説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】 処理室内の異物を低減することで、基板処理の品質を向上させ、生産歩留りを改善する。
【解決手段】 基板を処理する処理室と、基板を保持し、処理室内外に搬送される基板保持具と、基板保持具への基板の装填、又は基板保持具からの基板の脱装が行われる移載室と、移載室内の基板保持具に、不活性ガスを噴射するノズルを備える不活性ガス供給機構と、処理室内から移載室内に搬出されて基板が脱装された基板保持具に、ノズルから不活性ガスを噴射するように不活性ガス供給機構を制御する制御部と、を備え、ノズルは、上方から下方に向かって角度をつけて不活性ガスを噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばDRAM等の半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に薄膜を形成する等の基板処理工程が実施されてきた。かかる基板処理工程は、基板を処理する処理室と、基板を保持して処理室内外に搬送される基板保持具と、基板保持具への基板の装填、又は基板保持具からの基板の脱装が行われる移載室と、を備える基板処理装置により実施されている。このような基板処理装置において、基板が装填された基板保持具を処理室内に搬送する際に、移載室内で、装填された基板と平行に(すなわち水平に)、基板保持具に向けて不活性ガスを噴射することが行われる場合がある(例えば特許文献1参照)。これにより、基板保持具に装填された基板の表面に付着している異物が除去されて、基板が処理室内へ搬送されるため、処理室内への異物の侵入を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−224143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板処理工程において、例えば成膜処理での加熱による基板の変形や、基板と基板保持具との材質の違いによる熱膨張率の差等により、基板保持具に形成された基板を支持するための溝等の基板支持部と基板との接触部が擦れ、基板保持具等が削れてしまう場合があった。このため、基板処理工程が数回繰り返されると、基板支持部が削れることにより発生した異物等が基板保持具上に堆積・蓄積する場合があった。そして、例えば次バッチの成膜処理の際、上述した異物が処理室内に飛散し、生産歩留りが低下したり、基板上に形成された薄膜の膜質が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、処理室内の異物を低減することで、基板処理の品質を向上させ、生産歩留りを改善する基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記基板を保持し、前記処理室内外に搬送される基板保持具と、
前記基板保持具への前記基板の装填、又は前記基板保持具からの前記基板の脱装が行われる移載室と、
前記移載室内の前記基板保持具に、不活性ガスを噴射するノズルを備える不活性ガス供給機構と、
前記処理室内から前記移載室内に搬出されて前記基板が脱装された前記基板保持具に、前記ノズルから不活性ガスを噴射するように前記不活性ガス供給機構を制御する制御部と、を備え、
前記ノズルは、上方から下方に向かって角度をつけて不活性ガスを噴射する基板処理装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
移載室内で基板保持具に基板を装填し、前記基板保持具を前記移載室内から処理室内に
搬入する工程と、
前記処理室内で前記基板を処理する工程と、
前記基板保持具を前記処理室内から前記移載室内に搬出し、前記基板保持具から処理後の前記基板を脱装する工程と、
前記移載室内に設けられた不活性ガス供給機構が備えるノズルから、前記基板が脱装された前記基板保持具に、上方から下方に向かって角度をつけて不活性ガスを噴射する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る基板処理装置及び半導体装置の製造方法によれば、処理室内の異物を低減することで、基板処理の品質を向上させ、生産歩留りを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の透視斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の処理室及び移載室の周辺の概略構成図であり、基板支持具が処理室内にある状態を示す。
【図3】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の処理室及び移載室の周辺の概略構成図であり、基板支持具が移載室内にある状態を示す。
【図4】本発明の一実施形態にかかる基板処理工程を例示するフロー図である。
【図5】成膜処理後に基板保持具上に異物が発生する様子を示す概略断面図である。
【図6】本発明の実施例にかかる基板処理工程後の基板保持具上の異物の状態を示す画像である。
【図7】従来の基板処理工程を例示するフロー図である。
【図8】比較例にかかる基板処理工程後の基板保持具上の異物の状態を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の一実施形態に係る基板処理装置10の構成例について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の概略構成図である。図2及び図3は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置10の処理室201及び移載室141の周辺の概略構成図であり、図2は、基板保持具217が処理室201内に搬送された状態を示し、図3は、基板保持具217が移載室141内に搬送された状態を示す。なお、本実施形態にかかる基板処理装置10は、例えばウエハ200等の基板に酸化、拡散処理、CVD(Chemical Vapor Depositon)処理などを行う縦型の装置として構成されている。
【0012】
(全体構成)
図1に示すように、基板処理装置10は、バッチ式縦型熱処理装置として構成されている。基板処理装置10は、内部に処理炉202などの主要部が設けられ、耐圧容器として構成された筐体12を備えている。基板としてのウエハ20を筐体12内外へ搬送するには、基板搬送容器(ウエハキャリア)としてのポッド(フープとも呼ぶ)16が用いられる。ポッド16内には、シリコン(Si)又は炭化シリコン(SiC)等で構成されたウエハ200が、例えば25枚収納されるように構成されている。筐体12の正面壁には、ポッド16を筐体12内外へ搬送するポッド搬送口(図示せず)が、筐体12の内外を連通するように設けられている。ポッド搬送口は、開閉機構としてのフロントシャッタ17によって開閉されるようになっている。
【0013】
