説明

塗装装置の異常検出装置

【課題】誤った異常検出が行われるのを防止する。
【解決手段】主剤用流量計14aと硬化剤用流量計14bは、主剤と硬化剤の流量を個別に検出し、その検出結果をパルス信号として出力する。判断手段22は、主剤と硬化剤が1回ずつ共通流路15に供給される1サイクルの供給工程毎に、2つの流量計14a,14bから入力されるパルス信号の総数をカウントし、そのカウントしたパルス信号の総数が予め設定された正常数値の範囲内であるときには主剤、硬化剤及び混合塗料の流れが正常であると判断し、パルス信号の総数が正常数値の範囲外であるときには主剤、硬化剤及び混合塗料の流れが異常であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置の異常検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗装ガンにおけるノズル詰まりを検出する装置が記載されている。この検出装置では、塗装ガンからの噴射音を検出して、その噴射音の周波数を分析し、その分析結果に基づいて塗料の噴出の異常、即ちノズルの詰まりを検出するようになっている。この検出装置では、塗装ガンのノズルの近傍に、噴射音を集音するための集音機器を配置する必要があるが、この集音機器は、塗装に直接用いられるものではなく、異常検出のための専用の機器であるため、設備コストがアップするという問題がある。
【0003】
この問題を解決する手段としては、塗装装置に必要な流量計を利用することが考えられる。例えば、主剤と硬化剤を交互に共通流路に供給して得られる二液混合型の塗料を用いる塗装装置においては、主剤用の流量計から出力されるパルス信号と硬化剤用の流量計から出力されるパルス信号に基づき、主剤と硬化剤の1回当たりの供給量を制御するようになっているのであるが、この既存の流量計を用いることが可能である。
【0004】
この場合、単位時間毎にパルス信号の出力数を検出し、その検出数が正常な範囲内であれば、主剤と硬化剤が適正な流量で供給されて、混合塗料が適正な流量で塗装ガンに向けて供給されていることが判るので、ノズル詰まりは発生していないと判断できる。一方、主剤、硬化剤、混合塗料の流れが滞ると、単位時間毎に検出されるパルス信号の出力数が、正常な範囲よりも少なくなるので、これによって、ノズル詰まりが発生した可能性があると判断できる。
【特許文献1】特開平8−29211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
主剤と硬化剤の供給動作が切り替わるときには、供給停止側の開閉弁の閉弁動作が行われている間に、主剤又は硬化剤の流量が徐々に減少するため、供給停止側の流量計から出力されるパルス信号の出力間隔は、流量が安定している状態のときの出力間隔よりも次第に長くなっていく。一方、供給開始側の開閉弁の開弁動作が行われている間は、硬化剤又は主剤の流量が徐々に増大していくため、供給開始側の流量計から出力されるパルス信号の出力間隔は、当初は長く、次第に短くなっていくことになる。
【0006】
このように供給の切り替わり時にパルス信号の出力間隔が流量安定時に比べて一時的に長くなる状態は、主剤、硬化剤、混合塗料の流れの形態としては異常ではない。ところが、上記のように単位時間毎にパルス信号の出力数を検出する方法では、単位時間を短く設定した場合に、一時的にパルス信号の出力間隔が長くなったことを検知したときに、流れが正常であってノズル詰まりが発生していないにも拘わらず、異常であるとの誤った検出結果が下される虞がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、誤った異常検出が行われるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、複数の液剤を所定流量で所定時間ずつ交互又は順次に共通流路に供給して得られた混合塗料を、塗装ガンに供給する塗料装置において、前記複数の液剤の流量を個別に検出し、その検出結果をパルス信号として出力する複数の流量計と、前記複数の液剤が1回ずつ前記共通流路に供給される1サイクルの供給工程毎に、前記複数の流量計から入力されるパルス信号の総数をカウントし、そのカウントした前記パルス信号の総数が予め設定された正常数値の範囲内であるときには前記液剤と前記混合塗料の流れが正常であると判断し、前記パルス信号の総数が前記正常数値の範囲外であるときには前記液剤と前記混合塗料の流れが異常であると