説明

多色油性固型化粧料

【課題】 外観的に需用者の目を引くものでありながら、需用者が求める塗布色を簡単に選択できる多色油性固型化粧料を提供すること。
【解決手段】 塗布色を呈する有色の第一の部分組成物と、これに挟まれた状態の見せ色を呈する有色の第二の部分組成物からなる油性固型化粧料であって、第一の部分組成物と第二の部分組成物は、それらの重量比が9:1〜7:3であり、第一の部分組成物を塗布した際の隠蔽度と第二の部分組成物を塗布した際の隠蔽度の差が、15以上であることを特徴とする多色油性固型化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多色油性固型化粧料に関し、更に詳細には、組成物中に彩りを与える異なる色部分を有しながら、塗布に際してはこの色が実質的に塗布色に影響を与えることのない多色油性固型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅、アイカラー、チークカラー等のメークアップ化粧料は彩りを与えることにより、使用部位を際立たせる化粧効果をもつものである。これらは、使用者の意向により様々な色彩を持つものが開発されており、多くの色調のものが提供されている。
【0003】
また近年では、成型品において異なった色調を有する化粧料が提供されており、例えば、異なるバルクを一つの吐出ノズルに供給し、振動を与えながら充填することにより、多色固型化粧料を製造する方法が知られている(特許文献1)。しかしこのものは、放射状の多色模様のものであり、境界があいまいな外観であって、強いインパクトを与えるというものではない。また、塗布後の塗布色は、二色が混合されたものであり、化粧料の選択、使用が難しいという問題がある。
【0004】
また、特許文献2には、加熱充填時の粘度が100cst以上である多色固体化粧料が開示されている。しかしながら、この文献に開示された技術は、仕切りを設けずに、多色を充填する技術であり、しかも、棒状の化粧料には触れていないものである。そして、このものも特許文献1と同様、塗布後の塗布色は、二色が混合されたものであり、化粧料の選択、使用が難しいという問題がある。
【0005】
油性固型化粧料などの、メークアップ化粧料において、多色充填されたものは、各々の色差が大きいものほど外観上、目立ちやすく、需要者を魅了する視覚的効果が高いため、その点では、複数の色を用いた油性固型化粧料は好ましいものである。しかし一方、化粧料の選択に当たって需用者は、まず、外観色から塗布色を予想し、購入することが一般的であるので、実際に使用したときの塗布色が、多色が混ざり合った色になり、事前の予想と異なることは不都合である。従って、一定部分の外観色と予想される塗布色が事実上同一となるような多色の油性固型化粧料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−002207号公報
【特許文献2】特開2002−097112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、外観的に需用者の目を引くものでありながら、需用者が求める塗布色を簡単に選択できる多色油性固型化粧料の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく多色油性固型化粧料、特に棒状の多色油性固型化粧料に関し、鋭意研究を行った結果、複数の部分の組成を、塗布色として肌上で色を呈する部分と、実質的に塗布色として影響しない部分として調製し、これらを明確に分離された構造とすると、主要な部分の外観色と、塗布色がほぼ一致する多色油性固型化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、塗布色を呈する有色の第一の部分組成物と、これに挟まれた状態の見せ色を呈する有色の第二の部分組成物からなる油性固型化粧料であって、第一の部分組成物と第二の部分組成物は、それらの質量比が9:1〜7:3であり、第一の部分組成物を塗布した際の隠蔽度と第二の部分組成物を塗布した際の隠蔽度の差が、15以上であることを特徴とする多色油性固型化粧料である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多色油性固型化粧料は、外観が明確に相違のある2色以上の多色であるため、審美性が高く、需用者の注意を引くものである。しかも、皮膚等に塗布した場合は、実質的に第一の部分組成物の外観色しか発色しないため、適用時の塗布色がその外観色で分かり、需用者が購入しやすいものである。
【0011】
また、第一の部分組成物と第二の部分組成物を、同じ油性成分構成とした場合は、これらの接着性ないし密着性が極めて良いため、安定性や強度が高く、成形品としての品質が安定しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の多色油性固型化粧料の外観を示す図面(写真)である。図中、右側の色の異なる部分が、他の塗布色の部分に挟み込まれている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多色油性固型化粧料は、これを皮膚に塗布することにより塗布色(付け色)を呈する第一の部分組成物(以下、「第一部分」ということがある)と、見せ色(アクセント色)を呈する有色の第二の部分組成物(以下、「第二部分」ということがある)からなるものである。
