基質濃度の測定方法及びその装置
【課題】基質濃度の測定方法及びその装置を提供する。
【解決手段】生体触媒とその生体触媒が認識する基質との反応の結果生じるエネルギーを一定レベルまで蓄積し、その蓄積速度が基質濃度に依存することを指標とすることにより前記基質濃度を測定する方法及びそのための装置により、課題を解決する。特に、蓄積速度の測定を、キャパシタに蓄積されるエネルギーが一定レベル以上に達したときに放出する際の一定時間におけるエネルギー放出の頻度により測定することによって行う方法及びその装置により、課題を解決する。
【解決手段】生体触媒とその生体触媒が認識する基質との反応の結果生じるエネルギーを一定レベルまで蓄積し、その蓄積速度が基質濃度に依存することを指標とすることにより前記基質濃度を測定する方法及びそのための装置により、課題を解決する。特に、蓄積速度の測定を、キャパシタに蓄積されるエネルギーが一定レベル以上に達したときに放出する際の一定時間におけるエネルギー放出の頻度により測定することによって行う方法及びその装置により、課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基質濃度を測定する方法及びそのための装置(バイオセンサ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、生体触媒の反応により生体触媒が基質とする化合物と反応することにより、生体触媒反応の結果生じる生成物、減少する基質、生成物と反応し生じる化学物質を検出できるデバイスをトランスデューサとして当該基質を測定するセンサである。あるいは、生体触媒反応の結果生じる光、色調の変化、蛍光などの物理シグナルを検出できるデバイスとをトランスデューサとして当該基質を測定するセンサを意味する。生体触媒としては酵素、オルガネラ、細胞、微生物などが挙げられる。
【0003】
すなわち、バイオセンサとは分子認識素子として生体触媒を用い、その信号を電気化学デバイス、光デバイス、熱検知デバイスなどのトランスデューサと組み合わせることで、生体触媒の反応を電子機器が検出できる信号に変換し、生体触媒が認識する基質を分析できるセンサであるといえる。代表的なバイオセンサの一つとして、酵素を生体触媒とする酵素センサがある。たとえば、グルコース(ブドウ糖)を測定することを目的にグルコースを酸化する酵素が酸素電極、過酸化水素電極等の電極表面上に酵素が固定化され、グルコース酸化反応によって消費される酸素量、同時に生成される過酸化水素量を電気化学的に測定することを指標にグルコースセンサが開発されている。
【0004】
現在多用されている酵素センサでは、酸化還元酵素を用いるセンサが主流であり、その主要な原理は、アノードの酵素反応により生じる還元物質を外部から電位を加えこれを再酸化するときに生じる電子を電流計により測定する、あるいは生じる電子をカソードにおいて還元するときのアノードとカソードとの間に生じる電位差により測定する方法に基づいている。
【0005】
また、簡易血糖診断装置などに用いられている方法としては、酵素反応により生じた過酸化水素や還元型人工電子受容体などの還元物質を定法に従い発色させ、その色彩を光学的センサにより判断する方法も採用されている。
【0006】
この他に特殊な酵素の例として、ホタルなどの発光生物由来の酵素、ルシフェラーゼを酵素として採用する酵素センサでは、ルシフェラーゼの基質が反応するときに酵素反応によって生じる光を検出することを特色とする酵素センサも報告されている。しかし、この方法ではルシフェラーゼの基質となる物質、例えばATPの検出に限定されること、あるいは抗体反応を検出する際に抗体をルシフェラーゼで標識することで間接的に光シグナルで検出する原理が採用できるなど、応用例がルシフェラーゼを用いることが可能な場合に限定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Katz et al., J. Am. Chem. Soc. 2001,123,10752-10753
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような従来のバイオセンサにおいては、酵素センサなどのバイオセンサを用いる測定機器(以下酵素センサシステム)はバイオセンサによる測定部と測定されたシグナル
を受け取りこれを処理するモニタ部とから構成されるが、これらは一体化されるか、あるいは自己血糖診断装置にみられるように測定部に相当する部分が使い捨てとなるように、切り離せるタイプが主流であった。そして、基質濃度を検出する測定部とバイオセンサのシグナルを検出するモニタ部は生体触媒反応の場と直接接触するか、結線させる、あるいは特殊なトランスミッターを起動させる回路とそのための電源を別途用意しなければならないという問題があった。
【0009】
一方、これまでに酵素燃料電池の起電力を指標とした酵素センサが報告されているが、この燃料電池単体の起電力は1V未満であることから、そのままでは、燃料電池の起電力によってセンシング用デバイスを作動できなかった。燃料電池型酵素センサの起電力を指標として基質濃度を測定する場合には、その起電力を直接電圧計と接続し、電圧を測定することで基質濃度を測定するか、あるいはその起電力を測定する電圧計を接続し、電圧計の応答値を外部電源により起動させるワイヤレス装置によって外部の受信機に送信することが必要であった。("A Novel Wireless Glucose Sensor Employing Direct Electron Transfer Principle Based Enzyme Fuel Cell" Noriko Kakehi, Tomohiko Yamazaki, Wakako Tsugawa and Koji Sode Biosensors & Bioelectronics Epub 2006 Dec.11参照)
【0010】
すなわち、燃料電池型酵素センサが小型で高性能はセンシング能力を有するものの、そのシグナルをワイヤレスで生体に埋め込むあるいは装着し、ワイヤレスで検知しようとした場合、新たに電源を用いなければ燃料電池型酵素センサのデータを読み出すことはできない。そこで、酵素燃料電池の起電力を増加させるために、直列に酵素燃料電池を接続することで、電池の数に応じて起電力を増加させることが考えられるが、生体内での発電あるいは生体内モニタリングを目指した場合、直列に接続された酵素燃料電池を生体内に配置することは装置として複雑となり、また、電極が大型になるという問題点があり、実用的には不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明では、酵素などの生体触媒反応の結果生じるエネルギーを蓄積して、その蓄積の速度または、いったん蓄積されたエネルギーを放出される際の頻度を指標として測定することを提案する。すなわち、本発明では、基質濃度に依存した生体触媒の反応により、一定のエネルギーが生産される場合に、その生産速度は基質濃度に依存することに着目し、蓄積されるエネルギーを一定レベルに定め、そのエネルギーが一定レベルに蓄積されたときに、そのエネルギーを放出すると、その放出する頻度は生体触媒の基質濃度に依存することを利用する。本発明は、この放出頻度を測定することによって生体触媒の基質濃度を測定することを提案する。
【0012】
特に、酵素などの生体触媒と生体触媒反応の結果生じるエネルギーとして電気エネルギーをキャパシタに一定レベルまで蓄積し、放電することにより、放電される電気量によりシグナルが発生する回路を装備するデバイスとを組み合わせることにより気質濃度の測定方法及びそのための装置を提供することができる。
【0013】
また、キャパシタに蓄積された電気エネルギーから光、音波、電磁波などを発生する回路と組み合わせることにより、センサから発生されるシグナルは容易に非接触のモニタ部側のシグナル検出装置にて受信できることから、測定部とモニタ部を分離させることが可能となる。このように、測定部とモニタ部の分離が可能となることで、測定側が一層の小型化が可能となり、持ち運びあるいは体内装着・埋め込み型センサにおいてきわめて有利となる。
【0014】
さらに、本発明の他の側面においては、酵素反応によって生じた電気エネルギーをキャパシタに蓄積し、その起電力によってワイヤレス装置を起動させ、外部受信機にその信号
を送信できる新規なワイヤレス酵素センサの回路を提供する。すなわち酵素燃料電池の起電力で同センーのシグナルをワイヤレスで送信できる、電源が不要の自走式ワイヤレス酵素センサを提供する。また、本発明の装置では、従来の電位測定などとは異なり、ワイヤレス発信装置の起動電位を超えたときにワイヤレスシグナルが受信側で検知できることに基づく、ワイヤレス発信装置の起動頻度を指標として該基質濃度を測定する装置を提供する。
【0015】
本発明の構成は次のとおりである。
(1)生体触媒とその生体触媒が認識する基質との反応の結果生じるエネルギーを一定レベルまで蓄積し、その蓄積速度が基質濃度に依存することを指標として測定することを特徴とする前記基質濃度を測定する方法。
(2)前記指標が、前記エネルギーが一定レベル以上に達したときに放出する際の一定時間におけるエネルギー放出の頻度により測定されることを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(3)前記生体触媒が酵素、オルガネラ、微生物、細胞であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記生体触媒が触媒する反応が酸化反応であることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記生体触媒が酵素であることを特徴とする上記(3)に記載の方法。
(6)前記酵素が酸化還元酵素であることを特徴とする上記(5)に記載の方法。
(7)蓄積するエネルギーを電荷としてキャパシタに蓄積することを特徴とする上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の方法。
(8)生体触媒の基質が設置されたアノードと外部電子受容体が設置されたカソードを有する燃料電池、前記燃料電池に直列接続されたキャパシタ及び前記キャパシタの充電速度を指標として測定する測定器を有する器質濃度を測定する装置において、前記基質と生体触媒との反応により生じた電子を前記カソードの前記外部電子受容体に移転することにより生じた起電力が前記キャパシタに充電され、その充電速度を前記測定器により測定することを特徴とする基質濃度を測定する装置。
