説明

圧力式炊飯器及び圧力式炊飯方法

【課題】 加圧状態から急激な減圧を起こすことにより爆発的な撹拌作用が得られ、省エネルギー効果に優れるとともに、被炊飯物のメニューに応じて沸騰時の減圧度を加減し、撹拌の状態を調整できる圧力式炊飯器及びその方法を提供すること。
【解決手段】 鍋と、開口部及び加熱手段並びに制御手段を有する炊飯器本体と、鍋及び炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、蓋体に鍋内と外気とを連通又は遮断する圧力弁機構と、圧力弁機構を強制的に開状態にする圧力弁開放機構とを備え、制御手段は加熱手段の加熱量を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行うとともに圧力弁機構の開動作の制御を行ない、沸騰中に該圧力弁開放機構により圧力弁機構を開動作させて鍋内の圧力を変更する圧力式炊飯器において、蓋体は表蓋及び蓋カバー並びに該蓋カバーを介して枠体に装着される内蓋からなり、内蓋には圧力弁機構として圧力調整弁と圧力抜き弁の2つが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気炊飯器に係り、特に炊飯の過程で加圧と減圧を行い、加圧時に高温を加えて熱と水分を米の芯に浸透させ、その状態からの急激な減圧によって起きる爆発的対流により米をかき混ぜる方式の圧力式炊飯器とそれを用いた圧力式炊飯方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化及び環境汚染の問題が地球規模において最優先課題として解決されなければならない時代に突入している。このうち、頻発する自然災害の一因が地球温暖化にあるとされていることから、地球温暖化の防止、すなわちCO排出量の数値目標が世界各国及び地域に設定されて、その目標達成に向けて様々な施策が打ち出され、我が国においても京都議定書での削減目標達成に向けた取り組みがなされている。かかる状況を踏えて、一般家庭で使用される電化製品もその対象となり、電気炊飯器も省エネルギー対策が急務となって、これまでさまざまな工夫がなされた炊飯器が特許文献で紹介されている。
【0003】
その中において、炊飯器における従来の省エネルギー対策の一つとして、例えば特許文献1に開示された電気炊飯器のように、圧力装置を備え、この圧力装置によって予熱工程、立上工程、沸騰工程の一連の炊飯工程において、鍋内を圧力状態に維持して、予熱工程での米の吸水と、立上工程、沸騰工程の各工程における吸水及び熱伝導を良好にして、炊飯の所要時間を短縮し、かつ飯の炊き上がり状態を良好にするものがある。高い圧力を加えて温度を上昇させる圧力炊飯は、早く炊けて、粘りが強く、弾力がある炊き上がりが特徴である。
【0004】
さらに本出願人は、特許文献2に開示したような、炊飯の過程で加圧と減圧を繰り返し行う方式、つまり加圧時に高温をかけて熱と水分を米の芯に浸透させ、その状態からの急激な減圧によって起きる爆発的対流により米をかき混ぜ熱をむらなく通す、いわゆる「おどり炊き」方式の炊飯器を開発した。この炊飯方式は、加圧時には例えば1.2気圧、105℃で炊飯し、減圧時には急激に1気圧まで減圧することを、被炊飯物に応じて数回乃至十数回繰り返すものである。そうすると、米の場合には加圧時には熱と水分が米の芯まで浸透して甘みと粘りを引き出し、減圧時には大沸騰が生じて米が鍋の底からかき混ぜられることになるので、米の吸水が促進され米が芯からα化するとともに、撹拌により鍋の中心部まで加熱されふっくらしたご飯が炊ける。
【0005】
このように、この方式の炊飯器では被炊飯物を入れる鍋に溜められた水が炊飯時に加熱され加圧状態から急激に減圧されると一気に沸騰して、激しい熱対流を引き起こすこととなり、この沸騰熱が米に浸透し、美味さを引き出すことができる。かつ沸騰水によりかき混ぜられた米は吸水が促進され各粒の芯からのα化ができる。従来の誘導加熱コイルによる渦電流で鍋を発熱させる誘導加熱方式の炊飯器では鍋の中心は温度が上がりにくかったが、上記の方式においては鍋の中心まで加熱され、鍋の中心部にある米も美味しく炊き上がるので、ふっくらした美味しいご飯を早く炊き上げることができる。また、炊飯に要するエネルギーを節約できる。
【0006】
この沸騰時の減圧の際に、爆発的な沸騰を起こして米をかき混ぜるには、急激で大きな減圧を一気に行なうことが必要であるが、従来の炊飯器は沸騰維持工程において圧力調整弁によって図1に示したような加圧、減圧を繰り返していた。ちなみに、図1の場合は被炊飯物を米の糊化温度以下に保持するよう加熱手段を制御する吸水工程、被炊飯物が沸騰状態になるまで昇温加熱する立上り工程、被炊飯物を沸騰状態に維持するとともに沸騰中に圧力弁解放機構により鍋内の圧力を変更する沸騰維持工程、沸騰維持工程の後で米を蒸らす蒸らし工程、追い炊き工程及び蒸らし工程からなる炊飯工程のうち、沸騰維持工程において、1.2気圧付近から1.0気圧近辺まで繰り返し6回の加圧、減圧を行っている。
【特許文献1】特開6−22710号公報(段落[0006]〜[0009]、図2)
【特許文献2】特開2004−344568号公報(段落[0009]〜[0012]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1の場合には、加圧下で炊飯されるが沸騰中の減圧はされないので撹拌作用はなく、誘導加熱による熱が鍋の周辺と中心部とでは差があり、中心部まで均一に伝わらず炊飯状況にむらが生じる恐れがあった。また、上記特許文献2の場合には、減圧機構は備えているがその能力が不足していて、減圧の回数が少ないと十分な撹拌効果が得られず減圧を何度も繰り返す必要があり、沸騰時のエネルギー利用の効率性が不十分なため、さらに改善が望まれていた。
