説明

変性酸化第二セリウムコロイド粒子及びその製造方法

【課題】酸化第二セリウムコロイド粒子をシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子で被覆することにより、耐光性が良好な酸化第二セリウムコロイド粒子を提供する。
【解決手段】4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)及びその水性ゾル又はその親水性有機溶媒ゾル並びにそれらの製造方法である。
【0002】
また本願発明は、前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面に有機珪素化合物が結合した表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
酸化第二セリウムは高い紫外線吸収能を持ち、自動車用紫外線遮蔽硝子、日焼け防止化粧品、プラスチック用紫外線吸収コーティング組成物などに幅広く応用されている。紫外線吸収機能を付与して用いるこれらの部材は、通常可視光に対して透明であることが必要とされるため、酸化第二セリウムを適用する場合には、微粒子、特に一次粒子径が100nm以下のコロイド粒子であることが好ましい。
【0004】
酸化第二セリウムのコロイド粒子が分散されたゾルとしては、粒子径30nmの結晶質酸化第二セリウムゾルが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、酸化第二セリウムゾルをプラスチック、塗料等の樹脂組成物に適用した場合に酸化第二セリウムの変質に伴う樹脂の着色現象を改良する方法として、酸化第二セリウムゾルにリン系酸化防止剤を適用する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−148710号公報
【特許文献2】特開平7−62139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂の変色防止のために用いるリン系酸化防止剤は、樹脂組成物中に共存する各種成分の作用によって分解されやすい。特許文献2のように酸化第二セリウムゾルにリン系酸化防止剤を適用した場合には、その分解生成物によって樹脂組成物中の酸化第二セリウムゾルの分散安定性を損なうことがあり、樹脂組成物の配合が制約される欠点があった。
【0008】
また、このような有機系酸化防止剤は紫外線を吸収し自らは酸化して変質するため、その酸化防止効果は半永久とはいえず、長期間紫外線に暴露される用途では耐光性が必ずしも十分とはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明では、樹脂組成物の成分により分解を起こすようなリン系酸化防止剤を用いることなく、酸化第二セリウムコロイド粒子をシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子で被覆することによって、紫外線に対する耐光性が良好な酸化第二セリウムコロイド粒子及びその水性ゾル又はその親水性有機溶媒ゾル若しくは0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルを提供できることを見出したものである。
【0010】
即ち本願発明は、第1観点として4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)、
第2観点として、前記アミン化合物が第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である第1観点に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)、
第3観点として、第1観点又は第2観点に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾル、
第4観点として、第1観点又は第2観点に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾル、
第5観点として、親水性有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプパノール、ブタノール、イソブタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である第4観点に記載の親水性有機溶媒ゾル、
第6観点として、第観点又は第2観点に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面に有機珪素化合物が結合した表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル、
第7観点として、前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)に対する有機珪素化合物の質量比が0.01〜0.50である第6観点に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル、
第8観点として、前記有機珪素化合物が一般式(I)
(R1a(R3bSi(OR24-(a+b) (I)
(但し、R1及びR3は、それぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基若しくはシアノ基を有する有機基で且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R2は炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbはそれぞれ0、1又は2の整数であり、a+bは0、1又は2の整数である。)及び/又は一般式(II)
〔(R4cSi(OX)3-c2Y (II)
(但し、R4は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xは炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基を示し、Yはメチレン基又は炭素数2〜20のアルキレン基を示し、cは0又は1の整数である。)で表される珪素化合物、若しくはそれらの加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種である第6観点又は第7観点に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル、
第9観点として、前記0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒がケトン類、エステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類及びポリオキシアルキレンジカルボン酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である第6観点〜第8観点のいずれか1つに記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル、
第10観点として、前記0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒がメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタクリル酸メチル、ジイソプロピルエーテル、トルエン、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(4GO)からなる群より選ばれる少なくとも1種である第6観点〜第9観点のいずれか1つに記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル、
第11観点として、下記の(a)工程、(b)工程、(c)工程及び(d)工程を含む第3観点に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルの製造方法:
(a)工程:スズ酸アルカリ又はアンチモン酸アルカリとケイ酸アルカリとをシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比として0.1〜10の比率に含有する水溶液を調製し、次いでその水溶液中に存在する陽イオンを除去して1〜3nmの一次粒子径を有するシリカ−酸化第二スズ複合体コロイド粒子又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子の水性ゾルを調製し、更に0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物を添加することにより、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルを得る工程、
(b)工程:4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと、(a)工程で得られた水性ゾルとを、(A)/(B‘)の質量比で1〜50の範囲に混合して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)との質量比が(A)/(B‘)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを得る工程、
(c)工程:(b)工程で得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを陽イオン交換する工程、
(d)工程:(c)工程で得られた水性ゾルに、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)に対するアミン化合物のモル比としてM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)が0.001〜0.08のとなる量(但しMはアミン化合物)のアミン化合物を添加して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルを得る工程、
第12観点として、前記アミン化合物に第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる第11観点に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルの製造方法、
第13観点として、下記の(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程及び(e)工程を含む第4観点に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルの製造方法:
(a)工程:スズ酸アルカリ又はアンチモン酸アルカリとケイ酸アルカリとをシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比として0.1〜10の比率に含有する水溶液を調製し、次いでその水溶液中に存在する陽イオンを除去して1〜3nmの一次粒子径を有するシリカ−酸化第二スズ複合体コロイド粒子又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子の水性ゾルを調製し、更に0.10〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物を添加することにより、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.10〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルを得る工程、
