説明

壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤

【課題】特殊な装置を必要とせずに、セシウム及びその化合物を吸着除去することができ、かつ吸着物の処理を容易とすることのできる壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤を提供する。
【解決手段】壁紙用接着剤であって、該接着剤がフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤である。また、通気性を有する基材層(A)の片面又は両面のいずれかに、上記1〜3のいずれかに記載の接着剤を使用してなる基材層付き壁紙用接着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セシウム除去性を有する壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤に関する。さらに詳しくは、大気中に含まれる有害な放射性セシウムの除去が可能な壁紙用接着剤及びこれを使用してなる基材層付き壁紙用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原子力発電所等の放射性物質取扱施設から発生する放射性物質を含む廃液や排ガスから放射性物質を自然環境中に排出させないことが求められている。特に放射性物質の中でも放射性セシウム137は、半減期が30年であり、その間γ線を放射し続ける。また、ガス化し易いため広く環境中に飛散し、水溶性が高く生体に蓄積し易い。その為、生体内に取り込まれると、体内被曝による生体への悪影響が非常に大きく、深刻である。この放射性セシウム137を除去する方法として、ゼオライトを用いて汚染水から除去する方法は多数知られている(特許文献1参照)。一方、放射性セシウム137を含むセシウム及びその化合物と選択的に反応して吸着作用を有する化合物として紺青(プルシアンブルーとも言う)などのフェロシアン化金属化合物が一般的に知られており(特許文献2参照)、微粒子状態のまま使用し、セシウム及びその化合物を吸着した後の廃液や排ガス中から微粉状態の吸着物の回収を検討しているが、大掛かりな装置が必要である(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−79999号公報
【特許文献2】特開平5−66295号公報
【特許文献3】特開平4−285017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フェロシアン化金属化合物を用いてセシウム及びその化合物(以下、単に「セシウム」ということがある。)を除去するに当たって、特殊な装置を必要とせずに、かつセシウムを吸着した後の吸着物の処理が容易である壁紙用接着剤及びこれを使用してなる基材層付き壁紙用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、壁紙用接着剤中にフェロシアン化金属化合物を含有することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の壁紙用接着剤及びこれを使用してなる基材層付き壁紙用接着剤を提供するものである。
1.壁紙用接着剤であって、該接着剤がフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤。
2.フェロシアン化金属化合物が化学式Axy[Fe(CN)6]で示される上記1に記載の壁紙用接着剤。〔ただし、化学式中のAは、K、Na、及びNH4のいずれかであり、Mは、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnのいずれかであり、かつ式x+ny=4(x=0〜3)を満たす。ただしnはMの価数を表わす。〕
3.接着剤中のフェロシアン化金属化合物の含有量が1〜90質量%である上記1又は2に記載の壁紙用接着剤。
4.前記壁紙用接着剤が粘着性を有するものである上記1〜3のいずれかに記載の壁紙用接着剤。
5.前記壁紙用接着剤の片面または両面のいずれかに離型フィルムまたは離型紙を貼り付けてなる上記4に記載の壁紙用接着剤。
6.通気性を有する基材層(A)の片面又は両面のいずれかに、上記1〜3のいずれかに記載の接着剤を使用してなる基材層付き壁紙用接着剤。
7.通気性を有する基材層(A)と基材層(B)とを上記1〜3のいずれかに記載の壁紙用接着剤とで貼り付けてなる基材層付き壁紙用接着剤であって、該基材層(B)側を貼付した壁面から剥離する際に、該基材層(B)は、(i)層内で破壊する基材層、(ii)壁面との間で剥離する基材層又は(iii)上記1〜3のいずれかに記載の壁紙用接着剤と剥離する基材層、から選ばれるものであるいずれかの基材層である基材層付き壁紙用接着剤。
8.前記基材層(B)上に更に汎用の接着剤を貼り付けてなる上記7に記載の基材層付き壁紙用接着剤。
9.通気性を有する基材層(A)の透気抵抗度(測定法:JIS P8117−1998)が60秒以下である上記6〜8のいずれかに記載の基材層付き壁紙用接着剤。
10.前記基材層(B)が、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、及びポリプロピレンから選ばれた1種である上記7又は8に記載の基材層付き壁紙用接着剤。