(9)前記測定器は、前記キャパシタに充電された電位が一定レベル以上に達したときにその蓄積された電位を放電することにより、前記放電の頻度を測定する装置であることを特徴とする上記(8)に記載の装置。
(10)前記キャパシタに充電する際に、前記生体触媒反応に基づく起電力を昇圧し、前記キャパシタに充電するためのチャージポンプをさらに有することを特徴とする上記(8)又は(9)に記載の装置。
(11)前記測定器は、キャパシタからの放電によりシグナルを発生するシグナル発生回路を有し、前記シグナルの頻度を測定する測定器であることを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の装置。
(12)前記シグナル発生回路がワイヤレス送信装置であることを特徴とする上記(11)に記載の装置。
(13)前記測定器は、前記シグナル発生回路が作動したときに発生する物理シグナル及び/又は化学シグナルを測定することを特徴とする上記(11)又は(12)に記載の装置。
(14)前記物理シグナル及び/又は化学シグナルが音波、光又は電磁波であることを特徴とする上記(13)に記載の装置。
(15)前記測定器は、前記キャパシタが充電により前記ワイヤレス送信機の起動電圧を越えたときに、前記キャパシタの放電により発生するシグナルを受信するための受信機をさらに有する上記(11)ないし(14)のいずれかに記載の装置。
(16)前記アノードに設置された生体触媒が酵素であることを特徴とする上記(8)ないし(15)のいずれかに記載の装置。
(17)前記酵素が酸化還元酵素であることを特徴とする上記(16)に記載の装置。
(18)前記酵素がグルコースの酸化を触媒する酵素であることを特徴とする上記(16)に記載の装置。
【0016】
本発明で用いる生体触媒としては酵素、オルガネラ、細胞、微生物などを用いることができ、またその触媒する反応としては測定対象の酸化還元反応が望ましい。酵素としては、種々の酸化還元酵素を用いることができるが、例えば、FADを補酵素とするアルコール、グルコース、コレステロール、フルクトシルアミン、グリセリン、尿酸の酸化酵素、FADを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素、PQQを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素などがあげられる。特にグルコースを測定対象とする場合はグルコース酸化酵素やFADあるいはPQQを補酵素とするグルコース脱水素酵素が望ましい。これは、該酵素を産生する微生物、細胞から単離精製した酵素でもよく、大腸菌などで組換え生産された酵素でもよい。
【0017】
また、本発明で用いる生体触媒は、酵素単体でなくても、アノードにおいて基質を酸化し、この電子を適当な電子受容体あるいは直接電極に伝達することができれば、酵素を含んだ膜、酵素を含んだオルガネラ、酵素を含んだ細胞でもよく、これらの酵素反応およびそれと共役する複数の酵素の反応の結果により上述の基質の酸化反応が達成されれば用いることができる。
【0018】
本発明の酵素を用いて電気エネルギーを発生させる方法として、酵素燃料電池を採用することができる。すなわち、酸化酵素あるいは脱水素酵素をアノードに固定していることを特徴とする酵素燃料電池である。
【0019】
この際、カソードとしてはビリルビン酸化酵素のように酸素を還元する酵素を用いる場合あるいは適当な電子受容体を組み合わせた電極を使用することができる。あるいは、白金あるいは白金を含む無機触媒など、酸素還元能力を有する触媒を用いることができる。
【0020】
また、アノードとしては酵素とともに電子受容体を含む構成が考えられる。すなわち、酵素反応により得られた電子を人工電子受容体に渡し、これを電極上で酸化するものを使用することができる。あるいは、アノードにシトクロームを電子伝達サブユニットに有する酵素など、電極と直接電子移動を行える脱水素酵素などは人工電子受容体を添加しないでアノードを構成できる。アノードおよびカソードの電極材料としては炭素粒子が充填あるいは塗布されている電極、炭素電極、金電極、白金電極などを用いることができる。
【0021】
アノードあるいはカソードの人工電子受容体としては、特に限定されないが、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェナジンメトサルフェートおよびその誘導体、キノン系化合物、などを用いることができる。
【0022】
カソード用酵素としては特に限定されないが、ビリルビン酸化酵素やラッカーゼが応用できる。カソードの人工電子受容体としては特に限定されないが、フェリシアン化カリウム、ABTSなどを用いることができる。
【0023】
アノード用酵素としては種々の酸化酵素あるいは脱水素酵素を用いることができる。特にグルコースを測定対象とした場合はグルコース酸化酵素、PQQあるいはFADを補酵素とするグルコース脱水素酵素を用いることができる。
【0024】
本発明において酵素を電極に装着する方法として、そのままカーボンペーストなどの電極材料と混合して用いることができる。あるいは一般の酵素固定化方法を用いて固定化酵素を調製したあとに電極上に装着できる。例えば、両者を混合した後にグルタルアルデヒドなどの二架橋性試薬で架橋処理する方法、及び光架橋性ポリマーや導電性ポリマーや酸
化還元ポリマーなどの合成ポリマーあるいは天然高分子マトリックス中に包括固定する方法があげられる。このようにして調製した混合蛋白質を炭素粒子と混合あるいは炭素粒子から構成され酵素と交合しやすい態様であるカーボンペーストと混合した後にさらに架橋処理することにより調製した混合物をカーボンあるいは金、あるいは白金などで構成される電極上に装着する。炭素粒子としては比表面積として10m2/g程度のものから、500m2/g以上、よりこのましくは800m2/g以上のものを用いることができる。たとえば前者としては市販品としてバルカン、後者としてはケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0025】
さらに、このようにして電極上に酵素を装着するときに同時に人工電子受容体を固定することも可能である。典型的には、FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素、FADGDHとメトキシフェナジンメトサルフェート(mPMS)とを混合し、これをさらにカーボンペーストと混合した後に凍結乾燥する。これをカーボン電極上に装着し、その状態でグルタルアルデヒド水溶液に浸し、蛋白質を架橋し、酵素電極を作成する。
【0026】
酵素燃料電池は測定対象を基質とする酸化あるいは脱水素控訴をアノード電極に固定する。カソードには酸素還元酵素を固定する。このようにして作製した電極をアノードおよびカソード用電極とし、アノードは例えばm-PMSを人工電子受容体として、また、カソードには例えば、ABTSを人工電子受容体とできる。
【0027】
このようにして作成した酵素反応により電気エネルギーを発生する部分をキャパシタに接続することでその電気エネルギーを蓄電することができる。すなわち、酵素反応によって得られた起電力にもとづき、図2に示される回路に接続されているキャパシタはキャパシタの容量が充填されるまで蓄電される。したがって、同じ基質濃度の溶液にて酵素反応を行なう場合、容量が大きなキャパシタを用いれば、充電が完了するまでに長時間を有し、逆に容量が小さなキャパシタを用いれば、充電が完了するまでの時間は短くなる。あるいは同じ容量のキャパシタを用いた場合、酵素の基質濃度が低ければ、電気エネルギーの単位時間あたりの生成量が少ないことから、充電が完了するまでの時間が長くなり、基質濃度が高ければ、逆に充電が完了するまでの時間が短くなる。すなわち、キャパシタを一定の容量とすることで、酵素の基質の濃度に応じて、充電に要する時間が変化することから、充電に要する時間(充電速度)を指標にすることで基質濃度を測定できる。すなわち、あらかじめ観測される充電に要する時間(充電速度)と基質濃度との相関を記録し、それにもとづく校正曲線を作成し、観測される充電に要する時間から未知試料の基質濃度を測定できる。
【0028】
さらにキャパシタに適当な回路を接続し、充電が終了すると放電を開始できるようにすることで、単位時間あたりの充電放電の頻度を測定することでも同様に基質濃度が測定できる。すなわち、あらかじめ観測される単位時間あたりに放電する頻度と基質濃度との相関を記録し、それにもとづく校正曲線を作成し、観測される放電頻度から未知試料の基質濃度を測定できる。
【0029】
さらに、そこに接続する回路によって光、音波あるいは電磁波が発生すれば、その光、音波あるいは電磁波を観測することで、単位時間あたりに観測される頻度、あるいは観測される間隔を測定することで基質の濃度を測定できる。すなわち、あらかじめ観測される光、音波あるいは電磁の発生に要する時間あるいは単位時間の頻度と基質濃度との相関を記録し、それにもとづく校正曲線を作成し、観測される光、音波あるいは電磁の発生に要する時間あるいは単位時間の頻度充から未知試料の基質濃度を測定できる。
【0030】
また、起動する回路に応じて、キャパシタの電位を適切に設定することも可能である。すなわち、酵素反応によって発生する電気エネルギを起電力として発生させる酵素燃料電
池の起電力を、昇圧回路と組み合わせることにより、キャパシタに充電される電圧を上昇させることができる。この昇圧には市販されているチャージポンプ、あるいはそのIC回路を用いることができる。組み合わせるチャージポンプの種類ならびにその数によって、キャパシタに蓄電する電圧は調節でき、起動させるシグナル発生回路に応じて、キャパシタの電圧を設定することができる。
【0031】
キャパシタが充電・放電される頻度は前述のようにキャパシタの容量ならびに基質の濃度に依存する。すなわち、基質濃度が一定であれば、キャパシタ容量が小さいほど充放電の頻度は高く、またキャパシタ容量が大きくなれば充放電の頻度は低くなる。また、キャパシタ容量が一定であれば、基質濃度に応じて、充放電の頻度は変化し、基質濃度が低いほど充放電の頻度が低くなり、基質濃度が高いほど、充放電の頻度が高くなる。