【0008】
本願の発明者は、省エネルギー化の点から圧力式炊飯器の炊飯時の熱の有効利用に着目し、上記の問題点を解決すべく種々検討を行った結果、鍋の蓋体に設ける減圧機構を構成する圧力弁として圧力調整弁と圧力抜き弁の2つの圧力弁を設けることによって、一度の減圧でも十分な撹拌が行なわれ、突沸時の撹拌における熱エネルギーが有効活用できて、損失が少なくてすみ、炊飯に要するエネルギーを減少させることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、圧力式炊飯器において、加圧状態から急激な減圧を起こすことにより、爆発的な撹拌作用が得られ、短時間で美味しいご飯が炊き上げられる、省エネルギー効果に優れた圧力式炊飯器及び圧力式炊飯方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
また、本発明は、被炊飯物のメニューのプログラムに応じて、沸騰時の減圧度を加減することができ、撹拌の状態を調整することによって、所望の炊き上げ状態に調整できる圧力式炊飯器及び圧力式炊飯方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の圧力式炊飯器は、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記蓋体に前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁機構と、該圧力弁機構に付設されこの圧力弁機構を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを更に備え、前記制御手段は加熱手段の加熱量を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行うとともに該圧力弁開放機構による前記圧力弁機構の開動作の制御を行ない、沸騰中に該圧力弁開放機構により圧力弁機構を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更するようにした圧力式炊飯器において、
前記蓋体は、枠体の上下にそれぞれ固着された表蓋及び蓋カバー並びに該蓋カバーを介して枠体に装着される内蓋からなり、該内蓋には前記圧力弁機構として圧力調整弁と圧力抜き弁の2つが設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の圧力式炊飯器において、前記内蓋の圧力調整弁と圧力抜き弁とは、互いに異なった口径を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の圧力式炊飯器において、前記圧力弁開放機構は、前記圧力調整弁及び圧力抜き弁を個別に又は同時に駆動する駆動手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1に記載の圧力式炊飯器において、前記制御手段は、沸騰中における圧力抜き時に所定のメニューのプログラムに応じて、前記圧力調整弁と圧力抜き弁の2つのうちいずれか1つ又は2つを組み合わせた開動作の制御を行なうことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5の圧力式炊飯器は、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記蓋体に前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、該圧力弁に付設されこの圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを更に備え、前記制御手段は加熱手段の加熱量を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行うとともに該圧力弁開放機構による前記圧力弁の開動作の制御を行ない、沸騰中に該圧力弁開放機構により前記圧力弁を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更するようにした圧力式炊飯器において、
前記蓋体は、枠体の上下にそれぞれ固着された表蓋及び蓋カバー並びに該蓋カバーを介して枠体に装着される内蓋からなり、該内蓋には貫通孔と移動自在な前記圧力弁とが設けられ、且つ該圧力弁には前記貫通孔にその一方が連通する口径が異なる2つの連通孔が設けられており、通常位置においては前記圧力弁は前記連通孔のうち口径の小さいほうが前記貫通孔に連通し、移動位置においては前記圧力弁は前記連通孔のうち口径の大きいほうが前記貫通孔に連通することを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5に記載の圧力式炊飯器において、前記制御手段は、沸騰中の圧力抜き時に所定のメニューのプログラムに応じて、前記圧力弁の連通する前記2つの貫通孔間を移動させたのち開動作の制御を行なうことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7の圧力式炊飯方法は、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記蓋体に前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁機構と、該圧力弁機構に付設されこの圧力弁機構を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを更に備え、前記圧力弁機構が圧力調整弁と圧力抜き弁の2つからなる圧力式炊飯器を用いて、前記鍋内を密閉し加圧して炊飯する圧力式炊飯方法であって、以下の(1)〜(3)に示す工程を順次実行することを特徴とする。
