説明

圧電振動デバイスの製造装置

【課題】圧電振動デバイスの製造において圧電振動デバイスの気密検査にかかる時間を短縮させる。
【解決手段】水晶振動子1の製造装置7では、真空雰囲気下でベース3と蓋4とを加熱接合して真空状態の内部空間12を形成し、内部空間12に水晶振動片2を気密封止する気密封止室73と、真空雰囲気下で水晶振動子1の内部空間12の気密状態を検査する検査室75と、が設けられ、水晶振動子1を気密封止室73、検査室75の順に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動デバイスとして、例えば、発振器や水晶振動子などが挙げられる。この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が略直方体のパッケージで構成される。このパッケージはセラミックのベースと金属のキャップとから構成され、パッケージ内部には気密封止された内部空間が形成されている。また、このパッケージ内部では、水晶振動片などの電子部品素子が、ベース上の電極パッドに導電性接合材を介して接合されている。
【0003】
この圧電振動デバイスを製造する製造工程には、水晶振動片をベースと蓋とにより気密封止する封止装置を用いた封止工程と、気密状態の検査を行う気密検査装置を用いた気密検査工程とが含まれる。このうち、気密検査工程は、エアーを用いた粗検査であるグロスリーク検査工程と、ヘリウムガスを用いた微検査であるヘリウムリーク検査工程とを有する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の技術は、ターンテーブルを有し、気密検査の対象ワークとなる電子デバイス(水晶振動子やICチップなど)を環状に搬送させながら、グロスリーク検査とヘリウムリーク検査とを行う。
【特許文献1】特開2007−278914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の気密検査工程は、上記の通り、2つの検査工程(グロスリーク検査工程とヘリウムリーク検査工程)を行うので、気密検査工程を行うために多くの製造時間を確保する必要がある。また、気密検査装置では、気密検査を行うために気密検査装置内を減圧する必要があり、この減圧を行う時間が多大にかかる。特に、ヘリウムリーク検査工程では、ヘリウムをパッケージ内に注入するための時間(例えば約1時間)を要する。
【0006】
このように、特許文献1の技術を含む従来技術では、気密検査工程を行うために多くの製造時間が必要になる。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、圧電振動デバイスの製造において圧電振動デバイスの気密検査にかかる時間を短縮させる電子デバイスの製造装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスの製造装置は、複数の封止部材を接合することにより内部空間が形成され、この内部空間に圧電振動素子を含む1つ以上の電子部品素子が気密封止され、外部に電気的に接続する外部端子として、圧電振動素子に接続される圧電振動素子用外部端子が形成された圧電振動デバイスの製造装置において、真空雰囲気下で複数の封止部材を加熱接合して真空状態の内部空間を形成し、内部空間に電子部品素子を気密封止する気密封止室と、圧電振動デバイスの内部空間の気密状態を検査する検査室と、が設けられ、圧電振動デバイスを、前記気密封止室、前記検査室の順に搬送することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、圧電振動デバイスの気密封止を行うために用いる真空状態(減圧状態)の環境を、圧電振動デバイスの検査にも用いることができるので、気密検査を行うためだけに圧電振動デバイスの内部空間を減圧する時間を必要とせず、気密検査にかかる時間を短縮させることが可能となる。さらに、本発明によれば、従来の技術のように2つの検査工程(グロスリーク検査工程とヘリウムリーク検査工程)を行う必要がなく、この点においても気密検査にかかる時間を短縮させることが可能となる。また、本発明によれば、従来の技術の封止装置を用いた圧電振動デバイスの気密封止工程と、気密検査装置を用いた圧電振動デバイスの気密検査工程を、1つの製造装置によって実現することができ、その結果、圧電振動デバイスの製造時間の短縮を図るのに好適である。
【0010】
また、本発明によれば、前記気密封止室で内部空間を気密状態にした圧電振動デバイスに対して、一度も外部に搬送せずに、前記気密封止室から前記検査室に圧電振動デバイスを搬送し、前記検査室において、圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査を行うので、そのまま真空雰囲気下で気密検査を行うことが可能となる。その結果、内部空間の正確な気密検査を行うことが可能となる。これに対して、従来の技術のように、気密封止と気密検査とを別々にすると、一度、大気中に圧電振動デバイスを搬出することになるので、内部空間の気密漏れのある不良品の圧電振動デバイスでは、内部空間の状態が変化し、正常な気密検査を行うことができない。
【0011】
前記構成において、真空雰囲気下で封止部材を予備加熱する予備加熱室が設けられ、圧電振動デバイスを、前記予備加熱室、前記気密封止室、および前記検査室の順に搬送してもよい。
【0012】
なお、この構成において、複数の封止部材を局所加熱により加熱溶融接合する場合、加熱接合する前記気密封止室の前室に前記予備加熱室が設けられているので、封止部材の熱歪や熱応力の悪影響を抑制することが可能となる。また、複数の封止部材を雰囲気加熱により加熱溶融接合する場合、封止部材をより均一に所定の温度まで上昇させる必要がある。本構成によれば、前記気密封止室の前室に前記予備加熱室が設けられているので、前記気密封止室において封止部材をより均一に所定の温度まで上昇させる時間を少なくすることが可能となる。その結果、前記予備加熱室が設けられず、気密封止室のみで加熱する製造装置に比べて、封止工程のタクト低減により一層好ましいものとなる。
【0013】
前記構成において、前記検査室では、圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査の他に、圧電振動素子用外部端子を使った圧電振動デバイスの電気的特性の検査を行ってもよい。
【0014】
この場合、圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査と、DLDなどの電気的特性の検査を同時に行うことが可能となる。また、圧電振動デバイスの電気的特性の検査を行うために、新たに室や検査部材を用意しなくてもよく、当該製造装置の簡易化を図ることが可能となる。その結果、当該製造装置の他に、電気的特性の検査のための製造装置を新たに設ける必要がなく、製造コストおよび製造時間をともに抑えることが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記検査室では、圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査の他に、圧電振動素子用外部端子を使った圧電振動デバイスの温度特性の検査を行ってもよい。