(b)工程:4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと、(a)工程で得られた水性ゾルとを、(A)/(B‘)の質量比で1〜50の範囲に混合して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)との質量比が(A)/(B‘)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを得る工程、
(c)工程:(b)工程で得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを陽イオン交換する工程、
(d)工程:(c)工程で得られた水性ゾルに、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)に対するアミン化合物のモル比としてM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)が0.001〜0.08のとなる量(但しMはアミン化合物)のアミン化合物を添加して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルを得る工程、
(e)工程:(d)工程で得られた水性ゾルの分散媒を親水性有機溶媒に置換する工程、
第14観点として、前記アミン化合物に第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる第13観点に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルの製造方法、
第15観点として、前記親水性有機溶媒にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプパノール、ブタノール、イソブタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる第13観点に記載の親水性有機溶媒ゾルの製造方法、
第16観点として、下記の(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程(e)工程、(f)工程及び(g)工程を含む第6観点又は第7観点に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルの製造方法:
(a)工程:スズ酸アルカリ又はアンチモン酸アルカリとケイ酸アルカリとをシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比として0.1〜10の比率に含有する水溶液を調製し、次いでその水溶液中に存在する陽イオンを除去して1〜3nmの一次粒子径を有するシリカ−酸化第二スズ複合体コロイド粒子又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子の水性ゾルを調製し、更に0.10〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物を添加することにより、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.10〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルを得る工程、
(b)工程:4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと、(a)工程で得られた水性ゾルとを、(A)/(B‘)の質量比で1〜50の範囲に混合して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)との質量比が(A)/(B‘)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを得る工程、
(c)工程:(b)工程で得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを陽イオン交換する工程、
(d)工程:(c)工程で得られた水性ゾルに、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)に対するアミン化合物のモル比としてM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)が0.001〜0.08のとなる量(但しMはアミン化合物)のアミン化合物を添加して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルを得る工程、
(e)工程:(d)工程で得られた水性ゾルの分散媒を親水性有機溶媒に置換する工程、
(f)工程:(e)工程で得られた親水性有機溶媒ゾルに、一般式(I)
(R1a(R3bSi(OR24-(a+b) (I)
(但し、R1及びR3は、それぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基若しくはシアノ基を有する有機基で且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R2は炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbはそれぞれ0、1又は2の整数であり、a+bは0、1又は2の整数である。)及び/又は一般式(II)
〔(R4cSi(OX)3-c2Y (II)
(但し、R4は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xは炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基を示し、Yはメチレン基又は炭素数2〜20のアルキレン基を示し、cは0又は1の整数である。)で表される珪素化合物若しくはそれらの加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種である有機珪素化合物を変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)に対する質量比が0.01〜0.50となるように添加して、有機珪素化合物が変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面に結合した表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の親水性溶媒ゾルを得る工程、
(g)工程:(e)工程で得られた表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の親水性溶媒ゾルの分散媒を0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒に置換する工程、
第17観点として、アミン化合物に第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる第16観点に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルの製造方法、
第18観点として、前記親水性有機溶媒にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプパノール、ブタノール、イソブタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用い、前記0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒にメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタクリル酸メチル、ジイソプロピルエーテル、トルエン、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(4GO)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる第16観点又は第17観点に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルの製造方法、である。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)は耐光性に優れており、無機系紫外線吸収剤として酸化第二セリウムの優れた特性を発揮するものである。
【0012】
また、前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾル又は親水性有機溶媒ゾルは各種親水性樹脂との相溶性が良好であり、耐光性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0013】
また、前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面に有機珪素化合物が結合した表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルは、各種モノマー又は樹脂との相溶性が良好であり、各種モノマーに紫外線吸収能を付与し、また耐光性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明の好適な実施形態について説明する。
【0015】
本願発明は、4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)である。この変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の一次粒子径は5〜70nmであり、透過型電子顕微鏡観察により測定することができる。
【0016】
本願発明において、核となる酸化第二セリウムコロイド粒子(A)は、その一次粒子径が4〜60nmである。一次粒子径は透過型電子顕微鏡観察により測定することができる。この核となる酸化第二セリウムコロイド粒子(A)は、公知の方法で製造することができ、例えば、不活性ガス雰囲気下に水性媒体中でセリウム塩とアルカリ性物質とを反応させて水酸化セリウム懸濁液を生成した後、該懸濁液に大気圧下で10〜95℃の温度で酸素又は酸素を含有するガスを吹き込み酸化させることにより酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾルとして得る方法、又は第4級アンモニウムの炭酸塩を含む水性媒体中で炭酸セリウムと過酸化水素を反応させ、60〜110℃で加熱する工程と、110〜250℃で水熱処理を行う工程を経ることにより、酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾルとして得る方法が挙げられる。本願発明で用いられる酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルとしては、pH3〜11の範囲で用いることができ、好ましくはpH8〜11、より好ましくはpH9〜10である。
【0017】
