説明

太陽電池裏面封止用シート

【課題】本発明は、太陽電池モジュールとして実際に利用される環境や太陽電池モジュールの促進評価における高温多湿下において、加水分解に伴う材料の劣化を防止し、太陽電池としての電気出力特性を維持可能な耐候性に優れる太陽電池裏面封止用シートを提供する。
【解決手段】少なくとも2層以上の基材をポリウレタン系接着剤にて貼りあわせた積層体からなる太陽電池裏面封止用シートにおいて、前記ポリウレタン系接着剤が下記条件を満たす耐加水分解性を有する接着剤あるいは接着剤組成物であることを特徴とする。
・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)で少なくとも105℃−168h保存状態で1N/15mm以上のラミネート強度を有する。
・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)での保存評価で、ディラミネーションに伴う基材間の浮きを伴わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐加水分解性に優れる太陽電池裏面封止用シートに関し、さらに詳細には、特に耐加水分解性に優れる接着剤を用いて積層され、加水分解に伴う材料の劣化を防止し、ディラミネーションに伴う外観不良だけでなく、裏面封止用シートとしてのバリア特性や太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能な太陽電池裏面封止用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する内外各方面の関心が高まる中、二酸化炭素の排出抑制のために、種々努力が続けられている。化石燃料の消費量の増大は大気中の二酸化炭素の増加をもたらし、その温室効果により地球の気温が上昇し、地球環境に重大な影響を及ぼす。この地球規模の問題を解決するために様々な検討が行われており、特に太陽光発電については、そのクリーン性や無公害性という点から期待が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、単結晶、多結晶、あるいはアモルファスシリコン系の半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子単体(セル)をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年)にわたってセルを保護するために種々パッケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面をガラス面で覆い、熱可塑性プラスチック(特にエチレン−酢酸ビニル共重合体)からなる充填材で間隙を埋め、裏面を封止用シートで保護された構成になっている(図1)。
【0003】
これらの太陽電池モジュールは主に屋外で使用されるため、その構成や材質構造などにおいて、十分な耐久性、耐候性が要求される。特に、裏面封止用シートは耐候性と共に水蒸気透過率の小さい(水分バリア性に優れる)ことが要求される。これは水分の透過により充填材が剥離、変色したり、配線の腐蝕を起こした場合、モジュールの出力そのものに影響を与える恐れがあるためである。
【0004】
従来、この太陽電池裏面封止用シートとしては、耐候性、難燃性、そして太陽電池モジュールの充填材として良く使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体と良好な接着性を有する「フッ素系樹脂」が用いられている(特許文献1,2など)。また、電気絶縁性に優れるポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムを用いた太陽電池裏面封止用シートも開発されるようになってきており、ポリエステルフィルムを用いるディメリットとして挙げられる耐候性を改善させるべく、紫外線吸収剤を配合した系(特許文献3など)やポリエステル中の環状オリゴマー量の規定をしたり(特許文献4、5など)、ポリエステルの分子量を規定する(特許文献6など)といった開示が多く見受けられるようになった。
【0005】
上述したように太陽電池は約20年間その性能を維持する必要があり、その耐久性を評価するために高温多湿化(85℃−85%相対湿度)での促進試験を行う。特にポリエステルフィルムを用いた場合は、この促進試験環境においてフィルム基材が加水分解を引き起こし、強度物性が著しく低下することから、上記記載の特許文献にあるように、その強度物性の低下を補うべく各種検討を行ってきたのが実情である。しかしながら、フィルム基材の耐候性(耐加水分解性)を向上させることで新たに見つかった課題点がある。それはフィルム基材を貼り合せる接着剤の加水分解によるディラミネーションである。一般に、これらのフィルム基材は耐熱性や安定性を考慮して、ポリエステルポリオールを主剤としたポリウレタン系接着剤が用いられているが、このポリエステルポリオール自体が加水分解により低分子量化し、促進試験環境下で接着強度が著しく低下するといった問題が浮き彫りになった。この問題は、当然ながら上述したフッ素系樹脂についても同様に見られ、上記促進試験を行うと、経時でディラミネーションによる浮きが発生し、外観不良だけでなく、裏面封止用シートとして求められるバリア性も低下し、太陽電池としての電気出力特性に影響を与える可能性がある。
【0006】
以上の点から、フィルム基材としての耐候性(耐加水分解性)だけでなく、それを貼り合せる接着剤にも耐加水分解性が必要とされているが、現状ではまだ解決に至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平8−500214号公報
【特許文献2】特表2002−520820号公報
【特許文献3】特開2001−111073号公報
【特許文献4】特開2002−100788号公報
【特許文献5】特開2002−134771号公報
【特許文献6】特開2002−26354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされたものであって、太陽電池モジュールとして実際に利用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿下での促進評価においても、加水分解に伴う材料の劣化を防止し、ディラミネーションに伴う外観不良だけでなく、太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能な耐候性(耐加水分解性)に優れる太陽電池裏面封止用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する解決手段として、