【0016】
この場合、圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査と、温度特性の検査を同時に行うことが可能となる。そのため、圧電振動デバイスの温度特性の検査を行うために、新たに室や検査部材を用意しなくてもよく、当該製造装置の簡易化を図ることができる。その結果、当該製造装置の他に、温度特性の検査のための製造装置を新たに設ける必要がなく、製造コストおよび製造時間をともに抑えることが可能となる。特に、前記気密封止室での複数の封止部材の加熱接合に雰囲気加熱を用いた場合、前記気密封止室では室内が高温状態になり、それにともなって圧電振動デバイスも高温状態となっているので、この圧電振動デバイスの高温状態を積極的に利用して、高温下における圧電振動デバイスの温度特性の検査を行うことができ、圧電振動デバイスの温度特性の検査のために、圧電振動デバイスを高温にする時間を省くことが可能となる。
【0017】
前記構成において、前記検査室には、圧電振動デバイスの温度を、予め設定した基準温度に調整する温度調整部が設けられてもよい。
【0018】
この場合、複数の封止部材の接合によって高温になった圧電振動デバイスの温度を下げる(例えば、常温)のに好ましい。また、温度特性の検査の時の圧電振動デバイスの温度を制御するのに最適である。
【0019】
前記構成において、前記検査室での圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査は、加圧による圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査を含んでもよい。
【0020】
この場合、加圧した状態での圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査を行うので、気密封止漏れがあった場合、CI値の変動量が、非加圧下に比べて大きくなる。そのため、さらに精度の良い気密検査を行うことが可能となる。
【0021】
前記構成において、圧電振動素子は、厚みすべり振動を行う素子であってもよい。ここでいう厚みすべり振動を行う素子として、ATカット水晶振動片や、BTカット水晶振動片、SCカット水晶振動片などが挙げられる。一般的に屈曲振動を利用した圧電振動素子では、真空雰囲気と大気雰囲気におけるCI値差が100kΩ以上あるため、基準温度(常温)でのCI値測定にて気密良否判定が行いやすいが、厚みすべり振動を行う素子では、このCI値差は数Ω程度しかなく、基準温度(常温)でのCI値測定だけでは気密良否判定は行えないため、本発明の電子デバイスの製造装置を利用して正確な気密良否判定を行う。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、気密検査にかかる時間を短縮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本実施の形態1にかかる内部空間を公開した水晶振動子の概略側面図である。
【図2】図2は、本実施の形態1にかかる水晶振動子の製造装置の概略構成を示したブロック図である。
【図3】図3は、本実施の形態1にかかる水晶振動子の製造装置で用いるパレットの概略平面図である。
【図4】図4は、本実施の形態1にかかる水晶振動子の製造装置を用いて、CI値を測定した結果を示すデータである。
【図5】図5は、圧力変化に対するCI値の変化を測定した結果を示すデータである。
【図6】図6は、本実施の他の形態にかかる内部空間を公開した発振器の概略側面図である。
【図7】図7は、本実施の他の形態にかかる水晶振動子の製造装置の概略構成を示したブロック図である。
【図8】図8は、本実施の形態2にかかる水晶振動子の製造装置の概略構成を示したブロック図である。
【図9】図9は、本実施の形態3にかかる水晶振動子の製造装置の概略構成を示したブロック図である。
【図10】図10は、本実施の形態4にかかる水晶振動子の製造装置の概略構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、電子デバイスとして圧電振動デバイスである水晶振動子の製造装置について説明する。
【0025】
<実施の形態1>
−水晶振動子1−
水晶振動子1には、図1に示すように、電子部品素子である圧電素子のATカット水晶振動片2(以下、水晶振動片という)と、水晶振動片2を搭載し保持するベース3(本発明でいう封止部材)と、ベース3の一主面31に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋4(本発明でいう封止部材)と、が設けられている。この水晶振動子1では、ベース3と蓋4とが接合部材51により加熱溶融接合されて本体筐体11が構成され、この接合により、気密封止された本体筐体11の内部空間12が形成される。なお、本実施の形態では、接合部材51に、Agろう、Niメッキ、AuとSn等のAuSn合金、ガラス材等が用いられている。
【0026】
水晶振動片2はATカット水晶片の基板からなり、水晶振動片2の基板は、図1に示すように、一枚板の直方体形状からなり、この基板の両主面には一対の励振電極(図示省略)が対向して形成されている。
【0027】
蓋4は、図1に示すように、一枚板のコバール母材(導電性材料)からなり、このコバール母材の両主面に図示しないニッケル層が形成され、蓋4の下面(ニッケル層)の外周にAuSn合金が形成されている。
【0028】
ベース3は、アルミナ等のセラミック材料の基材からなり、図1に示すように、底部32と、ベース3の一主面31の主面外周に沿って底部32から上方に延出した壁部33と、から構成された箱状体に成形されている。
【0029】
ベース3の他主面38には、外部の回路基板(図示省略)などの外部機器に半田などの導電性接合材(図示省略)を用いて電気的に接続する圧電振動素子用外部端子34が形成されている。この圧電振動素子用外部端子34は、水晶振動片2の励振電極に導電性接合材52を介して電気的に接続されている。
【0030】
水晶振動子1では、図1に示すように、内部空間12のベース3の底部32上に、導電性接合材52(導電性樹脂接着剤、金属バンプ、めっきバンプ等)を介して水晶振動片2が接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。
【0031】
