説明

多孔質物品の処理

多孔質膜(16)の特性を改変する方法は、多孔質膜を提供する工程を含む。この方法は、超臨界条件の流体に膜をさらすことを更に含む。超臨界条件の流体に膜がさらされている間に、膜(16)の特性が改変される。多孔質膜が改変後の特性を保持するように、流体の条件は変化される。また、本発明は、耐水性を有し水蒸気を透過し且つ通気性を有するシート材料である。シート材料は、複数の互いに接続する孔(26)を規定する表面を含む開放孔構造を有する膜を具備する。孔(26)を規定する節(22)及び微小繊維(24)の表面の少なくとも複数の部分に、析出弗素化ウレタンポリマー材料から成る一様な被覆膜(28)が形成される。析出弗素化ウレタンポリマー材料は、AATCC188試験による少なくとも数6の耐油性及び汚染剤に対する耐性、並びにASTMD737試験による、1平方フィート当たり少なくとも0.20CFMの通気性を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、多孔質物品を処理すること及びその結果として得られる処理後の物品に関する。特に、本発明は、多孔質膜の1つ以上の特性を改変するために多孔質膜を処理すること及び改変された特性を有する多孔質膜に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜は、その膜を形成する材料により限定される少なくとも1つの特性を有することが知られている。例えば、衣類及びアパレルでの使用が意図されている発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)材料から製造された多孔質膜は、すぐれた疎水性を有するため、相対的に低い攻撃圧力で防水性を示すと考えられる。しかし、ePTFE膜は、油を吸収しやすい。油を吸収しやすいという性質は、油を吸収した膜領域における疎水性に影響を及ぼし、膜のその領域は、防水であるとはいえない状態になることもある。
【0003】
特許文献1は、油による汚染からePTFE膜を保護するための方法を開示する。ePTFE膜の片面を油から保護するために、ePTFE膜に、連続する親水性膜が付着される。この構造は、通気性を備えておらず、親水性膜は、膜を通して水分を伝達するために、水分を含んでいなければならない。親水性膜の中に含まれる必要な水分によって、衣類は重くなってしまう。親水性膜を付着させた膜を取り入れた衣類を身につけると、不快に感じる場合が多い。それは、水分を含む親水性膜が肌に触れるためである。特に、周囲温度が低いとき、その不快感は大きくなる。そのような不快感は、「湿っぽく、冷たい」感触であると記載されている。衣類の内側から衣類を通して水分を運び出す働きをする空気の移動がないため、不快感は、いっそう増すことになる。
【0004】
特許文献2は、膜上に保護被覆膜を形成するために、相対的に小さい弗素化アクリラート粒子を使用することを開示する。特許文献3は、多孔質膜に親水性被覆膜を形成するために、溶液を使用することを開示する。特許文献4は、膜上の保護被覆層の現場重合を開示する。
【0005】
特許文献5及び特許文献6は、上述の不快感という欠点を克服するために通気性を有し、しかも、ePTFE膜を油汚染から保護するような改善された膜構造を開示する。弗素化アクリラート疎油性処理材料が、ePTFE膜の孔を完全には閉塞しないように、水性分散液中の相対的に大きな粒子から塗布される。ePTFE膜を通して空気は流通できるが、膜は、油汚染から保護される。処理の有効性は、ePTFE膜における有効孔径に対する処理材料の粒径によって決まる。
【0006】
これに代わる処理方法及び処理材料、並びに改善された処理方法及び処理材料は,処理されるべき膜の孔径に対する処理材料の粒径の依存性を最小限にしようとする。また、場合によっては、膜の疎油性以外の特性を改変することが望まれる。それらの特性には、焼結、親水性、導電率、イオン伝導率、多孔度、光反射率及び色が含まれる。
【特許文献1】特公平06−039014号
【特許文献2】特表平09−511461号
【特許文献3】特表2000−512902号
【特許文献4】特開平06−211870号
【特許文献5】特開平11−130850号
【特許文献6】特表2003−510377号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つの多孔質膜特性を改変する方法に関する。方法は、多孔質膜を提供する工程と、超臨界条件の流体に膜をさらす工程とを含む。超臨界条件の流体に膜がさらされている間に、少なくとも1つの膜特性が改変される。多孔質膜が改変後の特性を保持するように、流体の状態が変化される。
【0008】
方法は、超臨界条件の流体に溶解する処理材料を提供する工程を更に含む。所定の長さの時間にわたり、所定の温度及び所定の圧力で、多孔質膜は、超臨界流体に溶解された処理材料にさらされる。処理材料が可溶性を示さなくなる状態へ流体の状態が変化したとき、処理材料は、多孔質膜の表面上に析出し、多孔質膜の特性を改変する。
【0009】
方法は、5.0ダイン(dyn)/cm未満の表面張力を有する流体を提供する工程を含む。方法は、流体として二酸化炭素(CO)を提供する工程を更に含む。流体として二酸化炭素を提供する工程は、処理材料を流体に溶解させるのを補助するために、助溶剤を提供する工程を更に含んでもよい。改変される膜の特性は、無定形含有物の量、多孔度、疎油性、親水性、導電率、光反射率、イオン伝導率及び色より成る群から選択される。
【0010】
方法は、開放孔膜を提供することを更に含む。開放孔膜を提供する工程は、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜を提供することを含む。流体は、多孔芯に巻き付けられた複数の層を成す多孔質膜の2つ以上の層を通って流れる。
【0011】
方法は、ePTFE膜のPTFE材料の一部を初期サイズから膨張サイズまで膨張させるために、超臨界条件にある二酸化炭素(CO)にPTFE材料をさらす工程を含んでもよい。PTFE材料の膨張部分における結晶結合は破壊され、膨張部分は、更に無定形の状態になる。超臨界条件にある二酸化炭素(CO)にさらされる状態からPTFE材料を解放すると、PTFE材料の膨張部分は初期サイズに戻るが、PTFE材料のその部分においては、無定形性を増した状態が保持される。
【0012】
方法は、超臨界二酸化炭素に溶解された処理材料の一部をPTFE材料の膨張部分の中へ移動させることにより、ePTFE膜の一部において処理材料の一部を保持する工程を更に含んでもよい。PTFE材料は、超臨界二酸化炭素にさらされる状態から解放されるため、元の大きさ及び形状に戻ろうとし、PTFE材料の中に処理材料の一部を吸収する。吸収された処理材料部分は、PTFE材料から滲出することもある。
【0013】
本発明は、更に、本発明の方法に従って製造された膜に関する。本発明の膜は、防水性を有し、水蒸気を透過し且つ通気性を有する。膜は、シート材料の主面の間で、シート材料を貫通して延出する複数の孔を規定する構造を有する。膜の表面上に、膜の孔を完全には閉塞せずに、ほぼ均一な弗素化ウレタンポリマー被覆膜が付着される。被覆膜は、疎油性などの、少なくとも1つの膜特性を改変する。
【0014】
被覆膜は、膜の孔に侵入可能な、表面張力の低い溶液として塗布される。被覆膜は、被覆膜が溶媒中で不溶性になったときに、節及び微小繊維の表面に付着される。溶媒は、超臨界状態の二酸化炭素である。
【0015】
析出した弗素化ウレタンポリマー材料は、AATCC118試験による測定で、少なくとも数6の耐油性を示し、その一方で、ASTMD737試験によれば、1平方フィート当たり、少なくとも0.20CFMの通気性を有する。弗素化ウレタンポリマーの少なくとも一部は、膜の無定形部分により吸収される。吸収された弗素化ウレタンポリマーの少なくとも一部は、膜から滲出する。
【0016】
添付の図面を参照して、以下の説明を読むことにより、本発明のその他の特徴は、当業者には明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、多孔質膜の特性のうちの1つ以上を変化又は改変するために、膜を処理する方法を含む。本発明は、その方法により処理され、少なくとも1つの改変された特性を有する膜を更に含む。多孔質膜は、いかなる適切な多孔質膜であってもよく、細孔質であるのが好ましい。膜は、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などの、何らかの適切な材料から製造される。処理は、色、疎油性、親水性、導電率、光反射率、イオン伝導率、多孔度又は結晶度の量などの、多孔質膜の1つ以上の特性を変化又は改変する何らかの適切な処理であればよい。尚、改変される特性は、ここで挙げた性質に限定されない。