核となる酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の表面を被覆するシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)は、その一次粒子径が透過型電子顕微鏡観察において1〜3nmであり、且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物が結合したものである。
【0018】
前記シリカ系複合コロイド粒子(B)は、その前駆体として、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルが作製され、この水性ゾルが前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルに添加され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の表面に前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)が被覆された後に、陽イオン交換により安定化のためのアミン化合物が除去され、続いて前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の安定化に適したアミン化合物をその表面に結合させることにより得られるものである。
【0019】
前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の安定化に適したアミン化合物の量は、M/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)として0.001〜0.08である。前記シリカ系複合コロイド粒子(B)に結合するアミン化合物の量が前記M/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比として0.001未満では、本願発明の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾル又は0.05〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルの分散安定性が不十分となるため好ましくない。また、前記M/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比として0.08を超える場合は、前記表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.05〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルを得る際に、一般式(I)及び/又は一般式(II)で表される有機珪素化合物を前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面への結合の妨げになるため好ましくない。
【0020】
前記シリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルは、公知の方法で製造することができ(例えば特公昭50−40119号など)、例えば、ケイ酸アルカリ水溶液とスズ酸アルカリ水溶液又はアンチモン酸アルカリ水溶液とを混合した後、陽イオン交換樹脂により陽イオンを除去し、その後アミン化合物を添加することにより得ることができる。
【0021】
アミン化合物は、シリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の表面に吸着するものの他、水性ゾルの分散媒中に溶解して存在することにより、該コロイド粒子(B‘)の分散安定性を保持させるものと推定される。
【0022】
上記珪酸アルカリ水溶液とスズ酸アルカリ水溶液又はアンチモン酸アルカリ水溶液とを混合した後、陽イオン交換樹脂により陽イオンを除去して得られるコロイド溶液は、アミン化合物を加えない又は上記0.1未満のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比のアミン化合物の添加では、数時間の放置により安定性を失いゲル化してしまうため、使用することができない。上記0.1〜1.0のM/(SnO2+SiO2)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物の添加は、上記二酸化珪素−酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B‘)の水性ゾルの分散安定性の保持に十分な量である。M/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比が1.0を超えてもアミン化合物が過剰に存在するだけで効率的ではない。
【0023】
珪酸アルカリ水溶液としては珪酸ナトリウム、珪酸カリウムを用いることができる。
【0024】
スズ酸アルカリ水溶液としては、好ましくはスズ酸ナトリウム水溶液を用いることができる。アンチモン酸アルカリとしては、好ましくはアンチモン酸カリウムを用いることができる。
【0025】
アミン化合物としては、第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。第一アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、アミルアミン、アリルアミン、ヘキシルアミン、ヘピチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン及びシクロヘキシルアミンが挙げられる。第二アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ジアミルアミン及びジアリルアミンが挙げられる。第三アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン及びトリアリルアミンが挙げられる。
(変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾル)
本願発明の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルは、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと、前記1〜3nmの一次粒子径を有し、且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.10〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルとを、(A)/(B‘)の質量比で1〜50の範囲に混合して得られる変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを得た後、該水性ゾルを陽イオン交換によりアミン化合物を除去そて、更に前記シリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)に対するアミン化合物のモル比としてM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比が0.001〜0.08となる量(但しMはアミン化合物)のアミン化合物を添加することにより得ることができる。
【0026】
該変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の一次粒子径は5〜70nmであり、透過型電子顕微鏡観察により測定することができる。また、動的光散乱法による平均粒子径は10〜100nmであり、ゾルの固形分濃度は、全金属酸化物濃度として0.5〜50質量%、好ましくは5〜50質量%である。ゾルの固形分濃度は必要に応じて50質量%よりも高くすることができる。
【0027】
本願発明の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルは、前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルの分散媒を親水性有機溶媒に置換したものである。該変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルは、動的光散乱法による平均粒子径が10〜100nmであり、ゾルの固形分濃度は、全金属酸化物濃度として0.5〜50質量%、好ましくは5〜50質量%である。ゾルの固形分濃度は必要に応じて50質量%よりも高くすることができる。
【0028】
本願発明に用いられる親水性有機溶媒とは、水と均一に混和する有機溶媒、及び20℃において水と有機溶媒とを混合して二相を形成させたときの有機相中の水の含有率(この含有率を「有機溶媒の水溶解度」という)が12質量%を超える有機溶媒を指す。親水性溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール(水溶解度20質量%)、イソブタノール(水溶解度44.1質量%)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールが挙げられる。
【0029】
本願発明の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルは、前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルに一般式(I)及び又は一般式(II)で表される珪素化合物若しくはそれらの加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機珪素化合物を変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)に対する質量比が0.01〜0.50となるように添加して該有機珪素化合物が変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面に結合された酸化第二セリウムコロイド粒子が0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒に分散したゾルである。
【0030】
本願発明に用いられる有機珪素化合物は、以下の一般式(I)
(R1a(R3bSi(OR24-(a+b) (I)
(但し、R1及びR3は、それぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基若しくはシアノ基を有する有機基で且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R2は炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbはそれぞれ0、1又は2の整数であり、a+bは0、1又は2の整数である。)及び/又は一般式(II)
〔(R4cSi(OX)3-c2Y (II)
(但し、R4は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xは炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基を示し、Yはメチレン基又は炭素数2〜20のアルキレン基を示し、cは0又は1の整数である。)で表される有機珪素化合物、又はそれらの加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0031】
一般式(I)
(Ra(R3bSi(OR24-(a+b) (I)
においては、R1とR3が同一の有機基又は異なる有機基である場合や、aとbとが同一の整数又は異なる整数である場合の有機珪素化合物を含む。