そして、水晶振動片2が搭載接合されたベース3が、加熱溶融接合により、接合部材51を介して、蓋4に接合されて、図1に示すように、水晶振動片2を気密封止した水晶振動子1が製造される。ここで製造された水晶振動子1は、圧電振動素子用外部端子34を介して外部の回路基板に半田などの導電性接合材により実装される。なお、水晶振動片2をベース3に接合するために用いる加熱接合には、水晶振動片2が搭載接合されたベース3を含む空間全体を加熱してベース3に蓋4を加熱溶融接合する雰囲気加熱接合や、水晶振動片2が搭載接合されたベース3に蓋4を配し(もしくは、蓋4に、水晶振動片2が搭載接合されたベース3を配し)、ベース3と蓋4との接合箇所を局所的に直接熱してベース3に蓋4を加熱溶融接合する局所加熱接合(例えば、シーム溶接やビーム溶接)などが挙げられる。
【0032】
次に、水晶振動子1を製造する製造装置7について、図面を用いて説明する。
【0033】
−水晶振動子1の製造装置7−
本実施の形態にかかる水晶振動子1の製造装置7は、ベース3と蓋4との雰囲気加熱接合による例を示しており、水晶振動片2をベース3と蓋4とによって気密封止し、気密封止した水晶振動片2の検査を行うものである。
【0034】
製造装置7では、図2に示すように、複数の室(導入室71,予備加熱室72,気密封止室73,検査室75)が連続して並んで設けられ、水晶振動子1を一方向(図2に示すX方向)に搬送しながら水晶振動子1の気密封止および検査を行うインライン方式の製造装置である。
【0035】
具体的には、製造装置7では、水晶振動子1の搬送方向であるX方向に沿って、導入室71,予備加熱室72,気密封止室73,検査室75が順に連続して並び、複数の水晶振動子1を搭載した1つのパレット8をX方向に搬送しながら各室(導入室71,予備加熱室72,気密封止室73,検査室75)で製造処理を行うものである。また、この製造装置7では、図2に示すように、外部と導入室71との間と、導入室71と第1予備加熱室721との間と、気密封止室73と温度調整室74との間と、温度調整室74と検査室75との間と、検査室75と外部との間にゲート弁76がそれぞれ設けられ、各室の開放と遮断とを自在とし、各室内の気圧を制御して気圧変化を抑えることができる。
【0036】
ここでいうパレット8は、図3に示すように、直方体に成形されたプレートで構成され、このパレット8には、マトリックス状に複数の水晶振動子1が配されている。なお、本実施の形態では、最大400個(20個×20個)の水晶振動子1をパレット8に配することができる。また、最大400個(20個×20個)の水晶振動子1を搭載可能な搭載部81は平面視正方形とされ、その対角位置に、試験基準となる2個のリファレンスワーク82が配されている。本実施の形態では、リファレンスワーク82として、事前に良品と判断された水晶振動子を用いる。
【0037】
次に、複数の室(導入室71、予備加熱室72、気密封止室73、温度調整室74、検査室75)について、図2を用いて説明する。
【0038】
導入室71では、パレット8を製造装置7に搬入する室であり、導入室71のX方向の上流側に設けたゲート弁76を開けて、内部空間12が形成されていない水晶振動子1(すなわち、ベース3と蓋4とが別々の部材となっている状態であり、便宜上、未気密封止状態の水晶振動子1ともいう)を複数搭載したパレット8を外から搬入し、パレット8を搬入した後に、ゲート弁76を閉じる。そして、ゲート弁76を閉じた後、導入室71の室内を気圧制御して減圧し、大気状態から真空状態に気圧変更を行う。
【0039】
予備加熱室72は、パレット8上の未気密封止状態の水晶振動子1の温度を上げる室であり、導入室71のX方向の下流側に隣接し、第1予備加熱室721と第2予備加熱室722と第3予備加熱室723とから構成される。第1予備加熱室721と第2予備加熱室722と第3予備加熱室723とはX方向に沿って順に配され、第1予備加熱室721が導入室71に隣接し、第1予備加熱室721と導入室71との間は、開閉自在なゲート弁76によって仕切られている。予備加熱室72(第1予備加熱室721と第2予備加熱室722と第3予備加熱室723)では、室内が真空状態(真空雰囲気)になっており、第1予備加熱室721と第2予備加熱室722と第3予備加熱室723では、それぞれ予め設定した基準温度に設定されている。この予備加熱室72では、導入室71の室内が真空状態(真空雰囲気)になった後に、導入室71のX方向の下流側のゲート弁76を開き、導入室71からパレット8を搬入し、パレット8を搬入した後に、ゲート弁76を閉じる。そして、ゲート弁76を閉じた後、パレット8を、第1予備加熱室721、第2予備加熱室722、および第3予備加熱室723の順に搬送させることで、パレット8上の未気密封止状態の水晶振動子1を段階的に加熱させて未気密封止状態の水晶振動子1の温度を所望の温度にする。なお、予備加熱室72の基準温度は250〜290℃に設定されている。
【0040】
気密封止室73は、ベース3と蓋4とを接合して水晶振動片2を気密封止する室であり、予備加熱室72(具体的には、第3予備加熱室723)のX方向の下流側に隣接する。気密封止室73では、予備加熱室72と同様に、室内が真空状態(真空雰囲気)になっており、予め設定した基準温度に設定されている。この気密封止室73では、真空雰囲気下の予備加熱室72からパレット8を搬入し、パレット8上の未気密封止状態の水晶振動子1を、接合部材51が溶融する溶融温度よりも高い温度まで加熱する。そして、気密封止室73において、ベース3と蓋4とを接合部材51を介して加熱溶融することで接合し、ベース3に搭載した水晶振動片2を内部空間12に気密封止する。なお、気密封止室73の基準温度は約300〜約330℃に設定され、気密封止室73において水晶振動子1を約280℃に加熱する。なお、本明細書では、気密封止室73での水晶振動子1(および未気密封止状態の水晶振動子1)の加熱に対する、上記の予備加熱室72での未気密封止状態の水晶振動子1の加熱を、予備加熱とする。
【0041】
温度調整室74は、水晶振動子1の温度を、予め設定した基準温度(本実施の形態では常温である約25℃)に調整する室であり、気密封止室73のX方向の下流側に隣接する。この温度調整室74では、温度調整部(図示省略)としてペルチェ素子や冷却板などが設けられている。このように気密封止室73と検査室75との間に温度調整室74を設けることで、気密封止室73で雰囲気加熱によるベース3と蓋4との加熱接合によって高温になっている水晶振動子1の温度を下げることができる。具体的には、温度調整室74では、水晶振動子1の温度を常温の約25℃に下げる温度調整を行う。
【0042】
検査室75は、気密封止室73で気密封止した水晶振動子1の内部空間12の気密状態を検査する室であり、温度調整室74のX方向の下流側に隣接し、第1検査室751と第2検査室752とから構成される。第1検査室751と第2検査室752とはX方向に沿って順に配され、第1検査室751が温度調整室74に隣接し、温度調整室74と第1検査室751との間は、開閉自在なゲート弁76によって仕切られている。
