説明

土質試料の採取装置および土質試料の採取方法

【課題】根固め改良土(未固結土)を採取する土質試料採取装置および土質試料採取方法を提供する。
【解決手段】土質試料の採取装置2は、土質試料採取用容器であるシリンダケース5と、土質試料採取用シリンダケース5の下端部に取り付けた下部昇降ガイドレール部材4と、同試料採取用シリンダケース5内を昇降する上部ピストン6及び下部ピストン7と、直動形アクチュエータ8と、下部ピストン7の下方へ突き出された出力ロッド8bへ設けられたロック解除入力部材9と、下降したロック解除入力部材9と連係する配置に設けられたロック解除指示部材15と、上部ピストン6の上面部へ設置された上部フレーム12と、上部フレーム12の内側に設置された駆動エネルギ源部16と、下部ピストン7の下面に設置されたロック部材14とで構成され、プレボーリングされた杭孔3の中へ下ろして試料採取に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土質試料の採取技術の分野、特に言えばプレボーリングされた杭孔の下端部近傍に存在する未固結状態の改良土を、既成杭の埋め込みに先行して採取する土質試料の採取装置、および同採取装置による土質試料採取方法の技術分野に属する。
更に重ねていえば、プレボーリング方式の拡大根固め杭工法の実施に際して必要な根固め改良土(未固結土)を採取する土質試料の採取装置および同採取装置を使用した土質試料採取方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
既成コンクリート杭又は鋼管杭の埋め込み工法、とりわけプレボーリング工法による拡大根固め杭工事(高支持力既成杭工事)の実施においては、設計支持力の設定に余裕がないので、施工時の細かな手順のバラツキにより、品質、性能に大きな影響を与えることが広く認識され、施工時のプロセス管理を徹底することの重要性が知られている。
そのため施工計画時から細かな手順を検討し、実際の施工においてプロセス管理を入念に行う必要がある。例えば土とセメントミルクが適切に攪拌混合されて均質なソイルセメントが造成されているか否か、品質、性能に有害な粘性土塊などが含まれていないか等々、根固め部の施工品質や強度を事前に(いわゆる川上段階で)調査して把握・確認して、施工方法やセメントミルクの配合を決定するプロセス管理を現場の実施工に活かすことが要望されている。
よって、設計支持力の発現に重要な根固め部の実施工品質を事前に調査し把握・確認する手段として、根固め部の未固結状態の土質試料をそのままの状態で採取し、室内試験等で迅速に確認して実施工に反映させることが必要である。
【0003】
そのため根固め部の未固結土をそのままの状態で採取でき、根固め強度や品質の把握および土塊の混入状況を実態に即した試料とし採取し調査、確認できる土質試料採取装置の開発が必要とされている。
因みに、そうした土質試料採取装置の開発に望まれる重要なポイントをまとめると、次の通りである。
(イ)根固め部が存在する地下の杭孔先端部まで採取装置を下ろして土質試料を採取する作業を、土質試料が未だ固結しない時間内(好ましくは1時間内)に迅速に効率よく採取できること。
(ロ)採取装置を杭孔先端の根固め部まで下ろす間に、泥水や改良土等を採取装置内に浸入させない水密的構造(又は防水構造)とし、もって採取装置内に不要な泥膜を付着させず、或いは杭孔の上部で浸入した泥水を試料採取ポイントの根固め部へ持ち込んで根固め部の品質を悪化させる原因を作らない構造であること。
(ハ)根固め部の品質確認項目としては、セメントミルクが混合攪拌された改良土の圧縮強度のほか、杭孔の掘削時に発生した土塊が改良土に混入した状況の確認がある。土塊の混入状況を確認するためには、改良土に混入した土塊をそのままの状態で取り込んで採取可能であること。
(ニ)掘削機のオーガーロッドや杭打ち機の駆動軸などを使用しないで、クレーンワイヤーによる吊り下げ方式によっても根固め部の未固結土(土質試料)を採取できる構造であること。
【0004】
従来、根固め部が存在する杭孔先端部まで採取装置を下ろして土質試料を採取する作業を実施する先行技術としては、例えば下記の特許文献1に開示された発明に係る「土質サンプル採取装置」が公知である。これは掘削機の回転シャフトへ着脱可能に取り付けて使用するサンプル採集ケースの構成であり、主に中堀り工法に使用される。掘削機の回転シャフトが正転して掘削する間は、サンプル採集ケースの取り込み口の扉は閉まった状態を保ち土砂はケース内へ侵入しない。しかし、掘削を終了して掘削機の回転シャフトが逆回転するときは、前記扉が土砂の圧力で開き、周囲の土砂が取り込み口からサンプル採集ケース内へ取り込まれる構成である。
即ち、公知の「土質サンプル採取装置」は、採集ケースの上面壁にサンプル取り込み口を設け、円周方向にスライド可能な扉で閉じている。掘削機の回転シャフトが正転している間は、同扉に形成した駆動板が土砂の抵抗作用を受けて閉じた状態を保つ。しかし、同回転シャフトを引き揚げるため逆回転すると、土砂の抵抗作用を逆向きに受けた前記扉はサンプル取り込み口を開き、周囲の土砂をケース内へ取り込んで採取できる構成である。
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された発明に係る「土質サンプル採取装置」には、次のような問題点、欠点が認められる。
(i)回転シャフトが逆転すると、土砂の抵抗作用を受けて扉がスライドしてサンプル取り込み口が開かれ、周囲の土砂を取り込んで採取できるが、どの段階で又はどの位置でサンプル取り込み口が開かれたか、或いはどれほどの開度まで開かれて土質試料を採取したかは、地上からは不明である。そして、回転シャフトが逆回転しつつ、周囲の土砂を流動状態で取り込んで採取することになるから、どの位置のどのような状態の土砂を取り込み採取したかも不明である。上記(ハ)で説明したように、根固め部の土質試料の品質確認項目で重要なことは、セメントミルクが混合攪拌された改良土の圧縮強度を推定するほか、土塊の混入状況を確認することである。しかるに土塊の混入状況の確認は、原位置の改良土と土塊をそのままの状態で採取してはじめて知り得ることである。その点、上記特許文献1に開示された発明に係る「土質サンプル採取装置」は、構造上サンプル取り込み口が小さいとか、サンプル取り込み口の扉の開度が全開でなかった場合には、取り込める土塊でも取り込んでない事態が考えられ、結果的に土塊の混入状況の確認項目が不十分となりがちである。また、回転シャフトの回転状態(速度)の如何によっては土塊を弾き飛ばして取り込めない場合もあるなど、採取した土質試料をそのまま根固め部の改良土の実体としては把握し難いケースが考えられる。
(ii)次に、特許文献1に開示された発明に係る「土質サンプル採取装置」におけるサンプル採集ケースのサンプル取り込み口は、回転シャフトの回転方向へスライド可能な扉で閉じた程度にすぎない。しかも回転シャフトの正転時の土砂の抵抗作用を受けて閉鎖状態が保たれ、逆に、回転シャフトの逆転時の土砂の抵抗作用で扉が開かれる程度の構造なので、とうてい高い水密性、防水性は望み得ず、サンプル採集ケースを根固め部へ下降させる途中段階で泥水や改良土がケース内へ浸入する懸念が多分にある。泥水が侵入すると、侵入した泥水がサンプル採集ケースの内部に無用な泥膜を付着させることになるほか、杭孔の上部で浸入した泥水を根固め部にまで持ち込むことにつながり、重要な土質試料の品質を悪化、変質させる原因となることが考えられる。また、結果的に採取した土質試料がどの位置の改良土を採取したものであるかを判別できない場合が想定される。
(iii)上記特許文献1記載の「土質サンプル採取装置」の実施例は、掘削機の回転シャフトへ着脱可能に取り付けて使用する構成であり、中堀り工法に使用されている。しかし、プレボーリング工法により杭孔を掘削し、掘削した土砂とセメントミルクを攪拌混合した後に、杭孔下端部の未固結状態の改良土を、既成杭の埋め込みに先行して採取する場合に許容される作業時間は、改良土の固結の進行との競争となり、好ましくは約1時間程度の採取作業時間と考えられる。一方、プレボーリングされた杭孔の深さは、浅い孔でも20m程度であり、深い杭孔は50m〜70mにも達するから、掘削機の回転シャフトのように途中で中継ぎ(ジョイント)が必要な構造では、そのジョイント作業に時間が掛かって、根固め部の固結が始まる以前の試料採取に間に合わない事態も考えられる。
【0006】
次に、下記の特許文献2に発明に係る「土サンプリング装置」は、本来地盤調査に使用される構成であり、そもそも上記(イ)〜(ニ)に説明した機能、構造を備える装置ではない。
