説明

地図配信システム

【課題】膨大なPOIデータを地図上に重ね合わせた主題図をインターネット環境でも高速に配信する地図配信システムを提供する。
【解決手段】サーバシステム101にインターネットを介してクライアントシステム105がアクセスする地図配信システムであって、クライアントシステム105は、サーバシステム101から受信したURLによってサーバシステム101の地図画像データを読み込み表示する手段と、隣接する地図画像を表示する場合は、メッシュ番号を加減算し生成したURLによって追加表示する手段と、サーバシステム101から受信したURLによってサーバシステム101のPOI表示用画像データを読み込み地図に重ね合わせて表示する手段と、隣接するPOI表示用画像ファイルがある場合はメッシュ番号を加減算し、生成したURLによって追加表示する手段と、サーバシステム101から受信したPOIデータを表示する手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット環境で不動産物件や顧客情報などの空間上の位置を特定するPOI(Point Of Interest興味対象場所)情報を地図情報に重ね合せて表現する主題図をクライアントブラウザに配信する地図配信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レストランや不動産物件の情報検索や案内に地図を利用したサービスがある。地図を利用しない場合は地域を特定する住所や価格などのPOIが持つ属性を検索条件として指定し該当する店舗を一覧表示し、閲覧したい対象を一覧から選択し各々の詳細情報を閲覧する。しかし、利用者にとって操作回数が多く、また、付近に存在するPOIの情報取得や比較など利便性は必ずしも良いものとは言えない。
【0003】
地図を利用したサービスでは地図の表示エリアに存在する店舗がアイコン表示され、そのアイコンを選択することで詳細情報を閲覧できる。また、表示エリア内に存在する店舗が一目瞭然のため利便性が高い。
【0004】
図7は一般的な地図配信システムの概要を示すブロック構成図であり、WEBブラウザ708にダウンロードされるパラメタを入力するユーザインタフェース部701、WEBサーバ709に地図やPOIの検索要求を行う検索制御部702、WEBサーバ709から返却される地図やPOIを表示する地図表示部703、地図データを読み出す地図検索部704、地図データを管理する地図情報部705、POIデータを読み出すPOI検索部706、POIデータを管理するPOI情報部707とから構成されている。
【0005】
このような地図配信システムではユーザインタフェース部701から入力された検索パラメタを検索制御部702に渡し、検索制御部702は地図検索部704とPOI検索部706をそれぞれを呼び出す。呼び出された地図検索部704とPOI検索部706はそれぞれ地図情報部705とPOI情報部707を読み出し、地図表示部703に情報を返却する。地図表示部703は地図情報部705から取得した地図データを背景として表示し、POI情報部707から取得したPOIデータをアイコンで該当する位置に表示する。
一般にPOI情報部707に保持されるPOIデータは空間上の位置を表わす座標値と店舗名、住所、電話番号などの属性データから構成され、地図表示部703でPOIデータの持つ座標値の位置にアイコンを表示する。
【0006】
なお、本発明に関連する公知技術文献としては下記の特許文献1がある。特許文献1には、地図表示装置に表示するアイコンの重複の調整を行う表示処理の変更を効率良く行うようにした地図表示システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−175056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一般に不動産物件や顧客情報などのPOIデータは数万から数百万件の数量となり、広域のエリアを対象とする場合はクライアントに返却するデータ数が膨大となり、データ通信時間とアイコン化する処理時間の増大で多大な時間を要する。また、広域で表示した場合はアイコンがお互いに重なり合い見映えも操作性も悪い。通常はこの課題を回避するため、検索件数に上限を設けているが本質的な解決ではない。
したがって、広域エリアでの不動産物件や顧客の分布情況を把握し、不動産の買い付けやチラシ広告のエリア策定などの営業戦略立案業務などの目的には利用できない問題点があった。
【0009】
以上の現状に鑑み、本発明は、膨大なPOIデータを地図上に重ね合わせた主題図をインターネット環境でも高速に配信する地図配信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、地図データベースとPOI表示用画像データベースとPOIデータベースとを格納する記憶装置を備えたサーバシステムと、
前記サーバシステムにインターネットを介してアクセスする複数のクライアントシステムとから成る地図配信システムであって、
前記クライアントシステムは、