【0032】
上記一般式(I)で示される有機珪素化合物は、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアミロキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリベンジルオキシシラン、メチルトリフェネチルオキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、αーグリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルエチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3、3、3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
本願発明において用いられる一般式(I)で表される有機珪素化合物としては、特にメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン及びこれらの加水分解物が好ましい。
【0034】
本願発明に用いられる一般式(II)
〔(R4cSi(OX)3-c2Y (II)
においては、例えば、メチレンビスメチルジメトキシシラン、エチレンビスエチルジメトキシシラン、プロピレンビスエチルジエトキシシラン、ブチレンビスメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
また、一般式(II)の有機珪素化合物の加水分解物は、式中のXの一部又は全部が水素原子に置換された化合物である。これら一般式(II)の有機珪素化合物の加水分解物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
本願発明に用いられるアミン化合物は、第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。第一アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、アミルアミン、アリルアミン、ヘキシルアミン、ヘピチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン及びシクロヘキシルアミンが挙げられる。第二アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ジアミルアミン及びジアリルアミンが挙げられる。第三アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン及びトリアリルアミンが挙げられる。
【0037】
本願発明において0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒とは、水と均一に混合せず、20℃において水と混合して二相を形成させたときの有機相中の水の含有率が0.002〜12質量%となるものである。
【0038】
例えばメチルエチルケトン(9.9質量%)、メチルイソブチルケトン(1.8質量%)、シクロヘキサノン(8質量%)、酢酸エチル(2.9質量%)、酢酸ブチル(1.9質量%)、メタクリル酸メチル(1.1質量%)、ジイソプロピルエーテル(0.55質量%)、ジブチルエーテル(0.2質量%)、トルエン(0.05質量%)、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)(0.0025質量%)、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート(3GH)(0.0054質量%)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)(0.0079質量%)、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(4GO)(0.038質量%)が挙げられる。
【0039】
本願発明の変性第二酸化セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルは、下記の(a)工程、(b)工程、(c)工程及び(d)工程を方法により製造することができる。
(a)工程、:スズ酸アルカリ又はアンチモン酸アルカリとケイ酸アルカリとをシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比として0.1〜10の比率に含有する水溶液を調製し、次いでその水溶液中に存在する陽イオンを除去して1〜3nmの一次粒子径を有するシリカ−酸化第二スズ複合体コロイド粒子又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子の水性ゾルを調製し、更に0.10〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物を添加することにより、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルを得る工程、
(b)工程:4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと、(a)工程で得られた水性ゾルとを、(A)/(B‘)の質量比で1〜50の範囲に混合して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)との質量比が(A)/(B‘)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを得る工程、
(c)工程:(b)工程で得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを陽イオン交換する工程、
(d)工程:(c)工程で得られた水性ゾルに、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)に対するアミン化合物のモル比としてM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)が0.001〜0.08のとなる量(但しMはアミン化合物)のアミン化合物を添加して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルを得る工程。
【0040】
(a)工程においてスズ酸アルカリとしては、スズ酸ナトリウム又はスズ酸カリウムを用いることができ、好ましくはスズ酸ナトリウムである。また、アンチモン酸アルカリとしては、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム又はアンチモン酸アミンを用いることができ、好ましくはアンチモン酸ナトリウムである。
【0041】
珪酸アルカリとしては珪酸ナトリウム、珪酸カリウムを用いることができる。
【0042】
スズ酸アルカリ又はアンチモン酸アルカリと珪酸アルカリとは、シリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比として0.1〜10の比率に含有する水溶液として調製され、次いでその水溶液中に存在する陽イオンを陽イオン交換樹脂により除去する。
【0043】
スズ酸アルカリ又はアンチモン酸アルカリと珪酸アルカリとは、シリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10の比率となるよう計量されて水に溶解され調製される。好ましい水溶液の固形分濃度は(シリカ+酸化第二スズ)又は(シリカ+五酸化アンチモン)として1〜12質量%である。
【0044】
調製された水溶液は陽イオン交換樹脂を用いて陽イオンが除去される。陽イオン交換樹脂としては水素型の強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく、例えばアンバーライト(登録商標)120B等をカラムに充填して用いることができる。この陽イオン交換を行うことにより、珪酸成分とスズ酸成分又はアンチモン酸成分とが重合し、1〜3nmの一次粒子径を有するシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子が生成する。
【0045】
このシリカ系複合コロイド粒子は安定性に乏しく、放置すると数時間でゲル化するため、陽イオン交換後は速やかにアミン化合物を添加して安定化させて、シリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルとすることが必要である。得られる水性ゾルは(シリカ+酸化第二スズ)又は(シリカ+五酸化アンチモン)として0.1〜10質量%である。
【0046】
前記陽イオン交換により生成するシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子の安定化には、M/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比として0.1〜1.0となる量のアミン化合物の添加が適切である。0.1未満のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比のアミン化合物の添加では、数時間の放置により安定性を失いゲル化するため好ましくない。また、M/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比が1.0を超えてもアミン化合物が過剰に存在するだけで効率的ではない。
【0047】
次いで(b)工程において、4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと(a)工程で得られたシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルとを、前記酸化物コロイド粒子(A)と前記二酸化珪素−酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B‘)との質量比(A)/(B‘)として1〜50の比で混合することにより、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)が前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)により被覆された変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C’)の水性ゾルを得ることができる。
【0048】
用いられるアミン化合物としては、第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。第一アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、アミルアミン、アリルアミン、ヘキシルアミン、ヘピチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン及びシクロヘキシルアミンが挙げられる。第二アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ジアミルアミン及びジアリルアミンが挙げられる。第三アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン及びトリアリルアミンが挙げられる。
【0049】
