説明

圧送式トイレ装置

【課題】 便器から排出される汚水に含まれる固形物を効果的に粉砕し、汚水を効率よく圧送する圧送式トイレ装置を提供する。
【解決手段】 本発明の圧送式トイレ装置1は、便器本体2を給水洗浄する給水装置4と、便器本体の排出口2aに連通し便器本体の排出口から排出された汚水及びこの汚水に含まれる固形物11を貯溜する貯留槽10と、この貯留槽内に設けられ、固形物を粉砕するカッター22を備えた粉砕部12と、このカッターにより粉砕された固形物及び汚水を貯留槽の外部へ圧送するポンプ14と、粉砕部の水位を検出する水位センサ30と、この水位センサの検出情報に基づいてカッター及びポンプを制御する制御装置6と、を有し、この制御装置は、粉砕部の水位がカッターよりも高い位置にあるとき、カッターを駆動して固形物を粉砕し、さらに、この粉砕された固形物及び汚水をポンプを駆動して貯留槽の外部へ圧送する制御モードを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧送式トイレ装置に係り、特に、便器本体から排出される汚水に含まれる固形物を粉砕して圧送する圧送式トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般家庭用等のトイレでは、トイレから下水までの排水管の傾斜勾配を利用して排水が行なわれているが、トイレから下水まで排水管を設置する際に、トイレの設置場所の床をはがして地面を掘り起こしたりする等、設置工事の作業に負担がかかったり、住宅の間取りと排水管の設置位置によってトイレスペースが制限されて自由にレイアウトできない等の事情から、トイレから下水へ排水を圧送する圧送装置を備えた圧送式トイレが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
この従来の圧送式トイレ装置は、洗浄水タンクから洗浄水が便器本体に流されて洗浄された後便器本体から排出される汚水を貯留する貯留槽を備え、この貯留槽内には粉砕装置及び圧送装置が設けられている。粉砕装置は、便器本体から排出される汚水中の汚物やトイレットペーパ等の固形物を一旦捕捉して粉砕し、この粉砕した固形物を含む汚水は、ポンプからなる圧送装置によって下水側へ強制的に圧送されるようになっている。
また、粉砕装置は、特許文献1 にも記載されているように、孔付きのスクリーンで形成されたケーシングを備え、このケーシングは、便器本体から排出された汚水に含まれる固形物を一時的に捕捉して水分を通過させるようになっている。さらに、ケーシング内には、捕捉した固形物を粉砕するカッタを含む粉砕部が設けられている。
固形物を含む汚水がトイレから排出されてケーシング内に流入すると、水や尿はスクリーンの孔を通過して貯留槽に溜まる。一方、スクリーンの孔を通過できない固形物は、ケーシングのスクリーン内に捕捉され、スクリーンの孔を通過できる大きさになるように粉砕部のカッターによって細かく粉砕された後に貯留槽へ流される。さらに、この貯留槽内の粉砕された固形物を含む汚水は、ポンプによって吸引されて貯留槽の外部へ吐き出され、下水側へ流れる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−93914号公報(第5頁〜第13頁、第1図〜第17図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、圧送機内に封水を確実に構築できると共に、使用時に便器本体内に溜水を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、便器本体の排出口から排出される汚水に含まれる固形物を粉砕して圧送する圧送式トイレ装置であって、上記便器本体の排出口に連通し便器本体の排出口から排出された汚水及びこの汚水に含まれる固形物を貯溜する貯留槽と、この貯留槽内に設けられ、上記固形物を粉砕する粉砕手段を備えた粉砕部と、この粉砕手段により粉砕された固形物及び汚水を上記貯留槽の外部へ圧送するポンプ手段と、上記便器本体の排出口を開閉自在に覆うフラップ弁と、上記フラップ弁より上流の上記便器本体内に給水する便器用給水手段と、上記フラップ弁より下流の上記貯溜槽内に給水する粉砕部用給水手段と、制御部と、を有し、上記制御部は、上記便器本体の使用後に上記フラップ弁を閉じた状態で上記粉砕部用給水手段から上記貯溜槽内に給水して封水を構築した状態で待機させる一方、着座検知用センサを備え、該着座検知用センサの信号に基いて、上記制御部は、上記フラップ弁を閉じた状態で上記便器用給水手段から給水して上記便器本体内に溜水することを特徴とする。
【0006】
このように構成された本発明の圧送式トイレ装置においては、圧送機内に封水を確実に構築できると共に、使用時に便器本体内に溜水を行うことができる。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、便器本体の排出口から排出される汚水に含まれる固形物を粉砕して圧送する圧送式トイレ装置であって、上記便器本体の排出口に連通し便器本体の排出口から排出された汚水及びこの汚水に含まれる固形物を貯溜する貯留槽と、この貯留槽内に設けられ、上記固形物を粉砕する粉砕手段を備えた粉砕部と、この粉砕手段により粉砕された固形物及び汚水を上記貯留槽の外部へ圧送するポンプ手段と、上記便器本体の排出口を開閉自在に覆うフラップ弁と、上記フラップ弁より上流の上記便器本体内に給水する便器用給水手段と、上記フラップ弁より下流の上記貯溜槽内に給水する粉砕部用給水手段と、上記便器本体の使用後に上記便器用給水手段から上記便器本体に給水して上記便器本体を洗浄させる洗浄スイッチと、制御部と、を有し、上記制御部は、上記便器本体の使用後に上記フラップ弁を閉じた状態で上記粉砕部用給水手段から上記貯溜槽内に給水して封水を構築した状態で待機させる一方、給水指令スイッチを備え、該給水指令スイッチの信号に基いて、上記制御部は、上記フラップ弁を閉じた状態で上記便器用給水手段から給水して上記便器本体内に溜水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圧送式トイレ装置によれば、圧送機内に封水を確実に構築できると共に、使用時に便器本体内に溜水を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の圧送式トイレ装置の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置を示す概略構成図であり、図2は、図1に示す本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置のA − A 断面図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置1は、便器本体2と、この便器本体2に給水する給水装置4とを備え、この給水装置4の便器給水路4aを経て便器本体2へ給水される水量等は制御装置6によって制御されるようになっている。
