応性の低い分岐飽和脂肪酸誘導体を反応させた後、次いでその他の脂肪酸誘導体を添加反応させる。
【0025】
製造にあたり、これらのうちの好ましい方法を採用することができる。反応溶媒にはジメチルホルムアミド、ホルムアミド等のホルムアミド系;アセトアミド系;ケトン系;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物系;ジオキサン等の溶剤を適宜使用することができる。反応触媒としてはピリジン、ピコリン等の3級アミノ化合物などを用いることができる。反応温度は原料脂肪酸等により適宜選択されるが、0℃〜100℃の温度が好ましい。
【0026】
本発明における成分(a)の配合量は、特に制約はないが、固形粉末化粧料中0.1〜10質量%(以下単に「%」と記す)が好ましい。この範囲で用いれば、成分(a)のデキストリン脂肪酸エステルの持つ柔軟な皮膜性が発揮され、成形性に優れ、伸び広がりが良好で、化粧膜の均一性、化粧持続性よい固形粉末化粧料となる。
【0027】
本発明に用いられる成分(b)不揮発性油剤は、固形粉末化粧料のバインダーあるいは伸び等の感触を付与するものであり、通常の化粧料に用いられ、25℃において不揮発性の油剤であれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシャトロプスワックス等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0028】
本発明の固形粉末化粧料における成分(b)の配合量は、特に限定されないが、固形粉末化粧料中5〜40%が好ましい。この範囲で用いれば、伸び広がりや成形性が良好な固形粉末化粧料が得られる。
【0029】
本発明に用いられる成分(c)粉体は、固形粉末化粧料の主成分であり、通常の化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、着色剤として、酸化チタン、酸化亜鉛、黒酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、タール系色素等、感触調整剤として、酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、炭化珪素、窒化硼素、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体パウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、N−アシルリジン、ウレタンパウダー等が挙げられる。また、真珠光沢顔料として、オキシ塩化ビスマス、マイカチタン、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、有機顔料被覆マイカチタン、アルミニウムパウダー等、紫外線遮断剤として、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、酸化セリウム、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン等の複合粉体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。なお、これらの粉体は、分散性や付着性を改良するために、シリコーン類、フッ素化合物類、金属石鹸類、油剤類等の表面処理剤で通常公知の方法により、表面処理して用いても良い。
【0030】
これら粉体の中でも、真珠光沢顔料を配合する場合に、本発明の効果が顕著に得られ、好ましいものとすることができる。真珠光沢顔料とは、パール剤、ラメ剤等の高輝度な外観を有する粉体であるが、特に平均厚さが0.1〜3.0μm、平均粒径が70〜200μm、アスペクト比(平均粒径/平均厚さ)が50〜300程度のものが好ましい。
【0031】
本発明の固形粉末化粧料における成分(c)粉体の配合量は、特に限定されないが、固形粉末化粧料中50〜90%が好ましい。
【0032】
また、本発明の固形粉末化粧料には、上記必須成分に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、一価アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子、トリメチルシロキシケイ酸等の油溶性被膜形成剤、パラオキシ安息香酸誘導体、フェノキシエタノール等の防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、抗菌剤、香料、塩類、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、美肌用成分(美白剤、細胞賦活剤、肌荒れ改善剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、抗脂漏剤等)、ビタミン類、アミノ酸類、核酸、ホルモン、包接化合物等を適宜、配合することができる。
【0033】
本発明の固形粉末化粧料は、粉体成分と油性成分とを含む化粧料基材に、揮発性溶剤を添加してスラリー状とし、これを容器又は中皿に充填した後、該揮発性溶剤を除去することにより成型される。ここでいう化粧料基材とは、成分(a)〜(c)の混合物であり、その混合方法は特に制約を受けるものではなく、通常公知の混合方法でよい。また成型の方法は、特に制約を受けるものではないが、固形粉末化粧料への溶剤の残存量や、揮発性溶剤の回収の容易さ等を考慮すると、スラリー状混合物充填後に加圧し、該揮発性溶剤を吸収体あるいは排出孔を通して除去する方法を採用することが好ましい。
【0034】
本発明に用いられる揮発性溶剤としては、沸点が200℃以下のものであることが好ましい。具体的には、水もしくは低沸点アルコール、低沸点炭化水素、低沸点の鎖状もしくは環状シリコーン、低沸点フッ素化合物、が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上の混合物として用いられる。また、これらの揮発性溶剤を配合した乳化物を用いることもでき、特に水中油型乳化物を用いる場合には、成分(a)は内油相に乳化しておくことが、本発明の効果を発揮する点で好ましい。使用量は特に規定されるものではないが、適度な流動性のスラリー状とするために、化粧料基剤に対して10〜150%の範囲が好ましい。揮発性溶剤の量が多すぎると溶剤成分を充分に回収することが困難になり、乾燥性が著しく低下するため、成型性上好ましくない。
【0035】
