説明

多重化装置及びその制御方法

【課題】ノイズを低減し、確実に系の切り替えを実行できる多重化装置及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる多重化装置100は、運用系ユニット1と、待機系ユニット2と、手動操作部80と、切替部90、190と、を備える。運用系ユニット1は、電源が供給される内部回路91を有する。待機系ユニット2は、運用系ユニット1と冗長構成をなす。手動操作部80は、ユーザにより手動で操作される。切替部90は、手動操作部80に対する操作に応じて、運用系ユニット1の内部回路91に対する電源供給を停止し、待機系ユニット2を運用系に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多重化装置及びその制御方法に関し、特に冗長構成を有する多重化装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装置の故障によるリスクを回避するための技術として、多重化装置が知られている。多重化装置は、正常時に動作する運用系ユニットと、故障等の非常時に運用系ユニットの代わりに動作する待機系ユニットと、を備える。
【0003】
例えば、特許文献1には、現用系(運用系)モジュールと、予備系(待機系)モジュールと、監視モジュールシステムと、を備える二重化装置が開示されている。二重化装置は、監視モジュールシステムの指示に応じて、動作するモジュールを現用系モジュールから予備系モジュールに変更する。
【0004】
また、特許文献2には、現用系の主回路と予備系の主回路の出力を切り替え可能な現用予備の切り替え方式が開示されている。具体的には、特許文献2に記載の切り替え方式は、現用系の主回路からの出力信号と予備系の主回路からの出力信号とのいずれか一方を手動により選択して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−16286号公報
【特許文献2】特開平5−46422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の二重化装置では、現用系と予備系との切り替えは、監視モジュールシステムによって自動的に行われる。そのため、監視モジュールシステムが何らかの原因で動作を停止した場合、現用系と予備系とを切り替えることができないという問題がある。
【0007】
特許文献2に記載の方式は、手動で現用系と予備系とを切り換えるため、上記のような問題は発生しない。しかし、現用系及び予備系の主回路に常時電源が供給されているため、故障した運用系のプリント基板を装置から抜去する際に、電源にノイズが発生するという問題がある。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、ノイズを低減し、確実に系の切り替えを実行できる多重化装置及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる多重化装置は、電源が供給される内部回路を有する運用系ユニットと、 前記運用系ユニットと冗長構成をなす待機系ユニットと、手動で操作される手動操作手段と、前記手動操作手段に対する操作に応じて、前記運用系ユニットの前記内部回路に対する電源供給を停止し、前記待機系ユニットを運用系に切り替える切替手段と、を備えるものである。
【0010】
本発明にかかる多重化装置の制御方法は、電源が供給される内部回路を有する運用系ユニットと、前記運用系ユニットと冗長構成をなす待機系ユニットと、手動で操作される手動操作手段と、を備える多重化装置の制御方法であって、前記手動操作手段に対する操作に応じて、前記運用系ユニットの前記内部回路に対する電源供給を停止し、電源供給の停止後に、前記待機系ユニットを運用系に切り替えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ノイズを低減し、確実に系の切り替えを実行できる多重化装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1にかかる多重化装置のブロック図である。
【図2】実施の形態2にかかる多重化装置のブロック図である。
