説明

基板搬送装置

【課題】
搬送中の基板の反りを確実に防止する。
【解決手段】
基板Pの両側縁をそれぞれ表裏面から挟付ける1対のローラ列1,2を備えている。ローラ列1,2を構成する各ローラ11,21の回転軸の軸線Xは基板Pの送り方向と直交する線Yに対して基板Pの送り方向の先方側へ傾斜されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板を半田付け工作が行われるリフロー炉の内部で連続的に移動させる手段等として使用される基板搬送装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
基板搬送装置では、各種の工作の対象となる基板の中央部分が開放され基板の側縁部分のみが支持された状態で基板の搬送が行われる。従って、プリント配線基板等の薄性の基板の搬送では、基板の自重や基板に搭載された実装部品等の重量によって搬送中に基板に反り(撓み)が生じて種々の不具合が発生する。このため、搬送中の基板の反りを防止することのできる基板搬送装置の開発が切望されている。
【0003】
従来、搬送中の基板の反りを防止することを指向した基板搬送装置としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
【特許文献1】特許第3306954号公報 特許文献1には、基板の両側縁をそれぞれ表裏面から挟付ける1対のローラ列を備えた基板搬送装置が記載されている。
【0004】
特許文献1に係る基板搬送装置は、基板の反りに対してローラ列の挟付けを矯正力として機能させることで搬送中の基板の反りを防止するものである。具体的には、図6に示すように、ローラ列1,2を構成する各ローラ11,21の回転軸の軸線Xが基板Pの送り方向と直交する線Yに一致されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る基板搬送装置では、ローラ列1,2を構成する各ローラ11,21の小さな面(線)での挟付けで基板Pの反りに対応することから、基板Pの反りに対する矯正力が弱いため、搬送中の基板Pの反りを確実に防止することができないという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、搬送中の基板の反りを確実に防止することのできる基板搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明に係る基板搬送装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0008】
即ち、請求項1では、基板の両側縁をそれぞれ表裏面から挟付ける1対のローラ列を備えた基板搬送装置において、ローラ列を構成する各ローラの回転軸の軸線は基板の送り方向と直交する線に対して基板の送り方向の先方側へ傾斜されていることを特徴とする。
【0009】
この手段では、ローラの回転軸の傾斜でローラの回転力の分力として基板の送り方向と直交する線に沿った基板の外側への引張力を発生させ、ローラの挟付けに加えた引張力による矯正力で基板の反りを防止する。
【0010】
また、請求項2では、請求項1の基板搬送装置において、基板を介した対の各ローラは逆方向へ同期して回転駆動されるように連結されていることを特徴とする。
【0011】
この手段では、基板を介した対の各ローラが基板の表裏面側から均等に搬送力を加える。
【0012】
また、請求項3では、請求項1または2の基板搬送装置において、ローラ列の駆動系は基板の搬送方向で複数に独立して設置されていることを特徴とする。
【0013】
この手段では、ローラ列の駆動系ごとに基板の搬送速度が調整される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る基板搬送装置は、ローラの回転軸の傾斜でローラの回転力の分力として基板の送り方向と直交する線に沿った基板の外側への引張力を発生させ、ローラの挟付けに加えた引張力による矯正力で基板の反りを防止するため、搬送中の基板の反りを確実に防止することができる効果がある。
【0015】
また、請求項2として、基板を介した対の各ローラが基板の表裏面側から均等に搬送力を加えるため、基板の表裏面側で捻れを生じさせることなく基板を確実,精密に搬送することができる効果がある。
【0016】
また、請求項3として、ローラ列の駆動系ごとに基板の搬送速度が調整されるため、基板の搬送ラインの長さ設計に自由度がもたらされる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る基板搬送装置を実施するための最良の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0018】
この形態では、プリント配線基板を半田付け工作が行われるリフロー炉の内部で連続的に移動させる手段として使用するに好適なものを示してある。
【0019】
この形態は、特許文献1に係る基板搬送装置と同様に、基板Pの両側縁をそれぞれ表裏面から挟付ける1対のローラ列1,2を備えている。
【0020】
下部側のローラ列1を構成する各ローラ11は、図2,図3に示すように、基板Pの横ずれを防止するフランジ12が形成されて回転軸13で固定機枠3に回転可能に支持されている。回転軸13には、同期ギア14,駆動スプロケット15が同軸に固定されている。この回転軸13の軸線Xは、図1,図2に示すように、基板Pの送り方向と直交する線Yに対して基板Pの送り方向の先方側へ一定の角度θで傾斜されている。この角度θは、2度程度に設定される。従って、基板Pがローラ11から簡単に脱落することはない。
【0021】
