説明

圧入治具およびこれを用いた圧入装置

【課題】被圧入物をシェルに圧入するときに、被圧入物の損傷を防止できる圧入治具およびこれを用いた圧入装置を提供すること。
【解決手段】圧入治具2は、外周が断熱マット11で覆われたCSF10を筒状のシェルに圧入する際に用いられるものであって、CSF10に対して上側に配置される円形プレート22と、円形プレート22の上側に取り付けられる上蓋21と、円形プレート22を貫通して摺動可能なガイドピン24が固定されるとともに、円形プレート22よりも外方に設けられ、かつ円形プレート22に近接離間する方向に移動可能な可変プレート23と、ガイドピン24に挿通されて円形プレート22と可変プレート23との間に介装され、可変プレート23を円形プレート22から離れる方向に付勢するスプリング25とを備え、円形プレート22の下側には、可変プレート23の下側の面が接触する下蓋26が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば排気後処理装置に用いられるCSF(触媒化スートフィルタ:Catalyzed Soot Filter)や、DOC(ディーゼル酸化触媒:Diesel Oxidation Catalyst)等の被圧入物を筒状のシェル内に圧入するための圧入治具およびこれを用いた圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば排気後処理装置に用いられる円柱状のCSFやDOCが断熱マットで覆われており、これらは、圧入治具によって筒状のシェル内に圧入される。
この圧入治具は、CSFやDOC等の被圧入物に対して圧入方向とは反対側に配置される固定プレートと、固定プレートの外周に沿って複数設けられ、固定プレートに対して径方向に移動可能な可変プレートと、固定プレートと可変プレートとの間に介装され、可変プレートを固定プレートから離れる方向に付勢する付勢部材とを備える(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
このような圧入治具を用いて被圧入物をシェル内に圧入する場合には、鉛直に立設させたシェルの上部に筒状のガイド部材を取り付け、ガイド部材の上部開口部分に被圧入物を入れ込む。そして、圧入治具を被圧入物の上面に当接させて下方向に向けて押圧し、ガイド部材内に案内させながら筒状のシェル内に圧入する。
【0004】
ガイド部材の内面は、内径が下方向に向かうに従って小さくなるテーパ面となっており、被圧入物が下方向に移動されてガイド部材を通過するときには、断熱マットがガイド部材の内面形状に倣って収縮し、可変プレートもガイド部材の内面形状に倣って縮径方向に移動する。可変プレートが縮径方向に移動することによって、圧入治具を常に被圧入物に当接させながら、被圧入物をシェル内に圧入することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−48231号公報
【特許文献2】特開2001−341034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2に記載のような従来の圧入治具では、可変プレートの下面が被圧入物の上面に当接しているため、可変プレートが縮径方向に移動すると、被圧入物の上面が可変プレートによって削られ、被圧入物が損傷してしまうおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、被圧入物をシェルに圧入するときに、被圧入物の損傷を防止できる圧入治具およびこれを用いた圧入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る圧入治具は、外周が断熱マットで覆われた被圧入物を筒状のシェルに圧入する際に用いられる圧入治具であって、前記被圧入物に対して反圧入方向側に配置される固定プレートと、前記固定プレートの反圧入方向側に取り付けられる第1の蓋部材と、前記固定プレートを貫通して摺動可能なガイドピンが固定されるとともに、前記固定プレートよりも外方に設けられ、かつ前記固定プレートに近接離間する方向に移動可能な可変プレートと、前記ガイドピンに挿通されて前記固定プレートと前記可変プレートとの間に介装され、前記可変プレートを前記固定プレートから離れる方向に付勢する付勢部材とを備え、前記固定プレートの圧入方向側には、前記可変プレートの圧入方向側の面が接触する第2の蓋部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る圧入治具では、前記第1の蓋部材と前記固定プレートとが圧入方向において当接され、前記固定プレートと前記第2の蓋部材とが圧入方向において当接されていることを特徴とする。
