説明

安定化させたαヘリックスペプチドおよびその使用法

【課題】安定化させたαヘリックスペプチド及びその使用する方法を提供する。
【解決手段】2個のアミノ酸モチーフ間にテザーを提供する架橋(「炭化水素ステープル」)部分を含み、ポリペプチドの本来の二次構造を立体的に補助する。これによりα-ヘリックス二次構造を有する素因のあるポリペプチドを、その本来のα-ヘリックス状の立体構造に拘束することができる。ポリペプチドを使用し、過剰なまたは不適切な細胞死を特徴とする疾患を治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、2003年11月5日に出願された米国特許出願第60/517,848号、および2004年7月27日に出願された米国特許出願第60/591,548号の優先権を主張するものであり、これらの各出願の全内容は本明細書に参照として組入れられている。
【背景技術】
【0002】
背景
アポトーシス、またはプログラムされた細胞死は、全ての多細胞生物の発達およびホメオスタシスの維持において重要な役割を果たしている。アポトーシスの感受性は、細胞間で顕著に変動し、かつ外部および内部の両方の細胞事象により影響を受ける。細胞の運命を影響を与える正および負の調節タンパク質が定義されており、ならびにこれらのタンパク質シグナル伝達ネットワークの調節不全は、様々な癌を含むヒト疾患の広範なスペクトルの病因において明らかにされている。BCL-2は、このアポトーシスタンパク質ファミリーの基礎となるメンバーであり、最初にt(14;18)(q32;q21)のリンパ腫における染色体ブレークポイントにおいて同定された(Bakhashi et al. 1985、Cell、41:899(非特許文献1);Cleary et al. 1985 Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、82:7439(非特許文献2))。
【0003】
遺伝子再構成は、BCL-2を免疫グロブリン重鎖遺伝子座の転写制御下に配置し、これは不適切に高レベルのBCL-2、その結果の病的細胞生存を生じる。アポトーシスにおけるこのような異常は、リンパ球性白血病および骨髄性白血病ならびに他の悪性疾患の宿主において同定されており、かつ腫瘍の進行および化学療法が誘導したアポトーシスに対する獲得性の抵抗に結びつけられている。タンパク質のBCL-2ファミリーは、著しく拡大され、細胞死に対する感受性を支配するチェックとバランスを提供するプロアポトーシス分子および抗アポトーシス分子の両方を含む(図1)。驚くべきことではないが、アポトーシスタンパク質は、細胞喪失性の疾患における急激な細胞死を防ぎかつ悪性疾患において細胞死経路を活性化するという両方の治療薬開発のための重要な標的となってきている。
【0004】
BCL-2ファミリーは、BH1、BH2、BH3、およびBH4と称される最大4種の保存された「BCL-2ホモロジー」(BH)ドメインの存在により定義され、これらは全てα-ヘリックスセグメントを含む(Chittenden et al. 1995、EMBO、14:5589(非特許文献3);Wang et al. 1996、Genes Dev.、10:2859(非特許文献4))。BCL-2およびBCL-XLのような抗アポトーシスタンパク質は、全てのBHドメインの配列保存を示す。プロアポトーシスタンパク質は、BH1、BH2、およびBH3ドメインに相同性を有する「マルチドメイン」メンバー(例えば、BAK、BAX)、ならびに、BH3両親媒性のα-ヘリックスセグメントに専ら配列相同性を含む「BH3オンリードメイン」メンバー(例えば、BID、BAD、BIM、BIK、NOXA、PUMA)に分けられる。BCL-2ファミリーメンバーは、ホモ二量体およびヘテロ二量体を形成する能力を有し、このことは、プロアポトーシスタンパク質および抗アポトーシスタンパク質レベル間の競合的結合および比は死の刺激の感受性を指示することを示唆している。抗アポトーシスタンパク質は、細胞をプロアポトーシス過剰、すなわち過剰なプログラムされた細胞死から保護するように機能する。追加の「セキュリティ(security)」測定は、プロアポトーシスタンパク質の転写の調節および不活性配座異性体としてのそれらの維持を含み、死滅前機能を活性化するための、タンパク質分解性の活性化、脱リン酸化、もしくはリガンド誘導した立体構造の変化のいずれかを必要とする。ある細胞型において、形質膜で受け取られた死のシグナルは、ミトコンドリア経路を介して、アポトーシスの引金をひく(図2)。