請求項1記載の発明は、少なくとも2層以上の基材をポリウレタン系接着剤にて貼りあわせた積層体からなる太陽電池裏面封止用シートにおいて、
前記ポリウレタン系接着剤が、ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールAと記載する)に架橋剤を配合した組成物の100重量部に対し、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を1〜50重量部配合した下記条件を満たす耐加水分解性を有する接着剤あるいは接着剤組成物であることを特徴とする太陽電池裏面封止用シートである。
・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)で少なくとも105℃−168h保存状態で1N/15mm以上のラミネート強度を有する。
・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)での保存評価で、ディラミネーションに伴う基材間の浮きを伴わない。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール−テレフタレート(PCT)から選ばれるポリエステル基材、ポリカーボネート系基材、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれるフッ素系基材、あるいはアクリル系基材から選択されることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面封止用シートである。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記基材が、特に数平均分子量が18000〜40000の範囲で、環状オリゴマーコンテントが1.5wt%以下、固有粘度が0.5dl/g以上の耐加水分解性を有するポリエステル基材であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面封止用シートである。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記積層体に、ガスバリア層としてアルミニウム箔基材、金属アルミやシリカ、アルミナなどの無機化合物を蒸着した蒸着基材をさらに介在させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池裏面封止用シートである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の太陽電池裏面封止用シートは特に耐加水分解性に優れる接着剤を用いて積層された積層体からなるものであるから、太陽電池モジュールとして実際に利用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿下での促進評価においても、加水分解に伴う材料の劣化を防止し、ディラミネーションに伴う外観不良だけでなく、裏面封止用シートとしてのバリア特性や太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能な太陽電池裏面封止用シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】太陽電池モジュールの一例を示す模式図である。
【図2】本発明の太陽電池裏面封止シートの一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の太陽電池裏面封止シートの他の例としてバリア層を介在させた模式断面図である。
【図4】太陽電池モジュールの製造工程の一例を示す模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例として好ましい実施形態について詳細に説明する。本発明の太陽電池裏面封止用シートの特徴は、太陽電池裏面封止用シートを構成する2種以上の基材を貼り合せる際に用いるポリウレタン系接着剤を耐加水分解性に優れる接着剤あるいは接着剤組成物としたことを特徴とする。ここで、耐加水分解性に優れるという定義については、接着剤の加水分解による影響を指標とするものであり、ハイプレッシャークッカーによる促進評価(加圧蒸気による促進評価装置JIS C 60068−2−66など)において少なくとも105℃−168h保存状態で1N/15mm以上のラミネート強度を有し、かつディラミネーションによる基材間の浮きを伴わないことが挙げられる。
【0016】
以下、この耐加水分解性に優れる接着剤あるいは接着剤組成物について記載する。まず本発明の太陽電池裏面封止用シートに用いられるポリウレタン系接着剤として、ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールAと記載する)に架橋剤を配合した組成物の100重量部に対し、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物から少なくとも1種以上選択される化合物を1〜50重量部配合した接着剤組成物である。
【0017】
この接着剤組成物の特徴は、上記太陽電池裏面封止用シートに用いる2種以上の基材間における初期ラミネート強度の点、また、高温環境化での促進試験を考慮した耐熱性とい
う点から、ポリオールAを用いる。しかしながら、ポリオールAと架橋剤からなるウレタン系接着剤は、ウレタン結合は加水分解という点では好ましい結合様式であるが、エステル結合の加水分解が懸念される。また高温多湿下における促進環境下で加水分解が起きたエステル結合部位は、カルボキシル基と水酸基に開裂するが、このカルボキシル基が酸触媒として作用するため、さらにエステル結合部位の加水分解を促進する。そこで、この加水分解により発生したカルボキシル基を封鎖するために、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物から少なくとも1種以上選択される化合物を、ポリオールAに架橋剤を配合した組成物の100重量部に対し1〜50重量部配合したことを特徴とする。
【0018】
