説明

地下空間における換気システム

【課題】 トンネルの施工現場における適切な換気量となるエアを供給することができる地下空間における換気システムを提供する。
【解決手段】 第1トンネルT1および第2トンネルT2の掘削を行うにあたり、重機の作動状況に応じて作業モードを確認し、作業モードに応じた量のエアを供給する。エアの供給を行う間、坑内環境計測手段で坑内環境を計測する。ここで、坑内環境が悪化した場合には、エアの風量を増加させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下空間における換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地下空間にトンネル(坑道)を施工する際には、施工中のトンネルの換気が必要となることが多い。トンネルの換気を行う際の換気システムとして、従来、換気計画を行うエキスパートシステムと、トンネル内の粉塵濃度を予測する粉塵濃度予測システムとを備える換気計画システムがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この換気計画システムでは、エキスパートシステムによって、トンネルのデータと風管やファンのデータを用いてトンネルに対する適切な風管やファン等を選定する。また、粉塵濃度予測システムによって、トンネルモデルに対して風管とファン等の換気設備の仕様を決定するとともに、作業条件等によって風量やガス濃度等を算出する。さらに、診断システムによって、濃度予測システムで予測された濃度を用いてファンの風量を推定し、ファンによる換気が適切であるか否かを判断する。そして、実際のトンネル施工で問題が発生した場合には、過去事例を検索し、濃度計測値と濃度計算値とを比較して対応策を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−299399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された換気計画システムでは、トンネルの施工で問題が発生した場合に、過去事例に基づく対応を行っているが、トンネルの施工現場は、種々の条件によって必ずしも過去事例が当てはまるとは限らない。このため、トンネルで問題が発生した場合でも適正な対応策を提示することができず、適切な換気量のエアを提供することができない場合があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、トンネルの施工現場における適切な換気量となるエアを供給することができる地下空間における換気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る地下空間における換気システムは、トンネルを施工する際の地下空間の換気を行う地下空間の換気システムであって、トンネルにエアを供給するエア供給手段と、トンネル内における坑内環境を計測する坑内環境計測手段と、トンネル内における重機の作動状況を確認する重機作動状況確認手段と、エア供給手段の作動制御を行う制御手段と、を備え、制御手段は、重機作動状況確認手段で確認された重機の作動状況に基づいて、トンネルにおける作業モードを確認する作業モード確認手段と、作業モード確認手段によって確認された作業モードに応じて、エア供給手段より供給するエアの風量を算出する風量算出手段と、坑内環境計測手段で計測された坑内環境に基づいて、エア風量算出手段で算出されたエアの風量を調整する風量調整手段と、風量調整手段で調整された風量に応じて、エア供給手段を制御する作動制御手段と、を備えることを特徴とする地下空間における換気システム。
【0008】
本発明に係る地下空間における換気システムでは、作業モード確認手段によって確認された作業モードに応じて、エア供給手段より供給するエアの風量を算出している。ところが、トンネルの坑内環境は、時々刻々と変化しており、作業モードに応じた適切な換気量とならない場合もある。この点、本発明に係る地下空間における換気システムでは、坑内環境計測手段で計測された坑内環境に基づいて、エア風量算出手段で算出されたエアの風量を調整している。このため、坑内環境に変化が生じた場合でも、坑内環境を考慮したエアの風量とすることができる。したがって、トンネルの施工現場における適切な換気量となるエアを供給することができる。
【0009】
