説明

地図表示装置

【課題】 3次元地図表示の視点高度を操作性良く設定でき、視点高度の変更操作に伴って画面表示をスムーズに変化させる。
【解決手段】 地図表示装置は、視点高度変更スイッチの操作の有無を判断し(S1)、操作された場合には変更前の視点高度に変化比率を乗じて得た比率変化高度と最小変化高度(定値変化高度)とを加算して高度変更量を求める(S2)。視点高度変更スイッチが「高度上昇側」に操作された場合には変更前の視点高度に高度変更量を加算して視点高度を設定し(S4)、「高度下降側」に操作された場合には変更前の視点高度から高度変更量を減算して視点高度を設定する(S5)。この設定された視点高度に基づいて3次元地図が描画される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画面に地図を3次元表示する地図表示装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】例えばカーナビゲーション装置に用いられている地図表示装置においては、使用者が地図を直観的に理解できるように、画面に地図を3次元的に表示することが行われている。そして、3次元地図表示を行う際、地図表示の視認性を向上させるためにその視点高度を可変できるようにしたものがある。その一例として、図9(a)に示すように、使用者が鳥瞰図の視点高度を予め定められた数段階(例えば低、中、高の3段階)の高度の中から選択して設定できるように構成されたカーナビゲーション装置がある。
【0003】一般に、画面上に建物などが立体的に表示される3次元地図表示においては、設定した視点高度が低いと、使用者が見たい道路や建物がその手前側に位置する高い建物などに隠れて表示されなかったり、逆に設定した視点高度が高いと、建物相互間の重なり具合などによって得られる立体感や遠近感が損なわれるといった事情がある。こうした事情は、画面に表示されている建物や道路およびそれらの配置、地形、使用者が見たい地図部分などによって様々に変化する。しかし、上述したカーナビゲーション装置では、使用者は3段階の視点高度しか選択することができないため、こうした様々な事情に応じた最適な視点設定ができない場合があった。また、視点高度を切り替えると、画面表示が一度に大きく変化してしまうので、使用者は切り替え前の画面表示と切り替え後の画面表示との対応関係が把握しづらくなっていた。
【0004】これに対し、図9(b)に示すように、視点高度を一定高度ずつ多数段階に増減可能としたカーナビゲーション装置がある。このカーナビゲーション装置によれば、使用者は、上述した地図表示上の事情や目的などに合わせて、所望する高度に視点を設定することができる。しかし、視点を低い高度から高い高度に変更する場合、使用者がスイッチなどを操作して視点高度を一定高度ずつ順次上昇させても目的とする視点高度になかなか設定できないという操作上の不都合があった。また、比較的高い視点高度にあっては、視点高度を一定高度ずつ順次上昇または下降さても画面に表示される地図の変化が小さいので、使用者はスイッチを操作しても視点の上昇感や下降感を得づらかった。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、3次元地図表示した場合に、所望する視点高度に操作性良く設定でき、且つ視点高度の変更操作に伴って画面表示がスムーズに変化する地図表示装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために請求項1に記載した手段を採用できる。この手段によれば、画面制御管理手段は、高度変更指令が入力される毎に、現在の視点高度に対して予め決められた変化比率を乗算して比率変化高度を求め、現在の視点高度に対しその比率変化高度だけ増減させた高度を新たな視点高度とする。従って、高度変更指令を入力することに対応して多数の視点高度を設定可能になるとともに、視点高度が高くなるほど視点高度の変化量が大きくなって、使用者は所望する視点高度を操作性良く設定可能となる。
【0007】また、視点高度の変化量が現在の視点高度に対して予め決められた割合となるから、使用者は、高度変更指令の入力によって3次元地図表示における視点の上昇感や下降感を得られる。さらに、高度変更指令を連続的に入力することにより、画面表示をスムーズに変化させることができる。
【0008】請求項2に記載した手段によれば、画面制御管理手段は、高度変更指令が入力される毎に、現在設定されている視点高度を、上記比率変化高度に一定の定値変化高度を加えた高度だけ変化させるので、高い視点高度にあっては比率変化高度による変化量が支配的となり、低い視点高度にあっては定値変化高度による変化量が支配的となる。つまり、比率変化高度の変化量だけでは高度変更指令に対する視点高度の変化量が小さくなる傾向にある低い視点高度の場合であっても、視点高度は少なくとも定値変化高度だけは変化する。従って、低い視点高度設定時において、操作性がより向上するとともに高度変更指令を入力し続けることによりスムーズな画面変化が得られる。
