地盤改良工法及びその管理方法
【課題】 塑性指数Ip及び液性限界WLが大きい高塑性粘土であっても、切削土塊を細分化し、固化材との混合を均一にして、良好な深層混合処理杭や柱状連続壁を造成することのできる新しい地盤改良工法及びその管理方法を提供する。
【解決手段】 掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削翼により掘り起こした掘削土塊を回転する攪拌翼により切断・細分化する掘削工程を含む地盤改良工法であって、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させる掘削工程と、掘削土塊と固化材を混合する固化処理工程を含む地盤改良工法とする。
【解決手段】 掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削翼により掘り起こした掘削土塊を回転する攪拌翼により切断・細分化する掘削工程を含む地盤改良工法であって、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させる掘削工程と、掘削土塊と固化材を混合する固化処理工程を含む地盤改良工法とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良工法及びその管理方法に関するものであり、詳しくは、掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、特定の掘削、攪拌条件の掘削工程と、掘削土塊と特定の固化材を特定の条件で混合する固化処理工程を含む地盤改良工法及びその管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工事において、CDM(Cement Deep Mixing Method)工法やDJM(Dry Jet Mixing)工法に代表される深層混合処理工法やSMW(Soil Mixing Wall)に代表されるソイルセメント地下連続壁工法等がある。これらの工法では地盤改良機に取り付けたロッドの先端部に掘削翼や攪拌翼、さらに固定翼を取り付けた地盤改良機により施工を行っている。
【0003】
即ち、地盤改良機に取り付けたロッドを回転し、ロッドの先端に取り付けた掘削翼で土を掻き起こし、ロッドに固定した攪拌翼により掘削土塊を破砕し、細分化しつつ固化材と混合し、固化させることにより、地盤中に柱状の固化体や連続壁を造成する工法である。
【0004】
図1に地盤改良機の先端部分を例示する。図1は1軸型の地盤改良機であるが、この他に、多軸型の地盤改良機がある。
【0005】
固化材としては通常、セメント類や石灰等を使用し、これらの固化材をスラリー状とする場合や粉体のまま使用することがある。また掘削土塊と固化材の混合は掘削時に混合を行うものや、ロッドの引き上げ時に行うもの、あるいはこれらの併用のものと限定はされていない。
【0006】
上記の工法では掘削した土塊と固化材の混合の度合いを示す指数として、羽根切り回数(攪拌翼が固化材を添加した土中1.0m区間を下降及び上昇する際の攪拌翼を構成する各羽根の回転数の総和)という概念を導入し、その羽根切り回数が350回/mを基準値とし、これで混合性を評価する手法がとられている。
【0007】
さらに機械的な工夫として、攪拌翼と掘削した土塊が同一方向に回転移動することを防ぎ、混合性を向上させるために、ロッドに対し自由に回転する外環(ボス)に固定翼を取り付け、これを土中に食い込ませて回転を防止した固定翼が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
これらのいずれの方法においても、目的とするところは掘削した土塊を細分化し、これと固化材を均一に混合し、均質な固化体を造成することにある。
【0009】
しかしながら、改良対象となる土質は様々である。例えば、低塑性土は圧縮強度が大きくてもスラリー状の固化材と混合すると、土塊はばらばらにほぐれて細分化し易いので、攪拌翼の周速が低速であっても固化材との混合は比較的容易であり、羽根切り回数により混合の程度を規定し易い。
【0010】
これに対し、高塑性粘土はスラリー状固化材と混合してもばらばらに細分化し難く、さらに攪拌翼で混合時に攪拌翼への附着や細分化土の再付着により、攪拌翼と一緒に共回りし、羽根切り回数を増加させても共回りするだけで、混合の程度を良くすることにならないという問題がある。
【0011】
なお、ここでいう高塑性粘土とは、土の塑性指数Ipが大きくかつ、液性限界WLが大きい粘土で、工学的分類による塑性図である図2において、A線とB線により区画されている部分(CH)に分類される粘土であり、具体的には自然状態の含水比が液性限界WLよりも小さく、鋭敏比が2以下の過圧密粘土等が相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3621971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の通りの背景から、塑性指数Ip及び液性限界WLが大きい高塑性粘土であっても、切削土塊を細分化し、固化材との混合を均一にして、良好な深層混合処理杭や柱状連続壁を造成することのできる新しい地盤改良工法及びその管理方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0015】
第1に、掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削翼により掘り起こした掘削土塊を回転する攪拌翼により切断・細分化する掘削工程を含む地盤改良工法であって、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させる掘削工程と、掘削土塊と固化材を混合する固化処理工程を含む。
【0016】
第2に、上記第1の発明の地盤改良工法において、掘削土塊に気泡もしくは気泡と水を添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、気泡混合土に固化材を添加・混合し、固化材混合土を造成する固化処理工程を含む。
【0017】
第3に、上記第1の発明の地盤改良工法において、掘削土塊に気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、気泡混合土に固化材を添加・混合し、固化材混合土を造成する固化処理工程を含む。
【0018】
第4に、上記第1の発明の地盤改良工法において、掘削土塊に気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、破泡剤を添加し、破泡しながら固化材混合土を造成する固化処理工程を含む。
【0019】
第5に、上記第2又は第3の発明の地盤改良工法において、気泡混合土に、破泡剤を加えた固化材を添加して、気泡を破泡しながら固化材混合土を造成する固化処理工程を含む。
【0020】
第6に、上記第2から第5の発明の地盤改良工法において、気泡混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上となるように調整する掘削工程を含む。
【0021】
第7に、上記第2から第6の発明の地盤改良工法において、固化材混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下となるように調整する掘削工程と固化処理工程を含む。
【0022】
第8に、上記第2から第6の発明の地盤改良工法において、固化材混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上となるように調整する掘削工程と固化処理工程を含む。
【0023】
第9に、上記第2から第8の発明の地盤改良工法において、気泡の添加を掘削翼から行い、気泡混合土を作る掘削混合工程を含む。
【0024】
第10に、上記第1から第8の発明の地盤改良工法において、固化材の添加を掘削翼または撹拌翼から行い、固化処理工程を含む。
【0025】
第11に、上記第1から第10の発明の地盤改良工法において、固化材として、ポンプ圧送できる最小水固化材比45%以上となる水量を加えたスラリー状の固化材ミルクを用いて固化処理工程を含む。
【0026】
第12に、上記第1から第10の発明の地盤改良工法において、固化材として粉体状固化材を用いて固化処理工程を含む。
【0027】
第13に、上記第2から第12の発明の地盤改良工法において、気泡径の中央値が100〜400μmの気泡を用いる。
【0028】
第14に、上記第2から第13の発明の地盤改良工法において、少なくとも気泡が消失しない必要な量以上の水を添加する。
【0029】
第15に、上記第1から第14の発明の地盤改良工法において、固化材として、少なくともセメント類、石灰類及び石膏類のいずれかの固化材を用いる。
【0030】
第16に、上記第1から第15の発明の地盤改良工法において、掘削翼及び攪拌翼を保持するロッドの形状が矩形であり、このロッドの回転時に圧送空気、破泡剤により大きくなった気泡を地上に逃がすための空隙を造る固化処理工程を含む。
【0031】
第17に、上記第1から第16の発明の地盤改良工法において、掘削工程もしくは固化処理工程で作られた混合土の増減に対して、地上にケーシングを立設して施工する。
【0032】