ここで、地下空間には、複数のトンネルが形成されている態様とすることができる。
【0010】
このように、複数のトンネルが形成されている場合でも、それぞれのトンネルに対する適切な換気量となるエアを供給することができる。
【0011】
また、重機の作動状況に関する作動状況信号を無線送信する作動状況信号送信手段が重機に設けられ、作動状況信号を受信する作動状況信号受信手段が地下空間に設けられており、作動状況信号受信手段は、受信した作動状況信号を制御手段に送信する態様とすることができる。
【0012】
このように、重機の作動状況を作動状況信号送信手段によって無線送信することにより、電線を用いる必要がないため、重機が作動し、移動した場合でも、電線が絡まったり切断したりすることがない。したがって、作動状況信号を適切に送信することができる。
【0013】
さらに、坑内環境計測手段で計測された坑内環境が、所定の基準値を超える場合に、風量調整手段による風量の調整を行う態様とすることができる。
【0014】
坑内環境が悪化する場合に、作業員による作業環境が悪化する。この点、坑内環境が所定の基準値を超える場合に、風量の調整を行うことにより、悪化した作業環境を改善することができる。したがって、トンネル内で作業を行う作業員に対して、好適な作業環境を提供することができる。
【0015】
また、換気シミュレーションのシミュレーション結果に基づいて、作業モードに応じたエアの風量の初期値を記憶しておく態様とすることができる。
【0016】
このように、作業モードに応じたエアの風量の初期値を換気シミュレーションによって求めることにより、好適なエアの風量の初期値を設定し、記憶することができる。
【0017】
さらに、作業モードは、地山を削孔する際の削孔モード、発破前の爆薬を装填する際の装薬モード、発破作業を行う際の発破モード、発破後のずり出し作業を行う際のずり出しモード、吹付機による吹付作業を行う際の吹付モード、およびロックボルトを打ち込む際のロックボルト打ち込みモードのうちの少なくとも1つを含む態様とすることができる。
【0018】
トンネルの掘削作業には、削孔作業、発破作業、ずり出し作業、吹付作業、ロックボルトの打ち込み作業などが含まれる。そこで、これらの作業に応じた作業モードを設定することにより、作業の態様に応じた好適な供給量のエアを供給することができる。
【0019】
また、坑内環境は、トンネルにおける粉塵量、坑内温度、および酸素濃度のうちの少なくとも1つである態様とすることができる。
【0020】
このように、坑内環境の悪化原因としては、粉塵量の増加坑内温度や酸素濃度の上昇が挙げられる。したがって、坑内環境としては、これらの要素をモニタすることにより、好適な作業環境を提供することができる。
【0021】
そして、トンネルが、廃棄物を埋めることで廃棄する処分坑道である態様とすることができる。
【0022】
このように、廃棄物を埋めることで廃棄する処分坑道を造成する際にも、処分坑道に対する適切な風量のエアを供給することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る地下空間における換気システムによれば、トンネルの施工現場における適切な換気量となるエアを供給することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る地下空間の換気システムの全体構成図である。
【図2】制御装置のブロック構成図である。
【図3】地下空間におけるトンネルの模式的平面図である。
【図4】油圧ショベルの側面図である。
【図5】重機稼働データ収集装置および作業内容表示機の正面図である。
【図6】地下空間の換気システムにおける動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る地下空間の換気システムの全体構成図、図2は、制御装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る地下空間の換気システムMは、複数、本実施形態では2つのトンネルである第1トンネルT1および第2トンネルT2、さらには、第1トンネルT1および第2トンネルT2につながる小トンネルT3が形成されている地下空間に対して用いられる。小トンネルT3の外側には事務所Rが設けられており、事務所Rには、集中管理用パソコンからなる制御装置1が設けられている。