【0043】
第1検査室751では、真空雰囲気下において水晶振動子1の内部空間12の気密状態を検査する。具体的には、第1検査室751では、室内を真空状態にし、温度調整室74で約25℃の常温まで水晶振動子1の温度を下げた後に、検査室75のX方向の上流側に設けたゲート弁76を開け、温度調整室74からパレット8を搬入し、パレット8を搬入した後に、ゲート弁76を閉じる。そして、ゲート弁76を閉じた後、真空雰囲気下で水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査(水晶振動子1のCI値の測定)を行う。この検査が1回目の測定となり、この1回目の測定結果と、下記の第2検査室752における2回目の測定により水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行う。なお、気密状態の検査では、一対のプローブピン(図示省略)を用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値を測定する。
【0044】
次に、第2検査室752では、第2検査室752のX方向の上流側に設けたゲート弁76を開け、第1検査室751からパレット8を搬入し、パレット8を搬入した後に、ゲート弁76を閉じる。そして、ゲート弁76を閉じた後、室内を大気開放し、第1検査室751での検査と同じ温度(約25℃)になっている水晶振動子1に対して、水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査(水晶振動子1のCI値の測定)を行う。この検査が2回目の測定となる。2回目の測定では、上記の第1回目の測定と同様に、気密状態の検査では、一対のプローブピンを用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値を測定する。
【0045】
そして、気密検査終了後に、第2検査室752のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を外に搬出する。パレット8を外に搬入した後に、ゲート弁76を閉じて、この製造装置7による複数の水晶振動子1の製造を終える。
【0046】
なお、予備加熱室72、気密封止室73、温度調整室74、および検査室75におけるパレット8上の水晶振動子1の温度の測定は次の通りに行う。まず、リファレンスワーク82と、試験を行なう検査対象の水晶振動子1との発振周波数の測定を行なう。そして、リファレンスワーク82の発振周波数の値から、製造装置7の制御部(図示省略)で基準温度に対する実質温度の誤差を算出し、この算出した誤差に基づいて、各室における水晶振動子1の温度制御を行う。なお、水晶振動子1の温度の測定は、上記のようなリファレンスワーク82を用いるものに限定されるものではなく、温度センサーを用いる測定であってもよい。
【0047】
次に、本実施の形態1にかかる製造装置7を用いて、水晶振動子1(平面寸法:3.2×2.5mm)のCI値を実測した(実験した)。そのデータを図4に示す。この図4では、図2に示す製造装置7の第2検査室752にて水晶振動子1のCI値を実測した結果を示し、横軸を時間軸とし、縦軸をCI値の変化量(ΔCI)とする。本実験では、事前に予めヘリウムリーク検査にてリークがないことを確認した2つの水晶振動子1と、同検査にてリークがあることを確認した6つの水晶振動子1とを準備し、8つの水晶振動子1をパレット8に搭載して、上記の製造方法により8つの水晶振動子1のCI値を同時に測定した。なお、本実験では、リークがない水晶振動子1に番号1〜2を付し、リークがある水晶振動子1に番号3〜8を付す。
【0048】
本実験によれば、図4に示すように、番号3〜8のリークがある水晶振動子1は時間の経過とともにCI値が変化する。これに対して、番号1,2のリークがない水晶振動子1は時間が経過してもCI値が変化しない。つまり、リークがある水晶振動子1のみのCI値が変動し、このことから、上記の製造装置7によれば、気密検査を確実に行うことができる。なお、図4では実験のために第2検査室752におけるCI値の変化量を経時的に観測しているが、実際には第2検査室752に搬入してから一定時間経過後に測定したCI値と第1検査室751にて測定したCI値とを比較し、CI値の変化量にてリークの有無を検査(気密検査)する。
【0049】
本発明によれば、水晶振動子1の気密封止を行うために用いる真空状態(減圧状態)の環境を、水晶振動子1の検査にも用いることができるので、気密検査を行うためだけに水晶振動子1の内部空間12を減圧する時間を必要とせず、気密検査にかかる時間を短縮させることができる。さらに、本実施の形態によれば、従来の技術のように2つの検査工程(グロスリーク検査工程とヘリウムリーク検査工程)を行う必要がなく、この点においても気密検査にかかる時間を短縮させることができる。また、本実施の形態によれば、従来の技術の封止装置を用いた気密封止工程と、気密検査装置を用いた気密検査工程を、1つの製造装置によって実現することができ、その結果、水晶振動子1の製造時間の短縮を図るのに好適である。
【0050】
また、本実施の形態によれば、気密封止室73で内部空間12を気密状態にした水晶振動子1に対して、一度も外部に搬送せずに、気密封止室73から第1検査室751に水晶振動子1を搬送し、第1検査室751において水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行うので、そのまま真空雰囲気下で1回目の気密検査(水晶振動子1のCI値の測定)を行うことができる。その後、第1検査室751から第2検査室752に水晶振動子1を搬送し、第2検査室752において大気雰囲気化で水晶振動子1の内部空間12の2回目の気密検査(水晶振動子1のCI値の測定)を行い、これらの検査結果の差を比較する(水晶振動子1のCI値の変動量を認識する)ことができる。その結果、水晶振動子1の気密封止後に、内部空間の気密漏れのある不良品の水晶振動子1であっても、これらの検査結果の差を比較する(水晶振動子1のCI値の変動量を認識する)ことで、内部空間12の正確な気密検査を行うことができる。これに対して、従来の技術のように、気密封止と気密検査とを別々にすると、一度、大気中に水晶振動子などの圧電振動デバイスを搬出することになるので、内部空間の気密漏れのある不良品の水晶振動子などの圧電振動デバイスでは、内部空間の状態が変化し、正常な気密検査を行うことができない。
【0051】
