土留壁構築方法
【課題】 掘削孔壁が崩壊し難く、作業性のよい土留壁構築方法を提供する。
【解決手段】 所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程a1、各掘削孔に固化材を投入した状態で第2所定深度まで掘削して第1混合土を作製する第2掘削工程a2、排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、各掘削孔に第2混合土を投入する埋め戻し工程a3、所定時間放置して第1〜2混合土を固化させる固化工程a4によって第1区画を形成する第1区画形成工事Aと、各掘削孔の間に、第1掘削工程b1、第2掘削工程b2、埋め戻し工程b3、固化工程b4を行って第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事Bを行い改質土壌壁を複数作製する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある土留壁構築方法。
【解決手段】 所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程a1、各掘削孔に固化材を投入した状態で第2所定深度まで掘削して第1混合土を作製する第2掘削工程a2、排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、各掘削孔に第2混合土を投入する埋め戻し工程a3、所定時間放置して第1〜2混合土を固化させる固化工程a4によって第1区画を形成する第1区画形成工事Aと、各掘削孔の間に、第1掘削工程b1、第2掘削工程b2、埋め戻し工程b3、固化工程b4を行って第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事Bを行い改質土壌壁を複数作製する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある土留壁構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に地盤の土圧を支持する土留め壁を構築する土留壁構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土留壁は、地盤を掘削して形成された溝の側面や斜面(掘削孔壁)の土壌が崩壊するのを防止するために構築される。従来、この種の土留壁としては、例えば、鋼製の矢板等を掘削孔壁に接するように打設して構築し、さらに、隣接する矢板間に複数の横矢板を設置して掘削孔壁の被覆を行う。この土留壁により掘削孔壁に掛かる土圧を支えて掘削孔壁の崩壊を防止していた。そして、矢板が対面して打設してある場合には、状況により、対面する矢板同士を支えるように矢板間に切梁を架設して、矢板(土留壁)を確実に支えていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−111225号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の土留壁構築方法によれば、例えば、地盤中に比較的大きな石(例えば20cm以上)があると、矢板の打設が困難となり、施工効率が低下する。このような地盤に無理に矢板を打設しようとすると、矢板が損傷してうまく打設できない上に、矢板の再利用が困難となる。従って、地盤の地質によって、施工が困難となる場合があった。
【0005】
矢板打設後に切梁を矢板間に架設すると、切梁より深い位置では、小型の作業機械を使用したり、場合によっては人力による作業となるため、施工性が悪くなっていた。
このような施工性の悪化を回避するため、広い作業空間を確保しようとすれば、矢板や切梁の資材が大きくなり、土留壁構築のコストや各資材搬入のコスト等が嵩んでいた。資材が大きくなると、その分大型機械が必要となり、大型機械の稼動に耐えるように施工現場の地盤を整備する必要があった。
【0006】
また、鋼矢板等の土留壁は仮設構造物であるため、掘削孔壁間の空隙内での作業が終了すると撤去する必要がある。その場合に、親杭等の縦方向に設置した矢板を抜き取って撤去するのは比較的容易である。しかし、親杭間に亘って設けた横矢板を撤去する場合には、横矢板を取り外しながら、掘削孔壁間の空隙の埋め戻しを行わなければならない。そして、この横矢板を撤去すると同時に、矢板撤去部分に掛かる土圧を支える構造物が無くなる為、掘削孔壁が崩壊する虞があり、撤去作業は危険を伴っていた。
一方、矢板や切梁の撤去作業を行わずに、そのまま埋め戻すと、矢板や切梁の再利用ができなくなるために土留壁構築のコストが嵩む上に、埋め戻した土地を再利用する際には矢板や切梁が障害となっていた。
さらに、矢板や切梁等を使用して土留壁を構築する場合は、矢板や切梁等の資材を保管するスペースが必要となるため、狭い工事現場では保管スペースの確保が困難であった。
【0007】
従って、本発明の目的は、掘削孔壁が崩壊し難く、作業性のよい土留壁構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る土留壁構築方法の第一特徴構成は、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程と、前記第1掘削工程により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程と、前記第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、前記第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、前記第2混合土を投入する埋め戻し工程と、前記埋め戻し工程後、所定時間放置して前記第1〜2混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記第1掘削工程、前記第2掘削工程、前記埋め戻し工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製し、前記改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における前記被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある点にある。
【0009】
本構成による改質土壌壁を構築するには、従来の方法のように、地盤を連続的に掘削して掘削溝を形成するのではなく、ある大きさの掘削孔を堀り、そこから、所定間隔を設けて複数の掘削孔(第1掘削孔)を形成する。この第1掘削孔は、第1所定深度まで掘り下げ、排土して形成する(第1掘削工程)。第1所定深度は、地盤の地質によっても異なるが、掘り下げても掘削孔壁が崩壊しない深度を適宜設定する。この時、各第1掘削孔の掘削孔壁の幅は、従来の掘削溝の掘削孔壁の長さに比べて当然に短い。このため、掘削孔壁の単位面積あたりの領域が支える土圧は、いわゆるアーチ効果によって小さくなる。従って、各第1掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少なくなる。
そして、各第1掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で、第2掘削工程を行う。
【0010】
第2掘削工程では、第1掘削工程で第1所定深度まで掘削した掘削孔を、さらに第2所定深度まで掘削する。この時、各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌とが攪拌、混合され、第1混合土が作製できる。この固化材と土壌との混合は、各掘削孔内で行うため、各掘削孔壁にかかる土圧を第1混合土で支えることができる。これにより、各掘削孔の掘削孔壁の崩壊を防止できる。
【0011】
そして、第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、第2混合土を投入する埋め戻し工程を実施する。さらに、埋め戻し工程を行った後、所定時間放置して第1〜2混合土を固化させる固化工程によって第1区画を形成する第1区画形成工事を完了する。この時点で、各第1掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土が硬化することにより硬質な改質土壌が構築される。
【0012】
次に、第2区画形成工事を行う。この第2区画形成工事は、まず、第1区画を形成する際に掘削した各第1掘削孔の間の地盤(つまり、第1掘削工程で掘削していない部分)において、第1区画に連続した掘削孔(第2掘削孔)を掘る掘削工程を行う。この工程は、第1掘削工程と同様の方法である。この時、第2掘削孔の掘削孔壁にかかる土圧の一部は、硬質に改質した第1区画の掘削孔壁によって分担される(アーチ効果)。そのため、第2掘削孔の掘削孔壁が支えるべき単位面積あたりの土圧は小さくなる。従って、各第2掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞も少なくなる。
そして、各第2掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で、第2掘削工程、埋め戻し工程、及び、固化工程を行い、各第2掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土により硬質な改質土壌を構築(第2区画)できる。これら工程は、第1区画形成工事で行ったそれぞれの工程と同様の方法である。
【0013】
このように、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で改質土壌壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる。
【0014】
また、第2区画形成工事が、第1区画形成工事の後に、第1区画に連続した第2区画を形成するものであれば、連続して地盤の土壌改質を行える。土壌は、固化材によって硬質なものとなる。従って、この改質土壌により、当該改質土壌に接する周囲の土圧を確実に支えることができるため、強固な土留壁を構築することができる。
【0015】
また、本構成では矢板を土留壁構築に使用しないため、地盤の地質に左右されることなく広範な地質条件に適用できる上に、資材を使用しない分、土留壁構築のコスト低減に繋がる。また、資材を使用する方法が抱えていた他の問題、例えば、施工効率の悪さ、運搬コストの増大、資材の撤去、資材や土地の再利用、資材の保管スペース等の作業性についての問題を解決することができる。
【0016】
さらに、大掛かりな掘削溝を掘る必要がないため、施工現場の地盤の整備も不要となる。また、従来必要であった大型掘削機械が不要となり、小型の掘削機械のみで事足りるため、狭い土地でも容易に施工することができる。
【0017】
さらに、本構成では改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築する。
【0018】
例えば、地上に家屋や既設ブロック積み壁等、或いは、地下に埋設管等の構造物が近接している場所に基礎構築地を構築することがある。この基礎構築地は、複数の改質土壌壁からなる土留壁で囲まれている。このとき、基礎構築地における構造物側改質土壌壁では、地盤の土圧を十分支持できるだけの壁幅を確保するのが困難となる場合がある。
つまり、十分な壁幅を有していない構造物側改質土壌壁単独では、基礎構築地内に構造物側改質土壌壁に隣接する作業空間を掘削形成したときに地盤の土圧を支えきれず、崩壊する虞があり危険である。
【0019】
そのため、構造物側改質土壌壁を被支持改質壁とし、当該構造物側改質土壌壁と隣接する他の改質土壌壁を支持改質壁となるように土留壁を構築する。
これにより、被支持改質壁(構造物側改質土壌壁)は支持改質壁(他の改質土壌壁)によって支持される。そして、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成したとき、被支持改質壁には、構造物の重量や地盤の土圧が作業空間側への倒れ荷重となって作用する。本構成では、被支持改質壁は支持改質壁によって支持される構成であるため、この倒れ荷重の一部は支持改質壁に伝達され、その結果、この倒れ荷重を、被支持改質壁と支持改質壁とによって支持できる。
従って、十分な壁幅を確保できない狭い場所であっても、被支持改質壁と支持改質壁とを設けて土留壁を構築することにより、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後において、被支持改質壁が倒れるのを未然に防止できるため、安全に作業を遂行できる。
【0020】
本発明に係る土留壁構築方法の第二特徴構成は、地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程と、地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程と、前記掘削工程後、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記固化材載置工程、前記掘削工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製し、前記改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における前記被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある点にある。
【0021】
本構成による改質土壌壁は、まず、地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程を行う。次に地盤を掘削する工程を行うが、本構成による改質土壌壁は、従来の方法のように、地盤を連続した溝状に掘削して掘削溝を形成するのではなく、ある大きさの掘削孔を堀り、そこから、所定間隔を設けて、つまり、掘削しない部分を残しつつ複数の掘削孔(第1掘削孔)を形成する。この第1掘削孔は、第1所定深度まで掘り下げて形成する(掘削工程)。第1所定深度は、掘り下げても掘削孔壁が崩壊しない深度を適宜設定する。掘削した土壌は、排土せずに第1掘削孔の中に留まるようにして固化材と土壌とを攪拌、混合し混合土を作製する。そのため、各掘削孔壁にかかる土圧を前記混合土で支えることができ、各第1掘削孔の掘削孔壁の崩壊を防止することができる。
そして、各第1掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程を行って第1区画を形成する第1区画形成工事を完了する。この時点で、各第1掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土が硬化することにより硬質な改質土壌が構築される。
【0022】
次に、第2区画形成工事を行う。この第2区画形成工事は、まず、第1区画を形成する際に掘削した各第1掘削孔の間の地盤、つまり、掘削工程で掘削していない部分において、固化材載置工程を行い、第1区画に連続した掘削孔(第2掘削孔)を形成する掘削工程を行う。この時、第2掘削孔の掘削孔壁にかかる土圧は、硬質に改質した第1区画の掘削孔壁によって分担される(アーチ効果)。そのため、第2掘削孔の掘削孔壁が支えるべき単位面積あたりの土圧は小さくなる。従って、各第2掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞も少なくなる。
この状態で固化工程を行い、第2区画を形成する。第2区画形成工事で行った各工程は、第1区画形成工事で行ったそれぞれの工程と同様の方法である。
【0023】
このように、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で改質土壌壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる。
【0024】
また、第2区画形成工事が、第1区画形成工事の後に、第1区画に連続した第2区画を形成するものであれば、連続して地盤の土壌改質を行える。土壌は、固化材によって硬質なものとなる。従って、この改質土壌により、当該改質土壌に接する周囲の土圧を確実に支えることができるため、強固な土留壁を構築することができる。
【0025】
また、本構成では矢板を土留壁構築に使用しないため、地盤の地質に左右されることなく広範な地質条件に適用できる上に、資材を使用しない分、土留壁構築のコスト低減に繋がる。また、資材を使用する方法が抱えていた他の問題、例えば、施工効率の悪さ、運搬コストの増大、資材の撤去、資材や土地の再利用、資材の保管スペース等の作業性についての問題を解決することができる。
【0026】
さらに、大掛かりな掘削溝を掘る必要がないため、施工現場の地盤の整備も不要となる。また、従来必要であった大型掘削機械が不要となり、小型の掘削機械のみで事足りるため、狭い土地でも容易に施工することができる。
【0027】
さらに、本構成では改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築する。
【0028】