【0027】
小トンネルT3の端部に坑口があり、小トンネルT3における坑口と反対側の端部から第1トンネルT1および第2トンネルT2の掘削が進行する。第1トンネルT1および第2トンネルT2は、並行して掘削が進められ、最初に第1トンネルT1の掘削が開始され、続いて、第2トンネルT2の掘削が進められる。第1トンネルT1における切羽K1よりも前方の位置の破線で示す部分は未掘削であって掘削予定箇所である。同様に、第2トンネルT2における切羽K2よりも前方の位置は未掘削の掘削予定箇所である。
【0028】
また、第1トンネルT1には、第1温度センサ2A、第1粉塵量センサ3A、および第1酸素濃度センサ4Aが設けられ、第2トンネルT2には、第2温度センサ2B、第2粉塵量センサ3B、および第2酸素濃度センサ4Bが設けられている。これらの各センサは、図2に示すように、制御装置1に電気的に接続されている。温度センサ2A,2B、粉塵量センサ3A,3B、酸素濃度センサ4A,4B(以下、これらを総称して「坑内環境センサ」という)は、本発明の坑内環境計測手段を構成する。
【0029】
さらに、第1トンネルT1には、第1重機稼働データ収集装置5Aが設けられ、第2トンネルT2には、第2重機稼働データ収集装置5Bが設けられている。第1重機稼働データ収集装置5Aおよび第2重機稼働データ収集装置5Bは、それぞれ制御装置1に接続されている。
【0030】
制御装置1は、作業モード確認部11、基準風量記憶部12、および風量読出部13を備えている。さらに、制御装置1は、坑内環境確認部14、風量調整部15、送風機制御部16、および集塵機制御部17を備えている。また、制御装置1には、前方送風機20、第1送風機21、第2送風機22、第1集塵機31、および第2集塵機32が接続されている。これらの送風機20〜22が本発明のエア供給手段となる。制御装置1は、送風機20〜22および集塵機31,32の作動制御を行っている。
【0031】
このうち、前方送風機20は小トンネルT3における坑口に配置され、第1送風機21および第1集塵機31は、第1トンネルT1に配置されている。また、第2送風機22および第2集塵機32は、第2トンネルT2に配置されている。第1送風機21には、図示しない風管が接続されており、この風管を通じて第1トンネルT1の切羽に清浄空気が供給される。同様に、第2送風機22には図示しない風管が接続されており、この風管を通じて第2トンネルT2の切羽に清浄空気が供給される。
【0032】
また、第1トンネルT1および第2トンネルT2には、各トンネルにおける掘進作業に応じた重機が搬入されている。掘進作業に用いられる重機としては、図3に示すように、油圧ショベルOS、ドリルジャンボDJ、油圧ブレーカOB、ホイールローダWR、ダンプトラックDT、コンクリート吹付機CSなどを挙げることができる。また、第1トンネルT1および第2トンネルT2内には、クラッシャCR、テールピース台車TD、および延伸ベルトコンベアBCなどの他の機器も載置されている。
【0033】
これらの重機に対しては、それぞれ作動状況を検知する作動センサが取り付けられている。具体的に、油圧ショベルOSには、油圧ショベル作動センサ41、ドリルジャンボDJにはドリルジャンボ作動センサ42、油圧ブレーカOBには油圧ブレーカ作動センサ43、ホイールローダWRにはホイールローダ作動センサ44がそれぞれ取り付けられている。また、ダンプトラックDTにはダンプトラック作動センサ45、コンクリート吹付機CSにはコンクリート吹付機作動センサ46がそれぞれ取り付けられている。
【0034】
第1温度センサ2Aは、第1トンネルT1に配設されており、第1トンネルT1内の坑内温度を計測している。同様に、第2温度センサ2Bは、第2トンネルT2に配設されており、第2トンネルT2内の坑内温度を計測している。第1温度センサ2Aおよび第2温度センサ2Bは、いずれも送電線を介して制御装置1に対して電気的に接続されており、計測した第1トンネルT1および第2トンネルT2内の坑内温度に応じた温度信号を制御装置1にそれぞれ送信する。
【0035】
第1粉塵量センサ3Aは、第1トンネルT1に配設されており、第1トンネルT1内の粉塵量を計測している。同様に、第2粉塵量センサ3Bは、第2トンネルT2に配設されており、第2トンネルT2内の粉塵量を計測している。第1粉塵量センサ3Aおよび第2粉塵量センサ3Bは、いずれも送電線を介して制御装置1に対して電気的に接続されており、計測した第1トンネルT1および第2トンネルT2内の粉塵量に応じた粉塵量信号を制御装置1にそれぞれ送信する。
