説明

多成分樹脂系

本発明は、a.不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物と、b.第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂と、c.遷移金属化合物と、d.第一および/または第二脂肪族アミンとを含む多成分樹脂系において、遷移金属は、Cu、Mn、Feおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、多成分樹脂系に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、(a)ラジカル共重合を行うことが可能な化合物と、(b)第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物と、(d)第一および/第二脂肪族アミンとを含む多成分樹脂系に関し、当該樹脂系は、過酸化物を用いて硬化可能であり、硬化は、遷移金属化合物(c)を用いて促進される。硬化させると、ハイブリッド硬化樹脂網目構造が得られ得る。ハイブリッド硬化とは、少なくとも2つの異なる反応機構によって行われる硬化をいう。
【0002】
このような多成分樹脂系は、相互貫入高分子網目構造(Interpenetrating Polymer Network:IPN)を得るために使用される。本明細書で使用される場合、相互貫入高分子網目構造は、分子スケールで少なくとも部分的に交錯し、かつ任意選択で、互いに共有結合している少なくとも2つの化学的に別個の高分子網目構造からなる組成物である。共有結合が高分子網目構造間に存在しない真のIPNのみならず、セミIPNもまた形成され得る。セミIPNにおいては、2つの網目構造は、アミンと反応し得かつラジカル重合を行い得る結合成分を介して共有結合される。共有結合が高分子網目構造間に存在する場合、そのIPNは、セミIPNと呼ばれる。IPNにおいて、各網目構造は、その個々の特性を保持し得る。その結果、IPNにおいては少なくとも2つの網目構造の個々の特性が組み合わされるので、特性の改善が得られ得る。
【0003】
論文“Curing behaviour of IPNs formed from model VERs and epoxy systems I amine cured epoxy”,K.Dean,W.D.Cook,M.D.Zipper,P.Burchill,Polymer 42(2001),1345−1359に、一方の熱硬化性高分子網目構造が、スチレンに溶解したビニルエステル樹脂(ラジカル共重合を行うことが可能な化合物である)の、ラジカル開始剤(例えば、過酸化物)を用いたラジカル共重合によって形成されることが記載されている。他方の熱硬化性高分子網目構造は、エポキシ化合物とアミンとの段階成長(step growth)共重合によって形成される。最初に第一アミンがエポキシ基と反応し、続いて第二アミンが反応する。クメンヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、または、コバルトオクトアートと共にもしくはコバルトオクトアートなしにメチルエチルケトンペルオキシドが、ラジカル開始系として使用された場合に、開始系の早すぎる消耗が起こることも記載されている。これはラジカル硬化にとって不利である。さらに、少なくとも75℃というより高い温度で、硬化が行われる。
【0004】
本発明は、多成分熱硬化性樹脂系に関する。熱硬化性樹脂は、一般に、構造物を得るための複合材を製造するために使用される。本明細書で言う場合、構造物は、少なくとも0.5mmの厚さおよび(構造物の最終用途に応じて)適切な機械的性質を有するものと考えられる。
【0005】
より要求の厳しい構造用途の1つは、化学定着用途である。なぜなら、この用途においては、硬化樹脂の機械的強度、硬化樹脂のコンクリートへの接着性および硬化樹脂の鋼への接着性が、非常に良好でなければならないからである。化学定着とは、任意の種類の基材(例えば、コンクリート、れんが、天然石、人工石など)の穿孔中の、定着要素(例えば、タイバー、ジベル、ロックボルト、ねじ、アンカーロッド)の化学的締結をいう。硬化樹脂の機械的強度、硬化樹脂のコンクリートへの接着性および硬化樹脂の鋼への接着性を評価するための試験は、引抜き試験である。低い引抜き値は、低い引張強さ、金属および/またはコンクリートへの低い接着性を示す。化学定着用途において、好ましくは、引抜き値は、異なる環境下(厳しい条件、例えば、低温環境(冬季および/または高緯度地方)および高温環境(夏季および/または低緯度地方)下を含む)で高い。
【0006】
さらに、上述のCookの参照文献において使用されているような脂肪族アミンおよび過酸化物を、(a)不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル硬化性樹脂と(b)エポキシド官能性樹脂とを含むハイブリッド樹脂系に添加することによって得られるハイブリッド硬化樹脂網目構造の、より低い温度(室温またはそれ以下)での性能は劣ることが分かった。
【0007】
本発明の目的は、このようなハイブリッド硬化樹脂網目構造のそうしたより低い温度での性能を、改善することである。
【0008】
これは、多成分樹脂系が、Cu、Mnおよび/またはFe化合物を含むことで達成され得ることが見出された。
【0009】
本発明に従う樹脂系のさらなる利点は、良好な硬化が、厳しい条件下((0℃以下の温度の)低温条件および(室温より高い)高温条件を含む)で得られ得ることである。
【0010】
国際公開第2010/007148号パンフレットは、ラジカル重合性モノマー、ラジカル生成剤、エポキシド樹脂および第三アミンを含む系の使用について記載している。この特許文献の先行技術の記載箇所に、エポキシ樹脂を硬化させることができることが知られている脂肪族アミンは(メタ)アクリラートのラジカル重合を妨害するので、脂肪族アミンは(メタ)アクリラートおよびエポキシド樹脂のハイブリッド系においては利用できないと述べられている。これに鑑みて、この特許文献は、ヒドロキシル−エポキシ付加反応のための触媒として第三アミンを利用することを教示している。
【0011】
本発明に従う樹脂系が利用され得る最終分野は化学定着であるが、当該樹脂系は、例えば、自動車部品、船、屋根材、建設、容器、リライニング(relining)、パイプ、タンク、床張り材、風車羽根を得るためにも使用され得る。
【0012】
したがって、本発明は、過酸化物を用いて硬化可能な多成分樹脂系であって、(a)不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物と、(b)第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂と、(c)遷移金属化合物と、(d)第一および/または第二脂肪族アミンとを含み、遷移金属化合物の遷移金属は、Cu、Mn、Feおよびそれらの混合物からなる群から選択されるものである、多成分樹脂系に関する。
【0013】
好ましくは、遷移金属化合物の遷移金属は、Cu、MnおよびFeからなる群から選択される。より好ましくは、遷移金属化合物の遷移金属は、Cu、Mnおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
本発明に従う多成分樹脂系の使用は、ハイブリッド硬化樹脂網目構造を得るために、化合物(a)、(b)および(c)を、硬化剤、特に化合物(d)および過酸化物と一緒に混合することを必要とする。本明細書において使用される場合、多成分樹脂系とは、ハイブリッド硬化樹脂網目構造を得るための多成分樹脂系の使用の前の化合物の時期尚早の重合を防止するために、その系の異なる化合物が、少なくとも2つの空間的に分離された成分中に存在することを意味する。本発明に従う多成分樹脂系は、少なくとも2つの成分を含む。