前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルの固形分濃度は0.5〜30質量%であることが好ましい。
【0050】
前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルは、pH3〜11の範囲で用いることができ、好ましくはpH8〜11、より好ましくはpH9〜10である。
【0051】
該水性ゾルのpHは必要に応じてアルカリ成分により調整することができ、用いられるアルカリ成分としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、第4級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。
【0052】
前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと(a)工程で得られた前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルとの混合は、攪拌下で行うことが好ましい。
【0053】
前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)との混合比は、質量比(A)/(B‘)として1〜50が好ましく、50を超えるとシリカ系複合コロイド粒子(B‘)による核となる酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の被覆を十分に行うことができず、安定な親水性有機溶媒ゾル又は0.05〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルを得ることができない。また、前記質量比は1で十分であり、1未満の場合はシリカ系複合コロイド粒子(B‘)が過剰となり効率的ではない。
【0054】
次いで(c)工程において(b)工程で得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルの陽イオン交換を行う。陽イオン交換は水素型の強酸性陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
次いで(d)工程では、(c)工程で得られた水性ゾルに、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)に対するアミン化合物のモル比としてM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)が0.001〜0.08となる量(但しMはアミン化合物)のアミン化合物を添加する。添加するアミン化合物の量が前記M/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比として0.001未満では、本願発明の親水性有機溶媒ゾルの分散安定性が不十分となるため好ましくない。
【0055】
得られる変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルは、透過型電子顕微鏡観察により測定することができる一次粒子径として5〜70nmであり、また、動的光散乱法による平均粒子径は10〜100nmである。また、水性ゾルの固形分濃度は全金属酸化物濃度として0.5〜50質量%であり、好ましくは5〜50質量%である。ゾルの固形分濃度は必要に応じて50質量%よりも高くすることができる。
【0056】
本願発明の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルは、前記(a)工程、(b)工程、(c)工程及び(d)工程に続いて以下の(e)工程を行うことにより製造することができる。
(e)工程:(d)工程で得られた水性ゾルの分散媒を親水性有機溶媒に置換する工程。
【0057】
用いられる親水性有機溶媒は、水と均一に混和する有機溶媒、及び20℃において水と有機溶媒とを混合して二相を形成させたときの有機相中の水の含有率(この含有率を「有機溶媒の水溶解度」という)が12質量%を超える有機溶媒であり、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール(水溶解度20質量%)、イソブタノール(水溶解度44.1質量%)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールが挙げられる。
【0058】
得られる変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルは、透過型電子顕微鏡観察により測定することができる一次粒子径として5〜70nmであり、また、動的光散乱法による平均粒子径は10〜100nmである。また、親水性有機溶媒ゾルの固形分濃度は全金属酸化物濃度として0.5〜50質量%であり、好ましくは5〜50質量%である。ゾルの固形分濃度は必要に応じて50質量%よりも高くすることができる。
【0059】
本願発明の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルは前記(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程(e)工程に続いて以下の(f)工程及び(g)工程を行うことにより製造することができる。
(f)工程:(e)工程で得られた親水性有機溶媒ゾルに、一般式(I)
(R1a(R3bSi(OR24-(a+b) (I)
(但し、R1及びR3は、それぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基若しくはシアノ基を有する有機基で且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R2は炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbはそれぞれ0、1又は2の整数であり、a+bは0、1又は2の整数である。)及び/又は一般式(II)
〔(R4cSi(OX)3-c2Y (II)
(但し、R4は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xは炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基を示し、Yはメチレン基又は炭素数2〜20のアルキレン基を示し、cは0又は1の整数である。)で表される珪素化合物若しくはそれらの加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種である有機珪素化合物を変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)に対する質量比が0.01〜0.50となるように添加して、有機珪素化合物が変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面に結合した表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の親水性溶媒ゾルを得る工程、
(g)工程:(e)工程で得られた表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の親水性溶媒ゾルの分散媒を0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒に置換する工程。
【0060】
(f)工程に用いられる前記一般式(I)及び/又は一般式(II)で表される有機珪素化合物の例示は上述の通りであり、(e)工程で得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルに前記一般式(I)及び又は一般式(II)で表される珪素化合物若しくはそれらの加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種である有機珪素化合物を添加して熟成することにより、前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面に前記有機珪素化合物が結合される。
【0061】
前記一般式(I)及び/又は一般式(II)で表される有機珪素化合物の加水分解には、前記有機珪素化合物1モルに対して1〜4モルの水が必要である。この必要な水は、あらかじめ親水性有機溶媒分散ゾルに含有させてもよく、また有機珪素化合物の添加後に加えてもよい。
【0062】
また有機珪素化合物は、予め加水分解を行ったものを添加してもよい。上記有機珪素化合物の加水分解物は、この有機珪素化合物に水又は所望により塩酸水溶液、硫酸水溶液若しくは酢酸水溶液の酸性水溶液を添加し、攪拌することにより得ることができる。
【0063】
前記有機珪素化合物が添加された後は熟成が行われる。熟成温度は常温から用いられる0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒の沸点の範囲で行うことができ、前記疎水性有機溶媒の沸点付近で行う方が有機珪素化合物のコロイド粒子への結合率が高くなり好ましい。
【0064】
上記の熟成は、大気圧下で行うことができ、還流下で行うことが好ましい。
【0065】
用いられる有機珪素化合物は、特にメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン及びこれらの加水分解物が好ましい。また、メチレンビスメチルジメトキシシラン、エチレンビスエチルジメトキシシラン、プロピレンビスエチルジエトキシシラン、ブチレンビスメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0066】
次いで(g)工程において(e)工程で得られた表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の親水性溶媒ゾルの分散媒を0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒に置換する。
【0067】
溶媒置換は公知の方法で行うことができ、常圧下又は減圧下における蒸発置換法、限外濾過膜法、溶媒抽出法等である。
【0068】
例えば蒸留法の場合、分散媒を親水性有機溶媒から0.05〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒に置換する際のゾルの温度は室温から0.05〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒の沸点の範囲で行われる。溶媒置換はゾル中の親水性溶媒濃度が2質量%未満となるまで行われる。
【0069】
溶媒置換を効率よく行うため、(e)工程で得られた親水性有機溶媒ゾルは、含まれる表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の濃度を5〜70質量%、又は10〜50質量%の範囲で予め濃縮しておくことが好ましい。ゾルの濃縮は、加熱蒸発法、限外濾過法等の公知の方法を用いることができる。
【0070】
(g)工程で得られるゾルの全金属酸化物濃度は、表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の全金属酸化物濃度として1〜70質量%であり、又は5〜60質量%である。また、得られるゾルは透過型電子顕微鏡観察により測定することができる一次粒子径として5〜70nmであり、また、動的光散乱法による平均粒子径は10〜100nmである。
【実施例】