【0009】請求項3に記載した手段によれば、画面制御管理手段は、現在設定されている視点高度が所定の高度以下の場合には、現在設定されている視点高度に対して定値変化高度だけ変化させ、所定の高度を超える場合には、現在設定されている視点高度に対して比率変化高度だけ変化させる。従って、請求項2に記載した手段とほぼ同様な作用が得られ、視点高度をその高低に関わらず所望する高度に操作性良く設定可能となる。
【0010】請求項4に記載した手段によれば、画面制御管理手段は、視点高度の設定とは独立して視線方向を上方または下方に設定可能なので、設定された視点高度に関わらず遠方や視点直下に近い位置の3次元地図を表示でき、また、建物や高架道路などを視点位置から見上げた状態に表示することもできる。これにより、使用者は、3次元地図表示からより多くの情報を得ることができる。
【0011】請求項5に記載した手段によれば、画面制御管理手段は、視点高度の設定に関連付けて視線方向を上方または下方に設定するので、設定された視点高度に関わらず設定した目標を表示画面内に捕捉可能となる。
【0012】請求項6に記載した手段によれば、画面制御管理手段は、視点高度が高く設定される程視線方向を示す俯角が大きくなるように自動的に設定し、視点高度が低く設定される程前記俯角が小さくなるように自動的に設定する。例えば、視線方向を示す俯角が45°で一定であるとすると、視点高度が高く設定され地図表示が広域になる程、視点位置直下付近の領域は表示されにくくなり、逆に、視点高度が低く設定され地図表示が詳細になる程、視点位置より遠方の領域は表示されにくくなる。
【0013】従って、視点高度の設定に応じて視線方向の俯角を上記のように自動的に設定することで、視点高度が高い場合と低い場合との何れにおいても、視点位置直下付近の領域と視点位置から遠方の領域とが画面内にバランス良く表示されるようになり、使用者にとって視点位置からの遠近にわたる領域全体の把握が容易となるように表示を行うことができる。
【0014】請求項7に記載した手段によれば、画面制御管理手段は、視点高度を低くする変更指令が入力されると視線方向の変化幅を相対的に小さく設定し、視点高度を高くする変更指令が入力されると前記変化幅を相対的に大きく設定する。即ち、視線高度の変化に対する視線方向の変化幅が一定である場合、視点高度が低くなるように変更され地図の縮尺が小さくなる方向に変化して行くと、画面を見る者にとっては、地図表示の変化の度合いが次第に大きくなるように感じられる。逆に、視点高度が高くなるように変更され地図の縮尺が大きくなる方向に変化して行くと、画面を見る者にとっては、前記変化の度合いは次第に小さくなるように感じられる。従って、視線方向の変化幅を上記のように設定することで、画面を見る者にとって、視線高度の変化に伴い地図表示がスムーズに変化するように感じさせることができる。
【0015】請求項8に記載した手段によれば、画面制御管理手段は、視線方向を示す俯角θを、θ=N×(最大俯角−最小俯角)+最小俯角N= log2(視点高度/最小視点高度)/log2(最大視点高度/最小視点高度)
に基づいて設定するので、対数関数を用いることで、視点高度の高低変化に応じて視線方向の変化幅が異なるように適切な設定を行うことができる。
【0016】請求項9に記載した手段によれば、視線方向先にある地図上の特定地点を地図上の現在位置とするので、例えば、車両のナビゲーションに使用する場合のように、画面の地図表示が時々刻々と変化する状態でも画面が車両の現在位置を俯瞰した視線で描かれることで、当該車両の乗員は、その画面に表示された地図内における自車両の現在位置を容易に把握することができる。
【0017】請求項10に記載した手段によれば、画面制御管理手段は、画面に特定地点を指示するためのカーソルを表示すると共に、当該カーソルの表示位置を視点高度に応じて変更する。即ち、例えば、従来の地図表示装置を車両のナビゲーションに使用する場合、画面内におけるカーソルの表示位置は、画面の中心や、または進行方向を広く見せるためにその中心からやや手前の位置などに固定されるようになっている。そのため、視点高度が極めて低く、且つ、視線方向の俯角が0度付近である所謂ドライバーズビューに近い状態になると、従来の方式ではカーソルの表示ができなくなる場合がある。そこで、本発明では、カーソルの表示位置を視点高度に応じて変更することで、カーソルの表示位置が従来の方式よりも適切となるように改善することが可能となる。