【図3】実施の形態2にかかる電源OFF回路の構成例を示す図である。
【図4】実施の形態2にかかるラッチ回路の構成例を示す図である。
【図5】実施の形態2にかかる多重化装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかる多重化装置100のブロック図を図1に示す。多重化装置100は、運用系ユニット1と、待機系ユニット2と、手動操作部80と、を備える。運用系ユニット1及び待機系ユニット2には、多重化装置100外部の電源4から電源が供給される。
【0014】
なお、運用系ユニット1と待機系ユニット2とは、冗長構成をなしている。つまり、運用系ユニット1の構成と、待機系ユニット2の構成は同一であり、待機系ユニット2は、運用系ユニット1に代替可能である。そのため、以下の説明においては、運用系ユニット1の構成のみを説明し、待機系ユニット2の構成の説明については省略する。多重化装置100は、例えばサーバ等であり、運用系ユニット1が故障した場合でも、正常な処理の続行が要求される装置である。
【0015】
運用系ユニット1は、切替部90と、内部回路91と、を備える。内部回路91は、切替部90を介して電源4と接続され、電源の供給を受ける。内部回路91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)であり、運用系ユニット1の動作を制御したり、運用系ユニット1の機能を発揮したりする。
【0016】
切替部90は、電源4と接続され、内部回路91に対する電源の供給を制御する。具体的には、手動操作部80の操作に応じて、内部回路91に電源を供給したり、電源の供給を停止したりする。さらに、切替部90は、運用系ユニット1の内部回路91への電源供給の停止後、運用系ユニット1と待機系ユニット2とを切り替える。つまり、切替部90は、待機系ユニット2を運用系として動作させる。
【0017】
手動操作部80は、多重化装置100のユーザが手動により操作する操作部である。手動操作部80は、ユーザの手動操作に応じて、切替部90に切替信号を送信する。なお、手動操作部80は、例えば、押下可能なボタンや、変位可能なレバー等である。また、手動操作部80は、運用系ユニット1及び待機系ユニット2のそれぞれに設けられていてもよい。
【0018】
続いて、本実施の形態にかかる多重化装置100の動作例について説明する。運用系ユニット1に故障が生じた場合等、待機系ユニット2を運用系に切り替えたい場合、多重化装置100のユーザは、手動操作部80を手動で操作する(例えば、ボタンの押下を行う)。
【0019】
切替部90は、手動操作部80が操作されると、運用系ユニット1の内部回路91への電源供給を停止する。そして、切替部90は、運用系ユニット1から待機系ユニット2へと運用系を切り替える。これにより、待機系ユニット2が、運用系ユニット1の代わりに動作する。言い換えると、多重化装置100の上位装置(図示省略)は、待機系ユニット2へ指示やアクセスを行う。つまり、待機系ユニット2が、多重化装置100に要求される処理を行い、運用系として動作する。なお、待機系ユニット2の内部回路191に対する電源供給は、切替部190によって制御される。切替部190は、内部回路191に対して、手動操作部80の操作前から電源を供給してもよいし、手動操作部80の操作後(内部回路91への電源供給停止後)から電源を供給してもよい。
【0020】
以上のように、本実施の形態にかかる多重化装置100によれば、手動操作部80に対する手動操作に応じて、運用系ユニット1の切替部90が内部回路91に対する電源供給を停止する。そして、切替部90は、内部回路91に対する電源供給の停止後に、待機系ユニット2を運用系に切り替える。つまり、多重化装置100の監視装置等ではなく、ユーザが、手動操作によって運用系ユニット1と待機系ユニット2の切り替えを指示する。そのため、監視装置等の故障等の影響を受けることなく、確実に系の切り替え指示を出すことができる。
【0021】
加えて、運用系ユニット1から待機系ユニット2へ運用系を切り替える前に、運用系ユニット1の内部回路91への電源供給を停止している。このため、故障等した運用系ユニット1に起因するノイズ(例えば、運用系ユニット1を多重化装置100から抜去する際に電源4に発生するノイズや、内部回路91から出力される誤信号等)を防止できる。