【0036】
第1酸素濃度センサ4Aは、第1トンネルT1に配設されており、第1トンネルT1内の酸素濃度を計測している。同様に、第2酸素濃度センサ4Bは、第2トンネルT2に配設されており、第2トンネルT2内の酸素濃度を計測している。第1酸素濃度センサ4Aおよび第2酸素濃度センサ4Bは、いずれも送電線を介して制御装置1に対して電気的に接続されており、計測した第1トンネルT1および第2トンネルT2内の酸素濃度に応じた酸素濃度信号を制御装置1にそれぞれ送信する。
【0037】
第1重機稼働データ収集装置5Aは、油圧ショベル作動センサ41、ドリルジャンボ作動センサ42、油圧ブレーカ作動センサ43、ホイールローダ作動センサ44、ダンプトラック作動センサ45、およびコンクリート吹付機作動センサ46(以下、これらを総称して「重機作動センサ」)から送信される作動信号を受信可能とされている。第1重機稼働データ収集装置5Aは、受信した作動信号の種類に基づいて、第1トンネルT1内における重機の稼働状況を収集し、収集した稼働状況に応じた稼働状況信号を、送電線を介して制御装置1に送信する。重機作動センサは、本発明の作動状況信号送信手段を構成する。
【0038】
第2重機稼働データ収集装置5Bは、重機作動センサ41〜46から送信される作動信号を受信可能とされている。第2重機稼働データ収集装置5Bは、受信した作動信号の種類に基づいて、第2トンネルT2内における重機の稼働状況を収集し、収集した重機の稼働状況に応じた重機稼働状況信号を、送電線を介して制御装置1に送信する。これらの重機稼働データ収集装置5A,5Bは、本発明の作動状況信号受信手段および重機作動状況確認手段を構成する。
【0039】
制御装置1における作業モード確認部11は、第1重機稼働データ収集装置5Aおよび第2重機稼働データ収集装置5Bから送信される重機稼働状況信号に基づいて、第1トンネルT1および第2トンネルT2における作業モードを確認する。作業モード確認部11は、トンネルの掘削作業を行う際のそれぞれの作業内容および作業内容に応じた重機の通常稼働状況を記憶している。
【0040】
トンネルの掘削作業を行う際の作業内容としては、たとえば、地山を削孔する際の削孔モード、発破前の爆薬を装填する際の装薬モード、発破作業を行う際の発破モード、発破後のずり出し作業を行う際のずり出しモード、吹付機による吹付作業を行う際の吹付モード、およびロックボルトを打ち込む際のロックボルト打ち込みモード等がある。
【0041】
このうち、たとえば削孔モードであれば、通常稼働重機としてドリルジャンボDJが稼働する。また、装薬モードであればこれらのすべての重機の稼働が停止している。作業モード確認部11では、この通常稼働重機と第1重機稼働データ収集装置5Aおよび第2重機稼働データ収集装置5Bから送信される重機稼働状況信号による現在稼働中の重機とを比較して、作業モードを確認する。作業モード確認部11は、確認した第1トンネルT1および第2トンネルT2における作業モードに対応する作業モード信号を風量読出部13に出力する。作業モード確認部11を備える制御装置1は、本発明の作業モード確認手段を構成する。
【0042】
基準風量記憶部12は、換気シミュレーションによって求められた各作業モード時に好適な風量となる基準風量を初期値として記憶している。ここで行われる換気シミュレーションは、第1トンネルT1、第2トンネルT2、および小トンネルT3を想定したシミュレータを用いて行われる。
【0043】
風量読出部13は、作業モード確認部11から出力された現在の作業モードに対応する各トンネルに対する基準風量を基準風量記憶部12から読み出す。風量読出部13は、読み出した各トンネルに対する基準風量を風量調整部15に出力する。風量読出部13を有する制御装置1は、本発明の風量調整手段を構成する。
【0044】