入力された住所と縮尺をパラメタとし、前記サーバシステムに対し地図画像データを要求する手段と、
入力された住所と縮尺をパラメタとし、前記サーバシステムに対しPOI表示用画像データを要求する手段と、
前記サーバシステムから受信した地図画像ファイルのURLから前記地図データベースの地図画像データを読み込み、WEBブラウザに表示する手段と、
表示領域に応じて隣接する地図画像を表示する場合は、地図画像ファイル名のメッシュ番号をそれぞれ加減算し対象の地図画像ファイルのURLを生成する手段と、
生成したURLによって前記地図データベースの地図画像データを読み込みWEBブラウザに追加表示する手段と、
前記サーバシステムから受信したPOI表示用画像ファイルのURLから前記POI表示用画像データベースのPOI表示用画像データを読み込み、地図に重ね合わせて表示する手段と、
表示領域に応じて隣接するPOI表示用画像ファイルがある場合はPOI表示用画像ファイル名のメッシュ番号をそれぞれ加減算し対象のPOI表示用画像ファイルのURLを生成する手段と、
生成したURLによって前記POI表示用画像データベースのPOI表示用画像データを読み込み、地図に重ね合わせて追加表示する手段と、
POIデータの詳細情報を表示する場合は、入力された地図上の任意の座標をパラメタとし前記サーバシステムに対し、POIデータを要求する手段と、
前記サーバシステムから受信したPOIデータを表示する手段と、
を備え、
前記サーバシステムは、
前記クライアントシステムから地図画像データ要求と共に受信した住所を、対応する座標値に変換する手段と、
変換した座標値から系番号、X方向メッシュ番号、Y方向メッシュ番号を求める手段と、
前記クライアントシステムから地図画像データ要求と共に受信した縮尺、求めた系番号、X方向メッシュ番号、及び、Y方向メッシュ番号から前記地図データベースの該当する地図画像ファイルのURLを取得する手段と、
取得した地図画像ファイルのURLを前記クライアントシステムに返信する手段と、
前記クライアントシステムからPOI表示用画像データ要求と共に受信した住所を対応する座標値に変換する手段と、
変換した座標値から系番号、X方向メッシュ番号、Y方向メッシュ番号を求める手段と、
前記クライアントシステムからPOI表示用画像データ要求と共に受信した縮尺、求めた系番号、X方向メッシュ番号、及び、Y方向メッシュ番号から前記POI表示用画像データベースの該当するPOI表示用画像ファイルのURLを取得する手段と、
取得した表示用画像ファイルのURLを前記クライアントシステムに返信する手段と、
前記クライアントシステムからPOIデータ要求と共に受信した座標に基づき前記POIデータベースから該当するPOIデータを取得する手段と、
取得したPOIデータを前記クライアントシステムに送信する手段と、
を備えたことを特徴とする地図配信システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の地図配信システムによれば、次のような効果がある。
(1)インターネット環境で大量のPOIデータを利用した主題図が高速に閲覧できる。
(2)高価な専用GISを購入しなくても、インターネットを利用した安価なサービスを業務利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る地図配信システムのシステム構成図である。
【図2】本発明に係る地図データベースの構成図である。
【図3】本発明に係るPOIデータベースの構成図である。
【図4】本発明に係るPOI表示用画像データベースの構成図である。
【図5】本発明に係る地図配信システムのPOIデータ登録時の処理フローである。
【図6】本発明に係る地図配信システムのPOIデータ表示時の処理フローである。
【図7】従来例の地図配信システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
尚、上記サーバシステム、及び、クライアントシステムは、コンピュータであり、上記各手段は、コンピュータのCPUが必要なコンピュータプログラムを読み込んで実行することにより実現される手段であり、そのフローチャート図が図5及び図6である。
【0014】
図1は、本発明を適用した地図配信システムの実施の形態の一例を示すシステム構成図であり、本地図配信システムは、地図データベース102と、POIデータベース103と、POI表示用画像データベース104とを格納する記憶装置を備えたサーバシステム101と、サーバシステム101にインターネットを介してアクセスする複数のクライアントシステム105とから構成される。クランアントシステム105のWEBブラウザ106からサーバシステム101のURLを入力するとクライントシステム105にアプリケーション107がダウンロードされ操作可能となる。
【0015】