ミトコンドリアは、致死的な下流のタンパク質分解性の事象につながる、カスパーゼ9を活性化する細胞質複合体の重要な成分であるシトクロムcを隔絶することにより、細胞死の門番として役立つことができる。BCL-2/BCL-XLおよびBAK/BAXのような、マルチドメインタンパク質は、ミトコンドリア膜において保護者と殺し屋の決闘を演じ、それらの活性は更に、BCL-2ファミリーの上流BH3オンリーメンバーにより調節される。例えばBIDは、プロアポトーシスタンパク質の「BH3オンリードメイン」サブセットのメンバーであり、および形質膜で受け取った死のシグナルをミトコンドリア膜のエフェクタープロアポトーシスタンパク質へ伝達する。BIDは、プロアポトーシスタンパク質および抗アポトーシスタンパク質の両方と相互作用する独自の能力を有し、ならびにカスパーゼ8による活性化の場合には、シトクロムc放出およびミトコンドリアアポトーシスの引金を引く。欠失試験および突然変異誘発試験は、プロアポトーシスファミリーメンバーの両親媒性α-ヘリックス状のBH3セグメントは、死のドメインとして機能し、その結果マルチドメインアポトーシスタンパク質との相互作用に重要な構造モチーフを表している。構造試験は、BH3ヘリックスは、BH1ドメイン、BH2ドメインおよびBH3ドメインの境界面により形成された疎水溝への挿入により、抗アポトーシスタンパク質と相互作用することを明らかにしている。活性化されたBIDは、抗アポトーシスタンパク質(例えば、BCL-2およびBCL-XL)により結合および隔絶され、ならびにプロアポトーシスタンパク質BAXおよびBAKの活性化の引金を引き、シトクロムc放出およびミトコンドリアアポトーシスプログラムにつながる。
【0005】
BADは、その発現は恐らくBAX/BAK活性化の引金を引く「BH3オンリードメイン」プロアポトーシスファミリーメンバーでもある。しかしBIDとは対照的に、BADは、抗アポトーシスメンバーであるBCL-2およびBCL-XLに優先的結合を示す。BAD BH3ドメインはBCL-2へ高親和性結合を示すのに対し、BAD BH3ペプチドは、インビトロにおけるミトコンドリアからのシトクロムc放出を活性化することができず、このことはBADは、BAX/BAKの直接のアクチベーターではないことを示唆している。BCL-2を過剰発現しているミトコンドリアは、BID誘導したシトクロムc放出に対し抵抗性であるが、BADとの同時処置は、BID感受性を回復することができる。BADによるミトコンドリアアポトーシスの誘導は、下記のいずれかから生じるように見える。(1)BCL-2/BCL-XL結合ポケット由来の、BIDおよびBID様タンパク質のようなBAX/BAKアクチベーターの交換、または(2)抗アポトーシスタンパク質によるBID様タンパク質の隔絶を妨害するための、BADによる、BCL-2/BCL-XL結合ポケットの選択的占拠。従って「BH3オンリードメイン」タンパク質のふたつのクラス、ミトコンドリアアポトーシスを直接活性化するBID様タンパク質、およびマルチドメイン抗アポトーシスタンパク質の結合ポケットを占拠することにより、ミトコンドリアをBID様プロアポトーシスに対し増感する能力を有するBAD様タンパク質が明らかになる。
【0006】
インビトロにおいてアポトーシスタンパク質機能をプロービングし、およびインビボにおいてアポトーシス経路を特異的に操作する小型分子を同定または作製する目的が課題となっている。ハイスループットスクリーニングが、マイクロモル親和性でBAK BH3ドメインのBCL-XLとの相互作用を阻害する分子のいくつかについて確定している。この技術は、低親和性化合物を同定するという可能性のある欠点に加え、タンパク質ファミリーの個々のメンバーの微妙な結合特異性に併せて作出された化合物のパネルを作製するその能力に限度がある。アポトーシス経路を操作する別の方法は、ペプチドエンジニアリング、所望の三次元構造を有する化合物を作製するために非特異的ペプチド配列を使用する技術に由来している。この技術のひとつの適用は、ミトコンドリア膜を破壊することにより細胞死を誘導するために使用された非特異的ペプチド配列で構成された「プロアポトーシス」α-ヘリックスの作製に関連している。
【0007】
