固結材注入方法及び固結材注入装置
【課題】自動的に全長に亘って確実、かつ良好な注入を行なえるようにする。
【解決手段】ポンプ53−1,53−2,53−3の目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を他の作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加し、各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とする。
【解決手段】ポンプ53−1,53−2,53−3の目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を他の作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加し、各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固結材注入方法及び固結材注入装置に係り、特に、地山に打設された補強管の全長周辺部を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンに対応する位置に開口を備える複数の注入管を該補強管に挿入し、各注入管を通してポンプより固結材を補強管内に注入し、該補強管に形成した吐出孔より補強管周辺部の各ゾーンに固結材を噴出させて固結領域を形成する固結材注入方法及び固結材注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルでは、これから掘削する地山の先行変位を抑制し、地山の緩み防止と施工の安全を図るべく、切羽前方の地山に長尺先受け工(フォアバリング)が施される。この長尺先受け工は、通常山岳トンネルで用いられるドリルジャンボにより、外形101.6〜114.3mm程度の小口径鋼管を専用ビットを用いて二重管方式で削孔と鋼管挿入を同時に行い、その後鋼管にあけた孔より、所定の圧力で注入材を注入し、掘削線の外周部に鋼管が入った限定的山地改良ゾーンを形成するものである。又、同様の目的で、鋼管に替わる切断可能な補強材料を、切羽の鏡部吹き付けコンクリートより水平方向に打設する鏡補強工もある。
【0003】
図9は長尺先受け工及び鏡補強工の説明図で、構築中のトンネル切羽前方の天端部付近に先受け工および鏡補強工を施した状態を示しており、(A)は縦断図、(B)は横断図である。これまでのトンネル掘削作業で露出した地山の切羽1には吹付コンクリート2が施され、その切羽1の後方トンネル空間(図で左側)には既に掘削が完了した状態で支保が形成されている。支保として、トンネル掘削断面内のトンネル空間において、地山を覆うようにして吹付コンクリート5が施され、その内部には鋼製の支保工4がトンネルの横断面形状に沿った形で、トンネル掘進方向に所定間隔毎(例えば1m毎)に建て込まれており、吹付コンクリート5の内側には二次覆工コンクリート3が打設される。
また、掘進作業に先立って、トンネル空間の切羽前方の天端部に先受け工が掘進方向に対して所定間隔で、かつ周方向にアーチ状をなすように地山内に形成され、かつ、切羽1の吹き付けコンクリート2より水平方向に鏡補強工が形成されている。
長尺先受け工は、トンネルの横断面形状に沿って所定ピッチで且つ掘進方向に所定間隔毎に打設された地山補強材となる長尺先受け鋼管(補強鋼管)6と補強鋼管周辺部に全長に亘って形成した固結領域7とで構成されている。補強鋼管6は切羽1の上部外周から前方の地山に向けて所定の仰角で打設され、トンネル周方向に多数設けられている。固結領域7は、注入管(図示せず)を補強鋼管6に差し込んで固結材を注入し、補強鋼管6の適所に形成した吐出孔より該固結材を噴出させて各補強鋼管周辺部に全長に亘って形成される。
【0004】
鏡補強工は、切羽1の吹き付けコンクリート2より所定のパターンで水平方向に打設された多数の繊維補強管8と、該補強管の周辺部に全長に亘って形成した固結領域9とで構成されている。鏡補強工はトンネルの掘削に際して掘った途端に地山が崩れてこないように補強するもので、掘削の進行と並行して切断、除去される。このため、切断しやすい繊維補強管8が使用される。
上記の長尺先受け工及び鏡補強工に用いられる補強管は、3m程の鋼管(長尺先受け工の場合)やある程度強度がある繊維補強管(鏡補強工の場合)等をカプラで継ぎ足しながら12m以上のものを打設するのが標準であり、かかる長尺の補強管周辺部に全長に亘って均一に固結領域を形成する必要がある。このため、従来技術(特許文献1参照)では、図10に示すように、補強管6の全長を何メートル毎の複数のゾーン(図では3個のゾーン)Z1〜Z3に分け、それぞれのゾーンにおいて開口するような長さの異なる3本の注入管10-1〜10-3を打設後の補強管6内に挿入し、それぞれの注入管に対してポンプP-1〜P-3から注入材を圧送し、図111に示すように各ゾーンにおいて補強管6に形成した吐出孔より該注入材を噴出させて補強鋼管周辺部に全長に亘って固結領域7を形成する手法が提案されている。尚、図10、図111において、11は地山と補強管6の口元部の隙間をコーキングする口元コーキング、12は口元部で注入管をコーキングする管内コーキング、13はパッカーである。
【0005】
ところで、従来技術の注入手法では、各ゾーンにおける注入圧が上昇しすぎないようにそれぞれのポンプを制御しながらゾーン毎に所定量の注入を行う。しかし、地山に亀裂等があって注入材が逃げているゾーンが存在する場合には、そのゾーンにおける注入量が不足したままとなってしまう。これを回避するために、作業者がそれぞれのポンプの吐出量と注入圧力を確認しながら注入を行い、圧力が低すぎるゾーンや、注入量が足りないゾーンがあればそのゾーンに対応したポンプ又は隣接するゾーンのポンプを適宜作動させ、全長に亘って良好な注入状態となるように手動でポンプを操作する必要があった。しかし、かかる方法では、熟練を要する作業者が必要となり、しかも該作業者はポンプにつきっきりになるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−303776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上から、本発明の目的は、熟練の作業者を必要とせず、自動的に全長に亘って確実、かつ良好な注入を行なえるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、地山に打設された補強管の全長周辺部を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンに対応する位置に開口を備える複数の注入管を該補強管に挿入し、各注入管を通してポンプより固結材を補強管内に注入し、該補強管に形成した吐出孔より補強管周辺部の各ゾーンに固結材を噴出させて固結領域を形成する固結材注入方法及び固結材注入装置である。
・固結材注入方法
本発明の固結材注入方法は、各ポンプの目標注入量及び全ポンプの総目標注入量を設定するステップ、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を監視するステップ、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達したときの該ポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より高い場合には正常に注入が行なわれたものとして該ポンプを停止するステップ、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加するステップ、各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とするステップ、を備えている。
【0009】
・固結材注入装置