これは第一特徴構成で説明したように、構造物が近接している場所に、複数の改質土壌壁からなる土留壁を構築する場合、構造物側改質土壌壁を被支持改質壁とし、当該構造物側改質土壌壁と隣接する他の改質土壌壁を支持改質壁となるように土留壁を構築する。これにより、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成したとき、被支持改質壁に作用する倒れ荷重の一部は支持改質壁に伝達され、その結果、この倒れ荷重を、被支持改質壁と支持改質壁とによって支持できる。
従って、十分な壁幅を確保できない狭い場所であっても、被支持改質壁と支持改質壁とを設けて土留壁を構築することにより、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後において、被支持改質壁が倒れるのを未然に防止できるため、安全に作業を遂行できる。
【0029】
本発明に係る土留壁構築方法の第三特徴構成は少なくとも前記被支持改質壁において、前記固化工程の前に、各掘削孔に親杭部材を埋め込む点にある。
【0030】
上記第三特徴構成によれば、固化工程後には、改質土壌壁に親杭部材が強固に組み込まれる。そのため、十分な壁幅を確保できていない被支持改質壁に親杭部材が組み込まれていると、親杭部材が骨材となって被支持改質壁の剛性が増す。そのため、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成する際、被支持改質壁に倒れ荷重が作用したときでも、被支持改質壁が崩壊するのを未然に防止できる。そのため、安全性が増した状態で作業を行うことができる。
【0031】
また、親杭部材は単に掘削孔内に埋め込むだけで、杭打ち手段で地盤に打ち込まない場合は、杭打ち手段等の大掛かりな機材を使用しない分、土留壁構築のコスト低減に繋がる。そして、杭打ち手段で地盤に打ち込む場合と比べて親杭部材の長さは短いものが適用できるため、親杭部材に要するコストも低減できる。
【0032】
本発明に係る土留壁構築方法の第四特徴構成は、前記親杭部材を埋め込む際に、前記親杭部材の下端を地盤に根入れする点にある。
【0033】
上記第四特徴構成によれば、親杭部材の下端は改質土壌壁より深い地盤位置まで到達できる。そのため、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成する作業を土留壁の深さまで行ったとしても、親杭部材の下端が改質土壌壁より深い地盤位置まで到達しているため、親杭部材の下端が倒れ荷重に対して被支持改質壁を確実に支持できる構成となり、被支持改質壁の剛性が増した状態で被支持改質壁が倒れるのを確実に防止できる。そのため、安全性が更に増した状態で作業を行うことができる。
【0034】
本発明に係る土留壁構築方法の第五特徴構成は、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後、前記親杭部材と当接する横架部材を設ける点にある。
【0035】
横架部材の設置は、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成するとき、或いは、作業空間を掘削形成した後に行う。つまり、当該作業空間を掘削形成するときには、被支持改質壁面が露出する。このとき、被支持改質壁の作業空間側への倒れ荷重が発生する。そのため、上記第五特徴構成によれば、この倒れ荷重を、親杭部材と当接する横架部材で支えることにより、被支持改質壁の倒れ荷重をより確実に支持できる構成となり、被支持改質壁の崩壊をより確実に防止できる。そのため、安全性が一層増した状態で作業を行うことができる。
【0036】
本発明に係る土留壁構築方法の第六特徴構成は、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程と、前記第1掘削工程により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程と、前記第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、前記第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、前記第2混合土を投入する埋め戻し工程と、前記埋め戻し工程後、所定時間放置して前記第1〜2混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記第1掘削工程、前記第2掘削工程、前記埋め戻し工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するとき、前記第2掘削工程において前記掘削孔を前記第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と前記掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように前記第2所定深度を設定してある点にある。
【0037】
本構成における改質土壌壁は、上述した第一特徴構成と同様の第1区画形成工事および第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するため、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で改質土壌壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる構成となる。
【0038】
ここで、のり面を造成する地盤が、軟弱あるいは崩壊性地質である場合、又は、保護工事中に集中豪雨等にあった場合、地盤が崩壊して保護工事に支障を来たすことが考えられるため、安全にのり面を造成することが求められる。
そのため、本構成では、第1区画形成工事および第2区画形成工事における第2掘削工程において掘削孔を第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第2所定深度を設定することにより、当該改質土壌壁をのり面の造成に適用することが可能となる。
ここで、本明細書における「のり面の想定崩壊面」とは、ある土質において、特定の傾斜角度条件(例えば1:1.5)を越えた時点でのり面の崩壊が発生することが想定される角度を有する面のことを示す。
【0039】
のり面の造成に当該改質土壌壁を適用するに際して、掘削孔の深度が重要となる。そのため、本構成では、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第2所定深度を設定している。
ここで、当該交差面の面積が小さい場合、想定崩壊面と掘削孔との交差割合が小さくなり、のり面の土壌が斜面に沿って滑る力が、のり面の土壌がその場に留まる力より大きくなるため崩壊し易くなる。一方、当該交差面の面積が大きい場合、想定崩壊面と掘削孔との交差割合が大きくなり、掘削孔に形成した改質土壌壁が、崩壊しない土壌に係止されるため、崩壊し難くなる。
従って、のり面の崩壊を未然に防止するため、のり面が崩壊しない判断基準となる当該交差面の面積を所定値として設定する。そして、当該交差面の面積が当該所定値以上であれば、のり面の崩壊の虞は殆ど無くなり、安全に造成を行うことができる。
【0040】
本発明に係る土留壁構築方法の第七特徴構成は、地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程と、地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程と、前記掘削工程後、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記固化材載置工程、前記掘削工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するとき、前記掘削工程において前記掘削孔を前記第1所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と前記掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように前記第1所定深度を設定してある点にある。
【0041】
本構成における改質土壌壁は、上述した第二特徴構成と同様の第1区画形成工事および第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するため、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で改質土壌壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる構成となる。
【0042】
ここで、のり面を造成する地盤が、軟弱あるいは崩壊性地質である場合、又は、保護工事中に集中豪雨等にあった場合、地盤が崩壊して保護工事に支障を来たすことが考えられるため、安全にのり面を造成することが求められる。
そのため、本構成では、第1区画形成工事および第2区画形成工事における掘削工程において掘削孔を第1所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第1所定深度を設定することにより、当該改質土壌壁をのり面の造成に適用することが可能となる。
これは、のり面の造成に当該改質土壌壁を適用するに際して、掘削孔の深度が重要となるため、本構成では、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第1所定深度を設定している。
【0043】
従って、上記第六特徴構成で説明したように、のり面の崩壊を未然に防止するため、のり面が崩壊しない判断基準となる当該交差面の面積を所定値として設定する。そして、当該交差面の面積が所定値以上であれば、のり面の崩壊の虞は殆ど無くなり、安全に造成を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の土留壁は、地盤を掘削して改質土壌壁を構築することにより形成される。そして、この改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築する。
改質土壌壁の構築手法については、本実施例では以下の(1)〜(2)に示す方法を例示する。
【0045】
(1)改質土壌壁構築(第1の実施形態)
図1に、改質土壌壁構築における第1の実施形態の概要を示す。
つまり、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程a1と、第1掘削工程a1により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程a2と、第1掘削工程a1時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、第2掘削工程a2が完了した後の掘削孔に、第2混合土を投入する埋め戻し工程a3と、埋め戻し工程a3後、所定時間放置して第1〜2混合土を固化させる固化工程a4とによって第1区画を形成する第1区画形成工事A、および、第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、第1掘削工程b1、第2掘削工程b2、埋め戻し工程b3、及び、固化工程b4を行って第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事Bを行うことにより地盤に改質土壌壁を作製する。
以下に各工程について詳述する。
【0046】
1−1.第1区画形成工事
1−1−1.第1掘削工程
第1掘削工程a1は、地盤の表層部において、掘削孔を第1所定深度まで掘削する工程である。この時、所定間隔を設けて複数の掘削孔を設けるようにする。つまり、地盤を連続した溝状に掘削するのではなく、ある大きさ(例えば平面視で長方形)の掘削孔を堀り、そこから、所定間隔離れた位置に掘削孔を掘る。所定間隔離れた複数の掘削孔は、例えば、直線状に配置する。そして、この掘削孔は深さが第1所定深度になった時点で掘削を一時中断する。第1所定深度は、掘り下げても掘削孔壁が崩壊しない深度を適宜設定する。掘削した土壌は、掘削孔より排出(排土)して、掘削孔の近傍の地盤上に載置しておく。
【0047】
1−1−2.第2掘削工程
第2掘削工程a2は、第1掘削工程a1で第1所定深度まで掘削した掘削孔を、第2所定深度まで掘削する工程である。
この工程においては、第1掘削工程a1で第1所定深度まで掘削した掘削孔に、例えば、土壌を硬質に改質する固化材を投入する。固化材が各掘削孔の底部に堆積した状態で第2所定深度(>第1所定深度)まで掘削する。この時、掘削した土壌は、排土せずに、掘削孔の中に留まるようにする。つまり、第2所定深度まで掘削することにより、固化材と土壌とが攪拌、混合され、これにより、固化材と土壌とが混合した第1混合土を作製する。
【0048】
固化材は、土壌に混入させて土壌を硬質に改質するものであればよい。例えば、セメント、レディーミクストモルタル等が使用できる。レディーミクストモルタルを用いた場合は、土壌との攪拌、混合時間が短くなることが期待される。そのため、掘削土壌の地質に応じて固化剤は適宜選択するのが好ましい。
固化材の土壌に対する混入率は、例えば、体積比率で4〜30%程度とする。
【0049】
1−1−3.埋め戻し工程
埋め戻し工程a3は、第1掘削工程a1によって排土された土壌に固化材を添加して攪拌、混合した第2混合土を作製し、第2掘削工程a2が完了した後の掘削孔に、第2混合土を投入する工程である。本実施例では、第1掘削工程a1によって排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製した後に、各掘削孔に第2混合土を投入する場合を例示しているが、第1掘削工程a1で排土された土壌と固化材との混合を、第2掘削工程a2が完了した後の掘削孔に投入するとき、或いは、投入後に混合することも可能である。
【0050】
1−1−4.固化工程
固化工程a4は、埋め戻し工程a3の後、所定時間放置して第1〜2混合土を固化させる工程である。土壌に添加した固化材は土壌中の水分と反応し、所定時間放置後には固化する。これにより、第1〜2混合土は固化するため、土壌が硬質となって改質が行われる。
【0051】
このように、所定間隔を設けてある複数の掘削孔の土壌を改質した第1区画を形成する。
【0052】
1−2.第2区画形成工事
第2区画形成工事Bは、第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、第1掘削工程b1、第2掘削工程b2、埋め戻し工程b3、及び、固化工程b4を行う。これら工程は、それぞれ、第1区画形成工事Aにおける第1掘削工程a1、第2掘削工程a2、埋め戻し工程a3及び固化工程a4と同様の処理を行う。このようにして第2区画を形成する。
【0053】
この時、第2区画は、第1区画に連続するように位置決めする。つまり、第2区画は、第1区画形成工事Aにて固化した第1区画の改質土壌に隣接するように、或いは、第1区画の改質土壌の端部を削るように位置決めする。
【0054】
このように、土留壁構築方法に係る第2区画形成工事Bが、第1区画形成工事Aの後に第1区画に連続した第2区画を形成するものであれば、連続して地盤の土壌改質を行える。土壌は、固化材によって硬質なものとなる。従って、この改質土壌により、当該改質土壌に接する周囲の土圧を確実に支えることができるため、強固な土留壁を構築することができる。
【0055】
上述した改質土壌壁は、従来の方法のように、地盤を連続した溝状に掘削して掘削溝を形成するのではなく、ある大きさの掘削孔を堀り、そこから、所定間隔を設けて掘削孔(第1掘削孔)を形成する。この時、各第1掘削孔の掘削孔壁の幅は、従来の掘削溝の掘削孔壁の長さに比べて当然に短い。このため、掘削孔壁の単位面積あたりの領域が支える土圧は、いわゆるアーチ効果によって小さくなる。従って、各第1掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少なくなる。
そして、この状態で、各第1掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土により硬質な改質土壌を構築(第1区画)できる。
【0056】
第2区画形成工事Bでは、前記第1区画を形成する際に掘削した各第1掘削孔の間の地盤において、第1区画に連続した掘削孔(第2掘削孔)を掘る。この時、第2掘削孔の掘削孔壁にかかる土圧の一部は、硬質に改質した第1区画の掘削孔壁によって分担される(アーチ効果)。そのため、第2掘削孔の掘削孔壁が支えるべき単位面積あたりの土圧は小さくなる。従って、各第2掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞も少なくなる。
そして、この状態で、各第2掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土により硬質な改質土壌を構築(第2区画)できる。
【0057】
このように、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で土留壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる。