即ち、地上から下ろすロッドの先端に取り付けたサンプラーを、孔底へ打ち込んで土質試料を採取することを原理とする装置である。この特許文献2に発明に係る「土サンプリング装置」の構成は、ロッドの先端に取り付けた芯体の外周面の長手方向に長い溝を、周方向に複数本形成し、この芯材を外筒体の中へ挿入して土収納部を形成する。更に前記外筒体の先端に取り付けた円錐形状の先端部品には、前記いずれか一の土収納部とのみ連通する開口部を設けてあり、前記芯体を回転させて前記開口部と連通する土収納部の位置を変えてゆき、もって複数の土質試料を採取できる構成と説明されている。
つまり、特許文献2に発明に係る「土サンプリング装置」は、本来の目的が地盤調査の土質試料をサンプリングする構成であり、そもそも本発明が目的とする根固め部の改良土(土質試料)を採取する機能や構造を備えていない。もとより改良土中の土塊をそのまま取り込んで採取する構成にもなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平6ー21945号公報
【特許文献2】特開2007−120165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる目的は、杭孔先端部の根固め部に造成された未固結状態の改良土を、既成杭の埋め込みに先行して採取する土質試料採取装置であって、上記した(イ)〜(ニ)の性能、機能を必要、十分に発揮する採取装置を提供することである。
更に具体的に言うと、本発明の目的は、根固め部が存在する杭孔先端部まで採取装置を下ろして土質試料を採取する作業を、改良土が未だ固結しない時間内(好ましくは1時間以内)に、迅速に効率よく採取できる土質試料採取装置および採取方法を提供することである。
本発明の次の目的は、採取装置を杭孔先端の根固め部まで下ろす間に、泥水や改良土等を採取装置内に浸入させない水密的構造(又は防水構造)であり、もって採取装置内に不要な泥膜を付着させず、或いは杭孔の上部で浸入した泥水を試料採取ポイントの根固め部へ持ち込んで、根固め部改良土の品質を悪化させる原因を作らない土質試料採取装置および採取方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、根固め部の品質確認項目として重要な、セメントミルクが混合攪拌された改良土の圧縮強度のほか、杭孔の掘削時に発生した土塊が改良土に混入した状況を確認できるように、改良土に混入した土塊をそのままの状態で取り込んで採取可能な構成の土質試料採取装置および採取方法を提供することである。
本発明の目的は、掘削機のオーガーロッドによらず、クレーンワイヤーによる吊り下げ方式によって杭孔先端(根固め部)の未固結状態の改良土(土質試料)を容易に確実に採取できる土質試料採取装置および採取方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る土質試料の採取装置2は、
土質試料採取用の容器である垂直なシリンダケース5と、
前記土質試料採取用シリンダケース5の下端部に取り付けた、杭孔3の孔底3aへ着底させる下部昇降ガイドレール部材4と、
前記試料採取用シリンダケース5の上端開口部と下端開口部を水密的に閉鎖し、且つ同試料採取用シリンダケース5内を昇降する上部ピストン6および下部ピストン7と、
前記上部ピストン6および下部ピストン7が外管8aへ前記の位置関係で結合された直動形アクチュエータ8と、
前記直動形アクチュエータ8の出力ロッド8bは前記下部ピストン7の下方へ突き出され、同出力ロッド8bの下端部へ設けられたロック解除入力部材9と、
前記下部昇降ガイドレール部材4の下部に、下降した前記ロック解除入力部材9と連係する配置に設けられたロック解除指示部材15と、
前記上部ピストン6の上面部へ固定して垂直上方へ立ち上がる形に設置され、上端にジョイント部12aを設けた上部フレーム12と、
前記上部フレーム12の内側に設置されて前記直動形アクチュエータ8と接続された駆動エネルギ源部16と、
および前記下部ピストン7の下面に設置され、前記ロック解除入力部材9を拘束して前記直動形アクチュエータ8の始動をロックするロック部材14とで構成されており、
前記上部フレーム12の上端のジョイント部12aが地上の作業機で吊り支持され、プレボーリングされた杭孔3の中へ下ろして前記下部昇降ガイドレール部材4の下端を孔底3aへ到達させ、下部ピストン7が試料採取用シリンダケース5の下端開口より下方へ露出するように下降させて同下部ピストン7と上部ピストン6との間へ未固結状態の改良土30が進入することを促し、更に上記直動形アクチュエータ8の出力ロッド8b下端のロック解除入力部材9を下部昇降ガイドレール部材4のロック解除指示部材15と連係させてロック解除入力を生じさせ、同解除入力により直動形アクチュエータ8を始動させて上部ピストン6と下部ピストン7及びその間へ進入した改良土30を共に上昇させ、試料採取用シリンダケース5内へ復帰させて土質試料を取り込み、同シリンダケース5を密閉状態に保持して地上へ引き揚げ回収されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した土質試料の採取装置2において、
直動形アクチュエータ8のロック解除入力を受ける出力ロッド8bは下部ピストン7の下面よりも下方へ突き出され、その下端部に、ロック解除入力部材9として出力ロッド8bの軸線と垂直方向の両側へ突き出る一対のカムフォロア軸9a、9aが設けられており、
前記カムフォロア軸9aを一方向へ回転可能に受け止めるロック部材14が下部ピストン7の下面に固定して設けられ、前記ロック部材14は、下部昇降ガイドレール部材4を伝って下部ピストン7および上部ピストン6を非回転状態で昇降させる構成であり、
一方、下部昇降ガイドレール部材4の下部に設けられたロック解除指示部材15は、前記一対のカムフォロア軸9a、9aが個別に接触する一対の直動カムプレート15、15で構成され、前記一対の直動カムプレート15、15は、前記出力ロッド8bが上下方向に進退可能な間隔を開けた配置で下部昇降ガイドレール部材4、4の下部に垂直に設置され、該一対の直動カムプレート15、15の上端部には、前記一対のカムフォロア軸9a、9aが接触するカム曲線部15aが、前記出力ロッド8bへ一定の回転角に及ぶ回転を生じさせるべく相互に正反対の向きに形成されており、
前記一対の直動カムプレート15、15のカム曲線部15aへ、下降した前記出力ロッド8bのロック解除入力部材9を構成する一対のカムフォロア軸9a、9aが接触しつつ一定ストローク下降動作することにより、前記出力ロッド8bへ生じた一定回転角の回転によりカムフォロア軸9aがロック部材14から外れてロック解除となり、直動形アクチュエータ8が始動して上部ピストン6および下部ピストン7をその間へ進入した改良土と共に土質試料採取要シリンダケース5内へ復帰させる構成であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した土質試料の採取装置2において、
直動形アクチュエータ8は、上部ピストン6および下部ピストン7が固定された外管8bをシリンダとし、その内部に出力ロッド8bおよび油圧ピストン8cが設置された油圧シリンダとして構成されており、
上部ピストン6の上面部に固定した上部フレーム12の枠内に設置された駆動エネルギ源部16は、前記油圧シリンダ8を駆動させる油圧を内蔵したアキュームレータとして構成され、
前記アキュームレータ16と前記油圧シリンダ8の油圧ピストン8cの上側室とが連通状態に接続されており、
油圧シリンダ8の出力ロッド8bの下端のロック解除入力部材9が下部昇降ガイドレール部材4のロック解除指示部材15へ接して出力ロッド8bが回転され、カムフォロア軸9aがロック部材14から外れてロック解除されることにより、出力ロッド8bがロック解除指示部材15へ接して得た反力を基に、前記油圧シリンダ8の外管8aが油圧作用により上部ピストン6および下部ピストン7を上昇させて試料採取用シリンダケース5内へ復帰させ、同上部ピストン6と下部ピストン7の間へ進入した改良土を土質試料として試料採取用シリンダケース5内へ取り込み密閉する構成であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した土質試料の採取装置において、
試料採取用シリンダケース5の上端部に、上部ピストン6の上昇限度位置を規定する上限位置ストッパ20が設置されており、