本発明の固形粉末化粧料は、特に限定されないが、ファンデーション、アイカラー、頬紅、白粉、コンシーラー、アイブロウ等のメーキャップ化粧料に好適に用いられる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔新規なデキストリン脂肪酸エステルの参考製造例〕
以下に本発明に用いる新規なデキストリン脂肪酸エステルの参考製造例を示す。また、下記方法で置換度、構成脂肪酸のmol%、粘度、タック性を測定した。
【0037】
(置換度、構成脂肪酸のmol%の測定方法)
参考製造例のデキストリン脂肪酸エステルのIRスペクトルを測定し、アルカリ分解後の脂肪酸量とガスクロマトグラフィーから、置換度と、構成脂肪酸のmol%を求めた。
【0038】
(粘度の測定方法)
各試料(参考製造例のデキストリン脂肪酸エステル)を5質量%含有する流動パラフィンを100℃で溶解し、室温(25℃)まで冷却する。25℃の恒温槽で24時間保温し、以下の測定機器を用いて粘度を測定した。
尚、流動パラフィンはASTM D445測定方法による40℃の動粘度が8mm/sのものを使用した。
[測定機器]Yamco DIGITAL VISCOMATE MODEL VM−100A(山一電機社製)
【0039】
(タック性の測定方法)
各試料(参考製造例のデキストリン脂肪酸エステル)をIPクリーンLX(軽質流動イソパラフィン)に40%溶解した溶液を、ガラス板に400μm厚のアプリケーターで塗布し、その皮膜を室温24時間乾燥後、70℃で12時間保存後、室温25℃において、乾燥したもののタック性を、以下に示す機器および条件で評価した。
[測定機器]テクスチャーアナライザーTA.XTplus(Stable Micro Systems社製)
[プローブ]1/2 Cyl.Delrin(ポリアセタール樹脂(POM))P/0.5)、直径12.5mm円柱状
[測定条件]Test Speed:0.5mm/sec, Applied Force:100g, Contact Time:10sec
【0040】
[参考製造例1:デキストリンイソステアリン酸(エメリー型)エステル]
平均グルコース重合度30のデキストリン21.41g(0.132mol)をジメチルホルムアミド71g、3−メチルピリジン62g(0.666mol)とからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソステアリン酸クロライド(エメリー型)120g(0.396mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質107gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸60mol%)
尚、エメリー型の出発原料はコグニス社製のEMARSOL873を用いた。本原料の脂肪酸組成は分岐脂肪酸が60mol%、その他の脂肪酸が40mol%(パルミチン酸10mol%を含む)のものを用いた。(以下同様)
置換度は2.2、イソステアリン酸60mol%、その他の脂肪酸40mol%(内パルミチン酸10mol%)、粘度は0mPa・s、タック性は161gであった。
【0041】
[参考製造例2〜4:デキストリンイソステアリン酸(エメリー型)エステル]
参考製造例1記載の原料・方法に準じ、
参考製造例2は、平均グルコース重合度30のデキストリン0.132molに対し、イソステアリン酸クロライド(エメリー型)を0.172mol用い、デキストリンイソステアリン酸(エメリー型)エステルを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸60mol%)
置換度1.0、分岐脂肪酸60mol%、その他の脂肪酸40mol%(内パルミチン酸10mol%)、粘度は0mPa・s、タック性は35gであった。
参考製造例3は、平均グルコース重合度30のデキストリン0.132molに対し、イソステアリン酸クロライド(エメリー型)を0.224mol用い、デキストリンイソステアリン酸(エメリー型)エステルを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸60mol%)
置換度1.4、分岐脂肪酸60mol%、その他の脂肪酸40mol%(内パルミチン酸10mol%)、粘度は0mPa・s、タック性は45gであった。
参考製造例4は平均グルコース重合度30のデキストリン0.132molに対し、イソステアリン酸クロライド(エメリー型)を0.502mol用い、デキストリンイソステアリン酸(エメリー型)エステルを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸60mol%)
置換度2.6、分岐脂肪酸60mol%、その他の脂肪酸40mol%(内パルミチン酸10mol%)、粘度は0mPa・s、タック性は750gであった。
【0042】
[参考製造例5:デキストリンイソステアリン酸エステル]
イソステアリン酸クロライド(エメリー型)の代わりにイソステアリン酸クロライド(ガーベット反応型)を用いた以外は参考製造例1と同様に作成し、淡黄色の樹脂状物質80gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸100mol%)
尚、ガーベット反応型の出発原料は日産化学工業社製のファインオキソコール イソステアリン酸−Nを用いた。
置換度は1.8、イソステアリン酸100mol%、粘度は0mPa・s、タック性は173gであった。
【0043】
[参考製造例6:デキストリンイソステアリン酸エステル]
イソステアリン酸クロライド(エメリー型)の代わりにイソステアリン酸クロライド(アルドール縮合型)を用いた以外は参考製造例1と同様に作成し、淡黄色の樹脂状物質60gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸100mol%)
尚、アルドール縮合型の出発原料は日産化学工業社製のファインオキソコール イソステアリン酸を用いた。
置換度は1.2、イソステアリン酸100mol%、粘度は0mPa・s、タック性は61gであった。
【0044】
[参考製造例7:デキストリンイソアラキン酸/パルミチン酸エステル]
