説明

塗装ガンの洗浄装置及び塗装ガンの洗浄方法

【課題】洗浄用流体が塗装ガン及びロボットアーム等に飛び散ることなく、洗浄することができる塗装ガンの洗浄技術を提供することを課題とする。
【解決手段】閉塞手段51は、環状の弾性部材であり、開口部48に設けられ開口部48の中心に向かって延びる閉塞本体部52と、この閉塞本体部52の中央に設けられ塗装ガン20が挿入できる塗装ガン挿入口53と、閉塞本体部52の下面54に設けられ塗装ガン挿入口53から洗浄容器41の壁42に向かって下方に傾斜する傾斜面55と、閉塞本体部52の上面56に設けられ湾曲溝状にえぐられている湾曲溝57と、閉塞本体部52の外径側に設けられ段を為すこどとで開口部48に嵌る取付部58と、からなる。
【効果】洗浄用流体が塗装ガン及びロボットアーム等に飛び散ることなく、塗装ガンを洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェーピングエアを噴射する塗装ガンの洗浄技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、塗装ガンで自動車の内板を塗装する際、塗料の跳ね返りにより塗装ガンが汚れることがある。塗装ガンに付着した塗料が剥がれ落ちて自動車に付着することを防ぐため、塗装ガンは定期的に洗浄する必要が生じる。このように、塗装ガンの先端部に付着した塗料を取り除くため、塗装ガンの先端部を洗浄する技術が提案されている(例えば、特許文献1(第3図)参照。)。
【0003】
この特許文献1の技術を図面に基づいて以下に説明する。
図7に示されるように、塗装を終えた塗装ガン100を洗浄装置101に移動させる。洗浄装置101は、すのこ状の床材102に筒状の基部103が立ち上げられ、基部103の上部に基部103の上方を覆うように遮蔽体104が設けられる。遮蔽体104の上部に中央に孔105が開けられたゴム製のカバー106が設けられており、この孔105に塗装ガン100のガンノズル107が挿入される。
【0004】
ガンノズル107に、遮蔽体104の内側に設けられた洗浄用流体吐出管108から洗浄用流体を吐出することでガンノズル107の塗料が取り除かれ、乾燥用流体吐出管109から空気を吐出することでガンノズル107が乾燥される。洗浄用流体吐出管108から洗浄用流体が吐出される際、洗浄用流体のしぶきが、塗装ガン107や塗装ガンを移動させるロボットアーム等にかかることがカバー106により防がれる。
【0005】
しかし、カバー106の下面に付着した洗浄用流体が吹き上がり、塗装ガン107等を汚すおそれがある。すなわち、洗浄用流体が塗装ガン及びロボットアーム等、塗布の際に被塗装物の品質に悪影響を与える虞のある部位に飛び散ることなく、洗浄することができる塗装ガンの洗浄技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−127671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、洗浄用流体が塗装ガン及びロボットアーム等に飛び散ることなく、洗浄することができる塗装ガンの洗浄技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、上部に開口部を有する洗浄容器に上方から塗装ガンを挿入し、この塗装ガンへ洗浄用流体を吹き付けることで、前記塗装ガンに付着した塗料を洗浄する塗装ガンの洗浄装置において、この塗装ガンの洗浄装置は、前記洗浄容器内に設けられ前記洗浄用流体を噴射する洗浄手段と、前記開口部に設けられ前記洗浄用流体が外部へ飛散することを防止する閉塞手段と、を有し、前記閉塞手段は、前記洗浄容器に設けられ前記開口部の中心に向かって延び中央に前記塗装ガンが挿入できる塗装ガン挿入口を有する閉塞本体部と、前記閉塞本体部の下面に設けられ前記塗装ガン挿入口から前記洗浄容器の壁に向かって