説明

土木・建設工事施工方法

【課題】従来の平板載荷試験装置を使用して行う地盤支持力測定方法は、大掛かりなものであって、地盤支持力の測定に長時間と高コストがかかるとともに、実際の工事の途中で地盤支持力の異常な変化が発見されたときには即座に対応できないものであった。
【解決手段】人が腰掛け状態で座れる椅子7と、ピストン2と、圧力手段3と、圧力計測手段4と、進入体5と、進入量計測手段6とを備えた、人手で持ち運べる程度の小型軽量の地盤支持力試験装置を使用することにより、地盤支持力の測定を短時間で且つ低コストで行えるようにするとともに、土木・建設工事の施工現場における地盤支持力を測定したあと又はその地盤支持力の測定をしながら土木・建設工事の施工を行うようにすることにより、工事の施工中に地盤支持力の異常を発見したときには直ちに再テスト及び対策を講じることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、土木又は建設工事の施工方法に関するものであって、さらに詳しくは、その土木又は建設工事の施工現場における地盤支持力の測定方法に特徴をもつ土木・建設工事の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば建物や擁壁等の構造物を建設したり道路を舗装したりする際には、予め当該建設予定地の地盤の支持力を計測しておくことが好ましい。
【0003】
この種の地盤支持力を計測するための装置の代表例として、例えば図5に示すような平板載荷試験装置がある。この図5に示す公知の平板載荷試験装置は、直径が30cm程度の載荷板101と、該載荷板101を押し下げる油圧ジャッキ102(載荷板101に一体化されている)と、該ジャッキ用の油圧ポンプ103と、該油圧ポンプ103の出力を計測する圧力計104と、載荷板101の沈下量を計測する沈下量計測器(一般に4個のダイヤルゲージが使用される)106とを備えている。尚、この種の平板載荷試験装置の公知例としては、例えば特開2002−296159号公報(特許文献1)に示されるものがある。
【0004】
この図5に示す公知の平板載荷試験装置は、次のようにして使用される。即ち、地盤支持力を計測すべき箇所において、地盤G上に油圧ジャッキ102付きの載荷板101を載せ、油圧ジャッキ102の上に大重量の荷重体110(例えば重機のような10t〜20t又はそれ以上の大重量でジャッキ反力を受け得るもの)を配置した状態で、油圧ポンプ103により油圧ジャッキ102を伸長させる。このとき、油圧ポンプ103の出力(油圧ジャッキ102の伸長力)を試験目的に応じて所定圧力まで高め(精密試験では、計画最大荷重を複数段階に等分して行う段階式載荷を行う場合が多い)、その所定圧力を所定時間(例えば30分間)維持させる。尚、油圧ジャッキ102により載荷板101を押し下げると該載荷板101が地表面から沈下し、そのとき油圧ジャッキ102の押し下げ力(伸長側圧力)が低下するが、所定の試験時間は圧力計104を見ながら増圧し、常時所定圧力に維持させておく。そして、所定の試験時間経過後における載荷板101の沈下量を沈下量計測器106で計測し、その計測した沈下量によって地盤支持力を算出する。尚、地盤支持力の算出は、圧力計104で計測される油圧ジャッキ102の圧力を沈下量計測器106で計測される載荷板101の沈下量で除算することによって求められる。
【0005】
尚、段階式載荷試験では、1箇所につき、第1段階荷重による試験が終了した後、順次同様に第2段階荷重〜最大計画荷重までの複数回に分けて試験を行う。従って、この場合は1箇所につき、1回約30分×試験回数だけの時間がかかり、実際には準備を含めて4〜5時間かかっているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−296159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記した従来の平板載荷試験装置では、地盤支持力を比較的精密に計測できるものの、次のような問題点を有していた。
【0008】
(1) 比較的大面積(直径が30cm程度)の載荷板101を地盤中に沈下させる必要があるために、試験装置として大掛かりなもの(例えば高出力の油圧ジャッキ関連装置)が使用されるので、設備コストが高くなる。