【0018】請求項11記載の手段によれば、画面制御管理手段は、画面の表示中心を示す座標を(X,Y)とし、変化率NをN= log2(視点高度/最小視点高度)/log2(最大視点高度/最小視点高度)
として、カーソルの表示位置を(X,N・Y)により設定するので、請求項8と同様に視点高度の変化に応じて設定される変化率に基づいて、画面内におけるカーソルの表示位置が適切となるように設定することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下、本発明の地図表示装置をカーナビゲーション装置に適用した第1の実施形態について図1ないし図3を参照しながら説明する。図1には、カーナビゲーション装置1の全体構成についての概略的な機能ブロック図が示されている。この図1において、位置検出部2は、GPS(Global Positioning System )受信機、ジャイロセンサ、車速センサなどから構成され、現在の車両位置を算出する部分である。この位置検出部2は、上記各センサが性質の異なる誤差を有しているため、各々補間しながら使用可能なように構成されている。この場合、現在地が算出できれば、これらのセンサ全部を備える必要はなく、どれか一つ以上のセンサを備えていれば良い。
【0020】地図データ格納部3は、位置検出の精度向上のための所謂マップマッチング用データ、地図データ、および目的データを含む各種データを入力するための装置であり、DVDプレーヤ、ハードディスク装置、CDプレーヤなどから構成されている。
【0021】スイッチ情報入力部4(本発明における入力手段に相当)は、後述するディスプレイ装置の左右や上下に取り付けられたスイッチ類であって、例えば視点高度を上昇、下降させるための視点高度変更スイッチや、視線方向を上方、下方に変更するための視線変更スイッチなどから構成されている。この視点高度変更スイッチおよび視線変更スイッチが単発的に操作されると、それぞれ視点高度および視線方向を1段階だけ変更する視点高度変更指令および視線変更指令が出力され、操作状態が継続するとその間視点高度変更指令および視線変更指令が所定の時間間隔を有して連続して出力されるようになっている。
【0022】メモリ部5は、例えばROMやRAMから構成されており、ROMにはカーナビゲーション装置1を動作させるための実行プログラムが格納され、RAMにはプログラム実行時の一時データや地図データ格納部から取得した地図データなどが一時的に格納されるようになっている。
【0023】表示部6は、地図や目的地選択画面などを表示するもので、例えば液晶のディスプレイ装置から構成されている。その画面には、位置検出部2から入力された車両の現在位置マークと、地図データ格納部3から入力された地図データと、さらに地図上に重ねた状態で経路案内線や目標設定地点の目印などの付加データとが表示されるようになっている。音声出力部7は、案内のための音声や画面操作の説明を出力する。
【0024】制御部8は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、スイッチ情報入力部4に対する操作に応じて、現在位置から目的地までの最適な経路を自動的に選択して経路案内線を表示する経路案内機能を実行したり、マップマッチング処理,案内音声の合成、設定された視点高度と視線方向とに応じた地図の描画などを行うようになっている。
【0025】この制御部8は、地図データ取得部9、マップマッチング部10、経路計算部11、経路案内部12、描画部13、画面制御管理部14などから構成されている。
【0026】マップマッチング部10は、位置検出部2で検出した車両の位置情報と地図データ格納部3から取得した地図データの道路形状データなどを使って、車両の現在位置がどの道路上に存在するかを特定する。この際、地図データ取得部9が必要な地図データを地図データ格納部3より取得する。また、使用者は、スイッチ情報入力部4を操作して所望の地図を表示させるなどを行い、目的地をセットする。経路計算部11では、マップマッチング部10で算出された現在位置の情報や、使用者が指定した出発地と上記目的地までの最適な経路を計算する。
【0027】経路案内部12では、上記経路計算の結果と地図データ内に格納されている道路の形状データや、交差点の位置情報や踏み切りの位置情報などから経路案内に必要なポイントを算出したり、どのような経路案内(右に曲がるのか左に曲がるのかなど)が必要なのかを算出する。