下方に傾斜する傾斜面と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、閉塞本体部の上面が、溝状にえぐられ、この溝の底と塗装ガンとの間隔を拡大するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の塗装ガンの洗浄装置を用いて洗浄する塗装ガンの洗浄方法において、塗装ガンを、塗装ガン挿入口に挿入する塗装ガン挿入工程と、シェーピングエアリングのエア噴出口からエアを噴出するシェーピングエア噴出工程と、洗浄手段から洗浄用流体を噴射して塗装ガンを洗浄する洗浄工程と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、閉塞手段は、洗浄容器に設けられ開口部の中心に向かって延び中央に塗装ガンが挿入できる塗装ガン挿入口を有する閉塞本体部と、閉塞本体部の下面に設けられ塗装ガン挿入口から洗浄容器の壁に向かって下方に傾斜する傾斜面と、を有する。
閉塞本体部の下面に塗装ガン挿入口から洗浄容器の壁に向かって下方に傾斜する傾斜面が設けられるので、洗浄時に傾斜面に付着した洗浄用流体は、重力の作用により塗洗浄容器の壁に向かって傾斜面を伝って流れ落ちる。結果、洗浄用流体が塗装ガン及びロボットアーム等に飛び散ることなく、塗装ガンを洗浄することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、閉塞本体部の上面が、溝状にえぐられ、この溝の底と塗装ガンとの間隔を拡大するようにした。
閉塞本体部の上面が、溝状にえぐられることで、閉塞本体部の上面と塗装ガンとの間隔が、塗装ガン挿入口に近づくにつれて縮小するので、外部から洗浄容器内に吸引される空気の流速が塗装ガン挿入口近傍で速くなり、洗浄用流体が洗浄容器内に引き込まれ、洗浄用流体の外部への飛び散りを一層防止することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、シェーピングエアリングのエア噴出口からエアを噴出するシェーピングエア噴出工程と、洗浄手段から洗浄用流体を噴射して塗装ガンを洗浄する洗浄工程とを有する。
洗浄時に閉塞手段の塗装ガン挿入口近傍に位置するエア噴出口からエアを噴出するので、洗浄用流体がエアによって下方に流され、塗装ガン挿入口と塗装ガンとの隙間から外部へ洗浄用流体が飛び散るのを防止することができる。
加えて、エアがシェーピングエアリングに沿って流れるので、洗浄用流体を洗浄部位であるシェーピングエアリングに沿って押し流すことができ、洗浄効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1に係る塗装ガンの洗浄装置が使用例を説明する図である。
【図2】図1の塗装ガンの洗浄装置の断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】実施例1に係る塗装ガンの洗浄装置の作用を説明する図である。
【図5】実施例1に係る閉塞手段の作用を説明する図である。
【図6】実施例2に係る閉塞手段の作用を説明する図である。
【図7】図6の閉塞手段の任意の位置における流速を示す図である。
【図8】シェーピングエア噴出工程を説明する図である。
【図9】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0016】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、塗装機設備10は、塗装機11と、塗装ガンの洗浄装置40とからなる。
【0017】
塗装機11は、ベース部12と、このベース部12の上部に設けられている産業用ロボット13と、この産業用ロボット13のロボットアーム14の先端に設けられている塗装ガン20とからなる。塗装ガンの洗浄装置40は、ベース部12の側壁16にステー17を介して取付けられている。