(1)前記鍋に被炊飯物を収容し、米の糊化温度以下の温度に維持して米に水を吸水させる吸水工程。
(2)前記被炊飯物が沸騰するように昇温加熱する立上加熱工程。
(3)前記被炊飯物を沸騰状態に維持して前記鍋内を加圧状態に維持するとともに、沸騰状態維持中に前記開閉機構により所定のプログラムに応じて前記圧力調整弁及び圧力抜き弁の少なくとも一方を少なくとも1回開作動して前記鍋内の圧力を大気圧近傍に低下させて突沸現象を起こさせる操作を行う沸騰維持工程。
【0018】
請求項8の発明は、請求項7に記載の圧力式炊飯方法において、前記圧力調整弁の弁口の口径は、前記圧力抜き弁の弁口の口径よりも小さいことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項9の圧力式炊飯方法は、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記蓋体に前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、該圧力弁に付設されこの圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを更に備え、前記圧力弁は前記蓋体の内蓋に移動自在に設けられ該内蓋に設けられた貫通孔にそのいずれか一方が連通する口径が異なる2つの連通孔を有する圧力式炊飯器を用いて、前記鍋内を密閉し加圧して炊飯する圧力式炊飯方法であって、以下の(1)〜(3)に示す工程を順次実行することを特徴とする。
(1)前記鍋に被炊飯物を収容し、米の糊化温度以下の温度に維持して米に水を吸水させる吸水工程。
(2)前記被炊飯物が沸騰するように昇温加熱する立上加熱工程。
(3)前記被炊飯物を沸騰状態に維持して前記鍋内を加圧状態に維持するとともに、沸騰状態維持中に、前記開閉機構により所定のプログラムに応じて前記圧力弁の2つの連通孔のいずれか一方が前記貫通穴に連通するように移動させ、少なくとも1回開作動して前記鍋内の圧力を大気圧近傍に低下させて突沸現象を起こさせる操作を行う沸騰維持工程。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記の構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、圧力弁機構と、圧力弁開放機構とを備え、制御手段によって沸騰中に圧力弁開放機構により圧力弁を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更するようにした圧力式炊飯器において、内蓋に圧力調整弁と圧力抜き弁の2つからなる圧力弁機構を設けたことにより、加圧状態から急激な減圧を起こすことができるので、爆発的な撹拌作用が得られ、短時間で美味しいご飯が炊き上げられる省エネルギー効果に優れた圧力式炊飯器を提供することができる。また、圧力弁機構が2つの圧力弁から構成されているので、鍋内の減圧をコントロールすることができるようになる。
【0021】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、内蓋の圧力調整弁と圧力抜き弁とは、互いに異なった口径を有することから、組み合わせによって圧力を抜く程度を任意で調整でき、従ってメニューのプログラムに応じて減圧状態を調整することができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、圧力弁開放機構は、内蓋の圧力調整弁と圧力抜き弁を個別に又は同時に駆動するので、制御手段の制御に応じて圧力弁機構を操作することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、制御手段は、圧力調整弁と圧力抜き弁の2つの圧力弁からなる圧力弁機構を、沸騰中における圧力抜き時に所定のメニューのプログラムに応じて、いずれか1つのみ又は2つを組み合わせた開動作の制御を行なうことによって、被炊飯物のメニューに応じて、沸騰時の減圧スピードを操作することができ、撹拌の状態を調整することによって、所望の炊き上げ状態に調整できる圧力式炊飯器を提供することができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、圧力弁は位置が移動可能に設けられ、口径の異なる2つの貫通孔に連通させることで加圧状態から急激な減圧を起こすことができるようにしたので、爆発的な撹拌作用が得られ、短時間で美味しいご飯が炊き上げられる、省エネルギー効果に優れた圧力式炊飯器を提供することができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、請求項5の効果に加えて、制御手段は、沸騰中の圧力抜き時に所定のメニューのプログラムに応じて、圧力弁の連通する貫通孔を選択し、開動作の制御を行なうことにより、圧力を抜く程度を調整できる。従ってメニューのプログラムに応じて減圧状態を調整することができる。
【0026】