【0071】
以下に本願発明の実施例を示す。尚、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。物性の測定方法は以下に示す。
〔透過型電子顕微鏡観察〕
透過型電子顕微鏡JEM−1010(日本電子株式会社製)を用いて加速電圧100kvにてコロイド粒子の一次粒子径を観察した。
観察は、ゾルの希釈液をカーボン支持膜に担持して行った。
〔動的光散乱法による平均粒子径〕
ゾルを分散溶媒で希釈し、溶媒のパラメーターを用いてサブミクロン粒子アナライザー N5(ベックマン・コールター社製)にて測定し、キュムラント法にて演算することで平均粒子径を得た。動的光散乱法ではゾル中の粒子の平均粒子径が観測され、粒子同士の凝集があるときはそれらの凝集粒子の平均粒子径が観測される。
〔比重〕浮き秤法(液温25℃)にて求めた。
〔粘度〕B型粘度計(液温25℃)にて求めた。
〔水分〕カールフィッシャー滴定法にて求めた。
【0072】
製造例1
撹拌翼を備えた1m3の圧力反応装置に、炭酸水素テトラメチルアンモニウム水溶液(多摩化学工業(株)製、水酸化テトラメチルアンモニウムに換算して42.0質量%を含有する。)208.2kgと純水37.5kgを投入した。この水溶液を撹拌しながら、炭酸セリウム粉末(AMR International Corp.製、CeOとして50.94質量%を含有する。)を水溶液中に徐々に添加し、合計で54.06kg投入した。添加終了後、内容物を50℃に昇温し、温度を保ちながら7質量%の過酸化水素水388.6kgを5時間かけて投入した。次いで、内容物を102℃に昇温して4時間加熱熟成した後、145℃で6時間の水熱処理を行った。この水熱処理後に得られたものは、スラリー状であった。水熱処理後のスラリーを、限外ろ過装置を使用して、純水を徐々に添加しながら洗浄すると解膠してゾルとなった。得られたゾルを引き続き限外ろ過装置で洗浄及び濃縮を行い、固形分5.18質量%、pH9.8、電導度780μS/cm、動的光散乱法による平均粒子径61nmの酸化第二セリウム水性ゾル489.6kgを得た。この酸化第二セリウムゾル5kgを分取して、超音波ホモジナイザー(UIP2000)で分散処理を行い、次いで限外ろ過装置を使用して、純水を徐々に添加しながら洗浄することにより、固形分5.15質量%、pH9.3、電導度140μS/cm、動的光散乱法による平均粒子径43nm、透過型電子顕微鏡観察による一次粒子径10nmの酸化第二セリウム水性ゾル5kgを得た。
【0073】
製造例2
JIS3号珪酸ナトリウム(SiO2として29.3質量%含有、富士化学(株)製)76.8gを純水766.8gで希釈した水溶液に、スズ酸ナトリウムNaSnO3・H2O(SnO2として55.4質量%含有、昭和化工(株)製)13.5gを溶解した。得られた水溶液を水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR−120B)を充填したカラムに通すことにより、酸化第二スズ−シリカ複合コロイド粒子の酸性水性ゾル(pH2.4、SnO2として0.87質量%、SiO2として2.62質量%を含有、SiO2/SnO2質量比3.0)860gを得た。次いで得られた酸性水性ゾルにジイソプロピルアミン9.0gを添加した。得られたゾルは酸化第二スズ−シリカ複合コロイド粒子のアルカリ性水性ゾルであり、ジイソプロピルアミン/(シリカ+酸化第二スズ)のモル比は0.21、pH10.3であった。該水性ゾルは、透過型電子顕微鏡により3nm以下の1次粒子径のコロイド粒子が観察された。
【0074】
製造例3
珪酸カリウム水溶液(SiO2として19.9質量%含有、日産化学工業(株)製)35.6kgを純水330.0kgにて希釈を行った。この希釈液に48%水酸化カリウム水溶液18.1kgと三酸化アンチモン(三国精錬(株)製)3.2kgを添加し、撹拌下で更に35質量%過酸化水素水2.2kgを添加した後、93℃で1時間反応させることにより、珪酸アンチモン酸カリウムの水溶液を得た。得られた珪酸アンチモン酸カリウム水溶液542.6gを純水207.4gで希釈し、水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B)を充填したカラムに通液することにより、五酸化アンチモン−シリカ複合コロイド粒子の水性ゾル(pH2.1、Sb25として0.66質量%、SiO2として1.30質量%を含有、SiO2/Sb25質量比2.0)754gを得た。次いで得られた水性ゾルにジイソプロピルアミンを4.5g添加した。得られたゾルは五酸化アンチモン−シリカ複合コロイド粒子のアルカリ性水性ゾルであり、ジイソプロピルアミン/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比は0.25、pH10.3であった。該水性ゾルは、透過型電子顕微鏡により3nm以下の1次粒子径のコロイド粒子が観察された。
【0075】
製造例4
JIS3号珪酸ナトリウム(SiO2として29.3質量%含有、富士化学(株)製)34.1gを純水251.4gで希釈した。得られた水溶液を水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B)を充填したカラムに通し、活性珪酸水溶液(pH3.1、SiO2として3.5質量%を含有)290gを得た。次いでこの活性珪酸水溶液にジイソプロピルアミン3.0gを添加した。得られた水溶液はアルカリ性の珪酸オリゴマーを含む水溶液であり、ジイソプロピルアミン/シリカのモル比は0.18、pH10.2であった。
【0076】
実施例1
製造例1で調製した酸化第二セリウム水性ゾル2330gに純水336.7gを加えた固形分濃度4.5質量%の酸化第二セリウム水性ゾルに、製造例2で調製したアルカリ性の酸化第二スズ−シリカコロイド粒子のアルカリ性水性ゾル869gを添加し、十分に撹拌した。次いで95℃で3時間加熱して、酸化第二スズ−シリカ複合コロイド粒子で被覆された変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾル3404gを得た。得られたゾルの全金属酸化物濃度は4.4質量%、pHは8.6であった。得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾルを水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B)を充填したカラムに通し、変性酸化第二セリウムコロイド粒子の酸性水性ゾル3421gを得た。得られたゾルの全金属酸化物濃度は4.4質量%、pHは2.7であった。
【0077】
次いで、該変性酸化第二セリウムコロイド粒子の酸性水性ゾルにジイソプロピルアミンを0.55g添加し、変性酸化第二セリウムコロイド粒子の表面にジイソブチルアミンを結合させた。このときのゾルのジイソプロピルアミン/(シリカ+酸化第二スズ)のモル比は0.013であり、pHは3.5であった。次いで、得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子の酸性水性ゾルを限外ろ過装置を用いて濃縮し、全金属酸化物濃度20.5質量%、比重1.202、pH3.3、粘度5.5mPa・s、動的光散乱法による平均粒子径が46nmの酸性水性ゾル730gを得た。
【0078】
実施例2
製造例1で調製した酸化第二セリウム水性ゾル2330gに純水336.7gを加えた固形分濃度4.5質量%の酸化第二セリウム水性ゾルに、製造例2で調製したアルカリ性の酸化第二スズ−シリカコロイド粒子のアルカリ性水性ゾル869gを添加し、十分に撹拌した。次いで95℃で3時間加熱して、酸化第二スズ−シリカ複合コロイド粒子で被覆された変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾル3404gを得た。得られたゾルの全金属酸化物濃度は4.4質量%、pHは8.6であった。得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾルを水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B)を充填したカラムに通し、変性酸化第二セリウムコロイド粒子の酸性水性ゾル3421gを得た。得られたゾルの全金属酸化物濃度は4.4質量%、pHは2.7であった。
【0079】
次いで、該変性酸化第二セリウムコロイド粒子の酸性水性ゾルにジイソブチルアミンを0.7g添加し、変性酸化第二セリウムコロイド粒子の表面にジイソブチルアミンを結合させた。このときのゾルのジイソブチルアミン/(シリカ+酸化第二スズ)のモル比は0.013であり、pHは3.5であった。次いで得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子の酸性水性ゾルを限外ろ過装置を用いて濃縮し、全金属酸化物濃度16.9質量%まで濃縮した。この濃縮された水性ゾルをナス型フラスコ付きエバポレータに投入し、該ゾルにメタノールを添加しながら100Torr減圧下で水を留去することにより、ジイソブチルアミンがその表面に結合した変性酸化第二セリウムコロイド粒子のメタノールゾルを得た。得られたメタノールゾルは、全金属酸化物濃度20.5質量%、比重0.966、pH3.6(ゾルと同質量の水で希釈)、粘度3.5mPa・s、水分1.0質量%、動的光散乱法による平均粒子径は55nmであった。
【0080】
実施例3
実施例1で得られたメタノールゾル244gにメチルトリメトキシシラン(信越シリコーン製 品名:LS−530)を5.0g添加し、還留加熱を5時間行うことでシリル化を行い、メチルジメトキシシリル基を変性酸化第二セリウムコロイド粒子の表面に結合させた。次いでエバポレータを用いて140Torrの減圧下でメチルエチルケトンを添加しながらメタノールを留去することにより、メタノールをメチルエチルケトンに置換して、メチルジメトキシシリル基が結合した表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子のメチルエチルケトンゾルが得られた。得られたメチルエチルケトンゾルは、全金属酸化物濃度20.9質量%、比重0.988、粘度2.6mPa・s、動的光散乱法による平均粒子径は48nmであった。透過型電子顕微鏡による観察では、一次粒子径が12nmであった。
【0081】
実施例4
メチルトリメトキシシラン5.0gの代わりにフェニルトリメトキシシラン(信越シリコーン製 品名:KBM−103)3.6gを用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子のメチルエチルケトンゾルを得た。得られたメチルエチルケトンゾルは、全金属酸化物濃度20.5質量%、比重0.984、粘度3.0mPa・s、動的光散乱法による平均粒子径は56nmであった。透過型電子顕微鏡による観察では、一次粒子径が12nmであった。
【0082】
実施例5