【0015】
1つの実施形態において、多成分樹脂系は、少なくとも3つの成分A、BおよびCを含むものであり、成分Aは、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂(b)と、遷移金属化合物(c)とを含む樹脂組成物からなり、成分Bは、過酸化物を含む組成物からなり、そして成分Cは、第一および/または第二脂肪族アミン(d)を含む組成物からなる。好ましい実施形態において、多成分樹脂系は、3つの成分A、BおよびCからなる三成分系であり、成分Aは、上記のような化合物(a)、(b)および(c)を含む樹脂組成物からなり、成分Bは、過酸化物を含む組成物からなり、そして成分Cは、第一および/または第二脂肪族アミン(化合物(d))を含む組成物からなる。本発明に従う三成分樹脂系の使用は、ハイブリッド硬化樹脂網目構造を得るために、成分A、BおよびCを混合することを必要とする。成分A、BおよびCの混合は、様々な方法で行われ得る。好ましい方法は、最初に成分Aを成分Cと混合し、次いで成分Bを添加する方法である。
【0016】
別の実施形態において、多成分樹脂系は、少なくとも2つの成分AおよびBを含むものであり、成分Aは、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物(b)としてエポキシド官能性樹脂と、遷移金属化合物(c)とを含む樹脂組成物からなり、そして成分Bは、過酸化物と、第一および/または第二脂肪族アミン(d)とを含む組成物からなる。好ましい実施形態において、多成分樹脂系は、2つの成分AおよびBからなる二成分系であり、成分Aは、上記のような化合物(a)、(b)および(c)を含む樹脂組成物からなり、そして成分Bは、過酸化物と、第一および/または第二脂肪族アミン(化合物(d))とを含む組成物からなる。本発明に従う二成分樹脂系の使用は、ハイブリッド硬化樹脂網目構造を得るために、成分AおよびBを混合することを必要とする。
【0017】
ラジカル共重合の開始のために使用される過酸化物は、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂の硬化に使用されることで当業者に知られている過酸化物の任意のものであり得る。そのような過酸化物は、固体か液体かを問わず有機および無機の過酸化物を含み、過酸化水素も利用され得る。好適な過酸化物の例は、例えば、ペルエステル、モノペルカルボナート、ペルケタール、ペルアンヒドリド、ヒドロペルオキシドおよびペルエーテルである。過酸化物の必要量は当業者により容易に決定され得、その量は広い範囲内で可変であり、概して0.0001重量%より多く、かつ20重量%未満であり、好ましくは10重量%未満であり、より好ましくは5重量%未満である(ここで、過酸化物の量は、硬化性化合物の総量を基準とする)。過酸化物は、ハイブリッド硬化樹脂系の低温性能がさらに改善され得ることから、好ましくは、ペルエステルおよび/またはモノペルカルボナートである。より好ましくは、過酸化物は、ペルエステルまたはモノペルカルボナートである。さらにより好ましくは、過酸化物は、ペルエステルである。
【0018】
樹脂系は、Cu、Mnおよび/またはFe化合物、好ましくは、Cu、Mnおよび/またはFeの塩もしくは錯体を含む。樹脂系は、好ましくは、Cu、MnまたはFe化合物を含む。Cu、MnまたはFe化合物は、好ましくは、Cu、MnまたはFeのカルボン酸塩、より好ましくはC〜C30カルボン酸塩、さらにより好ましくはC〜C16カルボン酸塩である。好ましくは、樹脂系は、遷移金属化合物(c)として、Cu化合物および/またはMn化合物を含む。当業者は、Cu、MnおよびFe化合物の好適な量を決定することができるであろう。本発明に従う樹脂系に存在するCu、MnおよびFe化合物の量は、好ましくは、硬化性化合物1kg当たり少なくとも0.0001mmolのCu、MnおよびFe、より好ましくは、硬化性化合物1kg当たり少なくとも0.0025mmolのCu、MnおよびFe、さらにより好ましくは、硬化性化合物1kg当たり少なくとも0.025mmolのCu、MnおよびFeが存在するようなものである。費用効率の理由から当然ながら過度に高い濃度は適用されないであろうが、Cu、MnおよびFe含有量の上限は、それほど重要ではない。概して、樹脂系中のCu、MnおよびFeの濃度は、硬化性化合物1kg当たり50mmol未満のCu、MnおよびFe、好ましくは、硬化性化合物1kg当たり20mmol未満のCu、MnおよびFeであろう。
【0019】
好ましくは、少なくとも第一脂肪族アミンが、化合物(b)を硬化させるために使用される。より好ましくは、第一脂肪族アミンおよび第二脂肪族アミンが、化合物(b)を硬化させるために使用される。好適な脂肪族アミンの例は、1,2−ジアミノエタン;1,2−ジアミノプロパン;1,3−ジアミノプロパン;1,4−ジアミノブタン;および2−メチル−1,5−ジアミノペンタン;1,3−ジアミノペンタン;2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン;2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン;1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン;2,2−ジメチル−l,1,3−ジアミノプロパン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;1,2−ジアミノシクロヘキサンおよび1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンである。
【0020】
ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂またはそれらの混合物である。本明細書で使用される場合、ビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリラート含有化合物、すなわち、少なくとも1個の反応性(メタ)アクリラート基を含む化合物である。好ましくは、当該樹脂系は、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物として、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂を含む。より好ましくは、当該樹脂系は、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物として、ビニルエステル樹脂を含む。さらにより好ましくは、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物は、ビニルエステル樹脂である。
【0021】
本発明の文脈において使用される不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂は、当業者に知られているような樹脂の任意のものであり得る。そうした樹脂の例は、J.M.S.−Rev.Macromol.Chem.Phys.,C40(2&3),p.139−165(2000)のM.Malik et al.のレビュー論文において見出され得る。著者らは、そのような樹脂の、それらの構造に基づく、以下の5つのグループへの分類について記載している。
(1)オルト樹脂:これらは、無水フタル酸、無水マレイン酸、またはフマル酸およびグリコール(例えば、1,2−プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールまたは水素化ビスフェノール−A)をベースとする。
(2)イソ樹脂:これらは、イソフタル酸、無水マレイン酸またはフマル酸、およびグリコールから調製される。