請求項7の発明によれば、上記のような内蓋に圧力調整弁と圧力抜き弁の2つの圧力弁を設けた圧力式炊飯器による圧力式炊飯方法において、沸騰時の圧力抜き時には所定のメニューのプログラムに応じて、圧力調整弁と圧力抜き弁のいずれか1つのみ又は2つを組み合わせて用いることで、沸騰維持工程における減圧状態を制御するので、所定の沸騰と撹拌状態を得ることができる。また、微細な圧力調整が可能となる。
【0027】
請求項8の発明によれば、請求項7の発明の効果に加えて、内蓋の圧力調整弁と圧力抜き弁とは、互いに異なった口径を有することから、組み合わせによって圧力を抜く程度を任意で調整でき、従ってメニューのプログラムに応じて減圧状態を調整することができる。
【0028】
請求項9の発明によれば、上記のように圧力式炊飯器の内蓋を移動自在に設けた圧力弁が、連通する2つの口径の異なる貫通孔を有することによって、制御手段は、圧力弁を所定のメニューのプログラムに応じて移動させることで連通する貫通孔を変更できるようになるので、減圧状態の制御ができる圧力式炊飯方法となるので、所定の沸騰と撹拌状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための圧力式炊飯器と圧力式炊飯方法を例示するものであって、本発明をこの圧力式炊飯器と圧力式炊飯方法に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0030】
図2は、本発明の一実施例に係る圧力式炊飯器の断面図である。図3は、図2に示す圧力式炊飯器の、表蓋を取り外した際の蓋体の平面図であり、図4は、図2に示す圧力式炊飯器の、表蓋を取り外した際の蓋体の他の例を示す平面図である。また図5は、図3及び図4における圧力調整弁と圧力抜き弁の拡大断面図を示す。
【0031】
本発明の実施例に係る圧力式炊飯器1は、図2に示すように、水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋3と、この鍋を着脱自在に収容する開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する誘導加熱コイル51等の加熱手段並びに加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体2と、鍋3及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体4とを備えている。制御手段は、鍋内の圧力を略一定とするように鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁7と、圧力弁7に付設され圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構8とを備えており、加熱手段の加熱量とを制御するとともに、圧力弁開放機構8による圧力弁7の開動作の制御を行なう。制御手段は、沸騰中に圧力弁開放機構8により圧力弁7を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更するようにしてある。
【0032】
炊飯器本体2は、その内部に鍋3を収容する非金属材料で成形された有底筒状の内ケース21と、この内ケースを覆う外ケース22とを有し、内ケース21内に鍋3が着脱自在に収容されるようになっている。内ケース21は、その上端部に外周へ突出したフランジ21aが形成されている。鍋3は、その上端開口部に外方に張り出すフランジ31が形成されており、このフランジ31が内ケース21のフランジ21aに掛るように載置される。内ケース21は、その底部付近の外周囲に誘導加熱コイル51が配設される。この誘導加熱コイル51は、鍋3の外周面までの距離が一定になるように耐熱性樹脂材料で成形されたコイルカバー(図示省略)に支持されている。また、内ケース21には、上方開口部と誘導加熱コイル51との間に側面ヒータ52が配設されている。
【0033】
炊飯器本体2は、その外ケース22の前面に操作プレート9が装着されている。この操作プレート9には、電源スイッチ9a、炊飯スタートスイッチ、メニュー選択スイッチ、保温スイッチ等(図示せず)のスイッチ類の操作釦及び表示パネル9bが装着されており、表示パネル9bには操作制御基板10に設けられた電子回路によって制御・選択された炊飯メニュー等が表示される。
【0034】
炊飯器本体2には、誘導加熱コイル51、側面ヒータ52及び蓋ヒータ53等へ電力を供給・制御する電源制御基板6が通気孔23aに近接した箇所に配設されている。電源制御基板6には、半導体素子からなるインバータ61、スイッチング素子、タイマー素子等の電子部品が装着されている。これらの電子部品のうち、特にインバータ61は作動時に発熱するのでヒートシンク、或いは冷却ファン11によって冷却される。また、炊飯器本体2は、その底部23の中央部に鍋3の底面に接触するようにして温度検出センサ32が設けられている。さらに炊飯器本体2又は蓋体4のいずれかに外気温度を検知する外気温センサ(図示省略)が設けられている。この外気温センサの出力は、制御手段に入力されて、冷却用ファン11が作動される。
【0035】
炊飯器本体2の底部23には、図2に示すように左右に、空気を吸気する通気孔23a及び吸気された空気を排出する排気孔23bが形成され、通気孔23a及び排気孔23bは、底部23に所定の幅長及び長さを有する複数本の細溝、いわゆるスリットで形成されている。冷却ファン11は、通気孔23aに近接した位置に配設されている。この冷却ファン11は、図示しないモータにより作動され、通気孔23aから吸気した空気でインバータを冷却する。
【0036】