【0009】
(2) 試験装置が大掛かりであると、試験箇所を変更する度に試験装置全体(大重量荷重体となる重機を含む)の移動が大掛かりとなり且つセッティングも繁雑になるとともに、それらに長時間を要するので時間コストが高くなる。
【0010】
(3) 油圧ジャッキの反力受け手段として大重量荷重体(例えば重機)を使用する場合が一般的であるが、地盤支持力試験箇所が狭隘な場所では重機(大重量荷重体)の搬入が困難になることがある。
【0011】
(4) 1箇所当たりの試験時間が長くかかるので、地盤支持力試験のための人件費コストが高くつくとともに、試験のための工期が長くなる。
【0012】
(5) 地盤を掘削して数時間でも放置すると、応力開放等により、湧水や進入水、更には降雨などで地盤が緩む。特に地下水位が高い場所、温泉地帯、更に地中深く掘ると、時間経過とともに地盤が大きく変位するために、試験を実施できなくなる。
【0013】
(6) 土木・建設工事の途中において、地盤支持力の異常な変化が発見された緊急事態などにおいても、従来の平板載荷試験装置を使用して地盤支持力を測定した現場では即座に地盤支持力の再測定を行うことができず、工事を長期間ストップさせなければならない。
【0014】
尚、工事現場の地質は多種多様であり、広い面積や距離の長い工事場所等で試験箇所数を少なくすると、試験しない箇所に地盤支持力が低い場所があることがあり、後日のトラブルの原因になることがある。又、比較的小規模工事では、上記のような大掛かりな平板載荷試験を行うほどの工事費が出ない場合が多々あり、現場の地盤支持力試験を行わないまま本体工事を実施することがあるが、その場合には予期しない緊急事態に遭遇して安全性を損なうおそれがある。
【0015】
そこで、本願発明は、地盤支持力試験の精度は若干劣るものの、簡易に且つ安価でしかも短時間で地盤支持力を計測できるようにした地盤支持力試験装置を使用し、さらに工事の途中において地盤支持力の異常な変化が発見された緊急事態などにおいても即座に地盤支持力の再測定を行えるようにした、土木・建設工事の施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明の土木・建設工事施工方法では、上記課題を解決するための手段として次の構成を有する地盤支持力試験装置を使用する。
【0017】
[本願で使用する地盤支持力試験装置の構成]
本願請求項1の発明の土木・建設工事施工方法で使用する地盤支持力試験装置は、図1ないし図3に例示するように、人が腰掛け状態で座れる椅子7と、該椅子7の座部71の下面に下向きに固定された筒体21内で可動体25が上下動し得るようにしたピストン2と、該ピストン2の筒体21内に圧力流体を供給して可動体25を押し下げる作用をする圧力手段3と、該圧力手段3の圧力を計測する圧力計測手段4と、ピストン2の可動体25に間接又は直接連結されていて該可動体25の下動によって地盤中に進入する細棒状の進入体5と、該進入体5の地中進入量を計測する進入量計測手段6とを備えて構成されている。
【0018】
椅子7の座部71は、人が座れる程度の大きさで、該座部71に腰掛けた状態で作業員Mの足裏が地面にとどく程度の通常高さのものでよい。
【0019】
そして、この請求項1の発明で使用する地盤支持力試験装置では、地盤支持力試験箇所において、椅子7の座部71上に人が座り、圧力手段3により可動体25を介して進入体5を押し下げて、該進入体を地盤中に進入させたときの圧力計測手段4で計測した圧力計測量と進入量計測手段6で計測した進入計測量とから地盤支持力を算出し得るようにしたものである。
【0020】
この請求項1の発明の土木・建設工事施工方法で使用する地盤支持力試験装置では、圧力手段3(油圧ポンプ、エアーポンプ等)の圧力で進入体5が地盤中に進入する際には、該進入体5に反力(進入抵抗)が発生してピストン2の筒体21や椅子7の座部71を持ち上げるような作用が働くが、この地盤支持力試験装置に使用されている進入体5は直径が細い(10〜80mm)ので地中進入時の反力(進入抵抗)は比較的小さいものとなる。そして、この地盤支持力試験装置の使用時には椅子座部71に人が座って行われるので、進入体5が地中進入時に発生するピストン筒体21や椅子71座部に対する浮き上げ作用を人の体重で阻止できる。