(3)ビスフェノール−A−フマラート:これらは、エトキシル化ビスフェノール−Aおよびフマル酸をベースとする。
(4)クロレンド酸系(chlorendics)は、塩素/臭素含有無水物またはフェノールから調製される樹脂である。
(5)ビニルエステル樹脂:これらは、主にその加水分解抵抗および優れた機械的性質のために使用される樹脂である。それらは、末端位にだけ(例えば、エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、フェノール−ノボラック型のエポキシ樹脂、またはテトラブロモビスフェノール−Aをベースとするエポキシ樹脂)と(メタ)アクリル酸との反応によって導入された)不飽和部位を有する。(メタ)アクリル酸の代わりに、(メタ)アクリルアミドもまた使用され得る。
【0022】
Malik et al.に記載されているようなビニルエステル樹脂に加えて、ビニルエステルウレタン樹脂(ウレタン(メタ)アクリラート樹脂とも称される)のクラスもまた、本明細書においてビニルエステル樹脂であると考えられる。好ましいビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリラート官能性樹脂としても知られる、少なくとも1個の(メタ)アクリラート官能性末端基を含有するオリゴマーまたはポリマーである。これは、ビニルエステルウレタン樹脂のクラスも包含する。好ましいビニルエステル樹脂は、ウレタンメタクリラート樹脂を含むメタクリラート官能性樹脂である。好ましいメタクリラート官能性樹脂は、エポキシオリゴマーまたはポリマーとメタクリル酸またはメタクリルアミドとの、好ましくはメタクリル酸との反応によって得られる樹脂である。
【0023】
ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)は、好ましくは少なくとも200ダルトン、より好ましくは少なくとも300ダルトン、さらにより好ましくは少なくとも500ダルトンの数平均分子量Mを有する。ラジカル共重合を行うことが可能な化合物は、好ましくは最大10,000ダルトン、より好ましくは最大5000ダルトンの数平均分子量を有する。本明細書で使用される場合、数平均分子量(M)は、ポリスチレン標準を使用するGPCを用いてテトラヒドロフラン中で測定されるものである。
【0024】
好ましくは、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)は、ラジカル重合性化合物のアミンとの塩形成を防止するために、可能な限り低い酸価を有する。ラジカル共重合を行うことが可能な化合物は、好ましくは最大60mgKOH/g、より好ましくは最大40mgKOH/g、より好ましくは最大10mgKOH/g、さらにより好ましくは最大5mgKOH/g、さらにより好ましくは0mgKOH/gの酸価(ISO 2114−2000に準じて測定される)を有する。このことを考慮すると、好ましくは、ビニルエステル樹脂が、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物として使用される。
【0025】
本発明に従う系は、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物(b)として、エポキシド官能性樹脂、すなわち、少なくとも1個のエポキシド基を含有する樹脂を含む。より好ましくは、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物は、エポキシド官能性樹脂である。好ましくは、本発明に従う系は、ビスエポキシド(2個のエポキシド基を含有する)をエポキシド官能性樹脂として含む。好ましい実施形態において、エポキシド官能性樹脂は、ビスエポキシドである。
【0026】
好ましくは、エポキシド官能性樹脂は、グリシジルエーテルをエポキシド官能基として含む。好ましい実施形態において、本発明に従う樹脂系は、グリシジルエーテルをエポキシド官能性樹脂として含む。より好ましい実施形態において、エポキシド官能性樹脂は、グリシジルエーテルである。
【0027】
第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物(b)は、好ましくは少なくとも300ダルトン、より好ましくは少なくとも500ダルトン、さらにより好ましくは少なくとも750ダルトンの数平均分子量Mを有する。第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物は、好ましくは最大10,000ダルトン、より好ましくは最大5000ダルトンの数平均分子量を有する。
【0028】
当該樹脂系が不飽和ポリエステル樹脂および/または(メタ)アクリラート官能性樹脂を含む場合において、当該樹脂系は、好ましくは、反応性希釈剤をさらに含む。例えば希釈剤は、当該樹脂系の取扱いをより容易にするために樹脂系の粘度を調節するのに利用されるであろう。さらに、希釈剤が樹脂中の反応性部分と反応性がある基を含有すれば、硬化生成物中の架橋の調節が達成され得る。この場合、その希釈剤は、反応性希釈剤と呼ばれる。反応性希釈剤は、あらゆる種類のそのような反応性基を含有し得るが、その基は、樹脂中の反応性部分と同一であることもあり得る。
【0029】
本発明の1つの実施形態において、反応性希釈剤の少なくとも一部は、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能である。
【0030】
より好ましい別の実施形態において、反応性希釈剤の少なくとも一部は、ラジカル共重合が可能である。好適なモノマーの例は、例えば、アルケニル芳香族モノマー(例えば、スチレンおよびジビニルベンゼンなど)、(メタ)アクリラート、ビニルエーテルおよびビニルアミドであるが、当業者に知られているような、熱硬化性樹脂の分野における使用のためのあらゆる他の反応性モノマーが使用され得る。好ましいモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリラート、tert−ブチルスチレン、tert−ブチルアクリラート、ブタンジオールジメタクリラートおよびそれらの混合物である。(メタ)アクリラート反応性希釈剤の好ましい例は、PEG200ジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、2,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラートおよびその異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、PPG250ジ(メタ)アクリラート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリラート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラートおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラートである。好ましくは、(メタ)アクリラートが、反応性希釈剤として使用される。
【0031】
さらに別の実施形態において、反応性希釈剤の少なくとも一部は、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能であるだけでなく、ラジカル共重合も可能であり、この場合に、セミIPNが形成されることになる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、樹脂系は、少なくとも2個の反応性官能基を有する架橋性化合物(bridging compound)を含み、そのうち1個の官能基は、ラジカル共重合を行うことが可能であり、1個の官能基は、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能である。そのような架橋性化合物の存在により、低温性能がより一層改善されるという結果がもたらされることが見出された。