筐体12の正面側(ポッド搬入搬出口の正面前方側)には、基板搬送容器受渡し台としてのポッドステージ18が設けられている。ポッドステージ18上には、蓋が閉じられた状態でポッド16が載置され、ポッドステージ18上にてポッド16の位置合わせが可能なように構成されている。ポッド16は、図示しない工程内搬送装置によってポッドステージ18上に載置され、また、ポッドステージ18上から搬出されるように構成されている。
【0014】
筐体12内の前後方向略中央部における上部空間には、基板搬送容器載置棚としての回転式ポッド棚22が設けられている。回転式ポッド棚22は、垂直方向に設けられて水平面内で間欠回転する支柱(図示せず)と、基板搬送容器載置台としての複数枚の棚板22aと、を備えている。複数枚の棚板22aは、支柱における上下3段の各位置において、水平姿勢で放射状に固定されるようにそれぞれ構成されている。なお、各棚板22aには、複数個のポッド16がそれぞれ載置されるように構成されている。
【0015】
筐体12内におけるポッドステージ18と回転式ポッド棚22との間には、基板搬送容器搬送装置としてのポッド搬送装置20が設けられている。ポッド搬送装置20は、ポッド16を保持したまま昇降移動する基板搬送容器昇降機構としてのポッドエレベータ20aと、ポッド16を保持したまま水平移動する基板搬送容器搬送機構としてのポッド搬送機構20bと、を備えている。ポッド搬送装置20は、ポッドエレベータ20aとポッド搬送機構20bとの協調動作により、ポッドステージ18とポッド載置棚22とポッドオープナ24との間でポッド16を搬送するように構成されている。
【0016】
筐体12内の下部空間には、筐体12内の前後方向の略中央部から後端部にわたって、移載室141が設けられている。筐体12の中央部側に位置する移載室141の正面壁141a(図2及び図3参照)には、ウエハ200を移載室141内外に搬送する基板搬入搬出口としてのウエハ搬送口14が、上下段に設けられている。上下段のウエハ搬送口14には、ポッドオープナ24がそれぞれ設けられている。ポッドオープナ24は、ポッド16を載置する載置台25と、ポッド16の蓋体であるキャップを着脱する蓋体着脱機構としてのキャップ着脱機構26と、をそれぞれ備えている。ポッドオープナ24は、載置台25に載置されたポッド16のキャップをキャップ着脱機構26によって着脱することによって、ポッド16のウエハ出し入れ口を開閉するように構成されている。ポッドオープナ24の近傍には、ウエハ枚数検出器27が設けられている。ウエハ枚数検出器27は、蓋を開けられたポッド16内のウエハ200の枚数を検知するように構成されている。なお、移載室141の構成については後述する。
【0017】
(処理室)
続いて、本実施形態にかかる基板処理装置10が備える処理炉202の構成について、主に図2を参照しながら説明する。
【0018】
図2に示すように、本実施形態にかかる処理炉202は、反応管としてのプロセスチューブ205を有している。プロセスチューブ205は、石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成されており、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ205の内側の筒中空部には、ウエハ200を処理する処理室201が形成されている。処理室201は、ウエハ200を、後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。プロセスチューブ205の内径は、ウエハ200を装填したボート217の最大外径よりも大きくなるように形成されている。
【0019】
プロセスチューブ205の下方には、プロセスチューブ205と同心円状に、マニホー
ルド209が配設されている。マニホールド209は、例えばSUS等の金属材料からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の内径は、ウエハ200を装填したボート217の最大外径よりも大きくなるように形成されている。マニホールド209の上端部は、プロセスチューブ205の下端部に係合し、プロセスチューブ205を支持するように設けられている。なお、マニホールド209とプロセスチューブ205との間には、シール部材としてのOリングが設けられている。また、マニホールド209の下方には、ボート217へのウエハ200の装填又はボート217からのウエハ200の脱装を行う移載室141が設けられている。移載室141の天板142とマニホールド209との間には、シール部材としてのOリングが設けられている。このマニホールド209が天板142に支持されることにより、プロセスチューブ205は垂直に据え付けられた状態となっている。なお、天板142には、処理炉202の開口部となる炉口160が設けられている。主に、プロセスチューブ205と、マニホールド209とにより反応容器が形成されている。
【0020】
(基板保持具)
処理室201内には、基板保持具としてのボート217が、マニホールド209の下端開口の下方側から搬送されるように構成されている。ボート217は、上下で一対の天板210及び底板211と、天板210及び底板211間に架設されて垂直に配設された複数本(本実施形態では3本(図1参照))の保持部材212とを備えて構成されている。天板210、底板211及び保持部材212は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成されている。各保持部材212には、複数枚のウエハ200を多段に支持可能にする基板支持部としての溝(図示せず)が長手方向に等間隔に配されて互いに対向して開口するように没設されている。そして、ウエハ200の外周縁辺が各保持部材212の多数条の溝間にそれぞれ挿入されることにより、ボート217は、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で垂直方向に多段に整列させて保持するようになっている。
【0021】
ボート217の下部には、円板形状をした断熱部材としての断熱板216が、水平姿勢で多段に複数枚配置されている。断熱板216は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成されている。断熱板216は、後述するヒータ206からの熱をマニホールド209側に伝え難くするように構成されている。
【0022】
ボート217の下方には、ボート217を回転させるボート回転機構254が設けられている。ボート回転機構254を駆動させることにより、ボート217を処理室201及び移載室141内で回転させることが可能に構成されている。ボート回転機構254の構成については後述する。
【0023】
(ガス供給系)