【0028】描画部13では、現在位置の地図や高速道路の略図や交差点付近では交差点付近の拡大図などを画面制御管理部14からの指示に従って描画し、表示部6に表示する。その画面制御管理部14(本発明における画面制御管理手段に相当)は、視点高度変更スイッチから入力された視点高度変更指令に基づいて視点高度を設定するようになっている。また、画面制御管理部14は、視線変更スイッチから入力された視線変更指令に基づいて、視点高度とは独立して視線方向を設定するようになっている。
【0029】地図データ取得部9は、上記各処理部で必要となる地図データを地図データ格納部3より取得し、各処理部に提供する。また、上述した各処理は、メモリ部5のROMやRAMを使って実行される。
【0030】描画部13で描画する地図は3次元的な地図(例えば鳥瞰図や立体地図)であり、地図データ内に格納される建物の形状データ、建物の高さ情報、道路の形状データ、および設定された視点高度と視線方向に基づいて、建物や立体交差などが3次元的に描画される。また、経路案内部12で算出された情報に基づき、車両が進行し経路案内すべき位置に来ると描画部13に所望の画像を描画したり、音声出力部7に所定の音声を出力させて、使用者を目的地へ案内する。
【0031】次に、上記構成の作用について図2および図3を参照して説明する。使用者は、視点高度変更スイッチを操作することにより、地図を表示部6に3次元表示する際の視点高度を変更することができる。図2には、画面制御管理部14による視点高度の設定処理のフローチャートが示されている。この図2において、画面制御管理部14は、まず視点高度変更スイッチが操作されたかどうかを判断し(ステップS1)、操作されていない場合(NO)には視点高度の設定処理を終了する。一方、画面制御管理部14は、視点高度変更スイッチが操作されて視点高度変更指令が与えられた場合(YES)には、以下のようにして視点高度を設定する。
【0032】すなわち、画面制御管理部14は、変更前(視点高度変更スイッチの操作前)に設定されていた視点高度に基づいて、視点高度変更スイッチの単発的な操作によって増減する視点高度の変更量(高度変更量)を、以下に示す(1)式のように計算する(ステップS2)。
高度変更量=変更前視点高度×変化比率+最小変化高度 …(1)
●この(1)式において、(変更前視点高度×変化比率)の項が本発明における比率変化高度に相当し、最小変化高度が本発明における定値変化高度に相当する。そして、画面制御管理部14は、視点高度変更スイッチが「高度上昇側」、「高度下降側」の何れに操作されたかを判断し(ステップS3)、「高度上昇側」に操作された場合(YES)には(2)式に従って視点高度を設定し(ステップS4)、「高度下降側」に操作された場合(NO)には(3)式に従って視点高度を設定する(ステップS5)。
視点高度=変更前視点高度+高度変更量 …(2)
視点高度=変更前視点高度−高度変更量 …(3)
画面制御管理部14は、描画部13に対して上記(1)式ないし(3)式により求めた視点高度を出力し、表示部6に当該視点高度から見た3次元地図の描画を指示して(ステップS6)当該視点高度の設定処理を終了する。
【0033】図3には、視点高度変更スイッチが「高度上昇側」に操作された場合の操作回数と設定される視点高度との関係、および操作回数と高度変更量との関係がそれぞれ実線および破線により示されている。ここで、変化比率は1/16、最小変化高度は0.5m、初期視点高度は0mに設定されている。
【0034】この図3に示すように、視点高度変更スイッチの操作回数に対する視点高度は、全体として指数関数的に増加し、0mであった初期視点高度は71回の高度上昇操作によってほぼ600mの視点高度になる。そして、視点高度が高いほど(1)式における比率変化高度(変更前視点高度×変化比率)が大きくなって、視点高度変更スイッチの操作による高度変更量が大きくなる。また、視点高度が低い場合には、比率変化高度は小さくなるものの(1)式において最小変化高度(定値変化高度)が加算されているので、視点高度変更スイッチの操作によって少なくとも0.5mだけ視点高度が上昇する。なお、視点高度変更スイッチを操作し続けると、その操作継続中において、視点高度は図3に示す曲線に従って所定の時間間隔毎に1段階ずつ上昇していく。
【0035】以上説明したように本実施形態によれば、画面制御管理部14は、視点高度変更スイッチが操作される毎に、現在の視点高度に変化比率を乗じて得た比率変化高度と最小変化高度つまり定値変化高度とを加算して高度変更量を計算し、その高度変更量を現在の視点高度に加減算して新たな視点高度を設定するので、使用者は多数(本実施形態では72段階)の視点高度を設定可能になる。
【0036】この場合、視点高度が高くなるほど高度変更量が大きくなるので、使用者は、視点を低い高度から高い高度に変更する場合であっても操作性良く視点の設定が可能となる。また、比較的高い視点高度において、高度変更量は現在の視点高度に対してほぼ一定の割合となるので、使用者は視点高度変更スイッチを操作することによって3次元地図表示における視点の上昇感または下降感を得ることができる。そして、使用者は、視点高度変更スイッチを操作状態に維持し続けることにより、3次元地図表示をほぼ連続的な動きを伴ってスムーズに変化させることができる。