【0058】
〔実施例1〕
以下に、改質土壌壁構築における第1の実施形態の実施例について説明する。
河川の近傍に橋脚の基礎を構築する場合、河川の近傍の地盤を掘削して橋脚の基礎構築地とする。この基礎構築地の地盤を掘削すると、地盤を掘削して形成された溝の側面や斜面(掘削孔壁)等から地下水が多量に湧くことが考えられる。このように地下水が湧くと掘削孔壁や地盤は軟弱となり、特に掘削孔壁は、軟弱になると土圧を支えきれずに崩壊する虞があり、危険である。そのため、安全に作業できる工事空間を確保するためには、軟弱になった掘削孔壁が崩壊しないようにする必要がある。その一例として、土留壁を掘削孔壁に接するように構築し、この土留壁で土圧を支えることが考えられる。
一方、河川の近傍の土壌は、一般に、玉石を多量に含有することが多く、このような土壌では、土留壁を構築するのに使用する矢板等を打設するのは困難である。
【0059】
しかし、上述した改質土壌壁は、玉石が多い地盤や軟弱な地盤等において構築可能である。図3〜9に、改質土壌壁を構築する一連の手順について詳述する(図1参照)。
【0060】
まず、基礎構築地の地盤の掘削の先立ち、例えば、以下のステップを行うのが好ましい。
つまり、現地地盤の地質を調べ、土留壁として適切な形状、及び、必要な強度等を設計する。この時、構築された土留壁を撤去しない場合は、土留壁の強度は、道路管理者などから存置許可が得られるような強度に設計する。
また、固化材を使用するにあたり、構築された土留壁からの六価クロム溶出量が、例えば、法令に定める規定量以下となる配合となるように混入率を設計する。必要であれば、六価クロム溶出試験を行う。
このようなステップを行ったのち、以下の手順により、土留壁の構築を行う。
【0061】
1−1.第1区画形成工事A
1−1−1.第1掘削工程a1
本実施例における改質土壌壁の構築方法は、地盤を連続して掘削するのではなく、図3(a)に示したように、基礎構築地Yの一辺において、上面視で長方形(例えば、4.0m × 2.5m)の区画A1を掘削した後、所定間隔(例えば、3.0m)をおいて他の長方形の区画A2を掘削する。そして、同様にある程度の間隔をおいて他の長方形の区画A3を掘削する。掘削は、バックホー等の比較的小型の掘削手段を使用するのが好ましい。
【0062】
掘削は、第1所定深度H1(例えば、2.5m)まで行う。この時、掘削した土壌Sは、排土して各区画A1〜3の近傍の地盤上にバックホーBHにより載置する(図4参照)。
前記第1所定深度H1を2.5m程度としたが、土壌にもよるが、この程度であれば一般に土留孔壁は崩壊しない深度である。
【0063】
1−1−2.第2掘削工程a2
第1所定深度H1まで掘削した各区画A1〜3内に固化材Kとしてセメントを投入する。セメントK投入後、第2所定深度H2(例えば、3.5m:前記第1所定深度より深い)まで掘削する。この時、掘削と同時に前記セメントKと土壌とを攪拌して混合し、第1混合土S1を作製する(図5〜6参照)。
【0064】
セメントKの土壌に対する混入率は、例えば、体積比率で4〜10%程度とする。
尚、固化材Kとしてレディーミクストモルタルを用いることもできる。その場合には、土壌の体積に対して30%程度まで混入する。
【0065】
1−1−3.埋め戻し工程a3
第1所定深度まで掘削した時に排土した土壌SにセメントKを添加して攪拌混合し、第2混合土S2を作製する。この第2混合土S2を各区画A1〜3内に投入して埋め戻しを行う(図7参照)。
【0066】
1−1−4.固化工程a4
土壌とセメントKの混合物である前記第1混合土S1及び第2混合土S2は、土壌中の水分と反応して所定時間(例えば24時間)放置後には固化する。つまり、所定時間放置後には、各区画A1〜3内の土壌は固化するため、土壌の改質が行われたことになる。この時、改質土壌の圧縮強度は、10〜数10kgf/cm2程度になっていると好ましい。
以上により、第1区画形成工事を完了する。
【0067】
1−2.第2区画形成工事B
各区画A1〜3の土壌が硬化した後、区画A1と区画A2の間の区画B1、及び、区画A2と区画A3の間の区画B2の掘削を行うことにより第2区画形成工事Bを開始する(図3(b)参照)。
【0068】
区画B1〜2の掘削は、第1区画形成工事で行った各区画A1〜3の掘削と同様に、第1掘削工程b1、第2掘削工程b2、埋め戻し工程b3、及び、固化工程b4を行う。
この時、区画B1〜2の掘削時には、区画A1〜3の端部をオーバーラップしながら行うと、掘削残しが起こらない。そのため、第1区画形成工事A及び第2区画形成工事Bを行うことにより、連続した地盤の土壌改質ができる。つまり、土壌の改質は、固化材を使用していることにより土壌を硬質に改質できるため、強固な土留壁を構築することができる。
【0069】
このように、基礎構築地Yの一辺を、区画A1〜3、及び、区画B1〜2のように交互に掘削して土壌改質を行う。基礎構築地Yの残りの3辺についても、同様の方法で土壌改質を行うことが可能であり、これにより、長方形の基礎構築地Yの外周を土壌改質して土留壁Wを形成できる。そして、基礎構築地Yにおいて、土留壁Wで囲まれた土壌を掘削して排土する。この時、土留壁Wの一部壁面を適宜整形しながら掘削する(図8〜9参照)。
【0070】
このようにして構築された土留壁Wは、切梁等を架設しないため、作業空間を良好に確保できる。また、この土留壁は止水性も良好であるため、土留壁Wで囲まれた基礎構築地Yが地下水位以下であっても、地下水が土留壁Wから湧き出すことは殆ど無くなる。そのため、良好な施工空間を確保できる。
【0071】
(2)改質土壌壁構築(第2の実施形態)
図2に、改質土壌壁構築における第2の実施形態の概要を示す。
第1区画及び第2区画を形成するのに、上述した第1の実施の形態では2段階の掘削を行うのに対して、本実施の形態では1段階の掘削のみを行うものである。
つまり、地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程α1と、地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程α2と、掘削工程α2後、所定時間放置して混合土を固化させる固化工程α3とによって第1区画を形成する第1区画形成工事A’、および、第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、固化材載置工程β1、掘削工程β2、及び、固化工程β3を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事B’を行うことにより地盤に土質改良壁を作製する。
以下に各工程について詳述する。
【0072】
2−1.第1区画形成工事
2−1−1.固化材載置工程
固化材載置工程α1は、掘削孔を形成する地盤の表面に、例えば、土壌を硬質に改質する固化材を載置する工程である。
固化材は、第1の実施の形態と同様のものを使用する。
【0073】
2−1−2.掘削工程
掘削工程α2は、地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部において、掘削孔を第1所定深度まで掘削する工程である。この時、所定間隔を設けて複数の掘削孔を設けるようにする。つまり、地盤を連続した溝状に掘削するのではなく、ある大きさ(例えば平面視で長方形)の掘削孔を堀り、そこから、所定間隔離れた位置に掘削孔を掘る。
所定間隔離れた複数の掘削孔は、例えば、直線状に配置する。
地盤の表面に固化材を載置した状態で第1所定深度まで掘削する。この時、掘削した土壌は、排土せずに、掘削孔の中に留まるようにする。つまり、第1所定深度まで掘削することにより、固化材と土壌とが攪拌、混合され、これにより、固化材と土壌とが混合した混合土を作製する。
【0074】
2−1−3.固化工程
固化工程α3は、掘削工程α2後、所定時間放置して混合土を固化させる工程である。
このように、所定間隔を設けてある複数の掘削孔の土壌を改質した第1区画を形成する。
【0075】
2−2.第2区画形成工事
第2区画形成工事B’は、第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、固化材載置工程β1、掘削工程β2、及び、固化工程β3を行う。これら工程は、それぞれ、第1区画形成工事A’における固化材載置工程α1、掘削工程α2、固化工程α3と、同様の処理を行う。このようにして第2区画を形成する。
この時、第2区画は、第1の実施の形態と同様に、第1区画に連続するように位置決めする。
【0076】
本実施の形態は、掘削する深さは第1所定深度までであるため、上述した改質土壌壁構築における第1の実施の形態に比べて浅い掘削孔を形成する場合に有効である。
【0077】
〔実施例2〕
上記実施例1では、第2所定深度H2(例えば、3.5m)まで掘削する必要がある時の実施例を示したが、掘削の深さが第2所定深度H2より浅い第1所定深度H1(例えば、2.5m)でよい場合は、以下の方法により改質土壌壁を行う。(図2参照)
【0078】
2−1.第1区画形成工事A’
2−1−1.固化材載置工程α1
上面視で長方形(例えば、4.0m × 2.5m)の区画A1’〜3’を決定後(図3(a)参照)、掘削しない状態でこの区画A1’〜3’の地盤表面に固化材K(セメント)を載置する(図10参照)。
【0079】
2−1−2.掘削工程α2
セメントKを地盤表面に載置した状態で第1所定深度H1までバックホーBHにより掘削する。この時、掘削と同時にセメントKと土壌とを攪拌して混合し、混合土S3を作製する。セメントKと土壌との混合は、前記区画A1’〜3’より排土せずに各区画の中で行う(図11参照)。
【0080】
2−1−3.固化工程α3
土壌とセメントKの混合物である前記混合土S3は、土壌中の水分と反応して所定時間経過後には固化する。
以上により、第1区画形成工事A’を完了する。
【0081】
2−2.第2区画形成工事B’
各区画A1’〜3’の土壌が硬化した後、区画A1’と区画A2’の間の区画B1’、及び、区画A2’と区画A3’の間の区画B2’の掘削を行うことにより第2区画形成工事B’を開始する(図3(b)参照)。
【0082】
区画B1’〜2’の掘削は、第1区画形成工事で行った各区画A1’〜3’の掘削と同様に、固化材載置工程β1、掘削工程β2、及び、固化工程β3を行う。
この時、区画B1〜2の掘削時には、区画A1’〜3’の端部をオーバーラップしながら行う。
【0083】
このように、基礎構築地Yの一辺を、区画A1’〜3’、及び、区画B1’〜2’のように交互に掘削して土壌改質を行う。基礎構築地Yの残りの3辺についても、同様の方法で土壌改質を行うことが可能であり、これにより、長方形の基礎構築地Yの外周を土壌改質して土留壁Wを形成できる。そして、基礎構築地Yにおいて、土留壁Wで囲まれた土壌を掘削して排土する。この時、土留壁Wの一部を適宜整形しながら掘削する(図12参照)。
【0084】
(3)改良土壌壁を適用した土留壁構築
上述したように、本発明の土留壁は、上記(1)〜(2)で記載した改質土壌壁を複数構築し、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築する。
【0085】
図13〜14に示したように、地上に家屋や既設ブロック積み壁等、或いは、地下に埋設管等の構造物Cが近接している場所に基礎構築地Yを構築することがある。この基礎構築地Yは、上面視矩形で各辺を改質土壌壁wとした土留壁Wで囲まれている。つまり、土留壁Wは、複数の改質土壌壁w(w1〜w4)から構成してある。
本実施形態における改質土壌壁w1〜w4の構築順序は、例えば、図13に示したように区画1−1〜1−2(改質土壌壁w3)、区画2(改質土壌壁w2)、区画3−1〜3−4(改質土壌壁w3)、区画4−1〜4−5(改質土壌壁w2)、区画5−1〜5−5(改質土壌壁w1)の順序で行う。改質土壌壁w4は最後に構築する。このように、改質土壌壁w2および改質土壌壁w3は一度に構築していない。これは、例えば、区画2(改質土壌壁w2)と区画4−1〜4−5(改質土壌壁w2)とを分割して構築することで、改良する土壌領域をできるだけ小さくできるため、掘削孔壁の崩壊をより確実に防止することができる。
【0086】
ここで、基礎構築地Yにおける構造物C側改質土壌壁w1は、地盤の土圧を十分支持できるだけの壁幅を確保するのが困難となる場合がある。例えば、構造物C側改質土壌壁w1の壁幅L1を、他の改質土壌壁w2〜w3の壁幅L2、L3の半分以下しか確保できないとき、十分な壁幅を有していない構造物側改質土壌壁w1単独では、基礎構築地Y内に構造物C側改質土壌壁w1に隣接する作業空間を掘削形成した際に地盤の土圧を支えきれず、崩壊する虞があり危険である。
【0087】
そのため、構造物側改質土壌壁w1を被支持改質壁とし、当該構造物側改質土壌壁w1と隣接する他の改質土壌壁w2〜w3を支持改質壁となるように土留壁を構築する。
これにより、被支持改質壁(構造物側改質土壌壁)w1の両端部は支持改質壁(他の改質土壌壁)w2〜w3によって支持される。そして、被支持改質壁w1に隣接する作業空間を掘削形成したとき、被支持改質壁w1には、構造物の重量や地盤の土圧が作業空間側への倒れ荷重となって作用する。本構成では、被支持改質壁w1は支持改質壁w2〜w3によって支持される構成であるため、この倒れ荷重の一部は支持改質壁w2〜w3に伝達され、その結果、この倒れ荷重を、被支持改質壁w1と支持改質壁w2〜w3とによって支持できる。
従って、十分な壁幅を確保できない狭い場所であっても、被支持改質壁と支持改質壁とを設けて土留壁を構築することにより、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後において、被支持改質壁が倒れるのを未然に防止できるため、安全に作業を遂行できる。
【0088】
尚、本実施形態では、被支持改質壁w1の両端を支持改質壁w2〜w3によって支持する場合を例示したが、被支持改質壁w1の片端のみを例えば支持改質壁w2によって支持することも可能である。これらのうち何れの手法を用いるかは、改質土壌壁の硬度・長さ・壁幅によって適宜選択する。
【0089】
(4)親杭部材を使用した土留壁構築
上述した被支持改質壁と支持改質壁とを設けて土留壁を構築するとき、少なくとも被支持改質壁において、図13〜14に示したように、各掘削孔に親杭部材D1を埋め込むことが可能である。
親杭部材D1は、例えばH型鋼等が使用可能であるが、これに限られるものではない。親杭部材D1の設置は、混合土が固化する前、即ち固化工程の前に行う。
【0090】
つまり、上述した第1掘削工程あるいは第2掘削工程を経た掘削孔に親杭部材D1を埋め込む。このとき、親杭部材D1は杭打ち手段で地盤に打ち込むことなく、例えば上記埋め戻し工程の際に掘削孔内に混合土と共に埋め込むことで事足りる。
そして、埋め戻し工程後に所定時間放置して混合土を固化させる固化工程を行うことにより、固化した混合土である改質土壌壁wに親杭部材D1が強固に組み込まれる。
このように、十分な壁幅を確保できていない被支持改質壁に親杭部材D1が組み込まれていると、親杭部材D1が骨材となって被支持改質壁の剛性が増す。そのため、基礎構築地Yにおいて、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成する際、被支持改質壁に倒れ荷重が作用したときでも、被支持改質壁が崩壊するのを未然に防止できる。そのため、安全性が増した状態で作業を行うことができる。
【0091】
一方、親杭部材D1を、杭打ち手段で地盤に打ち込んだ場合には、親杭部材D1の下端が地盤に根入れしてある構成とすることができる。
このとき、親杭部材D1の下端D1aは改質土壌壁wより深い地盤位置まで到達できる(図14参照)。そのため、基礎構築地Yにおいて、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成する作業を土留壁Wの深さまで行ったとしても、親杭部材D1の下端D1aが改質土壌壁wより深い地盤位置まで到達しているため、親杭部材D1の下端D1aが倒れ荷重に対して被支持改質壁を確実に支持できる構成となり、被支持改質壁の剛性が増した状態で被支持改質壁が倒れるのを確実に防止できる。そのため、安全性が更に増した状態で作業を行うことができる。
【0092】
尚、改良土壌壁wの強度や壁幅等に基づき、親杭部材D1の設置幅を適宜変更できる。そのため、例えば、改良土壌壁wの強度が増すように設計してあれば、親杭部材D1の設置数を減らすことができるため、その分、土留壁W構築のコスト低減に繋がる。
【0093】
また、図13〜14に示したように、親杭部材D1の設置を支持改質壁に行うことも可能である。このとき、例えば、被支持改質壁と隣接する支持改質壁の端部に設けると、被支持改質壁の倒れ荷重を支持する部位の剛性を増す構造とすることができる。
【0094】
尚、基礎構築地Yにおいて基礎が構築されたあとで基礎構築地Yは埋め戻される。このとき、親杭部材D1を土中から撤去したとしても、改良土壌壁wは土壌を硬質に改質してあるため、改良土壌壁wにクラックが発生する虞は殆どない。そのため、基礎構築地Yの周辺に存在する家屋等の構造物Cに影響を与える虞は殆どない。
【0095】