マニホールド209には、処理室201内に処理ガスを供給するガス供給ノズル280が、マニホールド209の側壁を貫通するように接続されている。ガス供給ノズル280は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等により構成されている。ガス供給ノズル280は、水平部と垂直部とを有するL字形状に形成され、水平部がマニホールド209の側壁に接続され、垂直部がプロセスチューブ205の内壁と処理室201内におけるウエハ200との間における空間に、プロセスチューブ205の下部より上部の内壁に沿って、ウエハ200の積層方向に向かって立ち上がるように設けられている。ガス供給ノズル280の垂直部の側面には、ガスを供給する複数の供給孔が、それぞれウエハ200の中心に向けて設けられている。供給孔の開口径は、処理室201内のガスの流量分布や速度分布を適正化するように適宜調整することができ、下部から上部にわたって同一としてよく、下部から上部にわたって徐々に大きくしてもよい。
【0024】
ガス供給ノズル280の上流端には、ガス供給管232が接続されている。ガス供給管232は上流側で4本に分岐している。4つに分岐したガス供給管232は、上流側から順に、第1ガス供給源191、第2ガス供給源192、第3ガス供給源193,第4ガス供給源194、ガス流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)181〜184、及び開閉弁としてのバルブ171〜174がそれぞれ接続されている。第1ガス供給源191は例えばシラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジクロロシラン(SiHCl)等のSi元素含有ガスを供給するように構成されている。第2ガス供給源192は例えばゲルマン(GeH)等のGe元素含有ガスを供給するように構成されている。第3ガス供給源193は水素ガス(Hガス)を供給するように構成されている。第4ガス供給源194は不活性ガスとして例えば窒素ガス(Nガス)を供給するように構成されている。バルブ171〜173を開けることにより、処理ガスとしてのSi元素含有ガス及びGe元素含有ガスと、希釈ガスとしてのHガスとの混合ガスが、処理室201内に供給される。また、バルブ171〜173を閉め、バルブ174を開けることにより、ガス供給ノズル280内がパージガスとしてのNガスによりパージされる。パージガスの流量はMFC184により調整することが可能である。
【0025】
MFC181〜184及びバルブ171〜174には、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、処理室201内に供給するガスの流量が所定のタイミングにて所定の流量となるように、MFC181〜184の開度を制御するように構成されている。主に、ガス供給ノズル280、ガス供給管232、バルブ171〜174、MFC181〜184、第1ガス供給源191、第2ガス供給源192、第3ガス供給源193,第4ガス供給源194により、ガス供給系が構成される。
【0026】
プロセスチューブ205の外側には、プロセスチューブ205の側壁面を囲う同心円状に、加熱部としてのヒータ206が設けられている。ヒータ206は円筒形状に形成されている。ヒータ206は、図示しない保持板としてのヒータベースに支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ206の近傍には、処理室201内の温度を検出する温度検出器としての温度センサ(図示せず)が設けられている。ヒータ206及び温度センサには、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、処理室201内の温度が所定のタイミングにて所定の温度分布となるように、温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータ206への供給電力を所定のタイミングにて制御するように構成されている。主に、ヒータ206及び温度センサ(図示せず)により、ウエハ200を加熱する加熱部が構成される。
【0027】
マニホールド209の側壁には、処理室201内を排気する排気管231が設けられている。排気管231の下流側(マニホールド209との接続側と反対側)には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検知する圧力検知手段としての圧力センサ(図示せず)、圧力調整装置としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、真空ポンプ246が設けられている。APCバルブ242は、その開度により処理室201内の圧力を調整する。なお、圧力センサは、排気管231内に限らず、処理室201内に設けられていてもよい。
【0028】
圧力センサ及びAPCバルブ242には、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、圧力センサにより検知した圧力情報に基づいて、処理室201内の圧力が所定のタイミングにて所定の圧力(真空度)となるように、APCバルブ242の開度を制御するように構成されている。主に、排気管231、圧力センサ、APCバルブ242及び真空ポンプ246により、本実施形態に係る処理室排気系が構成される。
【0029】
(移載室)
続いて、本実施形態にかかる基板処理装置10が備える移載室141の構成について、主に図3を参照しながら説明する。
【0030】
図1〜図3に示すように、筐体12内には、処理室201の下端に形成された炉口160と連通するように移載室141が設けられている。移載室141は、基板保持具としてのボート217へのウエハ200の装填、又はボート217からのウエハの脱装を行う。図1に示すように、移載室141は、ポッド搬送装置20や回転式ポッド棚22等が設けられた筐体12内の他の空間から気密に隔離されて形成されている。移載室141内の前側領域(筐体12内の中央部側)には、基板移載機構としてのウエハ移載機構28が設けられている。ウエハ移載機構28は、基板保持体としてのツイーザ32上にウエハ200を載置して水平方向に移動させる基板移載装置としてのウエハ移載装置28aと、ウエハ移載装置28aを昇降移動させる基板移載装置昇降機構としてのウエハ移載装置エレベータ(図示せず)と、を備えている。これら、ウエハ移載装置28aとウエハ移載装置エレベータとの協調動作により、ボート217にウエハを装填(ウエハチャージ)し、また、ボート217からウエハ200を取り出す(ウエハディスチャージ)ことが可能なように構成されている。
【0031】
図3に示すように、移載室141内には、移載室141内に搬送されたボート217に不活性ガスを噴射するノズル41を備える不活性ガス供給機構40が設けられている。不活性ガス供給機構40は、処理室201内から移載室141内に搬出されて、ウエハ200が脱装された空のボート217に、上方から下方に向かって角度をつけて、ノズル41から不活性ガスを噴射するように構成されている。すなわち、空のボート217に、斜め上方から不活性ガスを噴射することで、ボート217上に堆積した異物等をボート217上から吹き飛ばして除去するように構成されている。これにより、処理室201内に飛散する異物を低減することができ、基板処理の品質を向上させ、生産歩留りを改善することができる。