【0032】
例えば、キャパシタの両端に電圧系を接続し、これを観測すると図3のようになる。この形態では基質としてグルコース濃度一定の試料を用い、酵素としてグルコースの脱水素化を触媒する酵素を採用し、酵素燃料電池によって発生した起電力をチャージポンプを介して、酵素燃料電池の0.3Vから1.8Vまで昇圧して、キャパシタを充電している。図3に示されるように、一定間隔でキャパシタの電圧が1.8Vに達しており、酵素反応により生じた電気エネルギが蓄電され、それが放出されている様子が観察できる。このとき、接続している、キャパシタの容量を0.47μFから1μFに変えると観測される充放電の間隔が変化する。すなわちキャパシタ容量が0.47μFであったときにはその間隔が0.2秒(充放電頻度5回/秒 5Hz)であったのに対して1μFでは2.4Hz、10μFでは0.27Hz、100μFでは0.028Hzと変化する。
【0033】
さらに10μFのキャパシタを用いてグルコース濃度を変化させ、キャパシタに充電される状態を観察すると、グルコース濃度が低い方が充放電間隔が長く、またグルコース濃度が高い方が充放電間隔が短い(図4参照)。逆に、これを充放電頻度として観測するとグルコース濃度が低い方が充放電頻度は低く、またグルコース濃度が高い方が充放電頻度が高い。
【0034】
同様にこの回路にキャパシタの充放電に応じてシグナルを発生する回路を接続することで、そこから発生する光、音波あるいは電磁波を観測することで同様に基質濃度が測定できる。たとえば、発光ダイオードを接続した場合、発光ダイオードが光る間隔あるいは光る頻度を観察することで、基質濃度が測定できる。
【0035】
図5に示すように、グルコース濃度が低い方が発光の間隔が長く、またグルコース濃度が高い方が発光の間隔が短いことが示される。逆に、これを発光の頻度として観測するとグルコース濃度が低い方が発光頻度は低く、またグルコース濃度が高い方が発光頻度が高いことが示される。
【0036】
また、同様にこの回路に電磁波を発生する共振回路を接続した場合、電磁波発信する間隔あるいは頻度を観察することで、基質濃度が測定できる。この場合、グルコース濃度が低い方が発信される電磁波間隔が長く、またグルコース濃度が高い方が間隔が短い。これを電磁波の発信の頻度として観測するとグルコース濃度が低い方が発信は低く、またグルコース濃度が高い方が発信頻度が高いことが示される。
【0037】
このような形態からわかるように、キャパシタの電気容量ならびに電圧によって起動するシグナル発信回路が接続されている場合、そこから発せられる信号の種類、すなわち、光、音波あるいは電磁波によらず、その間隔、および頻度を観察することで酵素反応の基質濃度が測定できることは明白である。また、その酵素はここでしめしたグルコースを基質とした脱水素酵素に限らず、種々の酸化酵素、脱水素酵素を用いることが可能であるこ
とは明白である。例えばFADを補酵素とするアルコール、グルコース、コレステロール、フルクトシルアミン、グリセリン、尿酸の酸化酵素、FADを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素、PQQを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素などがあげられる。また、酵素単体でなくても、アノードにおいて基質を酸化しこの電子を適当な電子受容体あるいは直接電極に伝達することができれば、酵素を含んだ膜、オルガネラ、細胞、微生物でもよく、これらの生体触媒反応の結果により上述の基質の酸化反応が達成されれば用いることができることはこれまでのさまざまな酸化還元反応を触媒する生体触媒を用いたバイオセンサの研究事例を見れば自明である。
【0038】
また、別の形態としてキャパシタに接続するシグナル発信回路としてワイヤレス通信に用いる送信回路を用いることができる。これらの送信回路は、その回路が起動するために一定の電圧以上になることが必要であり、起電力がこれを下回ると回路が停止し送信が停止される。また一定の電圧以下では起動しない。すなわち、キャパシタに1.5Vで起動するワイヤレス送信回路を接続し、その送信シグナルを離れた受信システムに観察すると、キャパシタの充放電に合わせてワイヤレスからの送信が観察される。すなわち、酵素反応の基質の濃度に依存して、ワイヤレス送信回路が起動し、信号が送信され、その間隔は酵素基質濃度が低ければ長く、高ければ短く、また信号の送信頻度は酵素基質濃度が低ければ低く、高ければ高くなる。したがって、受信される送信記録を観察することで酵素の基質濃度が測定できる。
【0039】
このようなワイヤレス送信回路として共振回路を用いることができる。またこの共振回路内のキャパシタに容量が可変のキャパシタを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の基質測定方法及びその装置の模式図を示す。
【図2】本発明で使用するキャパシタの回路図を示す。
【図3】本発明の装置のキャパシタにおける、充電・放電の繰返しによる電圧変化を示す。
【図4】キャパシタの充電頻度とグルコース濃度の関係を示す。
【図5】グルコース濃度の変化に対する発光ダイオードの発光間隔(時間)を示す。
【図6A】キャパシタの充電に要する時間を示す(抵抗100kΩ)。
【図6B】キャパシタの充電に要する時間を示す(抵抗500kΩ)。
【図6C】キャパシタの充電に要する時間を示す(抵抗500kΩ)。
【図7A】グルコース濃度の変化に対するキャパシタの充電に要する時間を示す(10kΩ)。
【図7B】グルコース濃度の変化に対するキャパシタの充電に要する時間を示す(500kΩ)。
【図8A】酵素燃料電池によるキャパシタの電圧の時間に対する変化を示す(0.47μF)。
【図8B】酵素燃料電池によるキャパシタの電圧の時間に対する変化を示す(1μF)。
【図8C】酵素燃料電池によるキャパシタの電圧の時間に対する変化を示す(10μF)。
【図8D】酵素燃料電池によるキャパシタの電圧の時間に対する変化を示す(100μF)。
【図9】グルコース濃度の変化させた場合のシグナル頻度を示す。
【図10】グルコース濃度の変化に対するキャパシタが1.8Vに到達するまでの時間の変化を示す。
【図11】グルコース濃度の変化に対するキャパシタが単位時間あたりの1.8Vに到達する頻度の相関。
【図12】ワイヤレスセンサにおける観察される信号の頻度とグルコース濃度の相関(1.8V昇圧)。
【図13】ワイヤレスセンサにおける観察される信号の頻度とグルコース濃度の相関(2.4V昇圧)。
【図14】シグナル発信回路として共振回路を送信機として使用した計測・送信回路の例を示す。
【図15】図14に示した発信回路を用いて観測された電磁波を記録した例を示す。
【図16】シグナル発信回路としてバリキャップダイオードを用いる共振回路を送信機として使用した計測・送信回路の例を示す。
【図17】図16に示した発信回路を用いて観測される電磁波の頻度と試料グルコース濃度を計測した例を記す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
アノードの作製:
ケッチェンブラックインク10 mL、100 mM PPB(pH 7.0)10 mLとFADGDH複合体溶液40 mL(1.2 U/mL)を混合し、そのうち50 mLを1cm2のカーボンクロスに均一に塗布し、4℃において3時間風乾した。これを1 %グルタルアルデヒド溶液(10 ml)に室温で30分浸すことで架橋処理を行った。次に、このカーボンクロスを10 mM Tris-HCl (10 ml)に20分間浸けることで未反応のグルタルアルデヒドを除去後、100 mM PPB (pH 7.0) (10 ml)中に漬けて、1時間平衡化し、アノードを作製した。
【0043】
カソードの作製:
白金担持カーボンインク10 mLと100 mM PPB(pH 7.0)50mLを混合し、そのうち50 mLをカーボンクロスに均一に塗布し、4℃において3時間風乾した。エタノールによって希釈した3%(w/v)Poly(dimethylsiloxane) (PDMS) をこれに50 mL滴下し、一晩風乾したものをカソードとした。
【0044】
電池および回路の構築:
作製したアノード、カソードを用い、20 mM グルコースを含む100 mM PPB(pH7.0)を反応溶液として電池を構築した。電池、可変抵抗器、キャパシタ、スイッチをすべて直列につなぎ回路を作製した。
【0045】
このようにして作成した回路においてキャパシタ充電時間を検討した。すなわち二種類のキャパシタ(0.1 mF、1 mF)を用い、グルコース濃度20mMにおいて充電され、キャパシタにかかる電圧とスイッチを抵抗につないだときに回路に流れる電流を測定し、キャパシタへの充電時間の検討を行った。
【0046】
このとき、1 mFのキャパシタを用い抵抗が100kΩ, 500kΩ、1000kΩのときの結果を図6に示す。スイッチonと同時に電流が流れた。また時間経過とともに電流が減少し、キャパシタにかかる電圧は増加した。また、抵抗値を変え、電流値を減少または増加させると、それに伴いキャパシタの充電時間が増加、減少した。いずれの抵抗のときにおいても、回路に流れた電流値からキャパシタに充電された電荷量を計算すると、キャパシタの容量とほぼ一致した。また、0.1 mFのキャパシタを用いたときも同様の結果が得られたが、1 mFと比較し充電時間が短かった。電源として酵素燃料電池を用いた場合でも、キャパシタが十分に機能することが示された。
【0047】
同様に作成した回路を用いてキャパシタ充電時間のグルコース濃度依存性を評価した。1 mFのコンデンサを用い、抵抗を10kΩまたは500kΩとし、キャパシタにかかる電圧を測定した。このとき反応溶液のグルコースを徐々にグルコース試料を添加し、濃度を増加させていき、それぞれのグルコース濃度での充電時間を検討した。
【0048】
その結果を図7に示す。10kΩ、500kΩともにグルコース濃度の増加に伴い、充電時間が減少した。500kΩにおいては6 mM程度で充電時間の減少が見られなくなったのに対し、10kΩでは11 mMまで電流値の増加がみられた。このことから、キャパシタに充電する時間を指標に酵素の基質濃度が測定できることが示された。
【実施例2】
【0049】
アノードの作製:
ケッチェンブラックインク10 mL 、100 mM PPB(pH 7.0)10 mLとFADGDH複合体溶液40 mL(4.2 U/mL)を混合し、そのうち300 mLを6cm2のカーボンクロスに均一に塗布し、4℃において3時間風乾した。これを1 %グルタルアルデヒド溶液(10 ml)に室温で30分浸すことで架橋処理を行った。次に、このカーボンクロスを10 mM Tris-HCl (10 ml)に20分間浸けることで未反応のグルタルアルデヒドを除去後、100 mM PPB (pH 7.0) (10 ml)中に漬けて、1時間平衡化し、アノードを作製した。
【0050】
カソードの作製:
白金担持カーボンインク60 mLと100 mM PPB(pH 7.0)300mLを混合し、そのうち300 mLをカーボンクロス6cm2に均一に塗布し、4℃において3時間風乾した。エタノールによって希釈した3 %(w/v)Poly(dimethylsiloxane) (PDMS) をこれに300 mL滴下し、一晩風乾したものをカソードとした。
【0051】
電池および回路の構築:
作製したアノード、カソードを用い、100 mM PPB(pH7.0)を反応溶液として電池を構築した。この燃料電池と0.3 Vから1.8 Vへの昇圧が可能なチャージポンプ(昇圧IC;S-882Z18 セイコーインスツル社製)を組み合わせ、図1に示す回路を構築した。またシグナル発生回路として橙色発光ダイオードを接続し、さらに0.47〜100 mFの種々のキャパシタを接続した。キャパシタにかかる電圧の測定ならびに発光ダイオードの発光の間隔と頻度を測定し、充放電サイクルの評価を行った。
【0052】
昇圧ICを用いた回路の構築およびキャパシタ容量によるシグナル頻度の評価
本回路が酵素燃料電池で起動することを、発光ダイオードの点滅または、キャパシタの電圧の経時変化で評価した。また、キャパシタを0.47〜100 mFに付け替えたときに得られるシグナル頻度の違いを評価した。反応溶液のグルコース濃度は20 mMとした。
【0053】
このときのキャパシタの電圧の経時変化を図8に示す。0.47 mFのキャパシタを用いたとき、一秒当たり5回の頻度(5/s)でスパイク上のシグナルが観測された。また、同様の周期でダイオードの点滅が観察された。キャパシタの容量を変えたところ、シグナルの頻度が変化し、周期はそれぞれ、1 mFが2.4 /s、10mFが0.27 /s、100 mFが0.028 /sであった。キャパシタの容量を小さくすることで、シグナルの頻度を増やせることが示された。
【0054】
キャパシタ充放電サイクルのグルコース濃度依存性
酵素基質であるグルコースの濃度を変化させ、そのときに得られるシグナル頻度を発光ダイオードの点滅または、キャパシタの電圧の経時変化で評価したキャパシタとしては容量が10 mFのものを用いた。その結果を図9に示す。グルコース濃度が高まるにつれ、キャパシタが最大の電圧に到達するまでの時間が短くなり、また単位時間あたりのピーク電圧に達する頻度の増加が見られた。この結果をもとにグルコース濃度とLEDの点滅、すなわちキャパシタが1.8Vに到達するまでの時間(図10)および単位時間あたりのLEDの点滅回数、すなわちキャパシタが単位時間あたりの1.8Vに到達する頻度(図11)をもとめた。これらの曲線から示されるように、得られた曲線からLEDの点滅、すなわちキャパシタが1.8Vに到達するまでの時間および単位時間あたりのLEDの点滅回数、すなわちキャパシタが単位時間あたりの1.8Vに到達する頻度にグルコース濃度依存性があることが示された。これらのことから、シグナル頻度を指標とすることでグルコース濃度が測定でき、キャパシタの充放電を利用した新規バイオセンサを構築できたことが示された。
【0055】
昇圧した酵素燃料電池によるワイヤレスシステムの起動
作製したアノード、カソードを用い、100 mM PPB(pH7.0)を反応溶液として電池を構築した。この燃料電池と0.3 Vから1.8 Vへの昇圧が可能なチャージポンプ(昇圧IC;S-882Z18 セイコーインスツル社製)あるいは0.3 Vから2.4Vへの昇圧が可能なチャージポンプ(昇圧IC;S-882Z24 セイコーインスツル社製)を組み合わせ、図1に示す回路を構築し、シグナル発生回路として、ワイヤレスシステム送信機(赤外線送信)を接続した。すなわち、ワイヤレス送信機の電源部分を図1のシグナル発生回路に接続し、キャパシタが充電されたときに放電される電圧によってワイヤレス送信システムが起動することを指標としてバイオセンサを構築した。反応溶液のグルコース濃度は0〜25 mMとした。
【0056】
その結果、グルコースの存在下において、ワイヤレスシステム送信機が起動し、一定間隔で受信機にシグナルが送られた。
【0057】
図12に1.8V昇圧において観察される信号の頻度とグルコース濃度との相関を、図13に2.4V昇圧において観察される信号の頻度とグルコース濃度との相関を示す。このように、いずれの昇圧においても、信号の受信頻度はグルコース濃度に相関しており、この頻度をモニタリングすることによりグルコース濃度を計測できる。計測可能なグルコース濃度はいずれの場合も0.5mMから20mMと糖尿病の血糖値を計測するに十分な範囲をカバーしており、連続血糖診断装置をはじめとする血糖診断装置に十分に応用できることが示されている。
【0058】
このことから、キャパシタに充電された酵素反応の結果蓄積された起電力を用いることでワイヤレスシステムを起動できることが示された。したがって、本新規バイオセンサにおいてシグナル発信回路としてワイヤレス送信機が応用できることが示された。
【0059】
共振回路を送信機として使用した計測・送信回路の構築
実施例1と同様に作製した燃料電池を構築し、これに10μFキャパシタ、0.3から1.8Vへの昇圧ICを組み合せてバイオキャパシタを構築し、電源としてバイオキャパシタの出力を両端に接続して、ハートレー型発信回路を作製した。このような送信機を使用して、受信回路により電磁波の受信頻度を測定することもできる。その結果、グルコースの存在下において図15に記すように、一定の間隔で電磁波が受信されることが観測された。この電磁波の受信頻度はグルコース濃度に依存することは、ここまでの記述から自明である。
バリキャップダイオードを用いる共振回路を送信機として使用した計測・送信回路の構築
実施例1と同様に作製した燃料電池を構築し、これに0.47μFキャパシタ、0.3から1.8Vへの昇圧ICを組み合せてバイオキャパシタを構築し、電源としてバイオキャパシタの出力をバリキャップ(1sV149)の両端に接続して、ハートレー型発信回路を作製した。このような送信機を使用して、受信回路により電磁波の受信頻度を測定することもできる。図17にこの発信回路を用いて観測される電磁波の頻度と試料グルコース濃度を計測した例を記す。このように本回路を用いてグルコース濃度が測定できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基質濃度を測定する方法及びそのための装置(バイオセンサ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、生体触媒の反応により生体触媒が基質とする化合物と反応することにより、生体触媒反応の結果生じる生成物、減少する基質、生成物と反応し生じる化学物質を検出できるデバイスをトランスデューサとして当該基質を測定するセンサである。あるいは、生体触媒反応の結果生じる光、色調の変化、蛍光などの物理シグナルを検出できるデバイスとをトランスデューサとして当該基質を測定するセンサを意味する。生体触媒としては酵素、オルガネラ、細胞、微生物などが挙げられる。
【0003】
すなわち、バイオセンサとは分子認識素子として生体触媒を用い、その信号を電気化学デバイス、光デバイス、熱検知デバイスなどのトランスデューサと組み合わせることで、生体触媒の反応を電子機器が検出できる信号に変換し、生体触媒が認識する基質を分析できるセンサであるといえる。代表的なバイオセンサの一つとして、酵素を生体触媒とする酵素センサがある。たとえば、グルコース(ブドウ糖)を測定することを目的にグルコースを酸化する酵素が酸素電極、過酸化水素電極等の電極表面上に酵素が固定化され、グルコース酸化反応によって消費される酸素量、同時に生成される過酸化水素量を電気化学的に測定することを指標にグルコースセンサが開発されている。
【0004】
現在多用されている酵素センサでは、酸化還元酵素を用いるセンサが主流であり、その主要な原理は、アノードの酵素反応により生じる還元物質を外部から電位を加えこれを再酸化するときに生じる電子を電流計により測定する、あるいは生じる電子をカソードにおいて還元するときのアノードとカソードとの間に生じる電位差により測定する方法に基づいている。
【0005】
また、簡易血糖診断装置などに用いられている方法としては、酵素反応により生じた過酸化水素や還元型人工電子受容体などの還元物質を定法に従い発色させ、その色彩を光学的センサにより判断する方法も採用されている。
【0006】
この他に特殊な酵素の例として、ホタルなどの発光生物由来の酵素、ルシフェラーゼを酵素として採用する酵素センサでは、ルシフェラーゼの基質が反応するときに酵素反応によって生じる光を検出することを特色とする酵素センサも報告されている。しかし、この方法ではルシフェラーゼの基質となる物質、例えばATPの検出に限定されること、あるいは抗体反応を検出する際に抗体をルシフェラーゼで標識することで間接的に光シグナルで検出する原理が採用できるなど、応用例がルシフェラーゼを用いることが可能な場合に限定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Katz et al., J. Am. Chem. Soc. 2001,123,10752-10753
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような従来のバイオセンサにおいては、酵素センサなどのバイオセンサを用いる測定機器(以下酵素センサシステム)はバイオセンサによる測定部と測定されたシグナル
を受け取りこれを処理するモニタ部とから構成されるが、これらは一体化されるか、あるいは自己血糖診断装置にみられるように測定部に相当する部分が使い捨てとなるように、切り離せるタイプが主流であった。そして、基質濃度を検出する測定部とバイオセンサのシグナルを検出するモニタ部は生体触媒反応の場と直接接触するか、結線させる、あるいは特殊なトランスミッターを起動させる回路とそのための電源を別途用意しなければならないという問題があった。
