説明

基板収納容器

【課題】 基板に対するリテーナの接触領域を減少させ、基板の汚染を低減できる基板収納容器を提供する。
【解決手段】 複数枚の半導体ウェーハWを整列収納可能な容器本体10と蓋体20との間に、半導体ウェーハWを保持するリテーナ30を介在した基板収納容器であって、リテーナ30を、蓋体20の天井内面から容器本体10に収納される半導体ウェーハW方向に伸長し、複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片31と、各弾性片31の先端部に形成されて半導体ウェーハWの周縁部上端を接触保持する保持溝片34とから形成し、弾性片31と保持溝片34を蓋体20の天井内面側から半導体ウェーハW方向に向かうに従い徐々に湾曲させて半導体ウェーハWの半径外方向に向け、半導体ウェーハWの周縁部上端に対する保持溝片34の接触保持領域を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやマスクガラスを収納して加工、搬送、輸送等する基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄くて丸い半導体ウェーハWを収納等する従来の基板収納容器は、図13に部分的に示すように、垂直に起立した複数枚の半導体ウェーハWを整列収納する容器本体と、この容器本体の開口した上部に着脱自在に嵌合されて複数枚の半導体ウェーハWの上部を被覆保護する蓋体20とを備えて構成され、この蓋体20の天井内面には、各半導体ウェーハWを保持するリテーナ30Aが設けられており、脆い半導体ウェーハWを汚染や損傷等から保護する(特許文献1、2参照)。
【0003】
リテーナ30Aは、図13に示すように、蓋体20の内面から容器本体に収納された半導体ウェーハWの周縁部上端方向に直線的に水平に伸長し、複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性保持片38を備え、各弾性保持片38の先端部の凹んだ保持溝39に半導体ウェーハWの周縁部を接触保持させるよう機能する。
【0004】
このようなリテーナ30Aは、容器本体の開口した上部に蓋体20が嵌合して押圧されるに伴い、各半導体ウェーハWの周縁部上端に弾性保持片38が接触して徐々に上方に撓み、各半導体ウェーハWに保持力を作用させた状態で保持する。この際、弾性保持片38は、半導体ウェーハWの周縁部上端に対する接触開始時には、保持溝39の先端部39aが部分的に接触し、上方に撓むにしたがい保持溝39の全域39bが接触し、接触終了時には保持溝39の根元側の末端部39cが接触する。
【特許文献1】特公平7‐66939号公報
【特許文献2】特開2005‐5396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における基板収納容器は、以上のように半導体ウェーハWの周縁部上端に対する弾性保持片38の接触開始時には、弾性保持片38の保持溝39の先端部39aが接触し、上方に撓むにしたがい保持溝39の全域39bが接触し、接触終了時には保持溝39の根元側の末端部39cが接触するので、半導体ウェーハWの周縁部に保持溝39の先端部39aから末端部39cに亘る全域39bが相対的に移動して接触し、少なからず擦れることとなる。したがって、蓋体20のセットの度に半導体ウェーハWの汚染を招くおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、基板に対するリテーナの接触領域を減少させ、基板の汚染を低減することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、複数枚の基板を整列収納可能な容器本体とその蓋体との間に、基板を保持するリテーナを介在したものであって、
リテーナは、蓋体の内側から容器本体に収納される基板方向に伸び、複数枚の基板の整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片と、弾性片に形成されて基板の周縁部を接触保持する保持溝片とを含み、これら弾性片と保持溝片とを蓋体の内側から基板方向に向かうに従い徐々に曲げて基板の幅方向外側に向け、基板の周縁部に対する保持溝片の接触保持領域を減少させるようにしたことを特徴としている。
【0008】
なお、容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその内部には少なくとも上部の開口したカセットを着脱自在に嵌め入れ、このカセットの両側壁内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成することができる。
また、基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列し、各弾性片を蓋体の内面から突出させてその先端部には保持溝片を形成し、これら弾性片と保持溝片とを略半円弧形に湾曲させて基板の幅方向外側に向けることができる。
