説明

地図注記処理装置および地図注記処理方法

【課題】優先順位の高い地図注記を残しながら、地図注記の重なりを確実に排除することができる地図注記処理装置を提供する。
【解決手段】地図上に表示される地図注記の表示用データと、地図注記の地図上位置を示す情報と、地図注記のそれぞれが予め定められた複数のレイヤのいずれに属するかの情報とを格納する地図注記データ格納手段と、複数のレイヤに付与された優先順位の情報を管理する地図注記レイヤ優先順位管理手段と、対象地域の地図上に表示する地図注記の地図上位置を示す情報を用いて、地図上において重なりが生じるか否かを判別する重なり判別手段とを備える。重なり判別手段で重なりが生じると判別された地図注記が属するレイヤを判定し、レイヤに付与された優先順位の情報に基づいて、優先順位が低いレイヤに属する地図注記を、地図上に表示する地図注記から削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示画面に表示する地図(電子地図)上に表示する文字や数字などからなる地図注記の処理装置および処理方法に関し、特に、地図上で重なって地図注記が表示される場合の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの表示画面に表示される地図(電子地図)は、山や河川などの自然物の名称や、建物、施設などの名称を示す地図注記が、これら地図注記を除く地形図情報(地図情報)に重畳されたものとなっている。地図注記は、表示される量が多すぎても少なすぎても利用者の読図性を低下させるが、特に、表示された地図上において、地図注記の文字が重なってしまうと、その地図は判読しにくいものとなってしまう。すなわち、一般に、縮尺率が小さい対象地図(狭い地域範囲の地図)の場合には、地図注記は重なりが生じることは少ないが、縮尺率が大きい対象地図(広い地域範囲の地図)になると、所定の大きさの対象地図上に表示する地図注記が多くなるために、地図注記の重なりが生じる確率が高くなる。そこで、従来、この地図注記の重なりの問題を改善するための種々の提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1(特開平8−63575号公報)には、地図注記を構成する文字記号データを予め定めた優先順位に従って並べ替えておき、優先順位が高い文字記号データから順に表示位置を決め、既に表示位置が決められた文字記号データと表示上重なりが生じる文字記号データは表示不可能と判断して削除することが開示されている。
【0004】
しかしながら、この特許文献1の場合には、地図表示すべき地域および縮尺が定められたときに、地図上に表示させるべき地図注記の文字記号データを選定し、その選定した地図注記の文字記号データの全てを、予め定められている優先順位に並べ替えを行った後に、並べられた文字記号データの順に地図上に表示させるか否かを決定する処理をする必要がある。すなわち、特許文献1の場合には、地図注記の文字記号データの全てについて、予め優先順位を付与しておく必要があると共に、表示すべき地図に応じて表示すべき地図注記の文字記号データを、その予め定めた優先順位に従って並べ替えを行う必要があり、処理が複雑となる。
【0005】
また、特許文献2(特開2005−227340号公報)には、上記の特許文献1のような問題点を生じない注記情報表示装置が開示されている。すなわち、この特許文献2の[0151]〜[0155]段落には、単一のレイヤとした場合には、地図注記を重ならないように地図上に表示できない場合に、地図注記を複数のレイヤに分散させるようにし、それら複数のレイヤに優先順位を付与し、表示地図上において注記名称表示が占める面積が、許容限度以下となるレイヤまでを注記表示に用いることで、地図注記の重なりを防止することが開示されている。
【0006】
つまり、この特許文献2では、表示地図上において注記名称表示が占める面積が、許容限度以下とすることにより、地図注記の重なりを生じないようにしている。したがって、特許文献2によれば、予め、地図注記のそれぞれを複数のレイヤに分散させておくと共に、その複数のレイヤに優先順位を付与しておく必要はあるが、地図を表示する際に、その地図に応じて表示すべき地図注記の文字記号データを、その予め定められている優先順位に並べ替えを行う必要がなく、特許文献1に比較して処理が簡単となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−63575号公報
【特許文献2】特開2005−227340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2では、表示地図上において注記名称表示が占める面積が、許容限度以下となるレイヤまでを注記表示に用いるようにするために、注記名称表示が占める面積が許容限度を越えてしまう優先順位の低いレイヤに属する地図注記の全てが、地図上に重畳表示されなくなってしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献2では、地図上において地図注記の重なりが生じるかどうかに関係なく、注記名称表示が占める面積が許容限度を越えないレイヤまでに属する地図注記を地図上に表示するために、実際には、表示地図上において、地図注記の重なりが生じてしまうおそれもあるという問題がある。
【0010】
この発明は以上の点にかんがみ、特許文献1および特許文献2の問題点を排除し、かつ、表示地図上において、優先順位の高い地図注記を残しながら、地図注記の重なりを確実に排除することができる地図注記処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
地図上に表示される地図注記の表示用データと、前記地図注記の地図上位置を示す情報と、前記地図注記のそれぞれが予め定められた複数のレイヤのいずれに属するかの情報と、を含む地図注記データを格納する地図注記データ格納手段と、
前記複数のレイヤに付与された優先順位の情報を管理する地図注記レイヤ優先順位管理手段と、
ユーザの要求に応じて提供しようとする対象地域の地図上に表示する前記地図注記の地図上位置を示す情報を前記地図注記データ格納部から読み出して、前記地図上に表示したときに重なりが生じるか否かを判別する重なり判別手段と、
前記重なり判別手段で前記重なりが生じると判別された前記地図注記が属する前記レイヤを判定し、前記地図注記レイヤ優先順位管理手段で管理されている前記レイヤに付与された優先順位の情報に基づいて、前記優先順位が低いレイヤに属する地図注記を、前記地図上に表示する地図注記から削除するように処理する地図注記重なり排除処理手段と、
を備えることを特徴とする地図注記処理装置を提供する。
【0012】
この請求項1の発明においては、重なり判別手段は、地図注記データ格納手段に格納されている地図注記の地図上位置を示す情報を用いて、提供しようとする対象地域の地図上に表示したときに重なりが生じる地図注記を検出する。
【0013】
地図注記重なり排除処理手段は、地図注記データ格納手段に格納されている情報に基づいて、重なり判別手段で検出された重なりが生じるとされた地図注記のそれぞれが属するレイヤを判定する。
【0014】
そして、地図注記重なり排除処理手段は、地図注記レイヤ優先順位管理手段で管理されているレイヤの優先順位の情報に基づいて、重なりが生じるとされた地図注記の、判定したレイヤの優先順位を識別し、優先順位が高い地図注記は残して、優先順位が低い地図注記は、対象地図上に表示する地図注記から削除する。
【0015】
これにより、請求項1の発明によれば、対象地図上において、重なりが生じる地図注記については、それぞれの地図注記が属するレイヤの優先順位が高いもののみが残るように削除処理されて、対象地域の地図上においては、地図注記は、常に重なりが生じないように表示される。この場合に、請求項1の発明においては、地図注記の重なりのみが排除されるだけで、複数のレイヤに属する地図注記の全てが対象地域の地図上に表示される。したがって、優先順位の低いレイヤに属する地図注記が対象地域の地図上に表示されなくなってしまうという問題は生じない。
【0016】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の地図注記処理装置において、
前記地図注記レイヤ優先順位管理手段は、
前記複数のレイヤに付与された優先順位の情報として、地図の前記対象地域、地図を使用する時、地図の使用用途のうちの少なくとも一つに応じて設定された複数通りの優先順位の情報を備えて管理していると共に、
前記ユーザにより指定された、提供しようとする地図の前記対象地域、提供しようとする時間、地図の使用用途、のうちの少なくとも一つに応じて、前記複数通りの優先順位の情報から、前記重なり排除処理に用いる優先順位の情報を選定する
ことを特徴とする。
【0017】
この請求項2の発明によれば、地図注記の複数のレイヤの優先順位は、固定されているのではなく、ユーザにより指定された、提供しようとする地図の対象地域、地図を使用する時間、地図の使用用途、のうちの少なくとも一つに応じて設定される。
【0018】