【0022】
<実施の形態2>
本発明にかかる実施の形態2について説明する。本実施の形態にかかる多重化装置200のブロック図を図2に示す。多重化装置200は、運用系ボード1と、待機系ボード2と、バックパネル3と、を備える。運用系ボード1には、バックパネル3を介して、DC電源4から電源S30が供給される。なお、待機系ボード2は、運用系ボード1と冗長構成をなしており、運用系ボード1と同一の構成であるため、待機系ボード2の構成については適宜省略する。
【0023】
運用系ボード1は、電源OFF回路5と、OFFスイッチ6と、ラッチ回路7と、FET制御部8と、FET9と、DC−DCコンバータ10と、論理回路11と、論理回路11内部に配置されたMPU12と、コネクタ13と、を備える。
【0024】
OFFスイッチ6(手動操作手段)の一端はDC電源4に接続され、他端は電源OFF回路5に接続される。OFFスイッチ6の他端から出力される信号をスイッチ信号S27とする。OFFスイッチ6はロック機能がなく、スイッチを手で操作し続けている間は、OFFスイッチ6の接点が閉じる。そして、スイッチから手を離すとOFFスイッチ6の接点が開く。つまり、OFFスイッチ6は、操作が継続している間はオン状態を維持し、操作が中断するとオフ状態になる。なお、実施の形態1と同様に、スイッチの形状は、プッシュ式、レバー式等任意の形状でよい。
【0025】
電源OFF回路5は、スイッチ信号S27が入力され、OFF信号S21、S23を出力する。OFF信号S21は、待機系ボード2のMPU112に入力される。OFF信号S23は、ラッチ回路7に入力される。
【0026】
ラッチ回路7は、OFF信号S23及び勘合信号S24(電源S30)が入力され、FET制御信号S29を出力する。FET制御部8は、FET制御信号S29が入力され、ゲート信号S26を出力する。FET制御部8は、H(High)レベルのFET制御信号S29が入力されると、Hレベルのゲート信号S26を出力し、L(Low)レベルのFET制御信号S29が入力されると、Lレベルのゲート信号S26を出力する。FET9は、ソースに電源S30が入力され、ゲートに入力されるゲート信号S26に基づいて、ドレインから電源S31を出力する。
【0027】
DC−DCコンバータ10は、電源S31が入力され、任意の電圧に変換し、電源S32を出力する。DC−DCコンバータ10の出力信号は、電源S32として論理回路11に供給されると共に、ON信号S22として待機系ボード2のMPU112に入力される。論理回路11は、実施の形態1の内部回路91に対応し、多重化装置200の動作の制御等を行う。なお、運用系ボード1のMPU12は、ボード間バス20を介して、待機系ボード2のMPU112と接続される。
【0028】
ここで、電源OFF回路5の詳細な構成について、図3を参照して説明する。電源OFF回路5は、RC積分回路40と、コンパレータ41、42と、抵抗素子R3〜R8を備える。RC積分回路40(電圧生成手段)は、抵抗素子R1、R2と、コンデンサC1と、を有する。抵抗素子R1の一端は、OFFスイッチ6に接続され、他端は、コンデンサC1及び抵抗素子R2の一端に接続される。コンデンサC1及び抵抗素子R2の他端は、GNDに接続される。RC積分回路40は、受動素子(抵抗素子R1、R2及びコンデンサC1)により構成され、OFFスイッチ6の導通状態(ON状態)の時間に応じた電圧を生成する。
【0029】
コンパレータ41の非反転入力V+には、RC積分回路40の出力信号(スイッチ信号S27)が入力される。コンパレータ41の反転入力V−には、電源S30が抵抗素子R3及びR4を用いて分圧された電圧V1が入力される。コンパレータ41の出力には、抵抗素子R7が接続されている。コンパレータ41は、OFF信号S21を出力する。
【0030】
同様に、コンパレータ42の非反転入力V+には、RC積分回路40の出力信号(スイッチ信号S27)が入力される。コンパレータ42の反転入力V−には、電源S30が抵抗素子R5及びR6を用いて分圧された電圧V2が入力される。コンパレータ42の出力には、抵抗素子R8が接続されている。コンパレータ42は、OFF信号S23を出力する。このとき、抵抗素子R3及びR4の抵抗値と、抵抗素子R5及びR6の抵抗値とは、異なる値である。つまり、電圧V1と電圧V2とは異なる値の電圧である。本実施の形態においては、V1<V2であるものとする。なお、抵抗素子R7、R8はプルアップ抵抗である。