本発明に使用されるポリエステルポリオールは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などの脂肪族系、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系の二塩基酸の一種以上、そしてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなど脂肪族系、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリーコルなどの脂環式系、キシリレングリーコルなどの芳香族系のジオールの一種以上を用いて得ることが可能である。また、さらにこのポリエステルポリオールの両末端の水酸基を、例えば2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネートなどから選ばれるイソシアネート化合物の単体、あるいは少なくとも一種以上から選択される上記イソシアネート化合物からなるアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体を用いて鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールなどが挙げられる。
【0019】
またこれらのポリオールAを架橋させる架橋剤としては、上記イソシアネート化合物を用いることが可能であり、これらに限られるものではなく、活性水素基と反応性を有する架橋剤であれば種類は問わない。
【0020】
これらのポリオールAが高温多湿下における促進環境下で加水分解が起きた際に生成するカルボキシル基を封鎖するために、配合するカルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−o−トルイルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,2−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、およびN,N’−ジ−p−トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0021】
また同様な作用を施すオキサゾリン化合物としては、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2,4−ジフェニル−2−オキサゾリンなどのモノオキサゾリン化合物、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,2−エチレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−ブチレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)などのジオキサゾリン化合物が挙げられる。
【0022】
同様にエポキシ化合物としては、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールのような脂肪族のジオールのジグリシジルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、グリセロール、トリメチロールプロパンなどの脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族、芳香族の多価カルボン酸のジグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、レゾルシノール、ビス−(p−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス−(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンなどの多価フェノールのジグリシジルエーテルもしくはポリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス−(p−アミノフェニル)メタンのようにアミンのN−グリシジル誘導体、アミノフェールのトリグリシジル誘導体、トリグリシジルトリス(2−−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、オルソクレゾール型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシが挙げられる。
【0023】
これらカルボキシル基を封鎖することが可能な化合物は、ポリオールAに架橋剤を配合した組成物の100重量部に対し1〜50重量部配合することが挙げられる。1重量部より少ないと耐加水分解性に劣る。添加量が多い分には加水分解により生成したカルボキシル基の封鎖という点で好ましいが、見かけ上接着に寄与するポリウレタン成分が少なくなり、接着機能が低下する恐れがある。またポリウレタン系接着剤の塗工ハンドリング性などを考慮すると50重量部以下であることが好ましい。
【0024】
また、加水分解により生じた水酸基を起点にして架橋反応を形成するような化合物を配合しても構わない。このような化合物としてはリン系化合物が挙げられ、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)などを用いることが可能である。しかしながら、ポリエステル化合物の加水分解を抑制させるという点では、一度加水分解により生じた水酸基をさらにリン化合物で架橋させるというよりは、加水分解の酸触媒として作用するカルボキシル基を封鎖することが必須であることから、上記カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物が好ましく、もっとも好ましい化合物としてはカルボジイミド化合物が挙げられる。
【0025】
上述したポリオールAを用いたポリウレタン系接着剤は、加水分解された接着剤をカルボジイミド化合物やオキサゾリン化合物やエポキシ化合物などを用いて抑制するといったものである。そこで、ポリウレタン系接着剤自体に加水分解を起こさせないという設計をすることも可能である。ポリウレタン系材料として考えられるポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが考えられ、これらの成分を主剤としたものを用いることが可能であるが、耐熱性などを考慮すると、ポリカーボネートポリオールやアクリルポリオールなどが好ましい。