したがって、請求項2の発明によれば、提供しようとする地図の対象地域が商業地、観光地、工業地域などの地域性に応じて地図注記の複数のレイヤの優先順位を設定することが可能である。また、地図を使用する時間、例えば季節(春、夏、秋、冬)や朝、昼、夜などに応じて地図注記の複数のレイヤの優先順位を設定することが可能である。更に、ユーザにより指定された地図の使用用途、例えばショッピング、観光、などに応じて地図注記の複数のレイヤの優先順位を設定することが可能である。つまり、請求項2の発明によれば、ユーザの、いわゆるTPOに応じて、地図注記の複数のレイヤをダイナミックに設定して、その優先順位を設定することができるので、ユーザにとって重要な地図注記が必ず地図上に残って表示されるようになる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、地図注記の重なりのみを排除するようにするので、重なりを生じていない他の地図注記は、全てが対象地域の地図上に表示される。したがって、優先順位の低いレイヤに属する地図注記の全てが対象地域の地図上に表示されなくなってしまうという問題は生じない。また、予め地図注記の文字列のそれぞれに予め優先順位を設定する必要がないと共に、その優先順位に従って、対象地域の地図に表示する地図注記を並べ替える必要も無く,地図注記の重なり除去を簡単、かつ、確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明による地図注記処理装置の一実施形態である地図注記処理システムの構成例を説明するための図である。
【図2】この発明の実施形態において、地図注記の重なりを検出する処理を説明するために用いる図である。
【図3】図1の実施形態の地図注記処理システムにおける地図情報提供サーバのハードウエア構成例を示すブロック図である。
【図4】図1の実施形態の地図注記処理システムにおいて重なり排除処理に使用する地図注記優先順位テーブルの一例を示す図である。
【図5】図1の実施形態の地図注記処理システムにおいて重なり排除処理に使用する地図注記優先順位テーブルの他の一例を示す図である。
【図6】図1の実施形態の地図注記処理システムにおいて重なり排除処理に使用する地図注記優先順位テーブルの他の一例を示す図である。
【図7】図1の実施形態の地図注記処理システムにおいて重なり排除処理に使用する地図注記優先順位テーブルの他の一例を示す図である。
【図8】図1の実施形態の地図注記処理システムにおいて、重要施設の設定をするため用いる一覧情報の例を示す図である。
【図9】図1の実施形態の地図注記処理システムにおいて、重要施設の設定をするため用いる一覧情報の例を示す図である。
【図10】図1の実施形態の地図注記処理システムにおいて、重要施設の設定をするため用いる一覧情報の例を示す図である。
【図11】図1の実施形態の地図注記処理システムにおける地図情報提供サーバの処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図12】図1の実施形態の地図注記処理システムにおける地図情報提供サーバの処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図13】図1の実施形態の地図注記処理システムにおける地図情報提供サーバの処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図14】図1の実施形態の地図注記処理システムにおける地図情報提供サーバの処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図15】図1の実施形態の地図注記処理システムにおける地図情報提供サーバの処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図16】図1の実施形態の地図注記処理システムにおける地図情報提供サーバの他のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【図17】図16の他の例の説明のために用いる図である。
【図18】図16の他の例の説明のために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による地図注記処理装置の第1の実施形態の全体の構成例を示す図である。この実施形態は、地図注記処理装置が、インターネットなどの通信ネットワークを通じて、サーバとクライアント端末とが接続されるシステムの構成とされる場合である。
【0022】
図1に示すように、この実施形態の地図注記処理装置としてのシステムにおいては、地図サイト(Webサイト)の地図情報提供サーバ1と、クライアント装置の例としてのパソコン2や携帯電話端末3などが通信ネットワーク(インターネットを含む)4を通じて接続されて構成されている。
【0023】
地図情報提供サーバ1は、この例では、地図データ格納部11と、地図注記データ格納部12とを備える。地図データ格納部11は、この例では日本全国の地図データを格納する。この場合、地図データは、地図注記を除いた地形図、すなわち、土地の起伏・形態・水系、道路、鉄道、施設など、地表に分布する地物の配置などを描画するためのデータであって、それぞれの形状を描画する位置の情報である緯度・経度の情報に対応付けられて、地図データ格納部11に格納されている。
【0024】
また、地図注記データ格納部12は、施設や場所等の地図上の対象物に関する地図注記を、地図上に表示するための地図注記データを格納する。地図注記は、施設や場所等の地図上の対象物に関する情報を文字や記号、数字などによって表わすものである。例えば、地図注記は、行政区画、道路、鉄道、建物、公園、山、河川などの対象物の名称を文字によって表わし、また、標高等を数字によって表わすものも含む。また、地図注記は、対象物の名称を特定のアイコンに表示したり、特定のマークで表わしたりする場合も含む。
【0025】
地図注記データは、上述のような地図上の対象物のそれぞれに関する地図注記を構成する文字(数字を含む)や記号を表示するための表示用データと、それぞれの地図注記の地図上の表示位置を特定するための緯度・経度のデータとからなる。
【0026】
この実施形態では、地図注記は、施設や場所の属性などに応じて複数のレイヤに分けられて管理されている。すなわち、後述もするが、地図注記は、この例では、「文化施設名称」、「自然緑地名称」、「山名称」、「水域名称」、「官公庁名称」、「商業施設名称」、「宗教施設名称」などのように、施設や場所の属性などに応じたグループをレイヤとして、複数のレイヤに分けられて管理されている。地図注記データ格納部12には、各地図注記データとしては、前述した文字や記号、数字からなる地図注記の表示情報と、緯度・経度からなる当該地図注記の表示位置情報とに加えて、いずれのレイヤに属するかを識別するためのレイヤ情報も、対応付けられて記憶されている。
【0027】
パソコン2は、クライアント装置の一例を構成するもので、パソコン本体21と、表示装置22と、操作入力手段としてのマウス23と、キーボード24と、を備える。携帯電話端末3も、クライアント装置の一例を構成するもので、この例では、いわゆるスマートフォンと呼ばれる端末の例であり、例えばLCD(Liquid Crystal Display)からなる表示画面31には、操作入力手段としてのタッチパネル32が貼り付けられて設けられている。
【0028】
パソコン2や携帯電話端末3などのクライアント装置は、地図情報提供サーバ1にネットワーク4を通じてアクセスして地図情報サービスの要求をすることにより、当該地図情報サービスの提供を支援する支援プログラムを受信して、この支援プログラムの支援の下、地図情報サービスの提供を受けるができるように構成されている。すなわち、先ず、パソコン2や携帯電話端末3などのクライアント装置は、前記支援プログラムの支援の下、地図情報提供サーバ1に、提供を受けたい地域や縮尺の指定を含む地図情報要求を送る。
【0029】
地図情報提供サーバ1は、この地図情報要求を受け取ると、指定された地域および縮尺から提供する対象地図(地図範囲)を認識し、その対象地図の地図データを、地図情報データベースから読み出してクライアント装置に提供すると共に、対象地図上に表示すべき地図注記の地図注記データを、地図注記データ格納部12から読み出して、クライアント装置に提供する。この場合に、地図情報提供サーバ1は、クライアント装置に提供する地図注記データについては、指定された地域および縮尺の対象地図上において、地図注記が重ならないようにする重なり排除処理を後述するように実行する。
【0030】
パソコン2や携帯電話端末3などのクライアント装置は、前記支援プログラムにより、地図情報提供サーバ1から、対象地図の地図データおよび重なり排除処理がなされた注記データを取得し、地図データに基づく地形の状態を示す地図上に、注記データによる地図注記を合成した対象地図の画像情報を生成する。そして、パソコン2や携帯電話端末3などのクライアント装置は、その合成の結果としの対象地図の画像情報により、ユーザにより要求された対象地図を、表示画面に表示する。
【0031】
[地図情報提供サーバ1における地図注記重なり排除処理の概要]
この実施形態の地図情報提供サーバ1における地図注記の重なり排除処理の概要を説明する。
【0032】
この実施形態の地図情報提供サーバ1では、先ず、クライアント装置からの地図要求された対象地域の、提供しようとする地図範囲の地図上に表示される全ての地図注記の地図注記データを地図注記データ格納部12から読み出してバッファメモリに格納する。そして、地図情報提供サーバ1では、バッファメモリに格納した地図注記データに含まれる当該地図注記の表示位置情報(緯度・経度)を用いて、提供しようとする地図範囲の地図上に表示される全ての地図注記について、重なりが生じるか否かの判別を行う。
【0033】
図2は、この地図注記の重なりの判別方法を説明するための図である。この図2の例においては、横軸方向を経度、縦軸方向を緯度として、提供しようとする地図範囲の地図の表示領域13を矩形枠で示している。地図情報提供サーバ1では、それぞれの地図注記の地図注記データに含まれる表示位置情報(緯度・経度など)から、対象地図の表示領域13上における、それぞれの地図注記の文字列の表示枠(矩形枠)の位置を算出する。図2の例では、地図注記「A」の表示枠14aと、地図注記「B」の表示枠14bの位置を示している。
【0034】
