説明

安全装置

本発明は自動車用の安全装置(5)に関する。安全装置(5)は、事故状況において初期閉位置から浮き上がった安全位置まで移動されるボンネット(1)に装備される。本発明によれば、安全装置(5)はカバー要素(6)を有する。歩行者の保護性を高めるために、前記カバー要素(6)は、ボンネット(1)が安全位置にある時、ボンネット(1)と車体との間の範囲を覆い、前記カバー要素はボンネット(1)に対し角度をなして配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による自動車用の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の安全装置は、例えば、特許文献1で開示されている。この文献は、事故状況において初期閉位置から浮き上がった安全位置まで移動されるボンネットについて記載している。公知の安全装置は、このボンネットの下に配備されるエアバッグを有する。ボンネットの安全位置において、エアバッグは膨張される。膨張されたエアバッグは、ボンネットの安全位置において生じる、ボンネットの横の領域の、車体とボンネットとの間の、間隙を覆う。
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第100 14 832 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、歩行者の保護性を高める、自動車用の安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は請求項1の特徴を有する安全装置によって達成される。
【0006】
それによれば、本発明による安全装置は、アクティブボンネットに装備され、ボンネットが浮き上がった安全位置に移動されると直ちにボンネットと車体との間の領域を覆うカバー要素によって特徴づけられる。安全位置において、カバー要素は、ボンネットに対して角度をもって配置されるので、ボンネットが安全位置にある限り、間隙が車体とボンネットとの間に生じない。このことは、歩行者が、例えば、事故の際にボンネットと車体との間に、手を挟み込むのを防ぐ。
【0007】
有利な改良点は、従属請求項に開示される。
【0008】
費用を考慮した場合、安全装置がボンネットと一体化構造のものであることが好ましく、これは安全装置をボンネットに締結する設置費用がこの場合には不要となるからである。当然、以下の例示的な実施形態で詳細に説明されるような多品構造も考えられる。多品構造は、安全装置を、例えば、プラスチック又は特殊金属のような、ボンネットと異なる材料から製造できる利点を有する。
【0009】
他の実施形態によれば、カバー要素は、回動可能に取り付けられる。この取り付け方によって、カバー要素がボンネットの初期位置とは大きく異なるように安全位置に配置されることが可能となる。これは、ボンネットの初期位置で、カバー要素用の構成空間を追加的に設けなくても良いように、カバー要素がボンネットの初期位置で回動できる利点を有する。
【0010】
他の実施形態によれば、カバー要素はボンネットに締結される。しかしながら、カバー要素を車体に締結することも考えられる。この種類の構造は、歩行者の保護ということに関し、ボンネットを本発明による安全装置に関係なく自由に設計できるという利点を有する。安全装置の締結のために起こり得る、例えば、ボンネットの剛性に関する、補償対策が不要となる。
【0011】
他の実施形態によれば、安全装置はカバー要素と保持要素とを有する。保持要素は、例えば、ねじのような締結要素を保持するのに使用される。この保持要素により、ボンネット又は車体への追加的な締結要素が節約される。安全装置は、あらかじめ組み立てられ、保持要素によってボンネット又は車体に締結されても良い。
【0012】
他の実施形態によれば、カバー要素は、ヒンジを介して保持要素に接続される。ボンネットの安全位置において、カバー要素はボンネットに対して実質的に直角に延在し、ボンネットの初期位置において、カバー要素はボンネットと実質的に平行に延在する。カバー要素の位置の変化は、ヒンジによって簡単にもたらされ、さらに、構成空間は、カバー要素がボンネットの初期位置に引っ込められる場合に節約される。
【0013】
ボンネットの初期位置において、カバー要素は、他の実施形態によれば、加圧下でボンネットと平行に保持される。その保持は、例えば、ボルト又はラッチ掛けを介して行われる。加圧はばねの力によって行われても良い。事故状況において、加圧ばねは解放され、カバー要素は自動的にボンネットと直角をなす位置をとる。
【0014】
カバー要素の位置の変更は、他の実施形態によれば、センサを介して、始動される。それによって、例えば、ボンネットを初期位置から安全位置に移動させるセンサが同時にカバー要素の位置を変更させる始動信号を提供することが可能となる。その結果、安全装置用の追加センサが不要となる。
【0015】
他の実施形態によれば、安全装置は互いに隣り合って配置された複数のセグメントを有する。これらのセグメントは、互いに間隔を空けて配置され、それぞれカバー要素と保持要素とを有しても良い。個々のセグメントは、ウエブまたはワイヤを介して互いに接続されても良い。その結果、安全装置は、より曲がりやすくなり、ボンネットの外形に適合され、それらは、例えば、前照灯に沿って曲げられても良い。安全装置は、したがって、非常に広範囲の車種のボンネットに使用できる。
【0016】