【0031】
次に、ラッチ回路7の詳細な構成について、図4を参照して説明する。ラッチ回路7は、フォトカプラ50と、PNPトランジスタ51と、NPNトランジスタ52と、抵抗素子R9〜R12と、を備える。なお、抵抗素子R9〜R12は、電流制限用抵抗である。
【0032】
フォトカプラ50は、発光ダイオード501と、フォトトランジスタ502と、を備える。発光ダイオード501のアノードには、OFF信号S23が入力される。フォトトランジスタ502のコレクタは、PNPトランジスタ51のエミッタと接続され、フォトトランジスタ502のエミッタは、PNPトランジスタ51のコレクタに接続される。
【0033】
PNPトランジスタ51のエミッタには、勘合信号S24が入力される。PNPトランジスタ51のベースは、抵抗素子R12を介してNPNトランジスタ52のコレクタに接続される。PNPトランジスタ51のコレクタは、抵抗素子R9を介してNPNトランジスタ52のベースに接続される。PNPトランジスタ51のエミッタとベースとは、抵抗素子R11を介して接続される。NPNトランジスタ52のベースとエミッタとは、抵抗素子R10を介して接続される。NPNトランジスタ52のコレクタに入力される信号は、FET制御信号S25として出力される。
【0034】
続いて、本実施の形態にかかる多重化装置200の動作例について、図5に示した波形及びタイミングチャートを参照して説明する。図5において、上側のグラフは、スイッチ信号S27の電圧を示すグラフである。また、下側のタイミングチャートは、各信号のHレベル及びLレベルの状態を示す。なお、横軸は時間を意味する。
【0035】
まず、多重化装置200のユーザが、運用系ボード1のOFFスイッチ6を押し、OFFスイッチ6を導通状態にする(時刻T0)。OFFスイッチ6が押し続けられ、OFFスイッチ6の導通状態が続くと、電源OFF回路5のRC積分回路40から出力されるスイッチ信号S27の電圧が上昇する。
【0036】
なお、時刻T0においては、OFF信号S21、S23(電源OFF回路5の出力信号)はいずれもLレベルである。一方、ラッチ回路7には勘合信号S24(電源S30)及びLレベルのOFF信号S23が入力されるため、FET制御信号S25(ラッチ回路7の出力信号)はHレベルである。FET制御部8は、HレベルのFET制御信号S25が入力され、ゲート信号S26をHレベルにする。さらに、ゲートにHレベルのゲート信号S26が入力されたFET9はON状態となる。このため、電源S31(FET9の出力信号)がHレベルとなると共に、ON信号S22もHレベルとなる。
【0037】
スイッチ信号S27の電圧が上昇し、電圧V1に達すると、電源OFF回路5のコンパレータ41の出力信号(OFF信号S21)がHレベルに変化する(時刻T1:所定の時間)。なお、電圧V2は電圧V1よりも高い電圧であるため、コンパレータ42の出力信号(OFF信号S23)はLレベルのままである。
【0038】
待機系ボード2のMPU112は、OFF信号S21がHレベルに変化したことを検出すると、ボード間バス20を介して、運用系ボード1の運用情報の取得を開始する。つまり、運用系ボード1の運用情報が、待機系ボード2に送信される。ここで、運用情報とは、多重化装置200を運用させるための情報であり、例えば、多重化装置200の各種設定情報や、多重化装置200の運用中に採取され、蓄積されたデータ等である。
【0039】
さらに、OFFスイッチ6を押し続けると、スイッチ信号S27の電圧は上昇し、電圧V2に達する(時刻T2)。すると、電源OFF回路5のコンパレータ42の出力信号(OFF信号S23)がHレベルに変化する。
【0040】
OFF信号S23がHレベルになると、ラッチ回路7のフォトカプラ50がON状態となる(図4参照)。このため、フォトトランジスタ502のコレクタ−エミッタ間に電流が流れる。その結果、NPNトランジスタ52のベース−エミッタ間に電流が流れ、コレクタ−エミッタ間がON状態となる。したがって、NPNトランジスタ52のコレクタがGNDに接続され、FET制御信号25はLレベルに変化する。