第18に、上記第1から第17の発明の地盤改良工法において、地盤改良機に、掘削した土塊を外周部に誘導する形状とした固定翼を用いる。
【0033】
第19に、上記第1から第18の発明の地盤改良工法において、地盤改良機に、掘削翼と逆回転する攪拌翼を用いる。
【0034】
第20に、上記第1から第19の発明の地盤改良工法において、地盤改良機の攪拌翼を多段に取り付け、これらが互いに逆回転するようにする。
【0035】
第21に、地盤改良工法の管理方法において、気泡混合土の一部を採取し、採取した気泡混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上を管理する。
【0036】
第22に、地盤改良工法の管理方法において、固化材混合土の一部を採取し、採取した固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー(TF値)が110mm以上を管理する
第23に、地盤改良工法の管理方法において、固化材混合土の一部を採取し、採取した固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下を管理する。
【0037】
第24に、地盤改良工法の管理方法において、撹拌機のトルク値を測定することで、固化材混合土のベーンせん断強さを8.0kN/m2以下を管理する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の地盤改良工法によれば、掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させながら、掘削翼より気泡を添加して気泡混合土を形成し、この気泡混合土の性状を調整する掘削混合工程と、気泡混合土と固化材を混合する固化処理工程で造成した固化材混合土の性状を調整した地盤改良工法としたので、塑性指数Ip及び液性限界WLが大きい高塑性粘土であっても、切削土塊を細分化し、固化材との混合を均一にして、良好な深層混合処理杭や柱状連続壁を造成することのできる新しい地盤改良工法とすることができる。
【0039】
さらに、添加する気泡条件、固化材条件、掘削翼及び攪拌翼の条件を特定することにより、上記本発明の効果をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】施工機先端部を例示した概要図である。
【図2】土の工学的分類方法による塑性図である。
【図3】土質による必要な平均周速をせん断強度との関係で示した図である。
【図4】ロッドの回転トルクと掘削深度の関係を示した図である。
【図5】一軸圧縮強度と湿潤密度の関係を例示した図である。
【図6】気泡添加量とベーンせん断強さの関係を示した図である。
【図7】気泡添加量とTF値の関係を示した図である。
【図8】地盤改良工法の工程を示した概略図である。
【図9】気泡吐出口及び固化材吐出口を有する施工機先端部(掘削翼)の例を示した概略図である。
【図10】土塊誘導固定翼の例を示した概略図である。
【図11】土塊誘導固定翼の別の例を示した概略図である。
【図12】逆転攪拌翼の例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の地盤改良工法について、まず、土塊の細分化を行うための掘削工程について詳述する。
<掘削工程>
本発明の掘削工程では、掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削翼により掘り起こした掘削土塊を回転する攪拌翼により切断・細分化する。そして、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させる。
【0042】
この土塊の切断に必要とされる平均周速は、以下に詳述する攪拌翼と掘削土塊の各条件にあてはめることより求めることができる。
【0043】
掘削土塊は半径R(m)の球形とし、湿潤密度をρ(kg/m3)と仮定する。この静止している土塊に、撹拌翼を周速V(m/s)で衝突させ、その力をF(N/m2)とする。Fにより土塊の中央部を切断する。土塊のせん断力をτ(N/m2)とする。
土塊の質量mは式(1)で表すことができる。
【0044】
【数1】
【0045】
衝突力Fとせん断力τは式(2)で表すことができる。
【0046】
【数2】
【0047】
土塊の運動量と力積の関係から式(3)が得られる。
【0048】
【数3】
【0049】
周速Vの撹拌翼が土塊を切断する時間をt(s)とすると、式(4)が得られる。
【0050】
【数4】
【0051】
式(2)、(3)、(4)より、式(5)が得られる。
【0052】
【数5】
【0053】
これらから、土塊を切断するためには、周速V以上の周速で、掘削土塊に衝突させることにより達成できることになる。
【0054】
例えば、一般的な高塑性粘土として、鋭敏比が2以下、自然含水比が液性限界以下の過圧密粘土を考え、その湿潤密度を1600kg/m3とし、半径0.6mの攪拌翼を使用する場合の、せん断強度τと平均周速の関係を式(5)を用いて計算すると図3に示すグラフで表すことができる。
【0055】
図3のグラフに示すように、せん断強度が20000N/m2の場合には切断に必要な周速は4.3m/sであり、せん断強度が5000N/m2の場合は2.2m/sとなる。なお、この時の回転数は各々138rpm、69rpmである。通常実施している回転数が20〜40rpmであるので、高塑性粘土の土塊の切断に対しては回転数が不足していることがわかる。
【0056】
攪拌翼の周速は中心からの距離に比例するので、ここで述べる平均周速は、攪拌翼のr/2(rは攪拌翼の半径)位置におけるものとする。
【0057】
また、改良対象土層は改良に先立って地質調査を行い、自然含水比、液性限界、せん断強度等の計測を行い、これらの値を用いて攪拌翼の必要な平均周速を決定することができる。
【0058】
以上のことからも明らかなように、本発明の地盤改良工法の掘削工程においては、土質に応じて一定値以上の周速、即ち、前記式(5)で導かれる土塊のせん断強度に対応する平均周速値以上の周速で攪拌翼を掘削土塊と衝突させ、切断し、細分化させる。これにより固化材との均質混合性を向上させることができる。
【0059】
しかしながら、上記の条件を適用しても、高塑性粘土の破砕、細分化に際しては、その粘性により掘削翼や攪拌翼に再付着し、団子状になり易く、掘削翼や攪拌翼に高塑性粘土が付着した状態で高速回転をさせると回転トルクが大きくなるため、再付着を防止することが必要となる。
【0060】
そのため、再付着を防止して、ロッドの回転トルクを小さくするために、掘削土に気泡を混合して流動性を高めることで、施工性で高品質な地盤改良体が得られる。
【0061】
本発明の地盤改良工法の施工方法を以下に説明するとともに、試験による結果から気泡を用いる地盤改良工法の好ましい条件を規定する。
<地盤改良工法>
本発明の地盤改良工法としては、以下に示す地盤改良工法1及び地盤改良工法2を例示することができる。
(地盤改良工法1)
地盤改良工法1は、掘削翼及び撹拌翼を下方に移動掘削しながら気泡もしくは気泡と水を添加し、掘削土塊と気泡が混合された気泡掘削土を最深部まで形成した後、掘削翼及び撹拌翼を上方に引上げながら気泡混合土に固化材を添加して固化材混合土を形成し地盤改良を行う施工方法である。
【0062】
この場合、引上げ時に固化材に破泡剤を加え、破泡しながら固化処理を行ってもよい。
(地盤改良工法2)
地盤改良工法2は、掘削翼及び撹拌翼を下方に移動掘削しながら気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加し、掘削土塊と気泡と固化材が混合された気泡混合土を最深部まで形成した後、掘削翼及び撹拌翼を上方に引上げながら気泡混合土に固化材を添加して固化材混合土を形成し地盤改良を行う施工方法である。
【0063】
この場合、引上げ時に固化材に破泡剤を加え破泡しながら固化処理を行ってもよいし、固化材を添加せずに破泡剤のみを添加して、破泡しながら固化処理を行ってもよい。
【0064】
また、上記地盤改良工法1、2のいずれの地盤改良工法においても、掘削翼及び撹拌翼による混合性を向上させるためには、下方移動する掘削時には気泡もしくは固化材を最下部に位置する掘削翼から添加し、引上げ時には上部に位置する撹拌翼から添加することが効果的である。
【0065】
また、各工程段階で形成される気泡混合土、固化材混合土、気泡固化材混合土の単位体積重量は、孔壁の安定性の面から、単位体積重量が10.3kN/m3以上とする必要があり、単位体積重量が10.3kN/m3以上となるように添加する気泡量、水量、固化材量を調整する必要がある。
<現場試験>
以下に示す現場試験により、掘削土塊に気泡を添加混合した気泡混合土の好ましい性状を確認した。
【0066】
現場試験において、地盤改良機として攪拌翼が半径50cmの一軸型を使用し、図1に示す撹拌機の先端部から気泡を吐出しながら関東ローム層を深さ6mまで掘削し、スラリー状気泡混合土を作成した。気泡添加率は0〜1.2%の範囲で変化させた。この現場試験条件を表1に、ロッドの回転トルクと掘削深度の関係を図4に示す。なお、気泡添加率は下記式(6)により算出することができる。
【0067】
【表1】
【0068】
【数6】
【0069】