【0009】
また、容器本体を正面の開口した略箱形に形成してその両側壁の内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成し、基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列して取付板に取り付けるとともに、この取付板を蓋体の内面に設け、各弾性片の先端部に保持溝片を形成することができる。
また、隣接する複数の弾性片と保持溝片の少なくともいずれか一方に干渉回避面を形成し、この干渉回避面により、隣接する複数の弾性片及び又は保持溝片同士の干渉を回避するようにすることも可能である。
【0010】
また、弾性片の隣接する他の弾性片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の弾性片を位置合わせすることも可能である。
さらに、保持溝片の隣接する他の保持溝片に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部を、他方の対向面に凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部の少なくとも一部を傾斜させて干渉回避面とし、凹部と凸部を用いて隣接する複数の保持溝片を位置合わせすることも可能である。
【0011】
さらにまた、撓んだ弾性片が隣接する他の弾性片に干渉するのを防いだり、位置ずれした基板を良好に位置補正するため、干渉回避面を110°〜175°の角度で傾斜させたり、あるいは135°〜160°の角度で傾斜させると良い。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも単数複数の半導体ウェーハ(口径150mm、200mm、300mm、450mmタイプ等)、液晶基板、ガラス基板、化合物ウェーハ、カーボンウェーハ、マスクガラス等が含まれる。容器本体は、複数枚の基板を直接整列収納するタイプでも良いし、カセットを介し間接的に整列収納するものでも良い。蓋体とリテーナとは、一体構成でも良いし、着脱自在の別体構成でも良い。基板の周縁部と保持溝片との接触点は、点接触あるいは線接触して略一定であることが好ましい。
【0013】
基板の周縁部と保持溝片との接触点は当初の接触点から容器本体に蓋体が嵌め合わされるにつれ、弾性片が撓んで変位しても、基板上の接触点が殆ど変化するものではない。この一方、保持溝片側の接触点は保持溝片の変位により最終的な接触点まで移動するが、この接触点の移動範囲は、当初の接触点から±1.5mmの範囲内であることが好ましい。さらに、保持溝片は、弾性片の先端部に形成される凹んだガイド溝部と、このガイド溝部に凹み形成され、ガイド溝部の斜面に案内されてきた基板の周縁部を保持する最深溝部とを備えると良い。
【0014】
本発明によれば、基板収納容器に基板を収納する場合には、基板を収納した容器本体の開口部を蓋体により被覆し、基板の周縁部にリテーナの弾性片を保持溝片を介して干渉させれば、リテーナの弾性片が蓋体の内側に撓んで基板に保持力を作用させ、基板を収納することができる。
【0015】
この際、弾性片と保持溝片とが曲がって保持溝片の先端部が基板の幅方向外側を向き、基板上の接触点は弾性片が撓んだ後でも略垂直な位置に移動するだけで殆ど変化せず、保持溝片の接触点は保持溝片の曲率が小さくなったときの接触点までという僅かな領域に変位するに止まる。このように基板上の接触点が殆ど変わらないので、接触に伴う基板の汚染や損傷を極力小さな範囲に止めることができる。
【0016】
また、保持溝片は、その先端部が外向きに曲がって略中間部で基板と接線状に接触するが、当初の接触点と、この近傍にある保持状態の接触点との狭い範囲で接触するだけなので、広範囲に亘って基板と接触することがない。したがって、基板と保持溝片との接触に伴うパーティクルの発生を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板に対するリテーナの接触領域を減少させ、基板の汚染を低減することができるという効果がある。
また、容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその内部には少なくとも上部の開口したカセットを着脱自在に嵌め入れ、このカセットの両側壁内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成すれば、例え容器本体が汚れていても、基板を二重構造に収納するので、基板のクリーン化を確保することができる。
【0018】