【0026】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えばカーボネート化合物とジオールとを反応させて得る事ができる。カーボネート化合物としてはジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリール、などの脂環式ジオール、キシリレングリール、などの芳香族ジオールなどの1種以上の混合物が用いられたポリカーボネートポリオール、あるいは上述したイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリカーボネートウレタンポリオール(以下、ポリオールB)を用いることが可能であり、特に接着剤としての性能を考慮すると脂肪族ポリカーボネート系のポリオールBを用いた方が好ましい。
【0027】
アクリルポリオールとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマーを必須成とし、(メタ)アクリル酸、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレート系モノマーを主成分とするポリマーが用いられ、さらに、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマーなどを共重合させたものを用いることが可能である。さらにはビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、マレイン酸、アルキルマレイン酸モノエステル、フマル酸、アルキルフマル酸モノエステル、イタコン酸、アルキルイタコン酸モノエステル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーを共重合した物を用いることが可能である(以下、ポリオールC)。
【0028】
これらのポリオールBおよびCは、ポリオールAとのブレンド物、例えばポリオールB+ポリオールA、ポリオールC+ポリオールAのような組み合わせの組成物であっても構わない(以下このブレンド物をポリオールD)。また、ポリオールBおよびCはポリオールAと上述した2官能以上のイソシアネート化合物を用いて鎖伸長させた共重合体、例えばポリオールB−ポリオールAの主鎖ブロック共重合体、ポリオールC−ポリオールAの側鎖型ブロック共重合体であっても構わない(以下、ポリオールE)。さらにはポリオールBとポリオールCも混合物や鎖伸長物であり、それらとポリオールAとのブレンド物、共重合物出会っても構わない。つまりは、耐加水分解性の骨格であるポリオールB、Cと加水分解性を示すポリオールAとの組み合わせであり、ポリオールD、Eについては、耐加水分解性の骨格であるポリオールB、Cを50〜99重量%に対し、加水分解性を示すポリオールAを1〜50重量%に設定することが挙げられる。このブレンドあるいは共重合体化させることによる効果は後述する。
【0029】
これらのポリオールB〜Eについては、上述したカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、好ましくはカルボジイミド化合物が配合することが可能である。これらカルボキシル基の封鎖機能を有する化合物は必須成分ではないため、ポリオールB〜Eに架橋剤を配合した組成物の100重量部に対し0〜50重量部配合することが挙げられるが、後述する内容からこれらの化合物に対し添加するほうが好ましい。
【0030】
これら上述したポリウレタン系接着剤は、太陽電池裏面封止用シートとして用いる基材同士を貼り合せる際に用いるが、その時の基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール−テレフタレート(PCT)から選ばれるポリエステル基材、ポリカーボネート系基材、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれるフッ素系基材、あるいはアクリル系基材から選択されることが挙げられる。また、これらに限定されず、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂など、耐熱性、強度物性、電気絶縁性等を考慮して適宜選択することが可能である。
【0031】
ポリエステル基材を用いる場合は、多塩基酸またはそのエステル形成誘導体とポリオールまたはそのエステル形成誘導体を用いて得られたものであり、多塩基酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、マレイン酸、イタコン酸などの酸成分を2種以上、そして、ポリオール成分としてエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、さらにはカルボン酸基やスルホン酸基やアミノ基あるいはこれらの塩を含有するポリオール成分を1種あるいは2種以上用いることで得られたポリエステルが挙げられるが、上述したポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール−テレフタレート(PCT)が一般的である。
【0032】
しかしながら、ポリエステル基材特にポリエチレンテレフタレートなどは、上述してきたポリウレタン系接着剤と同様に加水分解が懸念される材料である。そこで、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル基材を用いる場合には、数平均分子量が18000〜40000の範囲で、環状オリゴマーコンテントが1.5wt%以下、固有粘度が0.5dl/g以上の耐加水分解性を有するポリエステル基材であることが好ましい。このようなポリエステル基材は上述したポリオールA同様に、分子末端がカルボン酸基の場合、熱、水、さらには酸触媒としての作用が働き、加水分解に最も影響を受けるため、この末端カルボン酸量を上昇させることなく数平均分子量を増加させることが可能な固相重合法を用いたり、あるいは末端カルボン酸基をカルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物により封止しても構わない。また、太陽電池モジュールを製造する際の熱で収縮の影響が懸念される場合には、アニール処理を施すことによって熱収縮率を1%以下、好ましくは0.5%以下にしたポリエステル基材を用いることが可能である。また、耐候性が要求される場合には、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジンなどの紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、トコフェロール系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系の光安定剤も適宜配合することが可能である。