蓋体4は、枠体42の上下に表蓋41及び蓋カバー48をそれぞれ取り付け、蓋カバー48を介して枠体に内蓋43が着脱自在に装着された構成を有し、炊飯器本体2の内ケース21の上方開口部を覆うように取り付けられている。蓋体4は、枠体42をヒンジ部材44と枢支ピン45とを用いて炊飯器本体2に軸支されており、蓋体4を炊飯器本体2に開閉できるようになっている。また枠体42と内蓋43の間には、蓋カバー48に覆われて蓋ヒータ53が配設されるとともに、蓋温度センサ4(図示省略)が設けられている。内蓋43のほぼ中央部には、鍋の圧力や温度の検知用のセンサが取り付けられるとともに、炊飯器本体2内の蒸気圧を制御し圧力を調整して吹きこぼれを防ぐ圧力調整弁7aや、圧力調整弁の故障などで鍋が異常に加圧されたときに開放され鍋の圧力を逃がす安全弁46が装着されている。圧力調整弁7aは、ソレノイド81により一連の炊飯工程のうち沸騰維持工程で作動される。表蓋41には、鍋内の炊飯物が吹きこぼれて一気に飛び出すのを防止する吹きこぼれ防止蓋41cが着脱自在に装着されている。
【0037】
内蓋43の外周囲には、鍋のフランジ部31と内蓋43とをシールする鍋パッキン49が外枠50に支持されて装着されている。また、ヒンジ部材44の反対側には、内ケース21の上端部に形成された係止部材47aが設けられ、枠体42に設けた係止レバー47bに係止されて蓋体4を閉じた状態に支持するようになっている。炊飯器本体2内に鍋3を収容して蓋体4で覆うと、鍋パッキン49が鍋3の開口縁部に圧接して鍋3が閉鎖される。
【0038】
蓋体4は、その内蓋43がステンレス鋼材やアルミニウム材あるいは両者からなるクラッド材で形成されたものである。内蓋43は金属板を周縁部と内部との間に段差が形成されるように円盤状にプレス成型して形成され、周縁部にはゴム製の鍋パッキン49を介して硬質のプラスチック製の外枠50を取り付けている。外枠50には内蓋を装着するための係止部が設けてある。鍋パッキン49は、鍋3のフランジ部31と密着し、鍋3をシールすることにより圧力を保持する。鍋パッキン49は、耐久性、耐熱性に優れているシリコンゴムから形成するのが好ましい。
【0039】
本実施例は、例えばこのような圧力式炊飯器において、図3及び図4に示すように内蓋43に、選択的に動作可能にした少なくとも2つの圧力弁を設けたものである。それぞれの圧力弁は、互いに口径の異なった弁孔を有している。なお、図3及び図4は蓋体4から表蓋41を外して内蓋43の方を見た平面図であり、格子状に組まれたのは枠体42である。内蓋43のほぼ中央付近に二つ並べて大小の圧力弁である圧力調整弁7aと圧力抜き弁7bが設けられており、これらの圧力弁が蓋カバー48の中央付近の孔から表蓋41内に突出している。これらの圧力弁は、表蓋41の内部に取り付けられたソレノイド81によって駆動される。図3は圧力調整弁7aと圧力抜き弁7bをそれぞれ別のソレノイド81a、81bで駆動する機構を示し、他方、図4は2個の圧力弁7a、7bを同時に1個のソレノイド81cで駆動する機構を示している。
【0040】
図5に示すように、圧力調整弁7aと圧力抜き弁7bはそれぞれ、弁孔71を有する弁座72と、弁座72の上に自重により弁孔を塞ぐように載置された金属ボール73と、ボール73を覆うカバー74とからなり、これらは圧力弁の開閉機構を構成する。これらの圧力弁7は鍋内の圧力とボール73の自重とのバランスによって、ボール73が弁座72上に載ったり離れたりして、弁孔71を開閉する。本実施例においては、このような圧力弁7において弁孔71の口径の異なるものを2個備えていて、そのうちの1個は常時圧力調整弁7aとして働くが、他の1個は圧力抜き弁7bとして強制的減圧時に作動させる。
【0041】
表蓋41にはソレノイド81が設けられており、そのロッド82がボールに向けられて圧力弁を強制的に開放する。ソレノイド81は制御手段から駆動出力を受けていない通常状態の時には、ロッド82がシリンダ83から突出して弁孔上のボール73を横方向に押して弁孔71から外し、弁孔を強制的に開放する。また、ソレノイド81は、制御手段からの駆動出力を受けるとロッド82がシリンダ83内に戻る。このときボール73は自重により弁孔71上に戻り弁孔を閉塞する。かくしてソレノイド81は圧力弁開放機構として動作し、圧力弁7a、7bと圧力弁開放機構とは炊飯工程中に加圧された鍋内の圧力を強制的に減圧降下させることができる。
【0042】
本実施例では、口径の異なる大小2個の圧力弁7があるので、小さい圧力弁(圧力調整弁7a)のみ、大きい圧力弁(圧力抜き弁7b)のみ、大小両方の圧力弁(7a、7b)というように、3つの組み合わせで動作させることができる。炊飯中には選択された炊飯メニューのプログラムに従って圧力を抜くが、状況に応じて必要な口径の圧力弁7を選択して圧力弁開放機構を作動させる。急激に大きな減圧が必要なときには、大と小の2個の弁孔を同時に開放すればよい。
【0043】
なお、表蓋41にはさらに蒸気口41dを設け、弁孔を介して鍋内と大気とを連通し鍋内の圧力や蒸気を大気中に逃がす放出口としている。
【実施例2】
【0044】
