説明

土壌改質用または殺菌用剤

【課題】土壌のpH低下効果が高く、植物への薬害が少なく、人体に安全で、刺激臭がなく、且つ降雨後においてもpH低下効果が持続する、植生地や農地などの土壌用の改質剤および土壌改質方法を提供する。また、植物への薬害が少なく、人体に安全で、刺激臭がなく、細菌を原因とする植物病害(細菌病)の防除に有効であり、病害微生物の耐性化を引き起こす心配の少ない、農園芸植物に適した殺菌用剤および殺菌方法を提供する。
【解決手段】 食品添加物として広く用いられている安全性の高い化合物である、フマル酸またはその塩を含有する土壌改質用または殺菌用剤。該土壌改質用または殺菌用剤を、土壌または植物に施用することを含む、土壌改質方法または殺菌方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改質用または殺菌用剤および土壌改質方法または殺菌方法に関する。より詳細に、本発明は、土壌のpH低下効果が高く、植物への薬害が少なく、人体に安全で、刺激臭がなく、且つ降雨後においてもpH低下効果が持続する、植生地や農地などの土壌改質用剤および土壌改質方法に関する。また、本発明は、植物への薬害が少なく、人体に安全で、刺激臭がなく、細菌を原因とする植物病害の防除に有効であり、病害微生物の耐性化を引き起こす心配の少ない、農園芸植物の殺菌用剤および殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、植物の成育には、その種に応じた最適なpH(水素イオン指数)範囲の土壌が必要である。多くの植物は、pH領域が約5.5〜約6.5の弱酸性〜中性の土壌を好む。極端な酸性土壌やアルカリ性土壌では、植物の生育が阻害される。特に、アルカリ性土壌では、鉄分の吸収が阻害される等して、芝、グラウンドカバー植物、花卉、樹木等の観賞・園芸用植物、あるいは農作物等の植物の生育障害が起きやすい。
【0003】
芝生植生地等の土壌のpHを低下させるために、クエン酸を含有する土壌改質剤が用いられている。クエン酸を含有する土壌改質剤は、pHの低下効果があり、植物への薬害が少なく、人体に安全で、刺激臭もない。しかしながら、降雨によってpH低下効果が消失するため、頻繁に施用する必要がある。
pHを低下させるための他の土壌改質剤として、無機酸やその塩を含有するものが知られている(特許文献2〜4)。しかし、硫酸のような強酸やその塩は、植物に害をもたらしやすく、条件によっては土壌を過度に酸性化する恐れもあり、環境に対する負荷が大きい。またリン酸やリン酸塩は、多量に流出すれば河川等の富栄養化を招く恐れがある。
また、小麦フスマや米糠等を土壌に混合し嫌気的発酵を行わせ、土壌のpHを低下させる方法が知られている(特許文献5)。この方法は、時間と手間を要し、植生地や農地の土壌に直接適用するのは困難である。
【0004】
また、農作物、観賞・園芸用植物、芝生、グラウンドカバー植物等の微生物による病害を予防または治癒するために、殺菌剤が用いられている。これらの殺菌剤は、不適切に多量に使用すると、環境、人畜、あるいは農作物自体に害を与える恐れがあるため、ゴルフ場の芝生植生地等では、環境に対する配慮から使用が制限されている。また、細菌を原因とする植物病害(細菌病)に対して有効な殺菌剤は多くないので、安全で効果の大きい新たな殺菌剤が求められている。さらに、多くの殺菌剤は、施用を繰り返していると、標的とする有害微生物等に耐性が発達するので、耐性発達の少ない殺菌剤も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−20638号公報
【特許文献2】特開2006−26472号公報
【特許文献3】特開2000−119651号公報
【特許文献4】特開2002−188086号公報
【特許文献5】特開2005−60608号公報
【特許文献6】特開平5−194109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、土壌のpH低下効果が高く、植物への薬害が少なく、人体に安全で、刺激臭がなく、且つ降雨後においてもpH低下効果が持続する、植生地や農地などの土壌改質用剤および土壌改質方法を提供することである。
また、本発明の課題は、植物への薬害が少なく、人体に安全で、刺激臭がなく、細菌を原因とする植物病害(細菌病)の防除に有効であり、病害微生物の耐性化を引き起こす心配の少ない、農園芸植物(特に、芝草)に適した殺菌用剤および殺菌方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