【0018】
特性が変化又は改変された多孔質膜の用途は、数多くある。一例として、本発明に従って製造された処理済み又は改変済み複合膜12(図3)を取り入れた積層織物は、衣類又はアパレルの分野で使用される。複合膜12は、防風性及び防水性を有し、水蒸気を透過し、更に、通気性を有する。汗という形をとる、油を含有する体液のような汚染剤からの保護を実現するために、複合膜12は、本発明の処理方法により改変される特性として、疎油性を有する。
【0019】
「水蒸気透過性」は、複合膜12のような構造を水蒸気が通過することを説明するために使用される用語である。「防水」という用語は、複合膜12が、水などの攻撃液体によって「湿る」又は「ぬれる」ことがなく、攻撃液体が膜を透過するのを防止することを説明するために使用される。「防風」という用語は、水0.5インチに相当する差圧降下において、1平方フィート当たり、毎分約3立方フィート(3CFM)を超える空気の侵入を防止するが、積層織物を身につけているときの快適性を向上させるための、幾分かの通気性は備えている複合膜12の能力を説明するために使用される。「通気性」は、例えば、1平方フィート当たり約3CFM未満の、相対的に少量の空気を通過させることができる複合膜12の能力を説明するために使用される。「疎油性」は、油、グリース、石鹸、洗浄剤、又は汗などの体液を吸収することによる汚染に対して耐性を有する材料を説明するために使用される。
【0020】
本発明に従って製造される複合膜12は、未処理又は改変前の膜16を含む。未処理又は改変前の膜16は、多孔質、好ましくは細孔質であり、多数の微小繊維24により互いに接続された多数の節22から成る3次元マトリクス構造又は格子型構造を有する。膜16を形成する材料は、適切な任意の材料でよいが、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から製造されるのが好ましい。ePTFE材料は、少なくとも部分的に焼結されているのが好ましい。一般に、少なくとも部分的に焼結された微小繊維24の1本の大きさは、微小繊維の長手方向長さに対して垂直な方向に測定された直径で、約0.05μ〜約0.5μの範囲である。
【0021】
節22及び微小繊維24の表面は、互いに接続する多数の孔26を規定する。孔26は、膜16の対向する主面の間で、曲折する経路を描いて、膜16を完全に貫通する。改変前の膜16における孔26の平均サイズSは、十分に細孔であるとみなされるが、本発明においては、どのような孔径が使用されてもよい。改変前の膜16の孔26の適切な平均サイズSは、0.01〜10μの範囲であればよく、0.1〜5.0μの範囲であるのが好ましい。多孔質ePTFE膜は、すぐれた疎水特性を有するが、親油性であることが知られている。すなわち、改変前の膜16を形成する材料は、油を吸収することによる汚染を受けやすい。汚染が起こると、改変前の膜16の汚染領域は、「機能性を失う」と考えられる。それは、孔26が、水のような攻撃液体によって容易に濡れてしまい、膜は、防水膜であるとはいえない状態になるからである。
【0022】
攻撃流体又は攻撃液体が膜を「湿潤させる」ことが可能であれば、機能性を失った改変前の膜16の液体浸透に対する耐性は、損なわれてしまう。改変前の膜16は、通常、疎水性であるが、攻撃液体が、まず、膜の主面に接触して、主面を湿潤させ、その後に、膜中の孔26を規定する面に接触し、それらの面を湿潤させた場合には、液体浸透に対する耐性を失う。互いに接続する孔26を規定する面は、多孔質膜16の対向する主面に到達するまで、湿潤液体又は攻撃液体によって徐々に湿潤される。攻撃液体が多孔質膜16を湿潤させることができなければ、液体浸透に対する耐性は保持される。
【0023】
膜16は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の微細粉末粒子(デュポン社より、TEFLON(登録商標)fine powder resinの商品名で市販されている)と、潤滑剤の混合物を押し出すことにより製造されるのが好ましい。押し出し物は、その後、カレンダーがけされる。カレンダーがけが終了した後、押し出し物は、少なくとも1つの方向、好ましくは2つの方向に「発泡(伸張)」又は延伸される。これにより、3次元マトリクス又は格子型の構造において、節22を接続する微小繊維24が形成される。「発泡」は、微小繊維24に永久的な凝固又は伸びを導入するために、材料の弾性限界を超えるまで十分に延伸されることを意味する。その後、膜材料に残留する応力を減少させ、最小限にするために、膜16は、加熱又は「焼結」されるのが好ましい。しかし、膜16の所期の用途に応じて、膜16は、焼結されないままであってもよく、部分的に焼結されてもよい。
【0024】
開放孔構造を有する適切な膜16を形成するために、他の材料及び方法が使用されることも可能である。例えば、多孔質膜を形成するために使用されてもよい他の適切な材料は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルフォン、ポリエーテル、アクリルポリマー及びメタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースポリマー及びそれらの組み合わせを含む。多孔質膜を製造する他の適切な方法は、適切な材料のうちのいずれかの発泡、スカイビング又は鋳造を含む。
【0025】
ePTFE膜16は、互いに接続された多数の小さな毛管状の孔26(図3)を含む。それらの孔26は、膜の対向する主面に隣接する周囲環境と流体連通する。従って、攻撃液体を吸着する膜16のePTFE材料の性向、並びに攻撃液体が孔26の中に吸着されるか否かは、攻撃を受ける材料の表面エネルギー、液体の表面張力、液体と攻撃を受ける材料との相対接触角、及び毛管状孔の有効流れ面積又は大きさの関数である。
【0026】
孔26への攻撃液体の侵入を防止する方法の1つは、孔を極端に小さくすることである。しかし、これは望ましくなく、又は実用的でない。ePTFE膜の液体浸透に対する耐性が失われるのを防止する又は最小限に抑えるもう1つの方法は、膜の表面の表面エネルギーを攻撃液体の表面張力より低くし且つ相対接触角を90°より大きくすることである。通常、表面エネルギー及び表面張力の値は、ダイン(dyn)/cmの単位で与えられる。以下の表に、表面エネルギー、相対表面張力及びいくつかの測定相対接触角を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
実験中に、多孔質膜16の通気性を損なわずに、疎油特性の向上が得られるように、弗素化ポリマー材料などの変性剤によって、多孔質膜16を被覆又は処理できることが判明した。複合膜12は、膜16の表面上に処理膜又は被覆膜28(図4)を含む。膜16の孔26を規定する節22及び微小繊維24の表面に、被覆膜28が接着し、その形状に従っているという点が最も重要である。従って、被覆膜28は、油、汗の中の人体から出る油分、脂肪性物質、石鹸、洗浄剤などの界面活性剤及び他の汚染剤のような汚染物質を吸収することによる汚染に対抗する膜16の材料の疎油性を改善又は改変する。本発明を実施する複合膜12は、擦れ、接触、折りたたみ、折り曲げ、磨耗接触又は洗濯などの刺激にさらされたときにも、液体浸透に対する耐久性を保持する。
【0029】
被覆膜28は、ePTFE膜に、相対的に表面エネルギーの低い層を付加する。大半の攻撃液体、油及び汚染剤の相対接触角は、90°より大きいため、それらの物質によって複合膜12の機能性が失われる可能性はない。適切であると思われるそのような疎油性ポリマー被覆膜は、いくつかある。適切な疎油性被覆膜の一例は、弗素化ウレタンポリマーであり、デュポン社より、NRD−342の商品名で市販されている。周知の処理材料の多くは、乳化重合により製造されるポリマー樹脂であり、水性分散液として販売されている。それらのポリマーは、通常、カーペットの処理剤又は防塵防汚処理剤として、織物を処理するために使用される。それらの処理剤は、通常、膜16の節22及び微小繊維24より著しく太い織物の織り糸、より糸、細糸及び繊維に対して使用される。それらの織り糸、より糸、細糸及び繊維は、一般に、水性分散液が織り糸、より糸、細糸又は繊維の全体を湿潤させ、最終的には、そのような糸を処理可能である相対的に高い表面エネルギーを有する材料から製造される。また、それらの織り糸、より糸、細糸及び繊維は、きつく編み上げられたニット又は密に織り上げられた織物であっても、膜16の孔26より著しく大きな空隙を規定する。そのため、一般に、水性分散液処理材料の中に懸濁している固体粒子によって、全ての面を被覆しても、全く問題は起こらない。