また、基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列し、各弾性片を蓋体の内面から突出させてその先端部には保持溝片を形成し、これら弾性片と保持溝片とを略半円弧形に曲げて基板の幅方向外側に向ければ、基板の周縁部に保持溝片を僅かな面積で接触(点接触あるいは線接触等)させることができ、基板と保持溝片との接触点の移動方向を弾性片の整列方向以外の方向に向けることができる。したがって、保持溝片の接触部分以外が隣接する保持溝片方向に動いて接触するのを回避することができ、基板の摺れや汚染を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図6に示すように、複数枚の半導体ウェーハWをカセット1を介し整列収納可能な容器本体10と、この容器本体10の開口した上部にシールガスケットを介し着脱自在に嵌合されて複数枚の半導体ウェーハWを密封状態に被覆・保護する蓋体20と、これら容器本体10と蓋体20との間に介在されて各半導体ウェーハWを弾発的に保持するリテーナ30とを備えている。
【0020】
複数枚の半導体ウェーハWは、例えば13枚、25枚、あるいは26枚の枚数でカセット1に整列収納され、縦に起立した状態でカセット1の前後方向(図2の奥方向)に一列に並んで配列される。各半導体ウェーハWは、例えば薄く丸くスライスされた口径150mmのタイプからなり、周縁部の一部分に位置合わせ用のオリフラやノッチが選択的に形成される。
【0021】
カセット1、容器本体10、蓋体20、リテーナ30は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる成形材料を使用して射出成形される。これらの成形材料の中でも半導体ウェーハWを視認して把握する観点から、半透明のポリプロピレンや透明のポリカーボネートの選択が好ましい。
【0022】
カセット1は、図1や図2に示すように、半導体ウェーハWの直径以上の間隔をおいて相対向する左右一対の側壁2と、この一対の側壁2の前端部間に架設して連結される正面略H字形の正面板3と、一対の側壁2の後端部間に架設して連結される背面板4とを備えて半透明に形成され、容器本体10内に上方から着脱自在に嵌合して収納される。このカセット1は、上下部がそれぞれ開口した略角筒形に成形され、開口した広い上部が半導体ウェーハW用の出し入れ口5とされる。
【0023】
各側壁2は、上方から下方に向かうに従い徐々に内側に湾曲する断面略く字形に屈曲形成され、内面には、略櫛歯形で先細りのティース6が所定のピッチで前後方向に複数並設されており、この複数のティース6の間の隙間が半導体ウェーハW挿入用の整列支持溝7に区画形成される。
【0024】
容器本体10は、図1や図2に示すように、上部の開口した半透明のトップオープンボックスに形成され、内部両側には、カセット1の両側壁2の湾曲した下部に隙間をおいて対向する一対の対向部11が対設されており、外装用の外箱として機能する。この容器本体10は、開口した上部周縁に気密性を維持するエンドレスのシールガスケットが嵌合可能とされる。このシールガスケットは、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等を使用して弾性の平面略枠形に成形される。また、容器本体10の両側壁の上部には、外方向に凹んだ蓋体20用の係止溝12がそれぞれ形成される。
【0025】
蓋体20は、図1ないし図3に示すように、中空で半透明の断面略ハット形あるいは断面略逆U字形に形成され、両側部には、容器本体10の係止溝12に係止する可撓性の係止片21がそれぞれ一体形成されており、カセット1や複数枚の半導体ウェーハWの略上半分を被覆・保護するよう機能する。
【0026】
リテーナ30は、図2ないし図6に示すように、蓋体20の天井から容器本体10の半導体ウェーハW方向に伸長し、複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片31と、各弾性片31に形成されて半導体ウェーハWの周縁部上端を保持する保持溝片34と、各弾性片31と保持溝片34に形成される複数の干渉回避面37とを備え、蓋体20の天井内面の中央部付近に一体成形される。
【0027】
複数の弾性片31は、図2、図3、図6に示すように、略八字形を呈して半導体ウェーハWの周縁部上端に間隔をおいて対向する左右一対の弾性片31を備え、この一対の弾性片31が複数枚の半導体ウェーハWの整列方向に所定のピッチで配列される。各弾性片31は、例えば細長い弾性の線条に形成され、蓋体20の天井内面に一体形成されてその撓み量の大きい自由端部である先端部の表面に保持溝片34が一体形成されており、これら一体化した弾性片31と保持溝片34とが略半円弧形に徐々に湾曲して保持溝片34の先端部が半導体ウェーハWの半径外方向に指向する。
【0028】
弾性片31の隣接する他の保持溝片34に対向する両対向面のうち、一方の対向面の保持溝片34側には、ガイド機能を有する凹部32が、他方の対向面の保持溝片34側には、凹部32に近接する凸部33がそれぞれ形成され、これら互い違いの凹部32と凸部33とが対向して隣接する複数の弾性片31や保持溝片34を位置合わせし、保持溝片34に半導体ウェーハWの周縁部上端を適切に嵌合保持させるよう機能する。
【0029】