【0014】
この第一部分と第二部分は、それらの質量比として、9:1〜7:3であり、それらの間は、その境界が明確に区別できる外観となっている。そして、その構造は、第一部分/第二部分/第一部分のように、第二部分は、第一部分に挟み込まれているものとなっている。この挟み込まれた状態は、図1で示すように、サンドイッチ型に第二部分が挟み込まれたものであっても、第一部分の中に四角柱、円柱、多角柱などの柱状で第二部分が存在する状態であっても良い。
【0015】
また、上記挟み込まれた第二部分は、多色油性固型化粧料の少なくとも塗布面に、常に出ていることが必要であり、塗布面における第一部分と第二部分の面積比は、9:1〜7:3の範囲であることが好ましい。この範囲であると視覚的効果が得られ、また、第一部分と実質的に同一な塗布色を得ることに有利である。
【0016】
この第一部分と第二部分を塗布した際の隠蔽度は、第一部分の方が大きく、かつ第二部分との差が15以上であることが必要である。なお隠蔽度は、次のようにして測定される数値である。すなわち、白色部分と黒色部分を有する隠蔽力試験紙に、加熱溶解した第一部分および第二部分を8ミルのドクターブレードにて塗布し、その黒色部分をバックとした際のL***値と、白色部分をバックとした際のそれぞれのL***値を測定することにより塗布色を測定し、第一部分の白色部分をバックとした時と黒色部分をバックとした時の測色値から、第一部分(a)の色差(ΔEB−W(a))を、第二部分(b)の白色部分をバックとした時と黒色部分をバックとした時の測色値から、第二部分の色差(ΔEB−W(b))をそれぞれ求める。次いで、求めた第一部分および第二部分の色差を隠蔽度とし、更にその違い(ΔEB−W(a)−ΔEB−W(b))を計算し、これを隠蔽度の差とする。
【0017】
本発明の第一部分および第二部分は、何れも油性成分(基剤)に、必要な顔料等を配合することにより調製されるものであるが、それらに要求される塗布後の性質により油性成分以外の成分においてはその配合が大きく異なる。
【0018】
すなわち、第一部分は、肌に塗布した際に塗布色を呈するものであるから、通常の着色を目的とする多色油性固型化粧料と同一な組成であって良い。従って、目的の塗布色となる色の顔料、隠蔽剤等を油性成分に加えることにより調製することができる。
【0019】
これに対し、第二部分は、多色油性固型化粧料としたときには、明かな見せ色(アクセント色)でありながら、肌に塗布した際は、塗布色に実質的に影響しないことが望ましいため、目的の見せ色となる色の顔料の配合は必要であるが、あまり強い色の顔料を配合することは、第一部分による塗布色に影響を与えるため好ましくない。また、第一部分と第二部分は外観色に差があると視覚的効果が高い。具体的には、第二部分の外観色が、L***表色系におけるa*値として13以下が好ましい。また、この第二部分は、単層である必要はなく、上記条件を満たす第二部分を複層とすることも可能である。
【0020】
上記したような関係の第一部分と第二部分の組み合わせの例としては、第一部分として、隠蔽性のある、酸化チタン、有機顔料および酸化鉄から選ばれる顔料を2質量%(以下単に「%」で示す)以上含むものを使用し、第二部分として、上記顔料を0.05〜1.5%の範囲で含むものを使用した組み合わせを挙げることができる。
【0021】
更に、上記第一部分および第二部分は、そのレオメーターによる硬度値が、250〜480gであることが好ましく、これらの硬度値の差は、200g以内であることが好ましい。なお、レオメーターによる硬度値の測定は、例えば、FUDO社製のレオメーターを用い、測定温度30℃、レンジ500gで3mmΦのアダプターを用い、6cm/分の速度で2mm針入させた時の値として測定すればよい。
【0022】
本発明の第一部分および第二部分の調製は、着色を目的とした油性固型化粧料の製造に用いられる油性成分、顔料、及び、上記した点を除き、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常の化粧料の製造に用いられる成分、例えば染料、界面活性剤、水性成分、水溶性高分子、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等を用いて行うことができる。
【0023】
このうち油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、種々の炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等を使用することができる。
【0024】
具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0025】