判断する判断手段とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記塗装ガンが混合塗料を噴出可能な塗装動作可能状態と、混合塗料の噴出を停止させる塗装動作停止状態のいずれの状態であるかを検出して、その検出結果を出力する塗装動作検出手段を備え、前記判断手段は、前記1サイクルの供給工程の間に前記塗装ガンが塗装動作可能状態を維持して塗装動作停止状態に切り替わらないことを条件として、前記液剤と前記混合塗料の流れが正常であるか異常であるかの判断結果を出力するようになっているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、前記共通流路には、複数の前記塗装ガンが並列状に接続され、前記塗装動作検出手段は、前記複数の塗装ガンが塗装動作可能状態と塗装動作停止状態のいずれの状態であるかを、個別に検出するようになっており、前記判断手段は、前記1サイクルの供給工程の間に、前記複数の塗装ガンのうち少なくとも1つの前記塗装ガンが塗装動作可能状態を維持し、且つ前記複数の塗装ガンの全てにおいて塗装動作可能状態と塗装動作停止状態との間での切り替えが行われないことを条件として、前記液剤と前記混合塗料の流れが正常であるか異常であるかの判断結果を出力するようになっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
複数の液剤の供給が切り替わるときに、その液剤の流量が一時的に変動することは避けられないが、複数の液剤が1回ずつ供給される1サイクルの供給工程を1つの検出単位とした場合、その検出単位において複数の流量計から入力されるパルス信号の総数は、液剤の流れが正常であればほぼ一定となる。この点に着目し、本発明では、複数の液剤の1サイクルの供給工程を検出単位としたパルス信号の入力総数に基づいて異常検出を行うので、判断手段においては、液剤の切替時における一時的な流量変動が原因となって誤った判断が下される虞はない。つまり、塗装ガンのノズル詰まりや液剤の圧送能力低下等の不具合が発生していないにも拘わらず、これらの不具合が発生した旨の誤った検出動作が行われることを回避できる。
【0011】
<請求項2の発明>
塗装を停止するために、塗装ガンが塗装動作可能状態から塗装動作停止状態に切り替わると、1サイクルの供給工程として設定されている時間の間に入力されるパルス信号の総数が減少するため、判断手段において、液剤と混合塗料の流れが異常であるとの誤った判断が下されることが懸念される。その点、本発明では、塗装ガンが塗装動作可能状態を維持して塗装動作停止状態に切り替わらないことを条件として判断手段が判断結果を出力するようにしているので、塗装の停止時に誤った異常検出動作が行われることはない。
【0012】
<請求項3の発明>
複数の塗装ガンのうちいずれかの塗装ガンにおいて塗装が開始又は停止して、その塗装ガンが塗装動作可能状態と塗装動作停止状態との間で切り替わった場合には、1サイクルの供給工程として設定されている時間の間に入力されるパルス信号の総数が変動するため、判断手段において、液剤と混合塗料の流れが異常であるとの誤った判断が下されることが懸念される。
その点に鑑み、本発明では、複数の塗装ガンのうち少なくとも1つの塗装ガンが塗装動作可能状態を維持し、且つ複数の塗装ガンの全てにおいて塗装動作可能状態と塗装動作停止状態との間での切り替えが行われないことを条件として、判断手段が判断結果を出力するようにしている。つまり、複数の塗装ガンのうちいずれか1つでも塗装が開始又は停止したときには、判断手段は判断結果を出力しない。したがって、複数の塗装ガンのうちいずれかの塗装ガンにおいて塗装が開始又は停止したときに、誤った異常検出動作が行われる虞はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1及び図2を参照して説明する。まず、塗装装置Aについて説明する。塗装装置Aは、主剤(本発明の構成要件である液剤)と硬化剤(本発明の構成要件である液剤)を所定の割合で混合することにより得られた混合塗料(例えば、水性二液ウレタン塗料)を、塗装ガン18に供給して塗装を行うものである。
【0014】