(5)横架部材を使用した土留壁構築
被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後、親杭部材D1と当接する横架部材D2を設けることが可能である(図13〜14参照)。
横架部材D2は、例えばH型鋼等が使用可能であるが、これに限られるものではない。横架部材D2の設置は、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成するとき、或いは、作業空間を掘削形成した後に行う。つまり、当該作業空間を掘削形成するときには、被支持改質壁面が露出する。このため、被支持改質壁の作業空間側への倒れ荷重は、当該被支持改質壁自体が負担しなければならない。そこで、この倒れ荷重を、親杭部材D1と溶接等により当接させた横架部材D2で支えることにより、被支持改質壁の倒れ荷重をより確実に支持できる構成となり、被支持改質壁の崩壊をより確実に防止できる。そのため、安全性が一層増した状態で作業を行うことができる。
【0096】
また、図13〜14に示したように、横架部材を被支持改質壁w1だけでなく、支持改質壁w2〜w3の被支持改質壁w1側端部にも設けることができる(横架部材D21、D22)。このとき、横架部材D2および横架部材D21、横架部材D2および横架部材D22に接するようにそれぞれ斜材D31、D32を設ける。これにより、横架部材D2は、斜材D31、D32によって補強できる構造となる。
【0097】
(6)のり面の造成
例えば、道路や工場等を構築する場合において、必要用地を確保するためには、切土・盛り土を行って、急な勾配を有するのり面が造成されることがある。特に勾配が急なのり面は、その表面に対して、コンクリート擁壁・ブロック積み等の保護工事を行うことでのり面の土壌の崩壊を防止していた。
このようなのり面保護工事は、急な勾配でのり面最下部まで切土をした状態で行われていた。つまり、勾配が急であるが故に、のり面の表面が崩壊する虞がある状態で、のり面の最下部から上部に向けてコンクリート擁壁・ブロック積み等の保護工事を行っていた。
コンクリート擁壁・ブロック積み等の保護工事は、生コンクリート・ブロック・砕石等の資材を搬入するのに要する設備や用地、搬入ルート等を確保する必要がある。そのため、保護工事の施工コストが増大する一因となっている。
【0098】
さらに、のり面を造成する地盤が、軟弱あるいは崩壊性地質である場合、又は、保護工事中に集中豪雨等にあった場合、地盤が崩壊して保護工事に支障を来たすことが考えられる。
【0099】
そのため、低コストで、かつ、造成中ののり面の崩壊を未然に防止する技術が望まれている。
本実施例では、上述したのり面に関する課題を解決するため、上記(1)〜(2)で記載した改質土壌壁を、のり面の造成に適用する。
つまり、上記(1)で記載した改質土壌壁を作製するとき、第2掘削工程において掘削孔を第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第2所定深度を設定する。
或いは、上記(2)で記載した改質土壌壁を作製するとき、掘削工程において掘削孔を第1所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第1所定深度を設定する。
【0100】
ここで、本明細書における「のり面の想定崩壊面」とは、ある土質において、特定の傾斜角度条件(例えば1:1.5)を越えた時点でのり面の崩壊が発生することが想定される角度を有する面のことを示す。
【0101】
本実施形態では、図15に示したように、例えば、道路Gの両側に、崩壊性地質で、かつ、想定崩壊面Eが1:1.5の傾斜角度条件を有するのり面造成地において、仕上げのり面Fが1:1.0の傾斜角度条件を有するのり面を構築する場合について説明する。
【0102】
つまり、仕上げのり面Fが想定崩壊面Eより急な傾斜角度条件を有するのり面であると、のり面の土壌の崩壊が発生することが想定される。このとき、仕上げのり面Fを、上記(1)或いは(2)で記載した、硬質に改質してある改質土壌壁で作製すれば、崩壊の虞は殆ど無くなると考えられる。
仕上げのり面Fに当該改質土壌壁を適用するに際して、掘削孔の深度が重要となる。本実施形態では、上述したように、掘削孔を所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面E0の面積が所定値以上になるように所定深度を設定する(図16参照)。
【0103】
当該交差面E0の面積が小さい場合、想定崩壊面と掘削孔との交差割合が小さくなり、のり面の土壌が斜面に沿って滑る力が、のり面の土壌がその場に留まる力より大きくなるため崩壊し易くなる。一方、当該交差面E0の面積が大きい場合、想定崩壊面と掘削孔との交差割合が大きくなり、掘削孔に形成した改質土壌壁が、崩壊しない土壌に係止されるため、崩壊し難くなる。
従って、のり面の崩壊を未然に防止するため、のり面が崩壊しない判断基準となる当該交差面E0の面積を所定値として設定する。そして、当該交差面E0の面積が所定値以上であれば、のり面の崩壊の虞は殆ど無くなる。
また、コンクリート擁壁・ブロック積み等の保護工事に比べて施工費用は大幅に低下する。そして、のり面の造成作業は、小型の掘削機で改質土壌壁を構築するため、狭い作業スペースで行うことができる。
さらに、改質土壌壁をのり面の上方から下方に向けて造成する、所謂逆巻き工法で行えるため、のり面造成中においてのり面の崩壊の虞は殆どないため、安全に造成を行うことができる。
【0104】
ここで、「のり面の土壌が斜面に沿って滑る力」、「のり面の土壌がその場に留まる力」および「交差面E0の面積」とについては、以下のように規定される。
つまり、「のり面の土壌が斜面に沿って滑る力」は、想定崩壊面Eの勾配および土壌の性質により規定され、「のり面の土壌がその場に留まる力」及び「交差面E0の面積」は、改良土壌壁の改良強度(せん断強度)により規定される。
「のり面の土壌がその場に留まる力」は、「交差面E0の面積」と改良土壌壁wの単位面積当たりせん断強度の積であり、「交差面E0の面積」を大きくすると改良土壌壁wのせん断強度を小さくすることが可能である。また、「交差面E0の面積」を構造上の条件等により小さくせざるを得ない場合、改良土壌壁wのせん断強度を大きくすることで、必要な「のり面の土壌がその場に留まる力」を確保することができる。
【0105】
図15におけるのり面の造成手順について以下に説明する。
まず、最終的な地表面となる仕上げのり面Fと、例えば道路面Gとを決定する。そして、のり面造成前の地表面G0に対して、作業スペースを確保するため、盛り土を行った地表面を第1作業用地表面G1とする。
【0106】
次に、第1作業用地表面G1を基準として上記(1)で記載した改質土壌壁w5を構築する。このとき、上述したように、「のり面の土壌が斜面に沿って滑る力」、「のり面の土壌がその場に留まる力」および「交差面の面積」とを考慮して、第2掘削工程において掘削孔を第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面Eと掘削孔とが交差して得られる交差面E1の面積が所定値以上になるように第2所定深度を設定してある。
改質土壌壁w5を作製する際、砕石層Jを設けることにより、地盤中の湧き水や地下水を排出できる構成となる。この砕石層Jは、例えば第2掘削工程と埋め戻し工程との間に行う。
【0107】
そして、改質土壌壁w5が固化した後、第2作業用地表面G2まで掘削して土壌を除去する。このとき、改質土壌壁w5の一部を仕上げのり面Fに沿うように掘削する。
その後、第2作業用地表面G2を基準として、改質土壌壁w5と同様に改質土壌壁w6を構築する。改質土壌壁w6の一部を仕上げのり面Fに沿うように掘削し、第3作業用地表面G3まで掘削して土壌を除去する。そして、第3作業用地表面G3を基準として、改質土壌壁w7を構築する。改質土壌壁w7の一部を仕上げのり面Fに沿うように掘削し、道路面Gまで掘削して土壌を除去することにより、のり面の造成が完了する。
【0108】
このように造成されたのり面は、改質土壌壁w5〜w7からなる土留壁Wにより構成される。そして、のり面の想定崩壊面Eと、改質土壌壁w5〜w7とが交差して得られる面をそれぞれ交差面E1〜E3とする。このとき、想定崩壊面E上の土壌(想定崩壊面Eから仕上げのり面Fまでの土壌)全体が斜面に沿って滑る力Tを、その場に留める力は、交差面E1〜E3の合計せん断強度である。
従って、「のり面の土壌をその場に留める全体力H」は、H=(E1の面積+E2の面積+E3の面積)×(単位面積当たりせん断強度)で計算できる。つまり、必要とされる「のり面の土壌をその場に留める全体力H」は、「想定崩壊面Eと改質土壌壁wとが交差して得られる交差面の全体面積」と「単位面積当たりせん断強度」との積であり、施工条件により全体面積と単位面積当たりせん断強度とを自由に組み合わせることができる。
【0109】
また、例えば、上方に位置する改質土壌壁w5と、下方に位置する改質土壌壁w6とは、それぞれ被支持改質壁と支持改質壁の関係となる。つまり、被支持改質壁w5にかかる地盤の土圧は、倒れ荷重となって支持改質壁w6に伝達されるが、この倒れ荷重を、支持改質壁w6が支持する。
【0110】
これら改質土壌壁wの強度は軟岩と土砂の中間程度であり、さらに、改質土壌壁wはセメントを固化材に用いているため弱アルカリ性となっているため、植生に適している。そのため、当該のり面表面には、植生を施してのり面の緑化を行い、良好な景観を有すると共に道路周縁の空気浄化に役立てることが可能である。
【0111】
〔別実施の形態〕
上述した実施例においては、第1区画を形成し、この第1区画に連続するように、第2区画を形成した。しかし、このような形態に限らず、数十メートルに及ぶような長い土留壁を構築するような場合には、第1区画及び第2区画以外にも別の区画を形成し、最終的に各区画を連続させるようにすれば、連続した地盤の土壌改質ができ、連続した土留壁を構築することができる。
【0112】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、同様の作用効果を奏するものであれば、各部構成を適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の土留壁構築に適用する改質土壌壁構築方法の第1の実施の形態の概要を示した図
【図2】本発明の土留壁構築に適用する改質土壌壁構築方法の第2の実施の形態の概要を示した図
【図3】各区画形成工事における掘削孔を示した図(a)第1区画形成工事における掘削孔(b)第2区画形成工事における掘削孔
【図4】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図5】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図6】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図7】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図8】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図9】基礎構築地の断面図
【図10】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図11】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図12】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図13】構造物が近接している場所における本発明の土留壁の上面視概略図
【図14】構造物が近接している場所における本発明の土留壁の斜視図
【図15】のり面における本発明の土留壁の概略図
【図16】のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面を示した図
【符号の説明】
【0114】
A 第1区画形成工事
a1 第1掘削工程
a2 第2掘削工程
a3 埋め戻し工程
a4 固化工程
B 第2区画形成工事
b1 第1掘削工程
b2 第2掘削工程
b3 埋め戻し工程
b4 固化工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に地盤の土圧を支持する土留め壁を構築する土留壁構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土留壁は、地盤を掘削して形成された溝の側面や斜面(掘削孔壁)の土壌が崩壊するのを防止するために構築される。従来、この種の土留壁としては、例えば、鋼製の矢板等を掘削孔壁に接するように打設して構築し、さらに、隣接する矢板間に複数の横矢板を設置して掘削孔壁の被覆を行う。この土留壁により掘削孔壁に掛かる土圧を支えて掘削孔壁の崩壊を防止していた。そして、矢板が対面して打設してある場合には、状況により、対面する矢板同士を支えるように矢板間に切梁を架設して、矢板(土留壁)を確実に支えていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−111225号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の土留壁構築方法によれば、例えば、地盤中に比較的大きな石(例えば20cm以上)があると、矢板の打設が困難となり、施工効率が低下する。このような地盤に無理に矢板を打設しようとすると、矢板が損傷してうまく打設できない上に、矢板の再利用が困難となる。従って、地盤の地質によって、施工が困難となる場合があった。
【0005】
矢板打設後に切梁を矢板間に架設すると、切梁より深い位置では、小型の作業機械を使用したり、場合によっては人力による作業となるため、施工性が悪くなっていた。
このような施工性の悪化を回避するため、広い作業空間を確保しようとすれば、矢板や切梁の資材が大きくなり、土留壁構築のコストや各資材搬入のコスト等が嵩んでいた。資材が大きくなると、その分大型機械が必要となり、大型機械の稼動に耐えるように施工現場の地盤を整備する必要があった。
【0006】
また、鋼矢板等の土留壁は仮設構造物であるため、掘削孔壁間の空隙内での作業が終了すると撤去する必要がある。その場合に、親杭等の縦方向に設置した矢板を抜き取って撤去するのは比較的容易である。しかし、親杭間に亘って設けた横矢板を撤去する場合には、横矢板を取り外しながら、掘削孔壁間の空隙の埋め戻しを行わなければならない。そして、この横矢板を撤去すると同時に、矢板撤去部分に掛かる土圧を支える構造物が無くなる為、掘削孔壁が崩壊する虞があり、撤去作業は危険を伴っていた。
一方、矢板や切梁の撤去作業を行わずに、そのまま埋め戻すと、矢板や切梁の再利用ができなくなるために土留壁構築のコストが嵩む上に、埋め戻した土地を再利用する際には矢板や切梁が障害となっていた。
さらに、矢板や切梁等を使用して土留壁を構築する場合は、矢板や切梁等の資材を保管するスペースが必要となるため、狭い工事現場では保管スペースの確保が困難であった。
【0007】
従って、本発明の目的は、掘削孔壁が崩壊し難く、作業性のよい土留壁構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る土留壁構築方法の第一特徴構成は、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程と、前記第1掘削工程により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程と、前記第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、前記第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、前記第2混合土を投入する埋め戻し工程と、前記埋め戻し工程後、所定時間放置して前記第1〜2混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記第1掘削工程、前記第2掘削工程、前記埋め戻し工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製し、前記改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における前記被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある点にある。
【0009】
本構成による改質土壌壁を構築するには、従来の方法のように、地盤を連続的に掘削して掘削溝を形成するのではなく、ある大きさの掘削孔を堀り、そこから、所定間隔を設けて複数の掘削孔(第1掘削孔)を形成する。この第1掘削孔は、第1所定深度まで掘り下げ、排土して形成する(第1掘削工程)。第1所定深度は、地盤の地質によっても異なるが、掘り下げても掘削孔壁が崩壊しない深度を適宜設定する。この時、各第1掘削孔の掘削孔壁の幅は、従来の掘削溝の掘削孔壁の長さに比べて当然に短い。このため、掘削孔壁の単位面積あたりの領域が支える土圧は、いわゆるアーチ効果によって小さくなる。従って、各第1掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少なくなる。