図4から、気泡添加率が0〜1.2%の範囲では気泡添加率が大きいほどトルクは小さくなることが分かり、さらにNo.1の気泡添加率1.2%とNo.6の無添加を比較すると、トルクは1/2程度であることがわかる。これらのことから、気泡を添加することにより、地盤改良においても回転トルクは明らかに低減することが分かる。
【0070】
次に、上記現場試験で、気泡を添加しつつ掘削を行ない、気泡混合土を作成した後に、攪拌翼を引き上げながら、破泡剤を添加したセメントミルクを気泡混合土と混練し、固化処理を行った。
【0071】
本発明の地盤改良工法の掘削混合工程では気泡を使用するため、固化体の強度を高めたり、廃泥土量を減少させるためには、固化処理工程において気泡を破泡させ、地上部まで導き脱泡させる必要がある。
【0072】
そのために、固化処理工程で使用する固化材ミルク又は粉体状固化材中に破泡剤を添加し、これらと気泡混合土又は気泡固化材混合土と混合することにより、破泡剤が気泡の界面活性剤の効果を減少させ、数百ミクロンの気泡同士が接触して気泡同士が合体し粒径が大きくなる。
【0073】
混練により気泡同士が徐々に合体し、その粒径は徐々に大きくなり、浮力も大きくなるため、気泡混合土中を通って地上にまで到達する。即ち、気泡混合土中の気泡を脱泡することができる。
【0074】
固化材は高炉セメントB種を用い、水セメント比(W/C)は45〜100%まで変化させたセメントミルクとし、このセメントミルク中に破泡剤を添加して、混合気泡土とセメントミルクを混合、攪拌することにより破泡を生じさせ、気泡の脱泡状況を観察した。なお、セメント添加量は各試験改良柱とも150kg/m3とした。
【0075】
脱泡状況の観察によると、試験柱No.1、2では、気泡径5〜10cm程度の気泡が気泡混合土中を上昇して、地上面に脱泡する様子が観測できたが、No.3〜No.5の試験柱では脱泡現象は観測できなかった。
【0076】
上記現場試験において、サンプリングした試料により湿潤密度と一軸圧縮強度試験を行った結果を図5に示す。図5によれば、各改良柱のセメント添加量は150kg/m3と同量であるにもかかわらず、湿潤密度、一軸圧縮強度ともに、試験No.1、2とNo.3、4、5では大きな差異が生じている。試験柱No.1、2の湿潤密度は約1.50g/cm3であるのに、No.3、4、5は1.37〜1.41g/cm3に分布しており、この差は脱泡の程度の差と考えられる。
【0077】
また、No.1、2の一軸圧縮強度は345〜380kN/m2であるのに、No.3〜No.5では15〜155kN/m2と大きく異なっており、この原因はNo.3〜No.5の地盤改良柱からは気泡の脱泡が生じないために、気泡が弱点となったことに加え、気泡混合土の流動性不足により、セメントミルクとの混練りが不足し、強度の発現が小さくなったと考えられる。
【0078】
流動性を示す指標として、JIS R 5201に規定されるTF値が挙げられるが、気泡混合土のTF値を測定すると、No.1、2のTF値は、110mm以上であったのに対し、No.3〜No.5は100mm程度であった、このことより、110mmが脱泡及び混練りの限界値であると推定される。
【0079】
これらの結果から、本発明の地盤改良工法では、強度の発現のために、気泡混合土のTF値を110mm以上とすることが好ましい。
【0080】
また、さらに別の現場試験では、固化材が添加された固化材混合土の好ましい性状を、ベーンせん断強さ(地盤工学学会規準JGS1411-2003)とTF値の計測により明らかにした。
【0081】
図6は、現場試験において、所要の地盤改良強度が得られた混合土のベーンせん断強さを測定した結果であり、図7は、同じ混合土のベーンせん断とTF値の関係を示している。
【0082】
所要の地盤改良が得られた固化材混合土の性状として、図6ではベーンせん断強さが8.0kN/m2程度以下であり、図7では、TF値が110mm以上を示している。
【0083】
これらの結果から、本発明の地盤改良工法では、強度の発現のために、固化材が添加された固化材混合土のベーンせん断強さが8.0kN/m2以下、もしくはTF値が110mm以上とすることが好ましい。
【0084】
これらの現場試験において使用した気泡は、起泡剤を25倍に発泡させて、単位体積重量が0.392kN/m3、気泡粒径の中央値が100〜400μmの気泡を用いたが、発砲倍率が30倍としても同様な性状が得られることが室内試験で確認されている。
【0085】
本発明の地盤改良の掘削工程に用いる気泡は、発砲倍率が20〜30倍、気泡径の中央値が100〜400μmの範囲内の気泡を用いることが好ましい。
【0086】
気泡を添加して掘削、細分化、混合を行うと、気泡の水分は乾燥した土粒子に吸着されて破泡する。そのために不飽和な土層を対象に改良を行う場合には、破泡が生じないように気泡とともにセメントミルクや水による加水が必要である。破泡を生じさせないためのセメントミルクや水による加水量は、加水後の含水比が表面含水比以上になる水量である。
【0087】
本発明の地盤改良工法に用いる固化材は、一般に公知の土壌固化材を用いることができ、これらのものとしては、例えば、セメント類、石灰類、石膏類の固化材を挙げることができる。これらの中でも、セメント類の固化材としてポルトランドセメントを主材としたものを好適に用いることができる。
【0088】
このポルトランドセメントは凝結反応において、完全な水和にいたるまでにセメント重量の25%の水と化学反応し、さらにセメント重量の15%をゲル水として結合するとされており、40%以上の水を加えると強度の低下を引き起こすことが一般に知られている。
【0089】
改良対象土中に含有する水量は、通常40%以上であるので、固化材ミルクを固化材として使用する場合は、施工可能な最小の含水比とすることが望ましい。現状の技術による合理的な圧送法としてポンプ圧送を考慮すると、ポンプ圧送できる最小の水固化材比(W/C)は約45%であるので、固化材ミルクを用いる場合の水固化材比は45%とすることが好ましい。
【0090】
さらに、最小の水固化材比を用いることにより、産廃処理の必要な排泥量も最小となるので、経済的にも有利になる。
【0091】
上述の通り、気泡混合土あるいは気泡固化材混合土を固化させた時の圧縮強度を考慮した場合には、施工ができる範囲で水固化材比は出来る限り小さいほうが好ましい。そのため、水固化材比が0である、粉体状固化材を用いることもできる。
【0092】
この場合、粉体状固化材を気泡混合土又は、気泡固化材混合土中に断続的に、安定して送り出すための方法は特に限定されるものではないが、本発明の地盤改良工法においては、粉体状固化材を空気圧送により掘削翼または撹拌翼に送る方法を好適に採用することができる。
【0093】
なお、粉体状固化材を上記のように空気圧送等で送り出して用いる場合には、気泡混合土又は気泡が混合した固化材混合土の流動性が変動することが考えられるため、施工ができる範囲であればTF値、ベーンせん断強さ及び単位体積重量を限定する必要はない。
【0094】
気泡を破泡剤を用いて破泡させると、気泡は合体を繰り返し、大径となって上昇をするが、この上昇をより効率的に促進させるために、気泡の通り道を構成させることが好ましい。
【0095】
そのために、地盤改良機のロッドの形状を矩形とすることにより、ロッドの回転によりロッドと混合土の間に空隙をつくり、この空隙を気泡の通り道として構成させることにより脱泡を容易にすることができる。
【0096】
さらに粉体状固化材を攪拌翼まで空気圧送すると、圧送された空気は周辺地盤から漏気、噴発するなどの周辺地盤への影響度が大きいので、排気にも有効となる。
【0097】
図8に本発明の地盤改良工法の工程概略図を示す。まず、掘削土に気泡を加え(図8(A))、さらに固化材を加えると、気泡と固化材の体積に相当する体積の排泥土が地上に排出する(図8(B))。次に、気泡を脱泡させる工程においては体積減少が生じるので、排泥土が孔中に引き戻される(図8(C))。この排泥と引戻しを円滑に行い、かつ排泥土が掘削現場の周辺に流出しないように、また、固化処理終了後(図8(D))に、改良体が地表面と同程度の位置となるように調整するためにも図に示すケーシングを用いるのが好ましい。
【0098】
本発明の地盤改良工法に用いる掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機としては、図1に示した従来型のものでもよいし、気泡を吐出することができるようにした図9のような構成のものでもよい。
【0099】
また、本発明の方法については、撹拌翼の周速は最外縁部が最大なので、外縁に近いほうが土塊の切断・細分化には効率的である。そこで大きな土塊を外縁方向へ強制的に移動させ、切断することが混合にとって望ましい。
【0100】
この効果を促進するため、固定翼の形状を、図10、図11に示すように中心部より外径部に向かって面積が減少するような形状として、杭体中心部の被混合体を外周部へ誘導することが考慮される。このような形状を持つ固定翼を使用することにより、半径方向での土塊の切断を行い、良好な撹拌混合がなされる。
【0101】
さらにまた、土塊が攪拌翼と同方向に回転していると、撹拌翼と土塊との衝突速度は低減するので、この現象を抑制するために、固定翼を設けるが、攪拌翼の効果をより増大させるために、撹拌翼を掘削翼と逆回転させることにより、撹拌翼と土塊の実際の衝突速度は増加し、相対的な周速Vは増大することとなる。図12に示す固定翼に取り付けた逆転ギアを用いて逆回転する撹拌翼を使用することにより、土塊とのより早い衝突速度が得られ、良好な撹拌混合がなされることとなる。
