説明

太陽電池モジュール用端子ボックスの取り付け構造

【課題】新たな放熱経路を提供する。
【解決手段】端子ボックス20内には、複数の端子60と、各端子60に架け渡して接続される逆負荷時バイパス用のダイオード50とが配置されている。太陽電池モジュール10には、太陽電池モジュール10内の太陽電池素子15と端子60とに電気的に接続される金属製のバスバー30が配置されている。バスバー30は、整流素子の設置領域65と重なる位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用端子ボックスの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の太陽電池モジュール用端子ボックスが開示されている。端子ボックス内には、複数の端子と、各端子に接続される逆負荷時バイパス用のダイオードとが収容されている。また、端子ボックスは、太陽電池モジュールの裏面(受光面とは反対側の非受光面)に取り付けられている。太陽電池モジュール内には太陽電池素子が直列又は並列に接続された状態で封入され、太陽電池素子で発電された電気出力は出力配線を介して端子ボックスに伝達される。さらに、端子ボックス内の端子には一対のケーブルが接続され、ケーブルを介して太陽電池素子の電気出力が外部に取り出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−109029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、参考例として図3に示すように、出力配線として金属製のバスバー90が用いられ、このバスバー90が各端子91と太陽電池素子(図示せず)とに電気的に接続されることがある。図示する場合、端子ボックス92の底壁93にバスバー90の導入口94が開口して形成され、導入口94に各端子91の前端部が臨むように配置されている。また、各端子91のうち左右両側に配置された端子91の後端部にはケーブル95が接続され、各端子91の前後方向ほぼ中央部にはダイオード96が接続されている。この場合、バスバー90はダイオード96の設置領域と重なる位置に配置されていない。
【0005】
ところで、ダイオード96が発熱すると、該熱は端子ボックス92の外部大気等に放出される。しかし、上記のような構造では、ダイオード96の放熱性が必ずしも十分ではなく、ダイオード96に熱がこもって整流機能が損なわれるおそれがある。このため、従来にない放熱経路の開発が希求されている。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、新たな放熱経路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、太陽電池モジュールに対する端子ボックスの取り付け構造であって、前記端子ボックス内に配置される複数の端子と、前記端子ボックス内に配置され、前記複数の端子に接続される逆負荷時バイパス用の整流素子と、前記太陽電池モジュールに配置され、かつ、前記太陽電池モジュール内の太陽電池素子と前記端子とに電気的に接続され、前記整流素子の設置領域と重なる位置に配置された金属製のバスバーとを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記バスバーが、前記端子を長さ方向に縦断して配置されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記複数の端子が、外部出力用のケーブルが接続される一対のケーブル接続端子と、両ケーブル接続端子に前記整流素子を介して接続される複数の中継端子とからなり、対応する2つの前記中継端子に、1つの前記整流素子が架設され、この1つの前記整流素子の設置領域と、2つの前記バスバーが重なる位置に配置されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
バスバーが整流素子の設置領域と重なる位置に配置されているから、整流素子が発熱すると、該熱がバスバーにも放出される。したがって、新たな放熱経路としてバスバーを利用することができる。その結果、放熱性が向上するとともに、太陽電池モジュールを構成するバックシート等への熱的ダメージを低減することができる。
【0011】
<請求項2の発明>
バスバーが端子を長さ方向に縦断して配置されているから、整流素子で発生した熱が端子からバスバーに効率良く放熱され、放熱性がより良好となる。
【0012】
<請求項3の発明>
2つの中継端子に1つの整流素子が架設され、この1つの整流素子の設置領域と、2つのバスバーが重なる位置に配置されているため、1つの整流素子で発生した熱が2つのバスバーに分散して放熱されることとなり、放熱性がいっそう良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る太陽電池モジュール用端子ボックスの取り付け構造の平面図である。
【図2】太陽電池モジュール用端子ボックスの取り付け構造の断面図である。
【図3】参考例における太陽電池モジュール用端子ボックスの取り付け構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1及び図2によって説明する。本実施形態は、太陽電池モジュール10の裏面11(受光面とは反対側の非受光面)に取り付けられる端子ボックス20の取り付け構造を示すものである。
【0015】