【0030】
処理材料の好ましい水性分散液は、分子量が相対的に小さい弗素化ウレタンポリマー粒子又は「固体」を含む。この分散液は、水と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤とを更に含む。界面活性剤は、粒子を水中に懸濁させると共に、固体が凝集体を形成する可能性を最小限に抑える働きをする。本発明に従って使用される前に、ポリマー粒子は、水及び界面活性剤から分離されるのが好ましい。本発明の趣旨から逸脱せずに、分散液に使用可能である溶媒、助溶剤又は他の界面活性剤も考えられる。弗素化ウレタンポリマー粒子を含む他の適切な処理材料は、デュポン社のZonyl(登録商標)C700又はTLF−9526である。別の適切な処理材料は、Zonyl(登録商標)C7040のような、Zonyl(登録商標)シリーズの弗素化アクリルポリマー(デュポン社により製造され、CIBAスペシャリティケミカルズより販売されている)である。それらの化学薬品は、カーペット、布地、繊維及び織物に通常使用される防汚処理剤の例でもあるが、細孔質膜には使用されない。
【0031】
先に説明した弗素化ポリマーのうちのいずれか、特に、好ましい疎油性弗素化ウレタンポリマー処理材料によって、膜中の孔26を規定する面及び膜の主面を処理又は被覆すれば、細孔質膜16の疎油性特性の実質的な改善が実現される。これまで、そのような処理を制限する要因となっていたのは、膜16の孔26を規定する節22及び微小繊維24の面を均一に被覆するように、孔26の内部にポリマーを導入する有効な方法がないことである。本発明は、膜16の孔26の大きさにほとんど影響を及ぼさずに、孔26を規定する節22及び微小繊維24の面に、相対的に薄く、均一な被覆膜28を塗布するために、最も小さな孔26の内部へもポリマーを導入する方法を提供する。更に、本発明は、使用される処理材料に応じて、膜16の疎油性以外の特性、例えば、親水性、導電率、光反射率、イオン伝導率及び色を改変できるような被覆膜28を塗布する方法を提供する。
【0032】
超臨界条件の下にある流体は、好ましい弗素化ウレタンポリマー粒子を溶解できることがわかっている。様々な濃度における、超臨界二酸化炭素中の好ましい処理材料の溶解度が、図6に示される。溶解の結果として得られる溶液は、溶解した弗素化ウレタンポリマーによって、膜16を湿潤させ、細孔質膜16の孔26に侵入することが可能である。弗素化ウレタンポリマーが溶解した溶液は、溶解している処理材料が、溶媒と共に膜16の最小の孔26の中まで容易に導入されるような表面張力、粘度及び相対接触角を有する。
【0033】
図5に示されるように、溶媒は、超臨界相の二酸化炭素であるのが好ましい。超臨界二酸化炭素(SCCO)溶液が、処理されるべき物品の非常に狭い領域に侵入できるように、溶液の表面張力は、5.0dyn/cm未満、好ましくは1dyn/cm未満、最も好ましくは0.1dyn/cm未満である。また、超臨界二酸化炭素は、約0.1センチポイズ未満の粘度を有する。溶液の粘度及び表面張力は極めて低いため、流れに対する抵抗は非常にわずかである。従って、最も小さい孔、又は膜16のPTFE分子の一部の間などの領域にも、溶液は侵入できる。そのため、本発明によれば、これまでは不可能であった相対的に小さな孔径を有する多孔質膜材料でも、溶液を侵入させ、膜を被覆することが可能である。
【0034】
SCCOは気体として作用すると同時に、液体としても作用するという点で、SCCOにより、特に興味ある特性が提供される。液体として作用する場合、SCCOは、材料を溶解させ、先に説明したように、溶媒として作用することができる。SCCOの密度は、約0.9g/ccであるので、溶媒のように機能する。二酸化炭素は、副産物として二酸化炭素を発生する発生源から得られるのが好ましく、繰り返し回収され、再利用されることが可能であるため、周囲環境に対して有害ではない。気体として作用するときには、SCCOは、非常に低い粘度及び表面張力を示すので、ePTFE膜16の中の相対的に小さな孔、あるいは膜を形成するPTFE節22、微小繊維24又は分子の中の空隙などの非常に狭い空間の中へも侵入できる。
【0035】
好ましい疎油性弗素化ウレタンポリマー粒子は、細孔質膜16の孔26を規定する節22及び微小繊維24の表面に付着して、複合膜12の表面エネルギーを減少させるための被覆膜28を形成する。複合膜12の弗素化ウレタンポリマー被覆膜28は、更に、複合膜に対する攻撃液体の接触角を大きくする働きもする。従って、複合膜12を湿潤させ、孔26に入り込むことができる攻撃液体は、相対的にわずかである。
【0036】
本発明の被覆膜28は、膜16を貫通し、互いに接続する孔26を規定する節22及び微小繊維24の表面及びその周囲に付着する。更に、少量の処理材料は、膜16の材料の中に吸収される。所定の適正な量の弗素化ウレタンポリマー粒子が膜16に付着した後、複合膜12の孔26の流れ面積は、被覆前の膜の流れ面積と比較して大幅に縮小されないことがわかっている。その結果、相対的に薄く、均一な被覆膜28が膜16に塗布される。
【0037】
ePTFE膜16が製造された後、節22及び微小繊維24の表面により規定される孔26の中に疎油性弗素化ウレタンポリマーが侵入するように、疎油性弗素化ウレタンポリマーは膜に塗布される。膜16の疎油性を向上するために、被覆膜28が1つの節22又は微小繊維24の全面を完全に包囲すること、あるいは被覆膜28が連続していることは必要ではないが、好ましい。孔26を規定する面を含めて、膜16の表面領域のうちの、できる限り多くの領域に、多数の小さな弗素化ウレタンポリマー粒子を均一に付着させることにより、相対的に薄い被覆膜28が得られる。
【0038】
析出粒子の大きさは、直径約1.0ナノメートル〜約10.0ナノメートル、好ましくは、1.0ナノメートル〜5.0ナノメートルの範囲であると考えられる。析出する粒子の粒径は、減圧の速度によって決まると考えられる。従って、付着した被覆膜28の厚さT2と微小繊維24の大きさT1との比は、0.2%〜20%の範囲であり、好ましい粒径に対しては、範囲は0.2%〜10%である。付着した被覆膜の厚さT2と孔26の有効平均サイズSとの比は、0.2%〜10%の範囲であり、好ましい粒径に対しては、範囲は0.2%〜5%である。
【0039】
弗素化ウレタンポリマー粒子は、溶媒から出て析出した後、膜16の孔26を規定する節22及び微小繊維24の表面と係合し、表面に接着する。付着した弗素化ウレタンポリマー粒子を節22及び微小繊維24の表面に沿って流動させ、表面を被覆させるために、膜16の上の弗素化ウレタンポリマー粒子を加熱してもよい。弗素化ウレタンポリマー粒子が節22及び微小繊維24の表面を被覆すると、油及び汚染剤を吸収することによる汚染に対する複合膜12の耐性は、更に向上する。熱を加えている間、その熱により、弗素化ウレタンポリマー粒子が移動自在になるため、節22及び微小繊維24の上のポリマーに含有される−CF群は配向される。好ましいポリマーの−CF群は、空気中に延出するように配向され、攻撃液体を更によくはじくようになる。従って、弗素化ウレタンポリマー被覆膜28は、膜16の上に、図7に示されるように、複合膜12の孔26を完全に閉塞する又は「つぶす」ことなく、最大限の保護能力を発揮する、相対的に薄い被覆膜を形成する。複合膜12の孔26が完全につぶれてしまうと、複合膜12の水蒸気透過性又は通気性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0040】