そして、各第1掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で、第2掘削工程を行う。
【0010】
第2掘削工程では、第1掘削工程で第1所定深度まで掘削した掘削孔を、さらに第2所定深度まで掘削する。この時、各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌とが攪拌、混合され、第1混合土が作製できる。この固化材と土壌との混合は、各掘削孔内で行うため、各掘削孔壁にかかる土圧を第1混合土で支えることができる。これにより、各掘削孔の掘削孔壁の崩壊を防止できる。
【0011】
そして、第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、第2混合土を投入する埋め戻し工程を実施する。さらに、埋め戻し工程を行った後、所定時間放置して第1〜2混合土を固化させる固化工程によって第1区画を形成する第1区画形成工事を完了する。この時点で、各第1掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土が硬化することにより硬質な改質土壌が構築される。
【0012】
次に、第2区画形成工事を行う。この第2区画形成工事は、まず、第1区画を形成する際に掘削した各第1掘削孔の間の地盤(つまり、第1掘削工程で掘削していない部分)において、第1区画に連続した掘削孔(第2掘削孔)を掘る掘削工程を行う。この工程は、第1掘削工程と同様の方法である。この時、第2掘削孔の掘削孔壁にかかる土圧の一部は、硬質に改質した第1区画の掘削孔壁によって分担される(アーチ効果)。そのため、第2掘削孔の掘削孔壁が支えるべき単位面積あたりの土圧は小さくなる。従って、各第2掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞も少なくなる。
そして、各第2掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で、第2掘削工程、埋め戻し工程、及び、固化工程を行い、各第2掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土により硬質な改質土壌を構築(第2区画)できる。これら工程は、第1区画形成工事で行ったそれぞれの工程と同様の方法である。
【0013】
このように、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で改質土壌壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる。
【0014】
また、第2区画形成工事が、第1区画形成工事の後に、第1区画に連続した第2区画を形成するものであれば、連続して地盤の土壌改質を行える。土壌は、固化材によって硬質なものとなる。従って、この改質土壌により、当該改質土壌に接する周囲の土圧を確実に支えることができるため、強固な土留壁を構築することができる。
【0015】
また、本構成では矢板を土留壁構築に使用しないため、地盤の地質に左右されることなく広範な地質条件に適用できる上に、資材を使用しない分、土留壁構築のコスト低減に繋がる。また、資材を使用する方法が抱えていた他の問題、例えば、施工効率の悪さ、運搬コストの増大、資材の撤去、資材や土地の再利用、資材の保管スペース等の作業性についての問題を解決することができる。
【0016】
さらに、大掛かりな掘削溝を掘る必要がないため、施工現場の地盤の整備も不要となる。また、従来必要であった大型掘削機械が不要となり、小型の掘削機械のみで事足りるため、狭い土地でも容易に施工することができる。
【0017】
さらに、本構成では改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築する。
【0018】
例えば、地上に家屋や既設ブロック積み壁等、或いは、地下に埋設管等の構造物が近接している場所に基礎構築地を構築することがある。この基礎構築地は、複数の改質土壌壁からなる土留壁で囲まれている。このとき、基礎構築地における構造物側改質土壌壁では、地盤の土圧を十分支持できるだけの壁幅を確保するのが困難となる場合がある。
つまり、十分な壁幅を有していない構造物側改質土壌壁単独では、基礎構築地内に構造物側改質土壌壁に隣接する作業空間を掘削形成したときに地盤の土圧を支えきれず、崩壊する虞があり危険である。
【0019】
そのため、構造物側改質土壌壁を被支持改質壁とし、当該構造物側改質土壌壁と隣接する他の改質土壌壁を支持改質壁となるように土留壁を構築する。
これにより、被支持改質壁(構造物側改質土壌壁)は支持改質壁(他の改質土壌壁)によって支持される。そして、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成したとき、被支持改質壁には、構造物の重量や地盤の土圧が作業空間側への倒れ荷重となって作用する。本構成では、被支持改質壁は支持改質壁によって支持される構成であるため、この倒れ荷重の一部は支持改質壁に伝達され、その結果、この倒れ荷重を、被支持改質壁と支持改質壁とによって支持できる。
従って、十分な壁幅を確保できない狭い場所であっても、被支持改質壁と支持改質壁とを設けて土留壁を構築することにより、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後において、被支持改質壁が倒れるのを未然に防止できるため、安全に作業を遂行できる。
【0020】
本発明に係る土留壁構築方法の第二特徴構成は、地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程と、地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程と、前記掘削工程後、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記固化材載置工程、前記掘削工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製し、前記改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における前記被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある点にある。
【0021】
本構成による改質土壌壁は、まず、地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程を行う。次に地盤を掘削する工程を行うが、本構成による改質土壌壁は、従来の方法のように、地盤を連続した溝状に掘削して掘削溝を形成するのではなく、ある大きさの掘削孔を堀り、そこから、所定間隔を設けて、つまり、掘削しない部分を残しつつ複数の掘削孔(第1掘削孔)を形成する。この第1掘削孔は、第1所定深度まで掘り下げて形成する(掘削工程)。第1所定深度は、掘り下げても掘削孔壁が崩壊しない深度を適宜設定する。掘削した土壌は、排土せずに第1掘削孔の中に留まるようにして固化材と土壌とを攪拌、混合し混合土を作製する。そのため、各掘削孔壁にかかる土圧を前記混合土で支えることができ、各第1掘削孔の掘削孔壁の崩壊を防止することができる。
そして、各第1掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程を行って第1区画を形成する第1区画形成工事を完了する。この時点で、各第1掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土が硬化することにより硬質な改質土壌が構築される。
【0022】
次に、第2区画形成工事を行う。この第2区画形成工事は、まず、第1区画を形成する際に掘削した各第1掘削孔の間の地盤、つまり、掘削工程で掘削していない部分において、固化材載置工程を行い、第1区画に連続した掘削孔(第2掘削孔)を形成する掘削工程を行う。この時、第2掘削孔の掘削孔壁にかかる土圧は、硬質に改質した第1区画の掘削孔壁によって分担される(アーチ効果)。そのため、第2掘削孔の掘削孔壁が支えるべき単位面積あたりの土圧は小さくなる。従って、各第2掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞も少なくなる。
この状態で固化工程を行い、第2区画を形成する。第2区画形成工事で行った各工程は、第1区画形成工事で行ったそれぞれの工程と同様の方法である。
【0023】
このように、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で改質土壌壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる。
【0024】
また、第2区画形成工事が、第1区画形成工事の後に、第1区画に連続した第2区画を形成するものであれば、連続して地盤の土壌改質を行える。土壌は、固化材によって硬質なものとなる。従って、この改質土壌により、当該改質土壌に接する周囲の土圧を確実に支えることができるため、強固な土留壁を構築することができる。
【0025】
また、本構成では矢板を土留壁構築に使用しないため、地盤の地質に左右されることなく広範な地質条件に適用できる上に、資材を使用しない分、土留壁構築のコスト低減に繋がる。また、資材を使用する方法が抱えていた他の問題、例えば、施工効率の悪さ、運搬コストの増大、資材の撤去、資材や土地の再利用、資材の保管スペース等の作業性についての問題を解決することができる。
【0026】
さらに、大掛かりな掘削溝を掘る必要がないため、施工現場の地盤の整備も不要となる。また、従来必要であった大型掘削機械が不要となり、小型の掘削機械のみで事足りるため、狭い土地でも容易に施工することができる。
【0027】
さらに、本構成では改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築する。
【0028】
これは第一特徴構成で説明したように、構造物が近接している場所に、複数の改質土壌壁からなる土留壁を構築する場合、構造物側改質土壌壁を被支持改質壁とし、当該構造物側改質土壌壁と隣接する他の改質土壌壁を支持改質壁となるように土留壁を構築する。これにより、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成したとき、被支持改質壁に作用する倒れ荷重の一部は支持改質壁に伝達され、その結果、この倒れ荷重を、被支持改質壁と支持改質壁とによって支持できる。
従って、十分な壁幅を確保できない狭い場所であっても、被支持改質壁と支持改質壁とを設けて土留壁を構築することにより、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後において、被支持改質壁が倒れるのを未然に防止できるため、安全に作業を遂行できる。
【0029】
本発明に係る土留壁構築方法の第三特徴構成は少なくとも前記被支持改質壁において、前記固化工程の前に、各掘削孔に親杭部材を埋め込む点にある。
【0030】
上記第三特徴構成によれば、固化工程後には、改質土壌壁に親杭部材が強固に組み込まれる。そのため、十分な壁幅を確保できていない被支持改質壁に親杭部材が組み込まれていると、親杭部材が骨材となって被支持改質壁の剛性が増す。そのため、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成する際、被支持改質壁に倒れ荷重が作用したときでも、被支持改質壁が崩壊するのを未然に防止できる。そのため、安全性が増した状態で作業を行うことができる。
【0031】
また、親杭部材は単に掘削孔内に埋め込むだけで、杭打ち手段で地盤に打ち込まない場合は、杭打ち手段等の大掛かりな機材を使用しない分、土留壁構築のコスト低減に繋がる。そして、杭打ち手段で地盤に打ち込む場合と比べて親杭部材の長さは短いものが適用できるため、親杭部材に要するコストも低減できる。
【0032】
本発明に係る土留壁構築方法の第四特徴構成は、前記親杭部材を埋め込む際に、前記親杭部材の下端を地盤に根入れする点にある。
【0033】
上記第四特徴構成によれば、親杭部材の下端は改質土壌壁より深い地盤位置まで到達できる。そのため、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成する作業を土留壁の深さまで行ったとしても、親杭部材の下端が改質土壌壁より深い地盤位置まで到達しているため、親杭部材の下端が倒れ荷重に対して被支持改質壁を確実に支持できる構成となり、被支持改質壁の剛性が増した状態で被支持改質壁が倒れるのを確実に防止できる。そのため、安全性が更に増した状態で作業を行うことができる。
【0034】
本発明に係る土留壁構築方法の第五特徴構成は、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後、前記親杭部材と当接する横架部材を設ける点にある。
【0035】
横架部材の設置は、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成するとき、或いは、作業空間を掘削形成した後に行う。つまり、当該作業空間を掘削形成するときには、被支持改質壁面が露出する。このとき、被支持改質壁の作業空間側への倒れ荷重が発生する。そのため、上記第五特徴構成によれば、この倒れ荷重を、親杭部材と当接する横架部材で支えることにより、被支持改質壁の倒れ荷重をより確実に支持できる構成となり、被支持改質壁の崩壊をより確実に防止できる。そのため、安全性が一層増した状態で作業を行うことができる。
【0036】
本発明に係る土留壁構築方法の第六特徴構成は、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程と、前記第1掘削工程により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程と、前記第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、前記第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、前記第2混合土を投入する埋め戻し工程と、前記埋め戻し工程後、所定時間放置して前記第1〜2混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記第1掘削工程、前記第2掘削工程、前記埋め戻し工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するとき、前記第2掘削工程において前記掘削孔を前記第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と前記掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように前記第2所定深度を設定してある点にある。
【0037】
本構成における改質土壌壁は、上述した第一特徴構成と同様の第1区画形成工事および第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するため、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で改質土壌壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる構成となる。
【0038】
ここで、のり面を造成する地盤が、軟弱あるいは崩壊性地質である場合、又は、保護工事中に集中豪雨等にあった場合、地盤が崩壊して保護工事に支障を来たすことが考えられるため、安全にのり面を造成することが求められる。
そのため、本構成では、第1区画形成工事および第2区画形成工事における第2掘削工程において掘削孔を第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第2所定深度を設定することにより、当該改質土壌壁をのり面の造成に適用することが可能となる。
ここで、本明細書における「のり面の想定崩壊面」とは、ある土質において、特定の傾斜角度条件(例えば1:1.5)を越えた時点でのり面の崩壊が発生することが想定される角度を有する面のことを示す。
【0039】
のり面の造成に当該改質土壌壁を適用するに際して、掘削孔の深度が重要となる。そのため、本構成では、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第2所定深度を設定している。
ここで、当該交差面の面積が小さい場合、想定崩壊面と掘削孔との交差割合が小さくなり、のり面の土壌が斜面に沿って滑る力が、のり面の土壌がその場に留まる力より大きくなるため崩壊し易くなる。一方、当該交差面の面積が大きい場合、想定崩壊面と掘削孔との交差割合が大きくなり、掘削孔に形成した改質土壌壁が、崩壊しない土壌に係止されるため、崩壊し難くなる。