【0033】
好ましくは、架橋性化合物は、アクリラート、メタクリラート、ビニルエーテル、ビニルエステルおよびアリルエーテルからなる群から選択され、より好ましくはメタクリラートまたはアクリラートであり、さらにより好ましくはメタクリラートである、ラジカル硬化性官能基、すなわちラジカル共重合を行うことが可能な官能基を含有する。より好ましくは、架橋性化合物のラジカル硬化性官能基は、アクリラート、メタクリラート、ビニルエーテル、ビニルエステルおよびアリルエーテルから選択され、より好ましくは、メタクリラートまたはアクリラートであり、さらにより好ましくは、メタクリラートである。
【0034】
好ましくは、架橋性化合物は、イソシアナート、エポキシド、アセトアセトキシ、シュウ酸−アミドまたは環状カルボナート、より好ましくはエポキシド、さらにより好ましくはグリシジルエーテルを、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な官能基として含有する。より好ましくは、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な橋かけ成分の官能基は、イソシアナート、エポキシドおよび環状カルボナートからなる群から選択され、より好ましくは、エポキシドであり、さらにより好ましくは、グリシジルエーテルである。
【0035】
好ましい実施形態において、架橋性化合物のラジカル共重合性官能基はメタクリラートであり、アミン反応性官能基はエポキシド官能基である。
【0036】
好ましくは、架橋性化合物のMは、400ダルトン未満であるが、なぜならこれが、低温性能がより一層改善されるという結果をもたらすからであり、より好ましくは350ダルトン未満であり、さらにより好ましくは300ダルトン未満であり、さらにより好ましくは250ダルトン未満である。
【0037】
好ましい実施形態において、樹脂系は、グリシジルメタクリラートを架橋性化合物として含む。より好ましい実施形態において、架橋性化合物は、グリシジルメタクリラートである。
【0038】
本発明に従う樹脂系中のラジカル重合性官能基と第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な官能基とのモル比は、好ましくは10:1〜1:10であり、より好ましくは5:1〜1:5であり、さらにより好ましくは3:1〜1:3である。本明細書で使用される場合、あらゆる所与の範囲の全ての上方の境界および/または下方の境界について、境界値は、その範囲に含まれる。
【0039】
本発明に従う樹脂系中のエポキシド官能基とアミン−NH−官能基とのモル比は、好ましくは5:1〜1:5であり、より好ましくは3:1〜1:3であり、さらにより好ましくは2:1〜1:2であり、さらにより好ましくは1.5:1〜1:1.5であり、最も好ましくは1:1である。明確にするために述べると、第一アミンは2個のNH官能基を有し、第二アミンは1個のNH官能基を有する。
【0040】
好ましくは、当該樹脂系は、その保存安定性をさらに改善するために、保存安定剤をさらに含む。好ましくは、保存安定剤は、安定なラジカル、フェノール化合物、ヒドロキノン、カテコール、フェノチアジンおよびそれらの混合物の群から選択される。本発明に従う樹脂組成物の保存安定性を改善するために使用され得る保存安定剤の好適な例は、例えば、2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチル−フェノール、2,4,6−トリス−ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−メチレンジ−p−クレゾール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、カテコール、4−t−ブチルカテコール、4,6−ジ−t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン(napthoquinone)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(TEMPOLとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(TEMPONとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−カルボキシル−ピペリジン(4−カルボキシ−TEMPOとも称される化合物)、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチル−3−カルボキシルピロリジン(3−カルボキシ−PROXYLとも呼ばれる)、ガルビノキシル、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジンおよび/またはこれらの化合物の任意のものの誘導体もしくは組み合わせである。
【0041】
当該技術分野において知られているように、保存安定剤(当該技術分野においてはしばしば重合抑制剤または簡単に抑制剤と呼ばれる)は、通常、時期尚早のゲル化を防ぐために、そしてそのようなものとして保存寿命を増大するために、硬化性樹脂組成物中に存在する。この保存安定性に対する効果に加えて、抑制剤はまた、硬化剤の添加による硬化のゲル化時間を調整するためにも使用され得る。一般的に、抑制剤はラジカルを消費するので、全ての抑制剤が、重合を遅らせ、硬化剤の添加による硬化のゲル化時間を引き延ばす。樹脂系を使用する際に使用者に十分な作業時間を確保するために、ある一定のゲル化時間が要求される。1種もしくは複数種の保存安定剤は、好ましくは、多成分樹脂系の化合物(a)を少なくとも含む成分中に存在する。
【0042】
今回、驚くべきことに、安定なオキシルラジカルおよびフェノチアジンのみが、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物として不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂とを含む樹脂組成物の、脂肪族アミンおよび過酸化物の添加による硬化のゲル化時間を引き延ばすことができることが見出された。
【0043】
メタクリラートのための保存安定剤としてしばしば利用される、フェノール化合物またはジヒドロキシ芳香族化合物を使用すると、所望の硬化遅延効果がもたらされない。特に、フェノール化合物(例えば、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール)およびp−メトキシフェノールなど)は、驚くべきことに、ゲル化時間にほとんど影響を及ぼさず、そしてジヒドロキシ芳香族化合物(例えば、ヒドロキノンおよびカテコールなど)は、驚くべきことに、硬化を遅らせるのではなく硬化を速める。
【0044】
したがって、本発明に従う樹脂系は、好ましくは、安定な(室温および大気圧で)オキシルラジカルおよび/またはフェノチアジンを、重合抑制剤としてさらに含む。本明細書で使用される場合、重合抑制剤は、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物として不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂とを含む組成物の、過酸化物と第一および/または第二脂肪族アミンとの添加による硬化を遅らせ、したがってゲル化時間を引き延ばす、化合物である。
【0045】
安定なオキシルラジカルは、好ましくは、以下の式
【化1】