本発明の複合膜12の疎油性特性は、被覆膜28により改善されるが、複合膜12は、相対的に高い水蒸気透過率(MVTR)及び通気性を有する。AATCC118試験による測定では、複合膜12は、少なくとも数6、好ましくは数8の耐油性を有する。場合によっては、被覆膜28を形成する付着材料を加熱することにより、疎油性を更に改善できる。JIS‐1099B2試験による測定では、複合膜12は、好ましくは1日当たり少なくとも50,000g/m、更に好ましくは1日当たり少なくとも70,000g/mの水蒸気透過率(MVTR)を有する。複合膜12は、この複合膜から製造された衣類を身につけたユーザが、大半の条件の下で相対的に快適に感じ、極度に激しい肉体運動を行っている間であっても、快適に感じることができるような、十分な通気性を有する。ASTMD737試験による測定では、複合膜12は、膜の1平方フィート当たり、少なくとも0.20CFMの通気性を有するのが好ましく、少なくとも0.30CFMの通気性を有するのが更に好ましい。
【0041】
複合膜12は、膜16の材料の中に吸収される被覆膜28を形成する弗素化ウレタンポリマー処理材料の少なくとも一部を有する。すなわち、弗素化ウレタンポリマー処理材料の分子などの部分が、膜16のPTFE材料の中の狭い領域に入り込むのである。そのようにして侵入した処理材料部分は、膜16の少なくとも2つの無定形部分と係合し、被覆膜の材料の一部を機械的に捕捉し、少なくとも部分的に包囲する。従って、複合膜12の磨耗又は折り曲げによって、被覆膜28の処理材料が破壊又は除去されることは、更に難しくなる。損傷又は摩滅により、被覆膜28の一部が押し出されるか、又は除去された場合には、吸収後にPTFEから滲出する処理材料によって、被覆膜は修理される。
【0042】
PTFE膜材料が超臨界二酸化炭素にさらされ、膨張するとき、被覆膜28の処理材料は、分子のPTFEの互いに離間した無定形部分により吸収される。超臨界二酸化炭素にさらされると、PTFE材料は、当初の大きさの約30%まで膨張することもある。粘度及び表面張力が共に低い溶液は、処理材料ポリマーを、PTFE材料の内部の極度に狭い空隙の中へ導入する。二酸化炭素が超臨界相ではない状態に遷移するとき、PTFE材料は、それ以上膨張しなくなる。PTFEの膨張部分により包囲された弗素化ウレタンポリマーの部分又は分子は、膨張を停止した膜16のPTFE材料により機械的に係合又は捕捉される。吸収された弗素化ウレタンポリマーの少なくとも一部は、膜から滲出できる。この滲出プロセスは、相対的に長い期間にわたり、被覆膜28の欠落部分又は損傷部分と置き換わることにより、複合膜12の疎油性特性を維持する自己治癒メカニズムである。被覆膜28の捕捉された部分の滲出は、本質的に、時間の経過に伴って起こるものであるが、複合膜12が熱、又は日光などの紫外線にさらされると、加速される。熱や日光は、PTFE材料を振動させるためのエネルギーを供給する。振動によって、吸収された材料は、材料をPTFE材料の中に保持する引力に打ち勝ち、PTFE材料の中の本来の場所から外面へ移動、すなわち、滲出する。
【0043】
溶液、又は超臨界二酸化炭素自体を利用して、膜16のPTFE分子の各部分の間の結晶結合を破壊することも可能である。従って、熱を加えずに、焼結を実行できる。これは、超臨界二酸化炭素にさらされたときの膨張によって、PTFE材料の隣接する結晶部分が強制的に離間されることにより実現される。PTFE分子のそれらの膨張した隣接部分を離間する距離は、分子の結晶性を維持するためにファンデルワールス力により要求される距離を上回る。従って、この離間は永久的になり、その結果、より無定形のePTFE膜が得られる。
【0044】
システム機器
本発明に従って膜16を処理する方法において使用するための機器60は、図1に概略的に示される。以下に説明される実施例の大半において、この機器60に基づく実験室規模の機器が使用された。機器60は、膜16を処理するための処理容器62を含む。処理容器62は、10,000psi(約690bar)までの圧力及び100°C〜300°C(212°F〜572°F)の範囲の高温に耐えることが可能なオートクレーブの形態をとるのが好ましい。処理容器62の大きさは、膜16の所望の幅及び長さを処理するように適宜規定される。処理容器62は、ライン66により、供給循環ポンプ64に流体接続される。処理容器62は、処理容器の壁を所定の温度に維持するための外部ヒータ68を有する。処理容器62は、温度制御装置84、任意の静止ミキサ86及び処理剤導入容器88にライン82により接続された流体循環ループの中に配置される。処理剤導入容器88は、ライン102及び弁104を介して、ポンプ64に接続される。弁104及び弁106により、ライン108を通る流れは、処理剤導入容器88を迂回することができる。温度制御装置84は、ライン82及びそのライン内部に含まれる流体に対して冷却又は加熱を行う。COが膨張するときの冷却、又はCOが収縮するときの加熱を補償するために、ライン及び容器の一部又は全てが加熱又は冷却されてもよい。
【0045】
ポンプ64は、ライン124及び弁126を介して、溶媒貯蔵容器122にも接続される。溶媒貯蔵容器122は、加圧された状態で液体溶媒を収容し、溶媒を液体相でポンプ64へ確実に送り出すための温度に維持される。処理容器62は、ライン144及び弁146を介して、分離回収ステーション142にも接続される。分離回収ステーション142は、大気に連通する。あるいは、回収されたCOを再利用するために、分離回収ステーション142は、任意に貯蔵容器122に接続されてもよい。
【0046】
図2に示されるように、未処理の膜16は、芯180に巻き付けられている。膜16を芯180に保持し、ロールの端部から外れて軸方向に流体が流れるのを防止するために、ロールの両端部は、クランプなどの固着機構64によって固着される。固着機構64は、半径方向及び周囲方向に伸縮自在であるのが好ましい。芯に巻き付けられた、半径方向に隣接する層の間で、膜16のロールの端部から外れて軸方向に流体が流れず、矢印Fにより示されるように、膜のロールのあらゆる巻き付け層にある孔62を通って半径方向に流体が流れるように、固着機構64は、十分に締め付けられる。芯180は、多孔質ステンレス鋼などの、何らかの適切な材料から製造される。芯180は、芯を半径方向に貫通する多数の開口部204を含む。芯180及び膜16は、膜16が処理容器62の内側と接触せず、膜のロール全体に沿って流体の流れが発生できるように、処理容器62内部で支持される。
【0047】
適切であれば、どのような接続構造、支持構造及びキャップ構造を使用してもよいが、芯180は、軸方向の一端部で、芯に溶接された芯キャップ182aにより密封される。芯キャップ182aは、処理容器62の取り外し自在に固着可能である端部キャップ184に、ねじ結合部182bにより装着される。図示されるように、芯180は、水平方向に延出する。芯180及び処理容器62が、垂直方向又は他の任意の向きに配置されてもよいことは明らかである。芯キャップ182a、ねじ結合部182b及び芯180の内部は、端部キャップ184にあるポートを介して、ライン82と流体連通する。
【0048】
芯180の軸方向の他方の端部は、第2の取り外し自在に固着可能である芯キャップ202を有する。この芯キャップ202は、芯の他方の端部から流体が流出するのを防止する。矢印F(図2)により示されるように、芯180にある多数の開口部204は、芯の内側から流体を半径方向へ流通させ、膜16のロールの全ての層にある孔26を通して、膜のロールの外側と、処理容器62の内壁208との間の空間206(図1)へ流体を流入させる。動作中、芯180の内側と、膜16のロールの外側との間で、約30psiの圧力差が観測された。この圧力差は、30psi以外の値になることもあり、流体の流速、ロールの大きさ、孔径及び孔密度の関数であることが明らかである。流体は、処理容器62内部の空間206(図1)から、処理容器62の第2の取り外し自在に固着可能である端部キャップ212にある開口部を介し、ポートを通って、ライン66まで流れる。
【0049】
プロセス
処理材料は、分散液として利用可能である。処理材料は、その分散液からのポリマー粒子固体の分離を必要とする。好ましい弗素化ウレタンポリマー処理材料の粒子固体は、処理剤導入容器88に導入される。処理材料の量は、システムにおいて望まれる溶液濃度によって異なる。芯180及び膜16のロールは、処理容器62の内部に配置される。芯180及び膜16のロールを通して流体を流すために、芯及び膜のロールは、ねじ結合部182bにより、端部キャップ184に結合される。処理容器62を密閉するために、端部キャップ184及び212が固着される。膜16は、選択された流体溶媒に溶解しない材料から製造される。システムは、真空にされ、真空は、水及び空気のような一般に望ましくない物質を除去するのに十分な時間にわたり、維持される。
