説明

外用貼付剤

【課題】皮膚に十分密着してはがれにくく、貼付感のよい(違和感のない)、かつ支持体の劣化を抑制できる等の製剤の性状安定性に優れる外用貼付剤の提供。
【解決手段】支持体と、この支持体上に積層された膏体層とを備え、前記支持体は、ポリウレタンフィルムであり、前記膏体層は、薬物、モノテルペン類、及び粘着剤を含有することを特徴とする外用貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用貼付剤に関し、より詳しくは、支持体と、薬物及び粘着剤を含有する膏体層とを備える外用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、支持体と、抗炎症薬等の薬物を含有する膏体層と、剥離ライナーとから順に構成された外用貼付剤が広く知られ、製造販売されている。一般的に外用貼付剤は、膏体層の含有基剤成分によって、概略、含水系製剤であるパップ剤と、非含水系製剤であるテープ剤とに分類される。外用貼付剤で使用されている支持体のほとんどは、不織布や編布(ニット)などの布基材である。
【0003】
一方、貼付時の目立ちにくさ等の観点から、支持体としてポリウレタンフィルムが用いられた貼付剤も知られている。例えば、特開2006−104174号公報(特許文献1)には、ウレタン樹脂層と繊維シート層とを積層してなる支持体と、含水性膏体とを備えた貼付剤が開示されている。特公平7−116023号公報(特許文献2)には、厚み40〜150μmのポリウレタンフィルムを支持体とし、薬物を含有するアクリル系粘着剤層が設けられた貼付剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2006−104174号公報
【特許文献2】 特公平7−116023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示されている貼付剤はパップ剤であって、テープ剤と比べて厚みがあることにより、曲げ伸ばしを繰り返すような膝や肘などの関節部に貼付する場合や、寝具や衣類との擦れが起こりうるような就寝中などに使用する場合に、貼付剤が皮膚に十分密着できずにはがれやすくなるなど、使用性の面で問題があった。特許文献2で開示されている貼付剤は、支持体としてある程度の厚みを有するポリウレタンフィルムを用いているため、貼付感(違和感)の観点で十分満足できないなどの問題があり、更なる改善が望まれていた。
【0006】
また、外用貼付剤は、膏体層中で抗炎症薬等の薬物を均一に含有させるため、場合によってはその薬物を溶解するための溶解剤を用いる必要がある。例えば、支持体にポリウレタンフィルムを用いる場合、その溶解剤を多量に用いれば、ポリウレタンフィルムが溶解したり変形したりする等の劣化の恐れがある。特に、フィルムが薄ければ薄いほどその劣化の恐れは顕著である。また、膏体層中に含まれる薬物等の影響によっても、ポリウレタンフィルムが少なからず劣化する恐れがある。製剤の性状安定性の観点で問題があり、更なる改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、皮膚に十分密着してはがれにくく、貼付感のよい(違和感のない)、かつ支持体の劣化を抑制できる等の製剤の性状安定性に優れる外用貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以上の目的を達成するために鋭意研究を行ったところ、支持体としてポリウレタンフィルムを用いること、そして、薬物、及び粘着剤を含有する膏体層に、モノテルペン類を配合することで、皮膚に十分密着してはがれにくく、貼付感のよい(違和感のない)、かつ支持体の劣化を抑制できる等の製剤の性状安定性に優れる外用貼付剤を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 支持体と、この支持体上に積層された膏体層とを備え、
前記支持体は、ポリウレタンフィルムであり、
前記膏体層は、薬物、モノテルペン類、及び粘着剤を含有することを特徴とする外用貼付剤。
(2) 前記支持体は、厚み5〜30μmのポリウレタンフィルムである(1)に記載の外用貼付剤。
(3) 前記支持体と前記膏体層との合計厚みは、10〜60μmである(1)又は(2)に記載の外用貼付剤。
(4) 前記粘着剤は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれかに記載の外用貼付剤。
(5) 前記粘着剤は、ゴム系粘着剤である(4)に記載の外用貼付剤。
(6) 前記ゴム系粘着剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体である(5)に記載の外用貼付剤。
(7) 前記薬物は、非ステロイド性抗炎症剤である(1)〜(6)のいずれかに記載の外用貼付剤。
(8) 前記非ステロイド性抗炎症剤は、フェルビナク、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、及びこれらの薬理学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1種である(7)に記載の外用貼付剤。
(9) 支持体と、この支持体上に積層された膏体層とを備え、