【0102】
また、ギアの比率を変えることにより、撹拌翼の周速の増加も図り、さらなる良好な撹拌混合も図られる。
【0103】
現行、撹拌翼を複数配置した施工機械もあるが、翼の回転が同方向であり土塊は上位に移動するほど攪拌翼と同一方向に移動する現象が加速されてしまう傾向がある。
【0104】
そこで図12に示すように、逆転翼を交互に配置することにより、土塊の回転方向は転向し、上位の撹拌翼に対し衝突速度の増加が図られ、上記の欠点を補い、なおかつ更なる破砕、撹拌効率の増加が図られる。
【0105】
発明の地盤改良工法は、高塑性粘土においても細分化を行うために、攪拌翼の周速を高速で回転させ、攪拌翼の回転エネルギーにより土塊を切断し、細分化する掘削工程、また、気泡を混合する掘削混合工程と、固化材との混合状態を均質に混合する固化処理工程を含むものである。
【0106】
土塊と固化材を均質な混合体とすることにより、均質な強度を持ち、かつ連続的な固化体を得ることができ、結果として固化材の添加量を少なくし、かつ排泥量も少なくすることができる。また、掘削速度が増大し施工サイクルの短縮が図られ、さらには、均質な固化体を得ることにより、過大な設計をする必要がなくなり、工事コストの低減を図ることが可能となる。
<管理方法>
また、本地盤改良工法において、施工中に確実に所要品質の改良体が得られるように施工管理を行うことは非常に重要である。
【0107】
上記の現場実験により、気泡混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上であれば、所要の品質の地盤改良体が得られることが確認されたので、本地盤改良工法における管理方法のひとつとして、施工中に気泡混合土の一部を地中から採取し、採取した気泡混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上を管理することが挙げられる。
【0108】
また、上記の現場実験により、固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上もしくは、単位体積重量が10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下であれば、所要の品質の地盤改良体が得られることが確認されたので、本地盤改良工法における管理方法のひとつとして、固化材混合土の一部を地中から採取し、採取した単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上、もしくは、単位体積重量が10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さを8.0kN/m2以下に管理することが挙げられる。
【0109】
ベーンせん断強さは、地中から採取した試料をベーンせん断試験から求めることもできるが、地中から採取することなしに、撹拌機の撹拌時のトルクの測定値から求めることもできるので、本地盤改良工法の管理方法のひとつとして、撹拌機のトルク値を管理することが挙げられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良工法及びその管理方法に関するものであり、詳しくは、掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、特定の掘削、攪拌条件の掘削工程と、掘削土塊と特定の固化材を特定の条件で混合する固化処理工程を含む地盤改良工法及びその管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工事において、CDM(Cement Deep Mixing Method)工法やDJM(Dry Jet Mixing)工法に代表される深層混合処理工法やSMW(Soil Mixing Wall)に代表されるソイルセメント地下連続壁工法等がある。これらの工法では地盤改良機に取り付けたロッドの先端部に掘削翼や攪拌翼、さらに固定翼を取り付けた地盤改良機により施工を行っている。
【0003】
即ち、地盤改良機に取り付けたロッドを回転し、ロッドの先端に取り付けた掘削翼で土を掻き起こし、ロッドに固定した攪拌翼により掘削土塊を破砕し、細分化しつつ固化材と混合し、固化させることにより、地盤中に柱状の固化体や連続壁を造成する工法である。
【0004】
図1に地盤改良機の先端部分を例示する。図1は1軸型の地盤改良機であるが、この他に、多軸型の地盤改良機がある。
【0005】
固化材としては通常、セメント類や石灰等を使用し、これらの固化材をスラリー状とする場合や粉体のまま使用することがある。また掘削土塊と固化材の混合は掘削時に混合を行うものや、ロッドの引き上げ時に行うもの、あるいはこれらの併用のものと限定はされていない。
【0006】
上記の工法では掘削した土塊と固化材の混合の度合いを示す指数として、羽根切り回数(攪拌翼が固化材を添加した土中1.0m区間を下降及び上昇する際の攪拌翼を構成する各羽根の回転数の総和)という概念を導入し、その羽根切り回数が350回/mを基準値とし、これで混合性を評価する手法がとられている。
【0007】
さらに機械的な工夫として、攪拌翼と掘削した土塊が同一方向に回転移動することを防ぎ、混合性を向上させるために、ロッドに対し自由に回転する外環(ボス)に固定翼を取り付け、これを土中に食い込ませて回転を防止した固定翼が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
これらのいずれの方法においても、目的とするところは掘削した土塊を細分化し、これと固化材を均一に混合し、均質な固化体を造成することにある。
【0009】
しかしながら、改良対象となる土質は様々である。例えば、低塑性土は圧縮強度が大きくてもスラリー状の固化材と混合すると、土塊はばらばらにほぐれて細分化し易いので、攪拌翼の周速が低速であっても固化材との混合は比較的容易であり、羽根切り回数により混合の程度を規定し易い。
【0010】
これに対し、高塑性粘土はスラリー状固化材と混合してもばらばらに細分化し難く、さらに攪拌翼で混合時に攪拌翼への附着や細分化土の再付着により、攪拌翼と一緒に共回りし、羽根切り回数を増加させても共回りするだけで、混合の程度を良くすることにならないという問題がある。
【0011】
なお、ここでいう高塑性粘土とは、土の塑性指数Ipが大きくかつ、液性限界WLが大きい粘土で、工学的分類による塑性図である図2において、A線とB線により区画されている部分(CH)に分類される粘土であり、具体的には自然状態の含水比が液性限界WLよりも小さく、鋭敏比が2以下の過圧密粘土等が相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3621971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の通りの背景から、塑性指数Ip及び液性限界WLが大きい高塑性粘土であっても、切削土塊を細分化し、固化材との混合を均一にして、良好な深層混合処理杭や柱状連続壁を造成することのできる新しい地盤改良工法及びその管理方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0015】
第1に、掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削翼により掘り起こした掘削土塊を回転する攪拌翼により切断・細分化する掘削工程を含む地盤改良工法であって、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させる掘削工程と、掘削土塊と固化材を混合する固化処理工程を含む。
【0016】
第2に、上記第1の発明の地盤改良工法において、掘削土塊に気泡もしくは気泡と水を添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、気泡混合土に固化材を添加・混合し、固化材混合土を造成する固化処理工程を含む。
【0017】
第3に、上記第1の発明の地盤改良工法において、掘削土塊に気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、気泡混合土に固化材を添加・混合し、固化材混合土を造成する固化処理工程を含む。
【0018】
第4に、上記第1の発明の地盤改良工法において、掘削土塊に気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、破泡剤を添加し、破泡しながら固化材混合土を造成する固化処理工程を含む。
【0019】
第5に、上記第2又は第3の発明の地盤改良工法において、気泡混合土に、破泡剤を加えた固化材を添加して、気泡を破泡しながら固化材混合土を造成する固化処理工程を含む。
【0020】
第6に、上記第2から第5の発明の地盤改良工法において、気泡混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上となるように調整する掘削工程を含む。
【0021】
第7に、上記第2から第6の発明の地盤改良工法において、固化材混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下となるように調整する掘削工程と固化処理工程を含む。