【0032】
不活性ガス供給機構40には、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等で構成されている不活性ガス供給管42が、移載室141の側壁を貫通するように接続されている。不活性ガス供給管42には、上流側から順に、不活性ガス供給源43、ガス流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)44及び開閉弁であるバルブ45が接続されている。不活性ガス供給源43は、例えば窒素(N)ガスを供給するように構成されているが、これに限定されるものではない。MFC44及びバルブ45には、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、移載室141内に供給する不活性ガスの流量が所定のタイミングにて所定の流量となるように、MFC44の開度を制御するように構成されている。主に、不活性ガス供給管42、不活性ガス供給源43、MFC44、バルブ45により、本実施形態にかかる不活性ガス供給系が構成される。
【0033】
不活性ガス供給機構40には、ノズル41の角度を調整するノズル角度可変機構46が設けられている。また、不活性ガス供給機構40には、ノズル41を移載室141内の上下方向に移動させることで、移載室141内におけるノズル41の高さ位置を調整するノズル昇降機構47が設けられている。このようにノズル41の角度及び高さ位置を調整することで、空のボート217の上部から下部にわたって、すなわち、ボート217の天板210から底板211にわたって満遍なく不活性ガスを噴射することができ、空のボート217上から異物をより除去することができる。ノズル角度可変機構46及びノズル昇降機構47には、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、ノズル41の角度及び高さ位置が所定のタイミングにて所定の角度及び高さ位置となるように、ノズル角度可変機構46及びノズル昇降機構47を制御するように構成されている。
【0034】
不活性ガス供給機構40には、空のボート217上の異物を吹き飛ばすことができる速い流速となるように、不活性ガスの流速を調整するガス流速調整機構(図示せず)が設けられている。なお、不活性ガスの流速を速くするために、例えばノズル41の径を小さくしてもよく、また、ノズル41の形状を先端が細くなった台形円錐形状にしてもよく、また、不活性ガス供給管42のMFC44とバルブ45との間にガス溜め部を設けてガス溜め部内で不活性ガスを高圧にして一気に噴射する等してもよい。さらに、例えば、MFC44により流量を調整することで流速を速くしてもよい。これにより、空のボート217上の異物をより除去することができる。ガス流速調整機構には、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、不活性ガスが所定のタイミングにて所定の流速となるように、ガス流速調整機構を制御するように構成されている。
【0035】
移載室141の外側の側壁には、移載室141の雰囲気中の異物濃度を測定する異物測定機構としてのパーティクルカウンタ48が設けられている。このパーティクルカウンタ48として、例えば光散乱式のレーザダストカウンタ等が用いられる。なお、パーティクルカウンタ48は、移載室141内に配設してもよい。パーティクルカウンタ48には、移載室141内の雰囲気をパーティクルカウンタ48に送る吸引管49が、移載室141の側壁を貫通するように接続されている。パーティクルカウンタ48には、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、パーティクルカウンタ48により測定した移載室141内の雰囲気中の異物濃度(異物数)が所定の値以下となったときに自動で、又は操作者からのコマンドを受け付けたときに、移載室141内への不活性ガスの供給を停止ないし供給量を減らすように、不活性ガス供給機構40を制御する(例えばバルブ45を閉じる、又はMFC44により流量調整する等)ように構成されている。
【0036】
移載室141内の、ノズル41と対向する位置には、ノズル41から噴射される不活性ガスにより吹き飛ばされた異物を収集する排気受けとしての仕切部50が設けられている。仕切部50は、移載室141の天板142から底板143にわたって垂直に配設されている。仕切部50を設けることにより、移載室141内を、少なくともノズル41を備え、ボート217が搬送される高圧領域と、少なくとも後述する移載室排気系が設けられる低圧領域と、に仕切ることができる。このように移載室141内を高圧領域と低圧領域とに分けることで、空のボート217上から吹き飛ばされ、移載室141内に飛散する異物を低圧領域に集めることができる。そして、収集された異物は、後述する移載室排気系を介して、移載室141内の低圧領域から移載室141外へ排出することができる。また、仕切部50として、例えばフィルタ等を用いてもよい。
【0037】
移載室141の側壁には、移載室141内を排気する排気管51が設けられている。排気管51の下流側(移載室141の接続側と反対側)には、上流側から順に、移載室141内の圧力を検知する圧力検知手段としての圧力センサ52、圧力調整装置としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ53、真空ポンプ54が設けられている。なお、圧力センサ52は、排気管51内に限らず、移載室141内に設けられていてもよい。圧力センサ52及びAPCバルブ53には、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、圧力センサ52により検知した圧力情報に基づいて、移載室141内の圧力が所定のタイミングにて所定の圧力(真空度)となるように、APCバルブ53の開度を制御するように構成されている。主に、排気管51、圧力センサ52、APCバルブ53及び真空ポンプ54により、本実施形態に係る移載室排気系が構成される。
【0038】
図2及び図3に示すように、移載室141を構成するサブ筐体13の側壁の外面には、ボート217を昇降移動させる基板保持具昇降機構としてのボートエレベータ115が設
けられている。ボートエレベータ115は、下基板245、ガイドシャフト264、ボール螺子244、上基板247、昇降モータ248、昇降基板252、及びベローズ265を備えている。下基板245は、移載室141を構成する側壁の外面に水平姿勢で固定されている。下基板245には、昇降台249と嵌合するガイドシャフト264、及び昇降台249と螺合するボール螺子244がそれぞれ鉛直姿勢で設けられている。ガイドシャフト264及びボール螺子244の上端には、上基板247が水平姿勢で固定されている。ボール螺子244は、上基板247に設けられた昇降モータ248により回転させられるように構成されている。ガイドシャフト264は、昇降台249の上下動を許容しつつ水平方向の回転を抑制するように構成されている。そして、ボール螺子244を回転させることにより、昇降台249が昇降するように構成されている。