下部ピストン7の下面にはブレーキピース21が突き出されており、一方、試料採取用シリンダケース5の下部フランジ5aの下方部分には、前記ブレーキピース21が接触するブレーキローラ22がローラ支持アーム23により下部ピストン7の直径線方向の内外へ出入りが自在に設置されており、
前記ブレーキピース21の下端部を前記ブレーキローラ22で一定強さの圧力で支持させる弾性支持機構24により前記ローラ支持アーム23の一端部が支持されており、
下部昇降ガイドレール部材4が孔底3aへ着底した段階で、下部ピストン7は、前記ブレーキピース21がブレーキローラ22を押し退けて通る押し込み力を受けて下降動作を進められ、
逆に上部ピストン6は直動形アクチュエータ8の駆動力で上昇され、試料採取シリンダケース5内の上端へ到達し前記上限位置ストッパへ突き当たって止められ、且つ前記下部ピストンのブレーキピース21は前記ブレーキローラ22を押し退けて上昇しその上に乗って止まる構成であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4に記載した土質試料採取装置2を使用して杭孔3の孔底近傍の未固結状態の改良土30を土質試料として採取する方法であって、
上部ピストン6の上面部へ固定して垂直上方へ立ち上がらせた上部フレーム12の上端のジョイント部12aと地上の作業機の駆動軸1とを接続し吊り支持させて杭孔3の中へ下ろし、
下部昇降ガイドレール部材4の下端が杭孔の孔底3aへ着底した段階で、前記駆動軸1へ下向きの押し込み力を付与し、上部フレーム12を通じて上部ピストン6および下部ピストン7を下降させ、下部ピストン7が試料採取用シリンダケース5の下端開口部よりも下方へ露出するように押し出させて上部ピストン6と下部ピストン7の間へ未固結状態の改良土30が進入することを促す段階と、
前記下部ピストン7の下方へ突き出した出力ロッド8bの下端部のロック解除入力部材9を、下部昇降ガイドレール部材4のロック解除指示部材15と接触させてロック解除入力を生じさせ、
前記ロック解除入力により直動形アクチュエータ8を始動させ、同直動形アクチュエータ8により、上部ピストン6と下部ピストン7をその間へ進入した改良土30と共に上昇させて試料採取用シリンダケース5内へ復帰させ取り込む段階と、
更に、地上の作業機の駆動軸1を引き揚げて土質試料採取装置2を地上へ回収する段階とから成ることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜4に記載した土質試料採取装置2を使用して杭孔3の孔底近傍の未固結状態の改良土30を土質試料として採取する方法であって、
上部ピストン6の上面部へ固定して上方へ立ち上がらせた上部フレーム12の上端のジョイント部12aを地上の作業機であるクレーン50のワイヤー51で吊り支持させて杭孔3の中へ下ろし、
下部昇降ガイドレール部材4の下端が杭孔3の孔底3aへ着底した段階で、上部ピストン6へ負荷する上部フレーム12等の重量を作用させて上部ピストン6および下部ピストン7を下降させ、試料採取用シリンダケース5の下部開口より下方へ下部ピストン7が露出するように押し出させ、上部ピストン6と下部ピストン7の間へ未固結状態の改良土30が進入することを促す段階と、
前記下部ピストン7の下方へ突き出した出力ロッド8bの下部へ取り付けたロック解除入力部材9を、下部昇降ガイドレール部材4のロック解除指示部材15と接触させてロック解除入力を生じさせ、
前記ロック解除入力により直動形アクチュエータ8を始動させ、同直動形アクチュエータ8により上部ピストン6と下部ピストン7をその間へ進入した改良土30と共に上昇させて試料採取用シリンダケース5内へ復帰させ取り込む段階と、
更に、クレーン50のワイヤー51を巻き上げて土質試料採取装置2を地上へ回収する段階とから成ることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載した発明は、請求項5又は6に記載した土質試料の採取方法において、
下部昇降ガイドレール部材4の下に一定高さの高さ調整枠60を取り付けて、杭孔3の孔底3aから一定高さ上方に存在する改良土30を取り込み採取することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜4に記載した発明に係る土質試料の採取装置2は、試料採取用シリンダケース5が、その上下の開口部を上部ピストン6と下部ピストン7で水密的に閉鎖されているので、この採取装置2は、杭孔先端の孔底3a(根固め部)まで下ろす間に泥水や改良土等がシリンダケース5内に浸入する懸念は皆無の防水構造である。よって、採取装置2の試料採取用シリンダケース5内に不要な泥膜が付着すること、或いは杭孔3の上部で浸入した泥水を試料採取ポイントの根固め部へ持ち込んで、根固め部の改良土30の品質を悪化、変質させる原因を作ることは決してない。
本発明に係る土質試料の採取装置2は、試料採取用容器として必要十分に大きなシリンダケース5を使用し、その上下の開口部を上部ピストン6と下部ピストン7で閉鎖すると共に、土質試料の採取に際してのみ当該シリンダケース5の下端開口よりも下方へ下部ピストン7が露出するように下降させて、上部ピストン6と下部ピストン7の間へ未固結状態の改良土30が進入することを促す構成である。よって、仮に未固結状態の改良土30中に粒径の大きな土塊が混じっていた場合でも、その土塊が上部ピストン6と下部ピストン7の間へ進入することに障害のない構成であるから、土塊が混じった改良土30をそのままの状態で進入させ、上部ピストン6と下部ピストン7と共に試料採取用シリンダケース5内へ引き揚げて、同シリンダケース5内へそっくり取り込むことができる。そして、シリンダケース5内へ取り込んだ土質試料は、直ちに上部ピストン6と下部ピストン7が試料採取用シリンダケース5の上下の開口部を水密的に密閉する。したがって、根固め部の品質確認項目として重要な、セメントミルクが混合攪拌された改良土の圧縮強度の確認、および杭孔3の掘削時に発生した土塊が改良土30に混入しているか否かを実体に即して正確に把握、確認できる。
【0017】
本発明に係る土質試料の採取装置2は、例えば掘削機のオーがーロッドや杭打ち機の駆動軸1の下端へ取り付けて杭孔3中へ下ろし、孔底3aへ到達させて、その付近の改良土30を土質試料として採取する方法(請求項5に係る発明)を実施できるほか、前記駆動軸1などの利用に頼らず、クレーン50のワイヤー51に吊り下げる方式によって杭孔先端(根固め部)の未固結状態の改良土(土質試料)30を採取する方法(請求項6に係る発明)を実施可能である。
後者の方法によれば、駆動軸1などの継ぎ足し作業等は無用であり、プレボーリングした杭孔3が地下50mないし70mと深くても、その杭孔先端部まで採取装置2を一気に短時間に下ろして土質試料の採取作業を進めることができる。また、土質試料の採取作業を終了した採取装置2は、やはり一気に地上まで引き揚げて迅速に回収することができる。よって、改良土30が未だ固結しない時間内(好ましくは1時間内)に迅速に効率よく土質試料を採取でき、プレボーリング方式の拡大根固め杭工法の実施における入念なプロセス管理の実施にすこぶる好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る土質試料の採取装置の使用状態を示す立面図である。
【図2】A〜C図は、本発明に係る土質試料の採取装置による土質試料採取の工程を順に概念的に示した立面図である。
【図3】本発明に係る土質試料の採取装置の構造詳細を一部分を破断して示した立面図である。
【図4】A図は図3のa−a矢視図、Bは図3のb−b矢視図であってロック状態を示し、C図は同じ視点でロック解除状態を示す。
【図5】図3のa矢視以下の部分の左側面図である。
【図6】Aは図3のc−c矢視図、B図は同部分の斜視図である。
【図7】A図は図3のa−b部分の拡大した断面図、B図は前記A図の90度向きを変えて見た正面図である。
【図8】A図は図7B中に円弧dで囲んだ部分の拡大した断面図、B図は図8Aに指示したe、e線矢視図である。
【図9】図2Aとは異なった土質試料採取方法の実施例を示す立面図である。
【図10】A図は上記実施例の土質試料採取装置を使用に備えて待機する際、又は地下から引き揚げて回収した場合の管理保管状態を示した正面図、B図はその側面図である。
【図11】図1の駆動軸に代わりクレーンを使用する採取装置の使用状態を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る土質試料の採取装置2は、土質試料の採取用の容器である垂直なシリンダケース5と、