主剤供給源10aには主剤用供給路11aの上流端が接続され、主剤用供給路11aの途中には、主剤用ポンプ12aと、主剤用ポンプ12aよりも下流側に配置した主剤用開閉弁13aと、主剤用開閉弁13aよりも下流側に配置した主剤用流量計14aとが設けられている。硬化剤供給源10bには硬化剤用供給路11bの上流端が接続され、硬化剤用供給路11bの途中には、硬化剤用ポンプ12bと、硬化剤用ポンプ12bよりも下流側に配置した硬化剤用開閉弁13bと、硬化剤用開閉弁13bよりも下流側に配置した硬化剤用流量計14bとが設けられている。
【0015】
主剤用供給路11aの下流端と、硬化剤用供給路11bの下流端は、1つの共通流路15の上流端に接続されている。共通流路15の途中には混合器16が設けられ、共通流路15の下流端部は、二股に分岐した分岐路17となっている。各分岐路17の下流端には、夫々、塗装ガン18が接続されている。つまり、共通流路15には2つの塗装ガン18が並列状に接続されている。2つの塗装ガン18を同時に用いて塗装を行うときには、双方の塗装ガン18に対して同じ流量の混合塗料が供給されるようになっている。
【0016】
各塗装ガン18には、夫々、エアフロースイッチ(図示せず)が設けられている。塗装ガン18が、その先端のノズル(図示せず)から混合塗料を噴出させる用意が整った塗装動作可能状態になると、エアフロースイッチからの検出信号が塗装動作検出手段20に出力されるようになっている。また、塗装ガン18が、混合塗料が供給されてもその混合塗料を噴出させない塗装停止状態になっているときには、エアフロースイッチからの検出信号は塗装動作検出手段20には出力されないようになっている。
【0017】
塗装動作検出手段20においては、各塗装ガン18から入力されるエアフロースイッチの検出信号が識別され、その検出信号の入力の有無に基づいて、各塗装ガン18が塗装動作可能状態と塗装停止状態のうちいずれの状態であるかが検出される。また、塗装ガン18が塗装動作可能状態と塗装動作停止状態との間で切り替わると、その塗装ガン18のエアフロースイッチからの検出信号の入力の有無が切り替わるので、塗装ガン18の塗装動作の状態が切り替わったことも検出される。そして、この塗装動作検出信号は、主剤用ポンプ12a、主剤用開閉弁13a、硬化剤用ポンプ12b及び硬化剤用開閉弁13bの動作を制御するためのコントローラ21と、詳しくは後述する判断手段22とに向けて出力されるようになっている。
【0018】
コントローラ21は、塗装動作検出手段20から入力される塗装動作検出信号に基づき、2つの塗装ガン18の両方を用いて塗装が行われる場合には、両ポンプ12a,12bの圧送出力を高く設定し、いずれか一方の塗装ガン18のみを用いて塗装が行われる場合には、両ポンプ12a,12bの圧送出力を低く設定する。また、コントローラ21は、主剤用流量計14aと硬化剤用流量計14bから入力される流量検出信号(パルス信号)に基づき、主剤用開閉弁13aと硬化剤用開閉弁13bの開閉動作も制御する。各開閉弁13a,13bはコントローラ21からの制御信号により駆動される電磁弁(図示せず)の動作に連動して開閉する。
【0019】
塗装を行う際には、硬化剤用開閉弁13bが開弁して硬化剤用ポンプ12bの駆動により硬化剤のみが共通流路15側へ圧送され、所定量の硬化剤が供給されると、硬化剤用開閉弁13bが閉弁して主剤用開閉弁13aが開弁し、主剤用ポンプ12aの駆動により主剤が共通流路15へ圧送され、所定量の主剤が供給されると、主剤用開閉弁13aが閉弁し、硬化剤用開閉弁13bが開弁する、という工程が順次に繰り返される。これにより、硬化剤と主剤は、所定量ずつ交互に共通流路15に供給され、混合器16において撹拌・混合されることにより混合塗料となり、塗装ガン18に供給される。
【0020】
次に、上記塗装装置Aにおいて主剤、硬化剤、混合塗料の流れに異常を来したことを検出するための異常検出装置Bについて説明する。この流れの異常の原因としては、塗装ガン18のノズル内に硬化した混合塗料の一部が残留したままとなって、ノズル内における混合塗料の流路が狭くなるノズル詰まりが最も多いが、その他に、主剤用ポンプ12a又は硬化剤用ポンプ12bの圧送能力の低下も異常の原因となっている。異常検出装置Bは、主剤用流量計14aと硬化剤用流量計14bと判断手段22と上述した塗装動作検出手段20とを備えて構成されている。尚、塗装動作検出手段20については、既に説明済みなので、その機能及び構成についての記載は省略する。
【0021】
主剤用流量計14aは、一定量の主剤が主剤用流量計14aを通過する毎にパルス信号を出力する。同様に、硬化剤用流量計14bは、一定量の硬化剤が硬化剤用流量計14bを通過する毎にパルス信号を出力する。パルス信号の1回当たりの流量は、主剤用流量計14aと硬化剤用流量計14bとで同じ流量となっている。また、パルス信号は、主剤又は硬化剤の単位時間当たりの流量が多くなるほど、出力間隔(周期)が短くなる。