フマル酸やフマル酸ナトリウムは食品添加物として知られている。また、特許文献1には、建設現場で発生するベントナイト含有掘削残土に、フマル酸、フタル酸、安息香酸などの有機酸を添加して、pHを中性領域に調整する方法が記載されている。特許文献6には、キュウリ斑点細菌病などの作物病害の防除に、フマル酸等の有機酸の水溶液を散布する方法が提案されている。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために、有機酸によるpH調整を検討した。その結果、フマル酸またはフマル酸の塩は、土壌のpH低下効果が高く、植物への薬害が少なく、人体に安全で、刺激臭がなく、且つ降雨後においてもpH低下効果が持続することを見出した。また、フマル酸またはフマル酸の塩は、芝生に着いた菌を防除できることも見出した。本発明は、これらの知見に基づき、さらに検討を重ねることによって完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
〔1〕 フマル酸またはその塩を含有する、土壌改質用または殺菌用剤。
〔2〕 フマル酸またはその塩の含有量が0.1〜100質量%である、〔1〕に記載の土壌改質用または殺菌用剤。
〔3〕 植生地または農地に施用するための〔1〕または〔2〕に記載の土壌改質用または殺菌用剤。
〔4〕 芝生植生地に施用するための〔1〕または〔2〕に記載の土壌改質用または殺菌用剤。
〔5〕 〔1〕または〔2〕に記載の土壌改質用または殺菌用剤を、土壌または植物に施用することを含む、土壌改質方法または殺菌方法。
〔6〕 土壌が植生地または農地の土壌であり、植物が農園芸植物である、〔5〕に記載の土壌改質方法または殺菌方法。
〔7〕 土壌が芝生植生地の土壌であり、植物が芝草である、〔5〕に記載の土壌改質方法または殺菌方法。
〔8〕 芝生植生地1平方メートル当たり0.1〜10gのフマル酸またはその塩を散布することを含む、芝生植生地の土壌改質方法または殺菌方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、土壌のpH低下効果が高く、植物への薬害が少なく、人体に安全で、刺激臭がなく、且つ降雨後においてもpH低下効果が持続する。更に、細菌を原因とする植物病害(細菌病)の防除に有効であり、病害微生物の耐性化を引き起こす心配が少ない。本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、農園芸植物、特に芝草に適している。
本発明の土壌改質用または殺菌用剤を、そのまま若しくは水などで希釈して、土壌に混和、土壌表面に散布、もしくは芝生などの緑地あるいは農地に直接散布することによって、土壌のpHを効率的に調整することができる。また、本発明の土壌改質用または殺菌用剤が植物に直接散布された場合でも、芝生やグラウンドカバー植物などの園芸植物や農作物に対する薬害の心配がほとんどない。また、本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、安全性が非常に高く、且つ保存・使用量などの管理が容易である。本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、安価な原料から製造される上、効果の持続性が高く、頻繁な施用が必要ないので、コスト的にも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、フマル酸またはその塩を含有するものである。
フマル酸は食品添加物などに用いられる公知物質である。
フマル酸の塩として、好ましくはフマル酸金属塩、より好ましくはフマル酸アルカリ金属塩若しくはフマル酸アルカリ土類金属塩を挙げることができる。フマル酸アルカリ金属塩としては、フマル酸ナトリウム、フマル酸カリウム、フマル酸リチウムなどを挙げることができる。フマル酸アルカリ土類金属塩としては、フマル酸カルシウム、フマル酸マグネシウム、フマル酸バリウムなどを挙げることができる。これらのうち、フマル酸またはフマル酸ナトリウムが好ましい。
【0011】
本発明の土壌改質用または殺菌用剤には、フマル酸およびその塩以外に、本発明の効果に悪影響を与えない範囲において、各種の土質改良材、肥料、あるいは、農薬などを含有していてもよい。
土質改良材としては、土壌あるいは礫、砂、軽石、ピートモス、バーク、多孔質の無機資材(パーライト、ゼオライト、バーミキュライト、燻炭等)、ロックウール、スポンジ、合成繊維、高分子保水材、各種合成樹脂発泡体、水苔、ヤシガラ、パルプ、キレート剤、微生物などが挙げられる。これらは一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
肥料としては、堆肥、油粕、魚粉、牛糞、鶏糞等あるいはこれらを加工してなる有機資材;硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸石灰、尿素等の窒素肥料;過リン酸石灰、リン酸第一アンモニウム、熔成リン肥等のリン酸肥料;塩化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム等のカリ肥料;苦土石灰等の苦土肥料;消石灰等の石灰肥料;ケイ酸カリウム等のケイ酸肥料;ホウ酸塩等のホウ素肥料;各種無機肥料を含有してなる化成肥料;等が挙げられる。