本発明の固結材注入装置は、前記各注入管に対応して設けられ、該注入管を通して固結材を補強管内に注入するとともに、注入管に注入した固結材の注入量およびポンプの圧力を検出して注入量信号及び圧力信号を出力するポンプ、各ポンプの目標注入量及び全ポンプの総目標注入量を設定する設定部、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を計算する積算注入量計算手段、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達したときの該ポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より高い場合には正常に注入が行なわれたものとして該ポンプを停止し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の設定圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止するポンプ制御手段、(1) 所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加し、かつ、(2) 各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とする目標注入量変更手段、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熟練した作業者を必要とせず、自動的に全長に亘って確実、かつ良好な注入を行なうことができる。
本発明によれば、ポンプに負担をかけることなく、あるゾーンの注入量が足りない場合には隣接するゾーンから固結材を補給することができる。すなわち、本発明によれば、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を監視し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加するようにしたから、ポンプに負担をかけることなく、高圧ストップしたポンプに対応するゾーンに隣接するポンプより固結材を補給することができ、補強管全長に渡って良好な注入ができる。
本発明によれば、あるゾーンで固結材が亀裂等で逃げている場合には、該ゾーンに対応するポンプの固結材注入量を増加することができる。すなわち、本発明によれば、各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、総目標注入量を増加し、該総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量としたから、注入材が亀裂等により逃げているゾーンが存在する場合には該ゾーンに対応するポンプからの目標注入量を増加して注入材を補強することができ、補強管全長に渡って良好な注入ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用できるトンネル補強工の説明図である。
【図2】長尺先受け工における補強鋼管の構成図である。
【図3】補強鋼管断面図である。
【図4】ポンプと分配制御装置5の外観図である。
【図5】本発明のポンプと分配制御装置の構成図である。
【図6】処理装置の固結材注入処理フローである。
【図7】作動中ポンプの新たな目標注入量の決定、更新処理フローである。
【図8】ポンプ3台を連動させて、図6、図7の処理フローに従って注入作業を行なった場合の各ポンプの初期の目標注入量、変更後の目標注入量、最終的な積算注入量(吐出流量)を示す図表である。
【図9】長尺先受け工及び鏡補強工の説明図である。
【図10】従来技術の説明図その1である。
【図11】従来技術の説明図その2である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)トンネル補強工
図1は本発明を適用できるトンネル補強工の説明図、図2は長尺先受け工における補強鋼管の構成図であり、鏡補強工における補強管も同様の構成を備えている。
図1は、構築中のトンネルの切羽の前方天端部付近に先受け工を、切羽面に鏡補強工を施した状態を示している。それまでのトンネル掘削作業で露出した地山の切羽21には吹付コンクリート22が施され、その切羽21の後方トンネル空間には既に掘削が完了した状態で支保が形成されている。すなわち、掘削済みのトンネル空間において、地山を覆うようにして吹付コンクリート5が施され、その内部には鋼製の支保工4がトンネルの横断面形状に沿った形で、トンネル掘進方向に所定間隔毎(例えば1m毎)に建て込まれており、吹付コンクリート5の内側には二次覆工コンクリート3が打設される。また、今後の掘進作業に先立って、トンネル空間の切羽前方の天端部に先受け工が掘進方向に対して所定間隔で、かつ周方向にアーチ状をなすように地山内に形成され、かつ、切羽21の吹き付けコンクリート22より水平方向に鏡補強工が形成されている。
長尺先受け工は、トンネルの横断面形状に沿って所定ピッチで且つ掘進方向に所定間隔毎に打設されて地山補強材となる長尺先受け鋼管(補強鋼管)26と、該補強鋼管周辺部に全長に亘って形成した固結領域27とで構成されている。補強鋼管26は切羽21の上部外周から前方の地山に向けて所定の仰角で打設され、トンネル周方向に多数設けられている。補強鋼管26の打設後、切羽21の吹き付けコンクリート22と該補強鋼管26の口元部の隙間は口元コーキング(図2の34参照)される。
【0013】
補強鋼管26は、3m程の鋼管をカプラで継ぎ足しながら12m以上のものを打設すること標準であり、かかる長尺の補強管周辺部に全長に亘って均一に固結領域27を形成する必要がある。このため、本発明では、従来技術と同様に、補強管26の全長を所定距離毎の複数の領域(図では3個の領域)Z1〜Z3に分け、それぞれのゾーンにおいて開口するような長さの異なる3本の注入管31-1,31-2,31-3(図2参照)を打設後の補強鋼管26内に差し込み、各注入管より固結材を該補強鋼管26に注入し、補強鋼管26の適所に等ピッチで形成した吐出孔より補強鋼管周辺部の領域1、領域2、領域3に該固結材を噴出させることにより固結領域27を各補強鋼管周辺部に全長に亘って形成する。
注入管31-1,31-2,31-3は図2に示すようにスペーサ32により一体に支持されて補強鋼管26へ挿入され、挿入後、該補強鋼管の口元部は管内コーキング33される。スペーサ32は図3の補強鋼管断面図に示す断面形状を備え、注入管31-1,31-2,31-3を円周方向に1200間隔で支持する。補強鋼管26の軸方向には所定ピッチで、かつ900間隔で固結材を噴出する吐出孔26aが形成されている。
【0014】
固結材としてはウレタン系注入材を使用し、補強鋼管26の口元に設けた合流管35-1,35-2,35-3でA液B液混合し、注入管31-1,31-2,31-3の先端スタティックミキサ36-1,36-2,36-3で再混合して補強管26内に注入する。A液、B液は表1に示す成分を有している。
【表1】
鏡補強工は、切羽21の吹き付けコンクリート22より所定のパターンで水平方向に打設された多数の繊維補強管28と、該補強管の周辺部に全長に亘って形成した固結領域29とで構成されている。固結領域29は、固結領域28と同様の方法で形成される。
【0015】
掘削済みのトンネル空間の切羽21より後方側には本発明の固結材注入装置50が走行台車60上に配置されている。固結材注入装置50は、A液を供給するA液フィーダ51、B液を供給するB液フィーダ52、それぞれのフィーダからA液、B液を供給され、注入ホース(圧送管)61-1,61-2,61-3、合流管35-1,35-2,35-3を介して3本の各注入管31-1,31-2,31-3に固結材を注入する3台のポンプ53-1, 53-2, 53-3、各ポンプによる各注入管への固結材注入量の制御を行う分配制御装置54を備えている。
各ポンプ53-1, 53-2, 53-3のA液吐出口とB液吐出口には注入ホース61-1,61-2,61-3の一端が接続され、該注入ホース61-1,61-2,61-3の他端は各注入管31-1,31-2,31-3に接続されている合流管35-1,35-2,35-3のA液注入口AI、B液注入口BIに接続され、各ポンプより対応する注入管に固結材を注入できるようになっている。