に従う安定なN−オキシルラジカルの群から選択され、式中、RおよびR’は、同じかまたは異なるC〜C20アルキルもしくはC〜C20アルキルアリールである。RおよびR’は、シクロアルキル基の一部であり得る。好ましくは、RおよびR’は、同じかまたは異なるC〜C20アルキルであり、より好ましくはtert−C〜C20アルキルである。
【0046】
本発明の1つの実施形態において、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物として不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂とを含む組成物の、過酸化物と第一および/または第二脂肪族アミンとの添加による硬化は、安定なオキシルラジカルの存在下で硬化を行うことによって遅延される。当業者は、硬化の所望の遅延を達成するために使用され得るような安定なオキシルラジカルの好適な量を決定することができるであろう。安定なオキシルラジカルの(全樹脂組成物に対する)量は、好ましくは少なくとも10ppmであり、より好ましくは少なくとも25ppmである。安定なオキシルラジカルの(全樹脂組成物に対する)量は、好ましくは多くとも500ppmであり、より好ましくは多くとも200ppmである。好ましい実施形態において、安定なオキシルラジカルの(全樹脂組成物に対する)量は、10ppm〜500ppmである。したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明に従う樹脂系は、安定なオキシルラジカルを含んでおり、保存寿命が引き延ばされ得、かつゲル化時間が増加され得るという結果をもたらす。
【0047】
本発明の別の実施形態において、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物として不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂とを含む組成物の、過酸化物と第一および/または第二脂肪族アミンとの添加による硬化は、フェノチアジンの存在下で硬化を行うことによって遅延される。当業者は、硬化の所望の遅延を達成するために使用され得るようなフェノチアジンの好適な量を決定することができるであろう。フェノチアジンの(全樹脂組成物に対する)量は、好ましくは少なくとも10ppmであり、より好ましくは少なくとも100ppmであり、さらにより好ましくは少なくとも200ppmである。フェノチアジン(全樹脂組成物に対する)量は、好ましくは多くとも15000ppmである。好ましい実施形態において、フェノチアジンの(全樹脂組成物に対する)量は、200ppm〜15000ppmである。したがって、本発明のこの実施形態において、本発明に従う樹脂系は、フェノチアジンを含んでおり、ゲル化時間が増加され得るという結果をもたらし、さらに、驚くことに、ハイブリッド硬化樹脂系の低温性能が維持されるかまたは向上されさえし得るという結果をもたらす。
【0048】
別の実施形態において、本発明に従う樹脂系は、安定なオキシルラジカルおよびジヒドロキシベンゼン化合物を含む。好適なジヒドロキシベンゼン化合物の例は、ヒドロキノン、カテコールおよびレゾルシノールである。本発明のこの実施形態において、樹脂系の保存寿命が引き延ばされ得、かつラジカル共重合を行うことが可能な化合物として不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂とを含む樹脂組成物の、過酸化物と第一および/または第二脂肪族アミンとの添加による(例えばゲル化時間によって示されるような)硬化が、安定なオキシルラジカルおよびジヒドロキシベンゼン化合物の存在下で硬化を行うことによって調整され得る。硬化は、安定なオキシルラジカルおよびジヒドロキシベンゼン化合物の適切な量を選択することによって、所望されるように調整され得る。当業者は、所望の硬化調整効果を達成するために使用され得るような安定なオキシルラジカルおよびジヒドロキシベンゼン化合物の適切な量を決定することができるであろう。ジヒドロキシベンゼン化合物の(全樹脂組成物に対する)量は、好ましくは少なくとも10ppmであり、より好ましくは少なくとも25ppmである。ジヒドロキシベンゼン化合物の(全樹脂組成物に対する)量は、好ましくは多くとも500ppmであり、より好ましくは多くとも200ppmである。好ましい実施形態において、ジヒドロキシベンゼン化合物の(全樹脂組成物に対する)量は、10ppm〜500ppmである。好ましいジヒドロキシベンゼン化合物は、1,2−および1,4−ジヒドロキシベンゼン化合物であり、これらの化合物は、任意選択で、ベンゼン基上に他の置換基をさらに含有する。
【0049】
さらに、驚くべきことに、本発明に従う樹脂系中の安定なオキシラジカルおよびジヒドロキシベンゼン化合物の存在が、室温での引抜き性能に対する相乗効果をもたらすことが見出された。引抜き性能の改善は、安定なオキシラジカルとさらにジヒドロキシベンゼン化合物も用いる方が、それぞれの単独での効果よりも大きくなる。
【0050】
さらに別の実施形態において、本発明に従う樹脂系は、フェノチアジンおよびジヒドロキシベンゼン化合物を含む。本発明のこの実施形態において、ハイブリッド硬化樹脂系の低温性能が向上され得、かつラジカル共重合を行うことが可能な化合物として不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂とを含む樹脂組成物の、過酸化物と第一および/または第二脂肪族アミンとの添加による(例えばゲル化時間によって示されるような)硬化が、フェノチアジンおよびジヒドロキシベンゼン化合物の存在下で硬化を行うことによって調整され得る。硬化は、フェノチアジンおよびジヒドロキシベンゼン化合物の適切な量を選択することによって、所望されるように調整され得る。当業者は、所望の硬化調整効果を達成するために使用され得るようなフェノチアジンおよびジヒドロキシベンゼン化合物の適切な量を決定することができるであろう。
【0051】
さらに別の実施形態において、本発明に従う樹脂系は、安定なオキシルラジカル、フェノチアジンおよびジヒドロキシベンゼン化合物を含む。本発明のこの実施形態において、ハイブリッド硬化樹脂系の低温性能が向上され得、当該樹脂系の保存寿命が引き延ばされ得、かつラジカル共重合を行うことが可能な化合物として不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂とを含む樹脂組成物の、過酸化物と第一および/または第二脂肪族アミンとの添加による(例えばゲル化時間によって示されるような)硬化が、安定なオキシルラジカル、フェノチアジンおよびジヒドロキシベンゼン化合物の存在下で硬化を行うことによって調整され得る。
【0052】
本発明に従う樹脂系において、充填剤および/または繊維も存在し得る。多種多様な充填剤(例えば、シリカ、砂、セメント、顔料などであるが、これらに限定されない)が使用され得る。多種多様な繊維(例えば、ガラスおよび炭素繊維などであるが、これらに限定されない)が使用され得る。
【0053】
本発明はまた、多成分樹脂系の化合物を過酸化物と一緒に混合することによる、または上記のような多成分樹脂系の異なる成分を混合することによる、本発明に従う多成分樹脂系を硬化させるための方法に関する。硬化は、好ましくは−20℃〜+200℃の範囲内、好ましくは−20℃〜+100℃の範囲内、最も好ましくは−10℃〜+60℃の範囲内(いわゆる常温硬化)の温度で行われる。好ましくは、モノペルカルボナートまたはペルエステルが、過酸化物として使用される。より好ましくは、ペルエステルが、過酸化物として使用される。過酸化物および脂肪族アミンが別個に樹脂組成物中に入れられる場合の、好ましくは上記のような三成分樹脂系が利用される実施形態において、好ましくは、脂肪族アミンが最初に樹脂組成物に添加され、続いて過酸化物が添加される。別の実施形態においては、アミンおよび過酸化物が最初に混合され、結果として生じる混合物が、本発明に従う樹脂組成物中に入れられる。この実施形態においては、好ましくは、上記のような二成分系が利用される。
【0054】
好ましい実施形態において、樹脂組成物の硬化は、第一脂肪族アミンおよび/または第二脂肪族アミンを用い、そしてペルエステルを用いて行われる。
【0055】
本発明はさらに、過酸化物を用いて化合物(a)、(b)、(c)および(d)を含む多成分樹脂系を硬化させることによって得られるか、または多成分系の異なる成分を混合することによって得られるか、または上記のような硬化のための方法を用いて得られる、硬化構造物に関する。
【0056】
本発明はさらに、自動車部品、船、化学定着、屋根材、建設、容器、リライニング、パイプ、タンク、床張り材、風車羽根の分野のいずれか1つにおける硬化物の使用に関する。
【0057】
次に、一連の実施例および比較例によって本発明を説明する。全ての実施例は、特許請求の範囲を支持するものである。しかしながら、実施例に示されるような特定の実施形態に、本発明が限定されるわけではない。
【0058】
[ゲルタイマー試験]
以下に示される実施例および比較例のほとんどにおいて、硬化は標準ゲル化時間装置によってモニタリングされたということが言及される。これは、実施例および比較例に示されているような過酸化物を用いて樹脂を硬化させる際に、ゲル化時間(TgelまたはT25−>35℃)およびピーク時間(TpeakまたはT25−>peak)の両方が、DIN 16945の方法に準じた発熱測定によって測定されたことを意味することが意図される。したがって、使用した装置は、PeakproソフトウェアパッケージおよびNational Instrumentsハードウェアを備えた、Soformゲルタイマーであった。使用した水浴およびサーモスタットは、それぞれ、Haake W26およびHaake DL30であった。
【0059】
[引抜き試験]
引抜きのための制限された設定を用いた標準として14mmドリル穴およびM12 12.9鋼アンカーを使用し設置深さを72mmとするコンクリートからの引抜き試験からの類推である、硬化組成物の機械的強度を評価した。
【0060】
この試験では、無充填樹脂配合物を使用した。列挙された値(kニュートン)は、6回の測定の平均値である。
【0061】
[樹脂混合物A]
樹脂配合物は、1.93kgのビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート(化合物(a);ビニルエステル樹脂)、5.14kgのビスフェノールAジグリシジルエーテル(化合物(b);ビスエポキシド)、1.28kgのブタンジオールジメタクリラートBDDMA(反応性希釈剤)および1.61kgのグリシジルメタクリラート(架橋性化合物)を混合することによって調製した。
【0062】
[実施例1〜10および比較試験A〜K]
最終配合物は、100gの樹脂混合物Aをベースとして、下記の表(量はg単位である)に示されるように調製した。
【0063】
【表1】