サーバシステム101にはPOIデータをPOIデータベース103に登録し併せてPOIデータの位置に該当するPOI表示用画像データの更新を行うPOI登録部111と、地図データベース102から地図データを読み出す地図取得部112と、POIデータベース103からPOIデータを読み出すPOI取得部113と、POI表示用画像データベース104からPOI表示用画像データを読み出すPOI画像取得部114を備え、クライアントシステム105にダウンロードされたアプリケーション107はPOIデータの定義を行うPOI定義部121と、地図データとPOI表示用画像データの検索要求を行う地図検索部122と、地図検索要求により取得した地図データとPOI表示用画像データを重ね合わせて表示する地図表示部123と、地図上の位置からPOIデータの取得要求を行うPOI検索部124と、取得したPOIデータを表示するPOI表示部125を備える。
【0016】
地図データベース102は図2に示すように地図管理部201と地図画像ファイル群202から構成される。例えば、19平面座標系に従った地図データベースを構成する場合、地図管理部201にはそれぞれの系の情報が保持される。系の情報とは系の原点座標211と系に対応する地図画像ファイル223へのファイルパス212を意味する。一方、地図画像ファイル群202は縮尺221および系222ごとに分類された横200ピクセル、縦150ピクセルの地図画像ファイル223で構成される。地図画像ファイルは系の原点を中心とした横方向320Km、縦方向600Kmの範囲を横方向に1600分割、横方向に4000分割した、一つのメッシュが横200m、縦150mのエリアを表現する。画像ファイル名は「系番号+X方向のメッシュ番号+Y方向のメッシュ番号+拡張子」とする。系番号はアルファベットの順序番号(1系ならAと表記)とし、XおよびYのメッシュ番号は0始まりの4桁で表現すると、1系の左下の地図画像ファイル名は「A00000000.jpg」となる。
【0017】
POIデータベース103は例えば顧客情報とした場合、図3に示すように顧客識別番号301、POIの座標値302、氏名303、住所304および入会日305から構成される。
POI表示用画像データベース104は地図データベース102と同じ構造とする。すなわち図4に示すようにPOI表示用画像管理部401とPOI表示用画像ファイル群402から構成される。POI表示用画像管理部401は系の情報を管理するために系の原点座標411と系に対応するPOI表示用画像ファイル423へのファイルパス412を保持する。POI表示用画像ファイル423は地図画像ファイル223と同様、縮尺421および系422ごとに分類された横200ピクセル、縦150ピクセルの画像サイズであるが地図上に重ねて利用するため透過型の画像形式をとる。POI表示用画像ファイル名も地図画像ファイル223と同様となり、1系左下POI表示用画像ファイル名は「A00000000.png」となる。
【0018】
以下、以上のように構成された地図配信システムの動作を説明する。
図5はPOIデータ登録時の処理フローである。クライアントシステム105のPOIデータ定義部121で座標位置、氏名、住所および入会日を入力し、POI登録部111に、入力されたデータを渡す(送信する)と、POI登録部111はまずPOIデータベース103に、入力されたデータを登録する(501)。次に、縮尺毎に入力された座標位置から系番号(502)、X方向のメッシュ番号(503)、Y方向のメッシュ番号(504)を求め更新対象となるPOI表示用画像ファイル名を取得する。更に取得したPOI表示用画像ファイル名から対象ファイルを開き(505)、POI表示用画像ファイル223の座標位置に対応するピクセルのカラーインデックスを更新し(506)、保存(507)することを繰り返す。すなわちPOIデータの定義時にPOIデータとPOI表示用画像データを併せて作成する。
【0019】
作成したPOIデータ表示の処理フローは図6に示すように、クライアントシステム105の地図検索部122で例えば住所を入力する。地図検索部122はまず入力された住所と縮尺をパラメタとし、地図画像データを要求するため、地図取得部112を呼び出す。地図取得部112は渡された(受信した)住所を対応する座標値に変換し(601)、変換した座標値から系番号(602)、X方向メッシュ番号(603)、Y方向メッシュ番号(604)を求め、縮尺から該当する地図画像ファイル223のURL(605)を地図検索部122に返却(返信)する。次に、地図検索部122は住所と縮尺をパラメタとし、POI表示用画像データを要求するため、POI画像取得部114を呼び出す。POI画像取得部114は渡された(受信した)住所を対応する座標値に変換し(611)、変換した座標値から系番号(612)、X方向メッシュ番号(613)、Y方向メッシュ番号(614)を求め縮尺から該当するPOI表示用画像ファイル223のURL(615)を地図検索部122に返却(返信)する。
【0020】
次に地図検索部122は取得した二つのURLをパラメタとし、地図表示部123を呼び出す。地図表示部123は、まず、渡された(受信した)地図画像ファイルのURLから地図画像データを読み込みWEBブラウザ106に表示する(621)。表示領域に応じて隣接する地図画像を表示する場合はファイル名のメッシュ番号をそれぞれ加減算し対象の地図画像ファイルのURLを生成し(622)、追加表示する(621)。