本発明による安全装置は、図面に示された例示的な実施形態を参照して以下で詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1aは、ボンネット1及び前照灯モジュール2を備えた自動車の前部領域の断面図を示す。ボンネット1は閉状態で示されている。この状態は、以下では初期位置と呼ぶ。ボンネット1は上部パネル3と下部パネル4とを有する。2枚のパネル3、4は、実質的に互いに平行に配置される。安全装置5は、移動方向の前方に向き、又は前照灯モジュール2に面するボンネット1の端部に配置される。安全装置5は、ボンネット1に対して実質的に直角に配置されるカバー要素6を有する。カバー要素6は、ボンネット1の上部パネル3と下部パネル4とから形成される。しかしながら、カバー要素6が2枚のパネル3、4のうちの1枚からだけで形成されることも考えられる。前照灯モジュール2の拡散レンズ2’は、ボンネット1に面する側に、移動方向と逆に自動車を見て安全装置5のカバー要素6を部分的に覆う段7を有する。
【0018】
図1bは、ボンネット1が車体に対してある程度浮き上がっていることが図1aと異なる。この状態を、以下では安全位置と呼ぶ。浮き上がる程度は法的要件に対応する。安全位置において、カバー要素6は、移動方向に向く端部で、車体からボンネット1までの距離に対応する長さのものである。ボンネット1の安全位置において、カバー要素6は、拡散レンズ2’の段7で終端する、したがって、ボンネット1と拡散レンズ2’又は車体との間に間隙が生じるのを防ぐ。カバー要素6は、実質的にボンネット1の全幅(図示せず)にわたり延在し、ボンネット1の安全位置において、実質的にボンネット1と車体との間の全領域を覆う。
【0019】
図2a、bは、安全装置5の他の例示的実施形態を明らかにする。図1a、bと対照的に、安全装置5は多品構造のものである。それはカバー要素6とヒンジ8とを有する。ヒンジ8は、移動方向に向くボンネット1の端部においてボンネット1の下に締結される。カバー要素6は、ヒンジ8に回動可能に取り付けられ、矢印の方向Aにヒンジ8の回りで回動する。図2aに示された初期位置において、カバー要素6は、水平に、したがって、実質的にボンネット1と平行に延在する。図2bは、安全位置のボンネット1を示す。カバー要素6は直立位置をとる。この状態において、ヒンジ8と反対側のカバー要素6の端部は、前照灯モジュール2の段7に当接する、したがって、ボンネット1と前照灯モジュール2との間の領域を覆う。水平位置から直立位置への移動は、例えば、カバー要素6に力を加えるばね(図示せず)を介して行うことができる。その結果、カバー要素6は、ボンネット1の方向に加圧され、この位置で保持される。ボンネット1が事故状況において安全位置に移動されると直ちに、ばねが同時に解放される。その結果、保持が解放される。カバー要素6は、ヒンジ8の回りで回動し、直立位置をとる。しかしながら、電動機を介してカバー要素6の位置の変更を達成することも考えられる。カバー要素6の位置の変更は、例えば、センサを介して始動できる。
【0020】
安全装置の動作方法は、図2a、bを参照して以下で説明される。
【0021】
図2aに示された断面図は、初期位置の、すなわち、事故状況前のボンネット1を示す。この場合、安全装置5のカバー要素6は、ボンネット1と平行に揃えられる。事故の際に、ボンネット1は安全位置に浮き上がる。これは、図2bに示される。カバー要素6は保持状態(さらに説明しない)から同時に解放される。解放後、カバー要素6は、それが直立位置をとるまでの直立位置に向かって矢印方向Aに従いヒンジ8の回りで回動される。ボンネット1と車体との間の領域は完全に覆われる。その結果、歩行者との事故の際に、例えば、歩行者の手又は指が挟まれるようなことが全体の事故状況を通じて回避される。誤って始動した際、又はボンネット1が事故後でもあまり損傷を受けなかった場合、ボンネット1をその初期位置に戻すことができる。この場合、カバー要素6は再びボンネット1と平行に揃えられる。安全装置5は可逆的である。
【0022】
図3a、bは、安全装置5のヒンジ8が車体に締結されるということで図2a、bと異なる。この実施形態において、ヒンジ8は拡散レンズ2’の段7に締結される。カバー要素6は、カバー要素6がボンネット1に対して直角に向けられるまで矢印方向Aにヒンジ8の回りで回動する。その結果、カバー要素6は、ボンネット1と前照灯モジュール2との間の領域を覆う。
【0023】
図4aは安全装置5の他の実施形態を示す。安全装置5は、互いに隣り合うように配置された複数のセグメント9を有する。これらのセグメント9は、それぞれ保持要素10とカバー要素6とを有する。保持要素10を用いないでセグメント9を製造することも同様に可能である。この場合、セグメント9のカバー要素6は、対応する締結可能性によってボンネット1又は車体に直接締結される。保持要素10及びカバー要素6は、ヒンジ11を介してそれぞれ互いに回動できるように接続される。フィルムヒンジを介してセグメント9の保持要素10とカバー要素6とを回動できるように接続することも考えられる。保持要素10は、実質的に長方形構造のものであり、ボンネット1の、又は車体の下側に、例えば、ねじのような、締結要素12によって締結される。保持要素10はそれぞれウエブ13を介して互いに接続される。ウエブ13の代わりに、図4bの安全装置5の実施形態が示すような、ワイヤ14形式の個々のセグメント9の接続も考えられる。カバー要素6も同様に実質的に長方形の形状を有する。
【0024】
安全装置5は、例えば、図1〜3に示されるように−ボンネット1と前照灯モジュール2との間に配置されるだけでなく、ボンネットの前縁部とラジエータグリル又はラジエータグリルとバンパとの間、ボンネットの側縁部とウィング部との間、又はボンネットの後縁部とウインドシールドとの間の領域に安全装置を配置することも同様に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1a】ボンネットと一体形成される本発明による安全装置と共に、ボンネット及び前照灯モジュールと同高さの車体についての自動車の長手方向軸に沿った断面図を示す。
【図1b】ボンネットと一体形成される本発明による安全装置と共に、ボンネット及び前照灯モジュールと同高さの車体についての自動車の長手方向軸に沿った断面図を示す。
【図2a】ヒンジを介してボンネットに締結される本発明による安全装置と共に、図1に準じる断面図を示す。