α-ヘリックスは、タンパク質の主要な構造成分のひとつであり、タンパク質接触の境界面で認められることが多く、多種多様な分子内での生物学的認識事象に参画している。理論的には、BH3ヘリックスのようならせん状のペプチドは、タンパク質-タンパク質相互作用を選択的に妨害または安定化するために使用され、これにより生理的プロセスを操作する。しかしタンパク質内の生物学的活性のあるらせん状のモチーフは典型的には、完全長タンパク質の状況から取り出されおよび溶液中に配置された場合に、小さい構造を有する。従ってインビボ試薬としてのタンパク質のペプチド断片の効能は、ヘリックス二次構造の喪失、タンパク質分解性の分解の受け易さ、および無傷の細胞の透過不能性により、脅かされている。共有的ヘリックス安定化のいくつかの方法が報告されているが、ほとんどの方法論は、極性および/または不安定な架橋に関連している(Phelan et al. 1997、J. Am. Chem. Soc.、119:455(非特許文献5);Leuc et al.、2003、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、100:11273(非特許文献6);Bracken et al.、1994、J. Am. Chem. Soc.、116:6432(非特許文献7);Yan et al、2004、Bioorg. Med. Chem.、14:1403(非特許文献8))。引き続き、Verdineとその同僚らは、アルキルテザーを含むα,α-二置換された非天然のアミノ酸を使用した、別のメタセシスベースの方法を開発した(Schafmeister et al.、2000、J. Am. Chem. Soc.、122:5891(非特許文献9);Blackwell et al.、1994、Angew Chem. Int. Ed.、37:3281(非特許文献10))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Bakhashi et al. 1985、Cell、41:899
【非特許文献2】Cleary et al. 1985 Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、82:7439
【非特許文献3】Chittenden et al. 1995、EMBO、14:5589
【非特許文献4】Wang et al. 1996、Genes Dev.、10:2859
【非特許文献5】Phelan et al. 1997、J. Am. Chem. Soc.、119:455
【非特許文献6】Leuc et al.、2003、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、100:11273
【非特許文献7】Bracken et al.、1994、J. Am. Chem. Soc.、116:6432
【非特許文献8】Yan et al、2004、Bioorg. Med. Chem.、14:1403
【非特許文献9】Schafmeister et al.、2000、J. Am. Chem. Soc.、122:5891
【非特許文献10】Blackwell et al.、1994、Angew Chem. Int. Ed.、37:3281
【発明の概要】
【0009】
概要
本発明はひとつには、少なくとも2個の修飾されたアミノ酸を有するポリペプチドを安定して架橋すること(「炭化水素ステープル」と称されるプロセス)は、そのポリペプチドの本来の二次構造を立体的に授けることを補助するという発見を基にしている。例えば、α-ヘリックス二次構造を有する素因のあるポリペプチドの架橋は、そのポリペプチドを、その本来のα-ヘリックス状の立体構造に拘束することができる。拘束された二次構造は、そのポリペプチドのタンパク質分解性の切断に対する抵抗性を増大し、同じく疎水性を増加する。驚くべきことに場合によっては、これらのポリペプチドは、細胞膜を透過することができる(例えば、エネルギー依存型の輸送機構、例えばピノサイトーシスにより)。従って本明細書に説明された架橋されたポリペプチドは、対応する未架橋のポリペプチドと比べ、改善された生物学的活性を有することができる。例えば架橋したポリペプチドは、BCL-2ファミリーメンバーポリペプチドのα-ヘリックスドメイン(例えばBID-BH3ドメイン)を含むことができ、これはBAK/BAXおよび/またはBCL-2/BCL-XLに結合し、被験者におけるアポトーシスを促進することができる。場合によっては、この架橋したポリペプチドは、アポトーシスを阻害するために使用することができる。本明細書に説明された架橋されたポリペプチドは、例えば被験者における癌の治療など、治療のために使用することができる。
【0010】
ひとつの局面において、本発明は、式(I)