図4はポンプ53-1, 53-2, 53-3と分配制御装置54の外観図であり、各ポンプ53-1, 53-2, 53-3は同一の構成を備え、上方に操作盤/表示部OPDLが設けられ、下方に、A液フィーダ、B液フィーダのそれぞれからA液、B液を取り込むA液取り込み口AENT、B液取り込み口BENTおよびA液、B液を注入管側に吐き出すA液吐出口AEXT、B液吐出口BEXT及びA液用およびB液用の電磁バルブVLB1,VLB2が設けられている。
【0016】
(B)ポンプと分配制御装置の構成
図5は、本発明のポンプ53-1, 53-2, 53-3と分配制御装置54の構成図であり、ポンプ53-1, 53-2, 53-3は同一の構成を備え、図ではポンプ53-2の詳細を示している。ポンプ53-2は、A液、B液の流路を開閉する電磁バルブI、 II 53a、53b、ポンプの圧力を検出する圧力検出部53c、ポンプからの固結材の吐き出し流量を検出する流量検出部53d、操作設定用スイッチ類を備えた操作部53e、表示部53f、検出した圧力や流量(注入量)を圧力信号PLS、流量信号FLSで分配制御装置54に通知する出力部、ポンプの始動、停止制御を行う駆動制御部53hを有している。操作部53eには、ポンプの実際の圧力を設定する圧力設定部71a、固結材の吐き出し流速を設定する流速設定部71b、その他操作/設定用の種々のスイッチ71cが設けられている。なお、ポンプの目標圧力範囲HH〜HLは、設計仕様で決まっており、HH=2.5MPa(メガパスカル)、HL=0.5MPaである。
分配制御装置54は、固結材注入制御を実行するマイコン構成の処理装置54a、操作部54b、表示54cを備えている。処装置部54aは機能的に、ポンプ毎の積算注入量計算部81、判定処理部82、目標注入量決定部83、積算注入量や目標注入量などを記憶する記憶部84などを備えている。
【0017】
(C)固結材注入処理
図6は処理装置の固結材注入処理フローである。
予め、ポンプ毎に操作部53eを操作して流速(例えば5kg/min)、目標注入量Fset1〜Fset3を設定して処理装置54aに入力する。処理装置54aは各ポンプから入力された設定値を内蔵の記憶部54に保存すると共に、目標注入量Fset1〜Fset3の合計値をポンプ全体の総目標注入量Ftとして計算し、該総目標注入量Ftおよび予め設定されているポンプの目標圧力範囲HH〜HL、固結材の増量割合β(例えばβ=1.5倍)を記憶部54に保存する(ステップ101)。
かかる状態で各ポンプの始動を開始すると各ポンプ53-1、53-2、53-3は設定された流速、かつ目標圧力で固結材を対応する注入管31-1、31-2、31-3に注入を開始、継続する(ステップ102)。
分配制御装置54の処理装置54aは、各ポンプより流量信号Δf1、Δf2、Δf3と圧力信号P1,P2,P3を所定時間間隔で受信し(ステップ103)、各ポンプの積算注入量f1、f2、f3を次式
f1=f1+Δf1
f2=f2+Δf2
f3=f3+Δf3
により算出、更新する(ステップ104)。
【0018】
しかる後、全ポンプの積算注入量が目標注入量に到達したか監視し(ステップ105)、到達してなければ、各ポンプの圧力P1,P2,P3が最大許容圧力HHを越えたかチェックし(ステップ106)、越えていなければステップ102に戻り以降の処理を繰り返す。しかし、何らかの原因で最大許容圧力HHを越えたポンプが存在すれば、積算注入量が目標注入量に達していなくても安全上直ちに該ポンプを停止し、該積算注入量を記憶部に記憶する(ステップ107)。ついで、全ポンプが停止したか、すなわち、目標注入量まで注入して停止あるいは最大許容圧力HHを越えて停止のいずれかで全ポンプが停止したかチェックし(ステップ108)、全て停止していれば注入制御を終了する。
しかし、ステップ108において、作動しているポンプが存在すれば、該作動ポンプの新たな目標注入量を再計算する(ステップ109)。そして、以後、ステップ102以降の処理を行って作動中ポンプの注入量が新目標注入量となるように制御する。目標注入量を再計算する方法は後述するが、停止したポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに均等に割当て、全ポンプの総注入量が総目標注入量Ftとなるようにする。
一方、ステップ105において、全ポンプの積算注入量が目標注入量に到達すれば、目標注入量に到達したときのポンプ圧力がHL以上のポンプが存在するか調べる(ステップ110)。存在すれば、該ポンプは正常に目標注入量まで注入したと見なせるから該ポンプを停止し、かつ積算注入量を記憶部に記憶する(ステップ111)。ついで、全ポンプが停止したか、すなわち、目標注入量まで注入して停止あるいは最大許容圧力HHを越えて停止のいずれかで全ポンプが停止したかチェックし(ステップ112)、全て停止していれば注入制御を終了する。
【0019】
ステップ112において、全て停止しておらず、作動中ポンプがあれば、あるいは、ステップ110において、ポンプ圧力がHL以上のポンプが存在しなければ、ポンプ全体の総注入量が目標総注入量になっているか調べ(ステップ113)、ポンプ全体の総注入量=目標総注入量であれば注入制御を終了する。しかし、ステップ113において、ポンプ全体の総注入量が目標総注入量に到達してなければ、作動ポンプの新たな目標注入量を再計算する(ステップ109)。すなわち、ステップ113で「NO」の場合、作動中ポンプの少なくとも1台の圧力が最低必要圧力HL以下であり、該ポンプに対応する領域の地山に亀裂等があって注入材が逃げて該領域の注入量が不足したままとなっていることを意味する。そこで、ステップ109において、最低必要圧力HL以下のポンプの注入量を増加して注入量不足を補うように目標注入量を再計算し、以後、ステップ102以降の処理を行って作動中ポンプの注入量が新目標注入量となるように制御する。
目標注入量を再計算する方法は後述するが、要約すれば、それまで1回も総目標注入量を増加してない場合に限り、当初の総目標注入量Ftをβ(=1.5)倍に増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの新たな目標注入量とする。
【0020】
図7はステップ109の詳細な処理フロー、すなわち、作動中ポンプの新たな目標注入量の決定、更新処理フローである。
ポンプが許容最大圧力HHを越えて停止した場合の目標注入量の変更であるか、あるいは、作動中の全ポンプの積算注入量が目標注入量に到達したとき、圧力が最低必要圧力HL以下のポンプが少なくとも1台存在する場合の目標注入量の変更であるか、判断する(ステップ201)。
ポンプが許容最大圧力HHを越えて停止した場合の目標注入量の変更の場合には、高圧になって停止したポンプの目標注入量をFseti、現在での積算注入量をfi、作動中ポンプ台数をnとすれば、次式
α=(Fseti−fi)/n (1)
によりαを計算し(ステップ202)、各作動中ポンプの目標注入量をαづつ増加すると共に各作動中のポンプの目標注入量を次式
Fsetj=Fsetj+α ただし、j≠i (2)
により更新する(ステップ203)。これにより、ある領域の注入量が足りない場合には隣接するゾーンから固結材を補給することができる。すなわち、本発明によれば、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各領域へ注入した積算注入量を監視し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、作動中ポンプの目標注入量を増加するようにしたから、ポンプに負担をかけることなく、高圧ストップしたポンプに対応する領域に隣接するポンプより固結材を補給することができ、補強鋼管全長に渡って良好な注入が可能となる。
【0021】
一方、ステップ201において、作動中の全ポンプの積算注入量が目標注入量に到達したとき、圧力が最低必要圧力HL以下のポンプが少なくとも1台存在する場合には、総目標注入量を当初の総目標注入量Ftをβ(=1.5)倍に増加する(ステップ204)。ついで、停止中ポンプの総注入量Faを計算し、次式
Fset=(1.5×Ft−Fa)/n n:作動中ポンプ台数 (3)