また、本実施の形態によれば、予備加熱室72が気密封止室73の前室として設けられ、水晶振動子1を、予備加熱室72、気密封止室73、および検査室75の順に搬送する。この構成において、ベース3と蓋4とを局所加熱により加熱溶融接合する場合、加熱接合する気密封止室73の前室に予備加熱室72が設けられているので、ベース3と蓋4との熱歪や熱応力の悪影響を抑制することができる。また、本実施の形態に示すように、ベース3と蓋4とを雰囲気加熱により加熱溶融接合する場合、ベース3と蓋4とをより均一に所定の温度まで上昇させる必要がある。本構成によれば、気密封止室73の前室(搬送前室)として予備加熱室72が設けられているので、気密封止室73においてベース3と蓋4とをより均一に所定の温度まで上昇させる時間を少なくすることができる。その結果、予備加熱室72が設けられず、気密封止室73のみで加熱する製造装置に比べて、封止工程のタクト低減により一層好ましいものとなる。
【0052】
また、本実施の形態では、1度目のCI値の測定を真空雰囲気下にて行なっているため、大気圧またはそれ以上の圧力をかけた加圧雰囲気下にて1度目のCI値の測定を行なう場合に比べて、検査時間を短縮できる効果を奏する。図5に、封止前の水晶振動子1(平面寸法:3.2×2.5mm)を用いて、真空槽の圧力を変化させながらCI値を実測した結果を示す。図5では、横軸を圧力とし、縦軸をCI値の変化量(ΔCI)とする。図5に示すように、圧力変化に対するCI値の変化の割合は、高圧側(粘性流領域)で小さく、低圧側(分子流領域)で大きいことが分かる。これは、水晶振動子1のCI値が気体との摩擦によって上昇し、この摩擦力が分子流領域では圧力に比例し、粘性流領域では圧力の1/2乗に比例するためである。本実施の形態では、この原理に基づき加熱封止の真空雰囲気を利用しているため、図5に示す低圧側の分子流領域においてCI値の変化を測定することができる。これに対して、大気圧下にて1度目のCI値の測定を行なう場合、大気圧から減圧又は加圧のどちらかに圧力変化をさせた後に2回目のCI値の測定を行う必要がある。このように、大気圧から減圧又は加圧のどちらかに圧力変化をさせた場合、粘性流領域にてCI値が変化するため、CI値の変化量が小さくなり、そのため、検査時間を長くする必要がある。なお、大気圧以上の加圧雰囲気下にて1度目のCI値の測定を行う場合も同様である。
【0053】
上記のように、本実施の形態によれば、真空状態にて1度目のCI値の測定を行なうことで、CI値の変化量が大きくすることができ、その結果、大気圧又は加圧状態から圧力変化をさせた形態に比べて、より少ない時間で気密検査を行うことができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、1つのパレット8に最大400個の水晶振動子1を搭載することができるが、この水晶振動子1の搭載数は限定されるものではなく、任意に設定できる。
【0055】
また、本実施の形態でいう水晶振動子1の一方向(X方向)の搬送方向とは、厳密にX方向に沿った搬送方向というものではなく、水晶振動子1が循環することなく水晶振動子1の搬送方向が一方であればよい。
【0056】
また、本実施の形態では、圧電振動素子としてATカット水晶振動片2を用いているが、これに限定されるものではなく、圧電振動素子は、厚みすべり振動を行う素子であればよい。ここでいう厚みすべり振動を行う素子として、ATカット水晶振動片の他に、BTカット水晶振動片、SCカット水晶振動片などが挙げられる。一般的に屈曲振動を利用した圧電振動素子では、真空雰囲気と大気雰囲気におけるCI値差が100kΩ以上あるため、基準温度(常温)でのCI値測定にて気密良否判定が行いやすいが、厚みすべり振動を行う素子では、このCI値差は数Ω程度しかなく、基準温度(常温)でのCI値測定だけでは気密良否判定は行えないため、本実施の形態の製造装置7を利用して正確な気密良否判定を行う。
【0057】
また、本実施の形態では、圧電振動デバイスとして図1に示す水晶振動子1を用いているが、これに限定されるものでなく、他の形態の水晶振動子や水晶フィルタ、図6に示すような発振器1等であってもよい。なお、図6に示す発振器1は、本実施の形態と同じ圧電振動デバイスであるので、便宜上、水晶振動子と同様の符号1を付す。
【0058】
図6に示す発振器1では、水晶振動片2と、水晶振動片2とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子(集積回路素子)であるICチップ6(本発明でいう電子部品素子)と、これら水晶振動片2およびICチップ6を搭載し保持するベース3と、ベース3の一主面31に保持した水晶振動片2およびICチップ6を気密封止するための蓋4と、が設けられている。この発振器1の内部空間12にはベース3に段部35が設けられている。
【0059】
この発振器1では、図6に示すように、内部空間のベース3の段部35上に、導電性接合材52(導電性樹脂接着剤、金属バンプ、めっきバンプ等)を介して水晶振動片2が接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。また、内部空間12のベース3の底部32上に、ICチップ6が導電性接合材52を介して接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。このように、内部空間12のベース3上では、図6に示すように、段部35上に接合された水晶振動片2と、底部32上に接合されたICチップ6とが積層した状態で配される。そして、ベース3の外側面36に、水晶振動片2の特性を測定・検査する圧電振動素子用外部端子34が形成され、ベース3の他主面38に外部の回路基板(図示省略)などの外部機器に電気的に接続する外部端子37が形成されている。この発振器1を製造装置7で製造する場合、検査室75では、一対のプローブピンが圧電振動素子用外部端子34に接して発振器1の気密状態の検査を行う。
【0060】
また、本実施の形態の検査室75では、真空雰囲気下と大気雰囲気下とにおいて水晶振動子1の気密状態を検査しているが、これに限定されるものではなく、さらに、DLDなどの電気特性も併せて検査してもよい。この電気的特性の検査は、気密検査と同様に一対のプローブピンを用いて行う。そのため、電気的特性の検査を行うために、新たに室や検査部材を用意しなくてもよく、水晶振動子1の製造装置7の簡易化を図ることができる。その結果、本製造装置7の他に電気的特性の検査のための製造装置を新たに設ける必要がなく、製造コストおよび製造時間をともに抑えることができる。なお、検査室75における水晶振動子1のDLDなどの電気特性の検査は、真空雰囲気下であっても大気雰囲気下であってもどちらの雰囲気下であっても行うことができる。
【0061】