第3発明に係る圧入治具では、前記第2の蓋部材の外径は、縮径した前記断熱マットの外径よりも小さいことを特徴とする。なお、「縮径した断熱マットの外径」とは、被圧入物が筒状のシェル内に圧入され終わった時の断熱マットの外径をいう。
【0010】
第4発明に係る圧入治具では、前記可変プレートの反圧入方向側の外周縁には、所定半径の曲面部が形成されていることを特徴とする。
第5発明に係る圧入装置は、筒状のシェルの一端側に取り付けられて被圧入物を前記シェル内に案内する筒状のガイド部材と、前記シェルの他端側が固定される固定台とを備えることを特徴とする。
【0011】
第6発明に係る圧入装置では、前記ガイド部材は、第1のガイド部材と、前記第1のガイド部材よりも圧入方向側であって前記シェルに嵌合される第2のガイド部材とからなり、前記第1のガイド部材の内部は、内径が圧入方向に向かうに従って小さくなるテーパ面を有するテーパ部となっており、前記第2のガイド部材の内径は、圧入方向で一定であることを特徴とする。
第7発明に係る圧入装置では、前記第1のガイド部材の前記テーパ部に対して反圧入方向側の端部には、内径が圧入方向で一定な導入部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、可変プレートの圧入方向側の面が接触する第2の蓋部材が設けられているため、被圧入物上面には可変プレートは当接せず、固定された第2の蓋部材が当接する。よって、被圧入物を圧入するときに、可変プレートが縮径方向に移動しても、被圧入物上面がこすれて削られたりせず、被圧入物の損傷を防止できる。
【0013】
第2発明によれば、第1の蓋部材と固定プレートとが圧入方向において当接され、固定プレートと第2の蓋部材とが圧入方向において当接されており、固定プレートと可変プレートとは所定距離離れているため、圧入時の上方からの荷重が、第1の蓋部材から固定プレートを介して第2の蓋部材に伝達されて被圧入物に作用し、可変プレートには伝達されない。このため、被圧入物を圧入するときに、可変プレートが、上方からの荷重には拘束されずに、第1の蓋部材と第2の蓋部材との間でスムーズに移動できる。
【0014】
第3発明によれば、第2の蓋部材の外径は、縮径した断熱マットの外径よりも小さいため、断熱マットで覆われた被圧入物を筒状のシェルに圧入する際に、第2の蓋部材がシェル内に確実に入り込み、第2の蓋部材を被圧入物上面に確実に当接させることができる。
【0015】
第4発明によれば、可変プレートの反圧入方向側の外周縁には、所定半径の曲面部が形成されているため、圧入治具を圧入方向とは反対方向に退避させるときに、圧入治具をシェル内からスムーズに移動でき、圧入治具が例えばガイド部材の内面に引っ掛かって抜けなくなることを防止できる。
【0016】
第5発明によれば、第1発明ないし第4発明の圧入治具を備えるため、被圧入物を損傷することなく、シェルに圧入できる。
【0017】
第6発明によれば、シェルの外周面には、外側に膨出した膨出部が設けられることがあるが、このような膨出部を内側から覆うように第2のガイド部材をシェルに嵌合させることにより、被圧入物は、膨出部を通過するときでも、外側方向に移動せず、第2のガイド部材に案内されてシェルに確実に圧入される。また、被圧入物をシェル内に圧入した後、圧入治具をシェル内から退避させるときにも、可変プレートが膨出部では外側方向に移動せず、圧入治具がシェルの内面に引っ掛かってシェル内から抜けなくなることを防止できる。
【0018】
第7発明によれば、第1のガイド部材のテーパ部に対して反圧入方向側の端部には、内径が圧入方向で一定な導入部が設けられているため、被圧入物を第1のガイド部材に導入したときに、被圧入物が圧入方向に対して傾いてセットされることを防止できる。このため、被圧入物を圧入方向に沿ってスムーズに圧入できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧入装置を示す正面図。
【図2】前記圧入装置の一部分を示す断面図。
【図3】前記圧入装置によって、被圧入物を圧入対象物内に圧入した状態を示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係る圧入治具を示す斜視図。
【図5】図4のV−V線における断面図。
【図6】図4のVI−VI線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態の圧入治具2およびこれを用いた圧入装置1を図面に基づいて説明する。
図1および図2に示す圧入装置1は、排気後処理装置に用いられる被圧入物としてのCSF10を、その外周を断熱マット11で覆った状態で筒状のシェル12内に圧入するためのものである。
図1および図2に示すように、圧入装置1は、圧入治具2と、断熱マット11で覆われたCSF10をシェル12に案内するガイド部材3と、シェル12を載置する固定台4と、上下方向に移動可能なピストンロッド5とを備える。