なお、地図注記データに含まれる表示位置情報としては、地図注記の文字列の矩形の表示枠を特定するためには、前記矩形枠の対角の2点(例えば左上隅と右下隅)の位置情報(緯度、経度)からなるもので良い。前記表示位置情報としては、これに限らず、1点(例えば左上隅)の位置情報と、地図注記を表示する矩形枠の幅と長さの情報から構成しても良い。
【0035】
次に、地図情報提供サーバ1は、位置を算出した各地図注記の表示枠について、他の地図注記の表示枠と重なりが生じていないか判別する。この場合、表示枠が矩形枠であるので、その4隅の頂点の緯度・経度を認識し、その4隅の頂点位置のいずれかが他の地図注記の表示枠の領域範囲(4隅の頂点で定まる領域)内にある場合には、地図注記の表示枠の重なりがあるとして検出する。
【0036】
すなわち、例えば、図2の例の地図注記「A」と、地図注記「B」とでは、地図注記「A」の表示枠14aの左下隅の頂点Paが、地図注記「B」の表示枠14b内にあることを検出することにより、地図注記「A」と地図注記「B」とが重なりを生じていることが検出される。あるいは、地図注記「B」の表示枠14bの右上隅の頂点Pbが、地図注記「A」の表示枠14a内にあることを検出することによっても、地図注記「A」と地図注記「B」とが重なりを生じていることが検出される。なお、地図注記「A」と地図注記「B」とが重なっているかどうかを検出は、いずれか一方の地図注記についての検出処理により重なりが検出されると、他方の地図注記についての上記の検出処理は不要である。
【0037】
なお、地図注記「A」と地図注記「B」との間で重なりが生じているかどうかを検出するためには、地図注記「A」または地図注記「B」の一方について重なり検出処理を行えば良いが、地図注記「A」と地図注記「B」との両者がどのような重なり関係になっているかを検出するためには、地図注記「A」と地図注記「B」との両者についての検出処理が必要になる。すなわち、例えば、図2の例の場合には、上記の地図注記「A」と地図注記「B」とのそれぞれについての重なり検出処理の結果から、地図注記「A」の右斜め下に地図注記「B」が重なっているという、地図注記「A」と地図注記「B」との重なり関係も検出される。
【0038】
次に、地図情報提供サーバ1では、地図注記「A」と地図注記「B」との重なりを検出したときには、その地図注記の重なり排除処理をする。この重なり排除処理のために、この実施形態では、地図情報提供サーバ1では、地図注記の複数のレイヤについて、地図注記の重要度に対応する優先順位を付与した情報を用いる。この地図注記の重要度に対応する優先順位を付与した情報として、この実施形態では、地図注記優先順位テーブルを用いる。このため、この実施形態では、地図情報提供サーバ1は、予め作成された地図注記優先順位テーブルを備えている。
【0039】
地図注記優先順位テーブルは、後述する図4〜図7に示すように、重要であるため地図上に残すようにする優先順位を、地図注記の複数のレイヤについて設定したものである。そして、この実施形態においては、地図注記の複数のレイヤについて複数個のグループに分け、そのグループ毎に優先順位を付与する。以下の説明では、このグループを順位グループ(図では、順位Gと記載)と称し、図4〜図7においては、グループ番号を付して示している。そして、この実施形態では、グループ番号「1」が最も優先順位が高く、グループ番号が大きくなるにしたがって、優先順位が順次に低くなるように設定されている。そして、同じ順位グループ内の複数のレイヤは、図4〜図7において、上に記載されているレイヤほど、優先順位が高いものとして設定している。
【0040】
次に、この実施形態では、地図情報提供サーバ1は、地図注記の重なり排除処理について、ユーザにより、「お任せモード」と「TPO設定モード」とが選択可能とされている。「お任せモード」は、予め、用意されている標準の地図注記優先順位テーブル(以下、標準テーブルという)を、重なり排除処理用として用いるモードである。一方、「TPO設定モード」は、ユーザにより指定された、「時(Time)」、「場所(Place)」、「場合(Occasion)」の情報を判定し、その判定したTPOに応じて、予め用意されている複数のTPO対応地図注記優先順位テーブルから選択した一のTPO対応地図注記優先順位テーブル(以下、選択設定テーブルという)を、重なり排除処理用として用いるモードである。
【0041】
ここで、「時(Time)」は、地図を使用する時であり、通常は、ユーザにより地図が要求された時点が判定される。また、「場所(Place)」は、ユーザにより要求された地図の対象地域により判定されて特定される。したがって、「時(Time)」および「場所(Place)」は、ユーザが対象地域を選定して地図要求をしたときに、地図情報提供サーバ1において判定することができる。
【0042】
なお、地図が取得要求された対象地域が、現在地の周辺の地域であるときには、地図情報提供サーバ1は、クライアント装置から送られてくる現在地情報により、P(場所)を特定する。後者の場合、クライアント装置が、特定の場所に固定的に設置されているパーソナルコンピュータであり、設置場所が入力されているときには、その入力されている設置場所の情報が、現在地情報としてクライアント装置から地図情報提供サーバ1に送られる。また、クライアント装置が携帯電話端末などの携帯機器であるときには、例えばGPS機能が用いられて検出された現在位置の情報が、現在地情報としてクライアント装置から地図情報提供サーバ1に送られる。
【0043】
一方、「場合(Occasion)」は、地図の使用用途(使用目的)であり、後述するように、ユーザが対象地域を選定して地図要求をしたときとは別のタイミング時点で、ユーザにより選択指定される。
【0044】
なお、ユーザが、地図を使用する時を、別途、例えば、午前、午後、朝、昼、夕などの特定の時間帯などにより指定するようにしても良い。その場合にも、ユーザが対象地域を選定して地図要求をしたときとは別のタイミング時点で、ユーザにより選択指定される。
【0045】
なお、「お任せモード」と「TPO設定モード」、および標準テーブル、選択設定テーブルについては、後で詳述する。
【0046】
地図情報提供サーバ1は、地図注記の重なりが検出されたときには、先ず、その重なり合っている地図注記のそれぞれが属するレイヤを、地図注記データ格納部12に格納されている情報に基づいて判定する。次に、地図情報提供サーバ1は、その判別したレイヤの優先順位を、重なり排除処理に用いるとされた地図注記優先順位テーブル(標準テーブルまたは選択設定テーブル)を参照して判定する。そして、地図情報提供サーバ1は、その判定結果に基づいて、重なり合っている地図注記のうち、優先順位の高い地図注記は残し、優先順位の低い地図注記は、対象地図上に表示する地図注記から削除するようにして地図注記の重なりを排除する。
【0047】
さらに、この実施形態の地図情報提供サーバ1は、重なりを生じた地図注記が同じレイヤに属しているために、地図注記優先順位テーブルの情報を用いただけでは重なり排除ができない場合を考慮して、以下のようにして、地図注記優先順位テーブルを用いずに重なりを排除することができる手法を備えている。
【0048】
その一つは、ユーザが、予め重要であるとして残したい施設の登録を、地図情報提供サーバ1に対して行っておき、重なりを生じた地図注記のうち、登録された重要施設は、残して、他を削除することにより重なり排除処理をする方法である。
【0049】
他の一つは、重なりを生じている地図注記「A」と地図注記「B」との重なり関係に基づき、重なり排除処理をする方法である。この実施形態では、地図注記「A」と地図注記「B」との重なり位置関係において左方にあるものを優先(左優先)して、また、上方にあるものを優先(上優先)して、地図上に残し、他を削除することにより重なり排除処理を行う。
【0050】
なお、この実施形態では、前述の登録された重要施設を参照しても、重なりを排除できない場合にも、重なりを生じている地図注記「A」と地図注記「B」との重なり関係に基づき、重なり排除処理を行う。
【0051】
[地図情報提供サーバ1のハードウエア構成例]
図3は、地図情報提供サーバ1のハードウエア構成例を示すブロック図である。この例の地図情報提供サーバ1は、コンピュータ装置からなる構成を備える。すなわち、図3に示すように、この例の地図情報提供サーバ1においては、システムバス100に対してCPU(Central Processing Unit)101と、プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)102と、ワークエリアとして働くRAM(Random Access Memory)103と、前述した地図データ格納部11と、前述した地図注記データ格納部12とが接続されている。
【0052】
また、この例では、システムバス100には、さらに、通信インターフェース104、受信信号処理部105、送信信号生成部106、POI(Point of Interest)データベース107、重要施設設定保持部108、地図注記優先順位テーブル格納部109、重なり排除処理用テーブル設定部110、地図注記重なり排除処理部111、提供地図注記生成部112、が接続されている。
【0053】
CPU101は、この地図情報提供サーバ1の全体の動作を制御するものである。ROM102には、地図情報提供サーバ1における各種制御処理を実行するためのプログラムが記憶されている。CPU101は、RAM103をワークエリア用のメモリとして用いて、このROM102のプログラムにしたがった制御処理を実行する。
【0054】
通信インターフェース104は、通信ネットワーク4を通じてクライアント装置と通信するためのインターフェースである。受信信号処理部105は、CPU101の制御の下、通信インターフェース104を通じて受信した受信信号を解析し、その解析結果を、システムバス100を通じてCPU101に供給したり、重なり排除処理用テーブル設定部110や地図注記重なり排除処理部111に供給したりする機能処理部である。送信信号生成部106は、CPU101の制御の下、通信インターフェース104を通じてクライアント装置に送信する送信信号を生成する機能処理部である。