【0018】
次に塗装ガン20及び塗装ガンの洗浄装置40を断面図に基づいて説明する。
図2に示されるように、塗装ガン20は、本体部21と、この本体部21に回転自在に設けられる主軸22と、この主軸22の先端に設けられ塗料を噴霧する回転霧化頭23と、この回転霧化頭23の外径側を覆うように本体部21に設けられシェーピング用エアを噴出するシェーピングエアリング24と、からなる。
【0019】
回転霧化頭23は、アウター部材25と、このアウター部材25との間に回転霧化頭23の裏側としての塗料溜まり26を構成するインナー部材27と、アウター部材25に塗料を導く塗料フィードチューブ28とからなる。回転霧化頭23は、塗装ガン20の先端に回転可能に設けられており、塗料溜まり26の中心近傍に塗料を吐出する中心部塗料吐出孔31が設けられると共に、塗料溜まり26の側壁を円錐形を呈するように傾斜させて外側に塗料を吐出する外側塗料吐出孔32が設けられる。塗料溜まり26は、釣り鐘形状を呈しており、塗料溜まりの側壁は外側塗料吐出孔32に滑らかに繋がっている。これにより、塗料を円滑に吐出することができる。
【0020】
シェーピングエアリング24は、回転霧化頭23から外径側に向けて、第1リング33、第2リング34及び第3リング35の順に環状のリングが重ねられて構成される。また、シェーピングエアリング24は、第1リング33と第2リング34の間に設けられエアを噴出する内側のエア噴出口36と、第2リング34と第3リング35の間に設けられエアを噴出する外側のエア噴出口37と、を有する。
【0021】
塗装ガンの洗浄装置40は、塗装ガン20を上から下向きに差し込むことができる筒状の洗浄容器41と、この洗浄容器41の壁42に取付けられ洗浄用流体を回転霧化頭23
に噴射する洗浄ノズル43と、この線上ノズル43の延長線上に且つ洗浄容器41の上部に設けられ洗浄ノズル43からの洗浄用流体が塗装ガン20に当たらないときに洗浄用流体を洗浄容器41内に落下させる飛散防止部材44と、を有する。
【0022】
また、塗装ガンの洗浄装置40は、洗浄容器41の壁42の上部に設けられ塗装ガン20の先端部45に洗浄用流体を噴射する洗浄手段46と、洗浄容器41の下部に設けられ洗浄後の洗浄用流体及び洗浄容器41内の空気を吸引する吸引ノズル47と、洗浄容器41の開口部48に設けられ洗浄用流体が外部へ飛散することを防止する閉塞手段51と、を有する。洗浄ノズル43から洗浄用流体を噴射することで塗装ガン20の先端に回転可能に設けられている回転霧化頭23を洗浄することができ、洗浄手段46から洗浄用流体を噴射することで塗装ガン20の先端部45を洗浄することができる。
【0023】
次に閉塞部材51について説明する。
図3に示されるように、閉塞手段51は、環状の弾性部材であり、開口部48に設けられ開口部48の中心に向かって延びる閉塞本体部52と、この閉塞本体部52の中央に設けられ塗装ガン20が挿入できる塗装ガン挿入口53と、閉塞本体部52の下面54に設けられ塗装ガン挿入口53から洗浄容器41の壁42に向かって下方に傾斜する傾斜面55と、閉塞本体部52の上面56に設けられ湾曲溝状にえぐられている湾曲溝57と、閉塞本体部52の外径側に設けられ段を為すこどとで開口部48に嵌る取付部58と、からなる。
【0024】
また、洗浄手段46は、洗浄容器41の上部に複数個設けられており、塗装ガン20の先端部45を取り囲むようにして配置される。複数の洗浄手段46から洗浄用流体を噴射することで、先端部45の外径方向の外側全体を洗浄することができる。
【0025】
以上に述べた塗装ガンの洗浄装置40の作用を次に述べる。
図4に示されるように、塗装ガン20を塗装ガン挿入口53に挿入する。このとき、外側のエア噴出口37は塗装ガン挿入口53の近傍に位置し、塗装ガン挿入口53と塗装ガン20の間には僅かに隙間61が生じる。
【0026】