【0033】
太陽電池裏面封止用シートに用いられるポリエステル基材は透明でも構わないが、太陽電池素子の発電効率を向上させるという点から、白色ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。特に太陽電池裏面封止用シートが多層構成から成る場合には、少なくとも充
填材と貼り合わされる基材には白色ポリエステルフィルムを設けることも可能である。この時用いる白色ポリエステルフィルムは、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の白色添加物を添加する「顔料分散タイプ」、あるいはポリエステルに非相溶なポリマーや微粒子を添加し、二軸延伸時にブレンド界面で空隙を形成させることで白色化させる「微発泡タイプ」などを用いることが可能である。「微発泡タイプ」において、ポリエステルに対し非相溶なポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。必要に応じてポリアルキレングリコールまたはその共重合体などを相溶化剤として使用することが可能である。微粒子の具体例としては、有機粒子や無機粒子が挙げられ、シリコン粒子、ポリイミド粒子、架橋スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子、架橋ポリエステル粒子、フッ素系粒子などが使用される。また、無機粒子としては、炭酸カルシウム、二酸化珪素、硫酸バリウムなどが使用される。
【0034】
上記内容の基材を、ポリオールA〜Eを用いたポリウレタン系接着剤により貼りあわせた構成の模式図を図2に示す。図2はもっとも単純な構造であり、2つの基材(B−1)をポリウレタン系接着剤(B−2)で貼りあわせたものである。しかしながら、実際に太陽電池裏面封止用シートとして用いる場合には、水分および酸素に対するガスバリア層(B−3)を介在させる必要があり、最終的には図3の構成のようにガスバリア層(B−3)を介在させた構成になる。このようなガスバリア層としては、金属箔基材や金属蒸着フィルム基材アルミニウム箔基材、無機化合物蒸着フィルム基材が挙げられる。金属箔としてはアルミニウム箔、金属蒸着フィルムとしてはポリエステルやポリオレフィン系延伸フィルムにアルミニウムを蒸着させたアルミニウム蒸着フィルムが代表的である。無機化合物蒸着フィルム基材としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化インジウムあるいはこれらの複合酸化物などをポリエステル基材に蒸着したフィルム基材が挙げられ、透明で、かつ、酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであればよい。その中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素が好ましい。その厚さは、用いられる無機酸化物の種類・構成により最適条件は異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。膜厚が5nmより薄いと均一な膜が得られず、かつ、バリア機能を発現させるための十分な膜厚でない。膜厚が300nmより厚い場合は薄膜の柔軟性にかけ、外的応力により用意に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、10〜150nmの範囲内である。これらの蒸着層を設ける方法としては、通常の真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。また、必要に応じては更なるガスバリア性の向上という点から、上記無機化合物の蒸着層上に、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分あるいは完全けん化物とシラン化合物からなるオーバーコート層を設けても構わない。
【0035】
このガスバリア層(B−3)は電気絶縁性という点からもアルミニウム箔基材やアルミ蒸着フィルム基材よりは無機化合物蒸着フィルム基材を用いた方が好ましい。また太陽電池裏面封止用シートとして用いる際には、本ガスバリア層も耐加水分解性に優れる基材を用いる必要がある。このような点から、上述した基材、特にポリエステル基材を用いた無機化合物蒸着フィルムを得ることが可能であるが、通常無機化合物蒸着フィルムに用いる基材はその厚み約10〜40μmの範囲のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが一般的である。この厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムは、Tダイキャスト法により溶融したポリエステル樹脂をフィルム製膜し、インラインで同時あるいは逐次二軸延伸後、熱固定させることで製造される。このとき加工性を向上させるため、固有粘度が0.2〜0.5dl/gの範囲のポリエステル樹脂を用いるケースが多い。つまり、一般的に無機化合物蒸着フィルムに用いられるフィルム基材、特にポリエステル基材は耐加水分解性に劣る。そのため、基材(B−1)あるいはポリウレタン系接着剤(B−2)の耐加水分解性を向上させても、図3の中間層に相当するガスバリア層(B−3)が加水
分解を引き起こす恐れがある。
【0036】
つまり、ポリオールD、Eの設計意図、さらにはポリオールB〜Eにカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、好ましくはカルボジイミド化合物を配合する意図は、このガスバリア層(B−3)の加水分解を抑制させることにある。その基本原理は下記の通りである。
【0037】