各保持溝片34は、図4や図5に示すように、弾性片31の先端部に一体形成される断面略U字形、略V字形、又は断面略へ字形のガイド溝部35と、このガイド溝部35の中央に凹み形成され、ガイド溝部35の斜面に案内されてきた半導体ウェーハWの周縁部上端を嵌合保持する断面略半円形の最深溝部36とを備え、半導体ウェーハWの周縁部に対する接触点を常に略一定とするよう機能する。
【0030】
干渉回避面37は、各弾性片31から保持溝片34に亘る凹部32と凸部33のコーナ部がそれぞれ厚さ方向に斜めに切り欠かれることにより傾斜形成され、隣接する複数の弾性片31や保持溝片34同士の干渉を回避するよう機能する。この干渉回避面37は、110°〜175°、好ましくは135°〜160°の鈍角で傾斜し、凹部32と凸部33のコーナ部の他、その近傍部にも適宜形成される。
【0031】
干渉回避面37の傾斜角度が110°〜175°の範囲なのは、110°未満の角度の場合には、撓んだ弾性片31が隣接する弾性片31に嵌合して干渉するのを防ぐことができないおそれがあるからである。逆に、175°を超える場合には、位置ずれした半導体ウェーハWを確実に位置補正することができないからである。干渉回避面37の傾斜角度は、135°〜160°の好適な範囲であれば、撓んだ弾性片31が隣接する弾性片31に嵌合しても、弾性片31を滑動させて嵌合を防止することができ、しかも、位置ずれした半導体ウェーハWを確実に位置補正することができる。
【0032】
上記において、基板収納容器に半導体ウェーハWを適切に収納する場合には、半導体ウェーハWを収納した容器本体10に蓋体20を上方から嵌合して押圧し、各半導体ウェーハWの周縁部上端にリテーナ30の弾性片31を保持溝片34を介して嵌合させれば、このリテーナ30の弾性片31が蓋体20の天井内面側に撓み、各半導体ウェーハWに保持力を上方から作用させて位置決めしつつ適切に収納することができる。
【0033】
各半導体ウェーハWに作用する保持力は、各弾性片31及び保持溝片34が半導体ウェーハWに押し上げられて撓む際の反力により得られるが、このとき、半導体ウェーハWと保持溝片34との接触点も変化する。以下、この接触点の変化の詳細につき、図6に基づいて説明する。
【0034】
なお、本来的には、半導体ウェーハWの位置が変わることなく蓋体20のリテーナ30の位置が半導体ウェーハWに接近する方向に変位することになるが、図6においては、説明の容易化を考慮し、蓋体20のリテーナ30の位置を固定とし、半導体ウェーハWがリテーナ30に当初に接触した状態と接近して保持する状態とが重ならないように図示する。
【0035】
半導体ウェーハWを保持する際、各弾性片31と保持溝片34とが単なる直線形ではなく、これらの先端部や末端部が半導体ウェーハWの周縁部から離隔するよう略半円弧形に湾曲し、保持溝片34の先端部が半導体ウェーハWの半径外方向に指向(図6参照)するので、当初の接触点において、半導体ウェーハWの周縁部上端に保持溝片34のガイド溝部35や最深溝部36を点接触、又は短く線接触させることができる。
【0036】
また、弾性片31が撓んで保持する状態においても、半導体ウェーハWと保持溝片34との接触点の移動方向を曲率半径の小さくなる上方向、換言すれば、垂直上方のみの不変にすることができる。また、保持溝片34の接触点の移動についても、曲率が小さくなったときの保持溝片34の接線状の接触点という僅かな範囲に止めることができる。
【0037】
すなわち、半導体ウェーハWを保持するため、弾性片31が圧縮されて撓んでも、半導体ウェーハWの接触点は変わらないし、保持溝片34の接触領域も半導体ウェーハWと接線状に接触する湾曲部の僅かな範囲とすることができる。具体的には、保持溝片34の先端部から末端部にかけて、接触点が保持溝片34の長手方向に連続的に変化するのではなく、当初の接触点と、弾性片31が撓んだ後の湾曲部の接触位置までの変位である±1.5mmの狭い範囲に限定することが可能になる。したがって、半導体ウェーハWと保持溝片34との擦れを大幅に削減することが可能になる。
【0038】
よって、半導体ウェーハWの周縁部と保持溝片34との接触点を当初の接触点から蓋体20の内側に±1.5mm移動した少ない範囲とし、半導体ウェーハWの周縁部に対する保持溝片34の接触保持領域を大幅に減少させることができるので、半導体ウェーハWの周縁部に保持溝片34の全域が相対的に移動して接触したり、擦れてパーティクルの発生することがなく、蓋体20のセットの度に半導体ウェーハWの汚染を招くおそれを有効に排除することが期待できる。
【0039】
また、半導体ウェーハWを収納する際に弾性片31や保持溝片34が湾曲半径の小さくなる上方向に撓み、保持溝片34の接触部分以外が隣接する保持溝片34方向に動いて接触するのを回避することができるので、半導体ウェーハWの摺れや汚染の防止を図ることができる。
【0040】