【0022】
第8に、上記第2から第6の発明の地盤改良工法において、固化材混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上となるように調整する掘削工程と固化処理工程を含む。
【0023】
第9に、上記第2から第8の発明の地盤改良工法において、気泡の添加を掘削翼から行い、気泡混合土を作る掘削混合工程を含む。
【0024】
第10に、上記第1から第8の発明の地盤改良工法において、固化材の添加を掘削翼または撹拌翼から行い、固化処理工程を含む。
【0025】
第11に、上記第1から第10の発明の地盤改良工法において、固化材として、ポンプ圧送できる最小水固化材比45%以上となる水量を加えたスラリー状の固化材ミルクを用いて固化処理工程を含む。
【0026】
第12に、上記第1から第10の発明の地盤改良工法において、固化材として粉体状固化材を用いて固化処理工程を含む。
【0027】
第13に、上記第2から第12の発明の地盤改良工法において、気泡径の中央値が100〜400μmの気泡を用いる。
【0028】
第14に、上記第2から第13の発明の地盤改良工法において、少なくとも気泡が消失しない必要な量以上の水を添加する。
【0029】
第15に、上記第1から第14の発明の地盤改良工法において、固化材として、少なくともセメント類、石灰類及び石膏類のいずれかの固化材を用いる。
【0030】
第16に、上記第1から第15の発明の地盤改良工法において、掘削翼及び攪拌翼を保持するロッドの形状が矩形であり、このロッドの回転時に圧送空気、破泡剤により大きくなった気泡を地上に逃がすための空隙を造る固化処理工程を含む。
【0031】
第17に、上記第1から第16の発明の地盤改良工法において、掘削工程もしくは固化処理工程で作られた混合土の増減に対して、地上にケーシングを立設して施工する。
【0032】
第18に、上記第1から第17の発明の地盤改良工法において、地盤改良機に、掘削した土塊を外周部に誘導する形状とした固定翼を用いる。
【0033】
第19に、上記第1から第18の発明の地盤改良工法において、地盤改良機に、掘削翼と逆回転する攪拌翼を用いる。
【0034】
第20に、上記第1から第19の発明の地盤改良工法において、地盤改良機の攪拌翼を多段に取り付け、これらが互いに逆回転するようにする。
【0035】
第21に、地盤改良工法の管理方法において、気泡混合土の一部を採取し、採取した気泡混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上を管理する。
【0036】
第22に、地盤改良工法の管理方法において、固化材混合土の一部を採取し、採取した固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー(TF値)が110mm以上を管理する
第23に、地盤改良工法の管理方法において、固化材混合土の一部を採取し、採取した固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下を管理する。
【0037】
第24に、地盤改良工法の管理方法において、撹拌機のトルク値を測定することで、固化材混合土のベーンせん断強さを8.0kN/m2以下を管理する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の地盤改良工法によれば、掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させながら、掘削翼より気泡を添加して気泡混合土を形成し、この気泡混合土の性状を調整する掘削混合工程と、気泡混合土と固化材を混合する固化処理工程で造成した固化材混合土の性状を調整した地盤改良工法としたので、塑性指数Ip及び液性限界WLが大きい高塑性粘土であっても、切削土塊を細分化し、固化材との混合を均一にして、良好な深層混合処理杭や柱状連続壁を造成することのできる新しい地盤改良工法とすることができる。
【0039】
さらに、添加する気泡条件、固化材条件、掘削翼及び攪拌翼の条件を特定することにより、上記本発明の効果をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】施工機先端部を例示した概要図である。
【図2】土の工学的分類方法による塑性図である。
【図3】土質による必要な平均周速をせん断強度との関係で示した図である。
【図4】ロッドの回転トルクと掘削深度の関係を示した図である。
【図5】一軸圧縮強度と湿潤密度の関係を例示した図である。
【図6】気泡添加量とベーンせん断強さの関係を示した図である。
【図7】気泡添加量とTF値の関係を示した図である。
【図8】地盤改良工法の工程を示した概略図である。
【図9】気泡吐出口及び固化材吐出口を有する施工機先端部(掘削翼)の例を示した概略図である。
【図10】土塊誘導固定翼の例を示した概略図である。
【図11】土塊誘導固定翼の別の例を示した概略図である。
【図12】逆転攪拌翼の例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の地盤改良工法について、まず、土塊の細分化を行うための掘削工程について詳述する。
<掘削工程>
本発明の掘削工程では、掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削翼により掘り起こした掘削土塊を回転する攪拌翼により切断・細分化する。そして、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させる。
【0042】
この土塊の切断に必要とされる平均周速は、以下に詳述する攪拌翼と掘削土塊の各条件にあてはめることより求めることができる。
【0043】
掘削土塊は半径R(m)の球形とし、湿潤密度をρ(kg/m3)と仮定する。この静止している土塊に、撹拌翼を周速V(m/s)で衝突させ、その力をF(N/m2)とする。Fにより土塊の中央部を切断する。土塊のせん断力をτ(N/m2)とする。
土塊の質量mは式(1)で表すことができる。
【0044】
【数1】
【0045】
衝突力Fとせん断力τは式(2)で表すことができる。
【0046】
【数2】
【0047】
土塊の運動量と力積の関係から式(3)が得られる。
【0048】
【数3】
【0049】
周速Vの撹拌翼が土塊を切断する時間をt(s)とすると、式(4)が得られる。
【0050】
【数4】
【0051】
式(2)、(3)、(4)より、式(5)が得られる。
【0052】
【数5】
【0053】
これらから、土塊を切断するためには、周速V以上の周速で、掘削土塊に衝突させることにより達成できることになる。
【0054】
例えば、一般的な高塑性粘土として、鋭敏比が2以下、自然含水比が液性限界以下の過圧密粘土を考え、その湿潤密度を1600kg/m3とし、半径0.6mの攪拌翼を使用する場合の、せん断強度τと平均周速の関係を式(5)を用いて計算すると図3に示すグラフで表すことができる。
【0055】
図3のグラフに示すように、せん断強度が20000N/m2の場合には切断に必要な周速は4.3m/sであり、せん断強度が5000N/m2の場合は2.2m/sとなる。なお、この時の回転数は各々138rpm、69rpmである。通常実施している回転数が20〜40rpmであるので、高塑性粘土の土塊の切断に対しては回転数が不足していることがわかる。
【0056】
攪拌翼の周速は中心からの距離に比例するので、ここで述べる平均周速は、攪拌翼のr/2(rは攪拌翼の半径)位置におけるものとする。
【0057】
また、改良対象土層は改良に先立って地質調査を行い、自然含水比、液性限界、せん断強度等の計測を行い、これらの値を用いて攪拌翼の必要な平均周速を決定することができる。
【0058】
以上のことからも明らかなように、本発明の地盤改良工法の掘削工程においては、土質に応じて一定値以上の周速、即ち、前記式(5)で導かれる土塊のせん断強度に対応する平均周速値以上の周速で攪拌翼を掘削土塊と衝突させ、切断し、細分化させる。これにより固化材との均質混合性を向上させることができる。
【0059】
しかしながら、上記の条件を適用しても、高塑性粘土の破砕、細分化に際しては、その粘性により掘削翼や攪拌翼に再付着し、団子状になり易く、掘削翼や攪拌翼に高塑性粘土が付着した状態で高速回転をさせると回転トルクが大きくなるため、再付着を防止することが必要となる。
【0060】
そのため、再付着を防止して、ロッドの回転トルクを小さくするために、掘削土に気泡を混合して流動性を高めることで、施工性で高品質な地盤改良体が得られる。
【0061】
本発明の地盤改良工法の施工方法を以下に説明するとともに、試験による結果から気泡を用いる地盤改良工法の好ましい条件を規定する。
<地盤改良工法>
本発明の地盤改良工法としては、以下に示す地盤改良工法1及び地盤改良工法2を例示することができる。
(地盤改良工法1)
地盤改良工法1は、掘削翼及び撹拌翼を下方に移動掘削しながら気泡もしくは気泡と水を添加し、掘削土塊と気泡が混合された気泡掘削土を最深部まで形成した後、掘削翼及び撹拌翼を上方に引上げながら気泡混合土に固化材を添加して固化材混合土を形成し地盤改良を行う施工方法である。
【0062】
この場合、引上げ時に固化材に破泡剤を加え、破泡しながら固化処理を行ってもよい。
(地盤改良工法2)