製造例1で調製した酸化第二セリウム水性ゾル1165gに純水168.3gを加えた固形分濃度4.5質量%の酸化第二セリウム水性ゾルに、製造例3で調製したアルカリ性の五酸化アンチモン−シリカ複合コロイド粒子の水性ゾル754gを添加し、十分に撹拌した。次いで95℃で3時間加熱して、五酸化アンチモン−シリカ複合コロイド粒子で被覆された変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾル1926gを得た。得られたゾルの全金属酸化物濃度は3.9質量%、pHは8.0であった。次いで、得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾルを水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B)を充填したカラムに通し、変性酸化第二セリウムコロイド粒子の酸性水性ゾル1939gを得た。得られたゾルの全金属酸化物濃度は3.8質量%、pHは2.6であった。次いで、該変性酸化第二セリウムコロイド粒子の酸性水性ゾルにジイソブチルアミンを1.5g添加し、変性酸化第二セリウムコロイド粒子の表面にジイソブチルアミンを結合させた。このときのゾルのpHは3.7であり、ジイソブチルアミン/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比は0.065であった。次いで得られたゾルを限外ろ過装置を用いて濃縮し、全金属酸化物濃度20.5質量%まで濃縮した。この濃縮されたゾルは全金属酸化物濃度20.5質量%、比重1.208、pH3.5、粘度6.10mPa・s、動的光散乱法による平均粒子径が43nmであった。
【0083】
比較例1
製造例1で得られた酸化第二セリウム水性ゾル776.7gに純水112.2gを加えた固形分濃度4.5質量%の酸化第二セリウム水性ゾルに、製造例4で調製したアルカリ性の珪酸オリゴマーを含む水溶液290gを添加し、十分に撹拌した。次いで95℃で3時間加熱熟成して、シリカとそのオリゴマーで被覆された変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾル1165gを得た。次いで、得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾルを水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B)を充填したカラムに通し、酸性の変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾル1200gを得た。得られたゾルの全金属酸化物濃度は4.1質量%、pHは8.8であった。得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子の水性ゾルを限外ろ過装置を用いて濃縮し、全金属酸化物濃度20.5質量%、比重1.196、pH2.7、粘度6.5mPa・s、動的光散乱法による平均粒子径が49nmの水性ゾル240gを得たが、経時的に増粘しゲル化した。
【0084】
比較例2
酸化第二セリウムコロイド粒子の酸性水性ゾルに対してジイソブチルアミンを添加しないこと以外は実施例2と同様にしてメタノール置換を行ったが、メタノールに置換する途中でゾルがゲル化したため、メタノールゾルを得ることができなかった。
【0085】
比較例3
ジイソブチルアミンがその表面に結合した変性酸化第二セリウムコロイド粒子のメタノールゾルに対してメチルトリメトキシシランを添加しないこと以外は実施例3と同様に行ったが、メチルエチルケトンに置換する途中でゾルがゲル化したため、メチルエチルケトンゾルを得ることができなかった。
〔評価方法〕
得られたゾルを以下の方法で評価した。
(1)コーティング組成物の調製
水性ゾルはポリエステルエマルジョンWB−630−25(センショウ化成製)と固形分比(全金属酸化物:バインダー)=1:1となるよう混合し、総固形分濃度が20質量%となるようにゾルの分散媒を添加して、コーティング組成物を調製した。また、有機溶媒ゾルはシリカ系バインダー(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン部分加水分解物とアルミニウムアセチルアセトネートとの混合物)の部分加水分解物と、固形分比(全金属酸化物:バインダー)=1:1となるよう混合し、総固形分濃度が20質量%となるようにゾルの分散媒を添加して、コーティング組成物を調製した。
(2)硬化膜の作製
コーティング組成物をガラス基材上に滴下し、300rpm×3秒、1800rpm×8秒の条件でスピンコーティングすることにより製膜した。次いでホットプレートを用いて80℃で10分間乾燥した後、電気炉を用いて150℃で2時間熱することにより、硬化膜を作製した。
(3)耐光性の評価
上記(1)で調製したコーティング組成物、及び上記(2)で作製した硬化膜に300Wの高圧水銀ランプ((株)ORC製作所製 HANDY UV300)で紫外線を照射し、耐光性を評価した。また、比較のために製造例1で得られる酸化第二セリウム水性ゾルを20質量%に濃縮したゾルも同様に評価を行った。
色差計((有)東京電色製、TC−1800MK−II型)を使用して色座標値を測定し、以下のHunterの色差式によって算出される色差値を耐光性の指標とした。
Hunterの色差式 ΔE=[(L−L+(a−a+(b−b1/2
但し、L、a、bは紫外線照射前の色座標値を示し、L、a、bは紫外線30分照射後の色座標値を示した。
コーティング組成物の評価結果を表1−1に、硬化膜の評価結果を表1−2に示した。変性酸化第二セリウムコロイド粒子のゾルはいずれも色差値の増大が抑制されており、特に酸化第二スズ−シリカ複合コロイド粒子で被覆された変性酸化第二セリウムコロイド粒子は耐光性に優れていた。
【0086】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0087】
本願発明の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)は、高い紫外線吸収能を有し、且つ化学的安定性を有した無機の紫外線吸収剤として、自動車用紫外線遮蔽硝子、日焼け防止化粧品、プラスチック用紫外線吸収コーティング組成物等への添加成分としての応用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)。
【請求項2】
前記アミン化合物が第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾル。
【請求項5】
親水性有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプパノール、ブタノール、イソブタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の親水性有機溶媒ゾル。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面に有機珪素化合物が結合した表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル。
【請求項7】
前記変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)に対する有機珪素化合物の質量比が0.01〜0.50である請求項6に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル。
【請求項8】
前記有機珪素化合物が一般式(I)
(R1a(R3bSi(OR24-(a+b) (I)
(但し、R1及びR3は、それぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基若しくはシアノ基を有する有機基で且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R2は炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbはそれぞれ0、1又は2の整数であり、a+bは0、1又は2の整数である。)及び/又は一般式(II)
〔(R4cSi(OX)3-c2Y (II)
(但し、R4は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xは炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基を示し、Yはメチレン基又は炭素数2〜20のアルキレン基を示し、cは0又は1の整数である。)で表される珪素化合物、若しくはそれらの加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6又は7に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル。
【請求項9】
前記0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒がケトン類、エステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類及びポリオキシアルキレンジカルボン酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6〜8のいずれか1項に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル。
【請求項10】
前記0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒がメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタクリル酸メチル、ジイソプロピルエーテル、トルエン、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(4GO)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6〜9のいずれか1項に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾル。
【請求項11】
下記の(a)工程、(b)工程、(c)工程及び(d)工程を含む請求項3に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルの製造方法:
(a)工程:スズ酸アルカリ又はアンチモン酸アルカリとケイ酸アルカリとをシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比として0.1〜10の比率に含有する水溶液を調製し、次いでその水溶液中に存在する陽イオンを除去して1〜3nmの一次粒子径を有するシリカ−酸化第二スズ複合体コロイド粒子又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子の水性ゾルを調製し、更に0.10〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物を添加することにより、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルを得る工程、
(b)工程:4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと、(a)工程で得られた水性ゾルとを、(A)/(B‘)の質量比で1〜50の範囲に混合して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)との質量比が(A)/(B‘)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを得る工程、
(c)工程:(b)工程で得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを陽イオン交換する工程、