【0009】
一方、これまでに酵素燃料電池の起電力を指標とした酵素センサが報告されているが、この燃料電池単体の起電力は1V未満であることから、そのままでは、燃料電池の起電力によってセンシング用デバイスを作動できなかった。燃料電池型酵素センサの起電力を指標として基質濃度を測定する場合には、その起電力を直接電圧計と接続し、電圧を測定することで基質濃度を測定するか、あるいはその起電力を測定する電圧計を接続し、電圧計の応答値を外部電源により起動させるワイヤレス装置によって外部の受信機に送信することが必要であった。("A Novel Wireless Glucose Sensor Employing Direct Electron Transfer Principle Based Enzyme Fuel Cell" Noriko Kakehi, Tomohiko Yamazaki, Wakako Tsugawa and Koji Sode Biosensors & Bioelectronics Epub 2006 Dec.11参照)
【0010】
すなわち、燃料電池型酵素センサが小型で高性能はセンシング能力を有するものの、そのシグナルをワイヤレスで生体に埋め込むあるいは装着し、ワイヤレスで検知しようとした場合、新たに電源を用いなければ燃料電池型酵素センサのデータを読み出すことはできない。そこで、酵素燃料電池の起電力を増加させるために、直列に酵素燃料電池を接続することで、電池の数に応じて起電力を増加させることが考えられるが、生体内での発電あるいは生体内モニタリングを目指した場合、直列に接続された酵素燃料電池を生体内に配置することは装置として複雑となり、また、電極が大型になるという問題点があり、実用的には不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明では、酵素などの生体触媒反応の結果生じるエネルギーを蓄積して、その蓄積の速度または、いったん蓄積されたエネルギーを放出される際の頻度を指標として測定することを提案する。すなわち、本発明では、基質濃度に依存した生体触媒の反応により、一定のエネルギーが生産される場合に、その生産速度は基質濃度に依存することに着目し、蓄積されるエネルギーを一定レベルに定め、そのエネルギーが一定レベルに蓄積されたときに、そのエネルギーを放出すると、その放出する頻度は生体触媒の基質濃度に依存することを利用する。本発明は、この放出頻度を測定することによって生体触媒の基質濃度を測定することを提案する。
【0012】
特に、酵素などの生体触媒と生体触媒反応の結果生じるエネルギーとして電気エネルギーをキャパシタに一定レベルまで蓄積し、放電することにより、放電される電気量によりシグナルが発生する回路を装備するデバイスとを組み合わせることにより気質濃度の測定方法及びそのための装置を提供することができる。
【0013】
また、キャパシタに蓄積された電気エネルギーから光、音波、電磁波などを発生する回路と組み合わせることにより、センサから発生されるシグナルは容易に非接触のモニタ部側のシグナル検出装置にて受信できることから、測定部とモニタ部を分離させることが可能となる。このように、測定部とモニタ部の分離が可能となることで、測定側が一層の小型化が可能となり、持ち運びあるいは体内装着・埋め込み型センサにおいてきわめて有利となる。
【0014】
さらに、本発明の他の側面においては、酵素反応によって生じた電気エネルギーをキャパシタに蓄積し、その起電力によってワイヤレス装置を起動させ、外部受信機にその信号
を送信できる新規なワイヤレス酵素センサの回路を提供する。すなわち酵素燃料電池の起電力で同センーのシグナルをワイヤレスで送信できる、電源が不要の自走式ワイヤレス酵素センサを提供する。また、本発明の装置では、従来の電位測定などとは異なり、ワイヤレス発信装置の起動電位を超えたときにワイヤレスシグナルが受信側で検知できることに基づく、ワイヤレス発信装置の起動頻度を指標として該基質濃度を測定する装置を提供する。
【0015】
本発明の構成は次のとおりである。
(1)生体触媒とその生体触媒が認識する基質との反応の結果生じるエネルギーを一定レベルまで蓄積し、その蓄積速度が基質濃度に依存することを指標として測定することを特徴とする前記基質濃度を測定する方法。
(2)前記指標が、前記エネルギーが一定レベル以上に達したときに放出する際の一定時間におけるエネルギー放出の頻度により測定されることを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(3)前記生体触媒が酵素、オルガネラ、微生物、細胞であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記生体触媒が触媒する反応が酸化反応であることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記生体触媒が酵素であることを特徴とする上記(3)に記載の方法。
(6)前記酵素が酸化還元酵素であることを特徴とする上記(5)に記載の方法。
(7)蓄積するエネルギーを電荷としてキャパシタに蓄積することを特徴とする上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の方法。
(8)生体触媒の基質が設置されたアノードと外部電子受容体が設置されたカソードを有する燃料電池、前記燃料電池に直列接続されたキャパシタ及び前記キャパシタの充電速度を指標として測定する測定器を有する器質濃度を測定する装置において、前記基質と生体触媒との反応により生じた電子を前記カソードの前記外部電子受容体に移転することにより生じた起電力が前記キャパシタに充電され、その充電速度を前記測定器により測定することを特徴とする基質濃度を測定する装置。
(9)前記測定器は、前記キャパシタに充電された電位が一定レベル以上に達したときにその蓄積された電位を放電することにより、前記放電の頻度を測定する装置であることを特徴とする上記(8)に記載の装置。
(10)前記キャパシタに充電する際に、前記生体触媒反応に基づく起電力を昇圧し、前記キャパシタに充電するためのチャージポンプをさらに有することを特徴とする上記(8)又は(9)に記載の装置。
(11)前記測定器は、キャパシタからの放電によりシグナルを発生するシグナル発生回路を有し、前記シグナルの頻度を測定する測定器であることを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の装置。
(12)前記シグナル発生回路がワイヤレス送信装置であることを特徴とする上記(11)に記載の装置。
(13)前記測定器は、前記シグナル発生回路が作動したときに発生する物理シグナル及び/又は化学シグナルを測定することを特徴とする上記(11)又は(12)に記載の装置。
(14)前記物理シグナル及び/又は化学シグナルが音波、光又は電磁波であることを特徴とする上記(13)に記載の装置。
(15)前記測定器は、前記キャパシタが充電により前記ワイヤレス送信機の起動電圧を越えたときに、前記キャパシタの放電により発生するシグナルを受信するための受信機をさらに有する上記(11)ないし(14)のいずれかに記載の装置。
(16)前記アノードに設置された生体触媒が酵素であることを特徴とする上記(8)ないし(15)のいずれかに記載の装置。
(17)前記酵素が酸化還元酵素であることを特徴とする上記(16)に記載の装置。
(18)前記酵素がグルコースの酸化を触媒する酵素であることを特徴とする上記(16)に記載の装置。
【0016】
本発明で用いる生体触媒としては酵素、オルガネラ、細胞、微生物などを用いることができ、またその触媒する反応としては測定対象の酸化還元反応が望ましい。酵素としては、種々の酸化還元酵素を用いることができるが、例えば、FADを補酵素とするアルコール、グルコース、コレステロール、フルクトシルアミン、グリセリン、尿酸の酸化酵素、FADを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素、PQQを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素などがあげられる。特にグルコースを測定対象とする場合はグルコース酸化酵素やFADあるいはPQQを補酵素とするグルコース脱水素酵素が望ましい。これは、該酵素を産生する微生物、細胞から単離精製した酵素でもよく、大腸菌などで組換え生産された酵素でもよい。
【0017】
また、本発明で用いる生体触媒は、酵素単体でなくても、アノードにおいて基質を酸化し、この電子を適当な電子受容体あるいは直接電極に伝達することができれば、酵素を含んだ膜、酵素を含んだオルガネラ、酵素を含んだ細胞でもよく、これらの酵素反応およびそれと共役する複数の酵素の反応の結果により上述の基質の酸化反応が達成されれば用いることができる。
【0018】
本発明の酵素を用いて電気エネルギーを発生させる方法として、酵素燃料電池を採用することができる。すなわち、酸化酵素あるいは脱水素酵素をアノードに固定していることを特徴とする酵素燃料電池である。
【0019】
この際、カソードとしてはビリルビン酸化酵素のように酸素を還元する酵素を用いる場合あるいは適当な電子受容体を組み合わせた電極を使用することができる。あるいは、白金あるいは白金を含む無機触媒など、酸素還元能力を有する触媒を用いることができる。
【0020】
また、アノードとしては酵素とともに電子受容体を含む構成が考えられる。すなわち、酵素反応により得られた電子を人工電子受容体に渡し、これを電極上で酸化するものを使用することができる。あるいは、アノードにシトクロームを電子伝達サブユニットに有する酵素など、電極と直接電子移動を行える脱水素酵素などは人工電子受容体を添加しないでアノードを構成できる。アノードおよびカソードの電極材料としては炭素粒子が充填あるいは塗布されている電極、炭素電極、金電極、白金電極などを用いることができる。
【0021】
アノードあるいはカソードの人工電子受容体としては、特に限定されないが、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェナジンメトサルフェートおよびその誘導体、キノン系化合物、などを用いることができる。