によりFsetを計算し(ステップ205)、該Fsetを作動中の各ポンプの目標注入量とする(ステップ206)。これにより。ある領域で固結材が亀裂等で逃げている場合には、該領域に対応するポンプの固結材注入量を増加して注入材を補充することができ、補強鋼管全長に渡って良好な注入が可能となる。
【0022】
(D)実験結果
定量(1本の補強鋼管の全長に対しての目標総注入量)を125kg/本とし、各ポンプ53-1、53-2、53-3の目標注入量P1,P2,P3をそれぞれ
P1=42,0kg、 P2==42,0kg、 P3=41.0Kg、
増量は1回だけであり、1.5倍(β=1.5)まで(187.5Kg)増量するものとする。また、
流量は5Kg/min(状況により7〜8Kg/minまでアップ可能とする)、
HL=0.5MPa、 HH=2.5MPaであるとする。
・3台とも目標圧力の範囲内にあるときは、増量せずに目標注入量まで定量注入する。
・圧力がHHに到達して積算注入量が目標注入量に到達しないのに停止したポンプが発生したら他のポンプに(1)式で計算されたα分づつ、(2)式により目標注入量を増加し、目標総注入量は125kgに維持したまま注入を継続する。
・全作動中ポンプの積算注入量が目標注入量に到達したとき、圧力がHLに到達していないポンプが発生していれば、全体の注入量を125×1.5=187.5Kgにし、かつ(3)式により作動中ポンプの目標注入量が等しくなるように各ポンプの目標注入量を計算する。例えば、3台とも圧力がHLに到達していない場合には、187.5Kg/3を各ポンプの新目標注入量にする。又、ポンプ53-3のみが圧力がHLに到達し、ポンプ53-1、53-2の圧力がHLに到達していない場合には、(187.5−41.0)/2=73.25(kg)をポンプ53-1、53-2の新目標注入量にする。
【0023】
図8は、ポンプ3台を連動させて、図6、図7の処理フローに従って注入作業を行なった場合の各ポンプの初期の目標注入量、変更後の目標注入量、最終的な積算注入量(吐出流量)を示す図表である。なお、
(1)は、各ポンプ53-1、53-2、53-3 (P1,P2,P3という)が定量で自動停止した正常動作時の制御結果、
(2)は、P3が定量前に圧力がHH以上になって停止し、未到達分が他の2台に分配された時の制御結果、
(3)は、P2→P3の順にHH以上になって停止した場合の制御結果、
(4)は、P1,P2,P3ともに定量到達時に圧力がHLに満たず、増量した場合の制御結果、
(5)は、P1,P2が定量到達時に圧力がHLに満たず、P3のみがHL以上の場合に増量したときの制御結果、
(6)は、P1,P2が定量到達時に圧力がHLに満たず、P3のみがHL以上の場合においてP1,P2より増量注入しているとき、P2の圧力がHH以上になった場合の制御結果、
(7)は、P3がHH以上となって停止後、P1,P2がともに定量到達時に圧力がHLに満たずに増量し、しかる後P2がHH以上になって停止した場合の制御結果、
(8)は、P3がHH以上となって停止後、P1が定量到達時に圧力がHLに満たず、P2がHL以上の場合の制御結果である。
【0024】
以上、本発明によれば、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各領域へ注入した積算注入量を監視し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、作動中ポンプの目標注入量を増加するようにしたから、ポンプに負担をかけることなく、高圧ストップしたポンプに対応する領域に隣接するポンプより固結材を補給することができ、補強鋼管全長に渡って良好な注入が可能となる。
また、ある領域で固結材が亀裂等で逃げている場合には、該領域に対応するポンプの固結材注入量を増加して注入材を補充することができ、補強鋼管全長に渡って良好な注入が可能となる。
以上の説明では、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに均等に割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加した場合について説明したが、設定圧力より高圧になったポンプに隣接する作動中ポンプが1つの場合には該隣接ポンプのみに前記差分注入量を割当て、隣接する作動中ポンプが2つの場合には該隣接する2つのポンプに差分注入量を均等に割当てるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
21 切羽
22 吹付コンクリート
23 二次覆工コンクリート
24 支保工
25 吹付コンクリート
26 長尺先受け鋼管(補強鋼管)
27 固結領域
28 繊維補強管
29 固結領域
31-1,31-2,31-3 注入管
35-1,35-2,35-3 合流管
50 固結材注入装置
51 A液フィーダ
52 B液フィーダ
53-1, 53-2, 53-3 ポンプ
54 分配制御装置
54を備えている。
61-1,61-2,61-3 注入ホース
【技術分野】
【0001】
本発明は固結材注入方法及び固結材注入装置に係り、特に、地山に打設された補強管の全長周辺部を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンに対応する位置に開口を備える複数の注入管を該補強管に挿入し、各注入管を通してポンプより固結材を補強管内に注入し、該補強管に形成した吐出孔より補強管周辺部の各ゾーンに固結材を噴出させて固結領域を形成する固結材注入方法及び固結材注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルでは、これから掘削する地山の先行変位を抑制し、地山の緩み防止と施工の安全を図るべく、切羽前方の地山に長尺先受け工(フォアバリング)が施される。この長尺先受け工は、通常山岳トンネルで用いられるドリルジャンボにより、外形101.6〜114.3mm程度の小口径鋼管を専用ビットを用いて二重管方式で削孔と鋼管挿入を同時に行い、その後鋼管にあけた孔より、所定の圧力で注入材を注入し、掘削線の外周部に鋼管が入った限定的山地改良ゾーンを形成するものである。又、同様の目的で、鋼管に替わる切断可能な補強材料を、切羽の鏡部吹き付けコンクリートより水平方向に打設する鏡補強工もある。
【0003】
図9は長尺先受け工及び鏡補強工の説明図で、構築中のトンネル切羽前方の天端部付近に先受け工および鏡補強工を施した状態を示しており、(A)は縦断図、(B)は横断図である。これまでのトンネル掘削作業で露出した地山の切羽1には吹付コンクリート2が施され、その切羽1の後方トンネル空間(図で左側)には既に掘削が完了した状態で支保が形成されている。支保として、トンネル掘削断面内のトンネル空間において、地山を覆うようにして吹付コンクリート5が施され、その内部には鋼製の支保工4がトンネルの横断面形状に沿った形で、トンネル掘進方向に所定間隔毎(例えば1m毎)に建て込まれており、吹付コンクリート5の内側には二次覆工コンクリート3が打設される。
また、掘進作業に先立って、トンネル空間の切羽前方の天端部に先受け工が掘進方向に対して所定間隔で、かつ周方向にアーチ状をなすように地山内に形成され、かつ、切羽1の吹き付けコンクリート2より水平方向に鏡補強工が形成されている。
長尺先受け工は、トンネルの横断面形状に沿って所定ピッチで且つ掘進方向に所定間隔毎に打設された地山補強材となる長尺先受け鋼管(補強鋼管)6と補強鋼管周辺部に全長に亘って形成した固結領域7とで構成されている。補強鋼管6は切羽1の上部外周から前方の地山に向けて所定の仰角で打設され、トンネル周方向に多数設けられている。固結領域7は、注入管(図示せず)を補強鋼管6に差し込んで固結材を注入し、補強鋼管6の適所に形成した吐出孔より該固結材を噴出させて各補強鋼管周辺部に全長に亘って形成される。
【0004】
鏡補強工は、切羽1の吹き付けコンクリート2より所定のパターンで水平方向に打設された多数の繊維補強管8と、該補強管の周辺部に全長に亘って形成した固結領域9とで構成されている。鏡補強工はトンネルの掘削に際して掘った途端に地山が崩れてこないように補強するもので、掘削の進行と並行して切断、除去される。このため、切断しやすい繊維補強管8が使用される。