【0021】
上記記載の地盤支持力試験装置(椅子を使用したもの)においては、圧力手段3は椅子7の座部71に座ったままで操作できる手動式の流体圧ポンプを使用し、且つ圧力計測手段4となる圧力計を椅子7の座部71に座った人が目視できる場所に位置させることができるようにしている一方、進入量計測手段6で計測した進入計測量の表示部を座部71の上面における該座部に座った人が目視できる位置に設けている。
【0022】
上記記載の地盤支持力試験装置に使用される流体圧ポンプとしては、油圧ポンプやエアーポンプ等の手押し式又は足踏み式のものが使用されるが、この流体圧ポンプは、椅子7の座部71に座っている人が操作できるものである。尚、この流体圧ポンプの流体吐出口とピストンの流体導入口とは、ホース32で接続されている。
【0023】
圧力計測手段4としては圧力計(ピストン内の流体圧を計測するもの)が用いられるが、この圧力計41は椅子の座部に座った人が目視できる場所に位置させることができる。
【0024】
進入量計測手段6としては、例えば柔軟性のある目盛付きテープ64を使用できる。そして、この目盛付きテープ64は、その一端部をピストン2の可動部分(例えば可動体に連続する下ロッドや進入体)に固定し、他端側を椅子座部の下面側から座部の外周寄り上面に貫通させて該座部上面に所定長さ範囲(例えば2〜5cm長さ)だけ露出させた後に座部下方に垂れ下げて設置する。尚、目盛付きテープ64の垂れ下げ側の下端部には重り66を取付けて、該目盛付きテープ64を常時緊張状態に維持させるとよい。この場合は、目盛付きテープ64における椅子座部の外周寄り上面に露出している部分が進入計測量の表示部となる。そして、作業員が椅子座部に座るときには、該表示部が股の間に位置するように座ることで、該表示部を椅子座部に座った状態で目視できる。
【0025】
この目盛付きテープ64を使用した進入量計測手段6では、ピストン2の可動部分が上下動することにより、目盛付きテープ64が押し引き移動せしめられ、表示部に露出している目盛変化を読み取ることで進入体5の地中進入量を計測できるようになっている。
【0026】
上記記載の地盤支持力試験装置では、椅子座部71に座っている作業員が一人で、圧力手段3(流体圧ポンプ)の操作と、圧力計測量(圧力計)の読み取りと、進入量計測手段による進入計測量の読み取りとを行うことができる。
【0027】
また、上記記載の地盤支持力試験装置においては、進入体5として、可動体25に間接又は直接連結される直棒部51の下端に該直棒部51の太さよりやや大きい外径の大径部52を設けたものを使用している。なお、この大径部52は、適宜の外径のものを使用でき、しかも必要に応じて外径の異なるものに付け替えることができる。
【0028】
ところで、本願発明の土木・建設工事施工方法で使用する地盤支持力試験装置は、細棒状の進入体5を地盤中に進入させることで地盤支持力を計測し得るようにしたものであるが、進入体5が全長に亘って同直径の棒状体であれば、進入体5が地盤中に進入していくときに進入体5(棒状体)の外側面も地盤土壌に接触することになる。このように進入体5の地中進入時に進入体5外側面が地盤土壌に接触すると、進入体5の外側面部分でも摩擦抵抗が生じるが、この進入体5の外側面部分で生じる摩擦抵抗は地盤の土質やそのときの含水量によって大きく変わり、地盤の状況(土質や含水量)によっては進入体5に同じ圧力を加えても進入体5の進入量にバラツキが生じることになる。
【0029】
そこで、本願発明の土木・建設工事施工方法で使用する地盤支持力試験装置では、進入体5として直棒部51の下端に大径部52を設けたものを使用することで、進入体5の地中進入時に進入体5下端部52(大径部)で進入体直棒部51の直径より大きい内径の穴を形成しながら進入させることができるようにし、それによって進入体直棒部51に地盤土壌との摩擦抵抗が発生しないようにするとよい。即ち、進入体5の地中進入時には、進入体5下端の大径部52のみが抵抗を受けるようにすると好適である。
【0030】
