説明

固形製剤

【課題】 日局I液で迅速に崩壊する固形製剤を提供する。
【解決手段】 治療上有効量の少なくとも一種の薬剤、錠剤中の少なくとも一種の中性あるいは塩基性の添加物、および崩壊剤よりなる固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は固形製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ピペリジノアルカノール誘導体は、日局I液(pH1.2)でわずかに溶解する。そのため、ピペリジノアルカノール誘導体からなる製剤は、日局I液で製剤表面に溶解したピペリジノアルカノール誘導体の薄いゲル状の膜が生成する。この膜は水分の透過を阻害し、ピペリジノアルカノール誘導体からなる製剤の崩壊時間が遅延するため、生体内の吸収が不十分となり生体利用率が低くなる。この欠点を解消するため、特開平1−128924公報では、非イオン性表面活性剤あるいは陽イオン性表面活性剤、および炭酸カルシウムを含んでなる製剤組成物が開示されている。しかし、この方法では安全性の面から必ずしも好ましくない表面活性剤を使う必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、表面活性剤を使用することなく、日局I液で迅速に崩壊する製剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、治療上有効量の少なくとも一種の薬剤、少なくとも一種の中性あるいは塩基性の添加物、および崩壊剤を含有してなる固形製剤に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明における薬剤としては、酸性pH溶液中でゲル状膜を生成する薬剤があげられる。該薬剤としてはピペリジノアルカノール誘導体もしくは製薬上許容されるその塩が例示され、具体的にはテルフェナジンがあげられる。固形製剤としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などが例示される。一製剤あたりの含有量は60〜120mgが好ましい。
【0006】添加物としては、無機物および有機物があり、無機物としては無水ケイ酸、特殊ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどのケイ酸類もしくはその塩、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウムなどのリン酸塩、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物などがあげられ、好ましくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムや特殊ケイ酸カルシウムである。有機物としては、有機酸の塩、多糖類、アミノ酸類、蛋白質類などがあげられる。有機酸の塩としては、酢酸ナトリウムやクエン酸ナトリウムなどがあげられ、多糖類としてはカルボキシメチルセルロースナトリウムや結晶セルロースなどがあげられ、アミノ酸類としてはアラニン、ロイシン、リジン、アルギニンなどがあげられ、蛋白質類としてはゼラチンなどがあげられるが、好ましくはラクトースや結晶セルロース等の糖類である。
【0007】崩壊剤としては、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプンなどがあげられるが、好ましくは、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムである。
【0008】製剤中の添加物および崩壊剤の含有量は、それぞれ0.1〜30重量%および1〜30重量%であり、好ましくはそれぞれ5〜20重量%および1〜5重量%である。本発明の固形製剤は、薬剤、添加物および崩壊剤、場合によっては滑沢剤などを混合することによりなる。さらに、一般的に用いられる甘味剤、着色剤、香味剤、抗酸化剤などを添加し、製剤化することも可能である。固形製剤の製造法としては、例えば、薬剤、添加物および崩壊剤の混合粉体を直接打錠あるいはカプセル充填する方法、または一旦乾式や湿式で造粒し、乾燥、整粒する方法などがあげられるが、一般に製剤を製造する方法であれば特に制限はなく、いずれの方法でもよい。錠剤またはカプセル剤を製造する際には、少量の滑沢剤を混合することもできる。錠剤またはカプセル剤を製造する際に用いられる滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、滑石、水素添加植物油、タルクなどがあげられるが、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムである。滑沢剤の添加方法としては、一般的な内部滑沢法、あるいは外部滑沢機を用いた外部滑沢法などがあげられる。さらに、錠剤に各種の皮膜あるいは糖衣などでコーティングすることも可能である。
【0009】以下の実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0010】
【実施例】
【0011】実施例1テルフェナジン、乳糖(DMV社製:200M)、トウモロコシ殿粉(日本食品化工社製:日食コーンスターチW )、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学社製:ノイシリンUFL2)、クロスポピドン(GAF社製:ポリプラスドンXL−10)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製:TC−5R)を撹拌造粒機(パウレック社製)内に仕込み、精製水を添加し造粒後、乾燥工程を経て造粒物を得た。造粒物にステアリン酸マグネシウム(純正化学社製)を加えて混合後、ロータリー型打錠機(菊水製作所製)を用い圧縮成形した。成形条件は錠剤重量250mg(テルフェナジン含量60mg)、金型は9mmφ糖衣R型とし、錠剤硬度が13kgf の錠剤を得た。
【0012】実施例2実施例1のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの量を5重量%にし、実施例1と同様の方法により250mgの錠剤を得た。
【0013】実施例3実施例1のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの量を20重量%にし、実施例1と同様の方法により250mgの錠剤を得た。実施例1から3についての処方を第1表に示す。
【0014】
【表1】


【0015】実施例4実施例1のテルフェナジンの量を48重量%にし、実施例1と同様の方法により250mgの錠剤を得た(テルフェナジン含量120mg)。実施例4についての処方を第2表に示す。
【0016】
【表2】