図6及び図7は、本発明の他の実施例を示す圧力式炊飯器の断面図である。この実施例の圧力式炊飯器1は、被炊飯物を入れる鍋3と、この鍋3を収容する開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに加熱手段を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行なう制御手段を有する炊飯器本体2と、鍋3及び炊飯器本体2の開口部を塞ぐ蓋体4とを備えたものである。蓋体4には、鍋3内の圧力を略一定とするように鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁7と、圧力弁7に付設され圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構8が設けられ、上述の制御手段は、加熱手段の加熱量を制御するとともに圧力弁開放機構8による圧力弁7の開動作の制御を行ない、沸騰中に圧力弁開放機構8により圧力弁を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更する。この圧力式炊飯器の蓋体4は、枠体42の上下にそれぞれ固着された表蓋41及び蓋カバー48並びに蓋カバーを介して枠体に装着される内蓋43からなり、内蓋43には圧力弁が図6に示す第一の位置と図7に示す第二の位置との間で移動可能に設けられていて、通常位置にあるときは通常の圧力調整時に使用する口径の圧力調整弁7a1を形成し、移動した位置においては大口径の圧力抜き弁7b1を形成する。
【0045】
すなわち、本実施例の圧力弁7はその弁座721が底部で分岐され、2つの径の異なる連通孔H1、H2が形成されており、図6に示す第一の位置にあって圧力調整弁7a1として働くときには、内蓋43の貫通孔43aに圧力弁7に設けられた口径の小さい連通孔H1が連通して通常時の圧力調整を行う。また、沸騰時にソレノイド81dのロッド821が制御装置の信号により前進すると、バネ機構84に抗して圧力弁7が図7に示すように第二の位置に移動させられて、内蓋43の貫通孔43aに径の大きな連通孔H2が連通し、大口径の圧力抜き弁7b1に変化する。この圧力抜き弁7b1が、ソレノイド81dによって開放状態にされると鍋内の圧力が一気に減圧する。そうすると、1.2乃至2.0気圧あった鍋の気圧が大気圧付近まで急激に低下し、沸点以上の温度に加熱されていた鍋の中は爆発的な沸騰、すなわち突沸状態になり被炊飯物を撹拌する。この撹拌によって、むらなく美味しいご飯が短時間で炊き上げられる。
【0046】
移動型の圧力弁7を一個だけ設けた場合には、弁孔は小と大の2段切り替えのみであるが、移動型の圧力弁7を2個併設した場合には、圧力弁7の弁孔として小、小+小、小+大、大+大及び大の5個の組み合わせから選択して動作させることができる。制御手段は、沸騰中の圧力抜き時に所定のメニューのプログラムに応じて、通常位置(第一の位置)における通常の圧力調整時に使用する口径の圧力調整弁7a1と、移動位置(第二の位置)における大口径の圧力弁7b1を選択し、開動作の制御を行なうようになっている。
【実施例3】
【0047】
実施例3は、実施例1又は2に説明したような圧力式炊飯器を用いる圧力式炊飯方法に係るものである。すなわち、実施例1のように圧力式炊飯器の蓋体4が、枠体42の上下に固着された表蓋41及び蓋カバー48並びに蓋カバーを介して枠体に装着される内蓋43からなり、内蓋43には圧力調整弁と圧力抜き弁の2つの圧力弁を設けた圧力式炊飯器による圧力式炊飯方法であり、沸騰時の圧力抜き時には所定のメニューのプログラムに応じて、圧力調整弁と圧力抜き弁のいずれか一つのみ又は二つを組み合わせて用いる圧力式炊飯方法である。この方法によると、プログラムによって多様な圧力の調整が可能であり、二つを組み合わせると急激な減圧が得られる。
【0048】
炊飯器本体2は、異なる炊飯コースを選択するための選択手段S101を備えていて、CPU、ROM、RAMなどで構成されたハードウエアとそのハードウエアに記録されたソフトウエアからなる制御手段は、選択された炊飯コースのメニューに応じたプログラムを実行する。例えば、図8のように、メニューに「玄米・普通炊飯コース」、「白米・普通炊飯コース」、「白米・すし飯炊飯コース」があり、「白米・普通炊飯コース」S103が選択されると、その選択されたコースに従ってフローチャートに示したように、定められたプログラムが実行される。以下、図1の炊飯工程図、図3及び図8のフローチャートに従って説明する。
【0049】
吸水工程S106においては、吸水タイマーで吸水時間を測定しつつ温度センサで鍋底の温度を測温する。同時に加熱手段により加熱を開始し、その際には圧力弁7a、7bを開作動のままで吸水工程を実施する。実験的に定めた吸水時間が所定の含水率に達する時間(例えば15分)になると立上げ加熱工程に移る。
【0050】
立上げ加熱工程S112では全加熱量で加熱し、同時にソレノイド81a、81bのロッドをシリンダ内に引き込んで圧力弁の金属ボール73(図5)を自重で弁座72の上に載せて弁孔を閉塞し(S113)、鍋内の圧力を高める。蒸気センサで蒸気温度を計測し沸騰開始温度を検出するまで加熱を継続する。沸騰開始温度は蒸気センサが取り付けられた位置において金属ボール73による加圧条件下で沸騰が始まると判断される温度である。
【0051】
沸騰温度に達すると鍋内で沸騰を継続させる沸騰維持工程S116に移行する。沸騰維持工程に入ると、直ちに加熱量を制御し、第1回目のソレノイド81a、81bによる圧力弁7a、7bの強制的開放駆動を行う。次いで、加熱を停止し、圧力弁の強制的な開状態が所定時間継続するのを待って、鍋内圧力が大気圧近傍まで低下するようにする。本実施例では圧力調整弁7aと圧力抜き弁7bを同時に開放することができるので急速な減圧が生じる。鍋内の圧力が加圧状態から一気に大気圧まで低下すると激しい突沸現象が発生し、生じた対流によって米粒が撹拌される。なお所定の時間は、鍋内の圧力が大気圧に戻り最大限の沸騰エネルギーで撹拌できる時間である。これより短いと大気圧まで戻らず沸騰のエネルギーが十分でないし、長すぎても吹きこぼれなどが生じて無駄である。2から6秒程度が好適である。水量が最も多い撹拌効果の期待できる初回の撹拌では加圧状態から大気圧近傍まで大きく減圧して激しく撹拌する。