【0013】
農薬としては、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植物成長調節剤等を挙げることができる。
殺菌剤としては、TPN、アゾキシストロビン、アミスルブロム、イソプロチオラン、イプロジオン、イミノクタジンアルベシル酸塩、イミノクタジン酢酸塩、イミベンコナゾール、エクロメゾール、オキシカルボキシ、キャプタン、クレソキシムメチル、クロロネブ、シアゾファミド、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、シメコナゾール、水和硫黄、チウラム、チオファネートメチル、チフルザミド、テトラコナゾール、テブコナゾール、トリアジメホン、トリフミゾール、トリフロキシストロビン、トリホリン、トルクロホスメチル、バリダシン、バリダマイシン、バリダマイシンA、ビテルタノール、ヒドロキシイソキサゾール、ヒドロキシイソキサゾールカリウム塩、ピリブチカルブ、フェナリモル、フェリムゾン、フルジオキソニル、フルトラニル、プロシミドン、プロパモカルブ塩酸塩、プロピコナゾール、プロピネブ、ヘキサコナゾール、ベノミル、ペンシクロン、ペンチオピラド、ボスカリド、ホセチル、ポリオキシン、ポリオキシンD、ポリオキシンD亜鉛塩、ポリカーバメイト、マンゼブ、ミクロブタミル、メタラキシル、メタラキシルM、メトコナゾール、メプロニル、水酸化第二銅、有機銅などを挙げることができる。
【0014】
殺虫剤としては、BPMC、BT、CVMP、CVP、CYAP、DDVP、DEP、MEP、MIPC、NAC、PHC、アセタミプリド、アセフェート、イソキサチオン、イミダクロプリド、インドキサカルブMP、エトフェンプロックス、カルボスルファン、クロチアニジン、クロラントラニリプロール、クロルピリホス、シハロトリン、シラフルオフェン、スタイナー・グラセライ、スタイナーネマ・カーボカプサエ、スピノサド、ダイアジノン、チアメトキサム、チオジカルブ、テブフェノシド、テフルベンズロン、トラロメトリン、ビフェントリン、ピリダフェンチオン、ピリミホスメチル、フェノブカルブ、ブルウェルア・ロウカルア、フルベンジアミド、プロチオホス、ペルメトリンマイクロカプセル、ペルメトリン、ベンスルタップ、メソミル、モノクロホス、ロウカルアなどを挙げることができる。
【0015】
除草剤としては、2,4−PA、CAT、DCBN、MCPP、MCP、MDBA、SAP、アシュラム、アミプロホスメチル、アラクロール、アラクロールマイクロカプセル、イソキサベン、イマザキンアンモニウム、イマゾスルフロン、エトキシスルフロン、エンドタール、オキザジアルギル、オキサジクロメホン、オリザリン、オルソベンカーブ、カフェンストロール、カルフェントラゾンエチル、キノクラミン、クロリムロン、ザントモナスキャンペストリス、シアナジン、シクロスルファムロン、ジチオピル、シデュロン、シノスルフロン、シンメチリン、テニルクロール、トリアジフラム、トリクロピル、トリフロキシスルフロン、ナプロパミド、ハロスルフロン、ハロスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、ピフェノックス、ピリブチカルブ、ブタミホス、フラザスルフロン、フルポキサム、プロジアミン、プロピザミド、フロラスラム、ベスロジン、ペンディメタリン、ベンフレセート、メコプロップ、メコプロップP カルシウム塩、メチルダイムロン、メトスルフロンメチル、ヨードスルフロン、リムスルフロン、レナシルなどを挙げることができる。
植物成長調節剤としては、クロレラ抽出物、混合生薬抽出物、シイタケ菌糸体抽出物、トリネキサパックエチル、パクロブトラゾール、ビスピリパックナトリウム塩、フェナリモル、フルルプリミドール、プロヘキサジオンカルシウム塩などを挙げることができる。
【0016】
本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、フマル酸またはその塩のみを含有するものであってもよいし、固体担体、液体担体、ガス状担体などの担体を含有していてもよい。
本発明に係る土壌改質用または殺菌用剤は、水和剤、粒剤、粉剤、乳剤、水溶剤、懸濁剤、顆粒水和剤、フロアブル、噴射剤などの形態に製剤化することができる。
【0017】
固体製剤にする際に使用される添加剤および担体としては、大豆粒、小麦粉などの植物性粉末;二酸化ケイ素、珪藻土、燐灰石、石こう、タルク、ベントナイト、パイロフィライト、クレー、目土などの鉱物性微粉末;安息香酸ソーダ、尿素、芒硝などの有機および無機化合物などが挙げられる。
液体製剤にする際に使用される溶剤としては、ケロシン、キシレン;ソルベントナフサなどの石油留分;シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、鉱物油、植物油、水などが挙げられる。