地盤改良工法2は、掘削翼及び撹拌翼を下方に移動掘削しながら気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加し、掘削土塊と気泡と固化材が混合された気泡混合土を最深部まで形成した後、掘削翼及び撹拌翼を上方に引上げながら気泡混合土に固化材を添加して固化材混合土を形成し地盤改良を行う施工方法である。
【0063】
この場合、引上げ時に固化材に破泡剤を加え破泡しながら固化処理を行ってもよいし、固化材を添加せずに破泡剤のみを添加して、破泡しながら固化処理を行ってもよい。
【0064】
また、上記地盤改良工法1、2のいずれの地盤改良工法においても、掘削翼及び撹拌翼による混合性を向上させるためには、下方移動する掘削時には気泡もしくは固化材を最下部に位置する掘削翼から添加し、引上げ時には上部に位置する撹拌翼から添加することが効果的である。
【0065】
また、各工程段階で形成される気泡混合土、固化材混合土、気泡固化材混合土の単位体積重量は、孔壁の安定性の面から、単位体積重量が10.3kN/m3以上とする必要があり、単位体積重量が10.3kN/m3以上となるように添加する気泡量、水量、固化材量を調整する必要がある。
<現場試験>
以下に示す現場試験により、掘削土塊に気泡を添加混合した気泡混合土の好ましい性状を確認した。
【0066】
現場試験において、地盤改良機として攪拌翼が半径50cmの一軸型を使用し、図1に示す撹拌機の先端部から気泡を吐出しながら関東ローム層を深さ6mまで掘削し、スラリー状気泡混合土を作成した。気泡添加率は0〜1.2%の範囲で変化させた。この現場試験条件を表1に、ロッドの回転トルクと掘削深度の関係を図4に示す。なお、気泡添加率は下記式(6)により算出することができる。
【0067】
【表1】
【0068】
【数6】
【0069】
図4から、気泡添加率が0〜1.2%の範囲では気泡添加率が大きいほどトルクは小さくなることが分かり、さらにNo.1の気泡添加率1.2%とNo.6の無添加を比較すると、トルクは1/2程度であることがわかる。これらのことから、気泡を添加することにより、地盤改良においても回転トルクは明らかに低減することが分かる。
【0070】
次に、上記現場試験で、気泡を添加しつつ掘削を行ない、気泡混合土を作成した後に、攪拌翼を引き上げながら、破泡剤を添加したセメントミルクを気泡混合土と混練し、固化処理を行った。
【0071】
本発明の地盤改良工法の掘削混合工程では気泡を使用するため、固化体の強度を高めたり、廃泥土量を減少させるためには、固化処理工程において気泡を破泡させ、地上部まで導き脱泡させる必要がある。
【0072】
そのために、固化処理工程で使用する固化材ミルク又は粉体状固化材中に破泡剤を添加し、これらと気泡混合土又は気泡固化材混合土と混合することにより、破泡剤が気泡の界面活性剤の効果を減少させ、数百ミクロンの気泡同士が接触して気泡同士が合体し粒径が大きくなる。
【0073】
混練により気泡同士が徐々に合体し、その粒径は徐々に大きくなり、浮力も大きくなるため、気泡混合土中を通って地上にまで到達する。即ち、気泡混合土中の気泡を脱泡することができる。
【0074】
固化材は高炉セメントB種を用い、水セメント比(W/C)は45〜100%まで変化させたセメントミルクとし、このセメントミルク中に破泡剤を添加して、混合気泡土とセメントミルクを混合、攪拌することにより破泡を生じさせ、気泡の脱泡状況を観察した。なお、セメント添加量は各試験改良柱とも150kg/m3とした。
【0075】
脱泡状況の観察によると、試験柱No.1、2では、気泡径5〜10cm程度の気泡が気泡混合土中を上昇して、地上面に脱泡する様子が観測できたが、No.3〜No.5の試験柱では脱泡現象は観測できなかった。
【0076】
上記現場試験において、サンプリングした試料により湿潤密度と一軸圧縮強度試験を行った結果を図5に示す。図5によれば、各改良柱のセメント添加量は150kg/m3と同量であるにもかかわらず、湿潤密度、一軸圧縮強度ともに、試験No.1、2とNo.3、4、5では大きな差異が生じている。試験柱No.1、2の湿潤密度は約1.50g/cm3であるのに、No.3、4、5は1.37〜1.41g/cm3に分布しており、この差は脱泡の程度の差と考えられる。
【0077】
また、No.1、2の一軸圧縮強度は345〜380kN/m2であるのに、No.3〜No.5では15〜155kN/m2と大きく異なっており、この原因はNo.3〜No.5の地盤改良柱からは気泡の脱泡が生じないために、気泡が弱点となったことに加え、気泡混合土の流動性不足により、セメントミルクとの混練りが不足し、強度の発現が小さくなったと考えられる。
【0078】
流動性を示す指標として、JIS R 5201に規定されるTF値が挙げられるが、気泡混合土のTF値を測定すると、No.1、2のTF値は、110mm以上であったのに対し、No.3〜No.5は100mm程度であった、このことより、110mmが脱泡及び混練りの限界値であると推定される。
【0079】
これらの結果から、本発明の地盤改良工法では、強度の発現のために、気泡混合土のTF値を110mm以上とすることが好ましい。
【0080】
また、さらに別の現場試験では、固化材が添加された固化材混合土の好ましい性状を、ベーンせん断強さ(地盤工学学会規準JGS1411-2003)とTF値の計測により明らかにした。
【0081】
図6は、現場試験において、所要の地盤改良強度が得られた混合土のベーンせん断強さを測定した結果であり、図7は、同じ混合土のベーンせん断とTF値の関係を示している。
【0082】
所要の地盤改良が得られた固化材混合土の性状として、図6ではベーンせん断強さが8.0kN/m2程度以下であり、図7では、TF値が110mm以上を示している。
【0083】
これらの結果から、本発明の地盤改良工法では、強度の発現のために、固化材が添加された固化材混合土のベーンせん断強さが8.0kN/m2以下、もしくはTF値が110mm以上とすることが好ましい。
【0084】
これらの現場試験において使用した気泡は、起泡剤を25倍に発泡させて、単位体積重量が0.392kN/m3、気泡粒径の中央値が100〜400μmの気泡を用いたが、発砲倍率が30倍としても同様な性状が得られることが室内試験で確認されている。
【0085】
本発明の地盤改良の掘削工程に用いる気泡は、発砲倍率が20〜30倍、気泡径の中央値が100〜400μmの範囲内の気泡を用いることが好ましい。
【0086】
気泡を添加して掘削、細分化、混合を行うと、気泡の水分は乾燥した土粒子に吸着されて破泡する。そのために不飽和な土層を対象に改良を行う場合には、破泡が生じないように気泡とともにセメントミルクや水による加水が必要である。破泡を生じさせないためのセメントミルクや水による加水量は、加水後の含水比が表面含水比以上になる水量である。
【0087】
本発明の地盤改良工法に用いる固化材は、一般に公知の土壌固化材を用いることができ、これらのものとしては、例えば、セメント類、石灰類、石膏類の固化材を挙げることができる。これらの中でも、セメント類の固化材としてポルトランドセメントを主材としたものを好適に用いることができる。
【0088】
このポルトランドセメントは凝結反応において、完全な水和にいたるまでにセメント重量の25%の水と化学反応し、さらにセメント重量の15%をゲル水として結合するとされており、40%以上の水を加えると強度の低下を引き起こすことが一般に知られている。
【0089】
改良対象土中に含有する水量は、通常40%以上であるので、固化材ミルクを固化材として使用する場合は、施工可能な最小の含水比とすることが望ましい。現状の技術による合理的な圧送法としてポンプ圧送を考慮すると、ポンプ圧送できる最小の水固化材比(W/C)は約45%であるので、固化材ミルクを用いる場合の水固化材比は45%とすることが好ましい。
【0090】
さらに、最小の水固化材比を用いることにより、産廃処理の必要な排泥量も最小となるので、経済的にも有利になる。
【0091】
上述の通り、気泡混合土あるいは気泡固化材混合土を固化させた時の圧縮強度を考慮した場合には、施工ができる範囲で水固化材比は出来る限り小さいほうが好ましい。そのため、水固化材比が0である、粉体状固化材を用いることもできる。
【0092】
この場合、粉体状固化材を気泡混合土又は、気泡固化材混合土中に断続的に、安定して送り出すための方法は特に限定されるものではないが、本発明の地盤改良工法においては、粉体状固化材を空気圧送により掘削翼または撹拌翼に送る方法を好適に採用することができる。
【0093】
なお、粉体状固化材を上記のように空気圧送等で送り出して用いる場合には、気泡混合土又は気泡が混合した固化材混合土の流動性が変動することが考えられるため、施工ができる範囲であればTF値、ベーンせん断強さ及び単位体積重量を限定する必要はない。
【0094】
気泡を破泡剤を用いて破泡させると、気泡は合体を繰り返し、大径となって上昇をするが、この上昇をより効率的に促進させるために、気泡の通り道を構成させることが好ましい。
【0095】
そのために、地盤改良機のロッドの形状を矩形とすることにより、ロッドの回転によりロッドと混合土の間に空隙をつくり、この空隙を気泡の通り道として構成させることにより脱泡を容易にすることができる。
【0096】
さらに粉体状固化材を攪拌翼まで空気圧送すると、圧送された空気は周辺地盤から漏気、噴発するなどの周辺地盤への影響度が大きいので、排気にも有効となる。