【0055】
POIデータベース107は、日本全国の地図上に表示される拠点(POI(Point of Interest))のそれぞれの詳細情報からなるPOIテーブルの情報を格納している。ここで、拠点(POI)とは、点的に住所が定められる例えば飲食店やデパートなどの店舗やゴルフ場などの施設、また、代表点が定められている山や公園、海水浴場、滝などの自然物をも含む。また、拠点(POI)は、地図上で点として表示可能なものにかぎらず、公園やゴルフ場など、ポリゴン(多角形)等で定義されたものも含むものである。
【0056】
POIデータベース107に記憶されるPOIテーブルには、各拠点の地図上の位置情報(緯度・経度)と、その拠点についての名前、住所、ジャンル、メッシュコード、紹介文などが対応付けられて記録される。POIデータベース107の各拠点の情報は、その位置情報(緯度・経度)をリンク情報として、地図注記のそれぞれと対応付けられている。
【0057】
重要施設設定保持部108は、ユーザが「TPO設定モード」を選択したときに、POIデータベース107に記憶されている拠点のジャンルの一覧を、前述した重要施設を選択して登録するための情報として、ユーザに提供する機能を備えている。そして、重要施設設定保持部108は、ユーザが、前記拠点のジャンルの一覧から選択設定した重要施設の登録情報を受け付けて、その登録情報を保持するようにされている。
【0058】
地図注記優先順位テーブル格納部109は、前述した標準の地図注記優先順位テーブルと、複数のTPO対応地図注記優先順位テーブルを格納する。前述したように、複数のTPO対応地図注記優先順位テーブルのそれぞれに対しては、対応するTPOの情報が、1対1に対応付けられて、地図注記優先順位テーブル格納部108に格納されている。
【0059】
重なり排除処理用テーブル設定部110は、地図の要求者により、地図注記重なり排除処理について「お任せモード」が選択されたときには、地図注記優先順位テーブル格納部108から、標準の地図注記優先順位テーブルを取得して、地図注記重なり排除処理用として設定する。
【0060】
また、重なり排除処理用テーブル設定部110は、地図の要求者により、地図注記重なり排除処理について「TPO設定モード」が選択されたときに、上述したように、ユーザにより指定されたTPOの情報の取得を行い、地図注記優先順位テーブル格納部109に格納されている複数のTPO対応地図注記優先順位テーブルから、取得したTPOに対応付けられた一のTPO対応地図注記優先順位テーブルを選択設定テーブルとして取得して、地図注記重なり排除処理用として設定する。なお、重なり排除処理用テーブル設定部110は、TPOのうちのO(場合)について、使用用途の一覧メニューをユーザに送ると共に、ユーザにより選択指定された地図の用途(場合)の情報を取得する機能も備える。
【0061】
地図注記重なり排除処理部111は、指定された対象地域および指定された縮尺の提供地図上に表示する地図注記について、重なりが生じるか否かの検出処理を実行すると共に、重なりを検出したときには、重なり排除処理用テーブル設定部110に設定された重なり排除用テーブルを参照して、重なりが生じている地図注記のレイヤについての優先順位に従って重なりを排除する処理を実行する。
【0062】
また、地図注記重なり排除処理部111は、重なり排除用テーブルを用いては、重なりが生じている地図注記についての重なり排除処理ができないときには、重要施設設定保持部108に保持されているユーザにより設定された重要施設を参照して、地図注記の重なりを排除する。
【0063】
更に、地図注記重なり排除処理部111は、重要施設設定保持部108に、ユーザにより重要施設が設定されていないとき、あるいは、設定された重要施設の情報では、重なり排除処理が実行できないときには、重なっている地図注記の重なり位置関係を判定し、前述したように、左優先および上優先の条件で、重なり排除処理を実行する。
【0064】
提供地図注記生成部112は、地図注記重なり排除処理部111における重なり排除処理が完了した地図注記の情報を、クライアント装置に提供する地図注記の情報として生成する。そして、この提供地図注記生成部112で生成された地図注記情報が、送信信号生成部106に供給される。送信信号生成部106には、また、ユーザにより要求された対象地域の地図情報が地図データベース11から取得されて供給される。そして、CPU101は、送信信号生成部106から、地図情報と地図注記の情報とを、通信インターフェース104を通じて、クライアント装置に送信する。
【0065】
なお、図3の地図情報提供サーバ1の構成において、受信信号処理部105、送信信号生成部106、重要施設設定保持部108、重なり排除処理用テーブル設定部110、地図注記重なり排除処理部111、提供地図注記生成部112のそれぞれの処理機能は、CPU101が、ROM102に格納されているソフトウエアプログラムにしたがって実行するソフトウエア機能として構成することができるものであるが、便宜上、機能ブロックとして記載したものである。
【0066】
<地図注記優先順位テーブルの例および設定について>
前述したように、この実施形態では、地図情報提供サーバ1は、地図注記重なり排除のために用いる重なり排除用テーブルを、2種類用意しており、その一つは、汎用の標準テーブルであり、他の一つは、地図を要求してきたユーザのTPOに応じて選択して設定する選択設定テーブルである。
【0067】
標準テーブルは、地図注記の重なり排除処理について、地図の要求者(ユーザ)により「お任せモード」(自動モード)が選択されたときに用いられるもので、地図情報提供サーバ1の運営者により、予め設定されて、地図注記優先順位テーブル格納部109に格納されて用意されている。図4に、汎用の標準の地図注記優先順位テーブルの例を示す。この図4の標準テーブルは、大多数の地図要求者が重要と想定されるレイヤほど、優先順位が高くなるように、順位グループおよび当該順位グループ内のレイヤ順位が予め設定されたものである。
【0068】
一方、選択設定テーブルは、地図注記の重なり排除処理について、地図の要求者(ユーザ)により「TPO設定モード」(手動選択モード)が選択されたときに用いられるものである。地図注記優先順位テーブル格納部109には、予め、想定された種々のTPOのそれぞれに応じた複数個のTPO対応地図注記優先順位テーブルが生成されて格納されている。このTPO対応地図注記優先順位テーブルは、対応するTPOに応じて重要と想定されるレイヤほど、優先順位が高くなるように、順位グループおよび当該順位グループ内のレイヤ順位が予め設定されたものである。
【0069】
選択設定テーブルとなる候補の複数個のTPO対応地図注記優先順位テーブルは、例えば次のようにして設定される。例えば、使用用途(O(場合))としては、観光、レジャー、ショッピング、などが想定される。次に、場所(P)のエリアとして、例えば北海道、東北、関東、中部、近畿・・・、あるいは、都道府県などを想定する。さらに、時(T)として、例えば春夏秋冬、あるいは、朝昼夕を想定する。
【0070】
そして、それらのTPOの組み合わせに応じて最適と想定されるTPO対応地図注記優先順位テーブルを作成し、それらを地図注記優先順位テーブル格納部109に、TPOの組み合わせと対応付けて格納しておく。なお、この場合に、TPOの組み合わせとしては、T,P,Oの3つの組み合わせとする必要はなく、使用用途(O)のみ、場所(P)のみ、時(T)のみ、使用用途(O)と時(T)の組み合わせ、使用用途(O)と場所(P)の組み合わせ、時(T)と場所(P)の組み合わせ、であってもよい。
【0071】
例えば図5のTPO対応地図注記優先順位テーブルは、使用用途(O)が「観光」の場合であって、場所(P)が例えば「京都」または「奈良」と指定されたものであり、「お寺重視」として、優先順位が最上位の順位グループ1の、一番優先順位が高いレイヤとして、注記種類の「宗教施設名称」が割り当てられたものである。
【0072】
また、図6のTPO対応地図注記優先順位テーブルは、使用用途(O)が同じ「観光」の場合であっても、場所(P)が例えば「屋久島」と指定されたものであるため、「山や滝重視」として、注記種類の「山名称」や「水域名称」を最上位の順位グループとされたものである。
【0073】
また、図7のTPO対応地図注記優先順位テーブルは、使用用途(O)が「ショッピング」の場合であって、指定された時(T)が昼であるため、最上位の優先順位の順位グループ1の最上位に、注記種類の「商業施設名称」が設定され、2番目に、昼食のための「飲食店名称」が設定されたものである。
【0074】
以上のようにして生成されたTPO対応地図注記優先順位テーブルのそれぞれは、前述したように、指定されたTPOの情報と1対1に対応付けられて、地図注記優先順位テーブル格納部109に格納されている。
【0075】
そして、前述したように、地図情報提供サーバ1は、ユーザにより「TPO設定モード」が選択されたときには、ユーザにより指定されたTPOを判別する。そして、地図情報提供サーバ1は、地図注記優先順位テーブル格納部109の複数個のTPO対応地図注記優先順位テーブルの中から、ユーザにより指定されたTPOに応じた選択設定テーブルを選定して、重なり排除処理用テーブル設定部110に格納して選択設定する。
【0076】
この場合に、前述したように、場所(P)と時(T)とは、ユーザが対象地域を選定して地図情報提供サーバ1に地図要求をしたときに、地図情報提供サーバ1において判定することができる。しかし、使用用途(O)を特定するための情報は、クライアント装置からの地図要求時の情報には含まれないので、この実施形態においては、地図情報提供サーバ1から問い合わせて特定するようにする。すなわち、先ず、地図情報提供サーバ1は、地図を要求してきたユーザに提供地図の使用用途を選択または指定させるための使用用途メニューの一覧を、クライアント装置に送る。すると、ユーザは、クライアント装置において、その用途一覧メニューから、地図の使用用途を選択指定して、地図情報提供サーバ1に送信する。地図情報提供サーバ1は、この選択指定された地図の使用用途の情報を受信して、使用用途(O)を特定する。