前記支持体は、厚み5〜30μmのポリウレタンフィルムであり、
前記支持体と前記膏体層との合計厚みは、10〜60μmであり、
前記膏体層は、薬物、l−メントール、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有し、
前記薬物は、フェルビナク、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、及びこれらの薬理学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする外用貼付剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、皮膚に十分密着してはがれにくく、貼付感のよい(違和感のない)、かつ支持体の劣化を抑制できる等の製剤の性状安定性に優れる外用貼付剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[外用貼付剤]
本発明の外用貼付剤は、皮膚に貼付するための医薬品、医薬部外品または化粧品として利用できる貼付剤であって、支持体と、この支持体上に積層された膏体層とを備える外用貼付剤である。一般的に、外用貼付剤は、膏体層の含有基剤成分によって、概略、含水系製剤であるパップ剤と、非含水系製剤であるテープ剤に分類できるが、本発明の外用貼付剤は、膏体層の厚みによる皮膚密着性及び貼付性の観点から、テープ剤であることが好ましい。
【0012】
[支持体]
本発明の支持体には、ポリウレタンフィルムが用いられる。ポリウレタンフィルムは、ジイソシアネートとポリオールとを反応させることによって生成されるポリウレタンエラストマーをフィルム状に成形したものであり、公知の製造方法により製造したものを用いることができる。ポリウレタンフィルムの厚みは、5〜30μmとすることが好ましい。5μmを下まわると、フィルムの製造が困難であったり、支持体として強度が不十分であるからであり、また、30μmを超えると、貼付感(違和感)の観点で十分満足できないからである。本発明の支持体に用いられるポリウレタンフィルムとしては、市販品を用いることができ、例えば、モビロンフィルム(商品名:日清紡ケミカル株式会社)、クランジール(商品名:倉敷紡績株式会社)が挙げられる。このようなウレタンフィルムを用いることで、皮膚に十分密着してはがれにくく、貼付感のよい(違和感のない)外用貼付剤を得ることができる。また、本発明の外用貼付剤は、防水性等の利便性を有し、簡単な入浴も可能となる。
【0013】
[キャリア層]
なお、本発明の外用貼付剤は、支持体の製膜性、貼付剤の取扱性、被着体への貼付性を向上させる目的で、支持体であるポリウレタンフィルムの片面上に、キャリア層などの付加的な層を設けることができる。この場合、「キャリア層/支持体/膏体層/ライナー」の積層構成を有する貼付剤として作成することができる。キャリア層は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレンなどの各種熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いて形成することが好ましい。各種フィルムは、紙にラミネートされた状態のものでもよい。これらのキャリア層は、ポリウレタンエラストマー層に比べて、厚みが厚いか、腰の強いものとすることが望ましい。キャリアの厚みは、適宜設定できるが、通常、10μm以上、好ましくは20μm以上であり、その上限値は500μm程度である。支持体と膏体層とが強固に接着しているため、キャリア層は、使用時に容易に剥離することができる。
【0014】
[膏体層]
本発明の膏体層は、薬物、モノテルペン類、及び粘着剤を含有する。
【0015】
[薬物]
本発明に用いる薬物としては、外用剤として使用できる薬物であれば、特に限定されない。例えば、フェルビナク、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、フルルビプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、ケトロラック、フェニルブタゾン、アセチルサリチル酸、フルフェナム酸、メフェナム酸、イブプロフェン、アンフェナク、フェンブフェン、またはこれらの薬理学的に許容できる塩である非ステロイド性抗炎症剤が挙げられる。また、その他の薬物として例えば、酢酸コルチゾン、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、塩酸イソチペンジル、クロルフェニラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、クロタミトン、グリチルリチン酸(及びその塩類)、グリチルレチン酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、カラミン、酸化亜鉛、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエトキシドデカン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、リドカイン、塩酸リドカイン、アンモニア水、トコフェロール、酢酸トコフェロール、またはパンテノールが挙げられる。好ましくは、前記非ステロイド性抗炎症剤であり、その中でもより好ましくは、フェルビナク、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、及びこれらの薬理学的に許容できる塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である。薬物の含有量は、特に限定されないが、一般的には膏体全体に対して0.1〜20重量%である。