【図2b】ヒンジを介してボンネットに締結される本発明による安全装置と共に、図1に準じる断面図を示す。
【図3a】ヒンジを介して車体に締結される本発明による安全装置と共に、図1に準じる断面図を示す。
【図3b】ヒンジを介して車体に締結される本発明による安全装置と共に、図1に準じる断面図を示す。
【図4a】複数のセグメントから構成される本発明による安全装置の立体図を示す。
【図4b】複数のセグメントから構成される本発明による安全装置の立体図を示す。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
事故状況において初期閉位置から浮き上がった安全位置に移動されるボンネットに装備される、自動車用安全装置において、
前記安全装置(5)は、前記安全位置において、前記ボンネット(1)と車体との間の領域を覆い、前記ボンネット(1)に対して角度をなして配置されるカバー要素(6)を有することを特徴とする安全装置。
【請求項2】
前記カバー要素(6)は前記ボンネット(1)と一体構造のものであることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記カバー要素(6)は回動可能に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項4】
前記カバー要素(6)は前記ボンネット(1)に締結されることを特徴とする請求項3に記載の安全装置。
【請求項5】
前記カバー要素(6)は前記車体に締結されることを特徴とする請求項3に記載の安全装置。
【請求項6】
前記安全装置(5)は保持要素(10)を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項7】
前記保持要素(10)及び前記カバー要素(6)はヒンジ(8)を介して互いに接続されることを特徴とする請求項6に記載の安全装置。
【請求項8】
前記ボンネット(1)の前記安全位置において、前記カバー要素(6)は、前記ボンネット(1)に対して実質的に直角に延在することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項9】
前記ボンネット(1)の前記初期位置において、前記カバー要素(6)は、前記ボンネット(1)と実質的に平行に延在することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項10】
前記カバー要素(6)は加圧されることを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項11】
事故状況を検出するセンサが設けられることを特徴とする請求項3〜10のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項12】
前記安全装置(5)は互いに隣り合って配置された複数のセグメント(9)を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の安全装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
事故状況において初期閉位置から浮き上がった安全位置に移動されるボンネットに装備される、自動車用安全装置であって、前記安全位置において、前記ボンネット(1)と車体との間の領域を覆い、前記ボンネット(1)に対して角度をなして配置されるカバー要素(6)を有する前記安全装置(5)において、
前記カバー要素(6)が回動可能に取り付けられることを特徴とする安全装置。
【請求項2】
前記カバー要素(6)は前記ボンネット(1)に締結されることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記カバー要素(6)は前記車体に締結されることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項4】
前記安全装置(5)は保持要素(10)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項5】
前記保持要素(10)及び前記カバー要素(6)はヒンジ(8)を介して互いに接続されることを特徴とする請求項4に記載の安全装置。
【請求項6】
前記ボンネット(1)の前記安全位置において、前記カバー要素(6)は前記ボンネット(1)に対して実質的に直角に延在することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項7】
前記ボンネット(1)の前記初期位置において、前記カバー要素(6)は、前記ボンネット(1)と実質的に平行に延在することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項8】
前記カバー要素(6)は加圧されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項9】
事故状況を検出するセンサが設けられることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項10】
前記安全装置(5)は互いに隣り合って配置された複数のセグメント(9)を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の安全装置。

【公表番号】特表2006−522703(P2006−522703A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504594(P2006−504594)
【出願日】平成16年3月9日(2004.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002387
【国際公開番号】WO2004/089702
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】