【0064】
まず、これらの試験は、ペルエステル(例えば、Trigonox C)およびモノ−ペルカルボナート(例えば、Trigonox 117)の群から選択される過酸化物および遷移金属促進剤の両方が、ゲル化時間および大きいピーク発熱量によって示されるような室温での迅速かつ良好な硬化ならびに−5℃での引抜き値によって示されるような低温での良好な機械的強度を得るために必要とされるということを示している。他方において、これはまた、Cook et allにより使用されているような過酸化物ベースの硬化系、すなわち、Co/Butanox M50、Peroxan CU80LまたはTrigonox Bが、低温では良好な機械的性質をもたらさず、室温でも十分なラジカル硬化を生じない(表2参照;量はg単位である)ことも示している。また、別の標準的な硬化系BPO/アミンも、低温で良好な機械的性質をもたらさない。
【0065】
【表2】



【0066】
表3に示されるように、ペルエステルおよびモノペルカルボナートに加えて、他の過酸化物をCu、MnおよびFeの群から選択される遷移金属促進剤とともに使用しても、−5℃での性能およびRTでの良好な値を得ることができる。
【0067】
【表3】



【0068】
表1〜3は、合わせると、種々の過酸化物と組み合わせたCu、MnおよびFeの群から選択される遷移金属が、室温での良好な性能を得るためおよび−5℃での改善された性能を得るために使用されるべきであるということを明示している。
【0069】
[比較試験Lおよび実施例11〜14]
配合物(表4参照;別段の記載がない限り、量はg単位である)を、100gの樹脂混合物Aを使用して調製した。
【0070】
【表4】



【0071】
これらの実施例は、促進剤としてのCu、MnまたはFe化合物の使用が、Co化合物の使用と比較して、改善された低温性能をもたらすということを明示している。これらの実施例はさらに、低温性能については、CuおよびMnをペルエステルと組み合わせると好ましいということを示している。
【0072】
[実施例15〜21]
配合は、適切な量のCuおよびTempolが添加された(表5参照、別段の記載がない限り、量はg単位である)100gの樹脂混合物Aを使用することに基づいた。硬化配合物を、室温での5日後に引抜いた。
【0073】
【表5】



【0074】
これらの結果は、およそ0.0025mmol Cu/kg樹脂の量ですでに、良好な結果が得られ得ることを明確に示している。さらに、これらの結果は、0.0125mmol Cu/kg樹脂より多い量、さらにより好ましくは0.025mmol Cu/kg樹脂の範囲内の量を使用することが好ましいということを示している。0.025mmol/kg樹脂を超えると、Cuの量は、もうほとんど引抜き値に影響を与えない。
【0075】
[実施例22〜27]
配合物は、100gの樹脂混合物Aをベースとし、これに0.1gの8重量%Cu溶液を溶解させ、次に20ppmのTempolを抑制剤として添加し、攪拌後、続いてDytek Aおよび過酸化物を添加したものであった。アンカーは、5日後に引抜いた。
【0076】
【表6】