【0021】
すなわち、この圧入装置1では、外周が断熱マット11によって覆われたCSF10が、ピストンロッド5の下端に取り付けられた圧入治具2を介して下方向(圧入方向)に押圧されることにより、ガイド部材3によって案内され、固定台4に載置されたシェル12内に圧入される。なお、圧入方向とは反対の方向が反圧入方向であり、本実施形態では、図1および図2中上方向が反圧入方向である。
【0022】
ここで、CSF10は、円柱形状であり、排気ガス中のPM(粒子状物質:Particulate Matter)を捕集するためのフィルタである。
断熱マット11は、セラミックス繊維製やガラス繊維製であり、CSF10の外周全面を覆う。
シェル12は、その外周面に、外側に膨出した膨出部121を有し、この膨出部121によってシェル12内には膨出空間が形成されている。膨出部121は、シェル12と隣接する他のシェルとの接合に用いられる。
【0023】
以下では、圧入治具2に関しては後述することとし、圧入装置1の他の構成部品について説明する。
図2に示すように、ガイド部材3は、SS材(一般構造用圧延鋼材)等の金属製で、筒状をしており、ニッケルメッキにより表面処理された第1のガイド部材3Aと第2のガイド部材3Bとからなる。
第1のガイド部材3Aの内側は、所定肉厚の略ロート形状であり、上端部(反圧入方向側の端部)に設けられた導入部31と、導入部31よりも下側に連続したテーパ部32とを備える。
【0024】
導入部31は、その内径D0が圧入方向にわたって一定となっている円筒形状であり、導入部31の内径D0は、CSF10を覆った状態での断熱マット11の外径d1よりも大きくなっている(d1<D0)。
テーパ部32の内面は、内径が圧入方向に向かうに従って小さくなるテーパ面となっている。テーパ部32の下端側(圧入方向側の端部)では、その内径D1が断熱マット11の外径d1よりも小さくなっている(D1<d1)。
【0025】
第2のガイド部材3Bは、圧入方向にわたって内径D2が一定の円筒形状であり、第1のガイド部材3Aの下部側にボルト止めされ、シェル12の上部側に嵌合されている。
第2のガイド部材3Bの内径D2は、テーパ部32の下端側の内径D1と等しく、従って断熱マット11の外径d1よりも小さくなっている(D2=D1<d1)。また、第2のガイド部材3Bの内径D2はシェル12の内径d2と等しい(D2=d2)。つまり、シェル12での第2のガイド部材3Bの嵌合部分は、屈曲部122を境にして、第2のガイド部材3Bの肉厚分だけ拡径されている。
【0026】
以上のことから、CSF10がシェル12内の所定位置(内径d2部分)に収容された時点では、図3に示すように、断熱マット11が圧縮された状態とされ、その反力により、CSF10が保持されている。そして、CSF10の圧入に際しては、第2のガイド部材3Bは、シェル12の膨出空間を覆っており、このため、断熱マット11は、膨出部121を通過するときでも、第2のガイド部材3Bに案内され、膨出空間側に復帰してめくれることがない。
【0027】
固定台4は支持凸部41を備え、支持凸部41がシェル12の下方側内部に嵌合されて、シェル12が固定台4に立設した状態で載置される。なお、このような支持凸部41は、固定台4に対して着脱可能に設けられているとともに、径寸法が異なるものが複数種類用意されており、シェル12(CSF10)の大きさに応じたものが適宜選択されて用いられる。第1のガイド部材3Aおよび第2のガイド部材3Bについても同様である。
【0028】
ピストンロッド5は、その下端面の中心に、さらに下方向に突出する取付ガイド用の嵌合凸部を有し、ピストンロッド5の下端面の外周側には下方向に突出する係合突起が設けられている。また、ピストンロッド5の下端面には、後述するプランジャピン280が入るプランジャ穴が形成されている。これらの嵌合凸部、係合突起、およびプランジャ穴については、図示を省略してある。
【0029】
以下、圧入治具2について説明する。
図4ないし図6に示すように、圧入治具2は、第1の蓋部材である上蓋21と、固定プレートとしての円形プレート22と、可変プレート23と、ガイドピン24と、付勢部材としてのスプリング25と、第2の蓋部材である下蓋26と、取付プレート27とを備える。
上蓋21は、軽量なアルミ製で、図4に示すように、外周部分に複数のリブを有した厚手の円板形状である。上蓋21の上面中央には円形の逃げ穴211が形成され、中心から放射状に略等間隔で3つの有底の長穴212が形成され、一対の長穴212の間には上下に貫通した長孔213が形成されている。上蓋21の外周寄りには、6つのねじ孔214が形成されている。
【0030】