11.前記基材層(B)が、積層物であって該積層物の内の1層にポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、及びポリプロピレンから選ばれた少なくとも1種を含む上記7又は8に記載の基材層付き壁紙用接着剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の壁紙用接着剤及びこれを使用してなる基材層付き壁紙用接着剤によれば、空気中の放射性セシウムの除去が可能になり、該壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤に含有されるフェロシアン化金属化合物によって、壁紙を通して該接着剤又は該基材層付き壁紙用接着剤に吸着されたセシウムを壁面から除去するに際し、壁紙と接着された壁紙用接着剤又は基材層付き壁紙用接着剤を壁面から容易に剥離させることができるので、セシウム吸着物の処理を容易とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤は、フェロシアン化金属化合物を含むものである。以下、本発明の壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤について説明する。
【0008】
〔壁紙用接着剤〕
本発明の壁紙用接着剤を直接壁面に使用する場合は、接着剤中にフェロシアン化金属化合物を含むものであり、壁面に該接着剤を塗布等により使用し、使用後に壁紙を剥離させる際に、該接着剤が壁面に残らず(少なくとも見た目で)剥離できるものであれば、特に限定されるものではない。この好ましい壁紙用接着剤の態様として、フェロシアン化金属化合物及びバインダー樹脂成分を含む分散液が原材料として用いられる。以下、この壁紙用接着剤の原材料として好ましい該分散液を構成する各成分について記載する。
【0009】
<フェロシアン化金属化合物>
本発明の壁紙用接着剤の原材料として使用する分散液にはフェロシアン化金属化合物が使用される。使用されるフェロシアン化金属化合物とは、その化学式は、Axy[Fe(CN)6]ただしA及びMは金属等の陽イオンで示される金属塩であり、化学式中のAは、K、Na、及びNH4のいずれかが望ましく、Mは、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnのいずれかが望ましく、かつ式x+ny=4(x=0〜3)を満たす。ただしnはMの価数を表わす。
この中の代表的な化合物で構造式NH4Fe[Fe(CN)6]で表せる種類の紺青は、工業的に量産され、極めて微粒子状の顔料であり、その用途としてインキ、絵の具、化粧品などに広く使用されている安全性の高い化合物である。これらのフェロシアン化金属化合物は結晶構造として立方晶形を有し、格子内に一価の陽イオン、特にセシウムを選択的に取り込みやすい化合物である。
本発明のセシウム除去性壁紙に使用されるフェロシアン化金属化合物は、その形態が微粒子状であっても、水分等を含んだウェット状であってもよい。なお、市販の微粉品には吸着水が1〜3%程度含まれている。
【0010】
<バインダー樹脂>
本発明の壁紙用接着剤の原材料として使用する分散液に使用されるバインダー樹脂としては、天然樹脂及び合成樹脂のいずれを用いることもでき、また、天然樹脂と合成樹脂を組み合わせて用いることもできる。
該分散液で用いられるバインダー樹脂としては、接着性とフェロシアン化金属化合物の分散性を有するものが好ましく、具体的には、以下に記載する天然樹脂及び合成樹脂が好適に挙げられる。なお、ここでいう接着性とは、フェロシアン化金属化合物との接着性、壁紙との接着性及び壁面との接着性を示すものである。
【0011】
天然樹脂としては、カゼイン、大豆たんぱく、澱粉、天然ゴム、セルロース系、膠、松脂、セラック等が挙げられ、さらにはこれらの天然樹脂に対して、焙焼・酸化・アセチル化・メチル化・カルボキシメチル化・エステル化・エーテル化などの変性を施したものが挙げられる。
また、合成樹脂としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、アクリル・酢酸ビニル系、アクリル酸・メチルメタクリレート系、ポリメタクリレート系、α-オレフィン・無水マレイン酸系、ウレタン系、エポキシ系、塩化ビニル系、クロロプレン系、酢酸ビニル系、シアノアクリレート系、シリコーン系、水性ビニルウレタン系、スチレン系、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルピロリドン系、ポリビニルブチラール系、ポリベンズイミダゾール系、ポリアミド系、ユリア系、メラミン系、レゾルシノール系等が挙げられる。
上記天然樹脂及び合成樹脂は、1種類以上を適宜選択して使用することができる。
またイソシアネート化合物等の架橋性の硬化剤を併用してもよい。
【0012】
<分散媒>
該分散液には、使用されるフェロシアン化金属化合物及びバインダー樹脂を分散液とするために、必要に応じて分散媒を使用することができる。分散媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、キシレン、トルエン、酢酸ブチル、酢酸エチル、エトキシエチルプロピオネート、メトキシプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブタノール等が挙げられる。これらの分散媒は、それぞれを単独で使用してもよいし、また複数種を併用して使用してもよい。