前記試料採取用シリンダケース5の下端部へ取り付けた、杭孔3の孔底3aへ着底させる下部昇降ガイドレール部材4と、
前記試料採取用シリンダケース5の上端開口部と下端開口部を水密的に閉鎖し、且つ同試料採取用シリンダケース5内を昇降する上部ピストン6および下部ピストン7と、
前記上部ピストン6および下部ピストン7が外管8aへ一定の位置関係で結合された直動形アクチュエータ8と、
前記直動形アクチュエータ8の出力ロッド8bが前記下部ピストン7の下方へ突き出され、同出力ロッド8bの下端部へ設けられたロック解除入力部材9と、
前記下部昇降ガイドレール部材4の下部に、下降した前記ロック解除入力部材9と連係する配置に設けられたロック解除指示部材15と、
前記上部ピストン6の上面部へ固定して垂直上方へ立ち上がる形に設置され、上端にジョイント部12aを設けた上部フレーム12と、
前記上部フレーム12の内側に設置された、前記直動形アクチュエータ8の駆動エネルギ源部16とで構成されている。
この土質試料採取装置2は、上部フレーム12の上端のジョイント部12aを地上の作業機で吊り支持させ、プレボーリングされた杭孔3へ下ろして孔底3aへ前記下部昇降ガイドレール部材4の下端を到達させる。その上で、下部ピストン7が試料採取用シリンダケース5の下方へ露出するように下降させ、上部ピストン6と下部ピストン7の間へ未固結状態の改良土30が進入することを促がす。更に上記直動形アクチュエータ8の出力ロッド8bの下端のロック解除入力部材9を、下部昇降ガイドレール部材4の下部のロック解除指示部材15と連係させてロック解除入力を生じさせ、直動形アクチュエータ8を始動させて、上部ピストン6と下部ピストン7及びその間へ進入した改良土30を共に上昇させ、試料採取用シリンダケース5内へ復帰させて土質試料を取り込み、同シリンダケース5は密閉状態を保持して地上へ引き揚げ回収する。
【0020】
上記の土質試料採取装置2を使用して杭孔3の孔底3a近傍に存在する未固結状態の改良土30を土質試料として採取する方法は、上部ピストン6の上面部へ固定して垂直上方へ立ち上がらせた上部フレーム12の上端のジョイント部12aと地上の作業機である、例えば杭打ち機の駆動軸1とを接続して吊り支持させ杭孔3の中へ下ろす。
そして、下部昇降ガイドレール部材4の下底が杭孔2の孔底3aへ着底した段階で、前記駆動軸1へ下向きの押し込み力を付与し、上部フレーム12を通じて上部ピストン6および下部ピストン7を下降させ、下部ピストン7が試料採取用シリンダケース5の下部開口より下方へ露出するように押し出させて、上部ピストン6と下部ピストン7の間へ未固結状態の改良土30が進入することを促す。
更に、前記下部ピストン7の下方へ突き出した出力ロッド8bの下端部のロック解除入力部材9を、下部昇降ガイドレール部材4のロック解除指示部材5と連係させてロック解除入力を生じさせる。
前記ロック解除入力により直動形アクチュエータ8を始動させ、同直動形アクチュエータ8により、上部ピストン6と下部ピストン7及びその間へ進入した改良土30を共に上昇させ、試料採取用シリンダケース5内へ復帰させて取り込む。
しかる後に、地上の作業機である、杭打ち機の駆動軸1を引き揚げて土質試料採取装置2を地上へ回収する。
【0021】
異なる土質試料採取方法としては、上部ピストン6の上面部へ固定して垂直上方へ立ち上がらせた上部フレーム12の上端のジョイント部12aをクレーン50のワイヤー51で吊り支持させて杭孔3の中へ挿入する。
そして、下部昇降ガイドレール部材4の下底が杭孔3の孔底3aへ着底した段階で、上部ピストン6へ負荷する上部フレーム12等の重量を作用させて上部ピストン6および下部ピストン7を下降させ、下部ピストン7が試料採取用シリンダケース5の下部開口よりも下方へ露出するように押し出させて上部ピストン6と下部ピストン7の間へ未固結状態の改良土30が進入することを促す。
更に、前記下部ピストン7の下方へ突き出した出力ロッド8bの下部のロック解除入力部材9を、下部昇降ガイドレール部材4のロック解除指示部材15と接触させてロック解除入力を生じさせ、このロック解除入力により直動形アクチュエータ8を始動させ、同直動形アクチュエータ8により上部ピストン6と下部ピストン7及びその間へ進入した改良土30を共に上昇させて試料採取用シリンダケース5内へ復帰させ取り込む。
しかる後に、クレーン50のワイヤー51を巻き上げて土質試料採取装置2を地上へ回収する。
【実施例1】
【0022】
以下に、本発明を、図示した実施例に基づいて説明する。
先ず図1は、一例として採用した杭打ち機(図示は省略)の駆動軸1の下端部へ、本発明の土質試料採取装置2を取り付けて杭孔3の中へ下ろし、孔底3aの付近に未固結状態で存在する改良土30を土質試料として採取する方法の実施例を示す。図2A〜Cは、本発明の土質試料採取装置2による土質試料採取の工程と手法を順に概念的に示している。そして、図3以下は、本発明による土質試料採取装置2の実施例の構成を具体的に示している。
【0023】
図3に示した土質試料採取装置2は、土質試料の採取容器であるシリンダケース5を垂直な向きとし、これを主要部として構成している。即ち、前記シリンダケース5の下端部に、プレボーリングされた杭孔3へ挿入した際に孔底3aへ着底させる下部昇降ガイドレール部材4を取り付けている。
前記試料採取用シリンダケース5内の上端開口部と下端開口部には、これらをそれぞれ水密的に閉鎖して、同試料採取用シリンダケース5内を昇降する上部ピストン6および下部ピストン7が設置されている。
前記下部ピストン7および上部ピストン6は、直動形アクチュエータ(一例として油圧シリンダ)8のシリンダを形成する外管8aへ、上記したように上端開口部と下端開口部を丁度閉鎖する位置関係で結合されている。
前記直動形アクチュエータ8の出力ロッド8bの下部は前記下部ピストン7の下方へ突き出されており、同出力ロッド8bの下端部にロック解除入力部材9が設けられている。
前記下部昇降ガイドレール部材4の下部に、下降した前記ロック解除入力部材9と連係する配置でロック解除指示部材10が設けられている。
前記上部ピストン6の上面部へ固定して垂直上方へ立ち上がる形に上部フレーム12が設置され、その上端にジョイント部材12aが設けられている。
前記上部フレーム12の内側部分に、前記直動形アクチュエータ8の駆動エネルギ源部(一例としてアキュームレータ)16が設置され、この駆動エネルギ源部16の下部の供給ノズル16aと、上記直動形アクチュエータ8の上端部の給油口とが直結された構成とされている。
【0024】
上記土質試料採取装置2の各構成を更に具体的に説明する。
土質試料採取用の容器であるシリンダケース5は、一例として内径が300mm、高さが350mm程度の鋼製円筒体で形成されている。この試料採取用シリンダケース5の下部外周のフランジ部5aの下に、図3と図5および図6A、Bに示したとおり、垂直下方へ平行に延びる2本の角材で成るレールとして構成した下部昇降ガイドレール部材4、4の上端が、前記フランジ部5aへボルト接合5b(図7A)により剛に取り付けられている。前記2本の下部昇降ガイドレール部材4、4の下端は、底盤4aおよび補強リブ4bと一体的に剛接合して、全体を剛構造の枠体として構成されている。
【0025】
前記試料採取用シリンダケース5の内筒部に、上部ピストン6及び下部ピストン7が、図3に示した通り、丁度シリンダケース5の上端開口部と下端開口部をそれぞれ水密的に閉鎖する配置で、各々は直動形アクチュエータ8の外管8aと結合して、一体的関係を保つ構成とし、もって両ピストン6、7は試料採取用シリンダケース5内を合一に昇降可能に設置されている。上部ピストン6および下部ピストン7の外周面部には、シリンダケース5の内筒面へ密接するパッキン6aと7aが設置され、水密的状態を保持して滑動する構成とされている。前記直動形アクチュエータ8の外管8aは、上部ピストン6および下部ピストン7のほぼ中心部を上下方向へ垂直に貫通する配置とされている。
【0026】
上記したように上部ピストン6および下部ピストン7のほぼ中心部を上下方向に貫通する配置とした直動形アクチュエータ8は、本実施例の場合は、前記外管8aをシリンダとし、その内部に出力ロッド8bおよび油圧ピストン8c(図3)を内蔵させた油圧シリンダとして構成されている。外管8aの下端位置は、下部ピストン7の内面と接合フランジ13によりボルト接合されている。同外管8aの上端部は上部ピストン6を貫通してその上方へ若干の長さ突き出されている。そして、同外管8aの途中位置が、接合フランジ13により上部ピストン6の内面とボルト接合されている(図3)。この直動形アクチュエータ8の上端の給油ノズル口が、その直上に位置する駆動エネルギ源部(アキュームレータ)16の下部の圧油供給ノズル16aと連通状態に接続され、油圧シリンダである直動形アクチュエータ8へ圧油を供給する構成とされている。