太陽電池モジュール10は、全体として矩形板状をなし、図2に示すように、板厚方向で対向するバックシート12及び透光性シート13と、周囲を取り囲むアルミ製のフレーム14と、内部に封入される封止材と、内部に配置される太陽電池素子15とで構成されている。なお、以下の説明において前後方向については、図1及び図2におけるフレーム14の位置する側を前方とする。
【0016】
バックシート12は、フッ素系樹脂シート又はポリエチレンテレフタレート(PET)シート等からなり、太陽電池モジュール10の裏面11側に配置される。また、バックシート12内にはバスバー30(後述する)が配置されるスリット16が前後方向に延出して形成され、スリット16の前後両端にはバックシート12の内外両面に臨む前後の開口部17、18が形成されている。透光性シート13は、ガラス又はポリカーボネート樹脂等からなり、太陽電池モジュール10の表面側に配置される。また、封止材は、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等からなり、太陽電池素子15の周囲を覆うように封入されている。太陽電池素子15は、結晶シリコン等のセルからなり、接続用配線19を介して並列又は直列に接続されている。
【0017】
太陽電池素子15で発電された電気出力はバスバー30を介して端子ボックス20に伝達される。バスバー30は、金属製で所定長さの帯板状をなし、バックシート12のスリット16内で挟持されつつ前後方向に延出する部分を有している。バスバー30の両端部は前後の開口部17、18を通してバックシート12の内外に臨み、バスバー30の一端部は太陽電池素子15に接続され、バスバー30の他端部は端子ボックス20内の端子60(後述する)に接続されるようになっている。なお、バスバー30は、長さ方向途中で板厚方向及び板幅方向に複数回に亘ってほぼ直角に屈曲されている。
【0018】
端子ボックス20は、矩形板状の底壁21と、底壁21の周囲から立ち上がる側壁22とを有している。側壁22の立ち上がり端部には、蓋材23が被せ付けられるようになっている。端子ボックス20内における底壁21の内面には、複数の端子60が載置されている。各端子60は、図1に示すように、幅方向に4つ並んで配置されている。各端子60のうち、幅方向両端側に位置する2つの端子60は外部出力用のケーブル80が接続されるケーブル接続端子61とされ、両ケーブル接続端子61間に位置する2つの端子60はケーブル80が接続されない中継端子62とされている。各端子60は概ね前後方向に長く延びる形態とされている。また、ダイオード50(後述する)を支持する端子60は、ダイオード50を支持しない端子60よりも大きな表面積を有し、これによってダイオード50で発生した熱が端子60に良好に逃がされるようになっている。
【0019】
底壁21の後端部には、バックシート12の後側の開口部18と対向する位置に、バスバー30を導入するための導入口24が開口して形成されている。導入口24は底壁21のほぼ全幅に亘って横長に開口する形態とされている。底壁21の導入口24内には各端子60の後端部が臨み、図2に示すように、各端子60の後端部において一段高い位置に形成された第1棚部63に、バスバー30の端部が半田付けにより接続されている。また、底壁21の導入口24内にはケーブル80が臨み、ケーブル接続端子61において一段高い位置に形成された第2棚部64に、ケーブル80が圧着により接続されている。なお、図1に示すように、ケーブル接続端子61の後端部は二股に分岐され、各枝に第1棚部63と第2棚部64とが形成されている。
【0020】
各端子60のうち、1つの中継端子62(図示向かって左から2番目の端子60)を除く3つの端子60には、逆負荷時バイパス用のダイオード50が支持されている。ダイオード50は、ブロック状の本体部51から2本のリード部52を延出させた形態とされている。本体部51は対応する端子60に載せられ、両リード部52はそれぞれ本体部51を載せた端子60とそれに隣接する端子60とに半田付けにより接続されている。つまり、ダイオード50は幅方向で隣接する端子60間に架け渡され、隣接する端子60同士はダイオード50を介して電気的に接続されている。そして、各ダイオード50は、幅方向に一列に配置され、各端子60(図示向かって左から2番目の中継端子62を除く)の前後方向中央部には、ダイオード50の設置領域65が形成されている。
【0021】
さて、バスバー30は、端子ボックス20の外側において底壁21に沿いつつ各端子60毎に配置され、前後方向に延出して各端子60を長さ方向に縦断する形態とされている。バスバー30の長さ方向途中には、ダイオード50の設置領域65を前後方向に縦断し、設置領域65とほぼ直交する重合部31が形成されている。
【0022】
また、バスバー30は、図1に示すように、両ケーブル接続端子61のそれぞれに支持されたダイオード50の両リード部52と交差しつつ前後方向に延出する一対の端部バスバー32と、中継端子62に支持されたダイオード50の本体部51及び両リード部52のそれぞれと交差しつつ前後方向に延出する一対の中間部バスバー33とで構成されている。つまり、3つのダイオード50のうち、真ん中に配置された1つのダイオード50に、2つの中間部バスバー33が重なるように配置されている。
【0023】
次に、本実施形態の作用を説明する。
太陽電池モジュール10の裏面11側にはバックシート12の後側の開口部18からバスバー30の端部が突出して配置される。図2に示すように、バスバー30の端部は、ほぼL字形をなし、バックシート12の外側において前方に突出するほぼ水平な水平部34を有している。
【0024】
