説明

土壌へのマイクロバブル水供給装置

【課題】池、湖、海、河川等の土壌を浄化し、あるいは干潟、湿地帯等の土壌に活力を付与するために、マイクロバブル水を効率良く供給して、土壌に高い浄化ないし活力付与効果を与える土壌へのマイクロバブル水供給装置を提供する。
【解決手段】土壌Gの表面上を移動するトラクタTに取り付けられる土壌へのマイクロバブル水供給装置1であって、トラクタTに牽引されて土壌G中を水平状に移動しつつ、マイクロバブル水をその移動軌跡の空洞部に放出するノズル2と、トラクタTとノズル2とを連結する連結部材3と、連結部材3に設けた飛散防止板25と、を備え、飛散防止板25は、ノズル2が土壌中を移動することで形成される移動軌跡を平面視で予め設定された幅で覆う大きさに形成され、ノズル2の位置を土壌中の一定深さに保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、池、湖、河川、海等に広がる汚染された土壌を浄化し、あるいは干潟に棲息する生物に、また湿地帯に栽培ないし生育する植物等に活力を付与するために、広い面積の土壌へ溶存酸素を豊富に含む水を効率よく供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場排水や生活排水等で汚染された池、湖、海等の閉鎖水域の水質を浄化する目的で、従来より水中に空気を吹き込むいわゆるエアレーション法が実施されてきたが、その方法では供給した空気が水に溶けずに直ちに飛散してしまいがちで、水質浄化効果は必ずしも高くはなかった。それに代わる方法として、あらかじめ空気を小気泡状にして水に溶解させたマイクロバブル水、すなわち酸素を高濃度に溶存させた水を利用した方法が開発され、例えば特許文献1〜4に記載されている。
【0003】
しかし、汚染された水域は前記のいずれかの方法を利用して少しずつ浄化されるにしても、汚染地域はその水域だけでなく、その下部の土壌域にも及んでいる。そこで水底を含め汚染地域周辺の土壌に水質改善効果のあるマイクロバブル水を直接供給すれば、土壌において所定の改善効果が期待できる。
【0004】
特許文献5では、土壌の一箇所にマイクロバブル水を供給する装置を配置しているが、その装置は固定されていることから、広く周辺へとマイクロバブル水を行き渡らせることは実際上難しい。これに対し特許文献6には、土壌中へ直接マイクロバブル水の供給ノズルを差し込み、そのノズルをトラクタや船で引き回す技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−290192号公報
【特許文献2】特開2001−58142号公報
【特許文献3】特開2004−181324号公報
【特許文献4】特開2003−205228号公報
【特許文献5】特開2007−260507号公報
【特許文献6】特開2003−125649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献6に記載の技術においては、ノズルにより土壌の一点ごとに穴を掘りながらマイクロバブル水をその土壌中に供給するためにマイクロバブル水の供給が断続的となり、ノズルの上げ下げに余分の時間を必要とする。また、ノズルを牽引車によって引っ張って移動させた場合、ノズルの中途から放出されたマイクロバブル水は、ノズルに沿って鉛直方向に上昇して、上方へ開削された土壌の空洞を通って土壌表面から飛散してしまうおそれが生じる。さらに、マイクロバブル水を放出する窪みに土壌が入り込んで塞いでしまい、マイクロバブル水の放出を妨げる事態も生じえる。このような状況が重なると、土壌へのマイクロバブル水の供給効率が著しく低下してしまう。
【0007】
そこで本発明の目的は、池、湖、海、河川等の土壌を浄化し、あるいは干潟、湿地帯等の土壌に活力を付与するために、マイクロバブル水(高濃度溶存酸素水)を広い面積に効率良く供給して、土壌に高い浄化ないし活力付与効果を与える土壌へのマイクロバブル水供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る土壌へのマイクロバブル水供給装置は、土壌表面上を移動する移動手段に取り付けられる土壌へのマイクロバブル水供給装置であって、前記移動手段に牽引されて土壌中を水平状に移動しつつ、マイクロバブル水をその移動軌跡の空洞部に放出するノズルと、前記移動手段と前記ノズルとを連結する連結部材と、前記連結部材に設けた飛散防止板と、を備え、前記飛散防止板は、前記ノズルが土壌中を移動することで形成される移動軌跡を平面視で予め設定された幅で覆う大きさに形成され、前記ノズルの位置を土壌中の一定深さに保持することを特徴とする。