【0016】
[モノテルペン類]
本発明に係る外用貼付剤は、膏体層にモノテルペン類が含有されている。モノテルペン類を配合することで、薬物及びその溶解剤等の影響によるポリウレタンフィルムの劣化を抑制することができ、さらに、膏体層中で薬物を均一に含有させることができる。すなわち、モノテルペン類を配合することで、薬物を溶解するための溶解剤の使用量を少なくすることができ、さらに、モノテルペン類が薬物の溶解補助剤としても使用可能となるため、ポリウレタンフィルムの劣化が抑制できると同時に、膏体層中の薬物等の析出化を抑制できる。このことにより、製剤の性状安定性に優れる外用貼付剤とすることができる。
【0017】
本発明に用いるモノテルペン類は、通常医薬品、医薬部外品、化粧品において用いられるモノテルペン類であれば特に制限されないが、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、オイゲノール、シネオール、チモール、ビサボロール、α−ピネン、またはリモネンを例示することができる。好ましくはメントールまたはカンフル、より好ましくはメントールである。これらのモノテルペン類は、天然品、合成品のいずれも利用することができ、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。なかでも、l−メントールが好ましい。これらのモノテルペン類は、モノテルペン類を含有する精油として外用貼付剤に使用することもでき、例えば、ユーカリ油、ハッカ油、チョウジ油、ケイヒ油、ペパーミント油、ミント油、ティーツリー油、カモミール油、ローズマリー油、レモン油、オレンジ油、タイム油、セージ油、クローブ油等を例示することができる。好ましくはユーカリ油、ハッカ油またはティーツリー油であり、より好ましくはユーカリ油またはハッカ油等として、外用貼付剤に使用してもよい。これらのモノテルペン類は1種又は2種以上組合わせて用いることもできる。モノテルペン類の含有量は、膏体全重量に対して通常0.001〜20重量%、好ましくは0.001〜10重量%、特に好ましくは0.01〜5重量%の範囲で用いることができる。
【0018】
[粘着剤]
本発明に用いる粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、合成ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、イソプレンゴム、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブテン等が挙げられる。アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体及び/又は前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他の官能性モノマーとの共重合体等が挙げられる。なお、本明細書においては、「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリル酸又はメタアクリル酸(メタクリル酸)という意味で使用される。したがって、例えば、前記した(メタ)アクリル酸エステルという用語は、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルという意味である。シリコーン系粘着剤としては、ポリジメチルシロキサンなどを主成分とするものが挙げられる。これらの粘着剤の中でも、性状、製造時のコスト、品質設計の容易さや、再現性等を考慮して、ゴム系粘着剤が好ましく、その中でもより好ましくは、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体である。これらの粘着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、粘着剤の配合量は、膏体層の形成および有効成分の皮膚への透過性を考慮して、膏体層の組成全体の重量を基準として10〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜40重量%である。
【0019】
なお、前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体としては、TR−2000、TR−2003、SIS−5002、5200(商品名:JSR株式会社)、クインタック3421、3520、3530、3570C(商品名:日本ゼオン株式会社)、クレイトンD−KX401CS、D−1107CP、D−1161JP、D−6117(商品名:JSRクレイトンエラストマー株式会社)、ソルプレン428(商品名:フィリップペトロリアム株式会社)等が挙げられ、1種又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0020】