の、式中、各R1およびR2は、独立してH、またはC1-C10のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
R3は、アルキル、アルケニル、アルキニル;[R4-K-R4]nであり;その各々は、0〜6個のR5で置換され;
R4は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;
R5は、ハロゲン、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

であり;
R6は、H、アルキル、または治療的物質であり;
nは、1〜4の整数であり;
xは、2〜10の整数であり;
各yは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であり;ならびに
各Xaaは独立して、アミノ酸である、ポリペプチドを特徴としている。
【0011】
場合によっては、このポリペプチドは、BCL-2ファミリータンパク質に結合する。このポリペプチドは、抗アポトーシスポリペプチドに結合することができる。このポリペプチドは、プロアポトーシスタンパク質に結合することができる。このポリペプチドは、BAXまたはBAKに結合し、活性化することができる。場合によっては、このポリペプチドは、BH1、BH2および/またはBH3ドメインに結合する。
【0012】
場合によってはこのポリペプチドは、細胞死を活性化し、例えばこのポリペプチドは、シトクロムc放出の引金を引き、およびミトコンドリア細胞死を活性化することができる。
【0013】
別の場合において、このポリペプチドは、細胞死を阻害することができる。
【0014】
場合によっては、このポリペプチドは、BH3ドメインを含む。
【0015】
場合によっては、xは、2、3または6である。
【0016】
場合によっては、各yは独立して、3〜15の間の整数である。
【0017】
場合によっては、各yは独立して、1〜15の間の整数である。
【0018】
場合によっては、R1およびR2は各々独立して、HまたはC1-C6アルキルである。
【0019】
場合によっては、R1およびR2は各々独立して、C1-C3アルキルである。
【0020】
場合によっては、R1およびR2の少なくとも一方は、メチルである。例えば、R1およびR2は、両方がメチルである。
【0021】
場合によっては、R3は、アルキル(例えばC8アルキル)であり、およびxは、3である。
【0022】
場合によっては、R3は、C11アルキルであり、およびxは6である。
【0023】
場合によっては、R3は、アルケニル(例えばC8アルケニル)であり、およびxは、3である。
【0024】
場合によっては、xは6であり、およびR3は、C11アルケニルである。
【0025】
場合によっては、R3は、直鎖アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。
【0026】
場合によっては、R3は、-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-である。
【0027】
ある態様において、ふたつのα,α二置換された立体中心は、R立体配置またはS立体配置の両方にあるか(例えば、i、i+4架橋)、または一方の立体中心はRであり、および他方はSである(例えば、i、i+7架橋)。従って、式Iは:

として示され、例えばXが3である場合、C'およびC"二置換された立体中心は、両方ともR立体配置であるか、またはこれらは両方ともS立体配置であることができる。xが6である場合、C'二置換された立体中心はR立体配置であり、およびC"二置換された立体中心はS立体配置である。R3二重結合は、EまたはZ立体化学的立体配置であってよい。
【0028】
場合によっては、R3は、[R4-K-R4]nであり;および、R4は直鎖アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。
【0029】
場合によっては、このポリペプチドは、

のアミノ酸配列と少なくとも約60%(70%、80%、85%、90%、95%または98%)同一であるアミノ酸配列を含み、ここで*は、テザーアミノ酸である。例えば、1、2、3、4、5またはそれよりも多いアミノ酸変化、例えば保存的変化が存在することができる。
【0030】
このテザーは、アルキル、アルケニル、またはアルキニル部分(例えば、C5、C8もしくはC11アルキル、またはC5、C8もしくはC11アルケニル、またはC5、C8もしくはC11アルキニル)を含むことができる。テザーアミノ酸は、α二置換することができる(例えば、C1-C3またはメチル)。場合によっては、このポリペプチドは、