また顔料としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられ、通常化粧品に使用されるものであれば特に制限されず、いずれのものも使用することができる。
【0026】
具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、無水ケイ酸等の白色体質粉体、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色202号、赤色205号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられる。
【0027】
これら粉体は、一種または二種以上を用いることができ、必要に応じて、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等を用いて、公知の方法により表面処理を施したものであってもよい。
【0028】
更にまた、水性成分としては、水に可溶な成分であれば広く利用することができ、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、でんぷん糖、ラクチトール等の糖類、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸ナトリウム等の塩類、アロエベラ、ウィッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等及び水が挙げられる。
【0029】
また、界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0030】
更に、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0031】
次に、上記のようにして得られた第一部分および第二部分を用いて本発明の多色油性固型化粧料を製造する方法の一例について説明する。
【0032】
本発明の多色油性固型化粧料では、第一部分および第二部分の境界を明確に出すため、これらを区分けする型を利用する。すなわち、まず、固型化粧料調製用の金型中に、取り外し可能な型を取り付ける。この取り付けの際、固型化粧料において外側となる第一部分用空間と、挟み込まれる第二部分用空間を、それらの容積比で9:1〜7:3となるよう取り付けることが必要である。
【0033】
次いで、溶解された第一部分を、外側の第一部分用空間に充填し、次いで放冷してこれを固化させる。固化後、型を取り外すと中央に空洞が形成されるが、この空洞に、溶解された第二部分を充填し、放冷してこれを固化させる。そして、その後、上記金型中から固型化粧料を取り出すことにより多色油性固型化粧料を得ることができる。なお、第二部分を複層とする場合は、それに応じた空洞を生成するような型を利用すればよい。
【0034】
従って、本発明の多色油性固型化粧料の製造方法の態様の一例として、固型化粧料調製用金型中に、取り外し可能な型を、外側の第一の部分組成物用空間と挟み込まれる第二の部分組成物用空間がその容積比で9:1〜7:3となるよう取り付け、外側の第一の部分組成物用空間に溶解された有色の第一の部分組成物を充填し、次いでこれを固化させた後、型を取り外し、次いで形成された空洞に、溶解された有色の第二の部分組成物を充填し、次いでこれを固化させた後、上記金型中から固型化粧料を取り出す方法を挙げることができる。
【0035】
かくして得られた多色油性固型化粧料は、棒状化粧料とすることが好ましく、特に口紅、リップクリーム等の口唇化粧料とすることが好ましい。
【0036】
以上説明した本発明の多色油性固型化粧料が、第二部分として外観的に需用者の目を引く見せ色(アクセント色)を有しながら、塗布色は、第一部分のみとなり、需用者が求める塗布色を簡単に選択できる理由は、次の通りである。
【0037】
すなわち、第二部分は、第一部分に挟み込まれているため、どちらから皮膚上に塗布したとしても、最後は第一部分の塗布になる。そして、第一部分の隠蔽度は、第二部分に比べ飛躍的に大きいため、塗布された第二部分は簡単に隠蔽され、外観に影響を与えることがないのである。
【実施例】
【0038】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0039】
実 施 例 1 〜 4
多色油性スティック状口紅:
下記表1の組成および下記製法により、実施例1ないし4の多色油性スティック状口紅を調製した。
【0040】
( 組 成 )
【表1】

※1 PERFORMALENE 500(ニューフェーステクノロジー社製)
※2 セレシン810(日興リカ社製)
※3 キャンデリラワックスNC−1630(セラリカ野田社製)
※4 コスモール43(日清オイリオグループ社製)
※5 AEROSIL300(日本アエロジル社製)
※6 酸化チタン10〜20%含有

【0041】
( 製 法 )
A.(a)部分と(b)部分について、それぞれの成分(1)〜(7)を、別の容器中
、90℃にて均一に溶解する。
B.Aで得られた(a)部分および(b)部分について、それぞれ残りの成分(8)〜
(15)を加え、それぞれ均一に混合する。