また、本実施の形態では、温度調整室74と検査室75とを分けているが、これに限定されるものではなく、検査室75(具体的には第1検査室751)に温度調整部を設けてもよい。すなわち、検査室75が温度調整室74を兼ねてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、雰囲気加熱によりベース3と蓋4との加熱溶融接合を行っているが、これに限定されるものではなく、気密封止室73において、シーム溶接により、ベース3と蓋4との接合箇所を局所的に直接熱してベース3に蓋4を加熱溶融接合してもよい。このシーム溶接によるベース3と蓋4との加熱接合を採用することで、本実施の形態と異なり、気密封止室73の室内の温度を高める必要がなく、図7に示すように、予備加熱室72と温度調整室74とを必要としない製造装置1で、水晶振動子1の気密封止と検査とを行うことができる。なお、図7に示す製造装置1による製造方法は、本実施の形態1の製造装置1による製造方法に準ずる。
【0063】
<実施の形態2>
次に、本実施の形態2にかかる水晶振動子1の製造装置7を、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態2にかかる水晶振動子1の製造装置7は、上記の実施の形態1に対して、温度調整室74と検査室75との関係と、検査室75の構成が異なる。そのため、実施の形態1にかかる水晶振動子1の製造装置7と同一構成による作用効果及び変形例は、実施の形態1にかかる水晶振動子1の製造装置7と同様の作用効果及び変形例を有する。そこで、本実施の形態2では、上記の実施の形態1と異なる点について説明し、同一の構成についての説明を省略する。
【0064】
本実施の形態にかかる検査室75は、図8に示すように、第3検査室753と第4検査室754と第5検査室755とから構成され、第3検査室753において真空雰囲気下において高温状態の水晶振動子1の内部空間12の温度特性の検査を行い、第4検査室754において真空雰囲気下において常温状態の水晶振動子1の内部空間12の気密状態と温度特性の検査を行い、第5検査室755において大気雰囲気下において常温状態の水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行う。なお、本実施の形態では、第3検査室753と第4検査室754との間に温度調整室74が介在し、この温度調整室74により、水晶振動子1の温度を高温(約100℃)から常温(一般的には約25℃)に温度調整する。
【0065】
第3検査室753は、気密封止室73(具体的には、第3予備加熱室723)のX方向の下流側に隣接し、第3検査室753のX方向の上流側と下流側にそれぞれゲート弁76が設けられている。第3検査室753では、ベース3と蓋4との接合によって高温になっている水晶振動子1(約100℃)の温度特性を検査する。この気密状態の検査と温度特性の検査では、一対のプローブピン(図示省略)を用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値とその周波数を測定する。なお、ここでの測定は、温度特性の検査の1回目の測定となり、そして、下記の第4検査室754における検査が2回目の測定となり、これら計2回の測定により水晶振動子1の温度特性の検査を行う。
【0066】
第3検査室753において高温時の水晶振動子1の温度特性の検査を終了した後に、第3検査室753のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を温度調整室74に搬送する。
【0067】
温度調整室74では、水晶振動子1の温度を、高温の約100℃から常温の約25℃に温度調整する。そして、水晶振動子1の温度調整を終えた後に、温度調整室74のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を第4検査室754に搬送する。
【0068】
第4検査室754は、温度調整室74のX方向の下流側に隣接し、第4検査室754のX方向の上流側と下流側にそれぞれゲート弁76が設けられている。第4検査室754では、真空雰囲気下における常温の水晶振動子1の内部空間の気密状態の検査と、常温の水晶振動子1の温度特性の検査を行う。これら気密状態の検査と温度特性の検査では、上記の第3検査室753と同様に、一対のプローブピン(図示省略)を用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値とその周波数を測定する。
【0069】
第4検査室754において、真空雰囲気下における水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査と、常温時の水晶振動子1の温度特性の検査とを終了した後に、第4検査室754のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を第5検査室755に搬送する。
【0070】
第5検査室755では、大気雰囲気下で、水晶振動子1(常温)の内部空間12の気密状態を検査する。この第5検査室755では、第4検査室754からパレット8を搬入した後に、ゲート弁76を閉じる。そして、ゲート弁76を閉じた後、大気雰囲気下で水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行う。この気密状態の検査では、上記の第3検査室753と同様に、一対のプローブピン(図示省略)を用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値を測定する。
【0071】
そして、第5検査室755において大気雰囲気下での水晶振動子1の気密状態の検査を終了した後に、第5検査室755のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を外に搬出し、パレット8を外に搬入した後に、ゲート弁76を閉じて、この製造装置7による複数の水晶振動子1の製造を終える。
【0072】
本実施の形態にかかる水晶振動子1の製造方法によれば、上記の実施の形態1にかかる製造装置7による作用効果に加えて、水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査と、水晶振動子1の温度特性の検査を同時に行うことができる。そのため、水晶振動子1の温度特性の検査を行うために、新たに室や検査部材を用意しなくてもよく、水晶振動子1の製造装置7の簡易化を図ることができる。その結果、本製造装置7の他に温度特性の検査のための製造装置を新たに設ける必要がなく、製造コストおよび製造時間をともに抑えることができる。
【0073】
なお、検査室75における水晶振動子1の温度特性の検査は、真空雰囲気下であっても大気雰囲気下であってもどちらの雰囲気下であっても行うことができるが、水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査と、水晶振動子1の温度特性の検査とを同時に行う場合、本実施の形態に示す製造工程順になる。
【0074】
また、本実施の形態において、水晶振動子1の気密状態の検査をせずに温度特性の検査のみを行うことも可能である。
【0075】
<実施の形態3>