【0022】
次に、開閉弁13a,13bの開閉タイミングと主剤及び硬化剤の供給のタイミングについて、図2を参照して説明する。この図2は、硬化剤用開閉弁13bが開弁動作を開始してから、硬化剤用開閉弁13bが閉弁し、主剤用開閉弁13aが開弁し、主剤用開閉弁13aが閉弁し、主剤の供給が停止するまでの1サイクルにおいて、開閉弁13a,13bの開閉のタイミングと、主剤用流量計14aから出力されるパルス信号と、硬化剤用流量計14bから出力されるパルス信号をあらわしたタイムチャートである。流量計14a,14bから出力されるパルス信号の周期の長さは、主剤又は硬化剤の単位時間当たりの流量をあらわし、パルス信号の周期が長い程、流量が少ないことを意味する。また、2台の塗装ガン18を用いて塗装を行う場合は、1台の塗装ガン18だけで塗装を行う場合に比べると、主剤と硬化剤の流量が2倍となるので、パルス信号の周期は1/2となる。
【0023】
硬化剤用開閉弁13bが開弁動作を開始すると、時間Taだけ遅れて硬化剤の共通流路15側への供給が開始される。開始直後は流量が少ないが、次第に流量が増えていき、硬化剤用開閉弁13bが開弁してから時間Tbが経過すると一定の流量で安定する。そして、硬化剤用開閉弁13bが開弁してから時間Tcが経過すると、硬化剤用開閉弁13bが閉弁し、その後も短い時間ではあるが硬化剤の供給が続き、硬化剤用開閉弁13bが開弁してから時間Tdが経過すると、硬化剤の供給が停止する。硬化剤用開閉弁13bが閉弁した後の硬化剤の流量は、次第に減少していく。尚、硬化剤用開閉弁13bを閉弁してから主剤用開閉弁13aを開弁するまでの遅延時間Td−Tcは、硬化剤用開閉弁13bが閉弁してから硬化剤の供給が完全に停止するまでに要する時間を、サンプリングにより求め、それによって得られた結果に基づいて設定している。
【0024】
硬化剤の供給が停止するのと同時に、主剤用開閉弁13aが開弁動作を開始し、その後、硬化剤用開閉弁13bが開弁してから時間Teが経過したところで(つまり、主剤用開閉弁13aが開弁してから時間Te−Tdだけ遅れて)、主剤の共通流路15側への供給が開始される。開始直後は、硬化剤の場合と同様、主剤の流量は少ないが、次第に流量が増えていき、硬化剤用開閉弁13bが開弁してから時間Tfが経過すると一定の流量で安定する。
【0025】
そして、硬化剤用開閉弁13bが開弁してから時間Tgが経過(つまり、主剤用開閉弁13aが開弁してから時間Tg−Tdが経過)すると、主剤用開閉弁13aが閉弁し、その後も短時間の間に主剤の供給が続き、硬化剤用開閉弁13bが開弁してから時間Thが経過すると(つまり、主剤用開閉弁13aが閉弁してから時間Th−Tgだけ遅れて)、主剤の供給が停止する。主剤用開閉弁13aが閉弁した後の主剤の流量は、硬化剤の場合と同様、次第に減少していく。
【0026】
上記のように硬化剤用開閉弁13bの開弁動作が開始してから、主剤の供給が停止するに至る時間Thを、主剤と硬化剤が1回ずつ共通流路15側に供給するのに要する1サイクルの供給工程として設定している。そして、硬化剤用開閉弁13bが開弁してから時間Thが経過して主剤の供給が停止すると、同時に、次のサイクルが開始して硬化剤用開閉弁13bが開弁する。尚、主剤用開閉弁13aを閉弁してから次のサイクルの硬化剤用開閉弁13bを開弁するまでの遅延時間Th−Tgは、主剤用開閉弁13aが閉弁してから主剤の供給が完全に停止するまでに要する時間をサンプリングにより求め、それによって得られた結果に基づいて設定している。
【0027】
次に、判断手段22について説明する。判断手段22は、カウンタ23と記憶部24と比較部25とを備えて構成されている。カウンタ23は、1サイクルの供給工程毎に、主剤用流量計14aからのパルス信号と硬化剤用流量計14bからのパルス信号の総数をカウントする。
【0028】
記憶部24には、正常な塗装が行われているときに1サイクルの間に入力されるべきパルス信号の総数の許容範囲が、上限値と下限値の定められた正常範囲として記憶されている。この正常範囲は、1つの塗装ガン18で塗装を行うときのものと、2つの塗装ガン18を同時に用いて塗装を行う場合のものと、2種類が記憶されている。この記憶される正常範囲の値は、塗装を行うのに先立ってサンプリングを行った結果に基づいて設定されている。
【0029】