坑内環境確認部14は、第1温度センサ2Aおよび第2温度センサ2Bから送信される坑内温度信号、第1粉塵計測センサ3Aおよび第2粉塵計測センサ3Bから送信される粉塵量信号、および第1酸素濃度センサ4Aおよび第2酸素濃度センサ4Bから送信される酸素濃度信号に基づいて、坑内環境を確認する。坑内環境確認部14は、坑内温度、粉塵量、および酸素濃度に対して、作業員がトンネル内で作業を行うにあたっての坑内環境が悪化したと判断するための坑内環境基準値を記憶している。坑内環境確認部14では、第1トンネルT1または第2トンネルT2における坑内温度、粉塵量、または酸素濃度が所定の坑内環境基準値を超えて坑内環境が悪化したと判断した場合には、環境が悪化したトンネルについての坑内環境悪化信号を風量調整部15に出力する。
【0045】
風量調整部15は、風量読出部13から出力される基準風量および坑内環境確認部14から出力される坑内環境悪化信号に基づいて、第1トンネルT1および第2トンネルT2に供給するエアの風量を調整する。風量調整部15は、調整した風量に応じた風量信号を送風機制御部16および集塵機制御部17に出力する。
【0046】
送風機制御部16は、風量調整部15から出力される風量信号に基づいて、前方送風機20、第1送風機21、および第2送風機22の風量制御を行う。送風機制御部16は、風量制御を行うにあたり、第1トンネルT1および第2トンネルT2に供給する風量に応じた第1送風機21および第2送風機22のそれぞれの回転数を算出する。送風機制御部16は、算出した回転数に応じた回転数信号を第1送風機21および第2送風機22にそれぞれ送信する。
【0047】
また、送風機制御部16は、第1トンネルT1および第2トンネルT2に供給する風量を加算した風量を前方送風機20から供給する。送風機制御部16は、供給する風量に応じた前方送風機20の回転数を算出し、算出した回転数に応じた回転数信号を前方送風機20に送信する。
【0048】
集塵機制御部17は、風量調整部15から出力される風量信号に基づいて、第1集塵機31および第2集塵機32の運転制御を行う。集塵機制御部17は、運転制御を行うにあたり、第1トンネルT1および第2トンネルT2に供給する風量に応じた第1集塵機31および第2集塵機32のそれぞれの運転モードを判断する。集塵機制御部17は、判断した運転モードに応じた運転モード信号を第1集塵機31および第2集塵機32にそれぞれ送信する。
【0049】
さらに、制御装置1には、図示しないモニタやプリンタが接続されている。制御装置1では、第1重機稼働データ収集装置5Aおよび第2重機稼働データ収集装置5Bから送信される稼働状況に応じた各重機の稼働状況のモニタへの表示やプリンタによる印刷を可能としている。同様に、作業モード確認部11で確認された作業モードや坑内環境確認部14で確認された第1トンネルT1および第2トンネルT2の坑内環境についてもモニタへの表示やプリンタによる印刷を可能としている。
【0050】
また、図4に示すように、油圧ショベル作動センサ41は、油圧ショベルOSに取り付けられており、油圧ショベルOSの作動状況を検出している。油圧ショベルの作動状況としては、ショベルアームや車輪が作動しているか否か等を検出している。他の重機作動センサ42〜46についても、図示はしないが、油圧ショベルOSに油圧ショベル作動センサ41が取り付けられているように、各重機に対して取り付けられている。油圧ショベル作動センサ41は、検出した油圧ショベルOSの作動状況に応じた作動信号を図5に示す第1重機稼働データ収集装置5Aまたは第2重機稼働データ収集装置5Bに対して無線送信する。図5は、図2における領域Xを拡大して示している。
【0051】
ドリルジャンボ作動センサ42は、ドリルジャンボDJに取り付けられており、ドリルジャンボDJの作動状況を検出している。ドリルジャンボDJの作動状況としては、具体的に、エンジン、削岩機、削孔ロッド等の作動状況を検出している。ドリルジャンボ作動センサ42は、検出したドリルジャンボDJの作動状況に応じた作動信号を第1重機稼働データ収集装置5Aまたは第2重機稼働データ収集装置5Bに対して無線送信する。
【0052】
油圧ブレーカ作動センサ43は、油圧ブレーカOBに取り付けられており、油圧ブレーカOBの作動状況を検出している。油圧ブレーカOBの作動状況としては、油圧ブレーカOBが作動しているか否かを検出している。油圧ブレーカ作動センサ43は、検出した油圧ブレーカOBの作動状況に作動信号を第1重機稼働データ収集装置5Aまたは第2重機稼働データ収集装置5Bに対して無線送信する。
【0053】