のアミノ酸配列と少なくとも約60%(70%、80%、85%、90%、95%または98%)同一であるアミノ酸配列を含み、ここで*は、テザーアミノ酸である。例えば、1、2、3、4、5またはそれよりも多いアミノ酸変化、例えば保存的変化が存在することができる。場合によっては、このポリペプチドは、細胞膜を通って輸送される(例えば、能動輸送またはエンドサイトーシス機構または受動輸送により)。ある態様において、このポリペプチドは、CysまたはMetを含まない。
【0031】
一部の態様において、ポリペプチドは、BCL-2またはBCL-2様ドメイン、例えばBH3ドメインまたはBH3様ドメイン、例えば図5a、5b、および28a-28hのいずれかに記されたポリペプチドの、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50個またはそれよりも多い連続アミノ酸を含む。各[Xaa]yは、BCL-2またはBCL-2様ドメイン、例えばBH3ドメインまたはBH3様ドメイン、例えば図5a、5b、および28a-28hのいずれかに記されたポリペプチドの、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25個またはそれよりも多い連続アミノ酸を独立して含むことができるペプチドである。[Xaa]xは、BCL-2またはBCL-2様ドメイン、例えばBH3ドメインまたはBH3様ドメイン、例えば図5a、5b、および28a-28hのいずれかに記されたポリペプチドの酸の、3または6個の連続アミノ酸を含むことができるペプチドである。
【0032】
このポリペプチドは、BCL-2またはBCL-2様ドメイン、例えばBH3ドメインまたはBH3様ドメイン、例えば図5a、5b、および28a-28h(SEQ ID NO:)のいずれかに記されたポリペプチドの、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50個の連続アミノ酸を含むことができ、ここで3個のアミノ酸(または6個のアミノ酸)で分離された2個のアミノ酸は、R3を介して連結されたアミノ酸置換基により置き換えられる。従って少なくとも2個のアミノ酸は、テザーアミノ酸またはテザーアミノ酸置換基により置き換えることができる。従って式Iが:

として記される場合、[Xaa]y'および[Xaa]y"は各々、同じまたは異なるBCL-2またはBCL-2様ドメイン由来の連続ポリペプチド配列を含む。
【0033】
本発明は、BCL-2またはBCL-2様ドメイン、例えばBH3ドメインまたはBH3様ドメイン、例えば図5a、5b(SEQ ID NO:84-114)、および28a-28h(SEQ ID NO:1-83)のいずれかに記されたポリペプチドの、10個(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50個またはそれよりも多い)の連続アミノ酸を含む、架橋したポリペプチドを特徴とし、ここで3個のアミノ酸(または6個のアミノ酸)で分離された2個のアミノ酸のα炭素はR3により連結され、2個のα炭素の一方はR1により置換され、および他方はR2により置換され、ならびに各々、追加のアミノ酸へペプチド結合により連結されている。
【0034】
一部の態様において、このポリペプチドは、アポトーシス活性を有する。
【0035】
場合によっては、このポリペプチドは、蛍光部分または放射性同位元素も含む。
【0036】
場合によっては、このポリペプチドは、23個のアミノ酸を含み;R1およびR2は、メチルであり;R3は、C8アルキル、C11アルキル、C8アルケニル、C11アルケニル、C8アルキニル、またはC11アルキニルであり;ならびに、xは、2、3または6である。
【0037】
場合によっては、このポリペプチドは、アフィニティー標識、標的化部分、および/またはビオチン部分を含む。
【0038】
場合によっては、このポリペプチドは、図28a-h(SEQ ID NO:1-83)および5a-b(SEQ ID NO:84-114)に記されたポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドである。別の局面において、本発明は、以下の工程を含む、式(III)のポリペプチドを生成する方法を特徴としている:
式(II)

のポリペプチドを提供する工程:および
式(II)の化合物を触媒で処理し、閉環メタセシスを促進し、これにより式(III)

の化合物を提供し:
式中、各R1およびR2は、独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル;または、ヘテロシクリルアルキルであり;
各nは独立して、1〜15の整数であり;
xは、2、3または6であり;
各yは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であり;ならびに、
各Xaaは、独立してアミノ酸である工程。
【0039】
場合によっては、このポリペプチドは、BCL-2ファミリーメンバータンパク質に結合する。
【0040】
場合によっては、この触媒は、ルテニウム触媒である。
【0041】
場合によっては、この方法は、閉環メタセシスに続いて、還元剤または酸化剤を提供する工程も含む。
【0042】
場合によっては、この還元剤はH2であり、または酸化剤は四酸化オスミウムである。
【0043】
場合によっては、本発明は、本明細書に説明された任意の化合物を被験者へ投与することを含む、被験者を治療する方法を特徴としている。場合によっては、この方法は、追加の治療的物質を投与する工程も含む。
【0044】
場合によっては、本発明は、本明細書に説明された化合物を被験者へ投与することを含む、被験者の癌を治療する方法を特徴としている。場合によっては、この方法は、追加の治療的物質を投与する工程を更に含む。
【0045】
場合によっては、本発明は、本明細書に説明された化合物のライブラリーを特徴としている。
【0046】
場合によっては、本発明は、アポトーシスを促進する候補化合物を同定する方法を特徴とし:これは、
ミトコンドリアを提供する工程;
ミトコンドリアを、本明細書に説明された任意の化合物と接触する工程;
シトクロムc放出を測定する工程;および
化合物の存在下のシトクロムc放出を、その化合物の非存在下のシトクロムc放出と比較する工程を含み、式1の化合物の存在下のシトクロムc放出の増加は、アポトーシス促進の候補化合物としてこの化合物を同定する。
【0047】
場合によっては、本発明は、式(IV)