比較部25は、カウンタ23でカウントされるパルス信号の1サイクル当たりの総数と、記憶部24に記憶されている正常範囲とを比較し、パルス信号の総数が正常範囲内であるか否かを判定する。このとき、塗装動作検出手段20からの検出信号により、塗装に用いられている塗装ガン18の数に応じて、2種類の正常範囲のうちいずれか一方が比較の対象として選択される。パルス信号の総数が正常範囲内であるときには、ノズル詰まり等の混合塗料、主剤、硬化剤の流れを阻害する事態が生じておらず、混合塗料、主剤及び硬化剤の流れが全て正常であると判断する。これに対し、パルス信号の総数が正常範囲外であった場合には、ノズル詰まり等の混合塗料、主剤、硬化剤の流れを阻害する事態が発生し、混合塗料と主剤と硬化剤のうち少なくともいずれかの流れに異常を来していると判断する。
【0030】
かかる判断手段22においては、塗装動作検出手段20からの検出信号に基づき、判断結果を出力するか否かが決定される。即ち、2つの塗装ガン18のうち少なくとも1つの塗装ガン18が、1サイクルの間、塗装動作可能状態を維持しているという要件と、2つの塗装ガン18の双方において塗装動作可能状態と塗装動作停止状態との間での切り替えが行われないという要件の2つを要件が満たされたことを条件として、混合塗料、主剤及び硬化剤の流れが正常であるか異常であるかの判断結果を出力する。
【0031】
具体的には、2つの塗装ガン18を用いて塗装が行われている場合において、その2つの塗装ガン18の両方が1サイクルの間に塗装動作可能状態を維持していれば、判断結果が出力されるが、1サイクルの間に少なくとも一方の塗装ガン18が塗装動作可能状態から塗装動作停止状態に切り替わったときには、判断結果は出力されない。
【0032】
また、いずれか一方の塗装ガン18のみを用いて塗装が行われている場合においては、この塗装に使用されている塗装ガン18が1サイクルの間に塗装動作可能状態を維持していれば、判断結果が出力されるが、塗装に使用されている塗装ガン18が1サイクルの間に塗装動作可能状態から塗装動作停止状態に切り替わったときには、判断結果は出力されない。また、塗装に使用されている塗装ガン18が1サイクルの間に塗装動作可能状態を維持している場合であっても、塗装に使用されていない塗装ガン18が1サイクルの間に塗装動作停止状態から塗装動作可能状態に切り替わったときには、判断結果は出力されない。
【0033】
図2に示したように、主剤と硬化剤の供給が切り替わるときには、主剤と硬化剤の流量が一時的に変動(低下)することは避けられないが、主剤と硬化剤が1回ずつ供給される1サイクルの供給工程を1つの検出単位とした場合、その検出単位において主剤用流量計14aと硬化剤用流量計14bから入力されるパルス信号の総数は、主剤と硬化剤の流れが正常であればほぼ一定となる。この点に着目し、本実施形態では、主剤と硬化剤の1サイクルの供給工程を検出単位としたパルス信号の入力総数に基づいて異常検出を行うようにした。したがって、判断手段22においては、主剤と硬化剤の切替時における一時的な流量変動が原因となって誤った判断が下される虞はない。つまり、塗装ガン18のノズル詰まりや主剤、硬化剤の圧送能力低下等の不具合が発生していないにも拘わらず、これらの不具合が発生した旨の誤った検出動作(つまり、判断手段22から判断結果が出力される動作)が行われることを回避できる。
【0034】
また、塗装を停止するために、塗装ガン18が塗装動作可能状態から塗装動作停止状態に切り替わると、1サイクルの供給工程として設定されている時間の間に入力されるパルス信号の総数が減少するため、判断手段22において、車室床面、硬化剤、混合塗料の流れが異常であるとの誤った判断が下されることが懸念される。その点、本実施形態では、塗装ガン18が1サイクルの間に塗装動作可能状態を維持して塗装動作停止状態に切り替わらないことを条件として判断手段22が判断結果を出力するようにしているので、塗装の停止時に誤った検出動作が行われることはない。
【0035】
また、2つの塗装ガン18のうちいずれか一方の塗装ガン18が塗装を開始又は停止して、その塗装ガン18が塗装動作可能状態と塗装動作停止状態との間で切り替わったときには、1サイクルの供給工程として設定されている時間の間に入力されるパルス信号の総数が変動するため、判断手段22において、主剤と硬化剤の流れが異常であるとの誤った判断が下されることが懸念される。