【0009】
かかる構成により、土壌内においてノズルの移動軌跡に空洞部を形成し、ノズルから放出されたマイクロバブル水がこの空洞部に放出されるために土壌表面に飛散することなく、かつマイクロバブル水は飛散防止板によっても遮られ、再度土壌内に戻される。これにより、マイクロバブル水の無駄な消費を抑制でき、土壌に溶存酸素水を効率的に供給することができる。また、飛散防止板はノズルの位置を土壌中の一定深さに保持し、目的とする深さの位置にマイクロバブル水を放出することができる。
【0010】
また本発明に係る土壌へのマイクロバブル水供給装置において、前記連結部材は前記移動手段に対し上下移動可能に取り付けられ、前記飛散防止板は、重力によって土壌表面に接面することにより前記ノズルの位置を土壌中の一定深さに保持することを特徴とする。
【0011】
かかる構成により土壌へのマイクロバブル水供給装置は、土壌表面に凹凸がある場合であっても、この凹凸形状に飛散防止板が追従するかたちで接面することとなり、土壌表面からのノズルの深さ位置を常に一定に保持できる。これにより、土壌の所定深さにおける溶存酸素水の供給量を均一にすることができる。
【0012】
また本発明に係る土壌へのマイクロバブル水供給装置において、土壌が軟らかいときには、前記連結部材は、前記ノズルに気体および加圧水を供給する供給パイプから構成することもできる。土壌が硬いときには、別途に強度の高い連結部材を設けてその後部に供給パイプを配してもよいし、供給パイプそのものの強度を高める構造を採用してもよい。
【0013】
かかる構成により土壌へのマイクロバブル水供給装置は、飛散防止板の取り付け対象となる連結部材として気体および加圧水を供給するパイプを利用でき、部材点数の低減および組み付け工数の簡略化が図れる。
【0014】
また本発明に係る土壌へのマイクロバブル水供給装置において、前記飛散防止板は、前記連結部材に対し上下方向に位置調節可能に取り付けられることを特徴とする。
【0015】
かかる構成により土壌へのマイクロバブル水供給装置は、土壌の質や状態に合わせて、また土地の表面形状に合わせて飛散防止板とノズルとの間隔を自由に設定できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の土壌へのマイクロバブル水供給装置によれば、飛散防止板を設けたことにより、マイクロバブル水の無駄な消費を抑制でき、土壌に溶存酸素水を効率的にかつ豊富に供給することができ、また土壌の浄化や周辺の動植物への活力付与に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る土壌へのマイクロバブル水供給装置をトラクタに取り付けた状態の側面図である。
【図2】ノズルの内部構造を示す側断面図である。
【図3】飛散防止板とノズルとの位置関係を示す平面図である。
【図4】本発明に係る土壌へのマイクロバブル水供給装置の外観斜視図である。
【図5】本発明に係る土壌へのマイクロバブル水供給装置の側面作用図である。
【図6】トラクタと支持板とを連結するリンク機構の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る土壌へのマイクロバブル水供給装置(以降、単にマイクロバブル水供給装置という)の一実施形態について図面を参照しながら説明する。マイクロバブル水供給装置1は、図1に示すように土壌Gの表面上を移動する移動手段、例えばトラクタTに取り付けられて牽引される装置であって、土壌Gに設置されたマイクロバブル水を放出するノズル2と、トラクタT(具体的にはトラクタTに連結される支持板4)とノズル2とを連結する連結部材3とを備える。
【0019】