[厚み]
本発明の支持体と膏体層との合計厚みは、10〜60μmとすることが好ましい。10μmを下まわると、支持体の厚みとの兼ね合いから、膏体層をうまく形成できない問題もあり、また、60μmを超えると、貼付感(違和感)の観点で十分満足できないからである。
【0021】
[任意成分]
また、本発明の貼付剤の膏体層には、任意成分として、薬物の溶解剤、経皮吸収促進剤、粘着付与剤、可塑剤、賦形剤、抗酸化剤、香料、着色料、水等を含有することができる。
【0022】
(薬物の溶解剤、経皮吸収促進剤)
本発明に用いられる薬物の溶解剤や経皮吸収促進剤としては、脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、クエン酸(無水クエン酸を含む)、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、乳酸、マレイン酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸等)等の有機酸、ポリエチレングリコール(マクロゴールともいう)(平均分子量は200〜30000)、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の脂肪酸エステル、カプリル酸モノグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル等の脂肪酸多価アルコールエステル、N−メチル−2−ピロリドン、クロタミトン等が挙げられる。これらの溶解剤や経皮吸収促進剤は、支持体であるポリウレタンフィルムの劣化に影響する恐れがあるため、できるだけ少ない含有量とすることが好ましい。例えば、10重量%以下とすることが好ましい。
【0023】
(粘着付与剤)
本発明に用いられる粘着付与剤としては、特に限定されないが、テルペン樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂(合成石油樹脂)、ロジンエステル誘導体、フェノール樹脂等が挙げられる。テルペン系樹脂としては、例えば、YSレジンPX−1150N(商品名:ヤスハラケミカル株式会社)が挙げられる。脂環式飽和炭化水素樹脂としては、例えば、アルコンP−100(商品名:荒川化学工業株式会社)が挙げられる。ロジンエステル誘導体としては、例えば、エステルガムH(商品名:荒川化学工業株式会社)、KE−311(商品名:荒川化学工業株式会社)、KE−100(商品名:荒川化学工業株式会社)が挙げられる。本発明に用いられる粘着付与剤としては、例えば、これらの1種又は2種以上を選択して使用できる。粘着付与剤の含有量は、特に限定されないが、膏体全体に対して10〜35質量%であることが好ましい。
【0024】
(可塑剤)
本発明に用いられる可塑剤としては、特に限定されず、例えば、流動パラフィン、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スクワラン、スクワレン、ひまし油等が挙げられる。好ましくは、流動パラフィンである。可塑剤の含有量は、特に限定されないが、一般的に膏体全体に対して20〜60重量%である。
【0025】
(賦形剤)
本発明に用いられる賦形剤としては、例えば、タルク、無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸、含水ケイ酸等のケイ素化合物、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、乾燥水酸化アルミニウムゲル、含水ケイ酸アルミニウム等のアルミニウム化合物、カオリン、酸化チタン等が挙げられる。
【0026】
(抗酸化剤)
本発明に用いられる抗酸化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸、トコフェロール、トコフェロールエステル誘導体、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0027】
[ライナー]
本発明の外用貼付剤は、ポリウレタンフィルムである支持体と、この支持体上に膏体が積層された膏体層とを備えるが、通常、膏体層上に剥離可能なライナーを備えた形態で提供される。剥離可能なライナーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル等のフィルム、アルミニウム蒸着の金属性のフィルム等が使用できる。更に、ライナー表面にシリコン処理等の剥離処理が施されたものを使用してもよい。また、剥離が容易となる点で、ライナーに直線又は曲線状等の切り込み部が設けられていることが好ましく、切れ込み部の設置方式としては、2つの切り込み線を設置して3分割のライナーとしてもよい。
【0028】
[製造方法]
本発明の外用貼付剤の製造方法としては、薬物および基剤成分等膏体層に含ませる成分を加熱溶融させ、この溶融物を剥離ライナー上に展膏し、膏体層を形成した後、支持体を貼り合わせることによって外用貼付剤を得る方法、すなわちホットメルト法を用いることが好ましい。例えば、薬物および基剤成分等膏体層に含ませる成分を酢酸エチル、ヘキサン、トルエン等の有機溶媒に溶解させ、この溶解物を剥離ライナー上に展膏し、該溶解物中の溶媒を留去させ膏体層を形成した後、支持体を貼り合わせることによって外用貼付剤を得る方法、すなわち溶剤法と比べて、膏体層中に、揮発性成分であるモノテルペン類を含有させることが容易であるからである。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