【0011】
例えば、便器本体2の着座検知用センサー(図示せず)等が使用者の着座を検知したり、使用者がリモコン(図示せず)等に設けられた給水指令用の給水スイッチ(図示せず)をオンにすると、制御装置6が、これらの着座検知用センサー(図示せず)の検知情報やリモコンスイッチ(図示せず)等からの指令に基づいて給水装置4に給水指令し、給水装置4から便器本体2内へ所定時間給水が行われ、便器本体2内に所定量の水が溜まるようになっている。さらに、使用者がトイレ使用後、便器本体2を洗浄するための洗浄スイッチ(図示せず)をオンにすると、便器本体2の便器洗浄工程が開始し、給水装置4から便器本体2に洗浄用の給水がなされて、便器本体2が洗浄されるようになっている。
【0012】
また、便器本体2の外部には固形物粉砕圧送装置8が設けられており、この固形物粉砕圧送装置8は、便器本体2の排出口2aに連結された貯留槽10を備えている。この便器本体2の排出口2aにはフラップ弁9が設けられ、このフラップ弁9は、便器洗浄の前までは排出口2aを閉鎖している。さらに、このフラップ弁9は、便器本体2の洗浄が行われて便器本体2内の汚水を貯留槽10に排出する際には、制御装置6からの指令によって、排出口2aを所定時間開放して便器本体2内の汚水を排出した後、閉鎖するようになっている。
さらに、貯留槽10内には、便器本体2の排出口2aから貯留槽10に排出された汚水中の汚物やトイレットペーパ等の固形物11を粉砕する粉砕部12と、この粉砕部12の下部には、貯留槽10内の汚水を外部へ強制的に圧送するポンプ14が設けられている。
また、粉砕部12は、複数の孔16を有するスクリーン18によって形成された粉砕室20を備え、便器本体2の排出口2aから貯留槽10内に排出される汚水は、まず粉砕室20に一旦収容されるようになっている。この粉砕室20内の汚水については、スクリーン18の孔16の大きさよりも大きい固形物11は孔16を通過できずに粉砕室20内に捕捉され、水分やスクリーン18の孔16の大きさよりも小さい固形物は、孔16を通過して粉砕室20から貯留槽10へ流れるようになっている。
さらに、粉砕室20内にはカッター22が設けられており、このカッター22が回転することにより、粉砕室20内に捕捉された固形物11が粉砕されるようになっている。カッター22の回転軸24の下端にはインペラ26が取り付けられており、回転軸24の上端には、回転軸24を正逆転可能に駆動する粉砕圧送用モータ28が取り付けられている。この粉砕圧送用モータ28の駆動は、制御装置6によって可変に制御されるようになっており、カッター22とインペラ26の回転数は、互いに連動して制御されるようになっている。
ここで、本実施形態では、ポンプ14は、インペラ26が正回転した場合のみポンプ14は主体的に圧送機能し、インペラ26が逆回転した場合には、ほとんど圧送機能しないようになっている。
【0013】
また、貯留槽10内には、貯留槽10内の水位を検出する水位センサ30が設けられており、この水位センサ30が検出した水位に基づいて、制御装置6が粉砕圧送用モータ28の駆動の制御を行ったり、給水装置4の便器給水路4aや後述する追加給水手段である粉砕部給水路4bの開閉や切替えの制御を行ったり、フラップ弁9の駆動の制御を行ったりするようになっている。
さらに、ポンプ吐出口14bには圧送路32が接続され、貯留槽10内から圧送された汚水がこの圧送路32内を通過するようになっている。また、圧送路32には、圧送抑制手段として電動ボール弁34が設けられている。この電動ボール弁34は、水位センサ30の水位情報に基づく制御装置6からの指令に応じて開閉し、特に、粉砕時にポンプ14からの圧送される汚水量を抑制して貯留槽10内の水位低下を抑制するようになっている。
また、上述した給水装置4については、粉砕部12に追加給水する追加給水手段である粉砕部給水路4bが設けられている、この給水装置4及び粉砕部給水路4bは、水位センサ30の水位情報に基づく制御装置6からの指令により、固形物の粉砕時に粉砕部12の水位がカッター22の上端の水位(カッター上端水位)よりも常に高くなるように粉砕部12に追加給水するようになっている。この粉砕部給水路4bにより、フラップ弁9を開くことなく追加給水可能になるため、追加給水して水位を前記カッター上端よりも高く、さらには便器排出口2a下端以上に高くする際、便器本体2側への汚水逆流をなくし、フラップ弁9が汚物などの固形物11を噛み込む危険性を低減できる。また、動作シーケンスの全体を通じて、フラップ弁9の開閉動作を減らせるため、効率的で、使用者に違和感を与えない。
【0014】
本実施形態の圧送式トイレ装置1では、上述した給水装置4に粉砕部給水路4bを設ける代わりに、給水装置4とは別体となる追加給水装置(図示せず)を独立に設け、便器本体2の使用中でも追加給水装置(図示せず)から粉砕部12に追加給水できるようにしてもよい。また、粉砕部給水路4bの粉砕部12への給水口(図示せず)については、その形状や配置を工夫することにより、粉砕部給水路4bの給水口(図示せず) から貯留槽10内へ噴霧洗浄ができるようにしてもよい。
【0015】
さらに、本実施形態による圧送式トイレ装置1は粉砕完了検知装置36を備え、この粉砕完了検知装置36により、粉砕部12のカッター22による固形物11の粉砕が完了したことを検知するようになっている。具体的には、この粉砕完了検知装置36が、粉砕圧送用モータ28あるいはカッター22のトルクや回転抵抗等を検出し、これらの検出した値の程度によって粉砕状況を判断して、状況に応じて制御装置6により粉砕圧送用モータ28を制御したり、粉砕部給水路4bからの粉砕部12への追加給水を制御するようになっている。
【0016】
つぎに、図3から図6を参照して本実施形態の圧送式トイレ装置1の制御装置6により実行される制御内容を説明する。
図3のチャートA〜Hは、本実施形態による圧送式トイレ装置1におけるシーケンスの一例を示す。
チャートAは、使用者の便器着座を検知したかどうかのオンオフ動作、または使用者のリモコン操作等によるリモコンスイッチのオンオフ動作を示し、チャートBは、使用者による洗浄スイッチのオンオフ動作を示している。
また、チャートCは、粉砕圧送用モータ28の回転動作を示し、チャートDは、貯留槽10(または粉砕室20)内の水位を示し、チャートEは、フラップ弁9の開閉動作を示し、チャートFは、給水装置4の便器給水路4aから便器本体2への便器給水の動作を示している。
さらに、チャートGは、給水装置4の粉砕部給水路4bから貯留槽10(粉砕部12)への貯留槽給水の動作を示し、チャートHは、電動ボール弁34の開閉動作を示している。また、チャートA〜Hにおいて、横軸を時間「t」で示し、この時間tに添えられている数字は工程の順序を示しており、時系列順に値が大きくなっている。
【0017】