噴射剤に製剤化する際に使用されるガス状担体としては、ブタンガス、LPG、ジメチルエーテル、炭酸ガスなどが挙げられる。
【0018】
本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、界面活性剤を含有することができる。フマル酸またはその塩は水溶性であるが、低温あるいは高濃度条件では水に溶解しにくい場合もあり、その場合でも界面活性剤を添加して分散性を改善することにより均一で確実な効果を得ることができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体などを挙げることができる。
【0019】
本発明の土壌改質用剤によって改質させることができる土壌は、特に限定されない。土壌としては、例えば、海砂、川砂、山砂、軽石、礫、鉱物、汚泥焼成品;園芸用または農業用客土に用いる各種土壌、腐葉土、ピートモス、各種園芸用土、汚泥含有土壌などが挙げられる。この中で、海砂、園芸用または農業用客土に用いる土壌、園芸用土、または汚泥含有土壌が好ましい。
【0020】
本発明の土壌改質用剤は、アルカリ性土壌に施用することが好ましい。アルカリ性土壌としては、貝殻や珊瑚等を含む海砂の多い土壌、石灰岩を含む土壌、などの天然のアルカリ性土壌;建造物の屋上、公園、法面などのコンクリート施工部位に隣接した土壌や、セメントを用いて地盤改良を実施した土壌、土木工事に伴うアルカリ性汚泥やコンクリート廃材を含む土壌、石炭灰処分地の土壌等などの人工のアルカリ性土壌が挙げられる。また、ゴルフ場等における芝生の育成にサンドグリーン工法がしばしば用いられる。このサンドグリーン工法では、アルカリ性を呈する砂が用いられる。その他の園芸用等の客土でも、採土地によってはアルカリ性になっているものがある。
上記のような土壌は、例えば、植生地、農地、芝生植生地、緑地、牧草地、林地、住宅地、運動場、学校、公園、グラウンドカバー植生地、芝の育成を要するゴルフ場、野球場、サッカー場、競技場、競馬場、建造物の屋上、法面、コンクリート施工部位隣接地、地盤改良を実施した土地、アルカリ性汚泥やコンクリート廃材を含む土地、石炭灰処分地、緑化を要する土地、等に含まれる。本発明の土壌改質用剤は、植物への薬害が少ないため、特に植生地や農地の土壌、とりわけ、薬害の心配が無いため、芝生植生地の土壌、に適している。
【0021】
本発明の殺菌用剤は、多くの農園芸植物の病害に対して著効を有する。本発明の殺菌用剤が効果を示す農園芸植物の病害としては、例えば、
「テンサイ」の、褐斑病(Cercospora beticola)、黒根病(Aphanomyces cochlioides)、根腐病(Thanatephorus cucumeris)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris);
「ラッカセイ」の、褐斑病(Mycosphaerella arachidis、黒渋病(Mycosphaerella berkeleyi);
「キュウリ」の、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、べと病(Pseudoperonospora cubensis)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、炭そ病(Colletotrichum orbiculare)、黒星病(Cladosporium cucumerinum)、褐斑病(Corynespora cassicola)、苗立枯病(Pythium debaryanam、Rhizoctonia solani Kuhn)、斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv. Lachrymans);
【0022】
「トマト」の、灰色かび病(Botrytis cinerea)、葉かび病(Cladosporium fulvum)、疫病(Phytophthora infestans)、青枯病(Ralstonia solanacearum)、かいよう病(Clavibacter michiganensis subsp. michigaensis)、茎えそ細菌病(Pseudomonas corrugata);
「ナス」の、灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒枯病(Corynespora melongenae)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、すすかび病(Mycovellosiella nattrassii)、褐斑細菌病(Pseudomonas cichorii);