【0037】一方、比較的低い視点高度においては、高度変更量は比率変化高度よりも定値変化高度が支配的となるので、使用者は、視点高度変更スイッチを操作することにより視点高度を少なくとも最小変化高度だけ変更でき、3次元地図表示の視点の上昇感または下降感を得ることができる。また、高い視点の場合と同様に、3次元地図表示をスムーズに変化させることができる。
【0038】さらに、使用者は、視点変更スイッチを操作することにより、視点高度の設定とは独立して視線方向を上方または下方に設定可能なので、例えば視点高度を高く設定するとともに視線方向を水平面よりやや下方に設定することにより街並全体を表示させたり、立体的に表示された高いビルを越えてさらに遠方側を表示させたりすることができる。また、使用者は、視線方向を上方に設定することにより、例えば現在の視点位置から建物や高架道路などを見上げた状態に表示することもできる。こうした視線方向の設定によって、使用者は、3次元地図表示からより多くの情報を得ることができる。
【0039】(第2の実施形態)図4ないし図6は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。図4は、画面制御管理部14による視点高度の設定処理のフローチャートであるが、ステップS4及びS5とステップS6との間には、処理ステップS7及びS8が挿入されている。
【0040】ステップS7において、画面制御管理部14は、ステップS4またはS5で設定された視点高度、即ち地図の表示縮尺に応じて視線方向における俯角を変化させる。先ず、俯角θの変化率N(0<N<1)を(4)式に基づいて設定する。
N= log2(視点高度/最小視点高度)
/log2(最大視点高度/最小視点高度) …(4)
ここで、最小視点高度及び最大視点高度は、例えば第1の実施形態と同様に0m及び600mなどに設定する。また、対数関数を用いているのは、第1の実施形態と同様に、視点高度が高くなり地図が広域表示されるにつれて俯角θの変化率が大きくなるように設定し、視点高度が低くなり地図が詳細表示されるにつれて俯角θの変化率が小さくなるように設定するためであり、(4)式は、図5に示す視点位置の変化軌跡Cの曲線を決定するものである。
【0041】変化率Nが定まると、俯角θを(5)式によって決定する。
θ=N×(最大俯角−最小俯角)+最小俯角 …(5)
ここで、最大俯角は例えば90°,最小俯角は例えば15°などに設定される。尚、図5に示すように、3次元地図表示において視点から地図上にカーソルで示される現在位置(特定地点)までの視線距離Lは、視点高度をHとすれば、L=H・cosecθ …(6)となり、地図を同じ縮尺で2次元表示する場合は、θ=90°であるからL=Hとなる。
【0042】又、図5に示す現在位置を示すマークは、図5の現在位置と視点との位置関係で図の視点から見た場合の表示とは異なる。
【0043】続くステップS8において、画面制御管理部14は、俯角θの変化率Nを用いて地図上の現在位置を表示するためのカーソルの表示位置Pc を次のようにして設定する。
Pc =(画面中心位置のY座標)×N斯様にカーソルの表示位置Pc を設定すると、視点高度に応じて俯角が変化した場合でも、地図上の現在位置を適切に表示することが可能となる。
【0044】図6(a)〜(d)は、以上のようにして決定された俯角θに基づいてステップS6aで描画される表示部6における画面表示の変化例を示すものであり、夫々視点位置A〜Dに対応した画面表示である。これらの図6(a)〜(d)から明らかなように、地図の表示縮尺が小さくなるにつれて俯角θが小さくなるため、進行方向の遠方にわたって地図が広く表示されるようになる。
【0045】また、自動車の現在位置を示すカーソルの表示位置も、視点位置の変化に応じて次第に画面下方側に移動している。そして、図6(d)においては、視点位置Dに示すように現在位置と視点位置が略一致するドライバーズビューであるため、表示部6の画面にカーソルは表示されないようになっている。この場合、画面にカーソルが表示されなくても、周囲の建物の形状や進行方向の道路形状などから自車位置の把握は十分可能である。