図3に示すように、t1で着座検知用センサー(図示せず) 等が使用者の着座を検知するか、使用者がリモコン操作等によるリモコンスイッチをオンし(チャートA参照)、同時に給水装置4から便器本体2への給水が開始され、便器本体2の溜水が行われる(チャートF参照)。この時、貯留槽10内の水位はほぼ中間水位であり(チャートD参照)、フラップ弁9は閉じており(チャートE参照)、電動ボール弁34は開いている(チャートF参照)。
つぎに、t2で着座の検知が終了するか、リモコンスイッチがオフになり(チャートA参照)、t3で給水装置4から便器本体2への給水が停止する(チャートF参照)。
使用者がトイレ使用後、t4で便器本体2を洗浄するための洗浄スイッチがオンされると(チャートB参照)、これと同時に便器本体2の洗浄工程が開始し、給水装置4から便器本体2に洗浄用の給水がなされ、便器本体2内が洗浄される(チャートF参照)。また、これと同時にt4で粉砕圧送用モータ28が作動し、例えば、約2500rpm以上の回転数で正回転する(チャートC参照)。
【0018】
つぎに、t5で洗浄スイッチがオフになり、t6で粉砕圧送用モータ28が停止する(チャートB及びC参照)。t4からt6までの間は、電動ボール弁34が開いている状態でポンプ14が作動しているため、貯留槽10内の水は圧送路32に圧送されて、貯留槽10内の水位は低下する(チャートD参照)。
また、t7でフラップ弁9が開き、便器本体2内の汚水が便器本体2の排出口2aから貯留槽10内の粉砕部12に排出される(チャートE参照)。t8で給水装置4から便器本体2への給水が停止し、t9でフラップ弁が閉じる(チャートE及びF参照)。
さらに、t10で給水装置4の粉砕部給水路4bから貯留槽10への追加給水が開始されると同時に電動ボール弁34が閉じる(チャートG及びH参照)。t11で粉砕圧送用モータ28が再び作動し、約2500rpm以上の回転数で正回転すると同時に、粉砕部給水路4bから貯留槽10へ追加給水が停止する(チャートC及びG参照)。t7からt11までの間は、貯留槽10内の水位が上昇し、t11で最高位置に達する(チャートD参照)。
【0019】
つぎに、t12で電動ボール弁34が再び開き(チャート12参照)、t13で粉砕圧送用モータ28が、約1500〜1700rpmの回転数に減速し、比較的低速で正回転する(チャートC参照)。また、t14で粉砕圧送用モータ28が、再び約2500rpm以上の回転数に加速し、比較的高速で正回転し、同時に給水装置4から便器本体2への給水が開始され、便器本体2の溜水が行われる(チャートC及びF参照)。さらに、t15で粉砕圧送用モータ28が停止する(チャートC参照)。
上述したt11からt15までの粉砕圧送用モータ28の回転に関する制御モード(以下「回転制御モードI」と呼び、詳細は後述する)により、t11からt13の間では、ポンプ14が約2500rpm以上の比較的高い回転数で回転し、貯留槽10内の汚水が圧送されて、貯留槽10内の水位は最高位置からほぼ中位置まで低下する(チャートD参照)。これと同時に、粉砕部12のカッター22は、水没した状態で約2500rpm以上の比較的高い回転数で回転して粉砕室20内の固形物11のほとんどを粉砕する。
また、t13からt14の間では、ポンプ14のインペラ26が約1500〜1700rpmの比較的低速で正回転し、貯留槽10内の汚水は緩やかに圧送される。これと同時に、貯留槽10内の水位は、ほぼ中位置から緩やかに低下し(チャートD参照)、粉砕部12のカッター22の上下端位置を通過してゆくが、水位がカッター上端水位からカッター22の下端の水位(以下「カッター下端水位」と呼ぶ)まで完全に通過し終わるまでは、カッター22は比較的低い回転数で回転する。
さらに、t14からt15の間では、ポンプ14が再び約2500rpm以上の比較的高い回転数で回転し、貯留槽10内の汚水がさらに圧送されると共に貯留槽10の水位はさらに低下してt15で最低位置となる(チャートD参照)。
【0020】
つぎに、t16でフラップ弁9が再び開くと共に電動ボール弁34が閉じる。t17で給水装置4から便器本体2への給水が停止し、t18でフラップ弁9が閉じる(チャートE及びF参照)。t19で給水装置4の粉砕部給水路4bから貯留槽10への追加給水が再び開始される(チャートG参照)。
つぎに、回転制御モードIで粉砕しきれなかった粉砕室20内の残留固形物を粉砕して貯留槽10から排出するために、t20で粉砕圧送用モータ28が再び作動し、約2500rpm以上の回転数で正回転すると同時に、粉砕部給水路4bから貯留槽10へ追加給水が停止する(チャートC及びG参照)。
t15からt20の間では、貯留槽10内の水位は、t15の最低水位からt11での最高水位とほぼ等しい位置まで上昇する(チャートD参照)。
【0021】
また、t20の後、粉砕圧送用モータ28は、t21で停止し、t22で再び作動して約2500rpm以上の回転数で逆回転し、t23で停止し、以後t24からt31まで粉砕圧送用モータ28は、t20からt23までの作動と同様に、短時間間隔で間欠的に交互に正回転及び逆回転を繰り返す制御モード(以下「回転制御モードII」と呼ぶ)となる(チャートC参照)。このような回転制御モードIIで作動する粉砕圧送用モータ28により、ポンプ14のインペラ26及び粉砕部12のカッター22は、t20からt31までは短時間間隔で間欠的に正回転及び逆回転を交互に繰り返す運転(以下「間欠交互運転」と呼ぶ)が行われる。
つぎに、回転制御モードIIで粉砕しきれなかった粉砕室20内の残留固形物を粉砕して貯留槽10から排出するために、t31で停止している粉砕圧送用モータ28が、t32で再び作動して約2500rpm以上の回転数で正回転する同時に電動ボール弁34が開く。t33で粉砕圧送用モータ28が、約1500〜1700rpmの回転数に減速し、比較的低速で正回転する(チャートC参照)。さらに、t34で粉砕圧送用モータ28が、再び約2500rpm以上の回転数に加速し、比較的高速で正回転し、t35で粉砕圧送用モータ28が停止する(チャートC参照)。すなわち、t32からt35までの粉砕圧送用モータ28は、上述した回転制御モードIと同様な回転制御モード(以下「回転制御モードIII」と呼ぶ)で回転する。これにより、t32以前の回転制御モードI及びIIによる粉砕部12の粉砕工程で粉砕しきれなかった粉砕室20内の残留固形物をt32からt35において回転制御モードIIIのカッター22でさらに粉砕してポンプ14で圧送する。
【0022】
t20からt32の間では、貯留槽10内の水位は、t20からt31までの間欠交互運転によるポンプ14の緩やかな圧送によってt20からt32までは緩やかに低下する。t32からt33までは、ポンプ14のインペラ26が約2500rpm以上の回転数で正回転してポンプ14の本格的な圧送が行われ、貯留槽10内の水位はほぼ中位置まで低下する。