平均グルコース重合度150のデキストリン51.28gをジメチルホルムアミド150g、ピリジン60gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソアラキン酸クロライド132gとパルミチン酸クロライド12gの混合物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質145gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸90mol%)
置換度は1.1、イソアラキン酸85mol%、パルミチン酸15mol%、粘度は0mPa・s、タック性は45gであった。
【0045】
[参考製造例8:デキストリンイソ酪酸/カプリン酸エステル]
平均グルコース重合度5のデキストリン34.19gを3−メチルピリジン215gに70℃で分散させ、イソ酪酸クロライド50g及びカプリン酸クロライド60gの混合物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をエタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質98gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸60mol%)
置換度は2.9、イソ酪酸63mol%、カプリン酸37mol%、粘度は0mPa・s、タック性は255gであった。
【0046】
[参考製造例9:デキストリンイソパルミチン酸エステル]
平均グルコース重合度100のデキストリン23.62gをジメチルホルムアミド71g、3−メチルピリジン62gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソパルミチン酸クロライド100gを30分間滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質90gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸100mol%)
置換度は2.0、イソパルミチン酸100mol%、粘度は0mPa・s、タック性は204gであった。
【0047】
[参考製造例10:デキストリンイソノナン酸/ステアリン酸エステル]
平均グルコース重合度20のデキストリン36.34gをジメチルホルムアミド120g、3−メチルピリジン62gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソノナン酸クロライド41g及びステアリン酸クロライド58gの混合物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質95gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸55mol%)
置換度は1.6、イソノナン酸51mol%、ステアリン酸49mol%、粘度は0mPa・s、タック性は64gであった。
【0048】
[参考製造例11:デキストリン2−エチルヘキサン酸/ベヘン酸エステル]
平均グルコース重合度20のデキストリン54.56gをジメチルホルムアミド150g、3−メチルピリジン130gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、2−エチルヘキサン酸クロライド147g、次いでベヘン酸クロライド36gを計30分間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質95gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸90mol%)
置換度は2.3、2−エチルヘキサン酸95mol%、ベヘン酸5mol%、粘度は0mPa・s、タック性は138gであった。
【0049】
[参考製造例12:デキストリンイソパルミチン酸/酢酸エステル]
平均グルコース重合度20のデキストリン22.56gをジメチルホルムアミド71g、3−メチルピリジン70gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソパルミチン酸クロライド110g及び無水酢酸10gの混合物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質96gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸80mol%)
置換度は2.8、イソパルミチン酸79mol%、酢酸21mol%、粘度は0mPa・s、タック性は430gであった。
【0050】
[参考製造例13:デキストリンイソステアリン酸(エメリー型)/オレイン酸エステル]
平均グルコース重合度40のデキストリン19.99gをジメチルホルムアミド71g、3−メチルピリジン62gとからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソステアリン酸クロライド(エメリー型)108gとオレイン酸クロライド12gの混合物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質88gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸54mol%)
置換度は2.2、イソステアリン酸54mol%、オレイン酸10mol%、粘度は0mPa・s、タック性は350gであった。
【0051】
実施例1〜4および比較例1〜5 アイカラー
下記表1に示す組成のアイカラーを下記製造方法に従って調整した。得られたアイカラーについて、下記評価方法1により官能評価(「伸び広がりの良さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」)を行った。また、下記評価方法2により「成形性」の評価を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
(製造方法1):実施例1〜4、比較例1〜5
A.成分11〜20を75℃に加熱し、均一混合する。
B.成分1〜10をスーパーミキサーで均一混合する。
C.Bを攪拌しながら、Aを添加し、均一分散して化粧料基材を得る。
D.Cの化粧料基材100部に対して、揮発性溶剤(軽質流動イソパラフィン)50部を添加し、均一混合し、スラリー状とする。
E.Dを酸化アルミニウム製金皿に充填し、表面に吸い取り紙を置き加圧して溶剤の一部を除去する。
F.Eを70℃の恒温槽に10時間放置し、溶剤を完全に除去して、アイカラーを得た。
(製造方法2):比較例6
A.成分11〜20を75℃に加熱し、均一混合する。
B.成分1〜10をスーパーミキサーで均一混合する。