円形プレート22は、耐摩耗性が高く軽量なジュラルミン製で、図5に示すように、中心に貫通孔221を有する円環形状である。円形プレート22の外周面の6箇所には、中心に向かって径方向に窪んだ座ぐり穴222が形成され、各座ぐり穴222に対応した位置には、径方向に貫通した挿通孔223が形成されている。円形プレート22上には、ボルト305(図6)により、前述の上蓋21が取り付けられる。
【0031】
可変プレート23は、耐摩耗性が高く軽量なジュラルミン製で、円形プレート22の外方に6つ設けられている。各可変プレート23の外観は、1つの円環を周方向に沿って6等分した形状となっており、隣接する可変プレート23同士は所定間隔離れて配置されている。各可変プレート23は、略扇形状をした基部23Aと、基部23Aの外周側において上方に立ち上がった立上部23Bとを備え、立上部23Bには、径方向(図5中左右方向)に貫通した取付孔231が形成されている。可変プレート23上部の外周縁には、所定半径の曲面部232が形成されている。
【0032】
ガイドピン24は、鍔部分を有した基端側が取付孔231内に圧入されて可変プレート23と一体となっている。ガイドピン24の先端側は円形プレート22の挿通孔223内に摺動自在に挿通されている。ガイドピン24の先端側には、角ワッシャ300を介してボルト301が固定される。
【0033】
スプリング25は、ガイドピン24に挿通され、円形プレート22の座ぐり穴222と、座ぐり穴222に対向する可変プレート23の立上部23Bの対向面との間に介装されている。このスプリング25の付勢力によって、可変プレート23は径方向外側(可変プレート23が円形プレート22から離れる方向)に付勢されている。
【0034】
このようなガイドピン24およびスプリング25により、可変プレート23は、径方向外側および径方向内側(可変プレート23が円形プレート22に近づく方向)に移動可能となっている。可変プレート23は、スプリング25から径方向外側へ向かう付勢力を受けると、ガイドピン24とともに外側へ摺動する。このとき、ガイドピン24の先端に固定された角ワッシャ300によって、可変プレート23の外側への移動を規制し、可変プレート23が外側に外れることを防止している。より具体的には、可変プレート23が最も外側に移動しても、立上部23Bが上蓋21の下面21Aから離れることはない。
【0035】
逆に、可変プレート23が径方向内側に押圧されると、スプリング25からの付勢力に抗して可変プレート23が径方向内側に移動し、この可変プレート23の移動とともにガイドピン24も挿通孔223内を内側へ摺動する。このため、ガイドピン24の先端側は、挿通孔223から中央の貫通孔221内に向けて突出することになる。
【0036】
下蓋26は、SS材で形成され、円板形状の基部261と、基部261から上方に突出した円環状の突出部262と、基部261の下面と面一になるように径方向外側に向けて延出形成された薄板環状の底部263とから構成されている。本実施形態では、断熱マット11の上方へのずれ量(突出量)を所定の規定値以内に収めるべく、底部263の厚さt(図5および図6)は2mmとなっている。下蓋26の外径(底部263の外径)D3(図5および図6)はCSF10の外径と略同じであり、また、CSF10がシェル12内に圧入され終わった時の断熱マットの外径d10(図3)よりも小さい。このような底部263に可変プレート23の下面233が接触する。
【0037】
図6に示すように、突出部262の周方向の3箇所にはガイドピン302が立設されている。ガイドピン302の先端は、円形プレート22に設けられた挿通孔内に挿通される。そして、下蓋26は、円形プレート22の挿通孔と連通した座ぐり穴内のワッシャ303、およびガイドピン302の先端に螺合されるボルト304により、円形プレート22に取り付けられる。
【0038】
このように、下蓋26と円形プレート22とがガイドピン302等により一体とされ、円形プレート22と上蓋21とがボルト305により一体とされると、下蓋26の突出部262の上面26Aに円形プレート22の下面22Bが圧入方向において当接し、円形プレート22の上面22Aに上蓋21の下面21Aが圧入方向において当接する。
【0039】
そして、円形プレート22の下面22Bと可変プレート23の基部23Aとは所定距離離れている。このような構造により、圧入時の上方からの荷重は、上蓋21から円形プレート22を介して下蓋26に伝達され、可変プレート23には伝達されない。このため、可変プレート23は、上蓋21の下面21Aと下蓋26の底部263の上面26Bとの間で、上方からの荷重には拘束されずに径方向にスムーズに移動できるようになっている。
【0040】
また、底部263が可変プレート23の下面233と接触し、可変プレート23の上側も上蓋21の下面21Aによって規制されているため、可変プレート23は、上蓋21の下面21Aと底部263の上面26Bとの間で摺動し、上蓋21および下蓋26間で摺動することにより、摺動中にガイドピン24を軸に揺動回転してしまうことが防止される。