t33からt34までは、ポンプ14のインペラ26が約1500〜1700rpmの比較的低速で正回転してポンプ14の緩やかな圧送が行われ、貯留槽10内の水位は緩やかに低下し、t34からt35までは、t32からt33までと同様に、ポンプ14のインペラ26が約2500rpm以上の回転数で正回転してポンプ14の本格的な圧送が行われ、貯留槽10内の水位は最低位置となる。
【0023】
さらに、t36で給水装置4の粉砕部給水路4bから貯留槽10への追加給水が再び開始され、t37で追加給水が停止し(チャートG参照)、貯留槽10の封水溜めが行われ、次回の一連工程の準備が行われる。
また、t35からt36までは貯留槽10内の水位は変わらず、t36からt37にかけて水位はほぼ中位置まで上昇し、一連の工程が終了する。
【0024】
図4は、図3に示すチャートC及びDにおけるt11からt15の部分に相当する、回転制御モードI時のカッター22及びポンプ14の回転数に関するモードパターン(以下「モードパターン(i)」と呼ぶ)と貯留槽10内の水位変化を示す図である。
以下、図4を参照して、回転制御モードI時のカッター22及びポンプ14の動作と貯留槽10内の水位変化について詳細に説明する。
図4に示すように、t11からt13まではカッター22による粉砕運転が主体的に行われる。貯留槽10の水位は、カッター22の上端の水位よりも高い水位区間(以下「粉砕運転水位区間」と呼ぶ)にあり、t11以上t13未満の時間域(以下「粉砕運転時間域」と呼ぶ)で水位センサ30がカッター上端水位より高い水位を検出した場合には、粉砕室20内ではカッター22が完全に水没した状態で、例えば、約2500rpm以上の粉砕回転数N1で正回転して、固形物11の粉砕運転が主体的に行われて粉砕がほぼ完了する。また、粉砕運転時間域では、ポンプ14はカッター22と共に粉砕回転数N1で回転して圧送し、貯留槽10の水位が下がる。
その後t13で水位センサ30で検出した貯留槽10の水位がカッター上端水位に達して粉砕運転水位区間を外れた場合には、カッター22が減速し、例えば、約1500〜1700rpmの回転数に移行した粉砕回転数N1よりも小さい回転数(以下「移行回転数」と呼ぶ)N2で回転して静粛運転が主体的に行われる。この静粛運転は、t13以上t14未満の時間域(以下「静粛運転時間域」と呼ぶ)で水位センサ30が検出した水位がカッターカッター下端水位以上でカッター上端水位以下の区間(以下「静粛運転水位区間」と呼ぶ)にある間続けられる。また、この静粛運転時間域では、ポンプ14もカッター22と共に移行回転数N2で回転し、貯留槽10の水位も緩やかに下がる。
その後t14で水位センサ30で検出した貯留槽10の水位がカッター下端水位を下まわって静粛運転水位区間から外れた場合には、ポンプ14のインペラ26が再び加速して、圧送回転数N3で回転し、ポンプ14の圧送運転が主体的に行われ、貯留槽10内の汚水が圧送路32へ圧送される。この圧送運転は、t14以上t15未満の時間域(以下「圧送運転時間域」と呼ぶ)で水位センサ30が検出した水位がカッター下端水位未満(以下「圧送運転水位区間」と呼ぶ)にある間続けられ、t15で水位センサ30が、予め設定された貯留槽10の最低水位を検出した場合には、ポンプ14が停止し、貯留槽10からの排水が完了する。
【0025】
上述した本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置1によれば、水位センサ30がカッター上端水位よりも高い水位を検出している場合には、粉砕圧送用モータ28の回転制御モードIにより、カッター22が完全に水没した状態のまま高速で回転して、固形物11の粉砕運転が主体的に行われる。この結果、固形物11と水はよく混ざり合って流動性が確保され、未粉砕の固形物11は浮力によって、粉砕面が更新されて粉砕されやすい状態となり、固形物11の粉砕を効果的に行うことができる。また、カッター22の回転による遠心力で跳ね飛ばされた粉砕物は、回転するカッター22の近傍に形成される渦流の水壁に衝突して吸収されるため、貯留槽10内における粉砕時の固形物の飛び散りを防ぐことができる。
また、水位センサ30がカッター下端水位からカッター上端水位までの水位を検出している場合には、粉砕圧送用モータ28の回転制御モードIにより、カッター22が低速で回転するため、カッター22周囲の水はねや飛び散りを抑制することができる。
さらに、水位センサ30がカッター下端水位よりも低い水位を検出した場合には、粉砕圧送用モータ28の回転制御モードIにより、ポンプ14のインペラ26が高速で回転して、カッター22による水はねなしに圧送運転が主体的に行われるため、貯留槽10内における汚水を飛び散りなく効果的に排水することができる。
また、本実施形態の圧送式トイレ装置1によれば、粉砕部給水路4bが設けられているため、粉砕運転時に粉砕室20内の水位がカッター上端水位よりも低くなっても、粉砕部給水路4bから粉砕部12に追加給水が行われ、粉砕時の粉砕室20内の水位がカッター上端水位よりも高くなる。この結果、常にカッター22を水没させた状態で固形物11の粉砕を行うことができる。
さらに、本実施形態の圧送式トイレ装置1によれば、電動ボール弁34等の圧送抑制手段が、粉砕部12における粉砕が完了するまで、ポンプ14から圧送される汚水量を抑制して貯留槽10内の水位低下を抑制するため、粉砕時の粉砕室20内の水位を十分に確保することができる。
【0026】
また、上述した本実施形態の圧送式トイレ装置1によれば、粉砕圧送用モータ28の回転制御モードIの後、貯留槽10に追加給水がなされて最高水位になると、回転制御モードIIにより、カッター22及びポンプ14が短時間間隔で間欠的に正回転及び逆回転を交互に繰り返し、間欠交互運転が行われる。この結果、間欠交互運転によって、粉砕室20内の水と固形物の供回りを防ぐことができ、固形物に衝突力やせん断力を有効に作用させ、粉砕効率を向上させることができる。また、カッター22及びポンプ14は、起動後、貯留槽10内の水の旋回が十分発達しないうちに短時間で停止するため、水の運動エネルギーが低く、ポンプ14からの排水はきわめて起こりにくく、水位を著しい低下させず、粉砕効率を向上させることができる。
さらに、本実施形態の圧送式トイレ装置1によれば、粉砕圧送用モータ28の回転制御モードIIの後の回転制御モードIIIにより、回転制御モードI及びIIによる粉砕部12の粉砕工程で粉砕しきれなかった粉砕室20内の残留固形物を確実に粉砕して排出することができる。
また、本実施形態の圧送式トイレ装置1によれば、粉砕完了検知装置36が、粉砕部12のカッター22による固形物11の粉砕が完了したことを検知でき、固形物の量や質等の条件によって粉砕に要する時間が異なるケースでも、粉砕室20内の水位を粉砕に適正な水位にしたり、粉砕圧送用モータ28を適正に制御することができる。
【0027】
上述した本実施形態による圧送式トイレ装置1では、粉砕圧送用モータ28の回転制御モードについては、一例として、図3に示す3種類の回転制御モードI,II,IIIを組み合わせたものについて説明したが、各モードのパターンについては、上述したものに限定されず、粉砕時の水位がカッタ上端水位よりも高い水位で粉砕が完了して圧送が行われるようなパターンであれば、あらゆるパターンに設定することができる。