以下の組成及び製法により、外用貼付剤を製造した。
(組成)
(1)フェルビナク 3.5重量%
(2)l−メントール 3.0重量%
(日局)
(3)ジブチルヒドロキシトルエン 0.5重量%
(薬添規)
(4)タルク 2.5重量%
(日局)
(5)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30.0重量%
(薬添規)
(6)テルペン樹脂 17.0重量%
(薬添規)
(7)流動パラフィン 43.5重量%
(日局)
(製法)
前記組成(1)及び(2)を除く各成分を加熱溶融させ、次に(1)及び(2)を加えて混合撹拌し、均一な溶融物とした。この溶融物を1gあたり70cmの割合でライナー(PETフィルム)に均一に展膏し膏体層を形成した。その後、この膏体層にポリウレタンフィルム(厚さ8μm)を貼り合わせ、本発明の外用貼付剤を得た。なお、ポリウレタンフィルムと膏体層との合計厚みは、20μmであった。
【実施例2】
【0031】
以下の処方で上記実施例1の製造方法に準じて本発明の外用貼付剤を製造した。
(1)ケトプロフェン 2.0重量%
(2)l−メントール 2.0重量%
(日局)
(3)ジブチルヒドロキシトルエン 0.5重量%
(薬添規)
(4)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 33.0重量%
(薬添規)
(5)テルペン樹脂 16.0重量%
(薬添規)
(6)スクワラン 3.5重量%
(外原規)
(7)セバシン酸ジエチル 0.5重量%
(薬添規)
(8)流動パラフィン 42.5重量%
(日局)
【実施例3】
【0032】
以下の組成及び製法により、外用貼付剤を製造した。
(組成)
(1)ジクロフェナクナトリウム 1.0重量%
(2)l−メントール 2.0重量%
(日局)
(3)ジブチルヒドロキシトルエン 0.5重量%
(薬添規)
(4)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 33.0重量%
(薬添規)
(5)テルペン樹脂 19.0重量%
(薬添規)
(6)合成スクワラン 3.7重量%
(外原規)
(7)タルク 2.5重量%
(日局)
(8)イソステアリン酸 5.0重量%
(薬添規)
(9)流動パラフィン 33.3重量%
(日局)
(製法)
前記組成(1)及び(2)を除く各成分を加熱溶融させ、次に(1)及び(2)を加えて混合撹拌し、均一な溶融物とした。この溶融物を1.5gあたり70cmの割合でライナー(PETフィルム)に均一に展膏し膏体層を形成した。その後、この膏体層にポリウレタンフィルム(厚さ8μm)を貼り合わせ、本発明の外用貼付剤を得た。なお、ポリウレタンフィルムと膏体層との合計厚みは、20μmであった。
【実施例4】
【0033】
以下の処方で上記実施例1の製造方法に準じて本発明の外用貼付剤を製造した。
(1)ロキソプロフェンナトリウム2水和物 5.67重量%
(2)l−メントール 3.00重量%
(日局)
(3)イソステアリン酸 5.00重量%
(薬添規)
(4)ジブチルヒドロキシトルエン 0.20重量%
(薬添規)
(5)タルク 2.50重量%
(日局)
(6)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30.00重量%
(薬添規)
(7)テルペン樹脂 18.00重量%
(薬添規)
(8)流動パラフィン 35.63重量%
(日局)
【実施例5】
【0034】
以下の処方で上記実施例1の製造方法に準じて本発明の外用貼付剤を製造した。
(1)ロキソプロフェンナトリウム2水和物 5.67重量%
(2)l−メントール 3.00重量%
(日局)
(3)イソステアリン酸 5.00重量%
(薬添規)
(4)マクロゴール300 2.50重量%
(薬添規)
(5)ジブチルヒドロキシトルエン 0.20重量%
(薬添規)
(6)タルク 2.50重量%
(日局)
(7)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30.00重量%
(薬添規)
(8)テルペン樹脂 18.00重量%
(薬添規)
(9)流動パラフィン 33.13重量%
(日局)
【実施例6】
【0035】
以下の処方で上記実施例1の製造方法に準じて本発明の外用貼付剤を製造した。
(1)ロキソプロフェンナトリウム2水和物 5.67重量%
(2)l−メントール 3.00重量%
(日局)
(3)イソステアリン酸 5.00重量%
(薬添規)
(4)セバシン酸ジイソプロピル 5.00重量%
(薬添規)
(5)ジブチルヒドロキシトルエン 0.50重量%
(薬添規)
(6)タルク 2.50重量%
(日局)
(7)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 32.00重量%
(薬添規)
(8)テルペン樹脂 19.00重量%
(薬添規)