洗浄手段46から、洗浄用流体を矢印(1)のように噴射する。ほとんどの洗浄用流体は、塗装ガン20の先端部45に当たり、先端部45を洗浄しながら矢印(2)のように流れ落ち、吸引ノズル(図3、符号47)から回収される。
【0027】
一方、一部の洗浄用流体は、矢印(3)のように流れ、閉塞手段51の傾斜面55を重力の作用により矢印(4)のように流れ、洗浄容器41の壁42を伝って吸引ノズル47から回収される。また、吸引手段47により洗浄容器41内の空気が吸引されることで、洗浄容器41外の空気が矢印(5)のように、隙間61を流れる。結果、洗浄用流体が矢印(3)のように吹き上がり隙間61の方に流れても外部に出ることなく洗浄容器41の内部に押し戻される。
【0028】
次に実施例1に係る閉塞手段51の作用を比較例と比較して説明する。
図5(a)は比較例の閉塞手段201の作用図であり、閉塞手段201の下面202は、開口部48から塗装ガン挿入口203に向かって下方に傾斜する。洗浄手段46から洗浄用流体を噴射し、塗装ガン20の先端部45を洗浄する。洗浄後、洗浄用流体の一部は、閉塞手段201の下面202に付着して重力の作用により矢印(6)のように下面202を伝って流れ、塗装ガン挿入口203から矢印(7)のように落下する。また、洗浄用流体の一部は矢印(8)のように、上面204に回り込む。結果、洗浄後の汚れを含む洗浄用流体が、塗装ガン20の先端部45に付着する心配が生じる。
【0029】
図5(b)は別形態の比較例の閉塞手段211の作用図であり、閉塞手段211の下面212は、開口部48から塗装ガン挿入口213に向かって略水平に延ばされている。洗浄手段46から洗浄用流体を噴射し、塗装ガン20の先端部45を洗浄する。洗浄後、洗浄用流体の一部は、閉塞手段201の下面202全体に付着する。洗浄用流体は、重力の作用により矢印(9)のように落下する。洗浄用流体の一部は塗装ガン挿入口213近傍にも付着したままであるため、洗浄後の汚れを含む洗浄用流体が、塗装ガン20の先端部45に付着する心配が生じる。
【0030】
図5(c)は実施例1に係る閉塞手段51の作用図である。洗浄手段46から洗浄用流体を噴射し、塗装ガン20の先端部45を洗浄する。洗浄用流体は閉塞手段51の下面54にも付着するが、重力の作用により洗浄用流体は傾斜面55を矢印(10)伝って流れ、洗浄容器41の壁42に矢印(11)のように流れ落ちる。塗装ガン挿入口53近傍には、洗浄用流体が残らないので、洗浄後の汚れた洗浄用流体が塗装ガン20の先端部45に付着する心配がない。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。なお、図5に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図6(a)は実施例1の一形態の閉塞手段51の作用図である。閉塞手段51の上面56は、開口部48から塗装ガン挿入口53に向かって下方に傾斜する。上面56と塗装ガン20との隙間61は、任意の位置1で距離a1、任意の位置2で距離a2、任意の位置3で距離a3であり、a1>a2>a3であるが、a1〜a3の距離の差は小さい。吸引ノズル(図3、符号47)により、洗浄容器41内の空気は吸引されるので、隙間61近傍では、矢印(12)及び矢印(13)のような、流速vの空気の流れが生じる。a1〜a3の距離の差は小さいので、矢印(12)と矢印(13)の空気の流速は、ほぼ同じである。
【0032】
図6(b)は実施例1の別形態の閉塞手段の作用図である。閉塞手段51の上面56は、開口部48から塗装ガン挿入口53に向かって略水平に延ばされる。上面56と塗装ガン20との隙間61は、任意の位置1で距離b1、任意の位置2で距離b2、任意の位置3で距離b3であり、b1>b2>b3であるが、b1〜b3の距離の差は、(a)のa1〜a3に比較して大きい。吸引ノズル47により、洗浄容器41内の空気は吸引されるので、隙間61近傍では、矢印(14)及び矢印(15)のような、流速vの空気の流れが生じる。位置1から位置3に進むにつれて、隙間61が徐々に狭まるので、矢印(14)よりも矢印(15)の空気の流速の方が大きい。