【0046】ここで、図7及び図8は、比較のため従来技術に基づく画面表示例を示すものである。例えば、図7R>7は、3次元表示における視線方向の俯角は一定であり、視点高度が低く(縮尺が大きく)なるにつれて、視点位置が視線先にある現在位置に近付いて行く方式である。この場合、図7(a)に示す視点Aでは図6(a)と同様に問題はないが、視点Bから視点Dにかけて視点高度が低下して行くと進行方向の表示領域が次第に狭くなり、周囲の建物なども表示されなくなって行く。そして、図7(d)においては、進行方向及び周囲の建物などは殆ど表示されず、道路の表示のみが拡大されてしまうため、運転者は、自車両の現在位置の把握が困難となってしまう。
【0047】また、図8は、3次元表示における視線方向の俯角は図7の場合と同様一定であるが、視点位置は常に現在位置の垂直上方にあり、視点高度が低くなるにつれて視点位置が垂直に下降する方式である。この場合、図8(a)に示す視点Aでは、表示領域が自車両の位置からかなり離れているため、現在の自車位置との関係が把握しづらい状態にある。その状態から、視点B〜視点Dにかけて視点高度が低下して行った場合でも、表示されている地図と現在の自車との位置関係は次第に近付くが把握し難く、図8(d)においては、図7(d)と同様に、進行方向及び周囲の建物などは殆ど表示されず、道路の表示のみが拡大されてしまう。これに対して、図6では、視点高度が高い場合と低い場合との何れにおいても、自車両の現在位置近傍の領域とその現在位置から進行方向に向かって遠方の領域とがバランス良く表示されている。
【0048】以上のように第2の実施形態によれば、画面制御管理部14は、視線高度の設定に応じて俯角θの変化率Nを(4)式により設定し、俯角θを(5)式によって設定することで、視点高度が低く設定されると俯角θを小さく設定すると共にその変化幅も相対的に小さく設定し、視点高度が高く設定されると俯角θを大きく設定すると共にその変化幅も相対的に大きく設定するようにした。
【0049】従って、視点高度が高い場合と低い場合との何れにおいても、自車両の現在位置付近の領域とその現在位置から遠方の領域とが表示部6の画面内にバランス良く表示されるようになり、使用者にとって視点からの遠近にわたる全体の把握が容易となるように表示を行うことができると共に、視線高度の変化に伴い地図表示がスムーズに変化するように感じさせることができる。
【0050】また、視線方向先にある地図上の特定地点を自車両の現在位置としたので、カーナビゲーションに使用する場合のように、画面の地図表示が時々刻々と変化する状態でも画面が自車両の現在位置を俯瞰した視線で描かれるので、使用者は、画面に表示された地図内における自車両の現在位置を容易に把握することができる。
【0051】更に、画面制御管理部14は、画面内のカーソルの表示位置を、俯角θの変化率Nに基づいて、画面の表示中心座標(X,Y)に対して(X,N・Y)により設定するようにした。
【0052】即ち、従来のカーソルの表示位置は、例えば画面のY座標において上方から3:1の位置に表示するなど、表示位置の割合が固定であった。そのため、例えば図6(d)のように俯角が極めて小さい場合には、画面内の手前側には既に自車両が通過した位置にある道路及びその周辺の建物などが表示されてしまう。これに対して、第2の実施形態によれば、ドライバーズビューに近い視点であっても、画面内における現在位置の表示を適切に設定することができる。
【0053】なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張が可能である。画面制御管理部14は、現在設定されている視点高度が所定の高度以下の場合には、視点高度変更スイッチが操作される毎の高度変更量を定値変化高度(最小変化高度)のみとし、現在設定されている視点高度が前記所定の高度を超える場合には、現在の視点高度に変化比率を乗じて得た比率変化高度を高度変更量とするように構成しても良い。この場合にも、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】画面制御管理部14は、視点高度の設定に関連付けて視線方向を上方または下方に設定可能としても良い。その結果、設定された視点高度に関わらず、特定の目標物や目標地域を自動的に表示画面内に捕捉可能となる。カーソルによって指示される地図上の視線方向先たる特定地点は、車両の現在位置に限ることなく、その現在位置の前方などに設定しても良い。俯角θ等の変化率Nは、(4)式に限ることはない。例えば、N=(視点高度)/(最大視点高度)
のように変化率Nを決定することで、視点高度の変化に対して俯角が線形に変化するようにしても良い。車両用ナビゲーション装置に限ることなく、地図を3次元表示するものであれば適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の全体構成を概略的に示すブロック図
【図2】視点高度の設定処理を示すフローチャート