一方、直動形アクチュエータ8の前記出力ロッド8bの下端は、下部ピストン7から下方へ若干の長さ突き出され、その下端部にロック解除入力部材9が取り付けられている。
【0027】
図示したロック解除入力部材9は、図3と図4B、C及び図6Bが分かりやすいように、出力ロッド8bの軸線に対し垂直方向(直交方向)の両側へ突き出る一対のカムフォロア軸9a、9aで構成されている。一方、この一対のカムフォロア軸9a、9aが一方向へのみ回転することを許容する構成の一対のロック部材14、14が、下部ピストン7の下面へ固定して設けられている。このロック部材14、14は、その内側部位に形成した鉤型溝部14aへ、前記一対のカムフォロア軸9a、9aの先端が突き当たるまで進入させて、出力ロッド8bが下向きに突き出すことを止めたロック状態とされている。
因みに、油圧シリンダとして構成された直動形アクチュエータ8は、図3に概略構成を図示したように、出力ロッド8bの上端部に油圧ピストン8cを備え、この油圧ピストン8cは常時駆動エネルギ源部(アキュームレータ)16から供給される圧油の作用を受けているが、それを上記したように、ロック部材14、14の内側部位に形成した鉤型溝部14aへ、前記一対のカムフォロア軸9a、9aの先端が突き当たるまで進入させて下部ピストン7を反力として拘束し、出力ロッド8bが下向きに突き出すことを止めたロック状態とされている。
なお、図4B、Cで明解な、ロック解除入力部材9に付属する一対のハンドル9b、9bは、前記出力ロッド8bおよび一対のカムフォロア軸9a、9aを、ロック部材14、14の鉤型段部14aへ復帰させてロック状態に復帰させる回転操作のためのハンドルである。
【0028】
次に、前記ロック部材14の外側部位には、図4B、Cに見るとおり、上記した2本の下部昇降ガイドレール部材4、4の両側面を挟んで滑る滑りガイド14bが形成されており、この滑りガイド14bが下部昇降ガイドレール部材4、4を伝いつつ下降することにより、下部ピストン7および上部ピストン6の昇降動作の安定性が確保され、且つ非回転状態での昇降を実現する構成とされている。
【0029】
一方、下部昇降ガイドレール部材4、4の下部に剛接合された底盤4aおよび補強リブ4bには、図6A、Bに示したように、上記ロック解除入力部材9の下降を待ち受ける配置で、ロック解除指示部材15が設置されている(図3、図6B)。このロック解除指示部材15は、図6Bが分かり易いように、前記一対のカムフォロア軸9a、9aが個別に接触する一対の平板による直動カムプレートであり、底盤4a上に約150mm程度のせいの高さで構成されている。前記一対の直動カムプレート15、15は、両者の間に、前記出力ロッド8bが上下方向へ昇降可能(進入可能)な間隔を開けた配置で、下部昇降ガイドレール部材4の底盤4a上にほぼ垂直に立ち上がる構成で設置されている。該一対の直動カムプレート15、15の上端部には、前記一対のカムフォロア軸9a、9aが対称的関係で接触するカム曲線部15aが、前記出力ロッド8bに一定の回転角(約25度)に及ぶ回転(図4B中時計回り方向の回転)を生じさせるべく、相互に正反対向きに垂直方向の高さにして約50mmの範囲に形成されている。そして、前記カム曲線部15aの下端部には、前記一対のカムフォロア軸9a、9aの下降を止めて、所要大きさの支持反力を与える水平受け部15bが形成されている。
【0030】
したがって、上記出力ロッド8bのロック解除入力部材9を構成する一対のカムフォロア軸9a、9aが、下部ピストン7と共に下降して、前記一対の直動カムプレート15、15のカム曲線部15aへ等しく接触しつつ前記約50mmのストローク分を下降動作する間に、カム曲線部15aの案内作用により、前記出力ロッド8bへ回転角にして約25度程度の回転を生じさせる。その結果、図4Bと図4Cの対比で明かなとおり、出力ロッド8b及び一対のカムフォロア軸9a、9aの前記回転によって、一対のカムフォロア軸9a、9aは下部ピストン7のロック部材14の鉤型溝部14aから抜け外れるに至る(図4C)。その結果、下部ピストン7および外管8aを基礎とする出力ロッド8bの拘束力が解除されるため、既に駆動エネルギ源部(アキュームレータ)16から供給された圧油の作用を受けている油圧シリンダ8(直動形アクチュエータ)の油圧ピストン8cと出力ロッド8bは下向きへの前進動作を開始することになる。
一方、前記油圧ピストン8cの下室の下方部位には排気管17が接続され、この排気管17は垂直上方へ上部ピストン6を貫通させてその上方に導き出され、同排気管17の上端には排気開放用のニードルバルブ17aが設置されている。つまり、油圧ピストン8cと出力ロッド8bが上記した下向きの前進動作を開始すると、それに伴い、油圧ピストン8cの下室に溜まった空気が順次排出してゆき、油圧ピストン8cの下降動作に抵抗を生じさせない構成とされている。
【0031】
ところがこのとき、出力ロッド8bの一対のカムフォロア軸9a、9aは、上記したとおり、直動カムプレート15、15のカム曲線部15aの下端の水平受け部15bへ到達して必要十分な大きさの支持反力を受けて動けない。そのため逆に、自由な外管8bの方が反作用として上部ピストン6と下部ピストン7及び両者の間へ進入した改良土30と共に押し上げられることになる。こうして上部ピストン6と下部ピストン7は再び試料採取用シリンダケース5内へ復帰して行き、再び図3に示すように、上部ピストン6と下部ピストン7は改良土30を試料採取用シリンダケース5内へ取り込んで上下の開口部を閉鎖した状態に復元するに至る。
【0032】
ところで、上記した上部ピストン6の上面には、図示した実施例の場合、鋼製円筒を縦にほぼ二つ割りにしたに等しい湾曲形状の一対の上部フレーム12、12が向かい合わせて、上部ピストン6の外径よりは小さい(細い)配置とし、その下端のフランジ12aをボルト止め12bにより固定して垂直姿勢に設置されている。これら二つの上部フレーム12、12の内側部位に、上記油圧シリンダ8の駆動エネルギ源である油圧を貯めたアキュームレータ16が、上部フレーム12、12で抱持された形に収納して設置されている。二つの上部フレーム12、12の上端部は、フランジ継手のボルト接合18により六角ジョイント部12aと剛に接合されている。
【0033】
次に、上部ピストン6が試料採取用シリンダケース5の上端開口部へ復帰した際に、同上部ピストン6の上限位置を決めて止める上限位置ストッパ20が、図4Aに示したとおり、上記二つの上部フレーム12、12とは約90度異なる位置に、試料採取用シリンダケース5の上部フランジ5bへボルト接合19により固定して設置されている。
一方、下部ピストン7が、試料採取用シリンダケース5の下端開口部を丁度閉じた位置を確定してその位置へ止め安定に保持する位置決め手段として、図7Bと図8A、Bに示したとおり、下部ピストン7の下面へボルト21aで固定したブレーキピース21が下向きに60mm位の長さ突き出されている。
これに対し、試料採取用シリンダケース5の下部フランジ5aにおいて、昇降ガイドレール部材4の位置とは円周方向に約90度異ならせた位置にボルト25で支持枠26が取り付けられている。この支持枠26を利用して、前記ブレーキピース21が下向きに接触する(突き当たる)ブレーキローラ22が、ローラ支持アームに23より下部ピストン7の直径線方向への内外へ出入りが自在に設置されている。即ち、ローラ支持アームに23は、その中間部の内側寄り位置をピン軸27により内外方向への回動が可能に支持されている。そして、同ローラ支持アームに23において、前記ピン軸27の位置よりも上方部位に、前記ブレーキローラ22が軸22aで回転自在に支持され、ピン軸27の位置から水平な外方位置に、ローラ支持アーム23の外寄り部位を弾力的に一定強さの作用力で支持する弾性支持機構24が垂直な向きに設置されている。
弾性支持機構24は、前記支持枠26の下辺部26aを滑動可能に貫通させたバネ軸24aの外周に圧縮用のコイルバネ24bを設置して、同バネ軸24aの上端を、前記ローラ支持アーム23の外寄り部位をピン24cで連結した構成である。よってブレーキローラ22は、平常状態として、図8Aに示すように、試料採取用シリンダケース5の内方側寄りに突き出て位置するように弾性支持機構24で弾性的に支持されている。