トラクタTとしては汎用の四輪トラクタでよい。トラクタTの車体の後部には、マイクロバブル水供給装置1を支持する支持板4が連結される。支持板4は水平状の板部材であって、トラクタTにリンクバー5を介して連結している。リンクバー5の一端は車幅方向に沿う第1連結軸6を介してトラクタTに回転自在に連結し、他端は車幅方向に沿う第2連結軸7を介して支持板4に回転自在に連結される。以上により、リンクバー5は従動連結子として機能することになり、支持板4は平行移動の態様で、つまり水平姿勢を維持して上下移動が可能となる。
【0020】
なお、支持板4の後端周りには懸架部材10を介して補助輪9が取り付けられている。懸架部材10の一端および他端はそれぞれ、支持板4、補助輪9の車軸に回転可能に連結されている。この補助輪9は場合によっては省略してもよい。
【0021】
支持板4には加圧水供給源11が搭載されている。加圧水供給源11は例えば水タンクおよび送水ポンプから構成される。また、支持板4には連結部材3の上端周りが固定されている。つまり、連結部材3は、トラクタTに対して支持板4を介して上下移動可能に取り付けられた構造となり、リンクバー5の従動連結の作用によって、鉛直姿勢を維持しての上下移動が可能となる。後記するように本実施形態の連結部材3は、ノズル2に気体を供給する気体供給パイプ23と、ノズル2に加圧水を供給する加圧水供給パイプ24とからなっているが、独立した別途の連結部材であってもよい。
【0022】
図2に示すように、ノズル2は、トラクタT(図1)の進行方向を軸方向とした円筒形状の筒筐体13を有する。筒筐体13の進行方向寄りの開口部は先端部14によって閉塞され、後ろ寄りの開口部はマイクロバブル水放出口12を構成する。先端部14は、ノズル2の地中進行を容易にするために進行方向側を頂点とする円錐形を呈している。先端部14は、その基部14Aが筒筐体13の開口部に挿嵌されたうえでねじ15の締結により筒筐体13と一体化される。筒筐体13の外径寸法は、気体供給パイプ23、加圧水供給パイプ24の外径寸法よりも大きい。
【0023】
筒筐体13のマイクロバブル水放出口12周りには、両端が開口形成された内筒部16が内嵌されている。筒筐体13と内筒部16とは例えばねじ15により一体化される。そして、先端部14の基部14Aには中子17が筒筐体13と同心となるように取り付けられている。中子17は、小径軸部17Aと、小径軸部17Aの先端側に形成され、先端部14の基部14Aにねじ15Aにより締結されるフランジ17Bと、小径軸部17Aよりも大径であってかつ内筒部16よりも小径であり、小径軸部17Aの後端側に形成される大径部17Cと、を有した形状からなる。
【0024】
中子17の小径軸部17Aと筒筐体13の内壁とによって囲まれる環状の空間は加圧水供給室18を構成する。筒筐体13には、加圧水供給パイプ24と連通し、加圧水供給室18に臨む加圧水供給口19が穿設されている。一方、中子17の大径部17Cは内筒部16内に位置しており、この大径部17Cと内筒部16の内壁とによって囲まれる狭隘な環状の空間はオリフィス流路20を構成する。内筒部16の外周には気体供給パイプ23と連通するように環状の気体導入溝21が形成されている。この気体導入溝21の溝底面には、オリフィス流路20に臨むように、小孔からなる複数の気体供給口22が円周方向に間隔を空けて穿設されている。気体供給口22の孔径は例えば0.1〜1.0mm程度である。
【0025】
以上により、加圧水供給口19を介して加圧水供給室18に供給された加圧水がオリフィス流路20を通過すると、気体導入溝21内の気体が気体供給口22を通してオリフィス流路20に微細気泡状態となって吸い込まれるように流れる。これにより、微細気泡を含んだマイクロバブル水が生成され、そしてマイクロバブル水放出口12から放出される。
【0026】
以上の構成からなるノズル2は、図1に示すように連結部材3により支持板4に取り付けられる。本実施形態の連結部材3は、ノズル2に気体を供給する気体供給パイプ23と、ノズル2に加圧水を供給する加圧水供給パイプ24とからなる。気体供給パイプ23、加圧水供給パイプ24は例えば金属パイプである。気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24は、略鉛直方向に延設されており、それぞれ上端周りが支持板4に固定され、下端はノズル2に固定されている。気体供給パイプ23の上端開口は大気に臨む。