【0033】
図6(b)は実施例1の別形態の閉塞手段の作用図である。閉塞手段51の上面56は、湾曲溝57を有する。湾曲溝57と塗装ガン20との隙間61は、任意の位置1で距離c1、任意の位置2で距離c2、任意の位置3で距離c3であり、c1>>c2>>c3であり、c1〜c3の距離の差は、(b)のb1〜b3に比較して大きい。吸引ノズル47により、洗浄容器41内の空気は吸引されるので、隙間61近傍では、矢印(16)及び矢印(17)のような、流速vの空気の流れが生じる。位置1から位置3に進むにつれて、隙間61が狭まるので、矢印(16)よりも矢印(17)の空気の流速の方が大きい。
【0034】
次に図6で示した隙間61の位置と空気の流速との関係を説明する。
図7に示されるように、曲線aは図6(a)の隙間61の位置と空気の流速の関係を示す。曲線bは図6(b)の隙間61の位置と空気の流速の関係を示す。曲線cは図6(c)の隙間61の位置と空気の流速の関係を示す。図6において、a1<<b1<<c1、a2<b2<c2、a3=b3=c3の関係が成立する。
【0035】
位置1から位置3に進むにつれて、隙間の大きさの変化は、(c)が最も大きいので、曲線cが示すように、位置3では曲線cが最も流速が速くなる。結果、図4で示した隙間61を通過する矢印(5)の空気の流速が速くなり、洗浄用流体を確実に洗浄容器41内に押し戻すことができる。
【0036】
次に洗浄手順について説明する。
図8に示されるように、先ず、塗装ガン20を塗装ガン挿入口53に挿入する(塗装ガン挿入工程)。シェーピングエアリング24の外側のエア噴出口37からエアを矢印(18)のように噴出する(シェーピングエア噴出工程)。洗浄手段46から洗浄用流体を矢印(19)のように噴射する。すると、洗浄用流体は、矢印(18)のエアにより塗装ガン20の先端部45に沿って矢印(20)のよう流される(洗浄工程)。結果、先端部45を効率よく洗浄することができる。
【0037】
以上に述べた内容をまとめて以下に記載する。
図3に示したように、上部に開口部48を有する洗浄容器41に上方から塗装20ガンを挿入し、この塗装ガン20へ洗浄用流体を吹き付けることで、塗装ガン20に付着した塗料を洗浄する塗装ガンの洗浄装置40において、この塗装ガンの洗浄装置40は、洗浄容器41内に設けられ洗浄用流体を噴射する洗浄手段46と、開口部48に設けられ洗浄用流体が外部へ飛散することを防止する閉塞手段51と、を有し、閉塞手段51は、洗浄容器41に設けられ開口部48の中心に向かって延び中央に塗装ガン20が挿入できる塗装ガン挿入口53を有する閉塞本体部52と、閉塞本体部52の下面54に設けられ塗装ガン挿入口53から洗浄容器41の壁42に向かって下方に傾斜する傾斜面55と、を有する。
【0038】
この構成により、閉塞本体部52の下面54に塗装ガン挿入口53から洗浄容器41の壁42に向かって下方に傾斜する傾斜面55が設けられるので、洗浄時に傾斜面55に付着した洗浄用流体は、重力の作用により塗洗浄容器41の壁42に向かって傾斜面55を伝って流れ落ちる。結果、洗浄用流体が塗装ガン20及びロボットアーム(図1、符号14)等に飛び散ることなく、塗装ガン20を洗浄することができる。
【0039】
図3に示したように、閉塞本体部52の上面56が、湾曲溝状にえぐられ、この湾曲溝57の底と塗装ガン20との間隔を拡大するようにした。
この構成により、閉塞本体部52の上面56が、湾曲溝状にえぐられることで、閉塞本体部52の上面56と塗装ガン53との間隔が、塗装ガン挿入口53に近づくにつれて縮小するので、外部から洗浄容器41内に吸引される空気の流速が塗装ガン挿入口53近傍で速くなり、洗浄用流体が洗浄容器41内に引き込まれ、洗浄用流体の外部への飛び散りを一層防止することができる。