「イチゴ」の、灰色かび病(Botrytis cinerea)、うどんこ病(Sohaerotheca humuli)、炭そ病(Colletotrichum acutatum、Colletotrichum fragariae)、疫病(Phytophthora cactorum);
【0023】
「タマネギ」の、灰色腐敗病(Botrytis allii)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、白斑葉枯病(Botrytis squamosa)、べと病(Peronospora destructor);
「キャベツ」の、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、軟腐病(Erwinia carotovora)、べと病(Peronospora parasitica)、黒腐病(Xanthomonas campestris pv. campestris);
「ダイコン」の、根腐病(Rhizoctonia solani)、白さび病(Albugo macrospora)、黒斑細菌病(Pseudomonas syringae pv. Maculicola);
「インゲン」の、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、かさ枯病(Pseudomonas syringae pv. Phaseolicola);
【0024】
「りんご」の、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、黒星病(Venturia inaequalis)、モニリア病(Monilinia mali)、黒点病(Mycosphaerella pomi)、腐らん病(Valsa mali)、斑点落葉病(Alternaria mali)、赤星病(Gymnosporangium yamadae)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、炭そ病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、褐斑病(Diplocarpon mali)、すす点病(Zygophiala jamaicensis)、すす斑病(Gloeodes pomigena);
「カキ」の、うどんこ病(Phyllactinia kakicola)、炭そ病(Gloeosporium kaki)、角斑落葉病(Cercospora kaki);
【0025】
「モモ」の、灰星病(Monilinia fructicola)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、ホモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、穿孔細菌病(Xanthomonas campestris pv. pruni);
「オウトウ」の、灰星病(Monilinia fructicola)
「ブドウ」の、灰色かび病(Botrytis cinerea)、うどんこ病(Uncinula necator)、晩腐病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、べと病(Plasmopara viticola)、黒とう病(Elsinoe ampelina)、褐斑病(Pseudocercospora vitis)、黒腐病(Guignardia bidwellII);
「ナシ」の、黒星病(Venturia nashicola)、赤星病(Gymnosporangium asiaticum)、黒斑病(Alternaria kikuchiana)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、うどんこ病(Phyllactinia mali);
【0026】
「チャ」の、輪斑病(Pestalotia theae)、炭そ病(Colletotrichum theae-sinensis);
「カンキツ」の、そうか病(Elsinoe fawcetti)、青かび病(Penicillium italicum)、緑かび病(Penicillium digitatum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒点病(Diaporthe citri)、かいよう病(Xanthomonas campestris pv. Citri);
「コムギ」の、うどんこ病(Erysiphe graminis f.sp.tritici)、赤かび病(Gibberella zeae)、赤さび病(Puccinia recondita)、褐色雪腐病(Pythium iwayamai)、紅色雪腐病(Monographella nivalis)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、雪腐小粒菌核病(Typhula incarnata)、雪腐大粒菌核病(Myriosclerotinia borealis)、立枯病(Gaeumanomyces graminis);