【0041】
上記の通り、NPNトランジスタ52のコレクタがGNDに接続されるため、PNPトランジスタ51のベースの電圧もGNDになる。そのため、PNPトランジスタ51のエミッタ−ベース間に電流が流れ、エミッタ−コレクタ間がON状態となる。その結果、フォトカプラ50のON状態に拘らず、NPNトランジスタ52のベース−エミッタ間には、PNPトランジスタ51から電流が流れる。つまり、ラッチ回路7の出力信号であるFET制御信号S25は、Lレベルにラッチされる。
【0042】
FET制御信号S25がLレベルになると、FET制御部8が出力するゲート信号S26もLレベルに変化する。このため、FET9がOFF状態となり、電源S31がLレベルになる。このため、DC−DCコンバータ10の出力がLレベルに変化し、電源S32及びON信号S22もLレベルに変化する。つまり、運用系ボード1のMPU11へ電源S32の供給が停止される。これにより、運用系ボード1の論理回路11への給電が停止されるため、運用系ボード1を抜去する際に、ノイズが発生することを防止できる。なお、電源OFF回路5と、ラッチ回路7と、FET制御部8と、FET9と、DC−DCコンバータ10とが、実施の形態1の切替部90に対応する。
【0043】
さらに、待機系ボード2のMPU112が、ON信号S22がLレベルになったことを検出すると、待機系ボード2は、直ちに運用系に切り替わり、多重化装置200としての制御を開始する。
【0044】
その後、ユーザは、時刻T3においてOFFスイッチ6から手を離し、操作をやめる。これにより、電源OFF回路5のスイッチ信号S27の電圧が低下する。スイッチ信号S27の電圧が低下し、電圧V2を下回ると、電源OFF回路5のコンパレータ42の出力信号(OFF信号S23)は、再度Lレベルに変化する(時刻T4)。しかし、上記の通り、ラッチ回路7において、FET制御信号S25はLレベルにラッチされているため、OFF信号S23のレベルに拘らず、FET制御信号S25はLレベルを維持する。言い換えると、運用系ボード1は、MPU12への電源供給を停止すると、OFFスイッチ6への操作に拘らず、電源供給の停止状態を維持する。これにより、一度電源供給を停止すれば、OFFスイッチ6の操作が不要となり、操作負担が軽減される。
【0045】
なお、時刻T1から開始される運用情報の移行処理は、論理回路11への電源供給が停止する時刻T2までに完了する必要がある。そのため、運用情報のデータ転送時間を考慮して、時刻T1、T2を設定する。このとき、時刻T1、T2は、RC積分回路40のコンデンサC1の容量、抵抗素子R1、R2の値、及びコンパレータ41、42の反転入力V−の電圧V1、V2を調整することにより、任意に設定可能である。例えば、電源S30の電圧をV0とすると、T1は以下の式(1)を用いて表される。
【0046】
【数1】

【0047】
以上のように、本実施の形態にかかる多重化装置200の構成によれば、OFFスイッチ6を押し続けると、運用系ボード1の論理回路11への電源供給を停止する。そして、待機系ボード2が運用系として動作する。そのため、外部装置(例えば監視装置等)からの指示に依らず、ユーザの手動操作により、確実に系の切り替えを実行できる。また、系の切り替え時に運用系ボード1の論理回路11への電源供給が停止されるため、運用系ボード1の抜去時にボード間バス20や電源S30に発生するノイズを低減することができる。
【0048】
さらに、ユーザがOFFスイッチ6を押し続けると、待機系ボード2は、運用系ボード1の論理回路11への電源供給停止前に、運用系ボード1の運用情報を取得する。このため、運用系ボード1の動作が停止する直前の状態を維持したまま、待機系ボード2が運用系として動作することができる。したがって、系の切り替え前に既に行われた処理を、系の切り替え後に、待機系ボード2において再度行う必要がなく、処理負担が軽減される。
【0049】