本願発明の土木・建設工事施工方法は、上掲説明したような小型で且つ1人の作業員で運搬し得る軽重量の地盤支持力試験装置を使用して土木・建設工事の施工現場における地盤支持力を測定したあと又はその地盤支持力の測定をしながら土木・建設工事の施工を行うことを特徴とするものである。
【0031】
尚、本願発明の土木・建設工事施工方法で使用される地盤支持力試験装置は、圧力手段3として椅子7の座部71に座ったままで操作できる手動式の流体圧ポンプ31Aを使用し、且つ圧力計測手段4となる圧力計41を椅子7の座部71に座った人が目視できる場所に位置させることができるようにしている一方、進入量計測手段6で計測した進入計測量の表示部63を前記座部71の上面における該座部71に座った人が目視できる位置に設けていることが推奨される。
【0032】
さらに、進入体5としては、可動体25に間接又は直接連結される直棒部51の下端に該直棒部51の太さよりやや大きい外径の大径部52を設けたものを使用していることが推奨される。
【発明の効果】
【0033】
本願発明の土木・建設工事施工方法は、次のような効果を有している。
【0034】
(1) 土木又は建設施工用地の地盤支持力を測定するために使用する地盤支持力試験装置が小型軽量であるため、用地内の地盤支持力測定ポイントが比較的多数であっても短時間でかつ低コストで地盤支持力テストを行うことができる。
【0035】
(2) 土木・建設工事の施工中に地盤支持力の異常を発見した際にも直ちに異常事態に対応して緊急に地盤支持力テストを行うことができ、本体工事と地盤支持力の測定作業とを併行して行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本願発明の土木・建設工事施工方法で使用する地盤支持力試験装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す地盤支持力試験装置の平面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1に示す地盤支持力試験装置を使用して得た載荷圧力−沈下曲線のグラフである。
【図5】従来公知の平板載荷試験装置の説明図である。
【実施例】
【0037】
続いて図面を参照して本願発明の好適な実施例を説明すると、図1〜図3には本願発明の実施例にかかる土木・建設工事施工方法で使用する地盤支持力試験装置の一例が示されている。
【0038】
この実施例で使用する地盤支持力試験装置は、作業者Mが腰掛けるための椅子7を有しており、この椅子7の座部71の下面中央部には、ピストン2が下向き姿勢で固定されている。
【0039】
この実施例では、ピストン2としてエアージャッキ(他の実施例では油圧ジャッキでも可)が使用されている。このエアージャッキ2は、図3に示すように、筒体21内にエアー圧で押し下げられる可動体25を有し、該可動体25の下面に下ロッド27を下向きに取付けている。尚、下ロッド27の下端は、筒体21の下面から所定長さだけ突出している。
【0040】
ピストン2の下ロッド27の下端部には、細棒状の進入体5が下向きに連結されている。この進入体5は、直棒部51の下端部に大径部52を設けたものが使用されている。尚、この進入体5の下ロッド27に対する連結構造は、ネジによる螺合を採用できる。
【0041】
このピストン2には、後述するように圧力手段3から圧力流体が供給される。この実施例では、圧力手段3として手押し式のエアーポンプ31Aが採用されている。このエアーポンプ31Aは、ハンドル38Aを人力で押下げることで圧縮エアーを吐出させることができる。
【0042】
エアーポンプ31Aのエアー吐出口とエアージャッキ2のエアー導入口とはホース32で接続されていて、エアーポンプ31Aを作動させると圧縮エアーがホース32を介してエアージャッキ2の伸長側室に導入されるようになっている。
【0043】
尚、ピストン2に油圧ジャッキを使用した場合には、エアーポンプ31Aに代えて足踏み式の油圧ポンプが採用される。
【0044】
圧力計測手段4としては、エアージャッキ2内のエアー圧を計測する圧力計41が採用されている。この圧力計41は、この実施例ではエアーポンプ31Aの近傍に設置されていて、該エアーポンプ31Aを操作する状態で該圧力計41を見ることができるようになっている。尚、足踏み式の流体圧ポンプを使用した場合にも、圧力計41を椅子座部に座った人が見ることができる位置に設ける。