C.取り外し可能な、二枚の分離金属板を備えた口紅成型用金型(中央の1/4が
(b)部分用の区画で、それ以外の両側が(a)部分用の区画に区分されている)
を用意し、(a)部分用の区画に、90℃の(a)成分を充填し、室温まで冷却
する。
D.次いで、金型中から分離金属板を取り外し、空洞となっている(b)部分用の区
画に溶解した成分(b)を充填する。
E.成分(b)が冷却後、成型物を金型から取り出し、スティック状化粧料を得る。
【0042】
得られた多色油性スティック状口紅の外観は、いずれも成分(a)部分中に、成分(b)部分が挟み込まれた二色のものであった。なお、実施例1の多色油性スティック状口紅の外観を図1に示す。
【0043】
試 験 例 1
色測定試験:
実施例1ないし4で得た各多色油性スティック状口紅について、下記のようにして、外観、バルク色、塗布色(白色バックおよび黒色バック)を測定した。
【0044】
イ.外観色
外観色は、目視にてその色を評価した。
【0045】
ロ.バルク外観色
バルク外観色は、加熱溶解した(a)部分の配合の組成物および(b)部分の配合の組成物を、それぞれガラスセルに流し込み、室温に冷却した後、L***値を測定した(測定機器:日本電色色差計SE−2000)。
【0046】
ハ.塗布色
塗布色は、白色部分と黒色部分を有する隠蔽力試験紙に、加熱溶解した(a)部分の配合の組成物および(b)部分の配合の組成物を8ミルのドクターブレードにて塗布し、そのL***値を測定することにより行った。
【0047】
また、各(a)部分および(b)部分のそれぞれについて、隠蔽力試験紙の白色部分をバックとした場合の測色値および黒色部分をバックとした場合の測色値から、各バック間での色差(ΔEB−W)、すなわち隠蔽度を求めた。更に、この(a)部分および(b)部分の色差((ΔEB−W))の違い(ΔEB−W(b)−ΔEB−W(a))を隠蔽度の差として表示した。これらの結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
この結果から明らかなように、いずれのスティック状口紅も、その隠蔽度の差が15以上であることが確認された。
【0050】
試 験 例 2
肌塗布試験:
実施例1ないし4で作成した多色油性スティック状口紅(発明品)を、人の肌上に塗布し、塗布した後の色を評価した。試料としては、実施例1ないし4で調製したものの他、各実施例の(a)部分のみで調製した油性スティック状口紅(比較品)を使用した。
【0051】
まず、各比較品について専門パネル4名が、その前腕部に一辺3cmの正方形状に(a)部分のみの比較品を均一な厚みになるように20回塗布し、塗布面のL***値を測定した。
【0052】
次いで、各発明品について、その(a)部分と(b)部分が8:2の割合で肌に接触するようにして、同様な方法で肌に塗布した後、塗布面のL***値を測定した。
【0053】
それぞれの実施例について、(a)成分のみの比較品の塗布部と、(a)部分と(b)部分とを有する発明品による塗布部での色差(ΔE(ab)−(a))の平均値を求め、表3に記載した。
【0054】
【表3】

【0055】
一般に同一人の肌の異なる部分での色差には、1から3程度の差があり、1から5程度の差では、実質的に差がないとされているが、上記表3の結果では、(a)成分単独の口紅および(a)と(b)成分を有する口紅を塗布した場合の色差は、1.755ないし2.615であって、塗布色について実質的に差がないことが確認された。
【0056】
実 施 例 5
多色油性固型アイカラー:
下記組成および製法により、赤茶色と薄黄色が明確に分かれた油性固型アイカラーを得た。
【0057】
( 組 成 )
(a)部分 (%)
(1)セレシンワックス※2 18
(2)流動パラフィン 20
(3)トリイソステアリン酸グリセリル 残量
(4)メチルポリシロキサン 10
(5)グリセリン 5
(6)ベンガラ 4
(7)ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末 10
(8)香料 0.5
【0058】
(b)部分 (%)
(1)ポリエチレンワックス※1 15
(2)スクワラン 20
(3)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 残量
(4)酢酸トコフェロール 0.1
(5)黄酸化鉄 0.05
【0059】
( 製 法 )
A.(a)部分の(1)〜(5)を90℃にて均一に溶解する。
B.Aに成分(6)〜(8)を加え、均一に混合する。
C.(b)部分の成分(1)〜(3)を90℃にて均一に溶解する。
D.Cに成分(4)〜(5)を加え、均一に混合する。
E.取り外し可能な、二枚の分離金属板により、中央充填部分を3、両側充填部を7
の容積比に分離した容器を準備し、その7の部分に溶解状態のBを充填(90℃)
し、室温まで冷却する
F.その後、容器から分離金属板を抜き、そこに溶解したDを充填(90℃)し、冷却
して多色油性固型アイカラーとする。
【0060】
実 施 例 6
多色油性固型リップクリーム:
下記組成および製法により、橙色の部分が薄青色の部分に挟み込まれた多色油性固型リップクリームを得た。