【0041】
取付プレート27は、円環形状であり、中心に嵌合孔271が形成され、嵌合孔271よりも外周側に複数の達磨孔273(図6にその一部を断面で示す。)が形成されている。これらの達磨孔273よりも外周側には、6つの挿通孔272(図5参照)が形成されている。
【0042】
図6に示すように、取付プレート27には、取付プレート27よりも上方に突出可能なプランジャピン280が設けられ、プランジャピン280の下方にはプランジャ引張用ノブ281が延出されている。プランジャ引張用ノブ281は、上蓋21の長孔213内を通り、円形プレート22に形成された収納孔224内に収納される。プランジャピン280とプランジャ引張用ノブ281とは一体となっており、プランジャ引張用ノブ281を下方に引っ張ると、取付プレート27よりも上方に突出したプランジャピン280を下方に没入させることができる。
【0043】
取付プレート27と上蓋21とを組み合わせると、取付プレート27の嵌合孔271と上蓋21の逃げ穴211とが対応し、取付プレート27の達磨孔273と上蓋21の長穴212とが対応し、取付プレート27の挿通孔272と上蓋21のねじ孔214とが対応する(図5参照)。取付プレート27の挿通孔272にボルト290(図5参照)を挿通し、上蓋21のねじ孔214に螺合することにより、取付プレート27が上蓋21に取り付けられる。
【0044】
このような圧入治具2を次のようにしてピストンロッド5に取り付ける。
まず、ピストンロッド5の中心に設けられた嵌合凸部を取付プレート27の嵌合孔271に嵌合させ、ピストンロッド5の外周側に設けられた係合突起を取付プレート27の達磨孔273の大円形部内に挿通する。そして、圧入治具2を回転させながら、ピストンロッド5に設けられたプランジャ穴にプランジャピン280を入れて位置決めすると同時に、ピストンロッド5の係合突起を取付プレート27の達磨孔273の小円形部と係合させ、これにより、圧入治具2をピストンロッド5に取り付ける。
【0045】
次に、断熱マット11によって覆われたCSF10をシェル12内に圧入するときの手順について説明する。
まず、支持凸部41を介して固定台4にシェル12を載置し、シェル12の下端側を固定台4に固定する。そして、予め、第1のガイド部材3Aに第2のガイド部材3Bを取り付けたガイド部材3を組み立てておき、このガイド部材3をシェル12の上方内部に嵌合配置し、ガイド部材3をシェル12の上端側に取り付ける。
【0046】
そして、断熱マット11によって覆われたCSF10を第1のガイド部材3A内に導入部31から導入し、倒れないように立設させておく。この後、ピストンロッド5に取り付けられた圧入治具2を上方から下降させ、下蓋26の下面をCSF10の上面に当接させる。ピストンロッド5をさらに下降させて、CSF10を断熱マット11ごと圧入治具2によって下方へ押圧移動させる。
【0047】
この際、断熱マット11は、第1のガイド部材3Aと第2のガイド部材3Bの内面に倣って縮径変形しながら下方へ押圧移動する。また、可変プレート23も、第1のガイド部材3Aと第2のガイド部材3Bの内面に倣って、スプリング25からの付勢力に抗して径方向内側(縮径方向)に移動する。しかし、この移動中において、CSF10の上面には下蓋26の下面が常に当接しており、可変プレート23は当接しないので、可変プレート23でCSF10の上面をこすることはない。
これにより、CSF10および断熱マット11は一体で、シェル12内にスムーズに圧入される(図3参照)。
【0048】
なお、断熱マット11は縮径変形しながら下方へ押圧される間、その外周がガイド部材3の内面と接触するため、このときの接触抵抗により、下蓋26の底部263の外周よりも上方に突出してくるが、可変プレート23に抑えられ、かつ底部263の厚さtが薄いため、断熱マット11の突出量は所定の規定値以内(本実施形態では2mm以内)に収められ、最終的に断熱マット11がCSF10よりも上方に大きく突出することはない。
【0049】
一方、CSF10をシェル12内に圧入した後は、圧入治具2を上昇させてシェル12内から退避させる。このとき、可変プレート23上面の外周縁には、所定半径の曲面部232が形成されているため、圧入治具2が、例えば第1のガイド部材3Aと第2のガイド部材3Bとの継ぎ目部分で引っ掛かって抜けなくなることを防止できる。また、膨出部121によって形成された膨出空間は第2のガイド部材3Bによって覆われているため、圧入治具2を上昇させるときに、圧入治具2の可変プレート23は膨出部では外側方向に移動せず、圧入治具2がシェル12の内面に引っ掛かってシェル12内から抜けなくなることもない。
【0050】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、被圧入物としてCSF10を用いたが、これには限らず、DOCを被圧入物としてもよい。