【0050】
弁146は閉鎖され、弁126は、システムに流体を流すための位置に切り替えられる。好ましい二酸化炭素などの液体溶媒は、貯蔵容器122から、処理容器62及びシステムのその他の部分へ、貯蔵圧力のまま流れる。当初、弁104及び106は、処理剤導入容器88を迂回する位置にあり、処理容器62とポンプ64との間に、循環閉ループを形成する。ライン102、108、82及び66と、容器62及びミキサ86の全てを流体で充満し、圧力を上昇させるために、ポンプ64が始動される。弁126は、貯蔵容器122からの流れを阻止し、ポンプ64と処理容器62との間で流体を流すための位置に切り替えられる。ポンプ64は、システムの圧力を所定の圧力まで上昇させる。弁104及び106は、バイパスライン108を閉鎖するような位置に切り替えられる。流体は、ポンプ64からライン102、処理剤導入容器88、静止ミキサ86及びライン82を通過して、処理容器62へ流れる。
【0051】
システム圧力は、所望の所定の圧力まで増加する。溶媒の温度及び圧力は、図6に示されるように、所望の溶質濃度に対して、処理材料が溶解できるような相又は状態になるように、処理材料の溶解度に応じて制御される。溶媒の圧力及び容積は、周知のように、補給源及びポンプ(図示せず)により増加されてもよい。
【0052】
特に適切な処理材料は、NRD−342及びZonyl(登録商標)C700であることが判明している。流体が処理材料を可溶性にすることができる相にあるとき、処理材料は流体にさらされる。そのような流体溶媒の1つは、超臨界相の二酸化炭素である(図5)。例えば、図6に示されるように、4%までの濃度に対して、超臨界二酸化炭素(SCCO)が220bar以上の圧力及び35°Cの温度であるとき、好ましい処理材料であるNRD−342粒子は、溶媒に溶解する。図6の各濃度線は、圧力の関数としての相監視検査中に、溶質が目視で不溶性になったとわかり、超臨界流体から析出し始める「曇り点」を表す。処理剤導入容器88内の処理材料固体粒子は、超臨界条件の下で容器を流れる溶媒に溶解する。
【0053】
他の処理材料も使用可能である。それらの処理材料は、相監視検査で判定できる独自の溶解度パラメータを有する。適切であれば、超臨界状態になることが可能な、どのような流体でも使用でき、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの助溶剤の使用が望ましいことは明らかである。処理剤導入容器88を通る流れは、溶媒中の処理材料溶質の所望の濃度が達成されるまで続く。また、処理材料が液体でもよく、ポンプにより、システムへ送り出されてもよいことは明らかである。濃度、圧力及び/又は温度などのいくつかのシステム条件に到達するまで、図示されない装置により、芯180の内側と、ロールの外側206との間で圧力を等しくすることが望ましい。この流路は、溶媒中の処理材料の所望の所定の濃度を得るために、処理剤導入容器88内で、所望の量の固体が溶解するまで維持される。
【0054】
所望のシステム条件に到達したならば、溶液中の処理材料溶質及び溶媒は、適切な所定の時間にわたり、システムを通して循環される。そのときの流路は、いずれかの適切な流路であればよい。一例として、溶液は、ポンプ64、処理剤導入容器88(ライン108を介して迂回される場合もある)、静止ミキサ86、温度制御装置84、ライン82を通り、端部キャップ184を介して芯180の内部に入り、膜16のロールにある孔26を通り、処理容器62内の空間206に流入し、キャップ212及びライン66を介して、ポンプ64に戻される。これにより、膜16のロールにある全ての孔26が処理材料にさらされることが保証される。NRD−342及びZonyl(登録商標)C700処理材料の場合、超臨界二酸化炭素溶媒の中で、1重量%〜5重量%の範囲の溶液濃度が使用され、これは適切であることが判明した。
【0055】
溶液中で、処理薬剤の所望の濃度が得られた後、膜16のロールを通って流れる処理材料が、所望の濃度で、膜16のロールのあらゆる層のどの孔26にも行き渡るように保証するために、所定の時間にわたり、溶液は、閉ループシステムの中で循環される。処理材料の溶液は、中央の場所でキャップ184に入ることにより、処理容器を通って循環される。端部キャップ184には、ねじ結合部182b(図2)により、芯180が装着されている。処理材料の溶液は、芯180を通り、膜16のロールの全ての孔26を通って、膜のロールと、処理容器62の内壁208との間の空間206に流入する。その後、処理材料の溶液は、端部キャップ212にあるポートを介して、ライン66の中へ流れる。溶液が所望の条件で、十分な時間にわたり循環したならば、ポンプ64は停止される。処理材料が流れによって膜16の孔26から押し出されてしまう可能性を最小限に抑えるために、システム内、特に膜16の孔26の中で、流体がモーメントによって確実に運動を停止するまで、十分な時間が経過するように保証される。
【0056】
その後、溶液の圧力及び/又は温度は、図6に示されるように、処理材料が可溶性ではなくなるような状態に切り替えられる。例えば、圧力は、150barまで低下され、温度は、35°Cに維持される。その後、更に圧力を大気圧まで低下させると、処理容器62を開くことができる。処理材料が液体二酸化炭素に溶解可能である場合、処理容器62を空にしている間、温度及び圧力は、二酸化炭素を気体の状態に保持するように制御される。
【0057】
処理材料は、最初に不溶性になるときに、溶液から析出する。析出した処理材料は、多孔質膜16の孔を規定する節22及び微小繊維24の表面上に堆積し、被覆膜28(図3及び図4)を形成する。処理材料から成る被覆膜28は、極めて薄く、膜16の孔26を規定する面の上に均一に分散される。付着した処理材料被覆膜28は、膜16の孔26を閉塞しないので、膜の通気性が悪影響を受けることはない。付着する処理材料の粒径は、約1〜5ナノメートルである。減圧速度を遅くすることにより、析出する粒子の粒径を大きくすることができる。付着した処理材料は、膜16の表面積の全て、又は少なくともほぼ全てを覆う。
【0058】
弗素化ウレタンポリマーの少なくとも一部は、膜16の無定形部分に吸収される。この吸収が起こるのは、PTFE膜材料の無定形部分が、膨張前の最初の大きさから、30%も膨張するためである。超臨界二酸化炭素溶媒が超臨界相から臨界未満相に変化するとき、PTFE材料は、元の大きさに戻り、付着しているポリマー処理材料の一部は、膜16のPTFE材料により機械的に封入又は「捕捉」される。吸収された弗素化ウレタンポリマーの少なくとも一部は、時間の経過に伴って、膜から滲出する。この滲出は、熱又は日光にさらされることによって加速される。
【0059】
膜改変方法は、ePTFE膜を超臨界条件の二酸化炭素(CO)のみにさらし、ePTFE膜の一部を最初の大きさから膨張サイズまで膨張させることを含んでもよい。すなわち、処理材料は使用されない。ePTFE膜の膨張部分における結晶結合は破壊され、膨張部分の無定形化が更に進む。ePTFE膜は、超臨界条件の二酸化炭素(CO)にさらされる状態から解放される。ePTFE膜の膨張部分は、その部分における無定形状態を保持しつつ、元の大きさに戻る。DSCの結果は、無定形含有物の量が増加したことを立証している。
【0060】
後処理加熱
析出物の被覆膜28が塗布された状態で、複合膜12に任意に熱が加えられてもよい。複合膜12に対して、約30秒にわたり、約140°Cで熱が加えられてもよい。この加熱により、膜16上に析出した弗素化ウレタンポリマー固体などの被覆膜28は、節22及び微小繊維24の表面の周囲に沿って更に流動し、いっそう均一に分散され、更に薄くなる。その結果、加熱を受けない複合膜と比較して、油及び汚染剤に対する複合膜12の耐性のレベルが向上する。複合膜12に加えられる熱は、フッ素部分(図示せず)の配向を加速し、被覆されている節22及び微小繊維24の表面から離れる方向に延出させる。
実施例1