ホイールローダ作動センサ44は、ホイールローダWRに取り付けられており、ホイールローダWRの作動状況を検出している。ホイールローダWRの作動状況としては、ホイールローダWRのエンジンが作動しているか否かを検出している。ホイールローダ作動センサ44は、検出したホイールローダWRの作動状況に作動信号を第1重機稼働データ収集装置5Aまたは第2重機稼働データ収集装置5Bに対して無線送信する。
【0054】
ダンプトラック作動センサ45は、ダンプトラックDTに取り付けられており、ダンプトラックDTの作動状況を検出している。ダンプトラックDTの作動状況としては、ダンプトラックDTのエンジンが作動しているか否かを検出している。ダンプトラック作動センサ45は、検出したダンプトラックDTの作動状況に作動信号を第1重機稼働データ収集装置5Aまたは第2重機稼働データ収集装置5Bに対して無線送信する。
【0055】
コンクリート吹付機作動センサ46は、コンクリート吹付機CSに取り付けられており、コンクリート吹付機CSの作動状況を検出している。コンクリート吹付機CSの作動状況としては、コンクリート吹付機CSのモータが作動しているか否かを検出している。コンクリート吹付機作動センサ46は、検出したコンクリート吹付機CSの作動状況に作動信号を第1重機稼働データ収集装置5Aまたは第2重機稼働データ収集装置5Bに対して無線送信する。これらの重機作動センサ41〜46では、各重機の照明、電磁弁、ポンプ等の運転、停止等を検出している。
【0056】
第1トンネルT1内において、各重機作動センサ41〜46から送信される作動信号は、図5に示す第1重機稼働データ収集装置5Aに送信される。第1重機稼働データ収集装置5Aの側方には、作業内容表示機6Aが設けられている。制御装置1における作業モード確認部11は、作業モードを確認した際、作業モードに応じた作業モード信号を風量読出部13に出力するとともに作業内容表示機6Aに送信する。作業内容表示機6Aは、制御装置1における作業モード確認部11から送信された作業モード信号に応じた作業内容が表示される。また、第2トンネルT2内における第2重機稼働データ収集装置5Bの側方にも、同様の作業内容表示機が設けられている。
【0057】
次に、本実施形態に係る地下空間における換気システムの動作について説明する。図6は、地下空間の換気システムにおける動作手順を示すフローチャートである。
【0058】
図6に示すように、本実施形態に係る換気システムでは、最初に、第1重機稼働データ収集装置5Aおよび第2重機稼働データ収集装置5Bにおいて、重機作動センサ41〜46から送信される作動信号を受信し、各作動信号に基づいて重機の稼働状況を判断する(S1)。第1重機稼働データ収集装置5Aおよび第2重機稼働データ収集装置5Bは、重機の稼働状況を判断したら、重機稼働状況信号を制御装置1における作業モード確認部11に送信する。
【0059】
作業モード確認部11では、受信した重機稼働状況信号に基づいて、第1トンネルT1および第2トンネルT2内でそれぞれ稼働している状況を確認する。続いて、第1トンネルT1および第2トンネルT2のそれぞれについて、稼働している重機に応じた現在の作業モードを確認する(S2)。
【0060】
たとえば、ドリルジャンボDJのエンジン、削岩機、削岩ロッドが作動している場合には、削孔作業が行われていると判断する。また、油圧ブレーカOB、ホイールローダWR、およびダンプトラックDTが作動している場合には、ずり出し作業が行われていると判断する。
【0061】
作業モード確認部11は、作業モードを確認したら、確認した作業モードを風量読出部13に出力する。風量読出部13では、第1トンネルT1および第2トンネルT2内のそれぞれにおける現在の作業モードに応じた基準風量を基準風量記憶部12から読み出す(S3)。その後、風量読出部13は、読み出した基準風量を風量調整部15に出力する。
【0062】
続いて、坑内環境確認部14は、坑内環境センサの検出結果に基づいて、第1トンネルT1および第2トンネルT2における坑内環境値を取得する(S4)。具体的に、第1温度センサ2Aから送信される第1トンネルT1内の坑内温度、第1粉塵量センサ3Aから送信される第1トンネルT1内の粉塵量、第1酸素濃度センサ4Aから送信される第1トンネルT1内の酸素濃度を取得する。また、第2温度センサ2Bから送信される第2トンネルT2内の坑内温度、第2粉塵量センサ3Bから送信される第2トンネルT2内の粉塵量、第2酸素濃度センサ4Bから送信される第2トンネルT2内の酸素濃度を取得する。