【図3】視点高度変更スイッチの操作回数と視点高度および高度変更量との関係図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【図5】3次元表示における視点位置の変化を側方より示す図
【図6】各視点位置に応じて描画される、表示部の画面表示の一例を示す図
【図7】従来の視点位置の変化に応じた図6相当図(その1)
【図8】従来の視点位置の変化に応じた図6相当図(その2)
【図9】従来における視点高度設定の説明図
【符号の説明】
1はカーナビゲーション装置(地図表示装置)、4はスイッチ情報入力部(入力手段)、14は画面制御管理部(画面制御管理手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画面に地図を3次元表示する地図表示装置において、前記地図を3次元表示する際の視点高度を上昇または下降させるための高度変更指令を入力する入力手段と、この入力手段に高度変更指令が入力される毎に、現在設定されている視点高度に対して当該視点高度に予め決められた変化比率を乗算した比率変化高度だけ増加または減少させた高度を新たな視点高度として設定する画面制御管理手段を備えたことを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】 前記画面制御管理手段は、前記入力手段に高度変更指令が入力される毎に、現在設定されている視点高度に対して前記比率変化高度に一定の定値変化高度を加えた高度だけ増加または減少させた高度を新たな視点高度として設定することを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項3】 前記画面制御管理手段は、現在設定されている視点高度が所定の高度以下の場合には、前記入力手段に高度変更指令が入力される毎に、現在設定されている視点高度に対して一定の定値変化高度だけ増加または減少させた高度を新たな視点高度として設定することを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項4】 前記画面制御管理手段は、前記視点高度の設定とは独立して、視線方向を上方または下方に設定可能であることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の地図表示装置。
【請求項5】 前記画面制御管理手段は、前記視点高度の設定に関連付けて視線方向を上方または下方に設定可能であることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の地図表示装置。
【請求項6】 前記画面制御管理手段は、前記視点高度が高く設定される程視線方向を示す俯角が大きくなるように自動的に設定し、前記視点高度が低く設定される程前記俯角が小さくなるように自動的に設定することを特徴とする請求項5記載の地図表示装置。
【請求項7】 前記画面制御管理手段は、視点高度を低くする変更指令が入力された場合には前記視線方向の変化幅を相対的に小さく設定し、視点高度を高くする変更指令が入力された場合には前記視線方向の変化幅を相対的に大きく設定することを特徴とする請求項5または6記載の地図表示装置。
【請求項8】 前記画面制御管理手段は、前記視線方向を示す俯角θを、θ=N×(最大俯角−最小俯角)+最小俯角N= log2(視点高度/最小視点高度)/log2(最大視点高度/最小視点高度)
に基づいて設定することを特徴とする請求項7記載の地図表示装置。
【請求項9】 前記視線方向先にある地図上の特定地点は、地図上の現在位置であることを特徴とする請求項5ないし8の何れかに記載の地図表示装置。
【請求項10】 前記画面制御管理手段は、前記画面に前記特定地点を指示するためのカーソルを表示すると共に、当該カーソルの表示位置を、視点高度に応じて変更することを特徴とする請求項5ないし9の何れかに記載の地図表示装置。
【請求項11】 前記画面制御管理手段は、前記画面の表示中心を示す座標を(X,Y)とし、変化率NをN= log2(視点高度/最小視点高度)/log2(最大視点高度/最小視点高度)
とすると、前記カーソルの表示位置を(X,N・Y)により設定することを特徴とする請求項10記載の地図表示装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2001−27533(P2001−27533A)
【公開日】平成13年1月30日(2001.1.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−287346
【出願日】平成11年10月7日(1999.10.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】