【0077】
以上のようにして、地図情報提供サーバ1の重なり排除処理用テーブル設定部110は、地図注記優先順位テーブル格納部109に格納されている複数個のTPO対応地図注記優先順位テーブルの中から、クライアント装置から取得して特定したTPOに応じた地図注記優先順位テーブルを、選択設定テーブルとして選択して、地図注記重なり排除処理に用いるようにする。
【0078】
したがって、ユーザにより、使用用途が「観光」で、地図の対象地域が「京都または奈良」と指定された場合には、図5に示したTPO対応地図注記優先順位テーブルが、選択設定テーブルとして、重なり排除処理用テーブル格納部110に格納されて設定される。また、ユーザにより、使用用途が「観光」で、地図の対象地域が「屋久島」と指定された場合には、図6に示したTPO対応地図注記優先順位テーブルが、選択設定テーブルとして、重なり排除処理用テーブル格納部110に格納されて設定される。
【0079】
更に、ユーザにより、使用用途が「ショッピング」で、地図要求された時が「昼に近いとき」とされた場合には、図7に示したTPO対応地図注記優先順位テーブルが、選択設定テーブルとして、重なり排除処理用テーブル格納部110に格納されて設定される。
【0080】
なお、上述の説明では、使用用途が「観光」の場合における下位の使用用途「お寺重視」や「山や滝重視」などは、場所(P)から推定するようにしたが、使用用途のメニューに、これらの「お寺重視」や「山や滝重視」などを、下位の選択項目として表示して、ユーザにより使用用途(O)の選択項目として指定を受け付けることができるようにしても、勿論良い。
【0081】
<重要施設の例およびその設定について>
ユーザが「TPO設定モード」を選択したときに、重要施設設定保持部108がクライアント装置のユーザに提示する拠点(POI)についての一覧の例を、図8に示す。この拠点(POI)についての一覧は、図9および図10に示すように、階層構造を有しており、それぞれのジャンルの下位に、複数個の施設の種別や名称が紐付けられている。図9の例は、ユーザが「お買い物」のジャンルを選択して、その下位の施設種別や名称を表示させ、その中から、レ点マークで示すように、「デパート」を重要施設として選択設定した状態を示している。また、図10の例は、ユーザが「レジャー・観光」のジャンルを選択して、その下位の施設種別や名称を表示させ、その中から、レ点マークで示すように、「観光スポット」および「名滝100選」を、を重要施設として選択設定した状態を示している。
【0082】
ユーザがこのように重要施設を選択設定すると、その選択設定された重要施設の選択設定情報は、地図情報提供サーバ1に送られ、前述したように、重要施設設定保持部108が、重要施設の設定情報として保持する。そして、地図情報提供サーバ1は、この重要施設の設定情報を地図注記の重なり排除処理に用いるようにする。
【0083】
すなわち、地図情報提供サーバ1の地図注記重なり排除処理部111は、重なりが生じている地図注記の位置情報(緯度、経度)を検知し、その位置情報におけるPOIを、POIデータベース107から検索する。そして、地図情報提供サーバ1の地図注記重なり排除処理部111は、その検索の結果得られた施設が、重要施設設定保持部108に設定されている施設かどうかを判定する。そして、重なりが生じている地図注記の一方が重要施設であり、他方が重要施設ではないと判別したときには、地図注記重なり排除処理部111は、重要施設の地図注記を残して、他の地図注記を、表示する地図注記から削除するようにする。
【0084】
[地図情報提供サーバ1における地図注記の提供処理動作]
次に、図11〜図15のフローチャートを参照しながら、地図情報提供サーバ1において、クライアント装置から地図要求されたときに、その要求に応じて提供しようとする対象地域の地図の地図データを生成すると共に、その対象地域の地図に表示する地図注記のデータを生成してクライアント装置に送る処理動作について以下に説明する。
【0085】
この図11〜図15は、主として、クライアント装置からの要求に応じて提供しようとする対象地域の地図に表示する地図注記のデータを生成する処理を説明しているが、対象地域の地図のデータを生成する処理は、地図情報提供サーバ1において、この地図注記の提供処理動作と並行してなされるものである。なお、対象地域の地図のデータを生成する処理は、この地図注記の提供処理動作とは、別個になされるようにしても良い。
【0086】
なお、以下に説明する図11〜図15のフローチャートの各ステップの処理は、地図情報提供サーバ1のCPU101が、ROM102に格納されている処理プログラムにしたがって、RAM103をワークエリアとして利用しながら、実行するものである。そして、以下の説明においては、CPU101が、受信信号処理部105、送信信号生成部106、重要施設設定保持部108、重なり排除処理用テーブル設定部110、地図注記重なり排除処理部111、提供地図注記生成部112のそれぞれの処理機能を、ROM102に格納されているソフトウエアプログラムにしたがって実行するソフトウエア機能として構成した場合としている。
【0087】
先ず、CPU101は、通信ネットワーク4を通じてパソコン2や携帯電話端末3などのクライアント装置からの地図情報の要求アクセスを受信したか否か判別する(ステップS101)。このステップS101で、地図情報の要求アクセスを受信してはいないと判別したときには、CPU101は、他の処理を実行し、当該他の処理を終了した後、ステップS101に処理を戻す。
【0088】
ステップS101で、クライアント装置からの地図情報の要求アクセスを受信したと判別したときには、CPU101は、受信した要求アクセスに含まれる情報から、要求された地図の対象地域を検知する(ステップS103)。次に、CPU101は、受信した要求アクセスに含まれる情報から、指定された地図の縮尺を検知して、要求に応じて作成する地図範囲を特定し、特定した地図範囲の地図データを地図データベース11から読み出してバッファメモリに格納しておくと共に、特定した地図範囲の地図に重畳表示する地図注記のデータを地図注記データ格納部12から読み出してバッファメモリに格納する(ステップS104)。
【0089】
次に、CPU101は、バッファメモリに格納した地図注記データを用いて、前述したように、各地図注記の文字列の表示枠を計算し、地図注記の重なりの検出処理を実行する(ステップS105)。次に、CPU101は、ステップS105での地図注記の重なりの検出処理の結果として、文字列の表示枠が重なる地図注記があるか否か判別する(ステップS106)。
【0090】
このステップS106で、文字列の表示枠が重なる地図注記は存在しないと判別したときには、CPU101は、バッファメモリに格納した地図注記データと、バッファメモリに格納した地図データとを、通信ネットワーク4を通じてクライアント装置に送信する(ステップS107)。
【0091】
クライアント装置では、この地図注記データと地図データとを受信すると、地図情報提供サーバ1から提供された地図表示支援アプリケーションプログラムを用いて、表示画面上に、地図データに基づいて生成された地図画像上に、地図注記データに基づく地図注記が重畳された地図を表示する。
【0092】
クライアント装置では、表示された地図の縮尺や、対象地域の変更を受け付けることができる。そして、クライアント装置では、変更された縮尺や対象地域に応じて、地図情報提供サーバ1から新たな地図データおよび地図注記データの取得が必要な場合には、その縮尺の変更要求および対象地域の変更要求を送る。
【0093】
そこで、地図情報提供サーバ1のCPU101は、ステップS107の次には、クライアント装置から縮尺の変更要求を受信したか否か判別する(ステップS108)。そして、このステップS108で、縮尺の変更要求を受信したと判別したときには、CPU101は、処理をステップS104に戻して、前述したこのステップS104以降の処理を繰り返す。
【0094】
また、ステップS108で、縮尺の変更要求を受信してはいないと判別したときには、CPU101は、対象地域の変更要求を受信したか否か判別する(ステップS109)。そして、このステップS109で、対象地域の変更要求を受信したと判別したときには、CPU101は、処理をステップS103に戻して、前述したこのステップS103以降の処理を繰り返す。
【0095】
また、ステップS109で、対象地域の変更要求を受信してはいないと判別したときには、CPU101は、クライアント装置からの地図要求アクセスの切断通知などにより、当該地図情報提供処理の終了を検知したか否か判別する(ステップS110)。そして、このステップS110において、地図情報提供処理の終了を検知してはいないと判別したときには、CPU101は、処理をステップS108に戻し、このステップS108以降の処理を繰り返す。また、ステップS110において、地図情報提供処理の終了を検知したと判別したときには、CPU101は、この処理ルーチンを終了する。
【0096】
次に、ステップS106で、文字列の表示枠が重なる地図注記が存在すると判別したときには、CPU101は、クライアント装置のユーザに、地図注記の重なり排除のための処理として、「お任せモード」と「TPO設定モード」とのいずれかを選択するように依頼する(図12のステップS121)。
【0097】
次に、CPU101は、ステップS121の依頼に対して、クライアント装置のユーザにより「お任せモード」と「TPO設定モード」とのいずれが選択されたかを判別する(ステップS122)。