前記実施形態では、CSF10は、圧入治具2によって上方から下方に押圧されて圧入されたが、圧入治具2をCSF10の下方に配置して、CSF10を下方から上方に圧入してもよい。あるいは、CSF10を水平方向に圧入してもよい。
【0051】
前記実施形態では、固定台4を固定した状態でCSF10を圧入しているが、固定台4を移動させながらCSF10を圧入してもよく、また、固定台4及びCSF10の両方を移動させながら圧入してもよい。
前記実施形態では、固定プレートとして円形プレート22を用いたが、これには限らず、固定プレートを四角形やその他の多角形状としてもよい。
前記実施形態では、可変プレート23を6つ設けたが、これには限らず、各可変プレート同士が干渉することなくスムーズに移動できれば、6つ以外の複数個設けられていればよい。
前記実施形態では、付勢部材としてスプリング25を用いたが、スプリングには限定されず、弾性を有した合成樹脂等のエラストマ部材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、被圧入物を筒状のシェル内に圧入するための圧入治具およびこれを用いた圧入装置として利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1…圧入装置、2…圧入治具、3…ガイド部材、3A…第1のガイド部材、3B…第2のガイド部材、4…固定台、10…被圧入物であるCSF、11…断熱マット、12…シェル、21…第1の蓋部材である上蓋、22…固定プレートである円形プレート、23…可変プレート、24…ガイドピン、25…付勢部材であるスプリング、26…第2の蓋部材である下蓋、31…導入部、32…テーパ部、232…曲面部、d10…外径、D3…外径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が断熱マットで覆われた被圧入物を筒状のシェルに圧入する際に用いられる圧入治具であって、
前記被圧入物に対して反圧入方向側に配置される固定プレートと、
前記固定プレートの反圧入方向側に取り付けられる第1の蓋部材と、
前記固定プレートを貫通して摺動可能なガイドピンが固定されるとともに、前記固定プレートよりも外方に設けられ、かつ前記固定プレートに近接離間する方向に移動可能な可変プレートと、
前記ガイドピンに挿通されて前記固定プレートと前記可変プレートとの間に介装され、前記可変プレートを前記固定プレートから離れる方向に付勢する付勢部材とを備え、
前記固定プレートの圧入方向側には、前記可変プレートの圧入方向側の面が接触する第2の蓋部材が設けられている
ことを特徴とする圧入治具。
【請求項2】
請求項1に記載の圧入治具において、
前記第1の蓋部材と前記固定プレートとが圧入方向において当接され、前記固定プレートと前記第2の蓋部材とが圧入方向において当接されている
ことを特徴とする圧入治具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧入治具において、
前記第2の蓋部材の外径は、縮径した前記断熱マットの外径よりも小さい
ことを特徴とする圧入治具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧入治具において、
前記可変プレートの反圧入方向側の外周縁には、所定半径の曲面部が形成されている
ことを特徴とする圧入治具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかの圧入治具と、
筒状のシェルの一端側に取り付けられて被圧入物を前記シェル内に案内する筒状のガイド部材と、
前記シェルの他端側が固定される固定台とを備える
ことを特徴とする圧入装置。
【請求項6】
請求項5に記載の圧入装置において、
前記ガイド部材は、第1のガイド部材と、前記第1のガイド部材よりも圧入方向側であって前記シェルに嵌合される第2のガイド部材とからなり、
前記第1のガイド部材の内部は、内径が圧入方向に向かうに従って小さくなるテーパ面を有するテーパ部となっており、
前記第2のガイド部材の内径は、圧入方向で一定である
ことを特徴とする圧入装置。
【請求項7】
請求項6に記載の圧入装置において、
前記第1のガイド部材の前記テーパ部に対して反圧入方向側の端部には、内径が圧入方向で一定な導入部が設けられている
ことを特徴とする圧入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52473(P2013−52473A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192050(P2011−192050)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】