また、弾性片31や保持溝片34が上方向だけではなく、配列方向にも撓みながら隣接する弾性片31や保持溝片34に嵌合することがあるが、弾性片31の傾いた干渉回避面37が接触せずに嵌合を回避するので、例え蓋体20を繰り返し使用しても、隣接する弾性片31や保持溝片34同士が干渉し合うことがない。したがって、容器本体10から蓋体20が取り外されても、撓んだ弾性片31を元の位置に確実に復帰させることができ、これにより、半導体ウェーハWの適切な保持に支障を来たしたり、半導体ウェーハWのがたつきや回転に伴う摺れ、損傷、汚染等を招くのを抑制防止することが可能になる。
【0041】
さらに、各弾性片31の干渉回避面37が接触せずに嵌合を回避するので、複数の弾性片31間のピッチを広く確保して嵌合を回避する必要が全くなく、簡易な構成で弾性片31の低ピッチ化を容易に図ることが可能になる。さらにまた、蓋体20の天井内面にリテーナ30を一体形成するので、部品点数の削減や洗浄性の向上が大いに期待できる。
【0042】
次に、図7は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、弾性片31の撓み量の大きい先端部の両対向面に傾斜面ではなく、角張っていないC面を形成することにより、複数の干渉回避面37を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、干渉回避面37の形状の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0043】
次に、図8は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、弾性片31の先端部を含む全対向面に傾斜面ではなく、角張っていないC面を形成することにより、複数の干渉回避面37を形成するようにしている。
【0044】
干渉回避面37は、弾性片31の全対向面以外にも、図9に太線で示す弾性片31の領域であれば、適宜形成することができる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、干渉回避面37の位置や形状の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0045】
次に、図10は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、保持溝片34の表面に傾斜面ではなく、R面や湾曲面を適宜形成することにより、滑らかな複数の干渉回避面37を形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、干渉回避面37の位置や形状の多様化が期待できる。
【0046】
次に、図11と図12は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体10Aを正面の開口したフロントオープンボックスに形成してその両側壁の内面上下方向には、口径300mmタイプの半導体ウェーハW用の整列支持溝7Aをそれぞれ並べて形成し、半導体ウェーハWの周縁部前端を対向保持するリテーナ30の左右一対の弾性片31を複数枚の半導体ウェーハWの整列方向、換言すれば、上下方向に配列して取付板40内に一体形成するとともに、この取付板40を蓋体20Aの内面である裏面の中央部に着脱自在に装着し、各弾性片31を蓋体20Aの内面側から容器本体10Aの背面側方向にやや斜めに突出させてその先端部にはブロック形の保持溝片34を一体的に膨出形成するようにしている。
【0047】
蓋体20Aは、蓋体20とは異なり、横長の矩形に成形され、容器本体10Aに対する嵌合時に施錠する施錠機構が内蔵される。また、取付板40は、所定の成形材料を使用して縦長の枠形に成形され、内部両側には、複数の弾性片31が上下方向に並べて配列される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0048】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、トップオープンボックスタイプの基板収納容器の他、フロントオープンボックスタイプの基板収納容器にもリテーナ30を使用して汎用性を向上させることができるのは明らかである。
【0049】
なお、上記実施形態では上下部の開口したカセット1を使用して半導体ウェーハWを下方から突き上げ、半導体ウェーハWの取り出しの自動化に資するようにしたが、何らこれに限定されるものではなく、上部のみ開口したカセット1を使用しても良い。また、蓋体20の周縁部にエンドレスのシールガスケットを嵌合しても良い。また、容器本体10の開口部に着脱自在の蓋体20を粘着テープを介し嵌合しても良い。
【0050】