【0027】
「オオムギ」の、斑葉病(Pyrenophora graminea)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、裸黒穂病(Ustilago tritici、U.nuda);
「イネ」の、いもち病(Pyricularia oryzae)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、ごま葉枯病(Cochliobolus niyabeanus)、苗立枯病(Pythium graminicola)、白葉枯病(Xanthomonas oryzae)、苗立枯細菌病(Burkholderia plantarii)、褐条病(Acidovorax avenae)、もみ枯細菌病(Burkholderia glumae);
「タバコ」の、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum);
「チューリップ」の、灰色かび病(Botrytis cinerea);
【0028】
「ベントグラス」の、雪腐大粒菌核病(Sclerotinia borealis)、赤焼病(Pythium aphanidermatum)、かさ枯病(Pseudomonas syringae pv. atropurpurea)、ベントグラス褐条病(Acidovorax avenae subsp. avenae);
「オーチャードグラス」の、うどんこ病(Erysiphe graminis);
「ダイズ」の、紫斑病(Cercospora kikuchii)、べと病(Peronospora Manshurica)、茎疫病(Phytophthora sojae);
「ジャガイモ」の、疫病(Phytophthore infestans);
などが挙げられる。
【0029】
本発明の殺菌用剤が特に効果的な病害としては、キュウリ斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv. Lachrymans)、トマト青枯病(Ralstonia solanacearum)、トマトかいよう病(Clavibacter michiganensis subsp. michigaensis)、トマト茎えそ細菌病(Pseudomonas corrugata)、ナス褐斑細菌病(Pseudomonas cichorii)、キャベツ軟腐病(Erwinia carotovora)、キャベツ黒腐病(Xanthomonas campestris pv. campestris)、ダイコン黒斑細菌病(Pseudomonas syringae pv. Maculicola)インゲンかさ枯病(Pseudomonas syringae pv. Phaseolicola)、モモ穿孔細菌病(Xanthomonas campestris pv. pruni)、カンキツかいよう病(Xanthomonas campestris pv. Citri)、イネ白葉枯病(Xanthomonas oryzae)、イネ苗立枯細菌病(Burkholderia plantarii)、イネもみ枯細菌病(Burkholderia glumae)、ベントグラスかさ枯病(Pseudomonas syringae pv. atropurpurea)などが挙げられる。
【0030】
本発明の殺菌用剤は、上記の細菌による病害に対して防除効果を有するが、芝草における病害の防除に対して特段に効果を有している。
芝草としては、芝生に生育させて用いられる草種であれば特に限定されない。日本芝としては、ノシバ(Zoysia japonica)、コウライシバ(Zoysia tenuifolia)、コウシュンシバ(Zoysia matrella)などが挙げられる。西洋芝としては、クリーピングベントグラス(Agrostis stolonifera)、コロニアルベントグラス(Agrostis tenuis)などのベントグラス類;ペレニアルライグラス(Lolium perenne)、イタリアンライグラス(Lolium multiflorum)などのライグラス類;クリーピングレッドフェスク(Festuca rubra var. genuina)、チューイングフェスク(Festuca rubra var. commutata)、ハードフェスク(Festuca ovina var. duriuscula)、トールフェスク(Festuca arundinacea)などのフェスク類;ケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis)などのブルーグラス類;ウィーピングラブグラス(Eragrostis curvula);バーミューダグラス(Cynodon dactylon);カーペットグラス(Axonopus affinis);センチピードグラス(Eremochloa ophiuroides)などが挙げられる。このうち、ベントグラス類が特に好ましい。本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、芝草において薬害を発生しない。