約60ヤードのePTFE膜16(ミズーリ州カンザスシティのBHA Technologies,Inc.より入手可能であるQM011SP)を、外径3インチの多孔芯180に約200回巻き付けた。膜16のロールの外径は、約3.95インチであり、クランプ間の距離は22.3インチであった。膜16の平均有効孔径は、約0.4μであった。600mlのTLF−9526処理材料を処理剤導入容器88に導入した。処理剤導入容器88及びシステム内の循環ラインのうちの1つに、注射器ポンプを接続した。約1,500g/minの流量、300barの圧力及び40°Cの温度で流れる約13lの超臨界COから成るシステムボリュームに、ポンプ64により、処理材料を導入した。処理材料溶液は、システム内で循環され、芯180及び膜16を通って流れた。処理材料溶液は、1時間にわたって循環され、その後、ゆっくりとシステムを減圧した。処理容器62及び芯180から膜12を取り外した。処理後の膜12を試験した。その結果を以下の表に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例2
約70ヤードのePTFE膜16(ミズーリ州カンザスシティのBHA Technologies,Inc.より入手可能であるQM011)を、多孔芯180に巻き付けた。膜16の平均有効孔径は、約0.5μであった。両端部にフリットを有する処理剤導入容器88に、284gのTLF−9526固体処理材料を導入した。処理剤導入容器88を通って流れる約13lの超臨界COに、処理材料固体を溶解させた。処理材料溶液は、システム内を循環し、45分間にわたり、芯180及び膜16を通って両方向に流れた。その後、システムは、急速に減圧された。処理容器62及び芯180から膜12を取り外した。処理後の膜12を試験した。その結果を以下の表に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
実施例3
膜16を超臨界条件のCOにのみさらすことにより、数回の試験を実施した。これは、SCCOにさらすことの効果を判定するためであった。1回目の試験は、60分間にわたり、膜16を280°C、4,000psiのSCCOにさらすことにより実施された。膜12は、DSC解析によるジュール(J)/g単位のわずかな減少を示しただけであった。膜の対照サンプルは、SCCOにさらされる前に62.57J/gを有しており、SCCOにさらされた後の膜の測定値は、60.45J/gであった。次に、60分間にわたり、膜16を327°C、4,000psiのSCCOにさらすことにより、2回目の試験を実施した。圧力を4,000psiから1,000psiまで、5psi/minの速度で低下させ、その後、60分かけて、1,000psiから大気圧まで減圧した。この第2の膜の対照サンプルは、SCCOにさらされる前、47.63J/gを有しており、SCCOにさらされた後の第2の膜12のサンプルの測定値は、27.23J/gであった。更に、60分間にわたり、膜16を330°C、4,000psiのSCCOにさらすことにより、3回目の試験を実施した。この第3の膜サンプルの対照サンプルは、SCCOにさらされる前、57.06J/gを有しており、SCCOにさらされた後の膜12のサンプルの測定値は、30.86J/gであった。
実施例4
約130ヤードのePTFE膜16を多孔芯180に巻き付けた。膜16の平均有効孔径は、約0.5μであった。両端部にフリットを有する処理剤導入容器88に、400gのTBCU−A固体処理材料を導入した。処理剤導入容器88を通って流れる約13lの超臨界COにより、処理材料を溶解させた。225barの圧力、40°Cの平均温度及び約1,600g/minの流量で、処理材料溶液をシステム内で循環させた。処理材料溶液は、芯180及び膜16を通過して、ロール及び芯の外側から芯の内側へ、30分間流れ、その後、芯の内側から芯及びロールの外側へ30分間流れた。その後、圧力が800psiに達するまで、COを気体の状態に保持するために、制御下で、システムを減圧した。次に、急速な減圧を実行した。処理容器62及び芯180から、膜12を取り外した。処理後の膜12を試験した。その結果を以下の表に示す。
【0065】
【表4】

【0066】
実施例5
約130ヤードのePTFE膜16を多孔芯180に巻き付けた。膜16の平均有効孔径は、約0.5μであった。両端部にフリットを有する処理剤導入容器88に、488gのNRD−342固体処理材料を導入した。280barの圧力、37°Cの平均温度及び約1,600g/minの流量でシステムを流れる約13lの超臨界COにより、処理材料を溶解させた。システム内で、処理材料を循環させた。処理材料は、芯180及び膜16を通過して、膜のロールの内側から外側へ34分間流れた。その後、圧力が800psiに達するまで、COを気体の状態に保持するために、制御下で、システムを減圧した。その後、処理容器の急速な減圧を実行した。処理容器62及び芯180から、膜12を取り外した。処理後の膜12を試験した。その結果を以下の表に示す。
【0067】
【表5】

【0068】
実施例6
最初に、システムに真空を加えた。約130ヤードのePTFE膜16を多孔芯180に巻き付けた。膜16の平均有効孔径は、約0.229μであった。両端部にフリットを有する処理剤導入容器88に、400gのNRD−342固体処理材料を導入した。280barの圧力、36°Cの平均温度及び約1,600g/minの流量でシステムを流れる約13lの超臨界COにより、処理材料を溶解させた。システム内で、処理材料を循環させた。処理材料は、芯180及び膜16を通過して、膜のロールの内側から外側へ34分間流れた。その後、圧力が800psiに達するまで、COを気体の状態に保持するために、制御下で、システムを減圧した。その後、処理容器62の急速な減圧を実行した。処理容器62及び芯180から、膜12を取り外した。処理後の膜12を試験した。その結果を以下の表に示す。
【0069】
【表6】

【0070】
実施例7
弗素化ウレタンポリマーがePTFE膜により捕捉された否かを、次の手順により判定する。上記の実施例5から、当初、数8の疎油性を示していた膜12のサンプル(約5″×5″)を選択した。このサンプルを、数分間、メチルイソブチルケトン(MIBK)に浸漬した。サンプルをMIBKから取り出し、ペーパータオルで表面をぬぐった。サンプルを、ほぼ新しいMIBKに浸漬した。サンプルをMIBKから取り出し、ペーパータオルで表面をぬぐった。この手順は、膜12の全ての表面から全ての弗素化ウレタンポリマーが除去されることを保証する。翌朝まで、サンプルを空気乾燥させた。AATCC188試験によれば、数4の疎油性が測定された。次に、2日間にわたり、サンプルを日光に当てた。その後の疎油性は、数5であると測定された。サンプルを加熱した後の疎油性は、数5のままであった。
【0071】
処理前のePTFE膜16の疎油性が、数1であったので、少なくとも数2の疎油性は、本発明の処理プロセスの間に、弗素化ウレタンポリマーがePTFE膜により機械的に捕捉されたことを示唆する。日光にさらされた後の疎油性の増加は、弗素化ウレタンポリマーが滲出したことを示唆する。
実施例8
弗素化ウレタンポリマーがePTFE膜12により捕捉されたか否かを更に判定するために、洗濯に対する耐久性の試験を実施した。上記の実施例5から、当初、数8の疎油性を示していた膜12のサンプルを選択した。サンプルを保護シェルの中に縫い込んだ。石鹸を含まない洗濯水の温度は、80°Fであった。疎油性試験を実施するたびに、それに先立って、サンプルを150°Fで乾燥させた。試験の結果を以下に示す。試験結果は、膜12上で、弗素化ウレタンポリマーが耐久性を有していることを示唆する。
【0072】
【表7】

【0073】
実施例9
約249ヤードのePTFE膜16を多孔芯180に巻き付けた。膜16の平均有効孔径は、約0.5μであった。膜16のロールの外径は、約6.4″であり、クランプ間の距離は、約65″であった。フリットの間で、処理剤導入容器88に、4,005gのNRD−342乾燥固体処理材料を導入した。処理剤導入容器88を通って流れる約105,000gの超臨界COにより、処理材料を溶解させた。実施例1〜実施例8の処理システムより相対的に規模の大きなシステムの中で、処理材料溶液を循環させた。溶液の流量は、約2,700g/min、圧力は、260bar、平均温度は、32°Cであった。処理材料溶液は、芯180及び膜16を通過して、芯の内側から芯及びロールの外側へ、90分間流れた。その後、COを気体の状態に保持するために、制御下で、システムを減圧した。処理容器62及び芯180から、膜12を取り外した。処理後の膜12を試験した。その結果を以下の表に示す。