上記の長尺先受け工及び鏡補強工に用いられる補強管は、3m程の鋼管(長尺先受け工の場合)やある程度強度がある繊維補強管(鏡補強工の場合)等をカプラで継ぎ足しながら12m以上のものを打設するのが標準であり、かかる長尺の補強管周辺部に全長に亘って均一に固結領域を形成する必要がある。このため、従来技術(特許文献1参照)では、図10に示すように、補強管6の全長を何メートル毎の複数のゾーン(図では3個のゾーン)Z1〜Z3に分け、それぞれのゾーンにおいて開口するような長さの異なる3本の注入管10-1〜10-3を打設後の補強管6内に挿入し、それぞれの注入管に対してポンプP-1〜P-3から注入材を圧送し、図111に示すように各ゾーンにおいて補強管6に形成した吐出孔より該注入材を噴出させて補強鋼管周辺部に全長に亘って固結領域7を形成する手法が提案されている。尚、図10、図111において、11は地山と補強管6の口元部の隙間をコーキングする口元コーキング、12は口元部で注入管をコーキングする管内コーキング、13はパッカーである。
【0005】
ところで、従来技術の注入手法では、各ゾーンにおける注入圧が上昇しすぎないようにそれぞれのポンプを制御しながらゾーン毎に所定量の注入を行う。しかし、地山に亀裂等があって注入材が逃げているゾーンが存在する場合には、そのゾーンにおける注入量が不足したままとなってしまう。これを回避するために、作業者がそれぞれのポンプの吐出量と注入圧力を確認しながら注入を行い、圧力が低すぎるゾーンや、注入量が足りないゾーンがあればそのゾーンに対応したポンプ又は隣接するゾーンのポンプを適宜作動させ、全長に亘って良好な注入状態となるように手動でポンプを操作する必要があった。しかし、かかる方法では、熟練を要する作業者が必要となり、しかも該作業者はポンプにつきっきりになるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−303776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上から、本発明の目的は、熟練の作業者を必要とせず、自動的に全長に亘って確実、かつ良好な注入を行なえるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、地山に打設された補強管の全長周辺部を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンに対応する位置に開口を備える複数の注入管を該補強管に挿入し、各注入管を通してポンプより固結材を補強管内に注入し、該補強管に形成した吐出孔より補強管周辺部の各ゾーンに固結材を噴出させて固結領域を形成する固結材注入方法及び固結材注入装置である。
・固結材注入方法
本発明の固結材注入方法は、各ポンプの目標注入量及び全ポンプの総目標注入量を設定するステップ、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を監視するステップ、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達したときの該ポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より高い場合には正常に注入が行なわれたものとして該ポンプを停止するステップ、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加するステップ、各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とするステップ、を備えている。
【0009】
・固結材注入装置
本発明の固結材注入装置は、前記各注入管に対応して設けられ、該注入管を通して固結材を補強管内に注入するとともに、注入管に注入した固結材の注入量およびポンプの圧力を検出して注入量信号及び圧力信号を出力するポンプ、各ポンプの目標注入量及び全ポンプの総目標注入量を設定する設定部、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を計算する積算注入量計算手段、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達したときの該ポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より高い場合には正常に注入が行なわれたものとして該ポンプを停止し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の設定圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止するポンプ制御手段、(1) 所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加し、かつ、(2) 各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とする目標注入量変更手段、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熟練した作業者を必要とせず、自動的に全長に亘って確実、かつ良好な注入を行なうことができる。
本発明によれば、ポンプに負担をかけることなく、あるゾーンの注入量が足りない場合には隣接するゾーンから固結材を補給することができる。すなわち、本発明によれば、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を監視し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加するようにしたから、ポンプに負担をかけることなく、高圧ストップしたポンプに対応するゾーンに隣接するポンプより固結材を補給することができ、補強管全長に渡って良好な注入ができる。
本発明によれば、あるゾーンで固結材が亀裂等で逃げている場合には、該ゾーンに対応するポンプの固結材注入量を増加することができる。すなわち、本発明によれば、各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、総目標注入量を増加し、該総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量としたから、注入材が亀裂等により逃げているゾーンが存在する場合には該ゾーンに対応するポンプからの目標注入量を増加して注入材を補強することができ、補強管全長に渡って良好な注入ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用できるトンネル補強工の説明図である。
【図2】長尺先受け工における補強鋼管の構成図である。
【図3】補強鋼管断面図である。
【図4】ポンプと分配制御装置5の外観図である。
【図5】本発明のポンプと分配制御装置の構成図である。
【図6】処理装置の固結材注入処理フローである。
【図7】作動中ポンプの新たな目標注入量の決定、更新処理フローである。
【図8】ポンプ3台を連動させて、図6、図7の処理フローに従って注入作業を行なった場合の各ポンプの初期の目標注入量、変更後の目標注入量、最終的な積算注入量(吐出流量)を示す図表である。
【図9】長尺先受け工及び鏡補強工の説明図である。
【図10】従来技術の説明図その1である。
【図11】従来技術の説明図その2である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)トンネル補強工
図1は本発明を適用できるトンネル補強工の説明図、図2は長尺先受け工における補強鋼管の構成図であり、鏡補強工における補強管も同様の構成を備えている。