その点に鑑み、本実施形態では、2つの塗装ガン18のうち少なくとも1つの塗装ガン18が塗装動作可能状態を維持し、且つ2つの塗装ガン18の双方において塗装動作可能状態と塗装動作停止状態との間での切り替えが行われないことを条件として、判断手段22が判断結果を出力するようにしている。したがって、2つの塗装ガン18のうちいずれか一方の塗装ガン18が塗装を開始又は停止したときには、判断手段22は判断結果を出力せず、誤った異常検出動作が行われる虞はない。
【0036】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では1つの共通流路に接続される塗装ガンの数を2つとしたが、1つの共通流路に接続される塗装ガンの数は、1つでもよく、3つ以上でもよい。
(2)上記実施形態では1つの液剤(主剤と硬化剤)を交互に共通流路に供給するようにしたが、本発明は、3つ以上の液剤を順次に共通流路に供給する場合にも適用できる。
(3)上記実施形態では硬化剤の供給開始時から主剤の供給停止時までの工程を1サイクルと設定したが、1サイクルの設定形態としては、主剤の供給開始時から硬化剤の供給停止時までを1サイクルとする形態、主剤の供給途中であってその供給開始から一定時間が経過した時点から、硬化剤の供給工程を経て、次の主剤の供給開始から上記と同じ一定時間が経過した時点までを1サイクルとする形態、硬化剤の供給途中であってその供給開始から一定時間が経過した時点から、主剤の供給工程を経て、次の硬化剤の供給開始から上記と同じ一定時間が経過した時点までを1サイクルとする形態のいずれとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態1の塗装装置及び異常検出装置の構成図
【図2】開閉弁の開閉タイミングと主剤及び硬化剤の供給タイミングをあらわすタイムチャート
【符号の説明】
【0038】
A…塗装装置
B…異常検出装置
14a…主剤用流量計
14b…硬化剤用流量計
15…共通流路
18…塗装ガン
20…塗装動作検出手段
22…判断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液剤を所定流量で所定時間ずつ交互又は順次に共通流路に供給して得られた混合塗料を、塗装ガンに供給する塗料装置において、
前記複数の液剤の流量を個別に検出し、その検出結果をパルス信号として出力する複数の流量計と、
前記複数の液剤が1回ずつ前記共通流路に供給される1サイクルの供給工程毎に、前記複数の流量計から入力されるパルス信号の総数をカウントし、そのカウントした前記パルス信号の総数が予め設定された正常数値の範囲内であるときには前記液剤と前記混合塗料の流れが正常であると判断し、前記パルス信号の総数が前記正常数値の範囲外であるときには前記液剤と前記混合塗料の流れが異常であると判断する判断手段とを備えていることを特徴とする塗装装置の異常検出装置。
【請求項2】
前記塗装ガンが混合塗料を噴出可能な塗装動作可能状態と、混合塗料の噴出を停止させる塗装動作停止状態のいずれの状態であるかを検出して、その検出結果を出力する塗装動作検出手段を備え、
前記判断手段は、前記1サイクルの供給工程の間に前記塗装ガンが塗装動作可能状態を維持して塗装動作停止状態に切り替わらないことを条件として、前記液剤と前記混合塗料の流れが正常であるか異常であるかの判断結果を出力するようになっていることを特徴とする請求項1記載の塗装装置の異常検出装置。
【請求項3】
前記共通流路には、複数の前記塗装ガンが並列状に接続され、
前記塗装動作検出手段は、前記複数の塗装ガンが塗装動作可能状態と塗装動作停止状態のいずれの状態であるかを、個別に検出するようになっており、
前記判断手段は、前記1サイクルの供給工程の間に、前記複数の塗装ガンのうち少なくとも1つの前記塗装ガンが塗装動作可能状態を維持し、且つ前記複数の塗装ガンの全てにおいて塗装動作可能状態と塗装動作停止状態との間での切り替えが行われないことを条件として、前記液剤と前記混合塗料の流れが正常であるか異常であるかの判断結果を出力するようになっていることを特徴とする請求項2記載の塗装装置の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−46597(P2010−46597A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212278(P2008−212278)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】