従って、のり面の崩壊を未然に防止するため、のり面が崩壊しない判断基準となる当該交差面の面積を所定値として設定する。そして、当該交差面の面積が当該所定値以上であれば、のり面の崩壊の虞は殆ど無くなり、安全に造成を行うことができる。
【0040】
本発明に係る土留壁構築方法の第七特徴構成は、地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程と、地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程と、前記掘削工程後、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記固化材載置工程、前記掘削工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するとき、前記掘削工程において前記掘削孔を前記第1所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と前記掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように前記第1所定深度を設定してある点にある。
【0041】
本構成における改質土壌壁は、上述した第二特徴構成と同様の第1区画形成工事および第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するため、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で改質土壌壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる構成となる。
【0042】
ここで、のり面を造成する地盤が、軟弱あるいは崩壊性地質である場合、又は、保護工事中に集中豪雨等にあった場合、地盤が崩壊して保護工事に支障を来たすことが考えられるため、安全にのり面を造成することが求められる。
そのため、本構成では、第1区画形成工事および第2区画形成工事における掘削工程において掘削孔を第1所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第1所定深度を設定することにより、当該改質土壌壁をのり面の造成に適用することが可能となる。
これは、のり面の造成に当該改質土壌壁を適用するに際して、掘削孔の深度が重要となるため、本構成では、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第1所定深度を設定している。
【0043】
従って、上記第六特徴構成で説明したように、のり面の崩壊を未然に防止するため、のり面が崩壊しない判断基準となる当該交差面の面積を所定値として設定する。そして、当該交差面の面積が所定値以上であれば、のり面の崩壊の虞は殆ど無くなり、安全に造成を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の土留壁は、地盤を掘削して改質土壌壁を構築することにより形成される。そして、この改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築する。
改質土壌壁の構築手法については、本実施例では以下の(1)〜(2)に示す方法を例示する。
【0045】
(1)改質土壌壁構築(第1の実施形態)
図1に、改質土壌壁構築における第1の実施形態の概要を示す。
つまり、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程a1と、第1掘削工程a1により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程a2と、第1掘削工程a1時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、第2掘削工程a2が完了した後の掘削孔に、第2混合土を投入する埋め戻し工程a3と、埋め戻し工程a3後、所定時間放置して第1〜2混合土を固化させる固化工程a4とによって第1区画を形成する第1区画形成工事A、および、第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、第1掘削工程b1、第2掘削工程b2、埋め戻し工程b3、及び、固化工程b4を行って第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事Bを行うことにより地盤に改質土壌壁を作製する。
以下に各工程について詳述する。
【0046】
1−1.第1区画形成工事
1−1−1.第1掘削工程
第1掘削工程a1は、地盤の表層部において、掘削孔を第1所定深度まで掘削する工程である。この時、所定間隔を設けて複数の掘削孔を設けるようにする。つまり、地盤を連続した溝状に掘削するのではなく、ある大きさ(例えば平面視で長方形)の掘削孔を堀り、そこから、所定間隔離れた位置に掘削孔を掘る。所定間隔離れた複数の掘削孔は、例えば、直線状に配置する。そして、この掘削孔は深さが第1所定深度になった時点で掘削を一時中断する。第1所定深度は、掘り下げても掘削孔壁が崩壊しない深度を適宜設定する。掘削した土壌は、掘削孔より排出(排土)して、掘削孔の近傍の地盤上に載置しておく。
【0047】
1−1−2.第2掘削工程
第2掘削工程a2は、第1掘削工程a1で第1所定深度まで掘削した掘削孔を、第2所定深度まで掘削する工程である。
この工程においては、第1掘削工程a1で第1所定深度まで掘削した掘削孔に、例えば、土壌を硬質に改質する固化材を投入する。固化材が各掘削孔の底部に堆積した状態で第2所定深度(>第1所定深度)まで掘削する。この時、掘削した土壌は、排土せずに、掘削孔の中に留まるようにする。つまり、第2所定深度まで掘削することにより、固化材と土壌とが攪拌、混合され、これにより、固化材と土壌とが混合した第1混合土を作製する。
【0048】
固化材は、土壌に混入させて土壌を硬質に改質するものであればよい。例えば、セメント、レディーミクストモルタル等が使用できる。レディーミクストモルタルを用いた場合は、土壌との攪拌、混合時間が短くなることが期待される。そのため、掘削土壌の地質に応じて固化剤は適宜選択するのが好ましい。
固化材の土壌に対する混入率は、例えば、体積比率で4〜30%程度とする。
【0049】
1−1−3.埋め戻し工程
埋め戻し工程a3は、第1掘削工程a1によって排土された土壌に固化材を添加して攪拌、混合した第2混合土を作製し、第2掘削工程a2が完了した後の掘削孔に、第2混合土を投入する工程である。本実施例では、第1掘削工程a1によって排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製した後に、各掘削孔に第2混合土を投入する場合を例示しているが、第1掘削工程a1で排土された土壌と固化材との混合を、第2掘削工程a2が完了した後の掘削孔に投入するとき、或いは、投入後に混合することも可能である。
【0050】
1−1−4.固化工程
固化工程a4は、埋め戻し工程a3の後、所定時間放置して第1〜2混合土を固化させる工程である。土壌に添加した固化材は土壌中の水分と反応し、所定時間放置後には固化する。これにより、第1〜2混合土は固化するため、土壌が硬質となって改質が行われる。
【0051】
このように、所定間隔を設けてある複数の掘削孔の土壌を改質した第1区画を形成する。
【0052】
1−2.第2区画形成工事
第2区画形成工事Bは、第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、第1掘削工程b1、第2掘削工程b2、埋め戻し工程b3、及び、固化工程b4を行う。これら工程は、それぞれ、第1区画形成工事Aにおける第1掘削工程a1、第2掘削工程a2、埋め戻し工程a3及び固化工程a4と同様の処理を行う。このようにして第2区画を形成する。
【0053】
この時、第2区画は、第1区画に連続するように位置決めする。つまり、第2区画は、第1区画形成工事Aにて固化した第1区画の改質土壌に隣接するように、或いは、第1区画の改質土壌の端部を削るように位置決めする。
【0054】
このように、土留壁構築方法に係る第2区画形成工事Bが、第1区画形成工事Aの後に第1区画に連続した第2区画を形成するものであれば、連続して地盤の土壌改質を行える。土壌は、固化材によって硬質なものとなる。従って、この改質土壌により、当該改質土壌に接する周囲の土圧を確実に支えることができるため、強固な土留壁を構築することができる。
【0055】
上述した改質土壌壁は、従来の方法のように、地盤を連続した溝状に掘削して掘削溝を形成するのではなく、ある大きさの掘削孔を堀り、そこから、所定間隔を設けて掘削孔(第1掘削孔)を形成する。この時、各第1掘削孔の掘削孔壁の幅は、従来の掘削溝の掘削孔壁の長さに比べて当然に短い。このため、掘削孔壁の単位面積あたりの領域が支える土圧は、いわゆるアーチ効果によって小さくなる。従って、各第1掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞が少なくなる。
そして、この状態で、各第1掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土により硬質な改質土壌を構築(第1区画)できる。
【0056】
第2区画形成工事Bでは、前記第1区画を形成する際に掘削した各第1掘削孔の間の地盤において、第1区画に連続した掘削孔(第2掘削孔)を掘る。この時、第2掘削孔の掘削孔壁にかかる土圧の一部は、硬質に改質した第1区画の掘削孔壁によって分担される(アーチ効果)。そのため、第2掘削孔の掘削孔壁が支えるべき単位面積あたりの土圧は小さくなる。従って、各第2掘削孔の掘削孔壁が崩壊する虞も少なくなる。
そして、この状態で、各第2掘削孔に投入された土壌と固化材との混合土により硬質な改質土壌を構築(第2区画)できる。
【0057】
このように、所定間隔離れた不連続な区画による土壌の改質を行い、掘削孔壁が崩壊する虞が少ない状態で土留壁を構築できるため、安全に工事を遂行できる。
【0058】
〔実施例1〕
以下に、改質土壌壁構築における第1の実施形態の実施例について説明する。
河川の近傍に橋脚の基礎を構築する場合、河川の近傍の地盤を掘削して橋脚の基礎構築地とする。この基礎構築地の地盤を掘削すると、地盤を掘削して形成された溝の側面や斜面(掘削孔壁)等から地下水が多量に湧くことが考えられる。このように地下水が湧くと掘削孔壁や地盤は軟弱となり、特に掘削孔壁は、軟弱になると土圧を支えきれずに崩壊する虞があり、危険である。そのため、安全に作業できる工事空間を確保するためには、軟弱になった掘削孔壁が崩壊しないようにする必要がある。その一例として、土留壁を掘削孔壁に接するように構築し、この土留壁で土圧を支えることが考えられる。
一方、河川の近傍の土壌は、一般に、玉石を多量に含有することが多く、このような土壌では、土留壁を構築するのに使用する矢板等を打設するのは困難である。
【0059】
しかし、上述した改質土壌壁は、玉石が多い地盤や軟弱な地盤等において構築可能である。図3〜9に、改質土壌壁を構築する一連の手順について詳述する(図1参照)。
【0060】
まず、基礎構築地の地盤の掘削の先立ち、例えば、以下のステップを行うのが好ましい。
つまり、現地地盤の地質を調べ、土留壁として適切な形状、及び、必要な強度等を設計する。この時、構築された土留壁を撤去しない場合は、土留壁の強度は、道路管理者などから存置許可が得られるような強度に設計する。
また、固化材を使用するにあたり、構築された土留壁からの六価クロム溶出量が、例えば、法令に定める規定量以下となる配合となるように混入率を設計する。必要であれば、六価クロム溶出試験を行う。
このようなステップを行ったのち、以下の手順により、土留壁の構築を行う。
【0061】
1−1.第1区画形成工事A
1−1−1.第1掘削工程a1
本実施例における改質土壌壁の構築方法は、地盤を連続して掘削するのではなく、図3(a)に示したように、基礎構築地Yの一辺において、上面視で長方形(例えば、4.0m × 2.5m)の区画A1を掘削した後、所定間隔(例えば、3.0m)をおいて他の長方形の区画A2を掘削する。そして、同様にある程度の間隔をおいて他の長方形の区画A3を掘削する。掘削は、バックホー等の比較的小型の掘削手段を使用するのが好ましい。
【0062】
掘削は、第1所定深度H1(例えば、2.5m)まで行う。この時、掘削した土壌Sは、排土して各区画A1〜3の近傍の地盤上にバックホーBHにより載置する(図4参照)。
前記第1所定深度H1を2.5m程度としたが、土壌にもよるが、この程度であれば一般に土留孔壁は崩壊しない深度である。
【0063】
1−1−2.第2掘削工程a2
第1所定深度H1まで掘削した各区画A1〜3内に固化材Kとしてセメントを投入する。セメントK投入後、第2所定深度H2(例えば、3.5m:前記第1所定深度より深い)まで掘削する。この時、掘削と同時に前記セメントKと土壌とを攪拌して混合し、第1混合土S1を作製する(図5〜6参照)。
【0064】
セメントKの土壌に対する混入率は、例えば、体積比率で4〜10%程度とする。
尚、固化材Kとしてレディーミクストモルタルを用いることもできる。その場合には、土壌の体積に対して30%程度まで混入する。
【0065】
1−1−3.埋め戻し工程a3
第1所定深度まで掘削した時に排土した土壌SにセメントKを添加して攪拌混合し、第2混合土S2を作製する。この第2混合土S2を各区画A1〜3内に投入して埋め戻しを行う(図7参照)。
【0066】
1−1−4.固化工程a4
土壌とセメントKの混合物である前記第1混合土S1及び第2混合土S2は、土壌中の水分と反応して所定時間(例えば24時間)放置後には固化する。つまり、所定時間放置後には、各区画A1〜3内の土壌は固化するため、土壌の改質が行われたことになる。この時、改質土壌の圧縮強度は、10〜数10kgf/cm2程度になっていると好ましい。
以上により、第1区画形成工事を完了する。
【0067】
1−2.第2区画形成工事B
各区画A1〜3の土壌が硬化した後、区画A1と区画A2の間の区画B1、及び、区画A2と区画A3の間の区画B2の掘削を行うことにより第2区画形成工事Bを開始する(図3(b)参照)。
【0068】
区画B1〜2の掘削は、第1区画形成工事で行った各区画A1〜3の掘削と同様に、第1掘削工程b1、第2掘削工程b2、埋め戻し工程b3、及び、固化工程b4を行う。
この時、区画B1〜2の掘削時には、区画A1〜3の端部をオーバーラップしながら行うと、掘削残しが起こらない。そのため、第1区画形成工事A及び第2区画形成工事Bを行うことにより、連続した地盤の土壌改質ができる。つまり、土壌の改質は、固化材を使用していることにより土壌を硬質に改質できるため、強固な土留壁を構築することができる。
【0069】
このように、基礎構築地Yの一辺を、区画A1〜3、及び、区画B1〜2のように交互に掘削して土壌改質を行う。基礎構築地Yの残りの3辺についても、同様の方法で土壌改質を行うことが可能であり、これにより、長方形の基礎構築地Yの外周を土壌改質して土留壁Wを形成できる。そして、基礎構築地Yにおいて、土留壁Wで囲まれた土壌を掘削して排土する。この時、土留壁Wの一部壁面を適宜整形しながら掘削する(図8〜9参照)。
【0070】
このようにして構築された土留壁Wは、切梁等を架設しないため、作業空間を良好に確保できる。また、この土留壁は止水性も良好であるため、土留壁Wで囲まれた基礎構築地Yが地下水位以下であっても、地下水が土留壁Wから湧き出すことは殆ど無くなる。そのため、良好な施工空間を確保できる。
【0071】
(2)改質土壌壁構築(第2の実施形態)
図2に、改質土壌壁構築における第2の実施形態の概要を示す。
第1区画及び第2区画を形成するのに、上述した第1の実施の形態では2段階の掘削を行うのに対して、本実施の形態では1段階の掘削のみを行うものである。
つまり、地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程α1と、地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程α2と、掘削工程α2後、所定時間放置して混合土を固化させる固化工程α3とによって第1区画を形成する第1区画形成工事A’、および、第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、固化材載置工程β1、掘削工程β2、及び、固化工程β3を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事B’を行うことにより地盤に土質改良壁を作製する。
以下に各工程について詳述する。
【0072】
2−1.第1区画形成工事
2−1−1.固化材載置工程
固化材載置工程α1は、掘削孔を形成する地盤の表面に、例えば、土壌を硬質に改質する固化材を載置する工程である。
固化材は、第1の実施の形態と同様のものを使用する。
【0073】
2−1−2.掘削工程
掘削工程α2は、地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部において、掘削孔を第1所定深度まで掘削する工程である。この時、所定間隔を設けて複数の掘削孔を設けるようにする。つまり、地盤を連続した溝状に掘削するのではなく、ある大きさ(例えば平面視で長方形)の掘削孔を堀り、そこから、所定間隔離れた位置に掘削孔を掘る。