【0017】実施例5実施例1のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを特殊ケイ酸カルシウム(エーザイ社製:フローライトRE)に変え、実施例1と同様の方法により250mgの錠剤を得た。実施例5についての処方を第3表に示す。
【0018】
【表3】


【0019】実施例6実施例1のクロスポピドンの量を1重量%にし、実施例1と同様の製造法により250mgの錠剤を得た。
【0020】実施例7実施例1のクロスポピドンの量を3重量%にし、実施例1と同様の製造法により250mgの錠剤を得た。実施例6および実施例7についての処方を第4表に示す。
【0021】
【表4】


【0022】実施例8実施例1のクロスポピドンをカルボキシメチルセルロース(五徳薬品社製:NS−300)に変え、実施例1と同様の方法により250mgの錠剤を得た。
【0023】実施例9実施例8のカルボキシメチルセルロースの量を3重量%にし、実施例1と同様の製造法により250mgの錠剤を得た。実施例8および実施例9についての処方を第5表に示す。
【0024】
【表5】


【0025】実施例10実施例1のクロスポピドンを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学社製:L−HPC LH−11)に変え、実施例1と同様の方法により250mgの錠剤を得た。
【0026】実施例11実施例8の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの量を3重量%にし、実施例1と同様の製造法により250mgの錠剤を得た。実施例10および実施例11についての処方を第6表に示す。
【0027】
【表6】


【0028】実施例12実施例1と同様にして得られた造粒物250mgを白色1号ゼラチン硬カプセル(エランコ社製)に充填し、カプセル剤を得た。実施例12についての処方を第7表に示す。
【0029】
【表7】


【0030】比較例1実施例1のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを乳糖に置き換え、実施例1と同様の製造法により錠剤を得た。比較例1についての処方を第8表に示す。
【0031】
【表8】


【0032】比較例2実施例1のクロスポピドンを乳糖に置き換え、実施例1と同様の製造法により錠剤を得た。比較例2についての処方を第9表に示す。
【0033】
【表9】


【0034】比較例3比較例1と同様にして得られた造粒物を実施例12と同様の製造法によりカプセル剤を得た。比較例3についての処方を第10表に示す。
【0035】
【表10】


【0036】試験例実施例1〜12および比較例1〜3で得られた錠剤を日局12に準じ崩壊試験を行った。試験液は日局準拠I液(pH1.2)および蒸留水を用いた。日局準拠I液(pH1.2)および蒸留水を用いたときの崩壊時間を、以下の表に示す。
【0037】
【表11】


【0038】中性あるいは塩基性の添加物を添加した各実施例の崩壊時間は、日局I液および蒸留水で差がなかった。これに対し、中性あるいは塩基性の添加物を添加しなかった、例えば比較例1は、日局I液では1時間を経過しても全く崩壊せず、錠剤が膨潤した状態で残っていた。これは、日局I液により主薬のテルフェナジンがゲル化し、錠剤の崩壊を阻害したためで、ゲル化しない蒸留水では7分台と速い崩壊であった。
【0039】以上の結果より、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたは特殊ケイ酸カルシウムの添加はI液では局部的にpHを中性にし、テルフェナジンのゲル化を防いでいた。これにより、試験液に左右されることなく製剤内に液を浸透させると考えられる。さらに、崩壊剤の種類および添加量を変化させることにより、任意の崩壊時間にすることも可能となった。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、表面活性剤を使用することなく、日局I液で迅速に崩壊する固形製剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 治療上有効量の少なくとも一種の薬剤、少なくとも一種の中性あるいは塩基性の添加物、および崩壊剤を含有してなる固形製剤。
【請求項2】 薬剤が酸性pH溶液中でゲル状膜を生成する薬剤である請求項1記載の固形製剤。
【請求項3】 薬剤がピペリジノアルカノール誘導体もしくは製薬上許容されるその塩である請求項2記載の固形製剤。
【請求項4】 ピペリジノアルカノール誘導体がテルフェナジンである請求項3記載の固形製剤。
【請求項5】 テルフェナジンの含有量が一製剤当たり、60〜120mgである請求項4記載の固形製剤。
【請求項6】 中性あるいは塩基性の添加物が無機物、有機酸の塩、多糖類、アミノ酸類または蛋白質類である請求項1記載の固形製剤。
【請求項7】 無機物が、ケイ酸類もしくはその塩、リン酸塩または金属水酸化物である請求項6記載の固形製剤。
【請求項8】 ケイ酸類の塩が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたは特殊ケイ酸カルシウムである請求項7記載の固形製剤。
【請求項9】 崩壊剤がクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウムまたは部分アルファ化デンプンである請求項1記載の固形製剤。
【請求項10】 製剤中の添加物の含有量が0.1〜30重量%および崩壊剤の含有量が1〜30重量%である請求項1記載の固形製剤。