【0013】
<添加成分>
該分散液には、フェロシアン化金属化合物及びバインダー樹脂とともに更に、添加成分を必要により添加含有させることができる。添加成分としては、分散安定剤、酸化防止剤、架橋剤、硬化剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、消泡剤、浸透剤、凍結防止剤、乾燥遅延剤、乳化剤、増粘剤、可塑剤、造膜助剤、吸水性ポリマー、保湿剤、体質顔料等を挙げることができる。ここで、吸水性ポリマーや保湿剤は水分を保持してセシウムの吸着を補助する成分であり、吸水性ポリマーとしてはポリアクリル酸ナトリウムや変性ポリアルキレンオキサイド等があげられ、保湿剤としてはポリエチレングリコールやソルビトール等の合成多価アルコール、各種アミノ酸やキチン、キトサン、タンパク質分解物などの生物系保湿剤があげられるが、これらに限定されない。
【0014】
<フェロシアン化金属化合物とバインダー樹脂の含有割合>
本発明の壁紙用接着剤の原材料として使用される分散液中の、フェロシアン化金属化合物とバインダー樹脂の含有量は、フェロシアン化金属化合物とバインダー樹脂の合計量に基づいて、フェロシアン化金属化合物が1〜90質量%であり、バインダー樹脂が99〜10質量%であることが好ましい。フェロシアン化金属化合物が1質量%未満であるとセシウム除去効率が低下し、90質量%を超えると壁紙用接着剤としての接着力が低下して、壁面に使用した際に剥離や離脱する恐れがある。
【0015】
<分散媒の配合割合>
該分散液中に使用される分散媒の量は、使用されるフェロシアン化金属化合物及びバインダー樹脂が分散状態となり、液状又はペースト状とすることができる量であればよく、通常は、フェロシアン化金属化合物とバインダー樹脂との合計量100質量部に対して、0〜900質量部、好ましくは0〜400質量部である。上述したように、使用されるバインダー樹脂が分散媒としての役割を果たす場合は、分散媒は必ずしも必要ではない。使用される分散液は、上記にて説明した各成分を所定量配合して混合後、分散液とするものである。
【0016】
<壁紙用接着剤の使用形態>
上記にて説明した本発明の壁紙用接着剤の原材料として用いられる分散液は、事前に該分散液を壁に塗布して、次いで、その上から通気性を有する基材層(壁紙)を貼り付けて接着する方法がある。また、通気性を有する基材層(壁紙)に事前に本発明の壁紙用接着剤を塗布した後、壁に貼り付けて接着する方法がある。また、本発明の壁紙用接着剤は通気性を有する基材層を用いないで、シート状に成形し、容易に剥離可能な保護シート等を利用して適宜使用することができる。本発明の壁紙用接着剤は、壁と壁紙を接着させ、接着剤中に使用されたフェロシアン化金属化合物にセシウムを吸着させた後は、該接着剤が壁面に残存しないように、壁紙を該接着剤とともに、壁面から剥離する必要がある。従って、使用する基材材質の選定や壁紙と該接着剤との接着力を調整しておくことが望ましい。例えば、壁と該接着剤との接着力に比較して強くしておくことにより、該接着剤が壁面に残存しないように剥離させることができる。この接着力の調整については、使用する接着剤を構成する構成成分、基材層材質(壁紙材質)、壁面材質等により適宜調整し、壁紙と該接着剤との接着力が、壁と該接着剤との接着力に比較して強くすることができる。更に壁面の粗さや凹凸状態を適宜変えて調整することもできる。
【0017】
〔基材層付き壁紙用接着剤〕
本発明の基材層付き壁紙用接着剤について説明する。本発明の基材層付き壁紙用接着剤には、前述した壁紙用接着剤が使用される。また、本発明の基材層付き壁紙用接着剤に使用される基材層としては、通気性を有する基材層(A)及び必要に応じて使用される特定の基材層(B)が用いられる。また更に必要に応じて汎用の接着剤が使用される。
発明の基材層付き壁紙用接着剤に使用されるこれらの構成材料について説明する。
<通気性を有する基材層(A)について>
本発明の基材層付き壁紙用接着剤に使用される通気性を有する基材層(A)は、壁紙を通過したセシウムがフェロシアン化金属化合物を含有する接着層で吸着されることから、通気性を有することが必要である。このような通気性を有する基材層(A)としては、透気抵抗度が60秒以下、更に好ましくは30秒以下である通気性を有する基材を使用することが望ましい。なお、透気抵抗度の測定方法は、JIS P8117−1998紙及び板紙−透気度試験方法−ガーレー試験機法に基づいて測定されるものである。これらの材質としては和紙、非木材紙、水酸化アルミニウム紙(水酸化アルミニウムおよびパルプを含む)、珪藻土紙(紙と珪藻土の混合物)や布などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
和紙としてはコウゾ、ミツマタなどを原料とするものが挙げられ、非木材紙としてはケナフ、さとうきびの搾り糟などを原料とするものが挙げられる。布としては平織布、綾織布、朱子織布、不織布、植毛布や金属繊維やガラス繊維を素材とした布などが挙げられる。
該基材層の厚さとしては、本発明の効果が奏される範囲内であれば、特に限定されないが、通気性基材の強度等の観点から0.01mm以上であることが好ましく、一方放射性物質を効果的に通過させるとの観点から3mm以下であることが好ましい。以上の点から、さらに0.05〜1mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0018】