【0045】
この実施例では、進入体5の地盤G中への進入量を計測するための進入量計測手段6として、柔軟性のある目盛付きテープ64を使用している。この目盛付きテープ64は、その一端部64aをピストン2の下ロッド27に取付けた取付台27aに固定し、他端側を椅子座部71の下面側から座部71の外周寄り部分に設けた2つの長穴74,74を通して座部上面に所定長さ範囲(例えば2〜5cm長さ)だけ露出させた後に座部下方に垂れ下げて設置している。目盛付きテープ64の垂れ下げ側端部64bには重り66を取付けて、該目盛付きテープ64を常時緊張状態に維持させている。この場合は、目盛付きテープ64における椅子座部71の外周寄り上面に露出している部分が進入体5の進入計測量の表示部63となる。
【0046】
尚、目盛付きテープ64の表示部63には、指針65(図2)が設けられている。そして、この表示部63は、椅子7を地面上に置いた状態で進入体5の下端(大径部52下面)が地面に接した時点の表示値を起点(「0」点)とする。
【0047】
椅子座部71の上面には、上記表示部63の近傍に水準器9を設けている。この水準器9は、椅子7を地面上に設置したときに、座部71が水平(ピストン2が鉛直)になっているかどうかを確認するためのものである。
【0048】
この実施例の土木・建設工事施工方法で使用する地盤支持力試験装置は、次のようにして使用される。まず、地盤支持力試験箇所の地面G上に椅子7を置く(座部71を水平にする)が、該椅子7を地面G上に置いた状態では、進入体5の下端(大径部52下面)が地面から若干高さだけ離間していてもよい。
【0049】
次に、作業員Mがエアーポンプ31Aを手に持って椅子座部71に座るが、図1及び図2に示すように進入量計測手段6の表示部63が作業員Mの股の間に位置するように座る。そして、エアーポンプ31Aを図1に鎖線図示(符号31A′)するように、股の間で座部71の上面に縦向き姿勢で載せると作業の準備が完了する。
【0050】
この作業準備完了状態では、椅子7に座っている作業員Mが、エアーポンプ31Aを操作(ハンドル38Aの操作)でき、圧力計41及び進入量計測手段6の表示部63をそれぞれ目視できる状態にある。
【0051】
次に、エアーポンプ31Aを操作してエアーをピストン2に供給すると、可動体25、下ロッド27、進入体5が下動して、該進入体5の下端(大径部52)が地面上に接地するが、この時点の目盛付きテープ64の目盛を起点(「0点」)として記録する。
【0052】
そして、所定低圧力から高圧力側に複数段階(10〜20段階)に分けてエアーポンプ31Aを操作していくが、エアーポンプ31Aの操作量に応じた圧力が圧力計41に表示される。また、エアーポンプ31Aを操作すると、そのエアー圧により可動体25を押し下げていく。このとき進入体5に反力(進入抵抗)が発生してピストン筒体21や椅子座部71を持ち上げるような作用が働くが、椅子座部71に人Mが座っているので、進入体5が地中進入時に発生する椅子座部71の浮き上げ作用を人の体重で十分阻止できる。
【0053】
そして、エアーポンプ31Aに加えた圧力(圧力計41に表示)と、そのときの進入体5の進入計測量(目盛付きテープ64の目盛)を読み取り、図4のグラフに示すように、特定の載荷圧力Pに対する進入量(沈下量S)を記録し、順次エアーポンプ31Aに加える圧力を変化させながら、そのときどきの載荷圧力Pに対する進入量(沈下量S)を順次記録していく。なお、エアーポンプ31Aに加える圧力変化、及び進入量の変化は、それぞれ椅子座部71に座っている作業員一人で読み取ることができる。
【0054】
このように、この実施例の地盤支持力試験装置を使用すると、地盤支持力試験の各作業(エアーポンプ31Aの操作、圧力計41及び目盛付きテープ64の各読み取り)を一人の作業員で行うことができ、人件費コストを低減できる。
【0055】
図1〜図3に示す地盤支持力試験装置を使用して地盤支持力テストを行う方法の一例として、土木・建設工事の実際の施工方法の一例を説明すると、先ずある施工現場において前記地盤支持力試験装置(重量約8kg程度)を設置する。このとき椅子7の座部71の下に取付けられているピストン筒体21が真下(鉛直方向)に向くように測定地点の地ならしをする。