【0031】
本発明の土壌改質用または殺菌用剤中に含まれるフマル酸またはその塩の量は、好ましくは0.1〜100質量%、より好ましくは0.3〜98質量%、さらに好ましくは10〜98質量%である。
【0032】
本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、その使用法に関して特に限定されない。
本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、目的とする土壌に混和する、目的とする土壌を有する土地に散布する、または目的とする農園芸植物に散布する、ことができる。
本発明の土壌改質用または殺菌用剤が、水和剤、乳剤、フロアブル剤である場合には、水で所定の濃度に希釈して懸濁液若しくは乳濁液として使用することができる。また、本発明の土壌改質用または殺菌用剤が、粉剤や粒剤である場合には、そのまま、または、希釈して目的とする土壌や目的とする農園芸植物、特に芝草に散布して使用することができる。
本発明の土壌改質用または殺菌用剤を水で希釈して施用する場合、フマル酸またはその塩の含有量が1,000〜10,000ppmとするのが好ましく、3,000〜8,000ppmとするのがより好ましい。
【0033】
本発明の土壌改質用または殺菌用剤は、芝生またはグラウンドカバー植生地などの芝生植生地1平方メートル当たり、フマル酸またはその塩が、好ましくは0.1〜10g、より好ましくは0.5〜5g、さらに好ましくは1〜5gとなる量で施用する。
本発明の土壌改質用または殺菌用剤の施用頻度は、特に制限されない。例えば、数週間に一回程度の頻度で施用することができる。本発明の土壌改質用または殺菌用剤の施用手段は特に制限されない。例えば、粒状肥料散布機、目土散布機、播種機、加圧式散水機などを使用して、土中もしくは地表面に散布することまたは農園芸植物の葉の表面や裏面等に散布することができる。本発明の土壌改質用または殺菌用剤を、目土に混合しておくことによって、または目土散布と同時に本発明の土壌改質用または殺菌用剤を芝生またはグラウンドカバー植生地などに散布することができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
【0035】
実施例1
<土壌改質用剤の製造>
二酸化ケイ素25質量部、ラウリル硫酸ナトリウム3.75質量部、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩10質量部、リグニンスルホン酸ナトリウム塩1.25質量部、クレー60質量部およびフマル酸100質量部を均一に混合して、本発明の土壌改質用剤を製造した。
この土壌改質用剤を水道水に溶解して、フマル酸濃度3000ppmおよび6000ppmの土壌改質用剤液を作製した。土壌改質用剤液のpHはそれぞれ2.41および2.19であった。
【0036】
<試験方法>
直径10cm、高さ6cmのプラスチック製円筒を用意した。この円筒の底に、濾紙と小孔を開けた金属板を貼り付けて試験用ポットを作製した。該ポットの中に、高さ5cmまで川砂を入れた。該ポットを温室内に静置した。
【0037】
処理区: フマル酸濃度3000ppmおよび6000ppmの土壌改質用剤液を、前記ポットに、電池式簡易散布器を用いて、0.5L/m2の散布量で均一にそれぞれ散布した。
土壌改質用剤液を散布した時から20〜23時間経過時に、表面の乾燥状態にある川砂6gを採集した。採集した砂に2.5倍量の脱イオン水を加え、よく混合し、1時間静置してから、pHを測定した。
散布日の翌日から、1日1回、6分間、ミスト散水装置で、降水量12mm相当の水を散布した。各回において、水を散布した時から20〜23時間経過時に、表面の乾燥状態にある川砂6gを採集した。採集した砂に2.5倍量の脱イオン水を加え、よく混合し、1時間静置してから、pHを測定した。
上記操作を3回繰り返して、pHの平均値を求めた。
【0038】
対照区:土壌改質用剤液を水道水に替えた以外は上記と同じ操作を行ってpHの平均値を求めた。
処理区のpH平均値と対照区のpH平均値と差を計算し、土壌改質用剤のpH低下効果とその持続性を調べた。結果を表1に示す。
【0039】
比較例1
クエン酸を水道水に溶解し、クエン酸濃度3000ppmおよび6000ppmのクエン酸水溶液を作製した。該クエン酸水溶液のpHはそれぞれ2.46および2.29であった。