<基材層(B)について>
また、本発明の基材層付き壁紙用接着剤は、別の形態として前記通気性を有する基材層(A)と特定の基材層(B)とを前記で説明した壁紙用接着剤とで貼り付けてなるものである。この際に使用される特定の基材層(B)は、該基材層(B)側を貼付した壁面から剥離する際に、(i)層内で破壊する基材層、(ii)壁面との間で剥離する基材層又は(iii)前記にて説明した壁紙用接着剤と剥離する基材層から選ばれるものである。これらの基材層(B)の材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等樹脂材料から選ばれるものである。また、該基材層(B)は、積層物であってもよく、積層物の場合、該積層物の内の1層にポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンから選ばれた少なくとも1種を含む積層物を使用することが好ましい。
基材層(B)は、壁面と接着されるため、汎用の接着剤が使用される。汎用の接着剤としては、酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル樹脂系、澱粉系、セルロースエーテル系、アクリル系などの市販の壁紙用接着剤を適宜使用することができる。汎用の接着剤は、基材層(B)の壁面側に事前に塗布して貼り付けておいてもよいし、壁面に塗布して貼り付けてもよい。
このような特定の基材層(B)を使用して本発明の基材層付き壁紙用接着剤を壁面から剥離させた場合、基材層(B)の層内で破壊するか、壁面と剥離するか、あるいは、使用した前記の壁紙用接着剤との界面で剥離することが可能となる。従って、壁面にセシウムを吸着した前記の壁紙用接着剤を残存させることがなく、セシウム吸着物の処理を容易とすることができる。次に本発明の壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤について、具体的にその好ましい態様について説明する。
【0019】
〔壁紙用接着剤(1):基材層(壁紙)を接着剤で貼る構成で使用〕
本発明の壁紙用接着剤(1)は、上記で記載したフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤であり、通気性を有する基材層(壁紙)を接着剤で貼る構成で使用する接着剤である。本発明の壁紙用接着剤(1)について、好ましい態様を説明する。
【0020】
<壁紙用接着剤(1)の使用形態>
事前に、本発明の壁紙用接着剤を壁に塗布して、次いで、その上から通気性を有する壁紙を貼り付けて接着する方法がある。また、通気性を有する基材層(壁紙)の片面又は両面のいずれかに事前に本発明の壁紙用接着剤を塗布した後、壁に貼り付けて接着する方法がある。
【0021】
〔基材層付き壁紙用接着剤(2):両面にセシウム除去性接着剤〕
本発明の基材層付き壁紙用接着剤(2)は、通気性を有する基材層の両面にフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤(セシウム除去性接着剤)を使用してなるものである。更に必要に応じて、この壁紙用接着剤に通気性を有する基材層を、この順で壁面上に形成してなるものである。本発明の基材層付き壁紙用接着剤(2)について、好ましい態様を説明する。
【0022】
<通気性を有する基材層両面に形成する基材層付き壁紙用接着剤>
本発明に使用される通気性を有する基材層の両面に形成するフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤(セシウム除去性接着剤)は、特に保管した後に使用する場合は、前述した壁紙用接着剤の中で粘着性有する接着剤を使用することが好ましい。好ましい態様として前述した壁紙用接着剤の発明に使用される接着剤を得るための分散液を該基材層の両面に塗布してなる基材層付き壁紙用接着剤を例示することができる。ただし、両面の壁紙用接着剤(セシウム除去性接着層)が通気性を有する基材に浸透させて連続した接着層として、吸着したセシウムが壁面側にも移動できるようにする必要がある。
該基材層付き壁紙用接着剤の使用方法としては、該基材層付き壁紙用接着剤を壁に貼り付けた後、通気性を有する壁紙をその上に貼り付けて使用することができる。
または該基材層付き壁紙用接着剤の上に事前に通気性を有する壁紙をその上に貼り付けて、壁に貼り付けて使用することもできる。
両面に塗布される壁紙用接着剤に使用される分散液は、同一の分散液であってもよいし、その構成成分を変えることにより、壁面との剥離が容易となるようにその接着強度を変えて使用することもできる。該分散液を該基材層の両面に塗布した後、必要に応じて分散媒等の除去または硬化のために、乾燥することが望ましい。また、接着剤を塗布した状態で保管する場合は、貼る時の為に壁面に使用する接着剤は粘着性を有することが必要である。
【0023】
<基材層付き壁紙用接着剤(2)の形態>