所定間隔離れた複数の掘削孔は、例えば、直線状に配置する。
地盤の表面に固化材を載置した状態で第1所定深度まで掘削する。この時、掘削した土壌は、排土せずに、掘削孔の中に留まるようにする。つまり、第1所定深度まで掘削することにより、固化材と土壌とが攪拌、混合され、これにより、固化材と土壌とが混合した混合土を作製する。
【0074】
2−1−3.固化工程
固化工程α3は、掘削工程α2後、所定時間放置して混合土を固化させる工程である。
このように、所定間隔を設けてある複数の掘削孔の土壌を改質した第1区画を形成する。
【0075】
2−2.第2区画形成工事
第2区画形成工事B’は、第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、固化材載置工程β1、掘削工程β2、及び、固化工程β3を行う。これら工程は、それぞれ、第1区画形成工事A’における固化材載置工程α1、掘削工程α2、固化工程α3と、同様の処理を行う。このようにして第2区画を形成する。
この時、第2区画は、第1の実施の形態と同様に、第1区画に連続するように位置決めする。
【0076】
本実施の形態は、掘削する深さは第1所定深度までであるため、上述した改質土壌壁構築における第1の実施の形態に比べて浅い掘削孔を形成する場合に有効である。
【0077】
〔実施例2〕
上記実施例1では、第2所定深度H2(例えば、3.5m)まで掘削する必要がある時の実施例を示したが、掘削の深さが第2所定深度H2より浅い第1所定深度H1(例えば、2.5m)でよい場合は、以下の方法により改質土壌壁を行う。(図2参照)
【0078】
2−1.第1区画形成工事A’
2−1−1.固化材載置工程α1
上面視で長方形(例えば、4.0m × 2.5m)の区画A1’〜3’を決定後(図3(a)参照)、掘削しない状態でこの区画A1’〜3’の地盤表面に固化材K(セメント)を載置する(図10参照)。
【0079】
2−1−2.掘削工程α2
セメントKを地盤表面に載置した状態で第1所定深度H1までバックホーBHにより掘削する。この時、掘削と同時にセメントKと土壌とを攪拌して混合し、混合土S3を作製する。セメントKと土壌との混合は、前記区画A1’〜3’より排土せずに各区画の中で行う(図11参照)。
【0080】
2−1−3.固化工程α3
土壌とセメントKの混合物である前記混合土S3は、土壌中の水分と反応して所定時間経過後には固化する。
以上により、第1区画形成工事A’を完了する。
【0081】
2−2.第2区画形成工事B’
各区画A1’〜3’の土壌が硬化した後、区画A1’と区画A2’の間の区画B1’、及び、区画A2’と区画A3’の間の区画B2’の掘削を行うことにより第2区画形成工事B’を開始する(図3(b)参照)。
【0082】
区画B1’〜2’の掘削は、第1区画形成工事で行った各区画A1’〜3’の掘削と同様に、固化材載置工程β1、掘削工程β2、及び、固化工程β3を行う。
この時、区画B1〜2の掘削時には、区画A1’〜3’の端部をオーバーラップしながら行う。
【0083】
このように、基礎構築地Yの一辺を、区画A1’〜3’、及び、区画B1’〜2’のように交互に掘削して土壌改質を行う。基礎構築地Yの残りの3辺についても、同様の方法で土壌改質を行うことが可能であり、これにより、長方形の基礎構築地Yの外周を土壌改質して土留壁Wを形成できる。そして、基礎構築地Yにおいて、土留壁Wで囲まれた土壌を掘削して排土する。この時、土留壁Wの一部を適宜整形しながら掘削する(図12参照)。
【0084】
(3)改良土壌壁を適用した土留壁構築
上述したように、本発明の土留壁は、上記(1)〜(2)で記載した改質土壌壁を複数構築し、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築する。
【0085】
図13〜14に示したように、地上に家屋や既設ブロック積み壁等、或いは、地下に埋設管等の構造物Cが近接している場所に基礎構築地Yを構築することがある。この基礎構築地Yは、上面視矩形で各辺を改質土壌壁wとした土留壁Wで囲まれている。つまり、土留壁Wは、複数の改質土壌壁w(w1〜w4)から構成してある。
本実施形態における改質土壌壁w1〜w4の構築順序は、例えば、図13に示したように区画1−1〜1−2(改質土壌壁w3)、区画2(改質土壌壁w2)、区画3−1〜3−4(改質土壌壁w3)、区画4−1〜4−5(改質土壌壁w2)、区画5−1〜5−5(改質土壌壁w1)の順序で行う。改質土壌壁w4は最後に構築する。このように、改質土壌壁w2および改質土壌壁w3は一度に構築していない。これは、例えば、区画2(改質土壌壁w2)と区画4−1〜4−5(改質土壌壁w2)とを分割して構築することで、改良する土壌領域をできるだけ小さくできるため、掘削孔壁の崩壊をより確実に防止することができる。
【0086】
ここで、基礎構築地Yにおける構造物C側改質土壌壁w1は、地盤の土圧を十分支持できるだけの壁幅を確保するのが困難となる場合がある。例えば、構造物C側改質土壌壁w1の壁幅L1を、他の改質土壌壁w2〜w3の壁幅L2、L3の半分以下しか確保できないとき、十分な壁幅を有していない構造物側改質土壌壁w1単独では、基礎構築地Y内に構造物C側改質土壌壁w1に隣接する作業空間を掘削形成した際に地盤の土圧を支えきれず、崩壊する虞があり危険である。
【0087】
そのため、構造物側改質土壌壁w1を被支持改質壁とし、当該構造物側改質土壌壁w1と隣接する他の改質土壌壁w2〜w3を支持改質壁となるように土留壁を構築する。
これにより、被支持改質壁(構造物側改質土壌壁)w1の両端部は支持改質壁(他の改質土壌壁)w2〜w3によって支持される。そして、被支持改質壁w1に隣接する作業空間を掘削形成したとき、被支持改質壁w1には、構造物の重量や地盤の土圧が作業空間側への倒れ荷重となって作用する。本構成では、被支持改質壁w1は支持改質壁w2〜w3によって支持される構成であるため、この倒れ荷重の一部は支持改質壁w2〜w3に伝達され、その結果、この倒れ荷重を、被支持改質壁w1と支持改質壁w2〜w3とによって支持できる。
従って、十分な壁幅を確保できない狭い場所であっても、被支持改質壁と支持改質壁とを設けて土留壁を構築することにより、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後において、被支持改質壁が倒れるのを未然に防止できるため、安全に作業を遂行できる。
【0088】
尚、本実施形態では、被支持改質壁w1の両端を支持改質壁w2〜w3によって支持する場合を例示したが、被支持改質壁w1の片端のみを例えば支持改質壁w2によって支持することも可能である。これらのうち何れの手法を用いるかは、改質土壌壁の硬度・長さ・壁幅によって適宜選択する。
【0089】
(4)親杭部材を使用した土留壁構築
上述した被支持改質壁と支持改質壁とを設けて土留壁を構築するとき、少なくとも被支持改質壁において、図13〜14に示したように、各掘削孔に親杭部材D1を埋め込むことが可能である。
親杭部材D1は、例えばH型鋼等が使用可能であるが、これに限られるものではない。親杭部材D1の設置は、混合土が固化する前、即ち固化工程の前に行う。
【0090】
つまり、上述した第1掘削工程あるいは第2掘削工程を経た掘削孔に親杭部材D1を埋め込む。このとき、親杭部材D1は杭打ち手段で地盤に打ち込むことなく、例えば上記埋め戻し工程の際に掘削孔内に混合土と共に埋め込むことで事足りる。
そして、埋め戻し工程後に所定時間放置して混合土を固化させる固化工程を行うことにより、固化した混合土である改質土壌壁wに親杭部材D1が強固に組み込まれる。
このように、十分な壁幅を確保できていない被支持改質壁に親杭部材D1が組み込まれていると、親杭部材D1が骨材となって被支持改質壁の剛性が増す。そのため、基礎構築地Yにおいて、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成する際、被支持改質壁に倒れ荷重が作用したときでも、被支持改質壁が崩壊するのを未然に防止できる。そのため、安全性が増した状態で作業を行うことができる。
【0091】
一方、親杭部材D1を、杭打ち手段で地盤に打ち込んだ場合には、親杭部材D1の下端が地盤に根入れしてある構成とすることができる。
このとき、親杭部材D1の下端D1aは改質土壌壁wより深い地盤位置まで到達できる(図14参照)。そのため、基礎構築地Yにおいて、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成する作業を土留壁Wの深さまで行ったとしても、親杭部材D1の下端D1aが改質土壌壁wより深い地盤位置まで到達しているため、親杭部材D1の下端D1aが倒れ荷重に対して被支持改質壁を確実に支持できる構成となり、被支持改質壁の剛性が増した状態で被支持改質壁が倒れるのを確実に防止できる。そのため、安全性が更に増した状態で作業を行うことができる。
【0092】
尚、改良土壌壁wの強度や壁幅等に基づき、親杭部材D1の設置幅を適宜変更できる。そのため、例えば、改良土壌壁wの強度が増すように設計してあれば、親杭部材D1の設置数を減らすことができるため、その分、土留壁W構築のコスト低減に繋がる。
【0093】
また、図13〜14に示したように、親杭部材D1の設置を支持改質壁に行うことも可能である。このとき、例えば、被支持改質壁と隣接する支持改質壁の端部に設けると、被支持改質壁の倒れ荷重を支持する部位の剛性を増す構造とすることができる。
【0094】
尚、基礎構築地Yにおいて基礎が構築されたあとで基礎構築地Yは埋め戻される。このとき、親杭部材D1を土中から撤去したとしても、改良土壌壁wは土壌を硬質に改質してあるため、改良土壌壁wにクラックが発生する虞は殆どない。そのため、基礎構築地Yの周辺に存在する家屋等の構造物Cに影響を与える虞は殆どない。
【0095】
(5)横架部材を使用した土留壁構築
被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後、親杭部材D1と当接する横架部材D2を設けることが可能である(図13〜14参照)。
横架部材D2は、例えばH型鋼等が使用可能であるが、これに限られるものではない。横架部材D2の設置は、被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成するとき、或いは、作業空間を掘削形成した後に行う。つまり、当該作業空間を掘削形成するときには、被支持改質壁面が露出する。このため、被支持改質壁の作業空間側への倒れ荷重は、当該被支持改質壁自体が負担しなければならない。そこで、この倒れ荷重を、親杭部材D1と溶接等により当接させた横架部材D2で支えることにより、被支持改質壁の倒れ荷重をより確実に支持できる構成となり、被支持改質壁の崩壊をより確実に防止できる。そのため、安全性が一層増した状態で作業を行うことができる。
【0096】
また、図13〜14に示したように、横架部材を被支持改質壁w1だけでなく、支持改質壁w2〜w3の被支持改質壁w1側端部にも設けることができる(横架部材D21、D22)。このとき、横架部材D2および横架部材D21、横架部材D2および横架部材D22に接するようにそれぞれ斜材D31、D32を設ける。これにより、横架部材D2は、斜材D31、D32によって補強できる構造となる。
【0097】
(6)のり面の造成
例えば、道路や工場等を構築する場合において、必要用地を確保するためには、切土・盛り土を行って、急な勾配を有するのり面が造成されることがある。特に勾配が急なのり面は、その表面に対して、コンクリート擁壁・ブロック積み等の保護工事を行うことでのり面の土壌の崩壊を防止していた。
このようなのり面保護工事は、急な勾配でのり面最下部まで切土をした状態で行われていた。つまり、勾配が急であるが故に、のり面の表面が崩壊する虞がある状態で、のり面の最下部から上部に向けてコンクリート擁壁・ブロック積み等の保護工事を行っていた。
コンクリート擁壁・ブロック積み等の保護工事は、生コンクリート・ブロック・砕石等の資材を搬入するのに要する設備や用地、搬入ルート等を確保する必要がある。そのため、保護工事の施工コストが増大する一因となっている。
【0098】
さらに、のり面を造成する地盤が、軟弱あるいは崩壊性地質である場合、又は、保護工事中に集中豪雨等にあった場合、地盤が崩壊して保護工事に支障を来たすことが考えられる。
【0099】
そのため、低コストで、かつ、造成中ののり面の崩壊を未然に防止する技術が望まれている。
本実施例では、上述したのり面に関する課題を解決するため、上記(1)〜(2)で記載した改質土壌壁を、のり面の造成に適用する。
つまり、上記(1)で記載した改質土壌壁を作製するとき、第2掘削工程において掘削孔を第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第2所定深度を設定する。
或いは、上記(2)で記載した改質土壌壁を作製するとき、掘削工程において掘削孔を第1所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように第1所定深度を設定する。
【0100】
ここで、本明細書における「のり面の想定崩壊面」とは、ある土質において、特定の傾斜角度条件(例えば1:1.5)を越えた時点でのり面の崩壊が発生することが想定される角度を有する面のことを示す。
【0101】
本実施形態では、図15に示したように、例えば、道路Gの両側に、崩壊性地質で、かつ、想定崩壊面Eが1:1.5の傾斜角度条件を有するのり面造成地において、仕上げのり面Fが1:1.0の傾斜角度条件を有するのり面を構築する場合について説明する。
【0102】
つまり、仕上げのり面Fが想定崩壊面Eより急な傾斜角度条件を有するのり面であると、のり面の土壌の崩壊が発生することが想定される。このとき、仕上げのり面Fを、上記(1)或いは(2)で記載した、硬質に改質してある改質土壌壁で作製すれば、崩壊の虞は殆ど無くなると考えられる。
仕上げのり面Fに当該改質土壌壁を適用するに際して、掘削孔の深度が重要となる。本実施形態では、上述したように、掘削孔を所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面E0の面積が所定値以上になるように所定深度を設定する(図16参照)。
【0103】
当該交差面E0の面積が小さい場合、想定崩壊面と掘削孔との交差割合が小さくなり、のり面の土壌が斜面に沿って滑る力が、のり面の土壌がその場に留まる力より大きくなるため崩壊し易くなる。一方、当該交差面E0の面積が大きい場合、想定崩壊面と掘削孔との交差割合が大きくなり、掘削孔に形成した改質土壌壁が、崩壊しない土壌に係止されるため、崩壊し難くなる。
従って、のり面の崩壊を未然に防止するため、のり面が崩壊しない判断基準となる当該交差面E0の面積を所定値として設定する。そして、当該交差面E0の面積が所定値以上であれば、のり面の崩壊の虞は殆ど無くなる。
また、コンクリート擁壁・ブロック積み等の保護工事に比べて施工費用は大幅に低下する。そして、のり面の造成作業は、小型の掘削機で改質土壌壁を構築するため、狭い作業スペースで行うことができる。
さらに、改質土壌壁をのり面の上方から下方に向けて造成する、所謂逆巻き工法で行えるため、のり面造成中においてのり面の崩壊の虞は殆どないため、安全に造成を行うことができる。
【0104】
ここで、「のり面の土壌が斜面に沿って滑る力」、「のり面の土壌がその場に留まる力」および「交差面E0の面積」とについては、以下のように規定される。
つまり、「のり面の土壌が斜面に沿って滑る力」は、想定崩壊面Eの勾配および土壌の性質により規定され、「のり面の土壌がその場に留まる力」及び「交差面E0の面積」は、改良土壌壁の改良強度(せん断強度)により規定される。
「のり面の土壌がその場に留まる力」は、「交差面E0の面積」と改良土壌壁wの単位面積当たりせん断強度の積であり、「交差面E0の面積」を大きくすると改良土壌壁wのせん断強度を小さくすることが可能である。また、「交差面E0の面積」を構造上の条件等により小さくせざるを得ない場合、改良土壌壁wのせん断強度を大きくすることで、必要な「のり面の土壌がその場に留まる力」を確保することができる。
【0105】
図15におけるのり面の造成手順について以下に説明する。
まず、最終的な地表面となる仕上げのり面Fと、例えば道路面Gとを決定する。そして、のり面造成前の地表面G0に対して、作業スペースを確保するため、盛り土を行った地表面を第1作業用地表面G1とする。
【0106】
次に、第1作業用地表面G1を基準として上記(1)で記載した改質土壌壁w5を構築する。このとき、上述したように、「のり面の土壌が斜面に沿って滑る力」、「のり面の土壌がその場に留まる力」および「交差面の面積」とを考慮して、第2掘削工程において掘削孔を第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面Eと掘削孔とが交差して得られる交差面E1の面積が所定値以上になるように第2所定深度を設定してある。