【0034】
したがって、下部ピストン7の下降動作は、下部ピストン7の下面側に位置するブレーキピース21の下端部が、上記ブレーキローラ22の上に突き当たった状態で阻止される。このとき下部ピストン7は、試料採取用シリンダケース5の下端開口部を密閉した位置に止められている。
しかし、同下部ピストン7のブレーキピース21へ、前記ブレーキローラ22が下部ピストン7を止める作用力を超えた強さの押し込み力が加えられ、ブレーキピース21がブレーキローラ22を外方へ押し退けると、下方て進むことが可能となり、下部ピストン7および上部ピストン6の下降動作が開始される。前記の押し込み力は、地上の作業機である杭打ち機の駆動軸1を操作して付与される。
一方、土質試料の採取後に、上部ピストン6および下部ピストン7が上記油圧シリンダ8の働きで上昇された場合にも、下部ピストン7およびブレーキピース21の上昇は、ブレーキローラ22の抵抗を受ける。しかし、油圧シリンダ8の押し上げ力が勝ることでブレーキローラ22を押し退けて進み、下部ピストン7が試料採取シリンダケース5の下端開口部を丁度閉鎖した位置、言い換えると上部ピストン6が試料採取シリンダケース5の上端に位置する上記上限位置ストッパ20へ下方から突き当たって止められた位置において、丁度下部ピストン7の下面側に位置するブレーキピース21がブレーキローラ22の上に乗って下降を阻止される状態となる。こうして上部ピストン6と下部ピストン7は、その間へ進入した孔底部位の改良土を試料採取シリンダケース5の中へ持ち込み取り込んで密閉状態に保持するから、そのまま地上への回収が可能となる。
【実施例2】
【0035】
そこで次には、上記構成の土質試料採取装置2を使用して、プレボーリングした杭孔3の杭底3a近傍に存在する改良土30を土質試料として採取する方法について説明する。
再び図1と図2に戻る。これらの図はプレボーリング方式の拡大根固め杭工法の実施において、杭孔3の杭底3a近傍に拡径して形成した根固め部3bに存在する未固結状態の改良土30を採取する方法の実施例を示している。
【0036】
図1は、地上の作業機の一例として、図示を省略した杭打ち機を使用し、その駆動軸1(ただし、地上の作業機は杭打ち機の限りではなく、駆動軸1と同様な軸で地上から杭孔3へ採取装置2を下ろして杭底3aへ到達させ、土質試料の採取を可能にするなら、掘削機のオーガーロッドなど、その機種、軸の構造、用途を問わない。)の下端に、土質試料採取装置2の上部ピストン6の上面部へ固定した上部フレーム12の上端のジョイント部12aを接続して吊り支持させ、採取装置2を杭孔3の中へ下ろして、杭底3a近傍に拡径して形成した根固め部3bへ到達させ、下部昇降ガイドレール部材4の下端を杭底3aへ着底させた土質試料採取作業の稼働状態図を示している。
図2Aは、根固め部3bへ到達させた採取装置2および下部昇降ガイドレール部材4の部分を拡大して示している。このとき上部ピストン6および下部ピストン7は当然試料採取用シリンダケース5の上端開口部と可鍛開口部に位置させ、下部昇降ガイドレール部材4の下端が孔底3aに着底している。
【0037】
次に図2Bは、下部昇降ガイドレール部材4の下端が杭孔3の孔底3aへ着底した段階で、前記駆動軸1を通じて地上から下向きの押し込み力を付与し、上部フレーム12を通じて上部ピストン6および下部ピストン7を下降動作させ、上部ピストン6は試料採取用シリンダケース5の下端開口部近辺に位置し、下部ピストン7は約300mm程度のストロークで下方へ露出するまで押し下げられている。つまり、試料採取用シリンダケース5は、下部昇降ガイドレール部材4の下端が杭孔3の孔底3aへ着底して支持反力を受けているため、相対的に上部ピストン6および下部ピストン7が下降動作する。このような使用を前提として、当然のことながら、上部フレーム12は、駆動軸1による下向きの押し込み力を上部ピストン6および下部ピストン7へ伝えて下降動作させる圧縮強度と剛性を備え、更に試料採取用シリンダ5の中へ進入可能な形状、構造とされている。
本実施例の場合、下部ピストン7が一定ストローク露出するまで下方へ押し出させるストロークの下降限度、言い換えると上部ピストン6が試料採取用シリンダケース5の下端開口部から抜け外れることのない位置へ止める手段は、地上の作業機による駆動軸1の下降ストロークを計測しつつ実施することで対応可能である。しかし、より機械的で確実な手段としては、例えば図3に示した上部フレーム12の中間部位から横方向の両側へ水平に突き出すように取り付けた支持腕40、40が、試料採取用シリンダケース5の上端縁へ突き当たる位置として下部ピストン7が一定ストローク露出するまで下方へ押し出させるストロークの下降限度を設定して実施することができる。
こうして図2Bのように上部ピストン6が試料採取用シリンダケース5の下端開口部に位置し、下部ピストン7は更に下方へ大きく押し下げられた状態になると、周囲の未固結状態の改良土30は、必然的に上部ピストン6と下部ピストン7が試料採取用シリンダケース5の中に持ち込んだ空気を押し退けて両ピストンの間へなだれ込むように進入する。一方、前記のように排除された空気は、未固結状態の改良土30を押し退けつつ上昇して地上へ出るから、同空気が地上へ出て風船が割れる様な破裂音を生じるのを聞いて、作業者は上部ピストン6および下部ピストン7の下降動作を耳で確認することが出来る。
また、本発明の採取装置2は、上述したように上部ピストン6が試料採取用シリンダケース5の下端開口部近辺にまで下がり、下部ピストン7はシリンダケース5の下端開口部から更に下方へ大きく露出するまで押し下げられた状態では、周辺の未固結状態の改良土30が両ピストン6、7間へなだれ込むように進入することを妨げる障害物はない構成である。つまり、両側に角材から成る下部昇降ガイドレール部材4、4が2本立っているだけの構成であるから、仮に改良土30中に掘削に伴う土塊が混じっている場合、その土塊はそのまま改良土30と一緒に両ピストン6、7間へなだれ込むように進入する。よって、杭孔3の杭底3a近傍に拡径して形成した根固め部3bに存在する未固結状態の改良土30は、在りの儘の状態の土質試料として採取可能である。そのため改良土30の実情(実体)に即した調査と把握、確認が出来るのである。
【0038】
次に図2Cは、上記図2Bのように上部ピストン6と下部ピストン7が駆動軸1で採取装置2へ付与された押し下げ力によって、下部ピストン7の下方へ突き出た出力ロッド8bの下端部に取り付けたロック解除入力部材9の各フォロア軸9a、9aが、下部昇降ガイドレール部材4の下部に位置するロック解除指示部材たる直動カムプレート15と接触しつつ下降した結果、直動形アクチュエータ8のロック状態が解除され、始動した直動形アクチュエータ8の働きにより、上部ピストン6と下部ピストン7がその間へ進入した改良土30と共に上昇され、試料採取用シリンダケース5内へ復帰させて、土質試料を試料採取用シリンダケース5内へ取り込んだ状態を示している。
つまり、直動カムプレート15、15と接触しつつ下降した一対のフォロア軸9a、9aは、直動カムプレート15のカム作用により、一定の回転角回転してロック解除入力を生じる。即ち、各フォロア軸9a、9aは、前記の回転に伴い、下部ピストン7の下面に固定したロック部材14、14の鉤型溝部14bから引き外されてロック解除の状態となる。その結果、上述したように直動形アクチュエータである油圧シリンダ8は既に駆動エネルギ源部たるアキュームレータ16から圧油の供給を受けて、油圧ピストン8cは発進可能状態となっているので、各フォロア軸9a、9aがロック部材14、14から引き外された途端に、始動する。
【0039】
油圧シリンダ8の始動は、油圧ピストン8cの上側室へ供給された油圧の作用により、出力ロッド8bが前進動作するべきところ、ロック解除入力部材9の各フォロア軸9a、9aが、下部昇降ガイドレール部材4の下部に位置するロック解除指示部材たる直動カムプレート15と接触して大きな支持反力を受けて動けない関係上、その反作用として、逆に自由な外管8aが、上部ピストン6および下部ピストン7と共に上昇動作する。こうして上部ピストン6と下部ピストン7が、その間に進入した改良土30と共に試料採取用シリンダケース5内へ復帰して、その改良土30を試料採取用シリンダケース5内へ土質試料として取り込み、且つ上下のピストン6、7がシリンダケース5の上下の開口部を密閉して土質試料を保持することになる。