上記にて得られた基材層付き壁紙用接着剤(2)は、容易に剥離可能な保護シートを接着層上に積層し、ロール状態で保管するか又はシート状態に積み重ねて保管し、必要に応じて使用することができる。また、ロール状態で保管する場合は、接着層と反対側の基材層側に剥離剤を塗布しておき、ロール状態で保管することもできる。本発明の基材層付き壁紙用接着剤は、接着層の片面側は壁面と接着させるため、前述したと同様に壁紙を壁面から剥離させる際に、接着層が壁面から残存しないように剥離することが必要である。従って、使用される基材層の材質、使用する接着剤を構成する構成成分、壁面材質等、壁紙材質等を適宜調節して使用する。本発明の基材層付き壁紙用接着剤は、壁と壁紙を接着させ、基材層付き壁紙用接着剤中に使用されたフェロシアン化金属化合物にセシウムを吸着させた後は、該基材層付き壁紙用接着剤が壁面に残存しないように、壁紙を基材層付き壁紙用接着剤とともに、壁面から剥離する必要がある。従って、前述したと同様に、壁紙と該基材層付き壁紙用接着剤との接着力を比較的大きくし、該基材層付き壁紙用接着剤と壁との接着力を比較的小さくしておくことが必要である。
この接着力の調整については、使用する基材層付き壁紙用接着剤を構成する基材及び接着剤の材質、壁紙材質、壁面材質等により適宜、調整することができる。また、基材層の両面に接着層を有する場合は、その接着剤の種類を変えて調整することもできる。更に、使用する基材層や壁面の粗さや凹凸状態を適宜変えて調整することもできる。
【0024】
〔基材層付き壁紙用接着剤(3):片面にセシウム除去性接着剤〕
本発明の基材層付き壁紙用接着剤(3)の発明は、通気性を有する基材層の片面にフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤(セシウム除去性接着剤)、前記基材層(B)、汎用の接着剤をこの順で積層したものである。また、通気性を有する基材層の片面にフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤(セシウム除去性接着剤)、反対面に汎用の接着剤層を形成してなるシートに更に、通気性を有する基材層をこの順に積層したものである。ただし汎用の接着剤層は壁面側とする。
この構成の利点は壁面の状態に因らず、セシウム除去性接着剤を充分に除去できる。例えば、壁面に破れやすい紙製の壁紙が残っている場合や、壁紙は剥がしたが少し接着剤が残っている場合等で、直接セシウム除去性接着剤を壁面に使用すると、後で本発明の基材層付き壁紙用接着剤を剥がす時にセシウム除去性接着剤が残る可能性があるので、これを防ぐ目的で有用である。本発明の基材層付き壁紙用接着剤(3)について、好ましい態様を説明する。
【0025】
<通気性を有する基材層の片面に形成する壁紙用接着剤について>
本発明に使用される基材層の片面に形成するフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤(セシウム除去性接着剤)は、前述した壁紙用接着剤の中で粘着性有する接着剤を使用することができる。好ましい態様として前述した壁紙用接着剤の発明に使用される接着剤を得るための分散液を該基材層の片面に塗布してなるものを例示することができる。その具体例としては、通気性を有する基材層の片面にフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤(セシウム除去性接着剤)、前記基材層(B)、汎用の接着剤をこの順で積層したものである。また、該通気性を有する基材層の片面にフェロシアン化金属化合物を含有するセシウム除去性接着剤、反対面に一般の接着剤層を形成しなるシートを壁に貼り付けた後、通気性を有する壁紙をその上に貼り付けてセシウム除去材とするか、または該シートを、通気性を有する壁紙に貼り付けた後、該壁紙を壁に貼り付けて基材層付き壁紙用接着剤とする。
該分散液を該基材層の面片に塗布した後、粘着性を上げるため必要に応じて分散媒等の除去または硬化のために、乾燥することが望ましい。
【0026】
<基材層付き壁紙用接着剤(3)の使用形態>
前述した基材層付き壁紙用接着剤(2)と同様に使用する。ただし、壁面側に汎用の接着剤を使用し、反対面にセシウム除去性接着剤を使用する。また、シート状のまま保管する場合は、壁面側に使用する際の汎用の接着剤は粘着性を有することが必要である。
【0027】
〔壁紙用接着剤(4):基材層なし接着剤シートを使用〕
本発明の壁紙用接着剤(4)は、フェロシアン化金属化合物を含有するセシウム除去性接着剤を離型紙に塗布した壁紙用接着シートからなるものである。フェロシアン化金属化合物を含有する接着剤は、好ましい態様として前述した壁紙用接着剤の発明に使用される接着剤を得るための分散液をシート状にしてなるものである。シート状とするには、剥離性の容易なテフロン(登録商標)やガラス基材等の上に該分散液を塗布した後、必要に応じて分散媒等の除去または硬化のために、乾燥して、壁紙用接着シートとすることが望ましい。また、接着剤を塗布した状態で保管する場合は、貼る時の為に接着剤は粘着性を有することが必要である。
【0028】
<壁紙用接着剤(4)の使用形態>
上記で得られる壁紙用接着剤(4)は、剥離性の容易なテフロン(登録商標)やガラス基材等の上に形成された接着層上に壁紙を載置し、圧着等により接着させ、接着層を有した壁紙をテフロン(登録商標)やガラス基材等から剥離させ、次いで、壁面に圧着等により接着して使用することができる。また、テフロン(登録商標)やガラス基材等の上に形成された接着層をそのまま壁面に圧着等により接着し、テフロン(登録商標)やガラス基材等の基材を剥離させた後、その上から壁紙を圧着等により接着して使用することができる。また、上記にて得られた壁紙用接着剤(4)は、容易に剥離可能な保護シートを1枚又は2枚使用し、ロール状態で保管するか又はシート状態に積み重ねて保管し、必要に応じて保護シートを剥離して、壁紙と接着した後、壁面に接着させるか又は、壁面と接着した後、壁紙を接着させて使用することができる。