改質土壌壁w5を作製する際、砕石層Jを設けることにより、地盤中の湧き水や地下水を排出できる構成となる。この砕石層Jは、例えば第2掘削工程と埋め戻し工程との間に行う。
【0107】
そして、改質土壌壁w5が固化した後、第2作業用地表面G2まで掘削して土壌を除去する。このとき、改質土壌壁w5の一部を仕上げのり面Fに沿うように掘削する。
その後、第2作業用地表面G2を基準として、改質土壌壁w5と同様に改質土壌壁w6を構築する。改質土壌壁w6の一部を仕上げのり面Fに沿うように掘削し、第3作業用地表面G3まで掘削して土壌を除去する。そして、第3作業用地表面G3を基準として、改質土壌壁w7を構築する。改質土壌壁w7の一部を仕上げのり面Fに沿うように掘削し、道路面Gまで掘削して土壌を除去することにより、のり面の造成が完了する。
【0108】
このように造成されたのり面は、改質土壌壁w5〜w7からなる土留壁Wにより構成される。そして、のり面の想定崩壊面Eと、改質土壌壁w5〜w7とが交差して得られる面をそれぞれ交差面E1〜E3とする。このとき、想定崩壊面E上の土壌(想定崩壊面Eから仕上げのり面Fまでの土壌)全体が斜面に沿って滑る力Tを、その場に留める力は、交差面E1〜E3の合計せん断強度である。
従って、「のり面の土壌をその場に留める全体力H」は、H=(E1の面積+E2の面積+E3の面積)×(単位面積当たりせん断強度)で計算できる。つまり、必要とされる「のり面の土壌をその場に留める全体力H」は、「想定崩壊面Eと改質土壌壁wとが交差して得られる交差面の全体面積」と「単位面積当たりせん断強度」との積であり、施工条件により全体面積と単位面積当たりせん断強度とを自由に組み合わせることができる。
【0109】
また、例えば、上方に位置する改質土壌壁w5と、下方に位置する改質土壌壁w6とは、それぞれ被支持改質壁と支持改質壁の関係となる。つまり、被支持改質壁w5にかかる地盤の土圧は、倒れ荷重となって支持改質壁w6に伝達されるが、この倒れ荷重を、支持改質壁w6が支持する。
【0110】
これら改質土壌壁wの強度は軟岩と土砂の中間程度であり、さらに、改質土壌壁wはセメントを固化材に用いているため弱アルカリ性となっているため、植生に適している。そのため、当該のり面表面には、植生を施してのり面の緑化を行い、良好な景観を有すると共に道路周縁の空気浄化に役立てることが可能である。
【0111】
〔別実施の形態〕
上述した実施例においては、第1区画を形成し、この第1区画に連続するように、第2区画を形成した。しかし、このような形態に限らず、数十メートルに及ぶような長い土留壁を構築するような場合には、第1区画及び第2区画以外にも別の区画を形成し、最終的に各区画を連続させるようにすれば、連続した地盤の土壌改質ができ、連続した土留壁を構築することができる。
【0112】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、同様の作用効果を奏するものであれば、各部構成を適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の土留壁構築に適用する改質土壌壁構築方法の第1の実施の形態の概要を示した図
【図2】本発明の土留壁構築に適用する改質土壌壁構築方法の第2の実施の形態の概要を示した図
【図3】各区画形成工事における掘削孔を示した図(a)第1区画形成工事における掘削孔(b)第2区画形成工事における掘削孔
【図4】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図5】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図6】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図7】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図8】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図9】基礎構築地の断面図
【図10】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図11】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図12】区画形成工事における掘削孔の断面図
【図13】構造物が近接している場所における本発明の土留壁の上面視概略図
【図14】構造物が近接している場所における本発明の土留壁の斜視図
【図15】のり面における本発明の土留壁の概略図
【図16】のり面の想定崩壊面と掘削孔とが交差して得られる交差面を示した図
【符号の説明】
【0114】
A 第1区画形成工事
a1 第1掘削工程
a2 第2掘削工程
a3 埋め戻し工程
a4 固化工程
B 第2区画形成工事
b1 第1掘削工程
b2 第2掘削工程
b3 埋め戻し工程
b4 固化工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に地盤の土圧を支持する土留め壁を構築する土留壁構築方法であって、
地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程と、
前記第1掘削工程により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程と、
前記第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、前記第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、前記第2混合土を投入する埋め戻し工程と、
前記埋め戻し工程後、所定時間放置して前記第1〜2混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、 前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記第1掘削工程、前記第2掘削工程、前記埋め戻し工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製し、
前記改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における前記被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある土留壁の構築方法。
【請求項2】
地盤中に地盤の土圧を支持する留め壁を構築する土留壁構築方法であって、
地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程と、
地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程と、
前記掘削工程後、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、 前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記固化材載置工程、前記掘削工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製し、
前記改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における前記被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある土留壁の構築方法。
【請求項3】
少なくとも前記被支持改質壁において、前記固化工程の前に、各掘削孔に親杭部材を埋め込む請求項1又は2に記載の土留壁の構築方法。
【請求項4】
前記親杭部材を埋め込む際に、前記親杭部材の下端を地盤に根入れする請求項3に記載の土留壁の構築方法。
【請求項5】
前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後、前記親杭部材と当接する横架部材を設ける請求項3又は4に記載の土留壁の構築方法。
【請求項6】
地盤中に地盤の土圧を支持する土留め壁を構築する土留壁構築方法であって、
地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程と、
前記第1掘削工程により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程と、
前記第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、前記第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、前記第2混合土を投入する埋め戻し工程と、
前記埋め戻し工程後、所定時間放置して前記第1〜2混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、 前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記第1掘削工程、前記第2掘削工程、前記埋め戻し工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するとき、
前記第2掘削工程において前記掘削孔を前記第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と前記掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように前記第2所定深度を設定してある土留壁の構築方法。
【請求項7】
地盤中に地盤の土圧を支持する留め壁を構築する土留壁構築方法であって、
地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程と、
地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程と、
前記掘削工程後、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、 前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記固化材載置工程、前記掘削工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するとき、
前記掘削工程において前記掘削孔を前記第1所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と前記掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように前記第1所定深度を設定してある土留壁の構築方法。
【請求項1】
地盤中に地盤の土圧を支持する土留め壁を構築する土留壁構築方法であって、
地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程と、
前記第1掘削工程により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程と、
前記第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、前記第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、前記第2混合土を投入する埋め戻し工程と、
前記埋め戻し工程後、所定時間放置して前記第1〜2混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、 前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記第1掘削工程、前記第2掘削工程、前記埋め戻し工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製し、
前記改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における前記被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある土留壁の構築方法。
【請求項2】
地盤中に地盤の土圧を支持する留め壁を構築する土留壁構築方法であって、
地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程と、
地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程と、
前記掘削工程後、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、 前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記固化材載置工程、前記掘削工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製し、
前記改質土壌壁を複数構築する際、一つの改質土壌壁を被支持改質壁とし、他の改質土壌壁を、前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後における前記被支持改質壁の倒れ荷重を支持する支持改質壁とするように構築してある土留壁の構築方法。
【請求項3】
少なくとも前記被支持改質壁において、前記固化工程の前に、各掘削孔に親杭部材を埋め込む請求項1又は2に記載の土留壁の構築方法。
【請求項4】
前記親杭部材を埋め込む際に、前記親杭部材の下端を地盤に根入れする請求項3に記載の土留壁の構築方法。
【請求項5】
前記被支持改質壁に隣接する作業空間を掘削形成した後、前記親杭部材と当接する横架部材を設ける請求項3又は4に記載の土留壁の構築方法。
【請求項6】
地盤中に地盤の土圧を支持する土留め壁を構築する土留壁構築方法であって、
地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削して排土する第1掘削工程と、
前記第1掘削工程により形成された各掘削孔に固化材を投入し、その状態で第2所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との第1混合土を作製する第2掘削工程と、
前記第1掘削工程時に排土された土壌に固化材を添加して第2混合土を作製し、前記第2掘削工程が完了した後の掘削孔に、前記第2混合土を投入する埋め戻し工程と、
前記埋め戻し工程後、所定時間放置して前記第1〜2混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、 前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記第1掘削工程、前記第2掘削工程、前記埋め戻し工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するとき、
前記第2掘削工程において前記掘削孔を前記第2所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と前記掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように前記第2所定深度を設定してある土留壁の構築方法。
【請求項7】
地盤中に地盤の土圧を支持する留め壁を構築する土留壁構築方法であって、
地盤の表面に固化材を載置する固化材載置工程と、
地盤の表面に固化材を載置した状態で、地盤の表層部を、所定間隔を設けて複数の掘削孔を第1所定深度まで掘削することにより前記固化材と土壌との混合土を作製する掘削工程と、
前記掘削工程後、所定時間放置して前記混合土を固化させる固化工程とによって第1区画を形成する第1区画形成工事、および、 前記第1区画を形成する際に掘削した各掘削孔の間の地盤において、前記固化材載置工程、前記掘削工程、及び、前記固化工程を行って前記第1区画に連続した第2区画を形成する第2区画形成工事を行うことにより地盤に改質土壌壁を作製するとき、
前記掘削工程において前記掘削孔を前記第1所定深度まで掘削する際、のり面の想定崩壊面と前記掘削孔とが交差して得られる交差面の面積が所定値以上になるように前記第1所定深度を設定してある土留壁の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図13】
【図14】
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【図16】
【公開番号】特開2006−57242(P2006−57242A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237506(P2004−237506)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(504151734)株式会社森本組 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(504151734)株式会社森本組 (6)
【Fターム(参考)】
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