【0040】
<試験方法>
土壌改質用剤液の代わりに、クエン酸水溶液を用いた以外は実施例1と同じ方法で、pH低下効果とその持続性を調べた。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、本発明の土壌改質用剤を用いた処理区は、散布日(0日)のpHの低下効果が、クエン酸処理区に比較して大きいことがわかる。
本発明の土壌改質用剤を用いた処理区では、8日経過時においても、−0.89および−1.15と低下効果を維持していた。これに対して、クエン酸処理区では、日を経るごとに、pHの低下効果が減少し、8日経過時においては、−0.11と小さく、ほぼ施用前のpHに戻っていた。
以上の結果から、本発明の土壌改質用剤は、土壌のpH低下効果が高く、且つ降雨後においてもpH低下効果が持続することがわかる。
また、本発明の土壌改質用剤に含有するフマル酸またはその塩は、食品添加剤として用いられているように、人体に安全で、刺激臭がない。また、藻苔類を防除することができ、芝生、農作物および園芸植物に対する薬害が少なく、管理が容易である。
【0043】
実施例2
<殺菌用剤の製造>
二酸化ケイ素25質量部、ラウリル硫酸ナトリウム3.75質量部、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩10質量部、リグニンスルホン酸ナトリウム塩1.25質量部、クレー60質量部およびフマル酸100質量部を均一に混合して、本発明の殺菌用剤(水和剤A)を製造した。
フマル酸をフマル酸ナトリウムに置き換えた以外は水和剤Aと同じ手法で、本発明の殺菌用剤(水和剤B)を製造した。
【0044】
<試験方法>
試験区として、かさ枯病を発症しているベントグラスが植生されているゴルフ場グリーンを用いた。1区画1平方メートルで、3区画で同一試験を行った。水和剤A及び水和剤Bを、3.0g/m2、1.2g/m2、0.6g/m2、および0.3g/m2となる様に水道水にそれぞれ溶解させた。それら水溶液を、電池式噴霧器を用いて、試験開始日(1日目)および13日目に各1回、500ml/m2で散布した。試験は20日間行った。試験期間中、ベントグラスの刈り込み、潅水および追肥は行わず、降雨はなかった。
1日目、13日目および20日目に、ベントグリーンの状態を観察し、3区画各々の発病面積(%)を近似計算によって算出し、その平均値を評価に用いた。
1日目の発病面積の平均値に対する試験開始から20日目の発病面積の平均値の割合を、増加率とした。試験期間中は、随時、肉眼により薬害の有無を判定した。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
比較例2
実施例2で散布した水和剤の代わりに、同量の水道水のみを用いて、実施例2と同じ試験を行った。これを無処理区とした。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表2及び表3に示すように、水和剤Aを用いた試験区及び水和剤Bを用いた試験区は、20日目には、かさ枯病による被害は殆ど認められず、試験開始時のかさ枯病は防除されたことが判る。また、いずれの試験区でも薬害は認められなかった。それに対して、水道水を散布しただけの無処理区では、かさ枯病は防除されず、発病面積は1日目より増加していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フマル酸またはその塩を含有する、土壌改質用または殺菌用剤。
【請求項2】
フマル酸またはその塩の含有量が0.1〜100質量%である、請求項1に記載の土壌改質用または殺菌用剤。
【請求項3】
植生地または農地に施用するための請求項1または2に記載の土壌改質用または殺菌用剤。
【請求項4】
芝生植生地に施用するための請求項1または2に記載の土壌改質用または殺菌用剤。
【請求項5】
請求項1または2に記載の土壌改質用または殺菌用剤を、土壌または植物に施用することを含む、土壌改質方法または殺菌方法。
【請求項6】
土壌が植生地または農地の土壌であり、植物が農園芸植物である、請求項5に記載の土壌改質方法または殺菌方法。
【請求項7】
土壌が芝生植生地の土壌であり、植物が芝草である、請求項5に記載の土壌改質方法または殺菌方法。
【請求項8】
芝生植生地1平方メートル当たり0.1〜10gのフマル酸またはその塩を散布することを含む、芝生植生地の土壌改質方法または殺菌方法。

【公開番号】特開2013−72046(P2013−72046A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213532(P2011−213532)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【出願人】(502083174)株式会社 ニッソーグリーン (4)
【Fターム(参考)】