まず、ポリオールB、Cのように耐加水分解に優れる接着剤主剤を用いた場合のカルボジイミド化合物などの添加の効果については、接着剤の加水分解を抑制させるために添加させるのでは無く、ガスバリア層(B−3)の加水分解抑制のために配合するものである。つまり、ポリオールAを用いたポリウレタン系接着剤は、接着剤としての機能を低下させる変わりにガスバリア層(B−3)を保護するものであり、いいかえると、ガスバリア層(B−3)を加水分解させる水分をポリオールAが犠牲となって補足するといった考え方である。ポリオールB、Cはそのポリウレタン系接着剤自体加水分解の恐れが低く、ポリオールAを用いた時の加水分解を引き起こす水分は、ポリオールB、Cからなるポリウレタン系接着剤を透過して、ガスバリア層(B−3)の加水分解に消費されてしまう。そのため、ガスバリア層(B−3)の加水分解を抑制させるためカルボジイミド化合物などの添加が有効である。一方、ポリオールD、Eのように耐加水分解性の主剤と加水分解性の主剤を配合している意図は、耐加水分解性主剤の方で接着機能を付与させると同時に、加水分解性主剤(ポリオールAに相当)はガスバリア層(B−3)の基材を加水分解させる水分をポリオールAの加水分解に消費させてしまうという考え方である。さらにこれらのポリオールD、Eにカルボジイミド化合物などを配合する目的は、この加水分化したポリオールAのカルボキシル基を封鎖させるために配合させるものである。このようにポリウレタン系接着剤組成物として、それぞれの添加剤の機能を明確に分担させることで、太陽電池裏面封止用シートとして必要な接着機能と耐加水分解性を付与させることが可能になる。
【0038】
上述した太陽電池裏面封止用シートの製造方法としては上述した基材上にグラビアコート、ロールコート、バーコート、リバースコート等の手法を用いて、ドライ固形分として0.1〜10g/m2の範囲で上記ポリウレタン系接着剤を塗工し、ドライラミネートなどの公知手法を用いて積層させることが挙げられる。このとき、基材側は必要に応じて、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理など接着性を向上させるための表面処理を施すことが可能であり、特に基材としてフッ素系樹脂を用いた場合は、プラズマ処理などが好適である。また上記ドライプロセスに限らず、例えばポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系あるいはこれらの混合物からなる易接着コート層を基材側に設けても構わない。
【0039】
このようにして得られた積層体を太陽電池裏面封止用シートとして用い、太陽電池モジュールが製造される。この工程は下記(1)〜(4)である(図4)。
(1)加熱された天板(およそ120〜160℃)上にガラス板、充填材、セル、充填材、裏面封止用シートをセットする。
(2)チャンバー1、2を真空引きする。
(3)チャンバー1を大気開放し、耐熱性を有するゴムシートをモジュールに密着させる(4)その熱/圧力で充填材であるエチレン酢酸ビニル共重合体を溶融、セルの包埋、ガラス板/セル/裏面封止シートと接着、充填材の架橋・固化させる。
【0040】
この時(4)の工程では、ラミネート後に別ラインに設けたオーブンにて架橋反応をさせるケースと、ラミネーター内部で架橋反応をさせるケースとに分類される。前者はスタンダードキュアといわれるタイプで、後者はファストキュアといわれるタイプである。通常、太陽電池モジュールの充填材として用いられる材料は、酢酸ビニル含有量が10〜4
0重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、太陽電池セルの耐熱性、物理的強度を確保するために、熱あるいは光などによりエチレン−酢酸ビニル共重合体を架橋している。
【0041】
熱架橋を行う場合は通常有機過酸化物が用いられ、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものが使用されている。通常、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが用いられ、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロキシパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイドなどが用いられている。
【0042】
光硬化を行う場合には光増感剤が用いられ、水素引き抜き型(二分子反応型)である、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、イソプロピルチオキサントンなどが用いられており、内部開裂型開始剤としては、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタールなど、α−ヒドロキシアルキルフェノン型として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アルキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノンなどが使用できる。更に、α−アミノアルキルフェノン型として、2−メチル−1−[4(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが、またアシルフォスフィンオキサイドなども用いられている。
【0043】
また、太陽電池モジュールを構成するガラス板との接着を考慮してシランカップリング剤も配合されており、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが配合されている。
【0044】
更に、接着性及び硬化を促進する目的でエポキシ基含有化合物を配合されている場合もあり、エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アクリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテル等の化合物や、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや重量平均分子量が数千から数十万のポリマーを配合されているケースもある。
【0045】
そしてさらに、充填材の架橋、接着性、機械的強度、耐熱性、耐湿熱性、耐候性などを向上させ目的で、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はアリル基含有化合物を添加されており、(メタ)アクリル酸誘導体、例えばそのアルキルエステルやアミドが最も一般的である。この場合、アルキル基としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基の他に、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒド
ロキシプロピル基などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸とエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、アクリルアミドが代表的である。また、アリル基含有化合物としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が配合されている。
【0046】
さらには、難燃性を付与するための無機化合物や、耐候性を付与するための紫外線吸収剤、酸化劣化防止のための酸化防止剤も種々に配合されている。つまり、太陽電池モジュールを構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体は、太陽電池モジュールとして要求される機能を満たすべく、各種添加剤を配合した樹脂組成物であることが挙げられる。
【0047】
よって、このような各種添加剤を配合することによって得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体の組成物と太陽電池裏面封止用シートとの密着性を向上させる為に、必要に応じて基材(B−1)の充填剤と貼り合わせる側に、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、ポリエステル系、ウレタン系、スチレン系樹脂あるいはこれらの変性物からなる易接着コート層を設けても構わない。
【0048】
以上記載の構成からなる太陽電池裏面封止用シートを設けることで耐加水分解性が良好で、かつ、太陽電池モジュールの保護作用が良好な太陽電池裏面封止シートを得ることが可能である。
【実施例】
【0049】
以下に本発明の実施例を示すが、これに限定されるわけではない。
【0050】
[ポリエステル基材]
<基材:1>
厚さ188μmの「微発泡タイプ」白色ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。このポリエチレンテレフタレートは、オリゴマーコンテント0.5wt%、数平均分子量19500、固有粘度0.7dl/gである。本基材は中間層に微発泡層を設けた2種3層の多層フィルムであり、中間層が80%を占める。この白色ポリエチレンテレフタレートフィルムは未処理のものを用いた。
<基材:2>
厚さ40μmのポリビニリデンフロライド(PVDF)系の2種2層多層フィルムを用いた。本材料はPVDFとアクリル系樹脂から構成されるアロイであり、一方の層はPVDF/アクリル=80/20であり、もう一方の層はPVDF/アクリル=20/80である。このPVDF/アクリル=20/80の層側を接着剤の貼り合わせ面とし、この貼り合わせ面側にはあらかじめプラズマ処理を施した。
<基材:3>
厚さ12μmの通常の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにPVD法でアルミナ蒸着層を20nm、さらにオーバーコート層としてエチレン−酢酸ビニル共重合体の完全けん化物にアルコキシシランの加水分解物をゾル−ゲル反応させコーティング層をとして0.5μm設けた。この基材をガスバリア基材として用いた。
【0051】
以下の接着剤を用いた。
<接着剤:1>
ポリエステルポリオールからなる主剤にキシリレンジイソシアネート(アダクト体)とヘキサメチレンジイソシアネート(ビューレット体)の混合物からなる硬化剤を固形分比で3:1になるように配合したポリウレタン系接着剤を用いた。
<接着剤:2>
接着剤1の100重量部に対し、N,N’−ジフェニルカルボジイミドを10重量部配合したポリウレタン系接着剤を用いた。
<接着剤:3>
イソホロンジイソシアネート(モノマー)により鎖伸長を施した脂肪族ポリカーボネート系主剤に、イソホロンジイソシアネート(トリマー)からなる硬化剤を固形分比で3:1になるように配合したポリウレタン系接着剤を用いた。
<接着剤:4>
接着剤3の100重量部に対し、N,N’−ジフェニルカルボジイミドを30重量部配合したポリウレタン系接着剤を用いた。
<接着剤:5>
骨格中にヒドロキシエチルメタクリレートを共重合させたアクリルポリオール系主剤に、ヘキサメチレンジイソシアネート(ビューレット体)からなる硬化剤を固形分比で3:1になるように配合したポリウレタン系接着剤を用いた。
<接着剤:6>
イソホロンジイソシアネート(モノマー)により鎖伸長を施した脂肪族ポリカーボネート系主剤とポリエステルポリオールからなる主剤を70/30になるようにブレンドした混合主剤に、イソホロンジイソシアネート(トリマー)からなる硬化剤を固形分比で3:1になるように配合したポリウレタン系接着剤100重量部に対し、N,N’−ジフェニルカルボジイミドを30重量部配合したポリウレタン系接着剤を用いた。
<接着剤:7>
脂肪族ポリカーボネート系主剤とポリエステルポリオールからなる主剤を70/30になるようにブレンドした混合主剤をイソホロンジイソシアネート(モノマー)にて鎖伸長を施した共重合タイプの主剤に、イソホロンジイソシアネート(トリマー)からなる硬化剤を固形分比で3:1になるように配合したポリウレタン系接着剤100重量部に対し、N,N’−ジフェニルカルボジイミドを30重量部配合したポリウレタン系接着剤を用いた。
【0052】
[太陽電池裏面封止用シートの作成]
<基材:1>〜<基材:3>を上記<接着剤:1>〜<接着剤:8>を用いて、ドライラミネート法により積層させた。接着剤の塗工量はドライ換算で5g/mになるように調整した。エージング温度は50℃−5日である。実際に試作した構成は、下記<構成:1>〜<構成:4>である。
<構成:1>:<基材:1>/接着剤/<基材:1>
<構成:2>:<基材:2>/接着剤/<基材:2>
<構成:3>:<基材:1>/接着剤/<基材:3>/接着剤(下線)/<基材:1>
<構成:4>:<基材:2>/接着剤/<基材:3>/接着剤(下線)/<基材:2>
ただし、<構成:3>、<構成:4>における接着剤(下線)は<基材:3>における蒸着層に接する側である。
【0053】
[評価サンプルの評価方法]
上記構成を、加圧蒸気を用いた促進評価試験により評価を行った。上記構成のサンプルをA4サイズに切り取り、ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)にセットし、105℃の環境で経時におけるラミネート強度と剥離挙動を評価した。ラミネート強度はテンシロンによるT型剥離法を用い、15mm幅クロスヘッドスピード300mm/min.における強度を測定した。太陽電池裏面封止用シートは通常促進評価として85℃−85%RH環境で2000h以上の保存が必要とされるが、本評価法を用いることで促進評価の時短化が可能であり、85℃−85%RH環境2000hにおける物性値が105℃−168h保存の物性値に相当することは確認済みである。