加えて、運用系ボード1において、電源供給を停止するためには、スイッチ信号S27の電圧が電源V2になるまでOFFスイッチ6を押し続ける必要がある。そのため、誤ってOFFスイッチ6を瞬間的に押してしまった場合でも、電源供給の停止及び系の切り替え動作は実行されない。したがって、誤操作を防止することができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更及び組み合わせをすることが可能である。例えば、上記実施の形態においては、運用系ユニット(ボード)1と、待機系ユニット(ボード)2の二重化装置について説明したが、これに限られるものではなく、三重化以上の多重化装置であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 運用系ユニット(ボード)
2 待機系ユニット(ボード)
3 バックパネル
4 DC電源
5、105 電源OFF回路
6、106 OFFスイッチ
7、107 ラッチ回路
8、108 FET制御部
9、109 FET
10、110 DC−DCコンバータ
11、111 論理回路
12、112 MPU
13、113 コネクタ
40 RC積分回路
41、42 コンパレータ
50 フォトカプラ
51 PNPトランジスタ
52 NPNトランジスタ
80 手動操作部
90、190 切替部
91、191 内部回路
100、200 多重化装置
501 発光ダイオード
502 フォトトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源が供給される内部回路を有する運用系ユニットと、
前記運用系ユニットと冗長構成をなす待機系ユニットと、
手動で操作される手動操作手段と、
前記手動操作手段に対する操作に応じて、前記運用系ユニットの前記内部回路に対する電源供給を停止し、前記待機系ユニットを運用系に切り替える切替手段と、
を備える多重化装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記手動操作手段の操作時間に応じて、前記運用系ユニットの前記内部回路に対する電源供給を停止する請求項1に記載の多重化装置。
【請求項3】
前記運用系ユニットと前記待機系ユニットは、バスを介して接続されており、
前記手動操作手段に対する操作に応じて、前記運用系ユニットの運用情報が、前記待機系ユニットに送信される請求項1又は2に記載の多重化装置。
【請求項4】
前記手動操作手段に対する操作が所定の時間継続して行われた場合、前記運用系ユニットの前記運用情報の前記待機系ユニットへの送信が開始され、
前記切替手段は、前記運用系ユニットの前記運用情報の送信が完了した後、前記運用系ユニットの前記内部回路に対する電源供給を停止する請求項3に記載の多重化装置。
【請求項5】
前記手動操作手段はスイッチであり、
前記手動操作手段のオン状態の時間に応じて変化する電圧を生成する電圧生成手段をさらに備え、
前記切替手段は、前記電圧生成手段が生成した電圧に応じて、前記運用系ユニットの前記内部回路に対する電源供給を停止する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の多重化装置。
【請求項6】
前記電圧生成手段は、受動素子により構成される回路である請求項5に記載の多重化装置。
【請求項7】
前記手動操作手段は、操作が継続している間はオン状態を維持し、操作が中断するとオフ状態になる請求項5又は6に記載の多重化装置。
【請求項8】
前記切替手段は、前記運用系ユニットの前記内部回路に対する電源供給を停止した場合、前記手動操作手段の操作に拘らず、電源供給の停止状態を維持する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の多重化装置。
【請求項9】
電源が供給される内部回路を有する運用系ユニットと、前記運用系ユニットと冗長構成をなす待機系ユニットと、手動で操作される手動操作手段と、を備える多重化装置の制御方法であって、
前記手動操作手段に対する操作に応じて、前記運用系ユニットの前記内部回路に対する電源供給を停止し、
電源供給の停止後に、前記待機系ユニットを運用系に切り替える多重化装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−45224(P2013−45224A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181494(P2011−181494)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】