【0098】
このステップS122で、「TPO設定モード」が選択されたと判別したときには、CPU101は、クライアント装置に、地図の使用用途を問い合わせるメッセージを送り、ユーザにその選択を促し、それに対応してクライアント端末から送られてくるユーザの選択指定情報を受信する(ステップS123)。
【0099】
なお、前述もしたように、地図の要求操作時の情報により、場所、時は既にユーザにより選択されて特定されているため、このステップS123では、場所、時についてはユーザに問い合わせをしない。そして、地図の使用用途については、この例では、「観光」、「ショッピング」、「デート」などの、想定される使用用途の一覧メニューをユーザに呈示して、ユーザにその一覧メニューから選択してもらうようにしている。
【0100】
次に、CPU101は、ステップS123において、前記問い合わせに対応してクライアント装置から受信した選択指定された使用用途の情報と、ユーザにより既に指定された地図対象地域(場所)と、時の情報を用いて、地図注記優先順位テーブル格納部109の複数個のTPO対応地図注記優先順位テーブルの中から選択設定テーブルを選択して、重なり排除用テーブル設定部に、重なり排除用テーブルとして設定する(ステップS124)。
【0101】
次に、CPU101は、クライアント装置からユーザによる重要施設の設定要求を受信したか否か判別し(ステップS125)、重要施設の設定要求を受信してはいないと判別したときには、ステップS124で設定した選択設定テーブルのみを重なり排除処理に用いることを決定し、処理を後述する図13のステップS131に進める。
【0102】
また、重要施設の設定要求を受信したと判別したときには、CPU101は、拠点(POI)についての一覧を、クライアント装置に提供する(ステップS126)。そして、CPU101は、クライアント装置からの重要施設の設定情報の受信を待ち(ステップS127)、このステップS127で、クライアント装置から重要施設の設定情報を受信したと判別したときには、重要施設設定保持部108に、受信した重要施設の設定情報を一時保持する(ステップS128)。そして、CPU101は、選択設定テーブルと重要施設設定情報とを重なり排除処理に用いることを決定し、処理を後述する図13のステップS131に進める。
【0103】
また、ステップS122で、「お任せモード」が選択されたと判別したときには、CPU101は、前述したように、地図注記優先順位テーブル格納部109から標準テーブルを読み出して、重なり排除処理用テーブルとして用いるために重なり排除用テーブル設定部110に設定し(ステップS129)、その後、処理を後述する図13のステップS131に進める。
【0104】
図13のステップS131においては、CPU101は、ステップS105で、重なって表示されるとして検出された地図注記Aと地図注記Bの組の一つを特定する(ステップS131)。次に、CPU101は、地図注記Aが属する地図注記レイヤと、地図注記Bが属する地図注記レイアとを判定する(ステップS132)。次に、判定した地図注記Aが属する地図注記レイヤと、地図注記Bが属する地図注記レイアとが同じ順位グループであるか否か判別する(ステップS133)。
【0105】
ステップS133で、地図注記Aが属する地図注記レイヤと、地図注記Bが属する地図注記レイアとが同じ順位グループではないと判別したときには、CPU101は、地図注記Aのレイヤの順位グループの方が地図注記Bのレイヤの順位グループよりも、優先順位が高いか否か判別する(ステップS134)。
【0106】
そして、ステップS134で、地図注記Aのレイヤの方の優先順位が高い順位グループであると判別したときには、CPU101は、提供しようとする地図に表示するものとしてバッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Bのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Aのデータのみを残す(ステップS135)。また、ステップS134で、地図注記Aのレイヤは、優先順位が高い順位グループではないと判別したときには、CPU101は、バッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Aのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Bのみを残す(ステップS136)。
【0107】
そして、CPU101は、ステップS135またはステップS136の次には、ステップS105で検出された地図注記の重なりの組の全てについて上記の重なり排除処理が実行されて地図注記の重なりが消滅したか否か判別し(ステップS137)、地図注記の重なりが消滅してはいないと判別したときには、ステップS131に処理を戻し、このステップS131以降の上述した重なり排除処理を繰り返す。
【0108】
また、ステップS137で、地図注記の重なりの組の全てが消滅したと判別したときには、CPU101は、バッファメモリに格納されている、重なり排除処理後の地図注記データを、地図データと共に、クライアント装置に送信する(ステップS138)。このステップS138の次には、CPU101は、処理を図11のステップS108に戻し、前述したこのステップS108以降の処理を繰り返す。
【0109】
また、ステップS133で、地図注記Aが属する地図注記レイヤと、地図注記Bが属する地図注記レイアとが同じ順位グループであると判別したときには、CPU101は、地図注記Aが属する地図注記レイヤと、地図注記Bが属する地図注記レイアとが同じ優先順位か否か判別する(図14のステップS141)。
【0110】
ステップS141で、地図注記Aが属する地図注記レイヤと、地図注記Bが属する地図注記レイアとが同じ優先順位ではないと判別したときには、CPU101は、地図注記Aのレイヤの方が地図注記Bのレイヤよりも優先順位が高いか否か判別する(ステップS142)。
【0111】
そして、ステップS142で、地図注記Aのレイヤの方の優先順位が高いと判別したときには、CPU101は、処理をステップS135に進め、バッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Bのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Aのデータのみを残す。また、ステップS142で、地図注記Aのレイヤの方の優先順位が低いと判別したときには、CPU101は、処理をステップS136に進め、バッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Aのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Bのみを残す。
【0112】
また、ステップS141で、地図注記Aが属する地図注記レイヤと、地図注記Bが属する地図注記レイアとが同じ優先順位であると判別したときには、CPU101は、重要施設の設定情報が重要施設設定保持部108に保持されているか否か判別する(ステップS143)。このステップS143で、重要施設の設定情報が重要施設設定保持部108に保持されていると判別したときには、重要施設の設定情報を参照して(ステップS144)、地図注記Aと地図注記Bとの両方が重要施設として設定されているか否か判別する(ステップS145)。
【0113】
ステップS145で、地図注記Aと地図注記Bとの両方ではなく、一方が重要施設として設定されていると判別したときには、CPU101は、地図注記Aが重要施設として設定されているか否か判別する(ステップS146)。このステップS146で、地図注記Aが重要施設として設定されていると判別したときには、CPU101は、処理をステップS135に進め、バッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Bのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Aのデータのみを残す。また、ステップS142で、地図注記Aではなく、地図注記Bが重要施設として設定されていると判別したときには、CPU101は、処理をステップS136に進め、バッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Aのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Bのみを残す。
【0114】
また、ステップS143で、重要施設の設定情報が保持されていないと判別したとき、あるいは、ステップS145で、両方とも重要施設として設定されている、もしくは両方とも重要施設として設定されていないと判別したときには、CPU101は、地図注記Aと地図注記Bの文字列表示枠位置の左右位置関係を判定するために、地図注記Aの文字列表示枠の左座標Laと、地図注記Bの文字列表示枠の左座標Lbとを比較する(図15のステップS151)。
【0115】
そして、CPU101は、La=Lbであるか否か判別し(ステップS152)、La=Lbではないと判別したときには、地図注記Aの文字列表示枠の左座標Laの方が左であるか否か判別する(ステップS153)。そして、ステップS153で、地図注記Aの文字列表示枠の左座標Laの方が左であると判別したときには、CPU101は、処理をステップS135に進め、バッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Bのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Aのデータのみを残す。また、ステップS153で、地図注記Aの文字列表示枠の左座標Laの方が左ではないと判別したときには、CPU101は、処理をステップS136に進め、バッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Aのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Bのみを残す。