本発明の壁紙用接着剤(4)は、壁と壁紙を接着させ、壁紙用接着剤(4)中に使用されたフェロシアン化金属化合物にセシウムを吸着させた後は、該壁紙用接着剤(4)が壁面に残存しないように、壁紙を該壁紙用接着剤(4)とともに、壁面から剥離する必要がある。従って、前述したと同様に、壁紙と該壁紙用接着剤(4)との接着力が、壁と該壁紙用接着剤(4)との接着力に比較して大きくしておくことが必要であり、この接着力の調整については、前述したと同様にして、使用する接着剤を構成する構成成分、壁紙材質、壁面材質、壁面の粗さや凹凸状態を適宜変えて調整することができる。
【0029】
このようにして得られる本発明の壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤を使用すると、原子力発電所等の放射性物質取扱施設から発生するセシウムを含む汚染された空気からセシウムを特殊な装置を必要とせず簡便に除去することができる。
【実施例】
【0030】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
剥離試験
壁紙を壁面に接着させた後、強制的に剥離させ、壁面の接着剤の残存状態を目視にて観察した。
除染試験
本発明の壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤について、除染試験は本来セシウムの微粒子を含む空気を用いて試験するべきだが、そのセシウムを含む空気の作成方法が大変難しいので、ここではセシウムを含む水溶液の状態のもので代替して行った。
また、各基材層付き壁紙用接着剤の実施例についての除染試験は壁に貼った状態に近い形体として、各実施例で製造した壁紙用接着剤および基材層付き壁紙用接着剤を使用してコンクリート壁面を厚さ12μmのポリエステル製フィルムに替えてセシウム除去材のサンプルを作製した。この内の500cm2を裁断して得られたサンプル(幅5mm)を内径12ミリのカラムに充填し、硝酸セシウム70ミリグラム/リットル及び硫酸ナトリウム200グラム/リットルを含む硝酸セシウム水溶液(中性)500ミリリットルを2ミリリットル/分の速度で通過させた。その流出液のセシウム濃度を原子吸光分析装置(検出限界0.006ミリグラム/リットル)にて測定し、その除染係数を求める。なお、除染係数=処理前のセシウム濃度/処理後のセシウム濃度で示される。除染係数は通常、100以上であれば、除去効果が十分あるとされている。各サンプルの結果を参考例として示す。
【0031】
実施例1[壁紙用接着剤(1)の形態]
紺青顔料(商品名:ミロリブルー660PA、フェロシアン化金属化合物の前記化学式中のAがNH4、MがFe;大日精化工業株式会社製)15質量部に、50質量%のエチレン-酢酸ビニル樹脂を含むエマルジョン(商品名:スミカフレックス752;住友化学株式会社製)60質量部、水25質量部を加え、ディゾルバーにて混練し、分散液を調製した。この分散液には、フェロシアン化金属化合物とエチレン-酢酸ビニル樹脂(バインダー樹脂)との合計量に基づいて、フェロシアン化金属化合物は33質量%含まれていた。この分散液を本発明の壁紙用接着剤とし、コンクリート壁面にスポンジローラーにて分散液塗布量が乾燥時40g/m2となるように塗布し、5分後に通気性を有する坪量120g/m2のレーヨン素材の不織布(透気抵抗度:1.4秒未満)20cm×60cmを貼り付け接着させた。更に、1カ月後に、コンクリート壁面から壁紙を剥離した結果、コククリート壁面には使用した接着剤は、残存しないで、壁紙用紙と接着したまま剥離することができた。なお、剥離した接着剤層には、紺青顔料であるフェロシアン化金属化合物が32%質量%含まれていることを確認した。
【0032】
実施例2[壁紙用接着剤(1)の形態]
紺青顔料(商品名:ミロリブルー660PA、フェロシアン化金属化合物の前記化学式中のAがNH4、MがFe;大日精化工業株式会社製)5質量部、50質量%のエチレン-酢酸ビニル樹脂を含むエマルジョン(商品名:スミカフレックス752;住友化学株式会社製)70質量部、PEG4000S(三洋化成工業株式会社製ポリエチレングリコール;数平均分子量3400)1部、水24質量部を加え、ディゾルバーにて混練し、分散液を調製した。この分散液には、フェロシアン化金属化合物、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリエチレングリコールの合計量に基づいて、フェロシアン化金属化合物は12質量%含まれていた。この分散液を用いて実施例1と同様のセシウム除去材を作成した。剥離性も実施例1と同様に良好であった。なお、剥離した接着剤中には、紺青顔料であるフェロシアン化金属化合物が12%質量%含まれていることを確認した。
【0033】
実施例3[壁紙用接着剤(1)の形態]
実施例1と同様に本発明の壁紙用接着剤を作製し、コンクリート壁面にスポンジローラーにて分散液塗布量が乾燥時40g/m2となるように塗布し、5分後に壁紙用裏打紙(紙/発泡塩ビ;透気抵抗度:30秒)20cm×60cmを貼り付け接着させた。更に、1カ月後に、コンクリート壁面から壁紙を剥離した結果、コククリート壁面には使用した接着剤は、残存しないで、壁紙用紙と接着したまま剥離することができた。なお、剥離した接着剤層には、紺青顔料であるフェロシアン化金属化合物が32%質量%含まれていることを確認した。