の、式中;各R1およびR2は、独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
R3は、アルキル、アルケニル、アルキニル;[R4-K-R4]n、または天然のアミノ酸側鎖であり;その各々は、0〜6個のR5で置換され;
R4は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;
R5は、ハロゲン、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

であり;
R6は、H、アルキル、または治療的物質であり;
R7は、アルキル、アルケニル、アルキニル;[R4-K-R4]n、または天然のアミノ酸側鎖であり;その各々は、0〜6個のR5で置換され;
nは、1〜4の整数であり;
xは、2〜10の整数であり;
各yは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であり;ならびに
各Xaaは独立して、アミノ酸である、ポリペプチドを特徴とする。
【0048】
場合によっては、本発明は、式(I)

の、式中;各R1およびR2は、独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
R3は、アルキル、アルキニル、アルキニル;[R4-K-R4]nであり;その各々は、0〜6個のR5で置換され;
R4は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;
R5は、ハロゲン、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

であり;
R6は、H、アルキル、または治療的物質であり;
nは、1〜4の整数であり;
xは、2〜10の整数であり;
各yは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であり;ならびに
各Xaaは独立して、アミノ酸である、ポリペプチドを特徴とし;
このポリペプチドは、水溶液中において、円偏光二色性により決定される、少なくとも5%のαヘリックスを有する。
【0049】
場合によっては、ポリペプチドは、円偏光二色性により決定される、少なくとも15%、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%のαヘリックスを有する。
【0050】
場合によっては、本発明は、式(I)

の、式中;各R1およびR2は、独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
R3は、アルキル、アルキニル、アルキニル;[R4-K-R4]nであり;その各々は、0〜6個のR5で置換され;
R4は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;
R5は、ハロゲン、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

であり;
R6は、H、アルキル、または治療的物質であり;
nは、1〜4の整数であり;
xは、2〜10の整数であり;
各yは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であり;ならびに
各Xaaは独立して、アミノ酸である、ポリペプチドを特徴とし;
ポリペプチドは、式(IV)

の、式中、R1、R2、Xaa、x、y、およびzは全て、先に式(I)について定義したものであるポリペプチドと比較して、円偏光二色性により決定されたαヘリックスの、少なくとも1.25倍の増加を有する。
【0051】
場合によっては、このポリペプチドは、式(IV)のポリペプチドと比較して、円偏光二色性により決定されたαヘリックスの少なくとも1.5倍、少なくとも1.75倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、または少なくとも4倍の増加を有する。
【0052】
場合によっては、本発明は、アポトーシスを阻害する候補化合物を同定する方法であり:
ミトコンドリアを提供する工程;
ミトコンドリアを、本明細書に説明された化合物と接触する工程;
シトクロムc放出を測定する工程;ならびに
本明細書に説明された化合物の存在下のシトクロムc放出を、本明細書に説明された化合物の非存在下のシトクロムc放出と比較する工程を含み、本明細書に説明された化合物の存在下のシトクロムc放出の減少は、アポトーシス阻害の候補化合物として本明細書に説明された化合物を同定する方法を特徴とする。
【0053】
本発明により想起された置換基および変種の組合せは、安定した化合物の形成を生じるもののみである。本明細書において使用される「安定した」という用語は、製造を可能にするのに十分な安定性を有しかつ本明細書に詳述された目的(例えば、被験者への治療的投与、またはインビトロもしくはインビボのいずれかで生物学的経路を試験もしくは発見するための試薬の生成)に有用である十分な期間にわたり化合物の完全性を維持するような化合物を意味する。
【0054】
本発明の化合物は、1個または複数の不斉中心を含むことができ、その結果ラセミ体およびラセミ混合物、単独のエナンチオマー、個別のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物を生じる。これらの化合物のこのような異性体型は全て、明白に本発明に含まれている。本発明の化合物は、複数の互変異性体型においても表わされ、このような場合、本発明は明白に、本明細書に説明された化合物の全ての互変異性体型を含んでいる(例えば、環システムのアルキル化は、複数の部位のアルキル化を生じてもよく、本発明は明白にそのような反応生成物を全て含む)。そのような化合物のそのような異性体型は全て、明白に本発明に含まれる。本明細書に説明された化合物の全ての結晶型は、明白に本発明に含まれる。
【0055】
「アミノ酸」という用語は、アミノ基およびカルボキシル基の両方を含む分子を意味する。適当なアミノ酸は、ペプチドにおいて認められる20種の一般的な天然のアミノ酸のD-型およびL-型の両異性体(例えば、A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、V(一文字略号として公知))に加え、有機合成または他の代謝経路により調製された天然および非天然のアミノ酸を含むが、これらに限定されるものではない。
【0056】
「非必須」アミノ酸残基は、その活性を根絶または実質的に変更することなく、ポリペプチド(例えば、BH3ドメイン)の野生型配列から変更することができる残基である。「必須」アミノ酸残基は、ポリペプチドの野生型配列から変更された場合に、ポリペプチド活性の根絶または実質的に根絶を生じる残基である。
【0057】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似側鎖を有するアミノ酸残基で交換される置換である。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分枝した側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を伴うアミノ酸である。従ってBH3ポリペプチド中の推定される非必須アミノ酸残基は、例えば、優先的に同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基と置き換えられる。
【0058】
記号