C.Bを攪拌しながら、Aを添加し、均一分散して化粧料基材を得る。
D.Cの化粧料基材をパウダープレス試験機(三信精機社製)にて80kgf/cmで2秒間圧縮成型し、アイカラーを得た。
【0054】
(評価方法1)
化粧品評価専門パネル20名に前記実施例及び比較例のアイカラーを使用してもらい、「伸び広がりの良さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」について、各自が以下の基準に従って5段階評価し、ファンデーション毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。なお、化粧持続性については、アイカラー塗布直後の状態と4時間後(日常生活)の状態を比較し、評価した。
評価基準
(評価結果):(評点)
非常に良好:5点
良好 :4点
普通 :3点
やや不良 :2点
不良 :1点
判定基準
(評点の平均点) :(判定)
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満: ○
1.5以上〜3.5未満: △
1.5未満 : ×
【0055】
(評価方法2)「成形性」
前記実施例及び比較例のアイカラーについて、成型品表面に発生するひび、亀裂、二層、はがれ等の有無を目視にて観察し、その発生レベルを下記の4段階で評価した。
判定基準
(判定):(評価)
◎ :全く発生しない。
○ :発生がわずかに確認される。
△ :発生が確認される。
× :発生頻度が非常に高い
【0056】
(結果)
表1の結果から明らかなように、本発明の実施品である実施例1〜4のアイカラーは、「伸び広がりの良さ」、「化粧膜の均一性」、「化粧持続性」、「成形性」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。一方、成分(a)のデキストリン脂肪酸エステルを配合していない比較例1〜5は、全ての点で満足のいくものは得られなかった。
【0057】
実施例5 ファンデーション
下記の処方および製法によりファンデーションを製造した。
(処方) (%)
(1)マイカ 残量
(2)硫酸バリウム 14
(3)酸化チタン 14
(4)窒化ホウ素 5
(5)ベンガラ 1
(6)黄酸化鉄 2
(7)黒酸化鉄 0.5
(8)雲母チタン 1
(9)ヘクトライト 0.5
(10)ワセリン 2
(11)流動パラフィン 2.5
(12)セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.2
(13)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 0.5
(14)パラベン 適量
(15)製造例1のデキストリン脂肪酸エステル 2
【0058】
(製造方法)
A.成分(9)〜(15)を75℃に加熱し、均一混合する。
B.成分(1)〜(8)をスーパーミキサーで均一混合する。
C.Bを攪拌しながら、Aを添加し、均一分散して化粧料基材を得る。
D.Cの化粧料基材100部に対して、揮発性溶剤(軽質流動イソパラフィン)50部を添加し、均一混合し、スラリー状とする。
E.Dを酸化アルミニウム製金皿に充填し、表面に吸い取り紙を置き加圧して溶剤の一部を除去する。
F.Eを70℃の恒温槽に10時間放置し、溶剤を完全に除去して、固形粉末状ファンデーションを得た。
【0059】
(結果)
得られたファンデーションは、成形性に優れ、使用時の伸び広がりが良好であり、化粧膜が均一で、化粧持続性が良好なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体成分と油性成分とを含む化粧料基材に、揮発性溶剤を添加してスラリー状とし、これを容器又は中皿に充填した後、該揮発性溶剤を除去することにより成型される化粧料において、該化粧料基材中に、次の成分(a)〜(c);
(a)デキストリンと脂肪酸とのエステル化物であって、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、脂肪酸が炭素数4〜26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を全脂肪酸に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸及び炭素数6〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を全脂肪酸に対して0mol%以上50mol%未満を含有し、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0〜3.0であるデキストリン脂肪酸エステル
(b)不揮発性油剤
(c)粉体
を配合することを特徴とする固形粉末化粧料。
【請求項2】
成分(a)の分岐飽和脂肪酸が、炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
成分(a)が、ASTM D445測定方法による40℃における動粘度が8mm/sである流動パラフィンのゲル化能を有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
成分(a)を40質量%含有する軽質流動イソパラフィン溶液をガラス板に400μm厚のアプリケーターで成膜し、乾燥させた皮膜に、テクスチャーアナライザーを用いて100gの荷重をかけ、10秒保持後に0.5mm/秒で離したときの接触点にかかる荷重変化(最大応力値)が、30〜1000gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
成分(c)の粉体中に、平均厚さが0.1〜3.0μm、平均粒径が70〜200μm、アスペクト比が50〜300である真珠光沢顔料を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の固形粉末化粧料。
【請求項6】
真珠光沢顔料の配合量が0.5〜80質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の固形粉末化粧料。

【公開番号】特開2011−225560(P2011−225560A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77851(P2011−77851)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】