【0022】
カソード用酵素としては特に限定されないが、ビリルビン酸化酵素やラッカーゼが応用できる。カソードの人工電子受容体としては特に限定されないが、フェリシアン化カリウム、ABTSなどを用いることができる。
【0023】
アノード用酵素としては種々の酸化酵素あるいは脱水素酵素を用いることができる。特にグルコースを測定対象とした場合はグルコース酸化酵素、PQQあるいはFADを補酵素とするグルコース脱水素酵素を用いることができる。
【0024】
本発明において酵素を電極に装着する方法として、そのままカーボンペーストなどの電極材料と混合して用いることができる。あるいは一般の酵素固定化方法を用いて固定化酵素を調製したあとに電極上に装着できる。例えば、両者を混合した後にグルタルアルデヒドなどの二架橋性試薬で架橋処理する方法、及び光架橋性ポリマーや導電性ポリマーや酸
化還元ポリマーなどの合成ポリマーあるいは天然高分子マトリックス中に包括固定する方法があげられる。このようにして調製した混合蛋白質を炭素粒子と混合あるいは炭素粒子から構成され酵素と交合しやすい態様であるカーボンペーストと混合した後にさらに架橋処理することにより調製した混合物をカーボンあるいは金、あるいは白金などで構成される電極上に装着する。炭素粒子としては比表面積として10m2/g程度のものから、500m2/g以上、よりこのましくは800m2/g以上のものを用いることができる。たとえば前者としては市販品としてバルカン、後者としてはケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0025】
さらに、このようにして電極上に酵素を装着するときに同時に人工電子受容体を固定することも可能である。典型的には、FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素、FADGDHとメトキシフェナジンメトサルフェート(mPMS)とを混合し、これをさらにカーボンペーストと混合した後に凍結乾燥する。これをカーボン電極上に装着し、その状態でグルタルアルデヒド水溶液に浸し、蛋白質を架橋し、酵素電極を作成する。
【0026】
酵素燃料電池は測定対象を基質とする酸化あるいは脱水素控訴をアノード電極に固定する。カソードには酸素還元酵素を固定する。このようにして作製した電極をアノードおよびカソード用電極とし、アノードは例えばm-PMSを人工電子受容体として、また、カソードには例えば、ABTSを人工電子受容体とできる。
【0027】
このようにして作成した酵素反応により電気エネルギーを発生する部分をキャパシタに接続することでその電気エネルギーを蓄電することができる。すなわち、酵素反応によって得られた起電力にもとづき、図2に示される回路に接続されているキャパシタはキャパシタの容量が充填されるまで蓄電される。したがって、同じ基質濃度の溶液にて酵素反応を行なう場合、容量が大きなキャパシタを用いれば、充電が完了するまでに長時間を有し、逆に容量が小さなキャパシタを用いれば、充電が完了するまでの時間は短くなる。あるいは同じ容量のキャパシタを用いた場合、酵素の基質濃度が低ければ、電気エネルギーの単位時間あたりの生成量が少ないことから、充電が完了するまでの時間が長くなり、基質濃度が高ければ、逆に充電が完了するまでの時間が短くなる。すなわち、キャパシタを一定の容量とすることで、酵素の基質の濃度に応じて、充電に要する時間が変化することから、充電に要する時間(充電速度)を指標にすることで基質濃度を測定できる。すなわち、あらかじめ観測される充電に要する時間(充電速度)と基質濃度との相関を記録し、それにもとづく校正曲線を作成し、観測される充電に要する時間から未知試料の基質濃度を測定できる。
【0028】
さらにキャパシタに適当な回路を接続し、充電が終了すると放電を開始できるようにすることで、単位時間あたりの充電放電の頻度を測定することでも同様に基質濃度が測定できる。すなわち、あらかじめ観測される単位時間あたりに放電する頻度と基質濃度との相関を記録し、それにもとづく校正曲線を作成し、観測される放電頻度から未知試料の基質濃度を測定できる。
【0029】
さらに、そこに接続する回路によって光、音波あるいは電磁波が発生すれば、その光、音波あるいは電磁波を観測することで、単位時間あたりに観測される頻度、あるいは観測される間隔を測定することで基質の濃度を測定できる。すなわち、あらかじめ観測される光、音波あるいは電磁の発生に要する時間あるいは単位時間の頻度と基質濃度との相関を記録し、それにもとづく校正曲線を作成し、観測される光、音波あるいは電磁の発生に要する時間あるいは単位時間の頻度充から未知試料の基質濃度を測定できる。
【0030】
また、起動する回路に応じて、キャパシタの電位を適切に設定することも可能である。すなわち、酵素反応によって発生する電気エネルギを起電力として発生させる酵素燃料電
池の起電力を、昇圧回路と組み合わせることにより、キャパシタに充電される電圧を上昇させることができる。この昇圧には市販されているチャージポンプ、あるいはそのIC回路を用いることができる。組み合わせるチャージポンプの種類ならびにその数によって、キャパシタに蓄電する電圧は調節でき、起動させるシグナル発生回路に応じて、キャパシタの電圧を設定することができる。
【0031】
キャパシタが充電・放電される頻度は前述のようにキャパシタの容量ならびに基質の濃度に依存する。すなわち、基質濃度が一定であれば、キャパシタ容量が小さいほど充放電の頻度は高く、またキャパシタ容量が大きくなれば充放電の頻度は低くなる。また、キャパシタ容量が一定であれば、基質濃度に応じて、充放電の頻度は変化し、基質濃度が低いほど充放電の頻度が低くなり、基質濃度が高いほど、充放電の頻度が高くなる。
【0032】
例えば、キャパシタの両端に電圧系を接続し、これを観測すると図3のようになる。この形態では基質としてグルコース濃度一定の試料を用い、酵素としてグルコースの脱水素化を触媒する酵素を採用し、酵素燃料電池によって発生した起電力をチャージポンプを介して、酵素燃料電池の0.3Vから1.8Vまで昇圧して、キャパシタを充電している。図3に示されるように、一定間隔でキャパシタの電圧が1.8Vに達しており、酵素反応により生じた電気エネルギが蓄電され、それが放出されている様子が観察できる。このとき、接続している、キャパシタの容量を0.47μFから1μFに変えると観測される充放電の間隔が変化する。すなわちキャパシタ容量が0.47μFであったときにはその間隔が0.2秒(充放電頻度5回/秒 5Hz)であったのに対して1μFでは2.4Hz、10μFでは0.27Hz、100μFでは0.028Hzと変化する。
【0033】
さらに10μFのキャパシタを用いてグルコース濃度を変化させ、キャパシタに充電される状態を観察すると、グルコース濃度が低い方が充放電間隔が長く、またグルコース濃度が高い方が充放電間隔が短い(図4参照)。逆に、これを充放電頻度として観測するとグルコース濃度が低い方が充放電頻度は低く、またグルコース濃度が高い方が充放電頻度が高い。
【0034】
同様にこの回路にキャパシタの充放電に応じてシグナルを発生する回路を接続することで、そこから発生する光、音波あるいは電磁波を観測することで同様に基質濃度が測定できる。たとえば、発光ダイオードを接続した場合、発光ダイオードが光る間隔あるいは光る頻度を観察することで、基質濃度が測定できる。
【0035】
図5に示すように、グルコース濃度が低い方が発光の間隔が長く、またグルコース濃度が高い方が発光の間隔が短いことが示される。逆に、これを発光の頻度として観測するとグルコース濃度が低い方が発光頻度は低く、またグルコース濃度が高い方が発光頻度が高いことが示される。
【0036】
また、同様にこの回路に電磁波を発生する共振回路を接続した場合、電磁波発信する間隔あるいは頻度を観察することで、基質濃度が測定できる。この場合、グルコース濃度が低い方が発信される電磁波間隔が長く、またグルコース濃度が高い方が間隔が短い。これを電磁波の発信の頻度として観測するとグルコース濃度が低い方が発信は低く、またグルコース濃度が高い方が発信頻度が高いことが示される。
【0037】
このような形態からわかるように、キャパシタの電気容量ならびに電圧によって起動するシグナル発信回路が接続されている場合、そこから発せられる信号の種類、すなわち、光、音波あるいは電磁波によらず、その間隔、および頻度を観察することで酵素反応の基質濃度が測定できることは明白である。また、その酵素はここでしめしたグルコースを基質とした脱水素酵素に限らず、種々の酸化酵素、脱水素酵素を用いることが可能であるこ
とは明白である。例えばFADを補酵素とするアルコール、グルコース、コレステロール、フルクトシルアミン、グリセリン、尿酸の酸化酵素、FADを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素、PQQを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素などがあげられる。また、酵素単体でなくても、アノードにおいて基質を酸化しこの電子を適当な電子受容体あるいは直接電極に伝達することができれば、酵素を含んだ膜、オルガネラ、細胞、微生物でもよく、これらの生体触媒反応の結果により上述の基質の酸化反応が達成されれば用いることができることはこれまでのさまざまな酸化還元反応を触媒する生体触媒を用いたバイオセンサの研究事例を見れば自明である。
【0038】
また、別の形態としてキャパシタに接続するシグナル発信回路としてワイヤレス通信に用いる送信回路を用いることができる。これらの送信回路は、その回路が起動するために一定の電圧以上になることが必要であり、起電力がこれを下回ると回路が停止し送信が停止される。また一定の電圧以下では起動しない。すなわち、キャパシタに1.5Vで起動するワイヤレス送信回路を接続し、その送信シグナルを離れた受信システムに観察すると、キャパシタの充放電に合わせてワイヤレスからの送信が観察される。すなわち、酵素反応の基質の濃度に依存して、ワイヤレス送信回路が起動し、信号が送信され、その間隔は酵素基質濃度が低ければ長く、高ければ短く、また信号の送信頻度は酵素基質濃度が低ければ低く、高ければ高くなる。したがって、受信される送信記録を観察することで酵素の基質濃度が測定できる。