【0021】
次に、POI表示用画像ファイル223のURLから画像データを読み込み地図に重ね合わせて表示する(623)。表示領域に応じて隣接するPOI表示用画像ファイルがある場合は地図画像ファイルと同じ要領でPOI表示用画像ファイルのURLを生成し(624)、追加表示する(623)。このようにPOI情報を重ね合わせた主題図を表示する場合、数件のPOI表示用画像ファイルのデータ転送および表示時間だけで済むこととなり、POIデータの件数に依存せず一定の性能が保障される。
【0022】
また、POIデータの詳細情報を表示する場合は地図上の任意の座標を入力することでPOI検索部124が入力された座標をパラメタとし、POIデータを要求するため、POI取得部113を呼び出し、POI取得部113が座標でPOIデータベース103から該当するPOIデータを取得し、取得したPOIデータをPOI表示部125に渡す(送信する)ことで表示される。
【符号の説明】
【0023】
101 サーバシステム
102 地図データベース
103 POIデータベース
104 POI表示用画像データベース
105 クライアントシステム
106 WEBブラウザ
221,421 縮尺
222,422 系
223 地図画像ファイル
423 POI表示用画像ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データベースとPOI表示用画像データベースとPOIデータベースとを格納する記憶装置を備えたサーバシステムと、
前記サーバシステムにインターネットを介してアクセスする複数のクライアントシステムとから成る地図配信システムであって、
前記クライアントシステムは、
入力された住所と縮尺をパラメタとし、前記サーバシステムに対し地図画像データを要求する手段と、
入力された住所と縮尺をパラメタとし、前記サーバシステムに対しPOI表示用画像データを要求する手段と、
前記サーバシステムから受信した地図画像ファイルのURLから前記地図データベースの地図画像データを読み込み、WEBブラウザに表示する手段と、
表示領域に応じて隣接する地図画像を表示する場合は、地図画像ファイル名のメッシュ番号をそれぞれ加減算し対象の地図画像ファイルのURLを生成する手段と、
生成したURLによって前記地図データベースの地図画像データを読み込みWEBブラウザに追加表示する手段と、
前記サーバシステムから受信したPOI表示用画像ファイルのURLから前記POI表示用画像データベースのPOI表示用画像データを読み込み、地図に重ね合わせて表示する手段と、
表示領域に応じて隣接するPOI表示用画像ファイルがある場合はPOI表示用画像ファイル名のメッシュ番号をそれぞれ加減算し対象のPOI表示用画像ファイルのURLを生成する手段と、
生成したURLによって前記POI表示用画像データベースのPOI表示用画像データを読み込み、地図に重ね合わせて追加表示する手段と、
POIデータの詳細情報を表示する場合は、入力された地図上の任意の座標をパラメタとし前記サーバシステムに対し、POIデータを要求する手段と、
前記サーバシステムから受信したPOIデータを表示する手段と、
を備え、
前記サーバシステムは、
前記クライアントシステムから地図画像データ要求と共に受信した住所を、対応する座標値に変換する手段と、
変換した座標値から系番号、X方向メッシュ番号、Y方向メッシュ番号を求める手段と、
前記クライアントシステムから地図画像データ要求と共に受信した縮尺、求めた系番号、X方向メッシュ番号、及び、Y方向メッシュ番号から前記地図データベースの該当する地図画像ファイルのURLを取得する手段と、
取得した地図画像ファイルのURLを前記クライアントシステムに返信する手段と、
前記クライアントシステムからPOI表示用画像データ要求と共に受信した住所を対応する座標値に変換する手段と、
変換した座標値から系番号、X方向メッシュ番号、Y方向メッシュ番号を求める手段と、
前記クライアントシステムからPOI表示用画像データ要求と共に受信した縮尺、求めた系番号、X方向メッシュ番号、及び、Y方向メッシュ番号から前記POI表示用画像データベースの該当するPOI表示用画像ファイルのURLを取得する手段と、
取得した表示用画像ファイルのURLを前記クライアントシステムに返信する手段と、
前記クライアントシステムからPOIデータ要求と共に受信した座標に基づき前記POIデータベースから該当するPOIデータを取得する手段と、
取得したPOIデータを前記クライアントシステムに送信する手段と、
を備えたことを特徴とする地図配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−203432(P2011−203432A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69811(P2010−69811)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】