図1は、構築中のトンネルの切羽の前方天端部付近に先受け工を、切羽面に鏡補強工を施した状態を示している。それまでのトンネル掘削作業で露出した地山の切羽21には吹付コンクリート22が施され、その切羽21の後方トンネル空間には既に掘削が完了した状態で支保が形成されている。すなわち、掘削済みのトンネル空間において、地山を覆うようにして吹付コンクリート5が施され、その内部には鋼製の支保工4がトンネルの横断面形状に沿った形で、トンネル掘進方向に所定間隔毎(例えば1m毎)に建て込まれており、吹付コンクリート5の内側には二次覆工コンクリート3が打設される。また、今後の掘進作業に先立って、トンネル空間の切羽前方の天端部に先受け工が掘進方向に対して所定間隔で、かつ周方向にアーチ状をなすように地山内に形成され、かつ、切羽21の吹き付けコンクリート22より水平方向に鏡補強工が形成されている。
長尺先受け工は、トンネルの横断面形状に沿って所定ピッチで且つ掘進方向に所定間隔毎に打設されて地山補強材となる長尺先受け鋼管(補強鋼管)26と、該補強鋼管周辺部に全長に亘って形成した固結領域27とで構成されている。補強鋼管26は切羽21の上部外周から前方の地山に向けて所定の仰角で打設され、トンネル周方向に多数設けられている。補強鋼管26の打設後、切羽21の吹き付けコンクリート22と該補強鋼管26の口元部の隙間は口元コーキング(図2の34参照)される。
【0013】
補強鋼管26は、3m程の鋼管をカプラで継ぎ足しながら12m以上のものを打設すること標準であり、かかる長尺の補強管周辺部に全長に亘って均一に固結領域27を形成する必要がある。このため、本発明では、従来技術と同様に、補強管26の全長を所定距離毎の複数の領域(図では3個の領域)Z1〜Z3に分け、それぞれのゾーンにおいて開口するような長さの異なる3本の注入管31-1,31-2,31-3(図2参照)を打設後の補強鋼管26内に差し込み、各注入管より固結材を該補強鋼管26に注入し、補強鋼管26の適所に等ピッチで形成した吐出孔より補強鋼管周辺部の領域1、領域2、領域3に該固結材を噴出させることにより固結領域27を各補強鋼管周辺部に全長に亘って形成する。
注入管31-1,31-2,31-3は図2に示すようにスペーサ32により一体に支持されて補強鋼管26へ挿入され、挿入後、該補強鋼管の口元部は管内コーキング33される。スペーサ32は図3の補強鋼管断面図に示す断面形状を備え、注入管31-1,31-2,31-3を円周方向に1200間隔で支持する。補強鋼管26の軸方向には所定ピッチで、かつ900間隔で固結材を噴出する吐出孔26aが形成されている。
【0014】
固結材としてはウレタン系注入材を使用し、補強鋼管26の口元に設けた合流管35-1,35-2,35-3でA液B液混合し、注入管31-1,31-2,31-3の先端スタティックミキサ36-1,36-2,36-3で再混合して補強管26内に注入する。A液、B液は表1に示す成分を有している。
【表1】
鏡補強工は、切羽21の吹き付けコンクリート22より所定のパターンで水平方向に打設された多数の繊維補強管28と、該補強管の周辺部に全長に亘って形成した固結領域29とで構成されている。固結領域29は、固結領域28と同様の方法で形成される。
【0015】
掘削済みのトンネル空間の切羽21より後方側には本発明の固結材注入装置50が走行台車60上に配置されている。固結材注入装置50は、A液を供給するA液フィーダ51、B液を供給するB液フィーダ52、それぞれのフィーダからA液、B液を供給され、注入ホース(圧送管)61-1,61-2,61-3、合流管35-1,35-2,35-3を介して3本の各注入管31-1,31-2,31-3に固結材を注入する3台のポンプ53-1, 53-2, 53-3、各ポンプによる各注入管への固結材注入量の制御を行う分配制御装置54を備えている。
各ポンプ53-1, 53-2, 53-3のA液吐出口とB液吐出口には注入ホース61-1,61-2,61-3の一端が接続され、該注入ホース61-1,61-2,61-3の他端は各注入管31-1,31-2,31-3に接続されている合流管35-1,35-2,35-3のA液注入口AI、B液注入口BIに接続され、各ポンプより対応する注入管に固結材を注入できるようになっている。
図4はポンプ53-1, 53-2, 53-3と分配制御装置54の外観図であり、各ポンプ53-1, 53-2, 53-3は同一の構成を備え、上方に操作盤/表示部OPDLが設けられ、下方に、A液フィーダ、B液フィーダのそれぞれからA液、B液を取り込むA液取り込み口AENT、B液取り込み口BENTおよびA液、B液を注入管側に吐き出すA液吐出口AEXT、B液吐出口BEXT及びA液用およびB液用の電磁バルブVLB1,VLB2が設けられている。
【0016】
(B)ポンプと分配制御装置の構成
図5は、本発明のポンプ53-1, 53-2, 53-3と分配制御装置54の構成図であり、ポンプ53-1, 53-2, 53-3は同一の構成を備え、図ではポンプ53-2の詳細を示している。ポンプ53-2は、A液、B液の流路を開閉する電磁バルブI、 II 53a、53b、ポンプの圧力を検出する圧力検出部53c、ポンプからの固結材の吐き出し流量を検出する流量検出部53d、操作設定用スイッチ類を備えた操作部53e、表示部53f、検出した圧力や流量(注入量)を圧力信号PLS、流量信号FLSで分配制御装置54に通知する出力部、ポンプの始動、停止制御を行う駆動制御部53hを有している。操作部53eには、ポンプの実際の圧力を設定する圧力設定部71a、固結材の吐き出し流速を設定する流速設定部71b、その他操作/設定用の種々のスイッチ71cが設けられている。なお、ポンプの目標圧力範囲HH〜HLは、設計仕様で決まっており、HH=2.5MPa(メガパスカル)、HL=0.5MPaである。
分配制御装置54は、固結材注入制御を実行するマイコン構成の処理装置54a、操作部54b、表示54cを備えている。処装置部54aは機能的に、ポンプ毎の積算注入量計算部81、判定処理部82、目標注入量決定部83、積算注入量や目標注入量などを記憶する記憶部84などを備えている。
【0017】
(C)固結材注入処理
図6は処理装置の固結材注入処理フローである。
予め、ポンプ毎に操作部53eを操作して流速(例えば5kg/min)、目標注入量Fset1〜Fset3を設定して処理装置54aに入力する。処理装置54aは各ポンプから入力された設定値を内蔵の記憶部54に保存すると共に、目標注入量Fset1〜Fset3の合計値をポンプ全体の総目標注入量Ftとして計算し、該総目標注入量Ftおよび予め設定されているポンプの目標圧力範囲HH〜HL、固結材の増量割合β(例えばβ=1.5倍)を記憶部54に保存する(ステップ101)。
かかる状態で各ポンプの始動を開始すると各ポンプ53-1、53-2、53-3は設定された流速、かつ目標圧力で固結材を対応する注入管31-1、31-2、31-3に注入を開始、継続する(ステップ102)。
分配制御装置54の処理装置54aは、各ポンプより流量信号Δf1、Δf2、Δf3と圧力信号P1,P2,P3を所定時間間隔で受信し(ステップ103)、各ポンプの積算注入量f1、f2、f3を次式
f1=f1+Δf1
f2=f2+Δf2
f3=f3+Δf3
により算出、更新する(ステップ104)。
【0018】
しかる後、全ポンプの積算注入量が目標注入量に到達したか監視し(ステップ105)、到達してなければ、各ポンプの圧力P1,P2,P3が最大許容圧力HHを越えたかチェックし(ステップ106)、越えていなければステップ102に戻り以降の処理を繰り返す。しかし、何らかの原因で最大許容圧力HHを越えたポンプが存在すれば、積算注入量が目標注入量に達していなくても安全上直ちに該ポンプを停止し、該積算注入量を記憶部に記憶する(ステップ107)。ついで、全ポンプが停止したか、すなわち、目標注入量まで注入して停止あるいは最大許容圧力HHを越えて停止のいずれかで全ポンプが停止したかチェックし(ステップ108)、全て停止していれば注入制御を終了する。
しかし、ステップ108において、作動しているポンプが存在すれば、該作動ポンプの新たな目標注入量を再計算する(ステップ109)。そして、以後、ステップ102以降の処理を行って作動中ポンプの注入量が新目標注入量となるように制御する。目標注入量を再計算する方法は後述するが、停止したポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに均等に割当て、全ポンプの総注入量が総目標注入量Ftとなるようにする。