以下、特に、上述したモードパターン(i)以外のモードパターンとして、回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能なモードパターンの代表的な例をいくつか説明する。
【0028】
つぎに、図5は、本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置の回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能な第1変形例のモードパターン(以下「モードパターン(ii)」と呼ぶ)を示す図4と同様な図である。
図5に示すように、モードパターン(ii)では、t11からt13(粉砕運転時間域)における粉砕回転数N1がt14からt15(圧送運転時間域)における圧送回転数N3よりも大きいという特徴があり、この特徴以外は、図4で説明したモードパターン(i)の特徴と同様である。
本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置の回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能な第1変形例のモードパターン(モードパターン(ii))によれば、粉砕運転時間域でカッター22がモードパターン(i)に比べて高速回転するため、より短時間で粉砕を行うことができる。また、水位がカッター上端水位からカッター下端水位まで低下する間は、カッター22が低速で回転して静粛運転がおこなわれるため、貯留槽10内における水はねや飛び散りを防ぐことができる。
【0029】
つぎに、図6は、本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置の回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能な第2変形例のモードパターン(以下「モードパターン(iii)」と呼ぶ)を示す図4及び図5と同様な図である。
図6に示すように、モードパターン(iii)では、t11でカッター22が粉砕回転数N1で旋回運転し、t13で水位センサ30がカッター上端水位を検出した場合には、一旦カッター22が停止する。t11以上t13未満の時間域(以下「旋回運転時間域」と呼ぶ)では、固形物の粉砕運転が主体的に行われる。
t13の後、水位センサ30がカッター下端水位を検出するt14にかけて、カッター22は、粉砕回転数N1を最大回転数として短時間Δt間隔で旋回して停止する運転を間欠的に繰り返し、カッター22の旋回を抑制した運転(以下「旋回抑制運転」と呼ぶ)が行われる。
旋回抑制運転が行われるt13以上t14未満の時間域(以下「旋回抑制運転時間域」と呼ぶ)では、カッター22は、粉砕回転数N1を最大回転数として旋回するものの、短時間Δt間隔で旋回するため、図4で説明したカッター22の静粛運転と同様に、カッター22が低速回転する連続運転と実質的に同じ運転となる。
その後t14で水位センサ30で検出した貯留槽10の水位がカッター下端水位を下まわって静粛運転水位区間(図6参照)から外れて圧送運転水位区間(図6参照)にある場合には、ポンプ14のインペラ26が粉砕回転数N1よりも小さい圧送回転数N3で回転し、ポンプ14の圧送運転が主体的に行われ、貯留槽10内の汚水が圧送路32へ圧送される。t15で水位センサ30が、予め設定された貯留槽10の最低水位を検出した場合には、ポンプ14が停止し、貯留槽10からの排水が完了する。
【0030】
上述した本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置の回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能な第2変形例のモードパターン(モードパターン(iii))によれば、旋回抑制運転時間域で、カッター22は、粉砕回転数N1を最大回転数として旋回するものの、短時間Δt間隔で旋回する。このため、図4で説明したカッター22の静粛運転と同様に、カッター22が実質的に低速回転する連続運転と同じ運転となり、粉砕時のカッター22周囲の水はねや飛び散りを抑制することができる。
また、旋回抑制運転中、ポンプ14のインペラ26もカッター22と共に作動するものの、粉砕室20内においては、排水に有効な渦ができない時間でカッター22の起動及び停止が繰り返される。この結果、粉砕室20内の水と固形物の供回りを防ぐこともでき、旋回抑制運転時の水の運動エネルギーが低く、ポンプ14からの排水はきわめて起こりにくく、水位を著しく低下させず、粉砕効率を向上させることができる。
【0031】
図7は、本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置の回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能な第3変形例のモードパターン(以下「モードパターン(iv)」と呼ぶ)を示す図4から図6と同様な図である。
図7に示すように、モードパターン(iv)では、t11でカッター22とポンプ14のインペラ26が粉砕回転数−N1で回転、すなわち、粉砕回転数N1で逆回転する。このとき、ポンプ14はインペラ26の正回転時のみ主体的に圧送機能を果たすため、ポンプ14による圧送はほとんど行われず、カッター22による粉砕運転が主体的に行われ、水位は緩やかに下がる。
t13で水位センサ30がカッター上端水位を検出した場合には、一旦カッター22及びインペラ26が停止した後、水位センサ30がカッター下端水位を検出するt14まで、カッター22及びインペラ26が粉砕回転数N1よりも小さい圧送回転数N2で低速正回転して静粛運転が行われ、貯留槽10内の汚水は緩やかに圧送される。
その後t14で水位センサ30で検出した貯留槽10の水位がカッター下端水位を下まわって静粛運転水位区間(図7参照)から外れ、圧送運転水位区間(図7参照)にある場合には、ポンプ14のインペラ26が圧送回転数N2よりも大きい圧送回転数N3で回転し、ポンプ14の圧送運転が主体的に行われ、貯留槽10内の汚水が圧送路32へ圧送される。t15で水位センサ30が、予め設定された貯留槽10の最低水位を検出した場合には、ポンプ14が停止し、貯留槽10からの排水が完了する。
【0032】
上述した本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置の回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能な第3変形例のモードパターン(モードパターン(iv))によれば、t11以上t13未満の粉砕運転時間域(図7参照)で、ポンプ14による圧送はほとんど行われず、水位を著しく低下させず、粉砕効率を向上させることができる。