【0040】
図8に示したように、塗装ガンの洗浄装置40を用いて洗浄する塗装ガンの洗浄方法において、塗装ガン20を、塗装ガン挿入口53に挿入する塗装ガン挿入工程と、シェーピングエアリング24のエア噴出口37からエアを噴出するシェーピングエア噴出工程と、洗浄手段46から洗浄用流体を噴射して塗装ガン20を洗浄する洗浄工程と、からなる。
【0041】
この工程により、洗浄時に閉塞手段51の塗装ガン挿入口53近傍に位置するエア噴出口37からエアを噴出するので、洗浄用流体がエアによって下方に流され、塗装ガン挿入口53と塗装ガン20との隙間61から外部へ洗浄用流体が飛び散るのを防止することができる。
加えて、エアがシェーピングエアリング24に沿って流れるので、洗浄用流体を洗浄部位であるシェーピングエアリング24に沿って押し流すことができ、洗浄効率を向上させることができる。
【0042】
尚、実施例では、産業用ロボットに取付け塗装ガンの洗浄に適用したが、これに限定されず、塗装ガンの先端部を洗浄するのであれば、他の塗装ガンに適用することは差し支えない。また、実施例では、回転霧化頭を有する塗装ガンの洗浄に適用したが、これに限定されず、シェーピングエアを噴出するのであれば、回転霧化頭を有しない塗装ガンに適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の塗装ガンの洗浄技術は、シェーピングエアを噴射する塗装ガンの洗浄に好適である。
【符号の説明】
【0044】
20…塗装ガン、24…シェーピングエアリング、37…外側のエア噴出口、40塗装ガンの洗浄装置、41…洗浄容器、42…洗浄容器の壁、45…塗装ガンの先端部、46…洗浄手段、48…洗浄容器の開口部、51…閉塞手段、52…閉塞本体部、53…塗装ガン挿入口、54…閉塞本体部の下面、55…傾斜面、56…閉塞本体部の上面、57…湾曲溝、61…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する洗浄容器に上方から塗装ガンを挿入し、この塗装ガンへ洗浄用流体を吹き付けることで、前記塗装ガンに付着した塗料を洗浄する塗装ガンの洗浄装置において、
この塗装ガンの洗浄装置は、前記洗浄容器内に設けられ前記洗浄用流体を噴射する洗浄手段と、前記開口部に設けられ前記洗浄用流体が外部へ飛散することを防止する閉塞手段と、を有し、
前記閉塞手段は、前記洗浄容器に設けられ前記開口部の中心に向かって延び中央に前記塗装ガンが挿入できる塗装ガン挿入口を有する閉塞本体部と、前記閉塞本体部の下面に設けられ前記塗装ガン挿入口から前記洗浄容器の壁に向かって下方に傾斜する傾斜面と、を有することを特徴とする塗装ガンの洗浄装置。
【請求項2】
前記閉塞本体部の上面が、溝状にえぐられ、この溝の底と前記塗装ガンとの間隔を拡大するようにしたことを特徴とする請求項1記載の塗装ガンの洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の塗装ガンの洗浄装置を用いて洗浄する塗装ガンの洗浄方法において、
前記塗装ガンを、前記塗装ガン挿入口に挿入する塗装ガン挿入工程と、
シェーピングエアリングのエア噴出口からエアを噴出するシェーピングエア噴出工程と、
前記洗浄手段から洗浄用流体を噴射して塗装ガンを洗浄する洗浄工程と、からなることを特徴とする塗装ガンの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−71077(P2013−71077A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213183(P2011−213183)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】