【0052】
初回の撹拌が終わるとソレノイド81a、81bのロッドを引き込んで圧力弁7a、7bが開作動をしないようにして加熱を行い鍋内圧力が回復し次回の撹拌ができる状態に復帰するのを待つ。プログラムする回復までの時間は実験的に求めておく。なお、圧力弁7a、7bがソレノイド81a、81bにより強制的に開作動されていない閉塞状態にあるときの鍋内の圧力は1.10〜2.20気圧に維持されるように設定するのが好ましい。圧力がこの範囲であれば減圧による突沸状態が発生し撹拌を十分に行うことができるからであり、さらに圧力を上げると圧力式炊飯器の耐圧性など別の問題が発生するため、この範囲がよい。
【0053】
鍋内圧力が回復すると、圧力弁7a、7bの開閉数があらかじめ設定した回数にあるかどうか確認し、所定の回数に達するまで開閉を繰り返す(S117〜S120)。圧力弁を開閉する回数が増すにつれて鍋内の残水量が減り、米が移動しにくくなる。そこで、回数が増えるのにつれ開作動時間を長くしてもよい。図1の実施例は、圧力弁の強制的開駆動を、残水量が多く米の移動しやすい沸騰維持工程の初期に6回行ったものである。開作動は少なくとも1回、好ましくは3から6回程度である。この実施例の方法によれば、圧力調整弁7aと圧力抜き弁7bとを同時に開放するので、開作動の回数は少なくてもよい。
【0054】
沸騰維持工程S116および圧力弁「開」「閉」工程(S117〜S120)が終わると、蒸らし1工程S139、追い炊き工程S142、蒸らし2工程S144を経て保温工程S147に移る。
【0055】
上記の圧力式炊飯方法は、実施例2に示したような圧力弁7が通常位置と移動位置との間で移動可能に設けられていて、通常位置においては通常の圧力調整時に使用する小さい口径の圧力調整弁と、移動位置においては大口径の圧力抜き弁を形成するようにした圧力式炊飯器においても適用可能である。その場合、圧力式炊飯器の制御手段は、圧力弁を、沸騰中の圧力抜き時に所定のメニューのプログラムに応じて、通常位置における小口径の圧力調整弁として通常の圧力調整に使用するか、或いは移動位置における大口径の圧力抜き弁として動作させるかのいずれかを選択し、開動作の制御を行なうことができる。この場合は、口径が小と大の2つであるが、同様のものを2組設けると圧力弁の組み合わせが増え、さらにきめの細かい制御を行うことができる。
【0056】
以上の実施例では、加熱手段が誘導コイルの例を述べたが、IH方式の加熱手段に限らず他の加熱手段であってもよい。また圧力弁は、設定圧力以上になると自動的に開き、設定圧力以下になると自動的に閉じる機能を持つものであれば形式を問わない。さらにまた、圧力弁開放機構は、ソレノイドに限らず圧力弁が閉じている状態から強制的に弁を開放するものであれば、機構が電磁式のものであっても機械式のものであってもよい。
【0057】
本発明によれば、炊飯器本体の鍋の蓋をする内蓋に、互いに口径の異なる圧力調整弁と圧力抜き弁という二つの弁を形成したので、従来に比べ急激に減圧を行なうことができ、これによる急激な沸騰、被炊飯物のかき混ぜが行なわれ、炊飯維持工程において炊飯が迅速に行なえるので、エネルギーが有効活用でき、省エネルギー化に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は炊飯工程の説明図である。
【図2】図2は本発明の一実施例に係る圧力式炊飯器の断面図である。
【図3】図3は図2に示す圧力式炊飯器の、表蓋を取り外した際の蓋体の平面図である。
【図4】図4は図2に示す圧力式炊飯器の、表蓋を取り外した際の蓋体の他の例を示す平面図である。
【図5】図5は図3及び図4における圧力調整弁と圧力抜き弁の拡大断面図を示す図である。
【図6】図6は本発明の他の実施例を示す圧力式炊飯器の断面図である。
【図7】図7は本発明の他の実施例を示す圧力式炊飯器の断面図である。
【図8】図8は本発明の圧力式炊飯方法の実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 圧力式炊飯器
2 炊飯器本体
3 鍋
4 蓋体
41 表蓋
42 枠体
43 内蓋
43a 貫通孔
46 安全弁
48 蓋カバー
7a、7a1 圧力調整弁
7b、7b1 圧力抜き弁
71 弁孔
72 弁座
73 ボール
74 カバー
81 ソレノイド
H1、H2 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記蓋体に前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁機構と、該圧力弁機構に付設されこの圧力弁機構を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを更に備え、前記制御手段は加熱手段の加熱量を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行うとともに該圧力弁開放機構による前記圧力弁機構の開動作の制御を行ない、沸騰中に該圧力弁開放機構により圧力弁機構を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更するようにした圧力式炊飯器において、
前記蓋体は、枠体の上下にそれぞれ固着された表蓋及び蓋カバー並びに該蓋カバーを介して枠体に装着される内蓋からなり、該内蓋には前記圧力弁機構として圧力調整弁と圧力抜き弁の2つが設けられていることを特徴とする圧力式炊飯器。