【0061】
( 組 成 )
(a)成分 (%)
(1)カルナウバワックス※7 15
(2)ワセリン 20
(3)トリイソステアリン酸ジグリセリル※4
(4)重質流動イソパラフィン※8
(5)ポリブテン 残量
(6)メチルフェニルポリシロキサン 15
(7)ローズマリーエキス 1
(8)酸化チタン 2
(9)赤色226号 0.01
【0062】
(b)成分 (%)
(1)パラフィンワックス 30
(2)2−エチルヘキサン酸セチル 残量
(3)天然ビタミンE 0.5
(4)グンジョウ 0.05
(5)黒酸化鉄 0.05
※7 精製カルナウバワックスNO.1(セラリカ野田社製)
※8 パールリーム24(油化産業(株)製)
【0063】
( 製 法 )
A.(a)成分の(1)〜(7)を90℃にて均一に溶解する。
B.Aに成分(8)〜(9)を加え、均一に混合する。
C.(b)成分の(1)〜(3)を90℃にて均一に溶解する。
D.Cに成分(4)〜(5)を加え、均一に混合する。
E.取り外し可能な、二枚の分離金属板を備えた成型用金型(中央の1/10が
(b)部分用の区画で、両側の9/10が(a)部分用の区画)を用意し、(a)
部分用の区画に、90℃のBを充填し、室温まで冷却する。
F.金型から分離金属板を抜き、空洞部にDを充填(90℃)する。
G.充填したDを放冷した後、金型から抜き出し、油性固型リップクリームとする。
【0064】
実 施 例 7
多色油性固型チークカラー:
下記組成および製法により、白色の部分が橙色の部分に挟み込まれた多色油性固型チークカラーを得た。
【0065】
( 組 成 )
(a)成分 (%)
(1)パルミチン酸デキストリン※9 15
(2)トリイソステアリン酸グリセリル 残量
(3)流動パラフィン 40
(4)エタノール 1
(6)黄色5号 1
(7)赤色226号 1
【0066】
(b)成分 (%)
(1)パラフィンワックス 30
(2)2−エチルヘキサン酸セチル 残量
(3)ひまわり油 0.5
(4)酸化チタン 0.05
※9 レオパールKL(千葉製粉社製)
【0067】
( 製 法 )
A.(a)成分の(1)〜(5)を90℃にて均一に溶解する。
B.Aに成分(6)〜(7)を加え、均一に混合する。
C.(b)成分の(1)〜(3)を90℃にて均一に溶解する。
D.Cに成分(4)を加え、均一に混合する。
E.取り外し可能な、二枚の分離金属板を備えた成型用金型(中央の2/10が(b)
部分用の区画で、両側の8/10が(a)部分用の区画)を用意し、(a)部分
用の区画に、90℃のBを充填し、室温まで冷却する。
F.金型から分離金属板を抜き、空洞部にDを充填(90℃)する。
G.充填したDを放冷した後、金型から抜き出し、油性固型チークカラーとする。
【0068】
実施例5〜7で調製した化粧料を、試験例1と同様にして評価したところ、隠蔽度の差がいずれも15以上であり、塗布色が主組成物と実質的に差がないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の多色油性固型化粧料は、アクセントとなる見せ色部分を有し、視覚的効果が極めて高い外観を有するものでありながら、塗布色にはこの見せ色部分は実質的に影響を与えることがないので、ファッション性と化粧料選択の容易性を共に備えるものである。
【0070】
従ってこのものは、口紅、アイカラー、チークカラー等のメークアップ化粧料として適するものであり、特に外観、使用色が重視される口紅に適するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布色を呈する有色の第一の部分組成物と、これに挟まれた状態の見せ色を呈する有色の第二の部分組成物からなる油性固型化粧料であって、第一の部分組成物と第二の部分組成物は、それらの質量比が9:1〜7:3であり、第一の部分組成物を塗布した際の隠蔽度と第二の部分組成物を塗布した際の隠蔽度の差が、15以上であることを特徴とする多色油性固型化粧料。
【請求項2】
塗布面における第一の部分組成物と、第二の部分組成物の面積比が9:1〜7:3である請求項1記載の多色油性固型化粧料。
【請求項3】
第二の部分組成物の外観色が、L***表色系におけるa*値として13以下である請求項1または2記載の多色油性固型化粧料。
【請求項4】
第二の部分組成物が、更に複数の色の異なる部分組成物で構成される請求項1ないし3の何れかの項記載の多色油性固型化粧料。
【請求項5】
棒状化粧料である請求項1ないし4の何れかの項記載の多色油性固型化粧料。
【請求項6】
口唇用メークアップ化粧料である請求項1ないし5の何れかの項記載の多色油性固型化粧料。



【図1】
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【公開番号】特開2011−6349(P2011−6349A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150900(P2009−150900)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】