【0116】
また、ステップS152で、La=Lbであると判別したときには、地図注記Aと地図注記Bの文字列表示枠位置の上下位置関係を判定するために、地図注記Aの文字列表示枠の上座標Taと、地図注記Bの文字列表示枠の上座標Tbとを比較する(ステップS154)。
【0117】
そして、CPU101は、Ta≧Tbであるか否か、つまり、地図注記Aの文字列表示枠の方が地図注記Bの文字列表示枠よりも上か同じであるか否か判別する(ステップS155)。そして、ステップS155で、Ta≧Tbであると判別したときには、CPU101は、処理をステップS135に進め、バッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Bのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Aのデータのみを残す。また、ステップS155で、Ta≧Tbではないと判別したときには、CPU101は、処理をステップS136に進め、バッファメモリに記憶されている地図注記の中から地図注記Aのデータを削除し、地図注記AとBとの重なりを排除して、地図注記Bのみを残す。
【0118】
以上のようにして、この第1の実施形態では、各地図注記が属するレイヤについての優先順位に基づいて、地図注記の重なりを排除することができる。そして、前述した特許文献1では、各地図注記の文字記号データに優先順位を付与するようにしているため、一度、優先順位を決定してしまうと、優先順位をダイナミックに変更することが困難であったが、この第1の実施形態では、標準テーブルの他に、ユーザの指定したTPOに応じて、地図注記優先順位テーブルを、ダイナミックに変更することができ、ユーザのTPOに応じて重要な地図注記を常に地図上に残すように重なり排除することが可能である。
【0119】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態においては、「お任せモード」では、ユーザは使用用途などの選択設定の入力操作をすることが必要はないが、固定的に予め設定された汎用の標準テーブルが、重なり排除処理用テーブルとされた。このため、ユーザのTPOに応じた重なり排除処理は困難である。一方、「TPO設定モード」では、ユーザのTPOに応じた重なり排除処理が可能となるが、少なくとも、使用用途(O)は、ユーザが選択設定入力操作をしなければならず、ユーザによっては、設定入力作業が面倒とされるおそれがある。
【0120】
第2の実施形態においては、上記の「お任せモード」および「TPO設定モード」に加えて、上述の問題を回避する「推奨モード」を設けるようにする。この「推奨モード」は、ユーザにより使用用途を選択設定してもらうのではなく、ユーザにより指定された場所と時、すなわち、地図要求された対象地域から特定される場所と地図要求された時間とから、使用用途を推定する。そして、その推定した使用用途と、ユーザにより指定された場所および時間とに対応するTPO対応地図注記優先順位テーブルを、地図注記優先順位テーブル格納部109に格納されている複数個のTPO対応地図注記優先順位テーブルから、自動的に選択して、重なり排除処理用テーブル格納部110に設定することができるようにする。この第2の実施形態では、推奨モードにおいて重なり排除用テーブルとして設定される地図注記優先順位テーブルを、推奨テーブルと呼ぶことにする。
【0121】
この第2の実施形態の場合における地図情報提供サーバ1のハードウエア構成例を、図16に示す。この図16に示すように、第2の実施形態においては、地図情報提供サーバ1の重なり排除用テーブル設定部110に対して、推奨テーブル設定用情報格納部113が接続されて設けられる。また、地図注記優先順位テーブル格納部109には、予め、複数個のTPO対応テーブルの一部として、複数個の推奨テーブルの候補のテーブルが、その識別情報(推奨テーブルID)と対応付けられて格納されている。その他は、第1の実施形態の場合の地図情報提供サーバ1と同様に構成されている。
【0122】
図17に、推奨テーブル設定用情報格納部113に格納されている推奨テーブル設定用情報の一例の一部を示す。この図17に示すように、推奨テーブル設定用情報は、「対象地域」と、「時間」と、「推定使用用途」と、「推奨テーブルID」とが、対応付けられて格納されている。なお、図17では説明を判り易くするために、「推定使用用途」も格納することとしているが、「推定使用用途」の情報は、推奨テーブルの検索には不要であるので、実際上は、推奨テーブル設定用情報格納部113に格納しておく必要はない。
【0123】
ここで、「対象地域」は、クライアント装置のユーザからの地図要求時に指定された地図の対象地域である。また、「時間」は、クライアント装置のユーザからの地図要求時の時間、ありは、ユーザにより指定された地図を使用する時間である。
【0124】
「推定使用用途」は、「対象地域」と「時間」とから推定された使用用途である。例えば、地図の対象地域が「京都」や「奈良」などの観光地の場合において、時間が、「春、夏、冬」のときには、「お寺重視の観光」が使用用途として推定され、また、時間が「秋」のときには、「紅葉重視の観光」が使用用途として推定される。
【0125】
また、例えば、地図の対象地域が「屋久島」や「知床」などの観光地の場合において、時間に関係なく、「自然重視の観光」が使用用途として推定される。更に、例えば、地図の対象地域が「原宿」や「渋谷」、「新宿」などの繁華街の場合において、時間が、「昼間」のときには、「ショッピング」が使用用途として推定され、また、時間が「夕方以降」のときには、「食事」が使用用途として推定される。
【0126】
「推奨テーブルID」は、上記の「対象地域」と「時間」と「推定使用用途」とに対応して作成されて地図注記優先順位テーブル格納部109に格納されているTPO対応地図注記順位テーブルの識別情報(ID)である。
【0127】
例えば、地図の対象地域が「京都」や「奈良」で、時間が、「春、夏、冬」のときには、推定使用用途は「お寺重視の観光」となるので、対応する推奨テーブルは、前述した図5に示したTPO対応地図注記優先順位テーブルとなり、その識別情報(ID)が推奨テーブルIDとして、推奨テーブル設定用情報格納部113に格納されている。
【0128】
また、地図の対象地域が「京都」や「奈良」で、時間が、「秋」のときには、推定使用用途は「紅葉重視の観光」となるので、対応する推奨テーブルは、図18に示すように、「山名称」および「水域名称」が第1優先順位の順位グループとされたTPO対応地図注記優先順位テーブルとなり、その識別情報(ID)が推奨テーブルIDとして、推奨テーブル設定用情報格納部113に格納されている。
【0129】
また、地図の対象地域が「屋久島」や「知床」のときには、推定使用用途は「自然重視の観光」となるので、対応する推奨テーブルは、前述した図6に示したTPO対応地図注記優先順位テーブルとなり、その識別情報(ID)が推奨テーブルIDとして、推奨テーブル設定用情報格納部113に格納されている。
【0130】
また、地図の対象地域が「原宿」や「渋谷」、「新宿」で、時間が、「昼間」のときには、推定使用用途は「ショッピング」となるので、対応する推奨テーブルは、前述した図7に示したTPO対応地図注記優先順位テーブルとなり、その識別情報(ID)が推奨テーブルIDとして、推奨テーブル設定用情報格納部113に格納されている。
【0131】
さらに、地図の対象地域が「原宿」や「渋谷」、「新宿」で、時間が、「夕方以降」のときには、推定使用用途は「食事」となるので、対応する推奨テーブルは、前述した図7に示したTPO対応地図注記優先順位テーブルにおいて、「商業施設名称」と「飲食店名称」との優先順位が入れ替わったものとなり、その識別情報(ID)が推奨テーブルIDとして、推奨テーブル設定用情報格納部113に格納されている。
【0132】
そして、この第2の実施形態では、重なり排除用テーブル設定部110は、「推奨モード」がユーザにより選択された場合においては、地図要求時にユーザにより指定された地図の対象地域および時間を用いて、推奨テーブル設定情報格納部113を参照して、対応する推奨テーブルIDを取得する。そして、重なり排除用テーブル設定部110は、推奨テーブル設定情報格納部113から取得した、その推奨テーブルIDを用いて、地図注記優先順位テーブル格納部109に格納されている複数個のTPO対応地図注記優先順位テーブルの中から、重なり排除用テーブルを選択して、設定するようにする。
【0133】
この第2の実施形態においては、その他の処理は、第1の実施形態と同様にされる。
【0134】
この第2の実施形態によれば、「推奨モード」においては、ユーザは、クライアント装置から、地図の対象地域を指定して、その地図の取得要求を地図情報提供サーバ1に送るだけで、推定された使用用途に応じて地図注記の重なり排除処理がなされた地図情報を取得することができる。つまり、ユーザは、使用用途の選択設定入力操作をしなくても、そのときのTPOに応じて地図注記の重なり排除処理がなされた地図情報を取得することができる。
【0135】
なお、上述の説明では、地図注記優先順位テーブル格納部109から推奨テーブルを得るために、推奨テーブルIDを用いるようにしたが、推奨テーブルIDの代わりに、その推奨テーブルが書き込まれている地図注記優先順位テーブル格納部109のアドレスを、推奨テーブル設定用情報格納部113に格納して使用するようにしても良い。また、第1の実施形態で説明した選択設定テーブルの場合と同様に、「対象地域」と「時間」と「推定使用用途」とを用いて、対応する推奨テーブルを、地図注記優先順位テーブル格納部109から読み出すようにすることも勿論できる。