【0033】
図8は、本発明の第2実施形態による圧送式トイレ装置を示す図2と同様な断面図である。ここで、図8において、図2と同一の部分には同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
図8に示すように、本発明の第2実施形態による圧送式トイレ装置40では、固形物粉砕圧送装置48の貯留槽10内に設けられた粉砕部12のカッター22とポンプ14のインペラ26のそれぞれの回転が、粉砕用モータ28aと圧送用モータ28bのそれぞれの駆動によって独立に制御されるようになっている。これらの粉砕用モータ28aと圧送用モータ28bの駆動は、上述した本発明の第1実施形態から第4実施形態の圧送式トイレ装置と同様に、水位センサ30や粉砕完了検知装置36からの情報に基づいて制御装置6によって可変に制御されるようになっている。
また、本実施形態による圧送式トイレ装置40の一連のシーケンスについても、図3に示す回転制御モードI及び/又はIIIのモードパターン以外は図3に示すシーケンスと同様であるため、同様なシーケンスの部分については説明を省略し、図3に示す回転制御モードI及び/又はIIIのモードパターンに相当する本実施形態のモードパターンについて説明する。
【0034】
図9は、本発明の第2実施形態による圧送式トイレ装置40のカッター22及びポンプ14の回転数に関するモードパターン(以下「モードパターン(v)」と呼ぶ)と貯留槽内の水位変化を示す図である。ここで、図9において、上段のグラフは、カッター回転数と時間との関係を示し、中段のグラフは、ポンプ回転数(インペラ回転数)と時間との関係を示し、下段のグラフは、貯留槽内の水位と時間との関係を示している。
図9に示すように、モードパターン(v)では、t11で粉砕用モータ28a(図8参照)が正回転し、カッター22が粉砕回転数N1で高速回転して固形物11の粉砕が行われる。t13で水位センサ30で検出した貯留槽10の水位がカッター上端水位に達して粉砕運転水位区間を外れた場合には、カッター22が減速し、粉砕回転数N1よりも小さい粉砕回転数N2で回転し、カッター静粛運転が行われる。その後t14で水位センサ30で検出した貯留槽10の水位がカッター下端水位を下まわってカッター静粛運転水位区間から外れた場合には、カッター22は停止する。
一方、ポンプ14については、t11以上t13未満の粉砕運転時間域内のt11'で圧送用モータ28b(図8参照)が、粉砕用モータ28aとは独立に正回転し、インペラ26が圧送回転数N3で回転し、ポンプ14の圧送運転が行われる。その後t15で水位センサ30が、予め設定された貯留槽10の最低水位を検出した場合には、ポンプ14が停止し、貯留槽10からの排水が完了する。
上述したように、本発明の第2実施形態による圧送式トイレ装置40とそのモードパターン(v)によれば、水位センサ30が検出した貯留槽10内の水位に基づいて、カッター22による粉砕運転とポンプ14による圧送運転を独立に制御することができ、さらに、カッター22周囲の水はねや飛び散りを防ぎつつ粉砕及び圧送を効果的によく行うことができる。
なお、上述した本実施形態では、図8に示すように、粉砕部給水路4b及び電動ボール弁34を備えた形態について説明したが、本実施形態の圧送式トイレ装置40によれば、粉砕時にポンプ14を停止させてカッター22のみを駆動させることにより、粉砕部12の水位が下がるのを抑制できるため、これら粉砕部給水路4b及び電動ボール弁34については省略してもよい。
【0035】
図10は、本発明の第2実施形態による圧送式トイレ装置のカッター及びポンプの回転数に関する変形例のモードパターン(以下「モードパターン(vi)」と呼ぶ)と貯留槽内の水位変化を示す図9と同様な図である。
図10に示すように、モードパターン(vi)では、t11からt13まで、粉砕用モータ28a(図8参照)が粉砕回転数N1を最大回転数として正回転と逆回転を短時間間隔で間欠的に繰り返し、粉砕運転が行われる。t13で水位センサ30で検出した貯留槽10の水位がカッター上端水位に達して粉砕運転水位区間を外れた場合には、カッター22が減速し、粉砕回転数N1よりも小さい粉砕回転数N2で回転し、カッター静粛運転が行われる。その後t14で水位センサ30で検出した貯留槽10の水位がカッター下端水位を下まわってカッター静粛運転水位区間から外れた場合には、カッター22は停止する。
一方、ポンプ14については、t11'で圧送用モータ28b(図8参照)が、粉砕用モータ28aとは独立に圧送回転数N3で正回転し、ポンプ14の圧送運転が行われる。その後t15で水位センサ30が、予め設定された貯留槽10の最低水位を検出した場合には、ポンプ14が停止し、貯留槽10からの排水が完了する。
上述したように、本発明の第2実施形態による圧送式トイレ装置40のカッター及びポンプの回転数に関する変形例のモードパターン(vi)によれば、水位センサ30が検出した貯留槽10内の水位に基づいて、カッター22による粉砕運転とポンプ14による圧送運転を独立に制御し、水はねや飛び散りを防ぎつつ粉砕及び圧送を効果的によく行うことができる。さらに、粉砕時には、正回転と逆回転を短時間間隔で間欠的に繰り返す粉砕運転により、粉砕室20内の水と固形物の供回りを防ぎことができ、固形物に衝突力やせん断力を有効に作用させ、粉砕効率を向上させることができる。
【0036】
また、粉砕部12で粉砕された固形物は粉砕部12の孔16を通過してポンプ14にて吸引、圧送排水される。このような粉砕効率の向上により粉砕後の固形物は小さくできるため、孔16の大きさを小さくすることができる。即ち、配管詰まりの危険性を低減できるので、圧送路32をより細くすることも可能となる。孔16の大きさを10〜15mmにすることにより、圧送路32は、内径が15〜20mmのフレキシブル管を好適に利用できる。
【0037】
図11は、本発明の第3の実施形態による圧送式トイレ装置1を示す概略構成図である。また、図12は、本発明の第3の実施形態による圧送式トイレ装置を示す部分平面断面図である。ここで、図11及び図12において、図1と同一の部分には同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
図11及び図12に示すように、粉砕部給水路4bは、貯留槽10内に配置されている。この粉砕部給水路4b内の水は、便器排出口2aと粉砕部12のスクリーン18との間に形成された導水路52内に追加給水されるようになっている。さらに、粉砕部給水路4bの給水口54が、固形物粉砕圧送装置8の上部に配置されて粉砕部12へ差し向けられており、この給水口54から粉砕部12に向けて吐水が行われるようになっている。
【0038】