【0077】
この結果は、様々な量の過酸化物を用いて良好な結果が得られ得ることを示している。
【0078】
[実施例28]
樹脂配合物は、100gの樹脂混合物Aをベースとし、これに0.4gの8重量%Cu溶液を溶解させたものであった。硬化は、100gの樹脂配合物に、12.5gのDytek Aおよび1.6gのTrigonox Cを加えることによって行った。いくつかの異なる種類のドリル穴を、本実施例において使用した。
【0079】
【表7】



【0080】
本実施例は、本発明に従って、低温および高温の両方で、良好な値が得られ得るということを明示している。さらに、大きいドリル穴および湿潤な半分空けた穴においても得られた良好な値は、様々な条件下で良好な機械的性質が得られたことを示している。
【0081】
[実施例28〜32]
[使用した樹脂(化合物(a))]
樹脂B:ビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート(Aldrich)(ビニルエステル樹脂)
【0082】
樹脂C(ビニルエステル樹脂):反応容器に424.8gのビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび82gのビスフェノールAを投入し、続いて160℃まで加熱した。反応混合物を全てのビスフェノールAが反応するまで(少なくとも2時間)この温度で維持し、続いて110℃まで冷却し、126.2gのメタクリル酸をこの温度で少なくとも1時間にわたってゆっくりと添加し、この温度でさらに1時間攪拌した後に、反応混合物を室温まで冷却し、酸価<5mgKOH/gを有する樹脂Cを得た。
【0083】
樹脂D(ビニルエステルウレタン樹脂):575gのメチレン−1,1’−ジフェニル−ジイソシアナートMDIおよび0.3gのジラウリン酸ジブチルスズを投入した攪拌反応器に、71gのジプロピレングリコールを、温度が60℃を超えないような速度で添加した。60℃で30分間攪拌後、792gのヒドロキシプロピルメタクリラートHPMAを添加すると、温度は90℃まで上昇した。混合物を90℃で2時間攪拌後、室温まで冷却した後に、樹脂Dを得た。
【0084】
樹脂E(不飽和ポリエステル樹脂):反応容器に、402.6gのプロピレングリコール、492.7gのエチレングリコール、908.6gの無水マレイン酸および196gの無水フタル酸を投入した。反応容器を140℃までゆっくりと加熱し、この温度で2時間維持し、続いて210℃まで加熱した。210℃で3時間後に真空を適用し、10mgKOH/g樹脂の酸価が得られるまで反応を継続した後に、反応物を室温まで冷却し、不飽和ポリエステル樹脂Eを得た。
【0085】
いくつかの配合物を、表8(量はg単位)に従って調製し、Dytek AおよびTrigonox C(t−ブチルペルベンゾアート、Akzo)を用いて硬化させた。
【0086】
【表8】



【0087】
これらの実施例は、様々な樹脂が、本発明に従って使用され得るということを明示している。また、これは、様々な反応性希釈剤が使用され得ることも示している。BDDMA=1,4−ブタンジオールジメタクリラート;HPMA=ヒドロキシプロピルメタクリラート。
【0088】
[実施例33〜37]
配合物を、192gのビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート、128gの反応性希釈剤、161gのグリシジルメタクリラートGMA、514gのビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび4gのナフテン酸Cu(Cu naphtenate)(8重量%Cu)溶液から作製した。硬化を、124gのDytek Aを添加し、すぐに続けて16gのTrigonox Cを添加することによって行った。
【0089】
引抜き試験の結果を、次の表に示す。
【0090】
【表9】



【0091】
これらの実施例は、様々な反応性希釈剤が使用され得るということを明示している。
【0092】
[実施例38〜40]
配合物を、192gのビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート、128gのブタンジオールジメタクリラート、161gのGMA、514gのビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび4gのナフテン酸Cu(Cu naphtenate)(8重量%Cu)溶液から作製した。硬化を、124gのジアミンを添加し、すぐに続けて16gのTrigonox Cを添加することによって行った。
【0093】
引抜き試験の結果を、次の表に示す。
【0094】
【表10】



【0095】
これらの実施例は、様々な脂肪族アミンが本発明に従って使用され得ることを明確に示している。
【0096】
[実施例41〜45]
ビスフェノールAグリセロラートジメタクリラートを、40%BDDMAで希釈した。この希釈した樹脂を用い、様々な配合物を調製し(表11参照、量はg単位である)、引抜き試験で試験した。
【0097】
【表11】



【0098】
これらの実施例は、様々な量のこれらの化合物が本発明に従って使用され得ることを明確に示している。
【0099】
[実施例46]
樹脂配合物を、2kgのブタンジオールジメタクリラート、3kgのビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび22gのナフテン酸Cu(Cu naphtenate)(8重量%Cu)溶液をベースとして調製した。100gのこの混合物に、様々な量の様々な化合物x(表参照)を添加した。化合物xを溶解させた後、混合物を、ゲルタイマーにおいて、10.2gのDytek Aおよび2.2gのTrigonox Cを用いて硬化させた。結果を次の表に示す。
【0100】
【表12】



【0101】
これらの試験は、安定なオキシルラジカルであるTempolが、本発明に従う配合物の硬化を遅らせるための良好な抑制剤であるということを明示している。メタクリラートのための一般的に使用されている保存安定剤であるBHTおよびp−メトキシフェノールなどの単純なフェノール類は、ゲル化時間にほとんど影響を与えないので使用するには好ましくないが、ヒドロキノンおよびカテコールなどのジヒドロキシ芳香族化合物は、促進効果があるため促進剤として非常に有用である。特に、安定なオキシルラジカルとジヒドロキシ芳香族化合物との組み合わせは、これらの系の反応性を調整するために非常に有利に使用され得る。Tempolに加えて、フェノチアジンもまた、長いゲル化時間を得るための良好な抑制剤である。
【0102】
[実施例47〜59]
樹脂配合物を、1.93kgのビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート、5.14kgのビスフェノールAジグリシジルエーテル、1.28kgのブタンジオールジメタクリラート、1.61kgのグリシジルメタクリラートおよび9.9gのナフテン酸Cu(Cu naphtenate)(8重量%Cu)溶液を混合することによって調製した。
【0103】
100gのこの混合物に、様々な量の様々な抑制剤(表参照)を添加した。抑制剤を溶解させた後、混合物を、12.4gのDytek Aおよび0.5gのTrigonox Cを用いて硬化させた。
【0104】
【表13】