【0074】
【表8】

【0075】
本発明の好ましい実施形態の以上の説明から、当業者は、改善、変更及び変形を理解するであろう。当該技術の範囲内にあるそのような改善、変更及び変形は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に従って膜を処理するために使用されるプロセス及び機器の概略図。
【図2】図1に示される機器の一部の拡大断面図。
【図3】本発明に従って処理された膜の一部の拡大概略図。
【図4】膜上の被覆膜を示す、図3の膜の一部の拡大概略図。
【図5】本発明の処理において使用される流体の様々な状態を表すグラフ。
【図6】本発明で使用される処理材料の、様々な濃度における溶解度を示すグラフ。
【図7】本発明に従って処理された膜の一部のSEM顕微鏡写真。
【符号の説明】
【0077】
12…複合膜、16…未処理の膜、22…節、24…微小繊維、26…孔、28…被覆膜、60…処理機器、62…処理容器、64…供給循環ポンプ、88…処理剤導入容器、122…溶媒貯蔵容器、180…多孔芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質膜の少なくとも1つの特性を改変する方法において、
10μ以下の平均孔径を有し、膜を貫通する互いに接続する複数の孔を有する膜を提供する工程と;
前記膜を超臨界条件の流体にさらす工程と;
前記膜が前記超臨界条件の流体にさらされている間に、前記膜の前記孔を規定する面の上に変性剤を付着させることにより、前記膜の少なくとも1つの特性を改変する工程と;
前記膜が、前記孔を規定する表面上に残留する付着変性剤により改変された特性を保持するように、前記流体の条件を変化させる工程とから成る方法。
【請求項2】
前記さらす工程は、前記流体として二酸化炭素(CO)を提供する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
改変される前記膜の特性は、無定形含有物の量、疎油性、親水性、導電率、光反射率、イオン伝導率、多孔度及び色より成る群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記改変する工程は、
前記超臨界条件の流体に溶解する処理材料を提供する工程と;
前記処理材料を前記超臨界条件の流体に溶解させる工程と;
所定の長さの時間にわたり、所定の温度及び所定の圧力で、前記超臨界条件の流体に溶解された前記処理材料に前記膜をさらす工程と;
前記膜の特性の改変に影響を及ぼすために、前記膜の前記孔を規定する表面に、前記添加剤を析出させる工程とを更に含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記処理材料は、弗素化ウレタンポリマー及び弗素化アクリルポリマーより成る群から選択される請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記膜の前記孔の表面に沿って、前記析出した処理材料に熱を加えることにより、前記析出した処理材料を流動させる工程を更に含む請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記提供する工程は、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜を提供することを含む請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記処理材料の少なくとも一部を、前記ePTFE膜材料のPTFE材料の膨張部分へ移動させ;且つ
前記解放する工程の間に、前記処理材料の前記一部を吸収するために、前記PTFE材料を元の大きさ及び形状に復元させることにより、
前記処理材料の前記一部を、前記ePTFE膜材料の前記PTFE材料の一部の中に保持する工程を更に含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記PTFE材料の中に吸収された前記処理材料の前記一部は、前記PTFE材料から滲出する請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記提供する工程は、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜を提供することを含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記改変する工程は、
前記PTFE材料の一部を初期サイズから膨張サイズまで膨張させるために、前記ePTFE膜を超臨界条件の二酸化炭素(CO)にさらす工程と;
前記膨張部分を更に無定形にするために、前記PTFE材料の膨張部分における結晶結合を破壊する工程と;
前記PTFE材料の前記膨張部分における無定形状態を保持しつつ、前記PTFE材料の前記膨張部分が初期サイズまで戻るように、前記PTFE材料を前記超臨界条件の二酸化炭素(CO)にさらされる状態から解放する工程とを更に含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記提供する工程は、開放孔膜を提供することを含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記さらす工程は、膜の2つ以上の層を通して前記流体を流動させることを含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記提供する工程は、多孔芯に巻き付けられた複数の層に前記膜を提供する工程を含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記流体は、5.0ダイン(dyn)/cm未満の表面張力を有する請求項1記載の方法。
【請求項16】
疎油性、親水性、導電率、イオン伝導率及び色より成る群から選択される、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜の少なくとも1つの特性を改変する方法において、
膜を貫通し、互いに接続する孔を有するePTFE膜を提供する工程と;
処理材料を提供する工程と;
前記処理材料を超臨界条件の流体に溶解させる工程と;
所定の長さの時間にわたり、所定の温度及び所定の圧力で、前記溶解された処理材料及び前記超臨界条件の流体に前記ePTFE膜をさらす工程と;
前記溶解された処理材料及び前記超臨界条件の流体に前記膜がさらされている間に、前記ePTFE膜の少なくとも1つの特性を改変させる工程と;
前記ePTFE膜の孔を規定するePTFE膜表面に前記処理材料を析出させ、それにより、前記ePTFE膜の特性の改変を実現するために、前記流体の条件を変化させる工程とから成る方法。
【請求項17】
前記溶解させる工程は、前記流体が二酸化炭素(CO)であることを含む請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記さらす工程は、前記溶解された処理材料及び前記超臨界条件の流体を前記膜の2つ以上の層を通して流動させることを含む請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記提供する工程は、多孔芯に巻き付けられた複数の層に前記膜を提供する工程を含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記処理材料の少なくとも一部を前記ePTFE膜材料中のPTFE材料の膨張部分の中へ移動させ;且つ
前記解放する工程の間に、前記処理材料の前記一部を吸収するために、前記PTFE材料を元の大きさ及び形状に復元させることにより、
前記処理材料の少なくとも一部を、前記ePTFE膜材料中のPTFE材料の一部の中に保持する工程を更に含む請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記PTFE材料の中に吸収された前記処理材料の前記一部は、前記PTFE材料から滲出する請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記流体は、5.0ダイン(dyn)/cm未満の表面張力を有する請求項16記載の方法。
【請求項23】
無定形部分及び結晶部分を有する発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜を処理する方法において、