さらに、本実施形態による圧送式トイレ装置51の給水装置4の上流側には、給水量(瞬間流量及び積算流量)を検出するフローセンサ56が接続されている。フローセンサ56が検出した給水量に基づいて制御装置6が給水装置4の便器給水路4aや粉砕部給水路4bの開閉や切替え、フラップ弁9の駆動を制御するようになっている。すなわち、フローセンサ56の検出信号に基づいて、給水圧力に依らず便器給水量を一定にすることができるようになっている。また、貯溜槽10内の水位を換算することが可能であり、制御装置6により本発明の第一の実施形態と同様の制御を実行できるようになっている。
また、制御装置6が、フローセンサ56で検出した給水量と、水位センサ30で検出した水位の情報を相互に補完して制御することにより、各動作部をさらに安全に、精度よく制御できるようになっている。フローセンサ56としては、電磁式、羽根車式、浮き子式、カルマン式や超音波式などが利用される。
さらに、本実施形態による圧送式トイレ装置51は、貯留槽10内の異常水位を検知する電極スイッチ58を備える。電極スイッチ58は、万一、ポンプ14、または給水装置4、またはフローセンサ56、または水位センサ30が異常となり、貯溜槽10内の水位が上昇を続けた場合、所定の異常水位に到達すると検知するように設定されている。これらの異常を検知すると、圧送式トイレ装置1の機能を安全に停止し、異常を利用者に報知することができるようになっている。
【0039】
つぎに、図13〜図15を参照して本実施形態の圧送式トイレ装置の制御装置により実行される制御内容について説明する。
図13のチャートA〜Iは、本実施形態による圧送式トイレ装置51におけるシーケンスの一例を示す。なお、図13の各シーケンスのうち、給水に関するシーケンス以外は、図3に示す第1実施形態の圧送式トイレ装置1のシーケンスと共通しているため、この共通する部分のシーケンスについての説明を省略し、給水に関するシーケンスのみについて説明する。
図14は、本実施形態による圧送式トイレ装置における初期診断モードのシーケンスの一例を示す概略図である。
図13に示すシーケンスが開始する前段階として、図14に示すように、t0で圧送式トイレ装置1の電源を投入すると、各機能部の初期診断が開始される。この初期診断では、まずフラップ弁9が開閉し(チャートE参照)、次ぎにポンプ14が駆動し(チャートC参照)、次いで給水装置4の便器給水路4aが開放される。
【0040】
つぎに、上述した初期診断モードにおける、フローセンサ56及び水位センサ30の診断の流れについて説明する。
制御装置6は、水位センサ30の初期化動作を行なった後、給水装置4の粉砕部給水路4bを通水状態とし、フローセンサ56の検出信号に基づいて制御装置6にて積算流量(I)が所定値に到達した時点(t04)で給水を停止するように制御する(チャートI参照)。
t04にて、制御装置6が、貯溜槽内水位(D)と基準値以上であるかを診断する(チャートD参照)。
また、t03〜t04にて、制御装置6が、フローセンサ56の検出信号に基づいて瞬間流量(J)が基準値以上であるかを診断する(チャートJ参照)。
【0041】
上述した初期診断モードにおいては、いずれかの診断結果がNGであった場合、制御装置6は、装置異常として、圧送式トイレ装置51を安全に停止し、異常を報知する。
【0042】
また、図13に示すように、t1で着座を検知するか、リモコンスイッチがオンになると(チャートA参照)、給水装置4から便器本体2への給水を開始し、フローセンサ56の検出信号に基づいた積算流量(I)が所定量に達すると便器給水(F)を停止する(チャートF参照)。
【0043】
つぎに、使用者がトイレ使用後、t4で便器本体2を洗浄するための洗浄スイッチがオンされると(チャートB参照)、これと同時に便器本体2の洗浄工程が開始し、給水装置4から便器本体2に洗浄用の給水がなされ、便器本体2内が洗浄される(チャートF参照)。
つぎに、t7でフラップ弁9が開き、便器本体2内の汚水が便器本体2の排出口2aから貯留槽10内の粉砕部12に排出され(チャートE参照)、水位センサ30が貯留槽内水位(D)の上昇を検出する(チャートD参照)。
【0044】
つぎに、フローセンサ56の検出信号に基づいた積算流量(I)が所定量に達すると、t8で給水装置4から便器本体2への給水を停止して給水装置4の水路を切り替え、t10で粉砕部12への追加給水を開始する。さらに、t11で、水位センサ30が検出する貯留槽内水位(D)が所定値に達すると、給水装置4から粉砕部12への給水を停止し、第1実施形態と同様に回転制御モードIを開始する。以降、回転制御モードIIまでの給水に関するシーケンスは、第1実施形態と同様に、フローセンサ56と水位センサ30の検出信号に基づいて制御装置6により制御される。
なお、この際、上述した貯留槽内水位(D)の所定値については、使用状況に応じて可変に設定しても良い。たとえば、洗浄モードとして、図1に示す通常の水位60aよりも高い水位60bに設定しておけば、水位60a付近に付着した汚れを洗浄することができる。また、洗浄モードは、定期的にまたは所定使用回数毎に行うように設定してもよいし、或いは任意に行うように設定してもよい。
【0045】
図15は、図13に示すチャートD,E及びIにおけるt4からt11の部分に相当する、給水シーケンスにおける貯留槽10内の水位変化、給水装置4の積算流量(給水量)、及びフラップ弁9の開閉状況を示す説明図である。
図15に示すように、t4〜t8で便器給水が行われている間、フローセンサ56が給水装置4の積算流量(給水量)を検出し、この検出した信号に基づいて水位センサ30が貯留槽10の所定の水位を検出する(t11)まで、粉砕部給水路4bによって導水路52内に追加給水が行われる。
【0046】
上述した本実施形態の圧送式トイレ装置51によれば、粉砕部給水路4bによって導水路52内に追加給水が行われるので、そこに残留し易い固形物11を粉砕部12の方向に押し流して搬送をアシストする効果を有する。したがって、汚物などの固形物11は、貯溜槽10内の水位が上述した第1運転モードの所定の運転開始水位(カッター22の上端以上)に到達した時点で、導水路52に滞留することなく粉砕部12内に搬送されるので、確実に粉砕されてポンプ14にて排出される。
また、本実施形態の圧送式トイレ装置51によれば、水位センサ30に加えてフローセンサ56を備えることで、制御装置6にて、フローセンサ56と水位センサ30のそれぞれの異常を診断することができるので、より安全牲を向上させることができる。
さらに、本実施形態の圧送式トイレ装置51によれば、フローセンサ56と水位センサ30双方の検出信号に基づいて適宜制御を行うことができるため、一連のシーケンスを効率的に運用することができる。
また、本実施形態の圧送式トイレ装置51によれば、便器への給水はフローセンサ56で検出した給水装置4の給水量(積算流量)に基づいて制御されるため所定量の給水が高精度に行われ、さらに、水位センサ30が所定の水位を検出する(t11)まで追加給水が行われるように制御されるので、無駄水を無くし、一連のシーケンスを効率的に運用できる。
【0047】