次に、本実施の形態3にかかる水晶振動子1の製造装置7を、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態3にかかる水晶振動子1の製造装置7は、上記の実施の形態1に対して、検査室75が異なる。そのため、実施の形態1にかかる水晶振動子1の製造装置7と同一構成による作用効果及び変形例は、実施の形態1にかかる水晶振動子1の製造装置7と同様の作用効果及び変形例を有する。そこで、本実施の形態3では、上記の実施の形態1と異なる検査室75の構成について説明し、同一の構成についての説明を省略する。
【0076】
本実施の形態にかかる検査室75は、図9に示すように、第6検査室756と第7検査室757とから構成され、第6検査室756および第7検査室757において水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行う。なお、第6検査室756での水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査は、真空雰囲気下の室内で行われ、第7検査室757での水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査は、大気圧を超える圧力に加圧された室内で行われる。室内の加圧は、例えば検査室に窒素ガスを導入する等、適切なガスを充填すればよく、エアー(大気)導入であってもよい。
【0077】
第6検査室756は、温度調整室74のX方向の下流側に隣接し、第6検査室756のX方向の上流側と下流側にそれぞれゲート弁76が設けられている。第6検査室756では、真空雰囲気下で水晶振動子1の気密状態を検査する。この第6検査室756では、温度調整室74で水晶振動子1の温度を常温に調整した後に第6検査室756のX方向の上流側に設けたゲート弁76を開け、温度調整室74からパレット8を搬入し、パレット8を搬入した後に、ゲート弁76を閉じる。そして、ゲート弁76を閉じた後、真空雰囲気下で水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行う。この気密状態の検査では、一対のプローブピン(図示省略)を用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値を測定する。この検査が1回目の測定となり、この1回目の測定結果と、下記の第7検査室757における2回目の測定により水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行う。
【0078】
次に、第7検査室757では、第7検査室757のX方向の上流側に設けたゲート弁76を開け、第6検査室756からパレット8を搬入し、パレット8を搬入した後に、ゲート弁76を閉じる。そして、ゲート弁76を閉じた後、室内を加圧する。本実施の形態では、約0.3〜約0.4MPaに第4検査室754の室内を加圧する。そして、加圧下における水晶振動子1の気密状態の検査を行う。この検査が2回目の測定となる。2回目の測定では、上記の第1回目の測定と同様に、気密状態の検査では、一対のプローブピンを用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値を測定する。
【0079】
そして、水晶振動子1の気密状態の検査を終了した後に、第7検査室757のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を外に搬出し、パレット8を外に搬入した後に、ゲート弁76を閉じて、この製造装置7による複数の水晶振動子1の製造を終える。
【0080】
本実施の形態にかかる水晶振動子1の製造方法によれば、上記の実施の形態1にかかる製造装置7による作用効果に加えて、加圧した状態での水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行うので、気密封止漏れがあった場合、CI値の変動量が、非加圧下に比べて大きくなる。そのため、さらに精度の良い気密検査を行うことができる。
【0081】
<実施の形態4>
次に、本実施の形態4にかかる水晶振動子1の製造装置7を、図面を用いて説明する。本実施の形態4にかかる水晶振動子1の製造装置7は、上記の実施の形態1〜3にかかる水晶振動子1の製造装置7による各検査を併せ持つ製造装置である。そのため、実施の形態1〜3にかかる水晶振動子1の製造装置7と同一構成による作用効果及び変形例は、実施の形態1〜3にかかる水晶振動子1の製造装置7と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0082】
本実施の形態にかかる検査室75は、図10に示すように、第8検査室758と第9検査室759と第10検査室7510とから構成され、第8検査室758において真空雰囲気下において高温状態の水晶振動子1の内部空間12の温度特性の検査を行い、第9検査室759において真空雰囲気下において常温状態の水晶振動子1の内部空間12の気密状態と温度特性の検査を行い、第10検査室7510において加圧下において常温状態の水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行う。なお、本実施の形態では、第8検査室758と第9検査室759との間に温度調整室74が介在し、この温度調整室74により、水晶振動子1の温度を高温(約100℃)から常温(約25℃)に温度調整する。
【0083】
第8検査室758は、気密封止室73(具体的には、第3予備加熱室723)のX方向の下流側に隣接し、第8検査室758のX方向の上流側と下流側にそれぞれゲート弁76が設けられている。第8検査室758では、ベース3と蓋4との接合によって高温になっている水晶振動子1(約100℃)の温度特性を検査する。この気密状態の検査と温度特性の検査では、一対のプローブピン(図示省略)を用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値とその周波数を測定する。なお、ここでの測定は、温度特性の検査の1回目の測定となり、そして、下記の第9検査室759における検査が2回目の測定となり、これら計2回の測定により水晶振動子1の温度特性の検査を行う。
【0084】
第8検査室758において高温時の水晶振動子1の温度特性の検査を終了した後に、第8検査室758のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を温度調整室74に搬送する。
【0085】
温度調整室74では、水晶振動子1の温度を、高温の約100℃から常温の約25℃に温度調整する。そして、水晶振動子1の温度調整を終えた後に、温度調整室74のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を第9検査室759に搬送する。
【0086】