【0034】
実施例4[壁紙用接着剤(1)の形態]
実施例1と同様に本発明の壁紙用接着剤を作製し、コンクリート壁面にスポンジローラーにて分散液塗布量が乾燥時40g/m2となるように塗布し、5分後に壁紙用裏打紙(紙/発泡塩ビ;透気抵抗度:60秒)20cm×60cmを貼り付け接着させた。更に、1カ月後に、コンクリート壁面から壁紙を剥離した結果、コククリート壁面には使用した接着剤は、残存しないで、壁紙用紙と接着したまま剥離することができた。なお、剥離した接着剤層には、紺青顔料であるフェロシアン化金属化合物が32%質量%含まれていることを確認した。
【0035】
実施例5[基材層付き壁紙用接着剤(2)の形態]
実施例1で使用した分散液を、ロールコーターにて秤量120g/m2の通気性を有するレーヨン素材の不織布(透気抵抗度:1.4秒未満)に塗布量が壁側面40g/m2になる様に両面に塗布し、各々120℃で2分間乾燥させた。ここで、両面のセシウム除去性接着剤が通気性の不織布を通して連続していることを確認した。得られた壁紙用接着シートをコンクリート壁面に20cm×60cmを貼り付けた。その上に前記秤量120g/m2レーヨン素材の不織布を貼り付けた。1カ月後にコンクリート壁面から壁紙を剥離した結果、コンクリート壁面には使用した接着剤は、残存しないで、不織布と接着したまま剥離することができた。
【0036】
実施例6[基材層付き壁紙用接着剤(3)の形態]
実施例1で使用した分散液を、ロールコーターにて秤量120g/m2、通気性を有するレーヨン素材の不織布(透気抵抗度:1.4秒未満)に塗布量が40g/m2になる様に片面に塗布し、120〜150℃で2分間乾燥させた。その不織布の反対面に市販のNEWサンゲツ糊(株式会社サンゲツ製)を同様に40g/m2になる様に塗布し120〜150℃で2分間乾燥させた。得られた壁紙用接着シートの市販接着層面を、紙製の壁紙を剥がしたコンクリート壁面(接着剤等が少し残っている)に20cm×60cmを貼り付けた。その上に前記秤量120g/m2レーヨン素材の不織布を貼り付けた。
1カ月後にコンクリート壁面から壁紙を剥離した結果、コンクリート壁面には使用したセシウム除去性接着層は残存しないで、壁紙用接着シート側に接着したまま剥離することができた。
【0037】
実施例7[壁紙用接着剤(4)使用の形態]
紺青顔料(商品名:ミロリブルー660PA、フェロシアン化金属化合物の前記化学式中のAがNH4、MがFe;大日精化工業株式会社製)18質量部に、46質量%のスチレン-アクリル樹脂を含むエマルジョン(商品名:ジョンクリル357J;BASFジャパン株式会社製)52質量部、50質量%の石油樹脂を含むエマルジョン(商品名:QME−120;東邦化学工業株式会社製)12質量部、水18質量部を加え、ディゾルバーにて混練し、分散液を調製した。この分散液には、フェロシアン化金属化合物とスチレン-アクリル樹脂(バインダー樹脂)との合計量に基づいて、フェロシアン化金属化合物は37質量%含まれていた。 得られた分散液を、ロールコーターにて厚さ25μmのテフロン(登録商標)素材のシートに塗布量が40g/m2になる様に塗布し、150℃で2分間乾燥させた。得られた壁紙用接着シートをコンクリート壁面に20cm×60cmを貼り付けた(粘着)後、テフロンシートを剥がした。その上に前記秤量120g/m2レーヨン素材の不織布(透気抵抗度:1.4秒未満)を貼り付けた。
1カ月後にコンクリート壁面から壁紙用接着シート壁紙を剥離した結果、コンクリート壁面には使用した接着剤は、残存しないで、不織布と接着したまま剥離することができた。
【0038】
参考例1
実施例1において、コンクリート壁面を厚さ12μmのポリエステルフィルムに替えて壁紙用接着剤を使用したサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は530であった。
参考例2
実施例2において、コンクリート壁面を厚さ12μmのポリエステルフィルムに替えて壁紙用接着剤を使用したサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は190であった。
参考例3
実施例3において、コンクリート壁面を厚さ12μmのポリエステルフィルムに替えて壁紙用接着剤を使用したサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は375であった。
参考例4
実施例4において、コンクリート壁面を厚さ12μmのポリエステルフィルムに替えて壁紙用接着剤を使用したサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は105であった。
参考例5
参考例1でレーヨン紙を壁紙用裏打紙(紙/発泡塩ビ;透気抵抗度:70秒)に替えた以外は実施例1と同様の方法で壁紙用接着剤を使用したサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は85であった。
参考例6
実施例5において、コンクリート壁面を厚さ12μmのポリエステルフィルムに替えて基材層付き壁紙用接着剤を使用したサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は710であった。