【0136】
[その他の実施形態または変形例]
なお、上述の実施形態では、標準テーブルは、地図注記優先順位テーブル格納部109に、一つのみを用意するようにしたが、例えば、午前、午後、朝、昼、夕、あるいは春、夏、秋、冬、のように、時間の違いに応じた複数個を用意しておき、地図要求された時間に基づいて、対応する標準テーブルを選択するようにしても良い。また、北海道、東北、関東、近畿、・・・などの地域に応じて複数個の標準テーブルを用意しておき、要求された地図の対象地域に基づいて、対応する標準テーブルを選択するようにしても良い。
【0137】
また、上述したフローチャートの説明では、提供しようとする地図に地図注記の重なりを発見したときに、地図注記の重なり排除についてのモードのユーザに選択させるようにしたが、ユーザから地図要求を受けたときに、予め、地図注記の重なりが生じた場合の処理を、ユーザに問い合わせて、その選択指定を受けておくようにしても勿論良い。
【0138】
また、上述の実施形態では、重要施設設定情報は、地図注記優先順位テーブルを用いただけでは重なり排除ができない場合に用いるようにしたが、地図注記の重なりが検出されたら、先ず、重要施設設定情報を参照して重なり排除処理を行い、その結果、重なり排除処理ができなかったら、地図注記優先順位テーブルを用いた重なり排除処理を実行するようにしても良い。
【0139】
また、上述の実施形態では、地図注記の表示枠は矩形であるものとしたが、地図注記の表示枠は、矩形枠に限られず、円形やその他の形状であってもよい。
【0140】
また、上述の説明では、TPOに応じた複数の地図注記優先順位テーブルを予め作成して格納保持するようにしたが、例えば標準テーブルを基準テーブルとして、その基準テーブルに対して、T、P、Oのそれぞれを変数とした優先順位決定用の関数を用意し、ユーザにより指定された、あるいは推定されたT、P、Oを、その関数に代入することで優先順位を決定することで、重なり排除用テーブルを生成して設定するようにしても良い。
【0141】
また、上述の実施形態においては、地図注記処理装置は、通信ネットワーク4を通じて接続されるサーバとクライアント装置からなるシステムの構成としたが、前記地図情報提供サーバ1の機能と、クライアント装置の機能とを備えるスタンドアローンの地図注記処理装置の構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0142】
1…地図情報提供サーバ、2…パーソナルコンピュータ、3…携帯電話端末、11…地図データ格納部、12…地図注記データ格納部、108…重要施設設定保持部、109…地図注記優先順位テーブル格納部、110…重なり排除用テーブル格納部、111…地図注記重なり排除処理部、113…推奨テーブル設定用情報格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図上に表示される地図注記の表示用データと、前記地図注記の地図上位置を示す情報と、前記地図注記のそれぞれが予め定められた複数のレイヤのいずれに属するかの情報と、を含む地図注記データを格納する地図注記データ格納手段と、
前記複数のレイヤに付与された優先順位の情報を管理する地図注記レイヤ優先順位管理手段と、
ユーザの要求に応じて提供しようとする対象地域の地図上に表示する地図注記の地図上位置を示す情報を前記地図注記データ格納部から読み出して、前記地図上に表示したときに重なりが生じるか否かを判別する重なり判別手段と、
前記重なり判別手段で前記重なりが生じると判別された前記地図注記が属する前記レイヤを判定し、前記地図注記レイヤ優先順位管理手段で管理されている前記レイヤに付与された優先順位の情報に基づいて、前記優先順位が低いレイヤに属する地図注記を、前記地図上に表示する地図注記から削除するように処理する地図注記重なり排除処理手段と、
を備えることを特徴とする地図注記処理装置。
【請求項2】
前記地図注記レイヤ優先順位管理手段は、
前記複数のレイヤに付与された優先順位の情報として、地図の前記対象地域、地図を使用する時、地図の使用用途のうちの少なくとも一つに応じて設定された複数通りの優先順位の情報を備えて管理していると共に、
前記ユーザにより指定された、提供しようとする地図の前記対象地域、提供しようとする時間、地図の使用用途、のうちの少なくとも一つに応じて、前記複数通りの優先順位の情報から、前記重なり排除処理に用いる優先順位の情報を選定する
ことを特徴とする請求項1に記載の地図注記処理装置。
【請求項3】
前記地図注記レイヤ優先順位管理手段は、前記複数のレイヤに付与された優先順位の情報として、地図の使用用途に応じて設定された複数通りの優先順位の情報を備えて管理していると共に、
前記ユーザに、選択指定可能な前記使用用途の一覧情報を提供する手段と、
前記一覧情報から前記ユーザにより選択された前記使用用途を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けた、前記ユーザにより選択された前記使用用途に応じて、前記複数通りの優先順位の情報から、前記重なり排除処理に用いる優先順位の情報を選定する選定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の地図注記処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地図注記処理装置において、
前記地図注記レイヤ優先順位管理手段は、
前記複数のレイヤに付与された優先順位の情報として、前記地図の使用用途に加えて、地図の前記対象地域または地図を使用する時の少なくとも一つに応じて設定された複数通りの優先順位の情報を備えて管理しており、
前記選定手段は、前記受付手段により受け付けた、前記ユーザにより選択された前記使用用途に加えて、前記ユーザにより指定された、提供しようとする地図の前記対象地域または提供しようとする時間の少なくとも一方とに応じて、前記複数通りの優先順位の情報から、前記重なり排除処理に用いる優先順位の情報を選定する
ことを特徴とする請求項1に記載の地図注記処理装置。
【請求項5】
前記ユーザに、地図注記が表示される地図上の対象物に関する一覧情報を提供し、前記ユーザからの、重要とされる前記地図上の対象物の設定を受け付ける重要対象物設定受付手段を備え、
前記地図注記重なり排除処理手段は、前記重なりが生じると判別された前記地図注記のレイヤが同じ優先順位であるときに、前記重なりが生じると判別された前記地図注記のうち、前記重要対象物設定受付手段で前記設定を受け付けた前記地図上の対象物の地図注記は残し、他の地図注記は前記地図上に表示する地図注記から削除するように処理する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地図注記処理装置。
【請求項6】
前記地図注記重なり排除処理手段は、前記重なりが生じると判別された前記地図注記のレイヤが同じ優先順位であるときには、前記重なり判別手段で前記重なりが生じると判別された前記地図注記の位置関係に基づいて予め定められた位置関係にある地図注記を残し、他の前記地図注記は前記地図上に表示する地図注記から削除するように処理する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地図注記処理装置。
【請求項7】
地図上に表示される地図注記の表示用データと、前記地図注記の地図上位置を示す情報と、前記地図注記のそれぞれが予め定められた複数のレイヤのいずれに属するかの情報と、を含む地図注記データを格納する注記データ格納手段を備える地図注記処理装置における地図注記処理方法であって、
前記複数のレイヤに付与された優先順位の情報を管理し、
ユーザの要求に応じて提供しようとする対象地域の地図上に表示する地図注記の地図上位置を示す情報を前記地図注記データ格納部から読み出して、前記地図上に表示したときに重なりが生じるか否かを判別し、
前記重なりが生じると判別された前記地図注記が属する前記レイヤを判定し、前記地図注記レイヤ優先順位管理手段で管理されている前記レイヤに付与された優先順位の情報に基づいて、前記優先順位が低いレイヤに属する地図注記を、前記地図上に表示する地図注記から削除するように処理する
ことを特徴とする地図注記処理方法。
【請求項8】
地図上に表示される地図注記の重なりを排除するためにコンピュータを、
前記地図注記の表示用データと、前記地図注記の地図上位置を示す情報と、前記地図注記のそれぞれが予め定められた複数のレイヤのいずれに属するかの情報と、を含む地図注記データを格納する地図注記データ格納手段から、ユーザの要求に応じて提供しようとする対象地域の地図上に表示する前記地図注記の地図上位置を示す情報を読み出して、前記地図上に表示したときに重なりが生じるか否かを判別する重なり判別手段、
前記複数のレイヤに付与された優先順位の情報を管理する地図注記レイヤ優先順位管理手段、
前記重なり判別手段で前記重なりが生じると判別された前記地図注記が属する前記レイヤを判定し、前記地図注記レイヤ優先順位管理手段で管理されている前記レイヤに付与された優先順位の情報に基づいて、前記優先順位が低いレイヤに属する地図注記を、前記地図上に表示する地図注記から削除するように処理する地図注記重なり排除処理手段、
として機能させるための地図注記処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−61510(P2013−61510A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200217(P2011−200217)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】