【0054】
下記の実施例で試作したサンプルについて上記の評価方法に基づいて接着剤の基礎性能
評価を行った。その評価結果を表1〜3に示す。
【0055】
[実施例1]
<接着剤:1>を用いて、上記<構成:1〜4>からなるサンプルを試作した。
【0056】
[実施例2]
<接着剤:2>を用いて、上記<構成:1〜4>からなるサンプルを試作した。
【0057】
[実施例3]
<接着剤:3>を用いて、上記<構成:1〜4>からなるサンプルを試作した。
【0058】
[実施例4]
<接着剤:4>を用いて、上記<構成:1〜4>からなるサンプルを試作した。
【0059】
[実施例5]
<接着剤:5>を用いて、上記<構成:1〜4>からなるサンプルを試作した。
【0060】
[実施例6]
<接着剤:6>を用いて、上記<構成:1〜4>からなるサンプルを試作した。
【0061】
[実施例7]
<接着剤:7>を用いて、上記<構成:1〜4>からなるサンプルを試作した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
表1〜3より、構成1、構成2からは、カルボジイミド添加していないポリエステルポリオール系ポリウレタン樹脂では促進評価168h以上で強度低下が認められ、目視でもディラミネーションによる浮きが確認されるようになる。カルボジイミドを添加することでその凝集力を維持し、耐加水分解性に優れることが確認される。ポリカーボネート系、アクリル系主剤を用いたものはカルボジイミドを配合しなくても加水分解による影響が少なく、経時でも良好なラミネート強度を示していることが確認される。一方、構成として中間層に通常の二軸延伸ポリエステルフィルムからなる層を設けた構成3、構成4に関しては、カルボジイミドを配合していないポリカーボネート系、アクリル系主剤を用いたものは、中間層のポリエステル基材の加水分解により太陽電池裏面封止用シートとしての実用できない傾向が確認される。しかしながらカルボジイミドを配合することで接着層だけでなく、中間層のポリエステル層の加水分解も抑制するといった効果を付与することが可能である。
【0066】
以上より、本発明の構成の太陽電池裏面封止用シートは、太陽電池モジュールとして実際に利用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿下での促進評価においても、加水分解に伴う材料の劣化を防止し、ディラミネーションに伴う外観不良だけでなく、裏面封止用シートとしてのバリア特性や太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
A:太陽電池モジュール
A−1:太陽電池セル
A−2:充填材
A−3:ガラス板
B:裏面封止シート
B−1:基材
B−2:ポリウレタン系接着剤
B−3:バリア層
C:ラミネーター
C−1:天板
C−2:チャンバー1
C−3:チャンバー2
C−4:ゴムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層以上の基材をポリウレタン系接着剤にて貼りあわせた積層体からなる太陽電池裏面封止用シートにおいて、
前記ポリウレタン系接着剤が、ポリエステルポリオールあるいは2官能以上のイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリエステルウレタンポリオールのいずれか単体または混合物(以下、ポリオールAと記載する)に架橋剤を配合した組成物の100及びエポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の重量部に対し、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物化合物を1〜50重量部配合した下記条件を満たす耐加水分解性を有する接着剤組成物であることを特徴とする太陽電池裏面封止用シート。
・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)で少なくとも105℃−168h保存状態で1N/15mm以上のラミネート強度を有する。
・ハイプレッシャークッカー(加圧蒸気による促進評価装置)での保存評価で、ディラミネーションに伴う基材間の浮きを伴わない。
【請求項2】
前記基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール−テレフタレート(PCT)から選ばれるポリエステル基材、ポリカーボネート系基材、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれるフッ素系基材、あるいはアクリル系基材から選択されることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面封止用シート。
【請求項3】
前記基材が、特に数平均分子量が18000〜40000の範囲で、環状オリゴマーコンテントが1.5wt%以下、固有粘度が0.5dl/g以上の耐加水分解性を有するポリエステル基材であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面封止用シート。
【請求項4】
前記積層体に、ガスバリア層としてアルミニウム箔基材、金属アルミやシリカ、アルミナなどの無機化合物を蒸着した蒸着基材をさらに介在させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池裏面封止用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−238908(P2012−238908A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186569(P2012−186569)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2006−171534(P2006−171534)の分割
【原出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】