上記土質試料の密閉状態は、上部ピストン6が、その上限位置を規定する上限位置ストッパ20(図4A参照)へ突き当たった位置を止められ、また、下部ピストン7は図8A、Bに示すように下部ピストン7のブレーキピース21の下端が、ブレーキローラ22の上に乗って押し止められる作用によってきっちり確定され、安定な採取状態を実現する。
その後に杭打ち機の駆動軸1を引き揚げることにより、土質試料採取装置2を地上へ回収すると、土質試料採取の目的が達成されるのである。
【0040】
上記したように地下から引き揚げて地上へ回収した土質試料採取装置2を一時的に支持させて管理、保管の用に供する設備として、又は逆に土質試料採取の準備を整えて作業可能な状態に用意した土質試料採取装置2を、一時的に支持させて管理、保管する設備として、図10に示した保管枠70が好適に使用される。
この保管枠70は一種の立て掛けスタンドであり、土質試料採取装置2の上部フレーム12の中間部位から横方向の両側へ水平に突き出すように取り付けた支持腕40、40を受け止めるV溝構造の支持部71、71が、架台73から立ち上がる支柱72、72の上部内側に、左右に対称的な配置に設けられている。前記の支持腕40、40を、前記支持部71、71の上へ載せ架けて、一種の吊り支持状態で倒れないように支持する構成とされている。図10中の符号74は、支柱72、72の上端部を、土質試料採取装置2の吊り支持に支障ない形態で繋いだ繋ぎ梁である。
この保管枠70を使用すると、土質試料採取装置2は、土質試料採取の作業に使用する前、又は土質試料の採取に使用した後にも、試料採取用シリンダケース5とその内部の上部ピストン6と下部ピストン7、並びに採取した土質試料を、無理のない負荷状態で安定に支持して保管できる。
【実施例3】
【0041】
図9に示す実施例3は、上記図1又は図2に示した実施例の構成を前提に、下部昇降ガイドレール部材4の底盤4aの下に、一定高さHの高さ調整枠6を取り付けて、杭孔3の孔底3aから高さ調整枠6の高さ寸法Hだけ上方に存在する改良土30を取り込み採取する方法の実施例を示している。
この高さ調整枠6の高さ寸法Hが種々異なるものを数例用意して使い分けることにより、杭孔3の孔底3aから種々な高さ位置の改良土30を採取して、根固め部の土質調査の目的を一層広範に実施できる。
【実施例4】
【0042】
図11は、上記土質試料採取装置2を使用して土質試料を採取する方法の異なる実施例として、地上の作業機としてクレーン50を用いた実施例を示している。クレーン50のワイヤー51を、土質試料採取装置2における、上部フレーム12の上端のジョイント部12aと接合して吊り支持させ、プレボーリングされた杭孔3の中へ採取装置2を下ろした実施例4を示している。
なお、本実施例の場合は、土質試料採取装置2の下部昇降ガイドレール部材4の下端を杭孔3の孔底3aへ着底させた段階で、上部ピストン6及び下部ピストン7へ押し込み力を負荷させることはできない。そこで土質試料採取装置2の設計段階で予めクレーン50を使用する方法の実施例を前提として、上部フレーム12と上部ピストン6及び下部ピストン7並びに直動形アクチュエータ8(例えば油圧シリンダ)等々の重量を必要十分に大きく製作しておくことが好ましい。
その上で、図11に示したように、土質試料採取装置2における下部昇降ガイドレール部材4の下端がプレボーリングされた杭孔3の孔底3a着底した段階で、地上のクレーン50の操作によりクレーンワイヤ51による土質試料採取装置2の吊り支持力(張力)を漸次適度に緩めてゆく。そうすると、クレーンワイヤ51による土質試料採取装置2の吊り支持力が減少することに反比例して、上部フレーム12と上部ピストン6及び下部ピストン7並びに直動形アクチュエータ8等々の重量による上部ピストン6及び下部ピストン7の押し下げ作用力が増大してゆく。そして、前記重量による押し下げ作用力が一定値以上に増大した段階で、上記図8に示した下部ピストン7のブレーキピース21の下端をブレーキローラ22が押し止める作用力に打ち勝つに至る。更に重量による押し下げ作用力を増大させると、上部ピストン6および下部ピストン7を下降動作させることができる。 本実施例の場合、上部ピストン6および下部ピストン7の下降動作を、下部ピストン7が一定ストローク露出するまで下方へ押し出すストロークの下降限度、言い換えると上部ピストン6が試料採取用シリンダケース5の下端開口部から抜け外れることのない位置で止める手段として、例えば図3に示した上部フレーム12の中間部位から横方向の両側へ水平に突き出すように取り付けた支持腕40、40が、試料採取用シリンダケース5の上端縁へ突き当たる構成で機械的に確実に実施することができる。
【0043】
上記のようにして、試料採取用シリンダケース5の下方へ下部ピストン7が一定ストローク露出するまで押し出されると、試料採取用シリンダケース5内に持ち込んできた空気を押し出しつつ、これら上部ピストン6と下部ピストン7の間へ未固結状態の改良土30が進入することは、上記駆動軸1による方法の実施例と何ら変わりがない。前記空気が地上へ抜け出し、その際に発する破裂音で試料採取用シリンダケース5の下方へ下部ピストン7が一定ストローク露出するまで押し出されたことを確認することが出来る。
更に、上記の重力作用で引き続き上部ピストン6および下部ピストン7を下降動作させることにより、下部ピストン7の下方へ突き出した出力ロッド8bのロック解除入力部材9のカムフォロア軸9a、9aが、下部昇降ガイドレール部材4に設置したロック解除指示部材である直動カムプレート15と接触して、カムフォロア軸9a、9aが一定の回転角だけ回転されてロック解除入力を生じ、各フォロア軸9a、9aが下部ピストン7のロック部材14、14から引き外されてロック解除となること、及び前記のロック解除により油圧シリンダ8を始動させ、同油圧シリンダ8により上部ピストン6と下部ピストン7並びにその間へ進入した改良土30を共に上昇させ、試料採取用シリンダケース5内へ復帰させて取り込むこと、そして、クレーン50のワイヤー51を巻き上げて土質試料採取装置2を地上へ回収することは、上記の実施例2と同様である。
【0044】
本実施例4で特記するべきことは、クレーン50のワイヤー51は、ウインチの運転操作により、仮に杭孔3が地下50mないし70mのように深い場合でも、土質試料採取装置2は一気に孔底3aへ着底するまで下ろすことが出来る。また逆に、土質試料の採取作業を終了した採取装置2は一気に地上まで引き揚げて回収できるという利点である。したがって、上述したようにプレボーリングされた杭孔3の孔底3aにセメントミルクと掘削土を攪拌混合して造成された改良土30が未固結状態を保つ限られた時間内(好ましくは1時間以内、長くてもせいぜい3時間以内)に土質試料採取の作業を完結することに極めて有効的な方法といえる。
【0045】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、もとより本発明は図示した実施例に限定されるものではない。所謂当業者が必要に応じて行う設計変更その他の変形・応用の範囲などを含むもの発明であることを念のため言及する次第である。
【符号の説明】
【0046】
1 地上の作業機の駆動軸
2 土質試料の採取装置
5 試料採取用シリンダケース
3 杭孔
3a 孔底
4 下部昇降ガイドレール部材
6 上部ピストン
7 下部ピストン
8 直動形アクチュエータ(油圧シリンダ)
8a 外管
8b 出力ロッド
9 ロック解除入力部材
9a カムフォロア軸
15 ロック解除指示部材(直動カムプレート)
12 上部フレーム
12a ジョイント部
16 駆動エネルギ源部(アキュームレータ)
14 ロック部材
30 改良土
15a カム曲線部
8c 油圧ピストン
20 上限位置ストッパ
21 ブレーキピース
5a 下部フランジ
22 ブレーキローラ
23 ローラ支持アーム
24 弾性支持機構
50 クレーン
51 ワイヤー
60 高さ調整枠



【特許請求の範囲】
【請求項1】
土質試料採取用の容器である垂直なシリンダケースと、
前記土質試料採取用シリンダケースの下端部に取り付けた、杭孔の孔底へ着底させる下部昇降ガイドレール部材と、
前記試料採取用シリンダケースの上端開口部と下端開口部を水密的に閉鎖し、且つ同試料採取用シリンダケース内を昇降する上部ピストンおよび下部ピストンと、
前記上部ピストンおよび下部ピストンが外管へ前記の位置関係で結合された直動形アクチュエータと、
前記直動形アクチュエータの出力ロッドは前記下部ピストンの下方へ突き出され、同出力ロッドの下端部へ設けられたロック解除入力部材と、