第9検査室759は、温度調整室74のX方向の下流側に隣接し、第9検査室759のX方向の上流側と下流側にそれぞれゲート弁76が設けられている。第9検査室759では、真空雰囲気下における常温の水晶振動子1の内部空間の気密状態の検査と、常温の水晶振動子1の温度特性の検査を行う。これら気密状態の検査と温度特性の検査では、上記の第8検査室758と同様に、一対のプローブピン(図示省略)を用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値とその周波数を測定する。
【0087】
第9検査室759において、真空雰囲気下における水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査と、常温時の水晶振動子1の温度特性の検査とを終了した後に、第9検査室759のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を第10検査室7510に搬送する。
【0088】
第10検査室7510では、加圧雰囲気下で、水晶振動子1(常温)の内部空間12の気密状態を検査する。この第10検査室7510では、第9検査室759からパレット8を搬入した後に、ゲート弁76を閉じる。そして、ゲート弁76を閉じた後、加圧下において水晶振動子1の内部空間12の気密状態の検査を行う。この気密状態の検査では、上記の第8検査室758と同様に、一対のプローブピン(図示省略)を用い、プローブピンを水晶振動子1の圧電振動素子用外部端子34に接続して水晶振動子1のCI値を測定する。
【0089】
そして、第10検査室7510において加圧雰囲気下での水晶振動子1の気密状態の検査を終了した後に、第10査室7510のX方向の下流側に設けたゲート弁76を開けてパレット8を外に搬出し、パレット8を外に搬入した後に、ゲート弁76を閉じて、この製造装置7による複数の水晶振動子1の製造を終える。
【0090】
本実施の形態にかかる水晶振動子1の製造方法によれば、上記の実施の形態1〜3にかかる製造装置7による作用効果およびその変形例による作用効果を併せて有する。
【0091】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。例えば上記実施形態では、各検査室等を個別に構成しているが1つの検査室にまとめて構成してもよい。また上記温度調整室は温度を下げるものに限らず温度を上げるものであってもよい。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、圧電振動デバイスの製造工程で好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 水晶振動子,発振器
11 本体筐体
12 内部空間
2 ATカット水晶振動片
3 ベース
31 一主面
32 底部
33 壁部
34 圧電振動素子用外部端子
35 段部
36 外側面
37 外部端子
38 他主面
4 蓋
51 接合部材
52 導電性接合材
6 ICチップ
7 製造装置
71 導入室
72 予備加熱室
721 第1予備加熱室
722 第2予備加熱室
723 第3予備加熱室
73 気密封止室
74 温度調整室
75 検査室
751 第1検査室
752 第2検査室
753 第3検査室
754 第4検査室
755 第5検査室
756 第6検査室
757 第7検査室
758 第8検査室
759 第9検査室
7510 第10検査室
76 ゲート弁
8 パレット
81 搭載部
82 リファレンスワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の封止部材を接合することにより内部空間が形成され、この内部空間に圧電振動素子を含む1つ以上の電子部品素子が気密封止され、外部に電気的に接続する外部端子として、圧電振動素子に接続される圧電振動素子用外部端子が形成された圧電振動デバイスの製造装置において、
真空雰囲気下で複数の封止部材を加熱接合して真空状態の内部空間を形成し、内部空間に電子部品素子を気密封止する気密封止室と、
圧電振動デバイスの内部空間の気密状態を検査する検査室と、が設けられ、
圧電振動デバイスを、前記気密封止室、前記検査室の順に搬送することを特徴とする圧電振動デバイスの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動デバイスの製造装置において、
真空雰囲気下で封止部材を予備加熱する予備加熱室が設けられ、
圧電振動デバイスを、前記予備加熱室、前記気密封止室、および前記検査室の順に搬送することを特徴とする圧電振動デバイスの製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動デバイスの製造装置において、
前記検査室では、圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査の他に、圧電振動素子用外部端子を使った圧電振動デバイスの電気的特性の検査を行うことを特徴とする圧電振動デバイスの製造装置
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造装置において、
前記検査室では、圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査の他に、圧電振動素子用外部端子を使った圧電振動デバイスの温度特性の検査を行うことを特徴とする圧電振動デバイスの製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造装置において、
圧電振動デバイスの温度を、予め設定した基準温度に調整する温度調整室が設けられたことを特徴とする圧電振動デバイスの製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造装置において、
前記検査室での圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査は、加圧による圧電振動デバイスの内部空間の気密状態の検査を含むことを特徴とする圧電振動デバイスの製造装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造装置において、
圧電振動素子は、厚みすべり振動を行う素子であることを特徴とする圧電振動デバイスの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−257152(P2012−257152A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130085(P2011−130085)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【出願人】(000146009)株式会社昭和真空 (72)
【Fターム(参考)】