一方、端子ボックス20の底壁21の内面には各端子60が支持され、各端子60にはダイオード50が接続される。また、ケーブル接続端子61の第2棚部64にはケーブル80が接続される。その状態で、端子ボックス20の底壁21が太陽電池モジュール10の裏面11に接着材等により取り付けられる。取り付けの過程では、上記バスバー30の端部が底壁21の導入口24を通して端子ボックス20内に進入させられ、各端子60の第1棚部63にバスバー30の水平部34が板厚方向に重ね合わされ、その状態でバスバー30と各端子60とが半田接続される。次いで、端子ボックス20内にはシリコン樹脂等の絶縁樹脂が導入され、絶縁樹脂の硬化後、蓋材23が被せ付けられる。
【0025】
ところで、ダイオード50の本体部51がその使用によって発熱すると、該熱は、絶縁樹脂から側壁22及び蓋材23を経て大気に放出されるとともに、各端子60から底壁21を経てバスバー30にも放出される。つまり、本実施形態の場合、バスバー30がダイオード50の設置領域65と底壁21の板厚方向で重なる位置に重合部31を有しているため、バスバー30をダイオード50の放熱経路として利用することが可能となる。特に、ダイオード50が載置された大型の中継端子62には、1つのダイオード50の設置領域65に2つの中間部バスバー33が重なるように配置されているため、より良好な放熱性が確保される。
【0026】
以上説明したように本実施形態によれば、バスバー30がダイオード50の設置領域65と重なる位置に配置されているから、ダイオード50が発熱すると、該熱がバスバー30にも放出される。その結果、放熱性が向上するとともに、太陽電池モジュール10を構成するバックシート12への熱的ダメージを低減することができる。
【0027】
また、バスバー30が端子60を長さ方向(前後方向)に縦断して配置されているから、ダイオード50で発生した熱が端子60からバスバー30に効率良く放熱され、放熱性がより良好となる。
【0028】
さらに、2つの中継端子62に1つのダイオード50が架設され、この1つのダイオード50の設置領域65と、2つのバスバー30が重なる位置に配置されているため、1つのダイオード50で発生した熱が2つのバスバー30に分散して放熱されることとなり、放熱性がいっそう良好となる。
【0029】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
(1)上記実施形態では、バスバーがダイオードの設置領域とその前後方向の全長に亘って重なっていたが、本発明によれば、バスバーがダイオードの設置領域とその前後方向の一部のみと重なるものであってもよい。
(2)上記実施形態では、各端子が一対のケーブル接続端子と複数の中継端子とで構成されていたが、本発明によれば、各端子が一対のケーブル接続端子のみで構成されるものであってもよい。この場合、両ケーブル接続端子間に1つのダイオードが架設されていればよい。
(3)上記実施形態では、チップの周りを樹脂封止したパッケージタイプのダイオードを用いていたが、本発明によれば、チップの周りを樹脂封止しないベアタイプのダイオードを用いてもよい。
(4)上記実施形態では、バックシートにバスバーが通るスリットと前後の開口部とが形成されていたが、本発明によれば、バックシートにバスバーの端部が通る1つの開口部(後側の開口部に相当する)のみが形成され、バスバーの長さ方向途中がバックシートの内面に沿って配置されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
10…太陽電池モジュール
12…バックシート
15…太陽電池素子
20…端子ボックス
30…バスバー
50…ダイオード
60…端子
61…ケーブル接続端子
62…中継端子
65…設置領域
80…ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールに対する端子ボックスの取り付け構造であって、
前記端子ボックス内に配置される複数の端子と、
前記端子ボックス内に配置され、前記複数の端子に接続される逆負荷時バイパス用の整流素子と、
前記太陽電池モジュールに配置され、かつ、前記太陽電池モジュール内の太陽電池素子と前記端子とに電気的に接続され、前記整流素子の設置領域と重なる位置に配置された金属製のバスバーとを備えていることを特徴とする太陽電池モジュール用端子ボックスの取り付け構造。
【請求項2】
前記バスバーが、前記端子を長さ方向に縦断して配置されていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール用端子ボックスの取り付け構造。
【請求項3】
前記複数の端子が、外部出力用のケーブルが接続される一対のケーブル接続端子と、両ケーブル接続端子に前記整流素子を介して接続される複数の中継端子とからなり、対応する2つの前記中継端子に1つの前記整流素子が架設され、この1つの前記整流素子の設置領域と、2つの前記バスバーが重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池モジュール用端子ボックスの取り付け構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−105999(P2013−105999A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250894(P2011−250894)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】