【0027】
気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24には、ノズル2の上方に位置し、図3に示すように平面視して少なくともノズル2のマイクロバブル水放出口12周りを覆う(囲う)飛散防止板25が取り付けられている。飛散防止板25は、マイクロバブル水放出口12から放出されるマイクロバブル水の土壌表面からの飛散を防止する。土壌内のノズル2の移動軌跡には空洞部が生じ、後記するようにマイクロバブル水は主にこのノズル2の後部に形成される空洞部を通って土壌に放出される。飛散防止板25は、連結部材3およびノズル2が土壌中を移動することで形成される移動軌跡を平面視で予め設定された幅で覆う大きさに形成される。平面視におけるマイクロバブル水放出口12から飛散防止板25の後縁までの距離Lはマイクロバブル水の放出速度が小さくなるあたりまでの長さ(例えば50cm程度)であり、土壌Gの前記空洞部の形成状態に合わせて適宜に設定される。
【0028】
飛散防止板25は例えば矩形平板状の部材であって、図1に示すように、その底面が土壌Gの表面に接面するように気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24に水平状に取り付けられている。飛散防止板25の前縁には、土壌Gの凹凸に対応するべく傾斜部25Aが形成されている。飛散防止板25には鋼板等が使用されるが、材質は特に限定されるものではない。
【0029】
「作用」
マイクロバブル水供給装置1の作用を説明する。先ず、干潟などの比較的軟らかい土壌Gの表面下10〜15cmあたりにノズル2を位置させる。ノズル2を土壌Gに差し込む際、土壌Gが柔らかい場合には、リンクバー5の従動連結機構を介し、土壌浄化装置1は自重により下降していく。やがて飛散防止板25が土壌Gの表面に接面すると、その表面積に基づく荷重分散の機能により、土壌浄化装置1の下降が停止し、ノズル2は一定深さに位置する。
【0030】
次いでトラクタTを走行させると、ノズル2が気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24とともに土壌G内を移動する。ノズル2が移動しているとき、土壌Gにおいてノズル2の移動直後の移動軌跡には図5に示すように空洞部が形成され、この空洞部に向けてノズル2のマイクロバブル水放出口12からマイクロバブル水が放出されることにより、空洞部周りの土壌Gに高濃度の溶存酸素水が効率的に供給される。
【0031】
ノズル2の移動軌跡によって形成される空洞部については、ノズル2の外郭形状が横向きの円柱形状であることから、空洞部は円形の略閉断面構造となり、通過直後では土壌が崩れることなく空洞部の形状を維持しやすい。したがって、マイクロバブル水はノズル2の後方に形成される空洞部全体に放出され、空洞部を形成する土壌壁全体に効率良く浸透することとなる。
一方、土壌Gは気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24によっても開削されるため、この気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24の移動軌跡にも空洞部が形成されることになるが、この空洞部は土圧により比較的早く土壌により埋まりやすい。したがって、この空洞部を介した土壌表面からのマイクロバブル水の飛散はさほど生じない。仮にマイクロバブル水が気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24の移動軌跡の空洞部を通って土壌表面から飛散しようとしても、図5に示すように、土壌Gの表面に位置する飛散防止板25の底面によって遮られ、再度土壌G内に戻される。また、マイクロバブル水の勢いによって吹き上げられる土壌も周囲に撒き散らされることなく、飛散防止板25の底面によって遮られる。
ノズル2の後方長さを適宜に長く延長し、ノズル2から噴射されるマイクロバブル水の流速を小さくすることにより、マイクロバブル水の土壌表面付近への飛散を抑制することもできる。