ePTFE膜を提供する工程と;
前記ePTFE膜の一部を初期サイズから膨張させるために、前記ePTFE膜を超臨界条件の下にある流体にさらす工程と;
前記ePTFE膜の膨張した部分を更に無定形にするために、膨張によって、前記ePTFE膜の前記結晶部分の結合を破壊する工程と;
前記ePTFE膜の膨張した部分が初期サイズに戻り且つ前記ePTFE膜のその部分において結晶結合が破壊されたままであるように、前記超臨界条件の下にある流体を前記ePTFE膜から除去する工程とから成る方法。
【請求項24】
前記流体は、二酸化炭素である請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記さらす工程は、前記ePTFE膜の2つ以上の層を通して前記流体を流動させることを含む請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記提供する工程は、多孔芯に巻き付けられた複数の層に前記ePTFE膜を提供する工程を含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記流体は、5.0ダイン(dyn)/cm未満の表面張力を有する請求項23記載の方法。
【請求項28】
多孔質膜の少なくとも1つの特性を改変する方法において、
膜を貫通し、互いに接続する複数の孔を有する膜を提供する工程と;
処理材料を提供する工程と;
5.0ダイン(dyn)/cm未満の表面張力を有する流体に前記処理材料を溶解させる工程と;
前記膜が前記溶解された処理材料及び前記流体にさらされている間に、前記膜の少なくとも1つの特性を改変する工程と;
前記膜が改変後の特性を保持するように、前記流体の状態を変化させる工程とから成る方法。
【請求項29】
前記溶解させる工程は、超臨界条件の下にある流体に前記処理材料を溶解させる工程を含む請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記溶解させる工程は、1ダイン(dyn)/cm未満の表面張力を有する流体に前記処理材料を溶解させる工程を含む請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記さらす工程は、前記流体として二酸化炭素を提供する工程を含む請求項28記載の方法。
【請求項32】
前記改変する工程は、改変される前記膜の特性が、無定形含有物の量、疎油性、親水性、導電率、光反射率、イオン伝導率及び色より成る群から選択されることを含む請求項28記載の方法。
【請求項33】
前記提供する工程は、発泡ポリテトラフルオロエチレン膜を提供することを含む請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記提供する工程は、多孔芯に巻き付けられた複数の層に前記多孔質膜を提供する工程を含む請求項28記載の方法。
【請求項35】
前記さらす工程は、前記膜の2つ以上の層を通して前記流体を流動させることを含む請求項28記載の方法。
【請求項36】
防水性であり、水蒸気を透過し且つ通気性を有するシート材料において、
膜の主面の間で、膜を貫通し、互いに接続する平均孔径を有する複数の孔を規定する面を含む開放孔構造を有し、油及び汚染剤を吸収しやすい材料から製造された膜と;
前記膜の孔を規定する前記節及び微小繊維の表面の少なくとも複数の部分の上に、弗素化ウレタンポリマー及び弗素化アクリルポリマーを含む群から選択された材料により形成された一様な析出被覆膜とを具備し、
前記析出材料は、AATCC118試験による少なくとも数6の耐油性及び汚染剤耐性を提供し、且つ前記シート材料は、ASTMD737試験による少なくとも0.20CFM/平方フィートの通気性を有するシート材料。
【請求項37】
前記析出材料の厚さは、前記膜の平均孔径の0.10倍未満である請求項36記載のシート材料。
【請求項38】
前記膜は、微小繊維により接続された節から成る構造を形成する発泡ポリテトラフルオロエチレンから製造され、前記節及び微小繊維の表面は、前記膜中に、10μ以下の平均孔径を有する互いに接続する複数の孔を規定する請求項36記載のシート材料。
【請求項39】
前記析出材料の少なくとも一部は、前記膜のポリテトラフルオロエチレン材料の複数の部分に吸収される請求項38記載のシート材料。
【請求項40】
前記析出材料の少なくとも一部は、前記膜から滲出する請求項39記載のシート材料。
【請求項41】
シート材料の主面の間で、シート材料を貫通する複数の孔を規定する構造を有するシート材料と;
前記シート材料の孔を完全に閉塞することなく、前記シート材料の表面に付着され、弗素化ウレタンポリマー及び弗素化アクリルポリマーを含む群から選択された被覆膜材料を含み、前記シート材料の疎油性を改変するための、ほぼ一様な被覆膜とを具備し、
前記被覆膜が、前記シート材料の孔に侵入可能な表面張力の低い溶液から塗布され;
前記被覆膜が溶媒中で不溶性になるとき、前記被覆膜が、前記節及び微小繊維の表面に付着される装置。
【請求項42】
前記シート材料は、発泡ポリテトラフルオロエチレンを具備する請求項41記載の装置。
【請求項43】
前記被覆膜材料の一部は、前記発泡ポリテトラフルオロエチレンシート材料のポリテトラフルオロエチレン材料の複数の部分に吸収される請求項42記載の装置。
【請求項44】
前記溶媒は、超臨界相にある二酸化炭素である請求項41記載の装置。
【請求項45】
微小繊維により接続される節から成る構造を有する膜であって、前記節及び微小繊維の表面は、前記膜の主面の間で、前記膜を貫通する互いに接続する複数の孔を規定し、前記膜は、水蒸気を透過し、通気性を有し、防風性及び液体の浸透に対する耐性を有し、油及び汚染剤を吸収しやすい材料から製造される膜と;
前記膜の前記節及び微小繊維の表面に付着され、前記膜の孔を完全に閉塞することなく、前記膜に耐油性及び汚染剤に対する耐性を与える材料とを具備し、
前記材料は、前記膜の孔に侵入可能な表面張力の低い溶液から塗布され、前記材料は、溶媒中で不溶性になるとき、前記節及び微小繊維の表面に付着される改質膜。
【請求項46】
前記溶液の溶媒は、超臨界相にある請求項45記載の改質膜。
【請求項47】
前記溶液の表面張力は、5.0ダイン(dyn)/cm未満である請求項45記載の改質膜。
【請求項48】
発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から形成され、微小繊維により接続された節から成る構造を有する多孔質膜であって、前記節及び微小繊維の表面が、前記膜の主面の間で、前記膜を貫通する互いに接続する複数の孔を規定し、
前記膜の材料が、複数の互いに離間した部分を有する多孔質膜と、
前記膜の孔を完全に閉塞することなく、前記孔を規定する前記節及び微小繊維の表面の複数の部分の上に析出される析出材料であって、
前記膜の前記表面上の前記析出材料が、前記膜の少なくとも1つの特性に変化をもたらし、
前記析出材料の一部が、前記ePTFE膜のPTFE材料の一部により吸収される前記析出材料とから成るシート材料。
【請求項49】
前記析出材料に対して、前記膜に疎油特性を与える後処理を実行することを更に含む請求項48記載のシート材料。
【請求項50】
前記シート材料において、改変される前記1つの特性は、疎油性、親水性、導電率、光反射率、イオン伝導率及び色より成る群から選択される請求項48記載のシート材料。
【請求項51】
前記PTFE材料に吸収される前記析出材料の前記一部は、前記PTFE材料から滲出する請求項48記載のシート材料

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−500438(P2006−500438A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537622(P2004−537622)
【出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/021956
【国際公開番号】WO2004/026575
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(500421543)ビーエイチエイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】