【0063】
坑内環境確認部14は、坑内環境値を取得したら、第1トンネルT1内における各坑内環境値が、記憶している坑内環境基準値よりも大きいか否かを判断する(S5)。その結果、坑内温度、粉塵量、および酸素濃度の一つ以上が坑内環境基準値を超えていると判断した場合には、第1トンネルT1に供給するエアの風量を増加させる風量信号を送風機制御部16および集塵機制御部17に出力する。
【0064】
送風機制御部16では、出力された風量信号に応じて、第1送風機21から供給されるエアの風量を増加させる(S6)。そのため、送風機制御部16は、増加させるエアの風量に応じて、回転数を増加させる回転数信号を第1送風機21に送信する。また、集塵機制御部17は、増加後の風量に応じて第1集塵機31の運転モードを調整する(S7)。集塵機制御部17では、調整した運転モードに応じた運転モード信号を第1集塵機31に送信する。
【0065】
その後、送風機制御部16では、第1送風機21から供給されるエアの風量の増加に伴い、前方送風機20のエアの風量を増加させる(S8)。そのため、送風機制御部16では、増加させるエアの風量に応じて、回転数を増加させる回転数信号を前方送風機20に送信する。それから、ステップS4に戻り、第1トンネルT1の坑内環境値を取得する。
【0066】
一方、ステップS5において、第1トンネルT1の坑内環境値がいずれも所定の坑内環境基準値以下であると判断した場合には、第1送風機21のエアの風量を維持して(S9)、処理を終了する。このように、地下空間の換気システムMでは、第1トンネルT1坑内の環境に応じて第1送風機21の風量を調整するフィードバック制御を行っている。また、同様の処理を第2トンネルT2に対して行うことにより、第2トンネルT2の坑内環境に応じて第2送風機22の風量を調整するフィードバック制御を行っている。こうして、地下空間の換気システムMでは、第1トンネルT1および第2トンネルT2に対して、各々独立したフィードバック制御を並行して行っている。
【0067】
このように、本実施形態に係る地下空間の換気システムMにおいては、坑内環境センサで計測された坑内環境に基づいて、第1トンネルT1および第2トンネルT2に供給するエアの風量を調整している。このため、坑内環境に変化が生じた場合でも、坑内環境を考慮した風量のエアを第1トンネルT1および第2トンネルT2に供給することができる。したがって、トンネルの施工現場における適切な換気量となるエアを第1トンネルT1および第2トンネルT2供給することができる。
【0068】
また、作業モードを確認する際に、重機作動センサ41〜46から送信される作動状況信号を用いている。ここで、重機作動センサ41〜46は、いずれも第1重機稼働データ収集装置5Aおよび第2重機稼働データ収集装置5Bに対して無線通信可能とされている。このため、電線を用いる必要がないため、重機が作動し、移動した場合でも、電線が絡まったり切断したりすることがない。したがって、作動状況信号を適切に送信することができる。
【0069】
さらに、坑内環境センサで計測された坑内環境値が所定の基準値を超える場合に、第1トンネルT1および第2トンネルT2に供給するエアの風量を増加させるようにしている。このため、坑内環境が所定の基準値を超えて坑内環境が悪化した場合に、風量の調整を行って、悪化した作業環境を改善することができる。したがって、トンネル内で作業を行う作業員に対して、好適な作業環境を提供することができる。
【0070】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、地下空間として複数のトンネルを備える空間を示しているが、たとえば地下空間としては、廃棄物を廃棄する複数の処分坑道が造成された処理施設である態様とすることができる。また、上記実施形態では、トンネルが第1トンネルT1と第2トンネルT2の2本とされているが、トンネルは1本でもよく、逆に3本以上であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…制御装置
2A…第1温度センサ
2B…第2温度センサ
3A…第1粉塵量センサ
3B…第2粉塵量センサ
4A…第1酸素濃度センサ
4B…第2酸素濃度センサ
5A…第1重機稼働データ収集装置
5B…第2重機稼働データ収集装置
6A…作業内容表示機
11…作業モード確認部
12…基準風量記憶部