【0097】
図8に本発明の地盤改良工法の工程概略図を示す。まず、掘削土に気泡を加え(図8(A))、さらに固化材を加えると、気泡と固化材の体積に相当する体積の排泥土が地上に排出する(図8(B))。次に、気泡を脱泡させる工程においては体積減少が生じるので、排泥土が孔中に引き戻される(図8(C))。この排泥と引戻しを円滑に行い、かつ排泥土が掘削現場の周辺に流出しないように、また、固化処理終了後(図8(D))に、改良体が地表面と同程度の位置となるように調整するためにも図に示すケーシングを用いるのが好ましい。
【0098】
本発明の地盤改良工法に用いる掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機としては、図1に示した従来型のものでもよいし、気泡を吐出することができるようにした図9のような構成のものでもよい。
【0099】
また、本発明の方法については、撹拌翼の周速は最外縁部が最大なので、外縁に近いほうが土塊の切断・細分化には効率的である。そこで大きな土塊を外縁方向へ強制的に移動させ、切断することが混合にとって望ましい。
【0100】
この効果を促進するため、固定翼の形状を、図10、図11に示すように中心部より外径部に向かって面積が減少するような形状として、杭体中心部の被混合体を外周部へ誘導することが考慮される。このような形状を持つ固定翼を使用することにより、半径方向での土塊の切断を行い、良好な撹拌混合がなされる。
【0101】
さらにまた、土塊が攪拌翼と同方向に回転していると、撹拌翼と土塊との衝突速度は低減するので、この現象を抑制するために、固定翼を設けるが、攪拌翼の効果をより増大させるために、撹拌翼を掘削翼と逆回転させることにより、撹拌翼と土塊の実際の衝突速度は増加し、相対的な周速Vは増大することとなる。図12に示す固定翼に取り付けた逆転ギアを用いて逆回転する撹拌翼を使用することにより、土塊とのより早い衝突速度が得られ、良好な撹拌混合がなされることとなる。
【0102】
また、ギアの比率を変えることにより、撹拌翼の周速の増加も図り、さらなる良好な撹拌混合も図られる。
【0103】
現行、撹拌翼を複数配置した施工機械もあるが、翼の回転が同方向であり土塊は上位に移動するほど攪拌翼と同一方向に移動する現象が加速されてしまう傾向がある。
【0104】
そこで図12に示すように、逆転翼を交互に配置することにより、土塊の回転方向は転向し、上位の撹拌翼に対し衝突速度の増加が図られ、上記の欠点を補い、なおかつ更なる破砕、撹拌効率の増加が図られる。
【0105】
発明の地盤改良工法は、高塑性粘土においても細分化を行うために、攪拌翼の周速を高速で回転させ、攪拌翼の回転エネルギーにより土塊を切断し、細分化する掘削工程、また、気泡を混合する掘削混合工程と、固化材との混合状態を均質に混合する固化処理工程を含むものである。
【0106】
土塊と固化材を均質な混合体とすることにより、均質な強度を持ち、かつ連続的な固化体を得ることができ、結果として固化材の添加量を少なくし、かつ排泥量も少なくすることができる。また、掘削速度が増大し施工サイクルの短縮が図られ、さらには、均質な固化体を得ることにより、過大な設計をする必要がなくなり、工事コストの低減を図ることが可能となる。
<管理方法>
また、本地盤改良工法において、施工中に確実に所要品質の改良体が得られるように施工管理を行うことは非常に重要である。
【0107】
上記の現場実験により、気泡混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上であれば、所要の品質の地盤改良体が得られることが確認されたので、本地盤改良工法における管理方法のひとつとして、施工中に気泡混合土の一部を地中から採取し、採取した気泡混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上を管理することが挙げられる。
【0108】
また、上記の現場実験により、固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上もしくは、単位体積重量が10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下であれば、所要の品質の地盤改良体が得られることが確認されたので、本地盤改良工法における管理方法のひとつとして、固化材混合土の一部を地中から採取し、採取した単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上、もしくは、単位体積重量が10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さを8.0kN/m2以下に管理することが挙げられる。
【0109】
ベーンせん断強さは、地中から採取した試料をベーンせん断試験から求めることもできるが、地中から採取することなしに、撹拌機の撹拌時のトルクの測定値から求めることもできるので、本地盤改良工法の管理方法のひとつとして、撹拌機のトルク値を管理することが挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削翼により掘り起こした掘削土塊を回転する攪拌翼により切断・細分化する掘削工程を含む地盤改良工法であって、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させる掘削工程と、掘削土塊と固化材を混合する固化処理工程を含むことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
掘削土塊に気泡もしくは気泡と水を添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、気泡混合土に固化材を添加・混合し、固化材混合土を造成する固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項3】
掘削土塊に気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、気泡混合土に固化材を添加・混合し、固化材混合土を造成する固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項4】
掘削土塊に気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、破泡剤を添加し、破泡しながら固化材混合土を造成する固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項5】
気泡混合土に、破泡剤を加えた固化材を添加して、気泡を破泡しながら固化材混合土を造成する固化処理工程を含むこと特徴とする請求項2又は3に記載の地盤改良工法。
【請求項6】
気泡混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上となるように調整する掘削工程を含むことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項7】
固化材混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下となるように調整する掘削工程と固化処理工程を含むことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項8】
固化材混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上となるように調整する掘削工程と固化処理工程を含むことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項9】
気泡の添加を掘削翼から行い、気泡混合土を作る掘削混合工程を含むことを特徴とする請求項2から8のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項10】
固化材の添加を掘削翼または撹拌翼から行い、固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1から8記載のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項11】
固化材として、ポンプ圧送できる最小水固化材比45%以上となる水量を加えたスラリー状の固化材ミルクを用いて固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項12】
固化材として粉体状固化材を用いて固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項13】
気泡径の中央値が100〜400μmの気泡を用いることを特徴とする請求項2から12のいずれかに記載の地盤改良工法。
【請求項14】
少なくとも気泡が消失しない必要な量以上の水を添加することを特徴とする請求項2から13のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項15】
固化材として、少なくともセメント類、石灰類及び石膏類のいずれかの固化材を用いることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項16】