下部側のローラ列1には、2つの独立した駆動系4が連結されている、駆動系4は、図示しないモータのモータ軸に固定されたの駆動ギア41とガイドギア42との間にリンクチェーン43がエンドレス状に掛渡され、リフロー炉Hの予備加熱部Haと本加熱部,冷却部Hbとに配置されている(図4参照)。なお、直線状に配設されたリンクチェーン43は、下部側のローラ列1の駆動スプロケット15の下端部にのみ部分的に噛合することで、下部側のローラ列1の回転軸13の傾斜にかかわらずローラ11を回転駆動することができるようになっている。
【0022】
上部側のローラ列2を構成する各ローラ21は、下部側のローラ列1のローラ11のようなフランジ12が形成されることなく回転軸22で可動機枠5に回転可能に支持されている。回転軸22には、下部側のローラ列1のローラ11の同期ギア14と噛合する同期ギア23が同軸に固定されている。この回転軸22の軸線Xは、下部側のローラ列1のローラ11の回転軸14と一致する傾斜に設定されている。
【0023】
可動機枠5は、ガイドボルト61,コイルスプリング62からなるプッシャ6で固定機枠3に押付けられるようになっている。従って、上下部側のローラ列1,2のローラ11,21が基板Pの両側縁をそれぞれ表裏面から確実に挟付け、上下部のローラ列1,2の同期ギア14,23が確実に噛合される。
【0024】
この形態によると、駆動系4の駆動によって、上下部側のローラ列1,2のローラ11,21が逆方向に回転されて基板Pが搬送され、リフロー炉Hの内部で基板Pが移動されることになる。このとき、上下部側のローラ列1,2のローラ11,21の双方が同期して回転駆動されるため、基板Pを介した対の各ローラ11,121基板Pの表裏面側から均等に搬送力が加えられることになる。従って、基板Pの表裏面側で捻れを生じさせることなく基板Pを確実,精密に搬送することができる。
【0025】
この基板Pの搬送では、リフロー炉Hの予備加熱部Haと本加熱部,冷却部Hbとで独立した駆動系4によって搬送速度を調整することができる。従って、図4に示すように、リフロー炉Hの予備加熱部Haと本加熱部,冷却部Hbとの搬送ラインの長さを同一にしても、予備加熱部Haにおける基板Pの搬送速度を遅くすることで、本加熱部,冷却部Hbよりも予備加熱部Haのほうが搬送ラインが長く設定される通常の装置構成と加熱量において実質的に同一の構成を備えることができる。このため、基板Pの搬送ラインの長さ設計に自由度がもたらされ、全体の装置規模をコンパクト化することができる。なお、リフロー炉Hの予備加熱部Haと本加熱部,冷却部Hbとにおける基板Pの搬送速度を異ならせた場合、上下部側のローラ列1,2のローラ11,21の予備加熱部Haと本加熱部,冷却部Hbとの境目に非駆動で自由回転可能な自由ローラ4を配置することによって、基板Pの受渡しを円滑にして搬送を停滞しないようにすることができる。
【0026】
また、搬送される基板Pは、特許文献1に係る基板搬送装置と同様に、基板Pの反りに対して1対のローラ列1,2の挟付けが矯正力として機能され、搬送中の基板Pの反りが防止される。
【0027】
さらに、この形態では、図5に示すように、上下部側のローラ列1,2のローラ11,21の回転力aが回転軸13,22の傾斜によって分力されることになる。即ち、基板Pの送り方向の線に沿った搬送力bと、基板Pの送り方向と直交する線Yに沿った基板Pの外側への引張力cとに分力される。この引張力cは、上下部側のローラ列1,2のローラ11,21による基板Pの挟付けを助勢することになる。従って、基板Pの反りを防止する矯正力が強化されることになるため、搬送中の基板Pの反りを確実に防止することができる。
【0028】
以上、図示した各例の外に、駆動系4を3系統以上に独立した配置することも可能である。
【0029】
さらに、上下部側のローラ列1,2のローラ11,21をギア噛合構造以外で同期させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る基板搬送装置は、プリント配線基板をリフロー炉の内部で連続的に移動させる以外に、各種の基板を種々の移動に供する場合に広範に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る基板搬送装置を実施するための最良の形態の基本構成を示す簡略化した斜視図である。
【図2】図1の要部の拡大平面図である。
【図3】図1の要部の詳細な側面断面図である。
【図4】図1の要部の詳細な正面図である。
【図5】ローラの回転力から分力される引張力の説明図である。
【図6】従来例の基本構成を示す簡略化した斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1,2 ローラ列
11,21 ローラ
13,22 回転軸
4 駆動系
P 基板
X 軸線
Y 基板Pの送り方向と直交する線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の両側縁をそれぞれ表裏面から挟付ける1対のローラ列を備えた基板搬送装置において、ローラ列を構成する各ローラの回転軸の軸線は基板の送り方向と直交する線に対して基板の送り方向の先方側へ傾斜されていることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
請求項1の基板搬送装置において、基板を介した対の各ローラは逆方向へ同期して回転駆動されるように連結されていることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2の基板搬送装置において、ローラ列の駆動系は基板の搬送方向で複数に独立して設置されていることを特徴とする基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−62869(P2006−62869A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250810(P2004−250810)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(392002929)株式会社弘輝テック (8)
【Fターム(参考)】