【請求項2】
前記内蓋の圧力調整弁と圧力抜き弁とは、互いに異なった口径を有することを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【請求項3】
前記圧力弁開放機構は、前記圧力調整弁及び圧力抜き弁を個別に又は同時に駆動する駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力式炊飯器。
【請求項4】
前記制御手段は、沸騰中における圧力抜き時に所定のメニューのプログラムに応じて、前記圧力調整弁と圧力抜き弁の2つのうちいずれか1つ又は2つを組み合わせた開動作の制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【請求項5】
水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記蓋体に前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、該圧力弁に付設されこの圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを更に備え、前記制御手段は加熱手段の加熱量を制御して被炊飯物の炊飯及び保温制御を行うとともに該圧力弁開放機構による前記圧力弁の開動作の制御を行ない、沸騰中に該圧力弁開放機構により前記圧力弁を少なくとも1回開動作させて鍋内の圧力を変更するようにした圧力式炊飯器において、
前記蓋体は、枠体の上下にそれぞれ固着された表蓋及び蓋カバー並びに該蓋カバーを介して枠体に装着される内蓋からなり、該内蓋には貫通孔と移動自在な前記圧力弁とが設けられ、且つ該圧力弁には前記貫通孔にその一方が連通する口径が異なる2つの連通孔が設けられており、通常位置においては前記圧力弁は前記連通孔のうち口径の小さいほうが前記貫通孔に連通し、移動位置においては前記圧力弁は前記連通孔のうち口径の大きいほうが前記貫通孔に連通することを特徴とする圧力式炊飯器。
【請求項6】
前記制御手段は、沸騰中の圧力抜き時に所定のメニューのプログラムに応じて、前記圧力弁の連通する前記2つの貫通孔間を移動させたのち開動作の制御を行なうことを特徴とする請求項5に記載の圧力式炊飯器。
【請求項7】
水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記蓋体に前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁機構と、該圧力弁機構に付設されこの圧力弁機構を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを更に備え、前記圧力弁機構が圧力調整弁と圧力抜き弁の2つからなる圧力式炊飯器を用いて、前記鍋内を密閉し加圧して炊飯する圧力式炊飯方法であって、以下の(1)〜(3)に示す工程を順次実行することを特徴とする圧力式炊飯方法。
(1)前記鍋に被炊飯物を収容し、米の糊化温度以下の温度に維持して米に水を吸水させる吸水工程。
(2)前記被炊飯物が沸騰するように昇温加熱する立上加熱工程。
(3)前記被炊飯物を沸騰状態に維持して前記鍋内を加圧状態に維持するとともに、沸騰状態維持中に前記開閉機構により所定のプログラムに応じて前記圧力調整弁及び圧力抜き弁の少なくとも一方を少なくとも1回開作動して前記鍋内の圧力を大気圧近傍に低下させて突沸現象を起こさせる操作を行う沸騰維持工程。
【請求項8】
前記圧力調整弁の弁口の口径は、前記圧力抜き弁の弁口の口径よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の圧力式炊飯方法。
【請求項9】
水と米とを含む被炊飯物を入れる鍋と、該鍋を収容する開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段並びに該加熱手段を制御する制御手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記蓋体に前記鍋内の圧力を実質的に一定とするように前記鍋内と外気とを連通又は遮断する開閉機構を有する圧力弁と、該圧力弁に付設されこの圧力弁を強制的に開状態にするための圧力弁開放機構とを更に備え、前記圧力弁は前記蓋体の内蓋に移動自在に設けられ該内蓋に設けられた貫通孔にそのいずれか一方が連通する口径が異なる2つの連通孔を有する圧力式炊飯器を用いて、前記鍋内を密閉し加圧して炊飯する圧力式炊飯方法であって、以下の(1)〜(3)に示す工程を順次実行することを特徴とする圧力式炊飯方法。
(1)前記鍋に被炊飯物を収容し、米の糊化温度以下の温度に維持して米に水を吸水させる吸水工程。
(2)前記被炊飯物が沸騰するように昇温加熱する立上加熱工程。
(3)前記被炊飯物を沸騰状態に維持して前記鍋内を加圧状態に維持するとともに、沸騰状態維持中に、前記開閉機構により所定のプログラムに応じて前記圧力弁の2つの連通孔のいずれか一方が前記貫通穴に連通するように移動させ、少なくとも1回開作動して前記鍋内の圧力を大気圧近傍に低下させて突沸現象を起こさせる操作を行う沸騰維持工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−48766(P2008−48766A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225179(P2006−225179)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】