【0039】
このようなワイヤレス送信回路として共振回路を用いることができる。またこの共振回路内のキャパシタに容量が可変のキャパシタを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の基質測定方法及びその装置の模式図を示す。
【図2】本発明で使用するキャパシタの回路図を示す。
【図3】本発明の装置のキャパシタにおける、充電・放電の繰返しによる電圧変化を示す。
【図4】キャパシタの充電頻度とグルコース濃度の関係を示す。
【図5】グルコース濃度の変化に対する発光ダイオードの発光間隔(時間)を示す。
【図6A】キャパシタの充電に要する時間を示す(抵抗100kΩ)。
【図6B】キャパシタの充電に要する時間を示す(抵抗500kΩ)。
【図6C】キャパシタの充電に要する時間を示す(抵抗500kΩ)。
【図7A】グルコース濃度の変化に対するキャパシタの充電に要する時間を示す(10kΩ)。
【図7B】グルコース濃度の変化に対するキャパシタの充電に要する時間を示す(500kΩ)。
【図8A】酵素燃料電池によるキャパシタの電圧の時間に対する変化を示す(0.47μF)。
【図8B】酵素燃料電池によるキャパシタの電圧の時間に対する変化を示す(1μF)。
【図8C】酵素燃料電池によるキャパシタの電圧の時間に対する変化を示す(10μF)。
【図8D】酵素燃料電池によるキャパシタの電圧の時間に対する変化を示す(100μF)。
【図9】グルコース濃度の変化させた場合のシグナル頻度を示す。
【図10】グルコース濃度の変化に対するキャパシタが1.8Vに到達するまでの時間の変化を示す。
【図11】グルコース濃度の変化に対するキャパシタが単位時間あたりの1.8Vに到達する頻度の相関。
【図12】ワイヤレスセンサにおける観察される信号の頻度とグルコース濃度の相関(1.8V昇圧)。
【図13】ワイヤレスセンサにおける観察される信号の頻度とグルコース濃度の相関(2.4V昇圧)。
【図14】シグナル発信回路として共振回路を送信機として使用した計測・送信回路の例を示す。
【図15】図14に示した発信回路を用いて観測された電磁波を記録した例を示す。
【図16】シグナル発信回路としてバリキャップダイオードを用いる共振回路を送信機として使用した計測・送信回路の例を示す。
【図17】図16に示した発信回路を用いて観測される電磁波の頻度と試料グルコース濃度を計測した例を記す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
アノードの作製:
ケッチェンブラックインク10 mL、100 mM PPB(pH 7.0)10 mLとFADGDH複合体溶液40 mL(1.2 U/mL)を混合し、そのうち50 mLを1cm2のカーボンクロスに均一に塗布し、4℃において3時間風乾した。これを1 %グルタルアルデヒド溶液(10 ml)に室温で30分浸すことで架橋処理を行った。次に、このカーボンクロスを10 mM Tris-HCl (10 ml)に20分間浸けることで未反応のグルタルアルデヒドを除去後、100 mM PPB (pH 7.0) (10 ml)中に漬けて、1時間平衡化し、アノードを作製した。
【0043】
カソードの作製:
白金担持カーボンインク10 mLと100 mM PPB(pH 7.0)50mLを混合し、そのうち50 mLをカーボンクロスに均一に塗布し、4℃において3時間風乾した。エタノールによって希釈した3%(w/v)Poly(dimethylsiloxane) (PDMS) をこれに50 mL滴下し、一晩風乾したものをカソードとした。
【0044】
電池および回路の構築:
作製したアノード、カソードを用い、20 mM グルコースを含む100 mM PPB(pH7.0)を反応溶液として電池を構築した。電池、可変抵抗器、キャパシタ、スイッチをすべて直列につなぎ回路を作製した。
【0045】
このようにして作成した回路においてキャパシタ充電時間を検討した。すなわち二種類のキャパシタ(0.1 mF、1 mF)を用い、グルコース濃度20mMにおいて充電され、キャパシタにかかる電圧とスイッチを抵抗につないだときに回路に流れる電流を測定し、キャパシタへの充電時間の検討を行った。
【0046】
このとき、1 mFのキャパシタを用い抵抗が100kΩ, 500kΩ、1000kΩのときの結果を図6に示す。スイッチonと同時に電流が流れた。また時間経過とともに電流が減少し、キャパシタにかかる電圧は増加した。また、抵抗値を変え、電流値を減少または増加させると、それに伴いキャパシタの充電時間が増加、減少した。いずれの抵抗のときにおいても、回路に流れた電流値からキャパシタに充電された電荷量を計算すると、キャパシタの容量とほぼ一致した。また、0.1 mFのキャパシタを用いたときも同様の結果が得られたが、1 mFと比較し充電時間が短かった。電源として酵素燃料電池を用いた場合でも、キャパシタが十分に機能することが示された。
【0047】
同様に作成した回路を用いてキャパシタ充電時間のグルコース濃度依存性を評価した。1 mFのコンデンサを用い、抵抗を10kΩまたは500kΩとし、キャパシタにかかる電圧を測定した。このとき反応溶液のグルコースを徐々にグルコース試料を添加し、濃度を増加させていき、それぞれのグルコース濃度での充電時間を検討した。
【0048】
その結果を図7に示す。10kΩ、500kΩともにグルコース濃度の増加に伴い、充電時間が減少した。500kΩにおいては6 mM程度で充電時間の減少が見られなくなったのに対し、10kΩでは11 mMまで電流値の増加がみられた。このことから、キャパシタに充電する時間を指標に酵素の基質濃度が測定できることが示された。
【実施例2】
【0049】
アノードの作製:
ケッチェンブラックインク10 mL 、100 mM PPB(pH 7.0)10 mLとFADGDH複合体溶液40 mL(4.2 U/mL)を混合し、そのうち300 mLを6cm2のカーボンクロスに均一に塗布し、4℃において3時間風乾した。これを1 %グルタルアルデヒド溶液(10 ml)に室温で30分浸すことで架橋処理を行った。次に、このカーボンクロスを10 mM Tris-HCl (10 ml)に20分間浸けることで未反応のグルタルアルデヒドを除去後、100 mM PPB (pH 7.0) (10 ml)中に漬けて、1時間平衡化し、アノードを作製した。
【0050】
カソードの作製:
白金担持カーボンインク60 mLと100 mM PPB(pH 7.0)300mLを混合し、そのうち300 mLをカーボンクロス6cm2に均一に塗布し、4℃において3時間風乾した。エタノールによって希釈した3 %(w/v)Poly(dimethylsiloxane) (PDMS) をこれに300 mL滴下し、一晩風乾したものをカソードとした。
【0051】
電池および回路の構築:
作製したアノード、カソードを用い、100 mM PPB(pH7.0)を反応溶液として電池を構築した。この燃料電池と0.3 Vから1.8 Vへの昇圧が可能なチャージポンプ(昇圧IC;S-882Z18 セイコーインスツル社製)を組み合わせ、図1に示す回路を構築した。またシグナル発生回路として橙色発光ダイオードを接続し、さらに0.47〜100 mFの種々のキャパシタを接続した。キャパシタにかかる電圧の測定ならびに発光ダイオードの発光の間隔と頻度を測定し、充放電サイクルの評価を行った。
【0052】
昇圧ICを用いた回路の構築およびキャパシタ容量によるシグナル頻度の評価
本回路が酵素燃料電池で起動することを、発光ダイオードの点滅または、キャパシタの電圧の経時変化で評価した。また、キャパシタを0.47〜100 mFに付け替えたときに得られるシグナル頻度の違いを評価した。反応溶液のグルコース濃度は20 mMとした。
【0053】
このときのキャパシタの電圧の経時変化を図8に示す。0.47 mFのキャパシタを用いたとき、一秒当たり5回の頻度(5/s)でスパイク上のシグナルが観測された。また、同様の周期でダイオードの点滅が観察された。キャパシタの容量を変えたところ、シグナルの頻度が変化し、周期はそれぞれ、1 mFが2.4 /s、10mFが0.27 /s、100 mFが0.028 /sであった。キャパシタの容量を小さくすることで、シグナルの頻度を増やせることが示された。
【0054】
キャパシタ充放電サイクルのグルコース濃度依存性
酵素基質であるグルコースの濃度を変化させ、そのときに得られるシグナル頻度を発光ダイオードの点滅または、キャパシタの電圧の経時変化で評価したキャパシタとしては容量が10 mFのものを用いた。その結果を図9に示す。グルコース濃度が高まるにつれ、キャパシタが最大の電圧に到達するまでの時間が短くなり、また単位時間あたりのピーク電圧に達する頻度の増加が見られた。この結果をもとにグルコース濃度とLEDの点滅、すなわちキャパシタが1.8Vに到達するまでの時間(図10)および単位時間あたりのLEDの点滅回数、すなわちキャパシタが単位時間あたりの1.8Vに到達する頻度(図11)をもとめた。これらの曲線から示されるように、得られた曲線からLEDの点滅、すなわちキャパシタが1.8Vに到達するまでの時間および単位時間あたりのLEDの点滅回数、すなわちキャパシタが単位時間あたりの1.8Vに到達する頻度にグルコース濃度依存性があることが示された。これらのことから、シグナル頻度を指標とすることでグルコース濃度が測定でき、キャパシタの充放電を利用した新規バイオセンサを構築できたことが示された。
【0055】
昇圧した酵素燃料電池によるワイヤレスシステムの起動
作製したアノード、カソードを用い、100 mM PPB(pH7.0)を反応溶液として電池を構築した。この燃料電池と0.3 Vから1.8 Vへの昇圧が可能なチャージポンプ(昇圧IC;S-882Z18 セイコーインスツル社製)あるいは0.3 Vから2.4Vへの昇圧が可能なチャージポンプ(昇圧IC;S-882Z24 セイコーインスツル社製)を組み合わせ、図1に示す回路を構築し、シグナル発生回路として、ワイヤレスシステム送信機(赤外線送信)を接続した。すなわち、ワイヤレス送信機の電源部分を図1のシグナル発生回路に接続し、キャパシタが充電されたときに放電される電圧によってワイヤレス送信システムが起動することを指標としてバイオセンサを構築した。反応溶液のグルコース濃度は0〜25 mMとした。