また、本実施形態の圧送式トイレ装置51では、粉砕部給水路4bの給水口54が粉砕部12へ差し向けられて配置された形態について説明したが、このような形態に限定されず、他の形態についても適用可能である。他の形態の一例として、粉砕部給水路4bの給水口54をフラップ弁9の裏面(貯留槽側の表面)に差し向けるようにして設けても良い。これにより、固形物11の搬送アシスト効果に加えて、汚れが堆積し易いフラップ弁9の裏面の洗浄効果を有するため、さらに貯溜槽内の衛生性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置におけるシーケンスの一例を示す概略図である。
【図4】図3に示すチャートC及びDにおける回転制御モードIの部分に相当する、カッター及びポンプの回転数のモードパターン(i)と貯留槽内の水位変化を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置の回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能な第1変形例のモードパターン(モードパターン(ii))と貯留槽内の水位変化を示す図4と同様な図である。
【図6】本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置の回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能な第2変形例のモードパターン(モードパターン(iii))と貯留槽内の水位変化を示す図4及び図5と同様な図である。
【図7】本発明の第1実施形態による圧送式トイレ装置の回転制御モードI及び/又はIIIに適用可能な第3変形例のモードパターン(モードパターン(iv))と貯留槽内の水位変化を示す図4から図6と同様な図である。
【図8】本発明の第2実施形態による圧送式トイレ装置を示す図2と同様な断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態による圧送式トイレ装置のカッター及びポンプの回転数のモードパターン(v)と貯留槽内の水位変化を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態による圧送式トイレ装置のカッター及びポンプの回転数に関する変形例のモードパターン(モードパターン(vi))と貯留槽内の水位変化を示す図9と同様な図である。
【図11】本発明の第3実施形態による圧送式トイレ装置を示す概略構成図である。
【図12】本発明の第3実施形態による圧送式トイレ装置の部分平面断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態の圧送式トイレ装置におけるシーケンスの一例を示す概略図である。
【図14】本発明の第3実施形態の圧送式トイレ装置における初期診断モードのシーケンスの一例を示す概略図である。
【図15】便器給水がフローセンサ検出信号に基づいて制御された場合の、給水シーケンスに対する貯留槽内の水位変化、給水装置の積算流量(給水量)、及びフラップ弁の開閉状況を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1,40,51 圧送式トイレ装置
2 便器本体
2a 便器排出口
4 給水装置
4a 便器給水路
4b 粉砕部給水路
6 制御装置
8,48 固形物粉砕圧送装置
9 フラップ弁
10 貯留槽
11 固形物
12 粉砕部
14 ポンプ
14a ポンプ吸入口
14b ポンプ吐出口
16 孔
18 スクリーン
20 粉砕室
22 カッター
24 回転軸
26 インペラ
28 粉砕圧送用モータ
28a 粉砕用モータ
28b 圧送用モータ
30 水位センサ
32 圧送路
34 電動ボール弁
36 粉砕完了検知装置
52 導水路
54 給水口
56 フローセンサ
58 電極スイッチ
60,60a,60b 水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の排出口から排出される汚水に含まれる固形物を粉砕して圧送する圧送式トイレ装置であって、
上記便器本体の排出口に連通し便器本体の排出口から排出された汚水及びこの汚水に含まれる固形物を貯溜する貯留槽と、
この貯留槽内に設けられ、上記固形物を粉砕する粉砕手段を備えた粉砕部と、
この粉砕手段により粉砕された固形物及び汚水を上記貯留槽の外部へ圧送するポンプ手段と、
上記便器本体の排出口を開閉自在に覆うフラップ弁と、
上記フラップ弁より上流の上記便器本体内に給水する便器用給水手段と、
上記フラップ弁より下流の上記貯溜槽内に給水する粉砕部用給水手段と、
制御部と、を有し、
上記制御部は、上記便器本体の使用後に上記フラップ弁を閉じた状態で上記粉砕部用給水手段から上記貯溜槽内に給水して封水を構築した状態で待機させる一方、
着座検知用センサを備え、該着座検知用センサの信号に基いて、上記制御部は、上記フラップ弁を閉じた状態で上記便器用給水手段から給水して上記便器本体内に溜水することを特徴とする圧送式トイレ装置。
【請求項2】
便器本体の排出口から排出される汚水に含まれる固形物を粉砕して圧送する圧送式トイレ装置であって、
上記便器本体の排出口に連通し便器本体の排出口から排出された汚水及びこの汚水に含まれる固形物を貯溜する貯留槽と、
この貯留槽内に設けられ、上記固形物を粉砕する粉砕手段を備えた粉砕部と、
この粉砕手段により粉砕された固形物及び汚水を上記貯留槽の外部へ圧送するポンプ手段と、
上記便器本体の排出口を開閉自在に覆うフラップ弁と、
上記フラップ弁より上流の上記便器本体内に給水する便器用給水手段と、
上記フラップ弁より下流の上記貯溜槽内に給水する粉砕部用給水手段と、
上記便器本体の使用後に上記便器用給水手段から上記便器本体に給水して上記便器本体を洗浄させる洗浄スイッチと、
制御部と、を有し、
上記制御部は、上記便器本体の使用後に上記フラップ弁を閉じた状態で上記粉砕部用給水手段から上記貯溜槽内に給水して封水を構築した状態で待機させる一方、
給水指令スイッチを備え、該給水指令スイッチの信号に基いて、上記制御部は、上記フラップ弁を閉じた状態で上記便器用給水手段から給水して上記便器本体内に溜水することを特徴とする圧送式トイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−108673(P2009−108673A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298881(P2008−298881)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【分割の表示】特願2005−162830(P2005−162830)の分割
【原出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】