一方、ステップ105において、全ポンプの積算注入量が目標注入量に到達すれば、目標注入量に到達したときのポンプ圧力がHL以上のポンプが存在するか調べる(ステップ110)。存在すれば、該ポンプは正常に目標注入量まで注入したと見なせるから該ポンプを停止し、かつ積算注入量を記憶部に記憶する(ステップ111)。ついで、全ポンプが停止したか、すなわち、目標注入量まで注入して停止あるいは最大許容圧力HHを越えて停止のいずれかで全ポンプが停止したかチェックし(ステップ112)、全て停止していれば注入制御を終了する。
【0019】
ステップ112において、全て停止しておらず、作動中ポンプがあれば、あるいは、ステップ110において、ポンプ圧力がHL以上のポンプが存在しなければ、ポンプ全体の総注入量が目標総注入量になっているか調べ(ステップ113)、ポンプ全体の総注入量=目標総注入量であれば注入制御を終了する。しかし、ステップ113において、ポンプ全体の総注入量が目標総注入量に到達してなければ、作動ポンプの新たな目標注入量を再計算する(ステップ109)。すなわち、ステップ113で「NO」の場合、作動中ポンプの少なくとも1台の圧力が最低必要圧力HL以下であり、該ポンプに対応する領域の地山に亀裂等があって注入材が逃げて該領域の注入量が不足したままとなっていることを意味する。そこで、ステップ109において、最低必要圧力HL以下のポンプの注入量を増加して注入量不足を補うように目標注入量を再計算し、以後、ステップ102以降の処理を行って作動中ポンプの注入量が新目標注入量となるように制御する。
目標注入量を再計算する方法は後述するが、要約すれば、それまで1回も総目標注入量を増加してない場合に限り、当初の総目標注入量Ftをβ(=1.5)倍に増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの新たな目標注入量とする。
【0020】
図7はステップ109の詳細な処理フロー、すなわち、作動中ポンプの新たな目標注入量の決定、更新処理フローである。
ポンプが許容最大圧力HHを越えて停止した場合の目標注入量の変更であるか、あるいは、作動中の全ポンプの積算注入量が目標注入量に到達したとき、圧力が最低必要圧力HL以下のポンプが少なくとも1台存在する場合の目標注入量の変更であるか、判断する(ステップ201)。
ポンプが許容最大圧力HHを越えて停止した場合の目標注入量の変更の場合には、高圧になって停止したポンプの目標注入量をFseti、現在での積算注入量をfi、作動中ポンプ台数をnとすれば、次式
α=(Fseti−fi)/n (1)
によりαを計算し(ステップ202)、各作動中ポンプの目標注入量をαづつ増加すると共に各作動中のポンプの目標注入量を次式
Fsetj=Fsetj+α ただし、j≠i (2)
により更新する(ステップ203)。これにより、ある領域の注入量が足りない場合には隣接するゾーンから固結材を補給することができる。すなわち、本発明によれば、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各領域へ注入した積算注入量を監視し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、作動中ポンプの目標注入量を増加するようにしたから、ポンプに負担をかけることなく、高圧ストップしたポンプに対応する領域に隣接するポンプより固結材を補給することができ、補強鋼管全長に渡って良好な注入が可能となる。
【0021】
一方、ステップ201において、作動中の全ポンプの積算注入量が目標注入量に到達したとき、圧力が最低必要圧力HL以下のポンプが少なくとも1台存在する場合には、総目標注入量を当初の総目標注入量Ftをβ(=1.5)倍に増加する(ステップ204)。ついで、停止中ポンプの総注入量Faを計算し、次式
Fset=(1.5×Ft−Fa)/n n:作動中ポンプ台数 (3)
によりFsetを計算し(ステップ205)、該Fsetを作動中の各ポンプの目標注入量とする(ステップ206)。これにより。ある領域で固結材が亀裂等で逃げている場合には、該領域に対応するポンプの固結材注入量を増加して注入材を補充することができ、補強鋼管全長に渡って良好な注入が可能となる。
【0022】
(D)実験結果
定量(1本の補強鋼管の全長に対しての目標総注入量)を125kg/本とし、各ポンプ53-1、53-2、53-3の目標注入量P1,P2,P3をそれぞれ
P1=42,0kg、 P2==42,0kg、 P3=41.0Kg、
増量は1回だけであり、1.5倍(β=1.5)まで(187.5Kg)増量するものとする。また、
流量は5Kg/min(状況により7〜8Kg/minまでアップ可能とする)、
HL=0.5MPa、 HH=2.5MPaであるとする。
・3台とも目標圧力の範囲内にあるときは、増量せずに目標注入量まで定量注入する。
・圧力がHHに到達して積算注入量が目標注入量に到達しないのに停止したポンプが発生したら他のポンプに(1)式で計算されたα分づつ、(2)式により目標注入量を増加し、目標総注入量は125kgに維持したまま注入を継続する。
・全作動中ポンプの積算注入量が目標注入量に到達したとき、圧力がHLに到達していないポンプが発生していれば、全体の注入量を125×1.5=187.5Kgにし、かつ(3)式により作動中ポンプの目標注入量が等しくなるように各ポンプの目標注入量を計算する。例えば、3台とも圧力がHLに到達していない場合には、187.5Kg/3を各ポンプの新目標注入量にする。又、ポンプ53-3のみが圧力がHLに到達し、ポンプ53-1、53-2の圧力がHLに到達していない場合には、(187.5−41.0)/2=73.25(kg)をポンプ53-1、53-2の新目標注入量にする。
【0023】
図8は、ポンプ3台を連動させて、図6、図7の処理フローに従って注入作業を行なった場合の各ポンプの初期の目標注入量、変更後の目標注入量、最終的な積算注入量(吐出流量)を示す図表である。なお、
(1)は、各ポンプ53-1、53-2、53-3 (P1,P2,P3という)が定量で自動停止した正常動作時の制御結果、
(2)は、P3が定量前に圧力がHH以上になって停止し、未到達分が他の2台に分配された時の制御結果、
(3)は、P2→P3の順にHH以上になって停止した場合の制御結果、
(4)は、P1,P2,P3ともに定量到達時に圧力がHLに満たず、増量した場合の制御結果、
(5)は、P1,P2が定量到達時に圧力がHLに満たず、P3のみがHL以上の場合に増量したときの制御結果、
(6)は、P1,P2が定量到達時に圧力がHLに満たず、P3のみがHL以上の場合においてP1,P2より増量注入しているとき、P2の圧力がHH以上になった場合の制御結果、
(7)は、P3がHH以上となって停止後、P1,P2がともに定量到達時に圧力がHLに満たずに増量し、しかる後P2がHH以上になって停止した場合の制御結果、
(8)は、P3がHH以上となって停止後、P1が定量到達時に圧力がHLに満たず、P2がHL以上の場合の制御結果である。
【0024】
以上、本発明によれば、注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各領域へ注入した積算注入量を監視し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、作動中ポンプの目標注入量を増加するようにしたから、ポンプに負担をかけることなく、高圧ストップしたポンプに対応する領域に隣接するポンプより固結材を補給することができ、補強鋼管全長に渡って良好な注入が可能となる。
また、ある領域で固結材が亀裂等で逃げている場合には、該領域に対応するポンプの固結材注入量を増加して注入材を補充することができ、補強鋼管全長に渡って良好な注入が可能となる。