【0056】
1個所のテスト地点では、先ず進入体5の下端を接地させ、続いて圧力手段3(エアーポンプ31A)を手動操作して圧力計測手段4の数値(載荷圧力)Pと進入量計測手段6(表示部63)の数値(進入体5の沈下量)Sをデータシートに記入する。
【0057】
このP−Sデータの採取は1つの測定地点ごとに載荷圧力が最大圧力値(Pmax)に達するまで行う。なお、1つの測定地点において、載荷圧力を代えて複数回(10〜20回)測定することで、測定精度を向上させることができる。
【0058】
続いてこのP−Sデータを図4に例示するような「載荷圧力−沈下量曲線」としてグラフ化するとその測定地点での地盤支持力特性が目視化でき、特に沈下量が急増し始めたポイントでの載荷圧力(Pm)がその現場での限界支持力であると判定することができる。
【0059】
通常の場合、1回のP−Sデータの採取は2〜3分程度で行うことができ、1つの工事現場で10個所の測定を行ったとしても全体として30分程度で地盤支持力テストを終了することができる。
【0060】
又、この地盤支持力テストは、土木・建設工事の施工途中で地盤支持力の異常(支持力不足)が発見されたような場合にでも、直ちにその場で再実施したり、更に掘削したりする(例えば硬い地盤を捜す)ことができ、緊急事態にも柔軟に対応することができる。
【符号の説明】
【0061】
2はピストン、3は圧力手段、4は圧力計測手段、5は進入体、6は進入量計測手段、7は椅子、21はピストン筒体、25はピストン可動体、31Aはエアーポンプ、51は直棒部、52は大径部、63は表示部、64は目盛付きテープ、65は指針、71は座部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が腰掛け状態で座れる椅子(7)と、該椅子(7)の座部(71)の下面に下向きに固定された筒体(21)内で可動体(25)が上下動し得るようにしたピストン(2)と、該ピストン(2)の筒体(21)内に圧力流体を供給して可動体(25)を押し下げる作用をする圧力手段(3)と、該圧力手段(3)の圧力を計測する圧力計測手段(4)と、前記ピストン(2)の可動体(25)に間接又は直接連結されていて該可動体(25)の下動によって地盤(G)中に進入する細棒状の進入体(5)と、該進入体(5)の地中進入量を計測する進入量計測手段(6)とを備え、地盤支持力試験箇所において、前記椅子(7)の座部(71)上に人が座り、前記圧力手段(3)により可動体(25)を介して進入体(5)を押し下げて、該進入体(5)を地盤(G)中に進入させたときの前記圧力計測手段(4)で計測した圧力計測量と前記進入量計測手段(6)で計測した進入計測量とから地盤支持力を算出し得るようにした地盤支持力試験装置を使用して、土木・建設工事の施工現場における地盤支持力を測定したあと又はその地盤支持力の測定をしながら土木・建設工事の施工を行うことを特徴とする土木・建設工事施工方法。
【請求項2】
請求項1において、地盤支持力試験装置として、圧力手段(3)として椅子(7)の座部(71)に座ったままで操作できる手動式の流体圧ポンプ(31A)を使用し、且つ圧力計測手段(4)となる圧力計(41)を椅子(7)の座部(71)に座った人が目視できる場所に位置させることができるようにしている一方、進入量計測手段(6)で計測した進入計測量の表示部(63)を前記座部(71)の上面における該座部(71)に座った人が目視できる位置に設けたものを使用して行うことを特徴とする土木・建設工事施工方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、進入体(5)として、可動体(25)に間接又は直接連結される直棒部(51)の下端に該直棒部(51)の太さ(D)よりやや大きい外径(E)の大径部(52)を設けたものを使用して行うことを特徴とする土木・建設工事施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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