【0039】
昇降台249には、中空の昇降シャフト250が垂直姿勢で固定されている。昇降台249と昇降シャフト250との連結部は、気密に構成されている。昇降シャフト250は、昇降台249と共に昇降するように構成されている。昇降シャフト250の下方側端部は、移載室141を構成する天板142を貫通している。移載室141の天板142に設けられる貫通穴の内径は、昇降シャフト250と天板142とが接触することのない様に、昇降シャフト250の外径よりも大きく構成されている。移載室141と昇降台249との間には、昇降シャフト250の周囲を覆うように、伸縮性を有する中空伸縮体としてのベローズ265が設けられている。昇降台249とベローズ265との連結部、及び天板142とベローズ265との連結部はそれぞれ気密に構成されており、移載室141内の気密が保持されるように構成されている。ベローズ265は、昇降台249の昇降量に対応できる充分な伸縮量を有している。ベローズ265の内径は、昇降シャフト250とベローズ265とが接触することのない様に、昇降シャフト250の外径よりも充分に大きく構成されている。
【0040】
移載室141内に突出した昇降シャフト250の下端には、昇降基板252が水平姿勢で固定されている。昇降シャフト250と昇降基板252との連結部は、気密に構成されている。昇降基板252の上面には、Oリング等のシール部材を介してシールキャップ219が気密に取付けられている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属より構成され、円盤状に形成され、ボート217を下方から垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115が上昇した時に処理炉202の下端部に設けられた炉口160を閉塞するように構成されている。昇降モータ248を駆動してボール螺子244を回転させ、昇降台249、昇降シャフト250、昇降基板252、及びシールキャップ219を上昇させることにより、処理室201内にボート217が搬入(ボートロード)されると共に、処理炉202の開口部である炉口160がシールキャップ219により閉塞されるよう構成されている。また、昇降モータ248を駆動してボール螺子244を回転させ、昇降台249、昇降シャフト250、昇降基板252、及びシールキャップ219を下降させることにより、処理室201内からボート217が搬出(ボートアンロード)されるよう構成されている。昇降モータ248には、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、ボートエレベータ115が所定の動作を所定のタイミングにて制御するように構成されている。
【0041】
昇降基板252の下面には、Oリング等のシール部材を介して駆動部カバー253が気密に取付けられている。昇降基板252と駆動部カバー253とにより駆動部収納ケース256が構成されている。駆動部収納ケース256の内部は、移載室141内の雰囲気と隔離されている。駆動部収納ケース256の内部には、ボート回転機構254が設けられている。ボート回転機構254には電力供給ケーブル258が接続されている。電力供給ケーブル258は、昇降シャフト250の上端から昇降シャフト250内を通ってボート回転機構254まで導かれており、ボート回転機構254に電力を供給するように構成されている。ボート回転機構254が備える回転軸255の上端部は、シールキャップ21
9を貫通して、上述したボート217を下方から支持するように構成されている。ボート回転機構254を作動させることにより、ボート217に保持されたウエハ200を処理室201内及び移載室141内で回転させることが可能なように構成されている。ボート回転機構254には、後述するコントローラ240が電気的に接続されている。コントローラ240は、ボート回転機構254が所定の動作を所定のタイミングにて制御するように構成されている。
【0042】
また、駆動部収納ケース256の内部であってボート回転機構254の周囲には、冷却機構257が設けられている。冷却機構257及びシールキャップ219には冷却流路259が形成されている。冷却流路259には冷却水を供給する冷却水配管260が接続されている。冷却水配管260は、昇降シャフト250の上端から昇降シャフト250内を通って冷却流路259まで導かれ、冷却流路259にそれぞれ冷却水を供給するように構成されている。
【0043】
(制御部)
本実施形態にかかる基板処理装置10は、制御部としてのコントローラ240を備えている。コントローラ240には、ノズル角度調整機構46、ノズル昇降機構47、パーティクルカウンタ48、ヒータ206、APCバルブ53,242、真空ポンプ54,246、ボート回転機構254、ボートエレベータ115、バルブ45,171〜174、MFC44,181〜184、圧力センサ52等がそれぞれ接続されている。コントローラ240により、ノズル角度調整機構46によるノズル41の角度調整動作、ノズル昇降機構47によるノズル41の高さ位置調整動作、パーティクルカウンタ48による移載室141内の異物濃度測定、ヒータ206の温度調整動作、APCバルブ53,242の開閉及び圧力調整動作、真空ポンプ54,246の起動・停止、ボート回転機構254の回転速度調節、ボートエレベータ115の昇降動作、バルブ45,171〜174の開閉動作、MFC44,181〜184の流量調整等の制御が行われる。
【0044】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置10を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上にpoly−SiGe(ポリシリコンゲルマニウム)膜を成膜する工程例について、図4を用いて説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ240により制御される。
【0045】
なお、本実施形態では、一例として、原料ガスとしてSi元素を含むシラン(SiH)ガス、及びGe元素を含むゲルマン(GeH)ガスを、希釈ガスとして水素(H)ガスを加熱された処理室201内に供給し、ウエハ200上にpoly−SiGe膜を形成する。
【0046】
(ウエハ搬入・装填工程(S10))