掘削翼及び攪拌翼を保持するロッドの形状が矩形であり、このロッドの回転時に圧送空気、破泡剤により大きくなった気泡を地上に逃がすための空隙を造る固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項17】
掘削工程もしくは固化処理工程で作られた混合土の増減に対して、地上にケーシングを立設して施工することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項18】
地盤改良機に、掘削した土塊を外周部に誘導する形状とした固定翼を用いることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項19】
地盤改良機に、掘削翼と逆回転する攪拌翼を用いることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項20】
地盤改良機の攪拌翼を多段に取り付け、これらが互いに逆回転するようにしたことを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項21】
気泡混合土の一部を採取し、採取した気泡混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上を管理することを特徴とする地盤改良工法の管理方法。
【請求項22】
固化材混合土の一部を採取し、採取した固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー(TF値)が110mm以上を管理することを特徴とする地盤改良工法の管理方法。
【請求項23】
固化材混合土の一部を採取し、採取した固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下を管理することを特徴とする地盤改良工法の管理方法。
【請求項24】
撹拌機のトルク値を測定することで、固化材混合土のベーンせん断強さが8.0kN/m2以下に管理することを特徴とする地盤改良工法の管理方法。
【請求項1】
掘削翼及び攪拌翼を有する地盤改良機を用いて、掘削翼により掘り起こした掘削土塊を回転する攪拌翼により切断・細分化する掘削工程を含む地盤改良工法であって、掘削土塊の土質のせん断強度に対応して、土塊の切断に必要とされる平均周速以上で攪拌翼を回転させる掘削工程と、掘削土塊と固化材を混合する固化処理工程を含むことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
掘削土塊に気泡もしくは気泡と水を添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、気泡混合土に固化材を添加・混合し、固化材混合土を造成する固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項3】
掘削土塊に気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、気泡混合土に固化材を添加・混合し、固化材混合土を造成する固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項4】
掘削土塊に気泡と固化材もしくは気泡と水と固化材を同時に添加して気泡混合土を形成する掘削混合工程を含む掘削工程の後に、破泡剤を添加し、破泡しながら固化材混合土を造成する固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項5】
気泡混合土に、破泡剤を加えた固化材を添加して、気泡を破泡しながら固化材混合土を造成する固化処理工程を含むこと特徴とする請求項2又は3に記載の地盤改良工法。
【請求項6】
気泡混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上となるように調整する掘削工程を含むことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項7】
固化材混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下となるように調整する掘削工程と固化処理工程を含むことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項8】
固化材混合土の性状が、単位体積重量を10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上となるように調整する掘削工程と固化処理工程を含むことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項9】
気泡の添加を掘削翼から行い、気泡混合土を作る掘削混合工程を含むことを特徴とする請求項2から8のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項10】
固化材の添加を掘削翼または撹拌翼から行い、固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1から8記載のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項11】
固化材として、ポンプ圧送できる最小水固化材比45%以上となる水量を加えたスラリー状の固化材ミルクを用いて固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項12】
固化材として粉体状固化材を用いて固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項13】
気泡径の中央値が100〜400μmの気泡を用いることを特徴とする請求項2から12のいずれかに記載の地盤改良工法。
【請求項14】
少なくとも気泡が消失しない必要な量以上の水を添加することを特徴とする請求項2から13のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項15】
固化材として、少なくともセメント類、石灰類及び石膏類のいずれかの固化材を用いることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項16】
掘削翼及び攪拌翼を保持するロッドの形状が矩形であり、このロッドの回転時に圧送空気、破泡剤により大きくなった気泡を地上に逃がすための空隙を造る固化処理工程を含むことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項17】
掘削工程もしくは固化処理工程で作られた混合土の増減に対して、地上にケーシングを立設して施工することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項18】
地盤改良機に、掘削した土塊を外周部に誘導する形状とした固定翼を用いることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項19】
地盤改良機に、掘削翼と逆回転する攪拌翼を用いることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項20】
地盤改良機の攪拌翼を多段に取り付け、これらが互いに逆回転するようにしたことを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の地盤改良工法。
【請求項21】
気泡混合土の一部を採取し、採取した気泡混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー値(TF値)が110mm以上を管理することを特徴とする地盤改良工法の管理方法。
【請求項22】
固化材混合土の一部を採取し、採取した固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、テーブルフロー(TF値)が110mm以上を管理することを特徴とする地盤改良工法の管理方法。
【請求項23】
固化材混合土の一部を採取し、採取した固化材混合土の単位体積重量が10.3kN/m3以上、ベーンせん断強さが8.0kN/m2以下を管理することを特徴とする地盤改良工法の管理方法。
【請求項24】
撹拌機のトルク値を測定することで、固化材混合土のベーンせん断強さが8.0kN/m2以下に管理することを特徴とする地盤改良工法の管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−149503(P2012−149503A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194389(P2011−194389)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(597057254)有限会社マグマ (10)
【出願人】(390020488)太洋基礎工業株式会社 (15)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(597057254)有限会社マグマ (10)
【出願人】(390020488)太洋基礎工業株式会社 (15)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]