また、上記実施形態では弾性片31から保持溝片34にかけて凹部32、凸部33、干渉回避面37を配設したが、上記と同様の作用効果が期待できるのであれば、凹部32、凸部33、干渉回避面37の位置等を適宜変更することができる。例えば、各弾性片31の隣接する弾性片31に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部32を、他方の対向面に凸部33をそれぞれ形成し、これらの対向する凹部32と凸部33のコーナ部やその近傍をそれぞれ傾斜させて干渉回避面37とし、凹部32と凸部33を用いて隣接する複数の弾性片31や半導体ウェーハWを位置合わせしても良い。
【0051】
同様に、各保持溝片34の隣接する保持溝片34に対向する両対向面のうち、一方の対向面に凹部32を、他方の対向面に凸部33をそれぞれ形成し、これらの対向する凹部32と凸部33のコーナ部やその近傍をそれぞれ傾斜させて干渉回避面37とし、凹部32と凸部33を用いて隣接する複数の保持溝片34や半導体ウェーハWを位置合わせしても良い。また、凹部32や凸部33の数は、必要に応じ、適宜増加させることができる。さらに、干渉回避面37は、傾斜面、C面、R面、湾曲面を特に問うものではない。さらにまた、蓋体20Aの裏面中央部に取付板40を一体化させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の内面とリテーナとを模式的に示す説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における複数の弾性片と保持溝片とを模式的に示す側面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における複数の弾性片と保持溝片とを模式的に示す表面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における半導体ウェーハ、弾性片、及び保持溝片を模式的に示す要部拡大説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態におけるリテーナを模式的に示す説明図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の第4の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の第5の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の第5の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図13】従来の基板収納容器の蓋体、半導体ウェーハ、及びリテーナの関係を示す要部拡大説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1 カセット
2 側壁
6 ティース
7 整列支持溝
7A 整列支持溝
10 容器本体
10A 容器本体
20 蓋体
20A 蓋体
30 リテーナ
31 弾性片
32 凹部
33 凸部
34 保持溝片
35 ガイド溝部
36 最深溝部
37 干渉回避面
40 取付板
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を整列収納可能な容器本体とその蓋体との間に、基板を保持するリテーナを介在した基板収納容器であって、
リテーナは、蓋体の内側から容器本体に収納される基板方向に伸び、複数枚の基板の整列方向に並ぶ可撓性の複数の弾性片と、弾性片に形成されて基板の周縁部を接触保持する保持溝片とを含み、これら弾性片と保持溝片とを蓋体の内側から基板方向に向かうに従い徐々に曲げて基板の幅方向外側に向け、基板の周縁部に対する保持溝片の接触保持領域を減少させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体を上部の開口した略箱形に形成してその内部には少なくとも上部の開口したカセットを着脱自在に嵌め入れ、このカセットの両側壁内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列し、各弾性片を蓋体の内面から突出させてその先端部には保持溝片を形成し、これら弾性片と保持溝片とを略半円弧形に湾曲させて基板の幅方向外側に向けた請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
容器本体を正面の開口した略箱形に形成してその両側壁の内面には、基板用の整列支持溝をそれぞれ並べて形成し、
基板の周縁部に略対向する一対の弾性片を備え、この一対の弾性片を複数枚の基板の整列方向に配列して取付板に取り付けるとともに、この取付板を蓋体の内面に設け、各弾性片の先端部に保持溝片を形成した請求項1記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−135434(P2008−135434A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318318(P2006−318318)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】