13…風量読出部
14…坑内環境確認部
15…風量調整部
16…送風機制御部
17…集塵機制御部
20…前方送風機
21…第1送風機
22…第2送風機
31…第1集塵機
32…第2集塵機
41…油圧ショベル作動センサ
42…ドリルジャンボ作動センサ
43…油圧ブレーカ作動センサ
44…ホイールローダ作動センサ
45…ダンプトラック作動センサ
46…コンクリート吹付機作動センサ
BC…延伸ベルトコンベア
CR…クラッシャ
CS…コンクリート吹付機
DJ…ドリルジャンボ
DT…ダンプトラック
M…換気システム
OB…油圧ブレーカ
OS…油圧ショベル
R…事務所
TD…テールピース台車
WR…ホイールローダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを施工する際の地下空間の換気を行う地下空間の換気システムであって、
前記トンネルにエアを供給するエア供給手段と、
前記トンネル内における坑内環境を計測する坑内環境計測手段と、
前記トンネル内における重機の作動状況を確認する重機作動状況確認手段と、
前記エア供給手段の作動制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、重機作動状況確認手段で確認された重機の作動状況に基づいて、前記トンネルにおける作業モードを確認する作業モード確認手段と、
前記作業モード確認手段によって確認された作業モードに応じて、前記エア供給手段より供給するエアの風量を算出する風量算出手段と、
前記坑内環境計測手段で計測された坑内環境に基づいて、前記エア風量算出手段で算出されたエアの風量を調整する風量調整手段と、
前記風量調整手段で調整された風量に応じて、前記エア供給手段を制御する作動制御手段と、
を備えることを特徴とする地下空間における換気システム。
【請求項2】
前記地下空間には、複数の前記トンネルが形成されている請求項1に記載の地下空間における換気システム。
【請求項3】
前記重機の作動状況に関する作動状況信号を無線送信する作動状況信号送信手段が前記重機に設けられ、
前記作動状況信号を受信する作動状況信号受信手段が前記地下空間に設けられており、
前記作動状況信号受信手段は、受信した作動状況信号を前記制御手段に送信する請求項1または請求項2に記載の地下空間における換気システム。
【請求項4】
前記坑内環境計測手段で計測された坑内環境が、所定の基準値を超える場合に、前記風量調整手段による風量の調整を行う請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の地下空間における換気システム。
【請求項5】
換気シミュレーションのシミュレーション結果に基づいて、前記作業モードに応じた前記エアの風量の初期値を記憶しておく請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の地下空間における換気システム。
【請求項6】
前記作業モードは、地山を削孔する際の削孔モード、発破前の爆薬を装填する際の装薬モード、発破作業を行う際の発破モード、発破後のずり出し作業を行う際のずり出しモード、吹付機による吹付作業を行う際の吹付モード、およびロックボルトを打ち込む際のロックボルト打ち込みモードのうちの少なくとも1つを含む請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項に記載の地下空間における換気システム。
【請求項7】
前記坑内環境は、前記トンネルにおける粉塵量、坑内温度、および酸素濃度のうちの少なくとも1つである請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項に記載の地下空間における換気システム。
【請求項8】
前記トンネルが、廃棄物を埋めることで廃棄する処分坑道である請求項1〜請求項7のうちのいずれか1項に記載の地下空間における換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102484(P2012−102484A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250106(P2010−250106)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)