【0105】
これらの実施例は、引抜き値に関し、安定なオキシルラジカルとジヒドロキシ芳香族化合物との組み合わせを使用することには、これらの組み合わせを用いてそれらの個々の成分と比較してより高い荷重値が得られたように、相乗効果さえあるが、安定なオキシルラジカルと単純なフェノール化合物との組み合わせを使用する場合は、それらの個々の成分と比較してその組み合せの荷重値がより低くなることが認められるということを示している。
【0106】
【表14】



【0107】
この表は、フェノチアジンが、低温での性能に影響を及ぼすことなくゲル化時間を調整するための良好な抑制剤であることを示している。この結果は、Tempolを抑制剤として使用してゲル化時間を45分に調整した場合には、これは−5℃で硬化された場合にアンカーが人手により抜き取られ得るという結果をもたらすので、一層驚くべきことである。
【0108】
[実施例60]
成分Aとして樹脂配合物を、193gのビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート、128gのブタンジオールジメタクリラート、514gのビスフェノールAジグリシジルエーテル、161gのグリシジルメタクリラート、4gのスピリット中ナフテン酸Cu(Cu naphtenale)(8重量%Cu)、0.005gのTempolおよび0.002gのヒドロキノンを混合することによって調製した。
【0109】
成分Bとしてアミン過酸化物混合物を、124gのDytek Aおよび16gのt−ブチルペルベンゾアートを混合することによって調製した。
【0110】
ゲルタイマーにおいて25gの成分Aおよび3.5gの成分Bを使用して系の反応性を測定した結果、ゲル化時間は10.8分、ピーク時間は18.6分、そしてピーク温度は206℃であった。
【0111】
成分AおよびBの両方を室温で23週間保存した後、硬化を再度行った結果、ゲル化時間は12.9分、ピーク時間は20.8分、そしてピーク温度は205℃であった。
【0112】
この結果は、本発明に従う硬化に過酸化物アミン混合物を使用することが可能であるということを明示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択される、ラジカル共重合を行うことが可能な化合物と、
b.第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物として、エポキシド官能性樹脂と、
c.遷移金属化合物と、
d.第一および/または第二脂肪族アミンと
を含む多成分樹脂系において、
前記遷移金属は、Cu、Mn、Feおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、多成分樹脂系。
【請求項2】
前記遷移金属が、Cu、Mnおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の多成分樹脂系。
【請求項3】
前記ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)が、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の多成分樹脂系。
【請求項4】
前記ラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)が、ビニルエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多成分樹脂系。
【請求項5】
前記ビニルエステル樹脂が、少なくとも1個の(メタ)アクリラート官能性末端基を含有するオリゴマーまたはポリマーであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多成分樹脂系。
【請求項6】
前記エポキシド官能性樹脂(b)のエポキシド官能基が、グリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多成分樹脂系。
【請求項7】
前記樹脂系が、少なくとも2個の反応性官能基を有する架橋性化合物をさらに含み、前記反応性官能基のうち、1個の官能基は、ラジカル共重合を行うことが可能であり、かつアクリラート、メタクリラート、ビニルエーテル、ビニルエステルおよびアリルエーテルからなる群から選択され、そして1個の官能基は、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能であり、かつイソシアナート、エポキシド、アセトアセトキシ、シュウ酸−アミドおよび環状カルボナートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多成分樹脂系。
【請求項8】
前記樹脂系が、少なくとも2個の反応性官能基を有する架橋性化合物をさらに含み、前記反応性官能基のうち、1個の官能基は(ラジカル共重合を行うことが可能である)メタクリラートであり、1個の官能基は(第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能である)エポキシドであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多成分樹脂系。
【請求項9】
前記樹脂系が、抑制剤または抑制剤の混合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多成分樹脂系。
【請求項10】
前記抑制剤上の少なくとも1つは、安定なオキシルラジカルであることを特徴とする、請求項9に記載の多成分樹脂系。
【請求項11】
前記抑制剤上の少なくとも1つは、フェノチアジンであることを特徴とする、請求項9または10に記載の多成分樹脂系。
【請求項12】
前記樹脂系が、過酸化物をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の多成分樹脂系。
【請求項13】
前記系が少なくとも3つの成分A、BおよびCを含むことを特徴とする請求項12に記載の多成分樹脂系であって、成分Aは、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂(b)と、遷移金属化合物(c)とを含む樹脂組成物からなり、成分Bは、過酸化物を含む組成物からなり、そして成分Cは、第一および/または第二脂肪族アミン(d)を含む組成物からなる、多成分樹脂系。
【請求項14】
前記系が少なくとも2つの成分AおよびBを含むことを特徴とする請求項12に記載の多成分樹脂系であって、成分Aは、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル共重合を行うことが可能な化合物(a)と、第一および/または第二脂肪族アミンと反応することが可能な化合物としてエポキシド官能性樹脂(b)と、遷移金属化合物(c)とを含む樹脂組成物からなり、そして成分Bは、過酸化物と、第一および/または第二脂肪族アミン(d)とを含む組成物からなる、多成分樹脂系。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の多成分樹脂系を硬化させるための方法において、前記硬化が、請求項1〜11に記載の樹脂系の化合物を過酸化物と一緒に混合することによって、または請求項13もしくは14に記載の多成分樹脂系の成分を一緒にして混合することによって、行われることを特徴とする、方法。
【請求項16】
モノペルカルボナートまたはペルエステルが、過酸化物として使用されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ペルエステルが、過酸化物として使用されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
過酸化物を用いて請求項1〜11のいずれか一項に記載の多成分樹脂系を硬化させることによって得られるか、または請求項13もしくは14に記載の多成分系の成分を混合することによって得られるか、または請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法を用いて得られる、硬化構造物。

【公表番号】特表2013−519747(P2013−519747A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552412(P2012−552412)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052040
【国際公開番号】WO2011/098562
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】