【0032】
また、図1において、支持板4に比較的重量物である加圧水供給源11が搭載されている場合、軟らかい土質の土壌Gにおいては連結部材3およびノズル2が重力によって土壌G内に沈み続けるおそれがあるところでも、土壌Gの表面に接面した飛散防止板25がスキー板のように荷重分散の機能を発揮して連結部材3およびノズル2の沈み込みを防止することが可能である。これにより、トラクタTの走行中、ノズル2は土壌G内において常に一定深さに保持される。場合によっては、加圧水供給源11を支持板4以外の場所、例えばトラクタTに搭載して、ホースのみを加圧水供給パイプ24に接続させることにより支持板4の軽量化を図ることも可能である。
【0033】
以上のように、連結部材3およびノズル2が土壌中を移動することで形成される移動軌跡を平面視で予め設定された幅で覆う大きさに形成され、ノズル2の位置を土壌中の一定深さに保持する飛散防止板25を連結部材3に設けることにより、マイクロバブル水放出口12から放出されるマイクロバブル水の土壌表面からの飛散、およびマイクロバブル水の勢いによって吹き上げられる土壌の飛散を防止できる。したがって、マイクロバブル水の無駄な消費が抑制され、土壌Gに溶存酸素水が効率的に供給される。また、飛散防止板25はノズル2の位置を土壌中の一定深さに保持するため、常に目的とする深さの位置にマイクロバブル水が放出される。
【0034】
飛散防止板25の取り付け対象となる連結部材3は、土壌Gの状態、特に土質によって、その材質や形状が適宜に選択される。例えば、土壌Gがヘドロ状のように比較的軟らかい場合には、本実施形態のように、気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24を連結部材3に充てることができる。また、土壌Gが硬い場合には、土壌Gの開削効率を高めるために、高い剛性を有し、例えば平断面視して進行方向側に刃先形状を呈した鋼板や角棒部材などを連結部材3に充てることができる。土壌Gの開削時の抵抗に耐える強度が確保される場合には、連結部材3として気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24を利用すれば、部材点数の低減および組み付け工数の簡略化が図れ、経済的な土壌浄化装置1となる。
【0035】
また、連結部材3をトラクタTに対し上下移動可能に取り付け、飛散防止板25を重力によって土壌表面に接面させて、ノズル2の位置を一定深さに保持する構成とすれば、土壌表面に凹凸がある場合であっても、この凹凸形状に飛散防止板25が追従するかたちで従動的に接面するので、土壌表面からのノズル2の深さ位置が常に一定となる。これにより、土壌Gの所定深さに溶存酸素水の供給量を均一にすることができる。
【0036】
次に、飛散防止板25を、連結部材3に対し上下方向に位置調節可能に取り付ける構成とすれば、飛散防止板25とノズル2との間隔を自由に設定できる。つまり、飛散防止板25を土壌Gの表面に位置させた状態で、図1に仮想線で示すようにノズル2の土壌表面下の深さを自由に設定できる。図4は、飛散防止板25の上面中央に矩形ブロック状のねじ固定座25Bを固設し、気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24に対して飛散防止板25およびねじ固定座25Bを上下にスライド可能に取り付けた構造を示しており、適宜な高さ位置調節を施したうえで、ねじ固定座25Bに螺合した締付けねじ26を締め付けることにより、飛散防止板25が気体供給パイプ23および加圧水供給パイプ24に一体に固定される。
【0037】
このように、飛散防止板25を、連結部材3に対し上下方向に位置調節可能に取り付ける構成とすれば、土壌Gの質や状態に合わせて、飛散防止板25を土壌Gの表面に位置させた状態でのノズル2の深さを迅速かつ容易に設定できる。
【0038】