(d)工程:(c)工程で得られた水性ゾルに、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)に対するアミン化合物のモル比としてM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)が0.001〜0.08となる量(但しMはアミン化合物)のアミン化合物を添加して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルを得る工程。
【請求項12】
前記アミン化合物に第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる請求項11に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルの製造方法。
【請求項13】
下記の(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程及び(e)工程を含む請求項4に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルの製造方法:
(a)工程:スズ酸アルカリ又はアンチモン酸アルカリとケイ酸アルカリとをシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比として0.1〜10の比率に含有する水溶液を調製し、次いでその水溶液中に存在する陽イオンを除去して1〜3nmの一次粒子径を有するシリカ−酸化第二スズ複合体コロイド粒子又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子の水性ゾルを調製し、更に0.10〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物を添加することにより、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルを得る工程、
(b)工程:4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと、(a)工程で得られた水性ゾルとを、(A)/(B‘)の質量比で1〜50の範囲に混合して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)との質量比が(A)/(B‘)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを得る工程、
(c)工程:(b)工程で得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを陽イオン交換する工程、
(d)工程:(c)工程で得られた水性ゾルに、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)に対するアミン化合物のモル比としてM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)が0.001〜0.08となる量(但しMはアミン化合物)のアミン化合物を添加して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルを得る工程、
(e)工程:(d)工程で得られた水性ゾルの分散媒を親水性有機溶媒に置換する工程。
【請求項14】
前記アミン化合物に第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる請求項13に記載の変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の親水性有機溶媒ゾルの製造方法。
【請求項15】
前記親水性有機溶媒にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプパノール、ブタノール、イソブタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる請求項13に記載の親水性有機溶媒ゾルの製造方法。
【請求項16】
下記の(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程(e)工程、(f)工程及び(g)工程を含む請求項6又は7に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルの製造方法:
(a)工程:スズ酸アルカリ又はアンチモン酸アルカリとケイ酸アルカリとをシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比として0.1〜10の比率に含有する水溶液を調製し、次いでその水溶液中に存在する陽イオンを除去して1〜3nmの一次粒子径を有するシリカ−酸化第二スズ複合体コロイド粒子又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子の水性ゾルを調製し、更に0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物を添加することにより、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.1〜1.0のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)のアミン化合物で安定化されたシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B‘)の水性ゾルを得る工程、
(b)工程:4〜60nmの一次粒子径を有する酸化第二セリウムコロイド粒子(A)の水性ゾルと、(a)工程で得られた水性ゾルとを、(A)/(B‘)の質量比で1〜50の範囲に混合して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)との質量比が(A)/(B‘)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを得る工程、
(c)工程:(b)工程で得られた変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C‘)の水性ゾルを陽イオン交換する工程、
(d)工程:(c)工程で得られた水性ゾルに、前記シリカ系複合コロイド粒子(B‘)に対するアミン化合物のモル比としてM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)が0.001〜0.08となる量(但しMはアミン化合物)のアミン化合物を添加して、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)を核として、その表面が、1〜3nmの一次粒子径を有し且つシリカ/酸化第二スズ又はシリカ/五酸化アンチモンの質量比が0.1〜10であって、0.001〜0.08のM/(シリカ+酸化第二スズ)又はM/(シリカ+五酸化アンチモン)のモル比(但しMはアミン化合物)でアミン化合物が結合したシリカ−酸化第二スズ又はシリカ−五酸化アンチモンのシリカ系複合コロイド粒子(B)で被覆され、前記酸化第二セリウムコロイド粒子(A)と前記シリカ系複合コロイド粒子(B)との質量比が(A)/(B)として1〜50である変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の水性ゾルを得る工程、
(e)工程:(d)工程で得られた水性ゾルの分散媒を親水性有機溶媒に置換する工程、
(f)工程:(e)工程で得られた親水性有機溶媒ゾルに、一般式(I)
(R1a(R3bSi(OR24-(a+b) (I)
(但し、R1及びR3は、それぞれアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルケニル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基若しくはシアノ基を有する有機基で且つSi−C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R2は炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシアルキル基又はアシル基であり、a及びbはそれぞれ0、1又は2の整数であり、a+bは0、1又は2の整数である。)及び/又は一般式(II)
〔(R4cSi(OX)3-c2Y (II)
(但し、R4は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Xは炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基を示し、Yはメチレン基又は炭素数2〜20のアルキレン基を示し、cは0又は1の整数である。)で表される珪素化合物若しくはそれらの加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種である有機珪素化合物を変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)に対する質量比が0.01〜0.50となるように添加して、有機珪素化合物が変性酸化第二セリウムコロイド粒子(C)の表面に結合した表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の親水性溶媒ゾルを得る工程、
(g)工程:(e)工程で得られた表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の親水性溶媒ゾルの分散媒を0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒に置換する工程。
【請求項17】
アミン化合物に第一アミン、第二アミン及び第三アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる請求項16に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルの製造方法。
【請求項18】
前記親水性有機溶媒にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプパノール、ブタノール、イソブタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を用い、前記0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒にメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタクリル酸メチル、ジイソプロピルエーテル、トルエン、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(4GO)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる請求項16又は17に記載の表面疎水化酸化第二セリウムコロイド粒子(D)の0.002〜12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒ゾルの製造方法。

【公開番号】特開2013−56780(P2013−56780A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9244(P2010−9244)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】