前記下部昇降ガイドレール部材の下部に、下降した前記ロック解除入力部材と連係する配置に設けられたロック解除指示部材と、
前記上部ピストンの上面部へ固定して垂直上方へ立ち上がる形に設置され、上端にジョイント部を設けた上部フレームと、
前記上部フレームの内側に設置されて前記直動形アクチュエータと接続された駆動エネルギ源部と、
および前記下部ピストンの下面に設置され、前記ロック解除入力部材を拘束して前記直動形アクチュエータの始動をロックするロック部材とで構成されており、
前記上部フレームの上端のジョイント部が地上の作業機で吊り支持され、プレボーリングされた杭孔の中へ下ろして前記下部昇降ガイドレール部材の下端を孔底へ到達させ、下部ピストンが試料採取用シリンダケースの下端開口より下方へ露出するように下降させて同下部ピストンと上部ピストンとの間へ未固結状態の改良土が進入することを促し、更に上記直動形アクチュエータの出力ロッド下端のロック解除入力部材を下部昇降ガイドレール部材のロック解除指示部材と連係させてロック解除入力を生じさせ、同解除入力により直動形アクチュエータを始動させて上部ピストンと下部ピストンをその間へ進入した改良土と共に上昇させ、試料採取用シリンダケース内へ復帰させて土質試料を取り込み、同シリンダケースを密閉状態に保持して地上へ引き揚げ回収されることを特徴とする、土質試料の採取装置。
【請求項2】
直動形アクチュエータのロック解除入力を受ける出力ロッドは下部ピストンの下面よりも下方へ突き出され、その下端部に、ロック解除入力部材として、出力ロッドの軸線と垂直方向の両側へ突き出る一対のカムフォロア軸が設けられており、
前記カムフォロア軸を一方向へ回転可能に受け止めるロック部材が下部ピストンの下面に固定して設けられ、前記ロック部材は、下部昇降ガイドレール部材を伝って下部ピストンおよび上部ピストンを非回転状態で昇降させる構成であり、
一方、下部昇降ガイドレール部材の下部に設けられたロック解除指示部材は、前記一対のカムフォロア軸が個別に接触する一対の直動カムプレートで構成され、前記一対の直動カムプレートは、前記出力ロッドが上下方向に進退可能な間隔を開けた配置で下部昇降ガイドレール部材の下部に垂直に設置され、該一対の直動カムプレートの上端部には、前記一対のカムフォロア軸が接触するカム曲線部が、前記出力ロッドへ一定の回転角に及ぶ回転を生じさせるべく相互に正反対の向きに形成されており、
前記一対の直動カムプレートのカム曲線部へ、下降した前記出力ロッドのロック解除入力部材を構成する一対のカムフォロア軸が接しつつ一定ストローク下降動作することにより、前記出力ロッドへ生じた一定回転角の回転によりカムフォロア軸がロック部材から外れてロック解除となり、直動形アクチュエータが始動して上部ピストンおよび下部ピストンをその間へ進入した改良土と共に土質試料採取要シリンダケース5内へ復帰させる構成であることを特徴とする、請求項1に記載した土質試料の採取装置。
【請求項3】
直動形アクチュエータは、上部ピストンおよび下部ピストンが固定された外管をシリンダとし、その内部に出力ロッドおよび油圧ピストンが設置された油圧シリンダとして構成されており、
上部ピストンの上面部に固定した上部フレームの枠内に設置された駆動エネルギ源部は、前記油圧シリンダを駆動させる油圧を内蔵したアキュームレータとして構成され、
前記アキュームレータと前記油圧シリンダのピ油圧ストンの上側室とが連通状態に接続されており、
油圧シリンダの出力ロッドの下端のロック解除入力部材が下部昇降ガイドレール部材のロック解除指示部材へ接して出力ロッドが回転され、カムフォロア軸がロック部材から外れてロック解除されることにより、出力ロッドがロック解除指示部材へ接して得た反力を基に、前記油圧シリンダの外管が油圧作用により上部ピストンおよび下部ピストンを上昇させて試料採取用シリンダケース内へ復帰させ、同上部ピストンと下部ピストンの間に進入した改良土を土質試料として試料採取用シリンダケース内へ取り込み密閉する構成であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した土質試料の採取装置。
【請求項4】
試料採取用シリンダケースの上端部に、上部ピストンの上昇限度位置を規定する上限位置ストッパが設置されており、
下部ピストンの下面にはブレーキピースが突き出されており、一方、試料採取用シリンダケースの下部フランジaの下方部には、前記ブレーキピースが接触するブレーキローラがローラ支持アームにより下部ピストンの直径線方向の内外へ出入りが自在に設置されており、
前記ブレーキピースの下端部を前記ブレーキローラで一定強さの圧力で支持させる弾性支持機構により前記ローラ支持アームの一端部が支持されており、
下部昇降ガイドレール部材が孔底へ着底した段階で、下部ピストンは、前記ブレーキピースがブレーキローラを押し退けて通る押し込み力を受けることによって下降動作を進められ、
逆に上部ピストンは直動形アクチュエータの駆動力で上昇され試料採取シリンダケース内の上端へ到達し前記上限位置ストッパへ突き当たって止められ、且つ前記下部ピストンのブレーキピースは前記ブレーキローラを押し退けて上昇しその上に乗って止まる構成であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した土質試料の採取装置。
【請求項5】
上記請求項1〜4に記載した土質試料採取装置を使用して杭孔の孔底近傍の未固結状態の改良土を土質試料として採取する方法であって、
上部ピストンの上面部へ固定して垂直上方へ立ち上がらせた上部フレームの上端のジョイント部と地上の作業機の駆動軸とを接続し吊り支持させて杭孔の中へ下ろし、
下部昇降ガイドレール部材の下端が杭孔の孔底へ着底した段階で、前記駆動軸へ下向きの押し込み力を付与し、上部フレームを通じて上部ピストンおよび下部ピストンを下降させ、下部ピストンが試料採取用シリンダケースの下端開口部よりも下方へ露出するように押し出させて上部ピストンと下部ピストンの間へ未固結状態の改良土が進入することを促す段階と、
前記下部ピストンの下方へ突き出した出力ロッドの下端部のロック解除入力部材を、下部昇降ガイドレール部材のロック解除指示部材と接触させてロック解除入力を生じさせ、
前記ロック解除入力により直動形アクチュエータを始動させ、同直動形アクチュエータにより、上部ピストンと下部ピストンをその間へ進入した改良土と共に上昇させて試料採取用シリンダケース内へ復帰させ取り込む段階と、
更に、地上の作業機の駆動軸1を引き揚げて土質試料採取装置2を地上へ回収する段階とから成ることを特徴とする、孔底の未固結状態の改良土を土質試料として採取する方法。
【請求項6】
上記請求項1〜4に記載した土質試料採取装置を使用して杭孔の孔底の未固結状態の改良土を土質試料として採取する方法であって、
上部ピストンの上面部へ固定して上方へ立ち上がらせた上部フレームの上端のジョイント部を地上の作業機であるクレーンのワイヤーで吊り支持させて杭孔の中へ下ろし、
下部昇降ガイドレール部材の下端が杭孔の孔底へ着底した段階で、上部ピストンへ負荷する上部フレーム等の重量を作用させて上部ピストンおよび下部ピストンを下降させ、試料採取用シリンダケースの下部開口より下方へ下部ピストンが露出するように押し出させ、上部ピストンと下部ピストンの間へ未固結状態の改良土が進入することを促す段階と、
前記下部ピストンの下方へ突き出した出力ロッドの下部へ取り付けたロック解除入力部材を、下部昇降ガイドレール部材のロック解除指示部材と接触させてロック解除入力を生じさせ、
前記ロック解除入力により直動形アクチュエータを始動させ、同直動形アクチュエータにより上部ピストンと下部ピストンをその間へ進入した根固め改良土と共に上昇させて試料採取用シリンダケース内へ復帰させ取り込む段階と、
更に、クレーンのワイヤーを巻き上げて土質試料採取装置を地上へ回収する段階とから成ることを特徴とする、孔底の未固結状態の改良土を土質試料として採取する方法。
【請求項7】
下部昇降ガイドレール部材の下に、一定高さの高さ調整枠を取り付けて、杭孔の孔底から一定高さ上方に存在する改良土を取取り込み採取することを特徴とする、請求項5又は6に記載した土質試料の採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−47749(P2011−47749A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195454(P2009−195454)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】