まず、ポッド16がポッドステージ18上に載置されると、フロントシャッタ17が移動してポッド搬送口が開放される。そして、ポッド搬送装置20により、ポッドステージ18上のポッド16が、ポッド搬送口を介して筐体12内へと搬入される。筐体12内へ搬入されたポッド16は、直接に、もしくは、回転式ポッド棚22の棚板22a上に載置されて一時的に保管された後に、上下3段のうちいずれか一のポッド載置台25上へと移載される。この際、ポッドオープナ24のウエハ搬送口14は、キャップ着脱機構26によって閉じられている。また、ボートエレベータ115が降下し、ボート217が移載室141内に降下した(ボート217が移載室141内に搬送された)状態となっている。そして、処理炉202の下端部に設けられた炉口160が炉口シャッタ161により閉じられた状態となっている。
【0047】
ポッド載置台25上に載置されたポッド16は、そのキャップがウエハ搬送口14の開口縁辺部に押し付けられる。そして、キャップ着脱機構26によってキャップが取り外され、ポッド16のウエハ出し入れ口が開放される。そして、キャップが取り外されたポッド16は、ウエハ枚数検出器27によってポッド16内のウエハ枚数を検知される。そして、ポッド16内のウエハ200は、ウエハ移載機構28のツイーザ32によってピックアップされ、ウエハ移載機構28の搬送動作によって、ウエハ搬送口14を介して移載室141内に搬入され、ボート217へ装填(ウエハチャージ)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構28は、ポッド16に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する動作が繰り返されれる。
【0048】
(ボート搬入工程(S20))
予め指定された枚数のウエハ200をボート217に装填したら、ウエハ搬送口14を閉じ、炉口シャッタ161が開けられ、処理炉202の下端部が開放される。そして、昇降モータ248を駆動して、所定枚数のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115により持ち上げることで、処理室201内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219は、Oリングを介して処理炉202の開口部である炉口160をシールキャップ219によりシールした状態となる。
【0049】
(成膜処理工程(S30))
続いて、ボート回転機構254によりボート217、すなわちウエハ200の回転を開始する。そして、APCバルブ242の開度をフィードバック制御し、処理室201内を所定の圧力(成膜処理圧力)とする。また、温度センサ(図示せず)により検出した温度情報に基づき、ヒータ206への供給電力をフィードバック制御し、処理室201内を所望の温度分布とする。具体的には、ウエハ200の表面温度が例えば450℃〜600℃の範囲内の温度となるようにする。ウエハの回転、圧力調整及び温度調整は少なくとも成膜処理工程の終了まで継続する。
【0050】
そして、バルブ171〜173を開け、処理ガスとしてのSiHガス(Si元素含有ガス)及びGeHガス(Ge元素含有ガス)と、希釈ガスとしてのHガスとの混合ガスを、処理室201内に供給する。処理ガス及び希釈ガスの流量等は、MFC181〜183により調整することができる。処理室201内に供給された処理ガス及び希釈ガスは、処理室201内を通過しつつウエハ200表面へ供給され、ガス排気管231から排気される。すなわち、Hガスにより希釈されつつ処理室201内に供給された処理ガスは、処理室201内を通過する際に、ウエハ200表面と接触することにより、ウエハ200表面上にpoly−SiGe膜が堆積(デポジション)される。所定時間の経過後、バルブ171〜173を閉じて処理室201内への処理ガス及び希釈ガスの供給を停止する。
【0051】
そして、処理室201内に残留している処理ガス等の残留ガスや反応生成物等を排気する。このとき、バルブ174を開けて、処理室201内にパージガスとしてのNガスを供給するようにすると、処理室201内からの残留ガスや反応生成物等の排気が促される。パージが完了したら、ヒータ206への電力供給を停止して処理室201内を降温させると共に、APCバルブ242の開度をフィードバック制御し、処理室201内の圧力と移載室141内とを同程度の圧力とする。そして、ボート回転機構254への電力供給を停止して、ウエハ200の回転を停止する。
【0052】
(ボート搬出工程(S40))
そして、昇降モータ248を駆動してシールキャップ219を下降させて、マニホールド209の下端を開口させ、処理済みウエハ200を保持したボート217を、マニホールド209の下端を介して処理室201内から移載室141内に搬出(ボートアンロード
)する。ボート217を移載室141内に搬出した後、炉口シャッタ161を閉めて炉口160を閉じる。
【0053】
(ウエハ脱装・搬出工程(S50))
そして、ボート217に保持されたウエハ200が所定温度まで冷却された後、ウエハ移載機構28により、ボート217から処理済みウエハ200を脱装(ウエハディスチャージ)して、ポッドオープナ24にセットされているポッド16に搬送して収容し、ウエハ200を移載室141内から搬出する。その後、上述したように、ポッド搬送装置20により、ウエハ200を収容したポッド16は、ポッド載置棚22、またはポッドステージ18に搬送される。
【0054】
(ブロア処理工程(S60))
成膜処理工程(S30)で加熱処理を行うことで、加熱によるウエハ200の変形や、ウエハ200とボート217との材質の違いによる熱膨張率の差等により、ボート217とウエハ200とが擦れてボート217が削れてしまい、石英粉等の異物が発生する場合がある。その結果、図5に、成膜処理後、ボート217上に異物が発生する様子を示す概略断面図で示すように、石英粉等の異物が、ボート217に没設されたウエハ200を支持する溝等に堆積・蓄積する場合がある。そして、次バッチの基板処理工程で、このような異物が堆積・蓄積したボート217にウエハ200が装填されて処理室201内に搬入されると、ボート217上に堆積・蓄積した異物が処理室201内に飛散し、基板処理の品質が低下し、生産歩留りが低下する場合があった。
【0055】
そこで、上述のウエハ脱装・搬出工程(S50)終了後、移載室141内に設けられた不活性ガス供給機構40が備えるノズル41から、不活性ガスとしてのNガスを上方から下方に向かって角度をつけて(すなわち斜め上方から)、空のボート217に噴射するブロア処理工程(S60)を行う。これにより、ボート217上に堆積・蓄積した異物等を、Nガスによりボート217上から吹き飛ばして除去することができる。特に、Nガスを上方から下方に向かって角度をつけて噴射することで、ボート217の保持部材212に形成されたウエハ200を支持する溝にNガスを噴射することができ、溝上の異物を除去することができる。従って、次バッチの基板処理工程では、異物が除去されたボート217が移載室141内から処理室201内へ搬入されるため、処理室201内の異物を低減することができる。
【0056】