参考例7
実施例6において、コンクリート壁面を厚さ12μmのポリエステルフィルムに替えて基材層付き壁紙用接着剤を使用したサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は730であった。
参考例8
実施例7において、コンクリート壁面を厚さ12μmのポリエステルフィルムに替えて壁紙用接着剤を使用したサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は510であった。
参考例9
参考例1において、フェロシアン化金属化合物を添加しないこと以外は実施例1と同様の方法でサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は1.7であった。
参考例10
参考例6において、フェロシアン化金属化合物を添加しないこと以外は実施例5と同様の方法でサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は1.8であった。
参考例11
参考例7において、フェロシアン化金属化合物を添加しないこと以外は参考例6と同様の方法でサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は1.8であった。
参考例12
参考例8において、フェロシアン化金属化合物を添加しないこと以外は参考例7と同様の方法でサンプルを作製した。上記方法にて評価した結果、除染係数は1.7であった。
【0039】
上記の実施例及び参考例の結果から、本発明の壁紙用接着剤及び基材層付き壁紙用接着剤は、セシウムを簡便に捕集し、分離除去できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の壁紙用接着剤及びこれを使用してなる基材層付き壁紙用接着剤は、大気中に含まれるセシウムを選択的に吸着でき、かつ吸着後の吸着物を捕集する等の後処理が容易であるので、特殊な装置を必要とせずにセシウムを簡便に除去することができる。従って、原子力発電所等の放射性物質取扱施設から発生するセシウムを含む汚染された空気からセシウムを簡便に除去できる壁紙用接着剤及びこれを使用してなる基材層付き壁紙用接着剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁紙用接着剤であって、該接着剤がフェロシアン化金属化合物を含有する壁紙用接着剤。
【請求項2】
フェロシアン化金属化合物が化学式Axy[Fe(CN)6]で示される請求項1に記載の壁紙用接着剤。〔ただし、化学式中のAは、K、Na、及びNH4のいずれかであり、Mは、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnのいずれかであり、かつ式x+ny=4(x=0〜3)を満たす。ただしnはMの価数を表わす。〕
【請求項3】
接着剤中のフェロシアン化金属化合物の含有量が1〜90質量%である請求項1又は請求項2に記載の壁紙用接着剤。
【請求項4】
前記壁紙用接着剤が粘着性を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の壁紙用接着剤。
【請求項5】
前記壁紙用接着剤の片面または両面のいずれかに離型フィルムまたは離型紙を貼り付けてなる請求項4に記載の壁紙用接着剤。
【請求項6】
通気性を有する基材層(A)の片面又は両面のいずれかに、請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤を使用してなる基材層付き壁紙用接着剤。
【請求項7】
通気性を有する基材層(A)と基材層(B)とを請求項1〜3のいずれかに記載の壁紙用接着剤とで貼り付けてなる基材層付き壁紙用接着剤であって、該基材層(B)側を貼付した壁面から剥離する際に、該基材層(B)は、(i)層内で破壊する基材層、(ii)壁面との間で剥離する基材層又は(iii)上記請求項1〜3のいずれかに記載の壁紙用接着剤と剥離する基材層、から選ばれるものであるいずれかの基材層である基材層付き壁紙用接着剤。
【請求項8】
前記基材層(B)上に更に汎用の接着剤を貼り付けてなる請求項7に記載の基材層付き壁紙用接着剤。
【請求項9】
通気性を有する基材層(A)の透気抵抗度(測定法:JIS P8117−1998)が60秒以下である請求項6〜8のいずれかに記載の基材層付き壁紙用接着剤。
【請求項10】
前記基材層(B)が、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、及びポリプロピレンから選ばれた1種である請求項7又は8に記載の基材層付き壁紙用接着剤。
【請求項11】
前記基材層(B)が、積層物であって該積層物の内の1層にポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、及びポリプロピレンから選ばれた少なくとも1種を含む請求項7又は8に記載の基材層付き壁紙用接着剤。

【公開番号】特開2013−47303(P2013−47303A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186270(P2011−186270)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】