(9)流動パラフィン 27.33重量%
(日局)
【0036】
<比較例1>
l−メントールを加えず、流動パラフィンを46.5重量%配合したことを除き、実施例1と同様の手順で外用貼付剤を製造した。
【0037】
<比較例2>
l−メントールを加えず、N−メチル−2−ピロリドンを10重量%配合し、流動パラフィンを36.5重量%配合したことを除き、実施例1と同様の手順で外用貼付剤を製造した。
【0038】
<比較例3>
支持体として、ポリウレタンフィルムのかわりに、厚み500μm、目付100g/mのポリエステル編布を用いたことを除き、実施例3と同様の手順で外用貼付剤を製造した。
【0039】
<評価>
上記実施例1、実施例3、及び比較例1〜3で製造した外用貼付剤について、製剤の性状安定性(膏体層、支持体)、密着性、使用感を評価した。
【0040】
[試験例1(製剤の性状安定性(膏体層))]
実施例1及び比較例1で製造した外用貼付剤(7×10cm)を、直ちにアルミラミネート包装袋に密封したのち、40℃で10日間保存した。その後、下記基準に基づいて、膏体層中の析出物の有無を目視で観察評価した。この結果を表1に示す。
「析出物有無の評価基準」
○:析出物無し。
×:析出物有り。
【0041】
【表1】

【0042】
[試験例2(製剤の性状安定性(支持体))]
実施例1及び比較例2で製造した外用貼付剤(7×10cm)を、直ちにアルミラミネート包装袋に密封したのち、40℃で10日間保存した。その後、各外用貼付剤を被験者の腕に貼付した。下記基準に基づいて、支持体(ポリウレタンフィルム)の劣化の有無を目視で観察評価した。この結果を表2に示す。
「支持体の劣化有無の評価基準」
○:問題なく貼付できた。
×:貼付剤が破れて貼付できなかった。
【0043】
【表2】

【0044】
[試験例3(密着性、使用感)]
実施例3及び比較例3で製造した外用貼付剤(7×10cm)を、被験者の膝に8時間貼付した(勤務時間中において、膝の曲げ伸ばしの制限なし)。下記基準に基づいて、密着性、使用感を評価した。この結果を表3に示す。
「密着性、使用感の評価基準」
○:貼付剤が皮膚表面になじんで、違和感を感じなかった。
×:貼付剤が皮膚表面になじまず、違和感を感じた。
【0045】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の外用貼付剤は、皮膚に十分密着してはがれにくく、貼付感のよい(違和感のない)、かつ支持体の劣化を抑制できる等の製剤の性状安定性に優れる製剤であることから、外用医薬品として好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、この支持体上に積層された膏体層とを備え、
前記支持体は、ポリウレタンフィルムであり、
前記膏体層は、薬物、モノテルペン類、及び粘着剤を含有することを特徴とする外用貼付剤。
【請求項2】
前記支持体は、厚み5〜30μmのポリウレタンフィルムである請求項1に記載の外用貼付剤。
【請求項3】
前記支持体と前記膏体層との合計厚みは、10〜60μmである請求項1又は2に記載の外用貼付剤。
【請求項4】
前記粘着剤は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の外用貼付剤。
【請求項5】
前記粘着剤は、ゴム系粘着剤である請求項4に記載の外用貼付剤。
【請求項6】
前記ゴム系粘着剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体である請求項5に記載の外用貼付剤。
【請求項7】
前記薬物は、非ステロイド性抗炎症剤である請求項1〜6のいずれかに記載の外用貼付剤。
【請求項8】
前記非ステロイド性抗炎症剤は、フェルビナク、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、及びこれらの薬理学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1種である請求項7に記載の外用貼付剤。
【請求項9】
支持体と、この支持体上に積層された膏体層とを備え、
前記支持体は、厚み5〜30μmのポリウレタンフィルムであり、
前記支持体と前記膏体層との合計厚みは、10〜60μmであり、
前記膏体層は、薬物、l−メントール、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有し、
前記薬物は、フェルビナク、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトプロフェン、及びこれらの薬理学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする外用貼付剤。

【公開番号】特開2013−95749(P2013−95749A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253250(P2011−253250)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(391031247)東光薬品工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】