すなわち、バルブ45を開け、不活性ガス供給管42から不活性ガス供給機構40が備えるノズル41から、空のボート217に、上方から下方に向かってNガスを噴射する。このとき、Nガスの流速が所定の速度となるように、Nガスの流量や圧力等を調整する。また、真空ポンプ54を作動させてバルブ53を開けることにより、移載室141内を排気しつつ、Nガスをノズル41から噴射してもよい。
【0057】
このとき、ノズル角度可変機構46及びノズル昇降機構47を駆動して、ノズル41の角度及び移載室141内におけるノズル41の高さ位置を調整してもよい。これにより、ボート217の上部から下部にわたって満遍なくNガスを噴射することができる。具体的には、ボート217の天板210、底板211、保持部材212、保持部材212に没設されたウエハ200を支持する溝、断熱体216等のボート217の構成部材にNガスを噴射することができる。また、シールキャップ219にもNガスを噴射することができる。これにより、処理室201内の異物をより低減することができる。
【0058】
また、少なくともノズル41からNガスを噴射している間、ボート回転機構254を駆動させて、移載室141内でボート217を回転させてもよい。これにより、ボート217にNガスを死角なく空のボート217に噴射することができ、ボート217上の異
物をより確実に除去することができる。
【0059】
ボート217上から吹き飛ばされた異物等は、移載室141内のノズル41に対向する位置に設けられた排気受けとしての仕切部50により移載室141内に形成された低圧領域に収集されて、排気管51を介して移載室141外に排出される。そして、パーティクルカウンタ48により測定した移載室141の雰囲気中の異物濃度の値が所定の値以下となった場合、または操作者からのコマンドを受け付けた場合に、バルブ45を閉めて不活性ガスの供給を停止してブロア処理工程(S60)を終了し、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0060】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0061】
(a)本実施形態によれば、移載室141内に不活性ガスを噴射するノズル41を備える不活性ガス供給機構40が設けられている。そして、処理室201内から移載室141内に搬出されてウエハ200が脱装された空のボート217に、上方から下方に向かって角度をつけて、ノズル41から不活性ガスを噴射するようにしている。そして、ノズル41から噴射される不活性ガスの流速は、ボート217上に堆積・蓄積した異物を吹き飛ばすことができる速い流速に調整されている。これにより、ボート217上に堆積・蓄積した異物等を、不活性ガスによりボート217上から吹き飛ばして除去することができ、処理室201内の異物を低減することができる。その結果、例えば次バッチの基板処理工程では、異物が除去されたボート217が移載室141内から処理室201内へ搬入されるため、処理室201内の異物を低減することができ、生産歩留まりを向上させることができる。すなわち、成膜処理において、ウエハ200上に形成された膜中に異物が混入することを低減でき、膜質を向上させる等、基板処理の品質を向上させることができる。また、移載室141内及びボート217のメンテナンス周期を長くすることができ、基板処理装置10の稼働率を向上させることができる。
【0062】
(b)本実施形態によれば、不活性ガス供給機構40は、ノズル41の角度を調整するノズル角度可変機構46を備えている。また、不活性ガス供給機構40は、移載室141内でノズル41の高さ位置を調整するノズル昇降機構47を備えている。これにより、ボート217の上部から下部にかけて満遍なく不活性ガスを噴射することができ、ボート217上の異物をより除去することができる。
【0063】
(c)本実施形態によれば、ボート217はボート回転機構254を備え、移載室141内で、少なくともノズル41から不活性ガスを噴射している間、ボート217を回転可能に構成されている。これにより、空のボート217に不活性ガスを死角なく噴射することができ、ボート217上の異物をより確実に除去することができる。
【0064】
(d)本実施形態によれば、移載室141の外側の側壁には、移載室141の雰囲気中の異物濃度を測定する異物測定機構としてのパーティクルカウンタ48が設けられている。従って、パーティクルカウンタ48により測定した移載室141内の雰囲気中の異物濃度が所定の値以下となったときに、移載室141内への不活性ガスの供給を停止ないし供給量を減らすように、不活性ガス供給機構40を自動で制御することができる。
【0065】
(e)本実施形態によれば、移載室141内のノズル41と対向する位置に、ノズル41から噴射される不活性ガスにより吹き飛ばされた異物を収集する排気受けとしての仕切部50が設けられている。これにより、ノズル41から噴射された不活性ガスにより吹き飛ばされたボート217上の異物が、移載室141内で散乱して、ボート217に再付着することを防止することができる。
【0066】
(f)本実施形態によれば、ボート217から脱装されたウエハ200が移載室141から搬出された後、ノズル41から不活性ガスを噴射させるようにしている。これにより、ボート217上から吹き飛ばされた異物が、処理後のウエハ200に付着することを防止することができる。
【0067】
以下、参考までに、従来の基板処理工程について図7を用いて説明する。図7は、従来の基板処理工程を例示するフロー図である。図7に示すように、従来の基板処理工程では、移載室141内でウエハ200が脱装されたボート217に不活性ガスを噴射するブロア処理工程(S60)を行っていなかった。このため、ボート217上、特にボート217上のウエハ200を支持する溝に異物が堆積・蓄積する場合があった。そして、例えば次バッチ処理で、このように異物が堆積・蓄積したボート217に、ウエハ200が装填されて処理室201内に搬入されると、ボート217上に堆積・蓄積した異物が処理室201内に飛散し、基板処理の品質が低下し、生産歩留りが低下する場合があった。これに対し、本実施形態によれば、上述したように、移載室141内に不活性ガスを噴射するノズル41を備える不活性ガス供給機構40を設け、処理室201内から移載室141内に搬出されてウエハ200が脱装されたボート217に、上方から下方に向かって角度をつけてノズル41から不活性ガスを噴射するブロア処理工程(S60)を行うようにしている。これにより、ボート217上に堆積・蓄積した異物等を、不活性ガスによりボート217上から吹き飛ばして除去することができ、処理室201内の異物を低減することができる。このため、上記課題を効果的に解決することができる。
【0068】
図6に、本発明の実施例にかかる基板処理工程後の基板保持具上の異物の状態を示す画像を示し、図8に、比較例にかかる従来の基板処理工程後の基板保持具上の異物の状態を示す画像を示す。図8に示すように、ブロア処理工程(S60)を行っていない比較例では、ボート217上に異物である白いパウダー状のものが堆積・蓄積していることが分かる。これに対し、図6に示すように、ブロア処理工程(S60)を行った実施例では、ボート217上から異物である白いパウダー状のものが除去されていることが分かる。