以上の説明では、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに均等に割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加した場合について説明したが、設定圧力より高圧になったポンプに隣接する作動中ポンプが1つの場合には該隣接ポンプのみに前記差分注入量を割当て、隣接する作動中ポンプが2つの場合には該隣接する2つのポンプに差分注入量を均等に割当てるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
21 切羽
22 吹付コンクリート
23 二次覆工コンクリート
24 支保工
25 吹付コンクリート
26 長尺先受け鋼管(補強鋼管)
27 固結領域
28 繊維補強管
29 固結領域
31-1,31-2,31-3 注入管
35-1,35-2,35-3 合流管
50 固結材注入装置
51 A液フィーダ
52 B液フィーダ
53-1, 53-2, 53-3 ポンプ
54 分配制御装置
54を備えている。
61-1,61-2,61-3 注入ホース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に打設された補強管の全長周辺部を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンに対応する位置に開口を備える複数の注入管を該補強管に挿入し、各注入管を通してポンプより固結材を補強管内に注入し、該補強管に形成した吐出孔より補強管周辺部の各ゾーンに固結材を噴出させて固結領域を形成する固結材注入方法において、
各ポンプの目標注入量及び全ポンプの総目標注入量を設定し、
注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を監視し、
所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達したときの該ポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より高い場合には正常に注入が行なわれたものとして該ポンプを停止し、
所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加し、
各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とする、
ことを特徴とする固結材注入方法。
【請求項2】
地山に打設された補強管の全長周辺部を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンに対応する位置に開口を備える複数の注入管を該補強管に挿入し、各注入管を通して固結材を補強管内に注入し、該補強管に形成した吐出孔より補強管周辺部の各ゾーンに固結材を噴出させて固結領域を形成する固結材注入装置において、
前記各注入管に対応して設けられ、該注入管を通して固結材を補強管内に注入するとともに、注入管に注入した固結材の注入量およびポンプの圧力を検出して注入量信号及び圧力信号を出力するポンプ、
各ポンプの目標注入量及び全ポンプの総目標注入量を設定する設定部、
注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を計算する積算量計算手段、
所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達したときの該ポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より高い場合には正常に注入が行なわれたものとして該ポンプを停止し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止するポンプ制御手段、
(1) 所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加し、かつ、(2) 各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とする目標注入量変更手段、
を備えたことを特徴とする固結材注入装置。
【請求項1】
地山に打設された補強管の全長周辺部を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンに対応する位置に開口を備える複数の注入管を該補強管に挿入し、各注入管を通してポンプより固結材を補強管内に注入し、該補強管に形成した吐出孔より補強管周辺部の各ゾーンに固結材を噴出させて固結領域を形成する固結材注入方法において、
各ポンプの目標注入量及び全ポンプの総目標注入量を設定し、
注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を監視し、
所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達したときの該ポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より高い場合には正常に注入が行なわれたものとして該ポンプを停止し、
所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止すると共に、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加し、
各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とする、
ことを特徴とする固結材注入方法。
【請求項2】
地山に打設された補強管の全長周辺部を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンに対応する位置に開口を備える複数の注入管を該補強管に挿入し、各注入管を通して固結材を補強管内に注入し、該補強管に形成した吐出孔より補強管周辺部の各ゾーンに固結材を噴出させて固結領域を形成する固結材注入装置において、
前記各注入管に対応して設けられ、該注入管を通して固結材を補強管内に注入するとともに、注入管に注入した固結材の注入量およびポンプの圧力を検出して注入量信号及び圧力信号を出力するポンプ、
各ポンプの目標注入量及び全ポンプの総目標注入量を設定する設定部、
注入時における各ポンプの圧力及び各ポンプから各ゾーンへ注入した積算注入量を計算する積算量計算手段、
所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達したときの該ポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より高い場合には正常に注入が行なわれたものとして該ポンプを停止し、所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプを直ちに停止するポンプ制御手段、
(1) 所定のポンプからの積算注入量が目標注入量に到達する前に該ポンプの圧力が高圧側の許容最大圧力より高くなったとき、該ポンプの目標注入量と積算注入量との差である差分注入量を作動中ポンプに割当てて該作動中ポンプの目標注入量を増加し、かつ、(2) 各差動中ポンプからの積算注入量がそれぞれ目標注入量に到達したとき、少なくとも1つのポンプの圧力が低圧側の必要最低圧力より低い場合、それまで総目標注入量を増加してない場合に限り、該総目標注入量を増加し、増加後の総目標注入量と停止した全ポンプの実際の総注入量との差である差分注入量を作動中ポンプ数で除算して得られる注入量を各作動中ポンプの目標注入量とする目標注入量変更手段、
を備えたことを特徴とする固結材注入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−106133(P2011−106133A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260657(P2009−260657)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】
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