【0056】
その結果、グルコースの存在下において、ワイヤレスシステム送信機が起動し、一定間隔で受信機にシグナルが送られた。
【0057】
図12に1.8V昇圧において観察される信号の頻度とグルコース濃度との相関を、図13に2.4V昇圧において観察される信号の頻度とグルコース濃度との相関を示す。このように、いずれの昇圧においても、信号の受信頻度はグルコース濃度に相関しており、この頻度をモニタリングすることによりグルコース濃度を計測できる。計測可能なグルコース濃度はいずれの場合も0.5mMから20mMと糖尿病の血糖値を計測するに十分な範囲をカバーしており、連続血糖診断装置をはじめとする血糖診断装置に十分に応用できることが示されている。
【0058】
このことから、キャパシタに充電された酵素反応の結果蓄積された起電力を用いることでワイヤレスシステムを起動できることが示された。したがって、本新規バイオセンサにおいてシグナル発信回路としてワイヤレス送信機が応用できることが示された。
【0059】
共振回路を送信機として使用した計測・送信回路の構築
実施例1と同様に作製した燃料電池を構築し、これに10μFキャパシタ、0.3から1.8Vへの昇圧ICを組み合せてバイオキャパシタを構築し、電源としてバイオキャパシタの出力を両端に接続して、ハートレー型発信回路を作製した。このような送信機を使用して、受信回路により電磁波の受信頻度を測定することもできる。その結果、グルコースの存在下において図15に記すように、一定の間隔で電磁波が受信されることが観測された。この電磁波の受信頻度はグルコース濃度に依存することは、ここまでの記述から自明である。
バリキャップダイオードを用いる共振回路を送信機として使用した計測・送信回路の構築
実施例1と同様に作製した燃料電池を構築し、これに0.47μFキャパシタ、0.3から1.8Vへの昇圧ICを組み合せてバイオキャパシタを構築し、電源としてバイオキャパシタの出力をバリキャップ(1sV149)の両端に接続して、ハートレー型発信回路を作製した。このような送信機を使用して、受信回路により電磁波の受信頻度を測定することもできる。図17にこの発信回路を用いて観測される電磁波の頻度と試料グルコース濃度を計測した例を記す。このように本回路を用いてグルコース濃度が測定できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体触媒が設置されたアノードと外部電子受容体が設置されたカソードを有する燃料電池と、前記燃料電池に直列接続されたキャパシタと、前記キャパシタからの放電によりシグナルを発生するシグナル発生回路と、を含む送信機と、
前記シグナル発生回路からのシグナルを受信し、前記シグナルに基づいて前記基質濃度を測定する測定器と、
を有するワイヤレスシステムにおいて、
前記基質と生体触媒との反応により生じた電子を前記カソードの前記外部電子受容体に移転することにより生じた起電力が前記キャパシタに充電され、その充放電に応じて前記シグナル発生回路から発生するシグナル頻度を指標として、前記基質濃度を測定することを特徴とする、ワイヤレスシステム。
【請求項2】
生体触媒が設置されたアノードと外部電子受容体が設置されたカソードを有する燃料電池と、前記燃料電池に直列接続されたキャパシタと、前記キャパシタからの放電によりシグナルを発生するシグナル発生回路と、を含む送信機と、
前記シグナル発生回路からのシグナルを受信する受信機と、
前記シグナルに基づいて前記基質濃度を測定する測定器と、
を有するワイヤレスシステムにおいて、
前記基質と生体触媒との反応により生じた電子を前記カソードの前記外部電子受容体に移転することにより生じた起電力が前記キャパシタに充電され、その充放電に応じて前記シグナル発生回路から発生するシグナル頻度を指標として、前記基質濃度を測定することを特徴とする、ワイヤレスシステム。
【請求項3】
前記測定器は、前記キャパシタに充電された電位が一定レベル以上に達したときにその蓄積された電位を放電することにより、前記放電の頻度に応じて発生するシグナルの頻度を前記測定器において測定する、請求項1または2に記載のワイヤレスシステム。
【請求項4】
前記キャパシタに充電する際に、前記生体触媒反応に基づく起電力を昇圧し、前記キャパシタに充電するためのチャージポンプをさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤレスシステム。
【請求項5】
前記測定器は、前記シグナル発生回路が作動したときに発生する物理シグナルを測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイヤレスシステム。
【請求項6】
前記物理シグナルが音波、光又は電磁波であることを特徴とする請求項5に記載のワイヤレスシステム。
【請求項7】
前記物理シグナルが電磁波であり、前記電磁波の発信回路にバリキャップダイオードを使用する請求項6に記載のワイヤレスシステム。
【請求項8】
前記アノードに設置された生体触媒が酵素であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のワイヤレスシステム。
【請求項9】
前記酵素が酸化還元酵素であることを特徴とする請求項8に記載のワイヤレスシステム。
【請求項10】
前記酵素がグルコースの酸化を触媒する酵素であることを特徴とする請求項8に記載のワイヤレスシステム。
【請求項11】
生体触媒とその生体触媒が認識する基質との間の反応の結果生じるエネルギーを蓄積するキャパシタと、
前記キャパシタからの前記エネルギーの放電に基づいてシグナルを発生するワイヤレストランスミッターと、
前記発生したシグナルを受信する受信機と、
を含む、ワイヤレスシステム。
【請求項1】
生体触媒が設置されたアノードと外部電子受容体が設置されたカソードを有する燃料電池と、前記燃料電池に直列接続されたキャパシタと、前記キャパシタからの放電によりシグナルを発生するシグナル発生回路と、を含む送信機と、
前記シグナル発生回路からのシグナルを受信し、前記シグナルに基づいて前記基質濃度を測定する測定器と、
を有するワイヤレスシステムにおいて、
前記基質と生体触媒との反応により生じた電子を前記カソードの前記外部電子受容体に移転することにより生じた起電力が前記キャパシタに充電され、その充放電に応じて前記シグナル発生回路から発生するシグナル頻度を指標として、前記基質濃度を測定することを特徴とする、ワイヤレスシステム。
【請求項2】
生体触媒が設置されたアノードと外部電子受容体が設置されたカソードを有する燃料電池と、前記燃料電池に直列接続されたキャパシタと、前記キャパシタからの放電によりシグナルを発生するシグナル発生回路と、を含む送信機と、
前記シグナル発生回路からのシグナルを受信する受信機と、
前記シグナルに基づいて前記基質濃度を測定する測定器と、
を有するワイヤレスシステムにおいて、
前記基質と生体触媒との反応により生じた電子を前記カソードの前記外部電子受容体に移転することにより生じた起電力が前記キャパシタに充電され、その充放電に応じて前記シグナル発生回路から発生するシグナル頻度を指標として、前記基質濃度を測定することを特徴とする、ワイヤレスシステム。
【請求項3】
前記測定器は、前記キャパシタに充電された電位が一定レベル以上に達したときにその蓄積された電位を放電することにより、前記放電の頻度に応じて発生するシグナルの頻度を前記測定器において測定する、請求項1または2に記載のワイヤレスシステム。
【請求項4】
前記キャパシタに充電する際に、前記生体触媒反応に基づく起電力を昇圧し、前記キャパシタに充電するためのチャージポンプをさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤレスシステム。
【請求項5】
前記測定器は、前記シグナル発生回路が作動したときに発生する物理シグナルを測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイヤレスシステム。
【請求項6】
前記物理シグナルが音波、光又は電磁波であることを特徴とする請求項5に記載のワイヤレスシステム。
【請求項7】
前記物理シグナルが電磁波であり、前記電磁波の発信回路にバリキャップダイオードを使用する請求項6に記載のワイヤレスシステム。
【請求項8】
前記アノードに設置された生体触媒が酵素であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のワイヤレスシステム。
【請求項9】
前記酵素が酸化還元酵素であることを特徴とする請求項8に記載のワイヤレスシステム。
【請求項10】
前記酵素がグルコースの酸化を触媒する酵素であることを特徴とする請求項8に記載のワイヤレスシステム。
【請求項11】
生体触媒とその生体触媒が認識する基質との間の反応の結果生じるエネルギーを蓄積するキャパシタと、
前記キャパシタからの前記エネルギーの放電に基づいてシグナルを発生するワイヤレストランスミッターと、
前記発生したシグナルを受信する受信機と、
を含む、ワイヤレスシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−255790(P2012−255790A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−155808(P2012−155808)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【分割の表示】特願2009−533050(P2009−533050)の分割
【原出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(510285805)合同会社バイオエンジニアリング研究所 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【分割の表示】特願2009−533050(P2009−533050)の分割
【原出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(510285805)合同会社バイオエンジニアリング研究所 (2)
【Fターム(参考)】
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