【0069】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0070】
上述の実施形態では、不活性ガス供給機構40がノズル角度調整機構46及びノズル昇降機構47を備える場合について説明したが、例えば、不活性ガス供給機構40はノズル角度調整機構46又はノズル昇降機構47の一方だけでもよい。また例えば、ノズル41の角度が不活性ガスを上方から下方に向かって噴射するように構成されていれば、ノズル角度調整機構46又はノズル昇降機構47を備えていなくてもよい。
【0071】
上述の実施形態では、ブロア処理工程(S60)を毎回行っているが、例えば、ウエハ搬入・装填工程(S10)〜ウエハ脱装・搬出工程(S50)を数回行った後に、ブロア処理工程(S60)を行うようにしてもよい。
【0072】
また例えば、移載室141内のボート217が収容される位置にブラシ等を設けてもよい。なお、ブラシ等はコントローラ240に電気的に接続され、不活性ガス供給機構40と連動して作動するように制御してもよい。すなわち、ノズル41からボート217に向けて不活性ガスを噴射している間、ブラシを作動させてボート217上から異物をさらに除去する構成としてもよい。
【0073】
また例えば、移載室141内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給管42に設けられ
た不活性ガス供給源43は、処理室201内に不活性ガスを供給するガス供給管232に設けられた第4ガス供給源194と共有であってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、処理ガスとしてSiHガス及びGeHガスを用い、CVD法によりウエハ200上にpoly−SiGe膜を成膜する場合について説明したが、例えばALD法等により成膜する場合であってもよい。また例えば、ウエハ200上に薄膜を形成する場合に限らず、ウエハ200に熱処理を施す場合に本発明は好適に適用可能である。
【0075】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0076】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記基板を保持し、前記処理室内外に搬送される基板保持具と、
前記基板保持具への前記基板の装填、又は前記基板保持具からの前記基板の脱装が行われる移載室と、
前記移載室内の前記基板保持具に、不活性ガスを噴射するノズルを備える不活性ガス供給機構と、
前記処理室内から前記移載室内に搬出されて前記基板が脱装された前記基板保持具に、前記ノズルから不活性ガスを噴射するように前記不活性ガス供給機構を制御する制御部と、を備え、
前記ノズルは、上方から下方に向かって角度をつけて不活性ガスを噴射する基板処理装置が提供される。
【0077】
好ましくは、
前記制御部は、前記基板保持具から脱装された前記基板が、前記移載室から搬出された後、前記ノズルから不活性ガスを噴射させるように、前記不活性ガス供給機構を制御する。
【0078】
また好ましくは、
前記不活性ガス供給機構はノズル角度可変機構を備える。
【0079】
また好ましくは、
前記不活性ガス供給機構はノズル昇降機構を備える。
【0080】
また好ましくは、
前記基板保持具は回転機構を備え、
前記制御部は、少なくとも前記ノズルから不活性ガスが噴射されている間、前記移載室内で前記基板保持具を回転させるように、前記回転機構を制御する。
【0081】
また好ましくは、
前記不活性ガス供給機構はガス流速調整機構を備え、
前記制御部は、前記基板保持具上の異物を吹き飛ばすことができる速い流速となるように、前記ガス流速調整機構を制御する。
【0082】
また好ましくは、
前記移載室の雰囲気中の異物濃度を測定する異物測定機構を備え、
前記制御部は、前記異物測定機構により測定した異物濃度が所定の値以下となったときに、前記移載室内への不活性ガスの供給を停止するように、前記不活性ガス供給機構を制
御する。
【0083】
また好ましくは、
前記移載室内の、前記ノズルと対向する位置には、前記ノズルから噴射される不活性ガスにより吹き飛ばされた異物を収集する仕切部が設けられている。
【0084】
本発明の他の態様によれば、
移載室内で基板保持具に基板を装填し、前記基板保持具を前記移載室内から処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内で前記基板を処理する工程と、
前記基板保持具を前記処理室内から前記移載室内に搬出し、前記基板保持具から処理後の前記基板を脱装する工程と、
前記移載室内に設けられた不活性ガス供給機構が備えるノズルから、前記基板が脱装された前記基板保持具に、上方から下方に向かって角度をつけて不活性ガスを噴射する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0085】
40 不活性ガス供給機構
41 ノズル
141 移載室
201 処理室
217 ボート(基板保持具)
240 コントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記基板を保持し、前記処理室内外に搬送される基板保持具と、
前記基板保持具への前記基板の装填、又は前記基板保持具からの前記基板の脱装が行われる移載室と、
前記移載室内の前記基板保持具に、不活性ガスを噴射するノズルを備える不活性ガス供給機構と、
前記処理室内から前記移載室内に搬出されて前記基板が脱装された前記基板保持具に、前記ノズルから不活性ガスを噴射するように前記不活性ガス供給機構を制御する制御部と、を備え、
前記ノズルは、上方から下方に向かって角度をつけて不活性ガスを噴射する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
移載室内で基板保持具に基板を装填し、前記基板保持具を前記移載室内から処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内で前記基板を処理する工程と、
前記基板保持具を前記処理室内から前記移載室内に搬出し、前記基板保持具から処理後の前記基板を脱装する工程と、
前記移載室内に設けられた不活性ガス供給機構が備えるノズルから、前記基板が脱装された前記基板保持具に、上方から下方に向かって角度をつけて不活性ガスを噴射する工程と、を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−105948(P2013−105948A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249775(P2011−249775)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】