以上、本発明の土壌へのマイクロバブル水供給装置1について好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の設計変更が可能である。例えばマイクロバブル水を製造して放出するノズル2は、図2の構造に限られるものではなく、特開2003−305494号公報、特開2008−173631号公報に記載されているように、筒筐体内へ加圧水を供給するに伴い、気体導入溝が負圧状態になりやすい構造を用いればよい。
【0039】
また、図6に示すように、トラクタTと支持板4との連結機構にシリンダ等のアクチュエータ8を介在させる構成にしてもよい。トラクタTには例えばアクチュエータ8の伸縮を制御する操作スイッチ(図示せず)が設けられ、運転者はこの操作スイッチを操作してアクチュエータ8を作動させ、飛散防止板25が土壌Gの表面に接面するように支持板4を適宜な高さに調節する。
この図6の例では、アクチュエータ8の作動後にそのロッドの長さを固定する方式では、トラクタTに対する支持板4の高さが固定されるため、飛散防止板25が重力によって土壌表面に接面する構造とはならないが、土壌Gが比較的硬質の場合や土壌表面が平坦面である場合などに好適に用いることができる。この図6の例によっても、飛散防止板25は、マイクロバブル水放出口12から放出されるマイクロバブル水の土壌表面からの飛散、およびマイクロバブル水の勢いによって吹き上げられる土壌の飛散を防止できる。
勿論、前記操作スイッチによるアクチュエータ8の調節後、当該アクチュエータ8を従動モードにすれば、アクチュエータ8内の流体抵抗の程度や土壌Gの質にもよるが、飛散防止板25を重力によって土壌表面に従動的に接面させることができる。
【0040】
さらに、気体供給パイプ23、加圧水供給パイプ24に、気体、加圧水の流量を調整する調整弁を設けてもよい。気体供給パイプ23に流す気体としては空気の他、酸素、オゾンを含む空気等であってもよい。さらに、エアコンプレッサにより気体供給パイプ23に加圧空気を供給する構成にしてもよい。また、トラクタT等の移動手段にGPS装置を搭載してトラクタTの位置情報を計測することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 マイクロバブル水供給装置
2 ノズル
3 連結部材
4 支持板
12 マイクロバブル水放出口
13 筒筐体
14 先端部
23 気体供給パイプ(連結部材)
24 加圧水供給パイプ(連結部材)
25 飛散防止板
T トラクタ(移動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌表面上を移動する移動手段に取り付けられる土壌へのマイクロバブル水供給装置であって、
前記移動手段に牽引されて土壌中を水平状に移動しつつ、マイクロバブル水をその移動軌跡の空洞部に放出するノズルと、
前記移動手段と前記ノズルとを連結する連結部材と、
前記連結部材に設けた飛散防止板と、
を備え、
前記飛散防止板は、前記ノズルが土壌中を移動することで形成される移動軌跡を平面視で予め設定された幅で覆う大きさに形成され、前記ノズルの位置を土壌中の一定深さに保持することを特徴とする土壌へのマイクロバブル水供給装置。
【請求項2】
前記連結部材は前記移動手段に対し上下移動可能に取り付けられ、
前記飛散防止板は、重力によって土壌表面に接面することにより前記ノズルの位置を土壌中の一定深さに保持することを特徴とする請求項1に記載の土壌へのマイクロバブル水供給装置。
【請求項3】
前記連結部材は、前記ノズルに気体および加圧水を供給する供給パイプであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の土壌へのマイクロバブル水供給装置。
【請求項4】
前記飛散防止板は、前記連結部材に対し上下方向に位置調節可能に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の土壌へのマイクロバブル水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5410(P2012−5410A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143794(P2010−143794)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】