は、分子構造の一部として使用される場合、単結合、またはtransもしくはcis二重結合を意味する。
【0059】
「アミノ酸側鎖」という用語は、アミノ酸のα-炭素に結合した部分を意味する。例えば、アラニンのアミノ酸側鎖はメチルであり、フェニルアラニンのアミノ酸側鎖はフェニルメチルであり、システインのアミノ酸側鎖はチオメチルであり、アスパラギン酸のアミノ酸側鎖はカルボキシメチルであり、チロシンのアミノ酸側鎖は4-ヒドロキシフェニルメチルであるなどである。他の非天然のアミノ酸側鎖も、例えば自然に生じるもの(例えば、アミノ酸代謝産物)または合成により生成されたもの(例えば、α二置換されたアミノ酸)などが含まれる。
【0060】
ポリペプチドという用語は、共有結合(例えばアミド結合)により連結された、2個またはそれよりも多い天然または合成のアミノ酸を包含している。本明細書に説明されたようなポリペプチドは、完全長タンパク質(例えば、完全にプロセッシングされたタンパク質)に加え、より短いアミノ酸配列(例えば、天然のタンパク質の断片または合成ポリペプチド断片)を含む。
【0061】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の任意のラジカルを意味する。「アルキル」という用語は、直鎖または分枝鎖であることができ、指定された数の炭素原子を含む、炭化水素鎖を意味する。例えばC1-C10は、その基がその中に1〜10(を含む)個の炭素原子を有し得ることを示している。任意の数値指定がない場合、「アルキル」は、その中に1〜20個(を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。「アルキレン」という用語は、二価アルキル(すなわち-R-)を意味する。
【0062】
「アルケニル」という用語は、1個または複数の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖であることができる炭化水素鎖を意味する。アルケニル部分は、指定された数の炭素原子を含む。例えばC2-C10は、その基がその中に2〜10(を含む)個の炭素原子を有し得ることを示している。「低級アルケニル」という用語は、C2-C8アルケニル鎖を意味する。任意の数値指定がない場合、「アルケニル」は、その中に2〜20(を含む)個の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0063】
「アルキニル」という用語は、1個または複数の炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖であることができる炭化水素鎖を意味する。アルキニル部分は、指定された数の炭素原子を含む。例えばC2-C10は、その基がその中に2〜10(を含む)個の炭素原子を有し得ることを示している。「低級アルキニル」という用語は、C2-C8アルキニル鎖を意味する。任意の数値指定がない場合、「アルキニル」は、その中に2〜20(を含む)個の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0064】
「アリール」という用語は、各環の0、1、2、3、または4個の原子が、置換基により置換され得る、6炭素の単環式または10炭素の二環式芳香環システムを意味する。アリール基の例は、フェニル、ナフチルなどを含む。「アリールアルキル」という用語または「アラルキル」という用語は、アリールで置換されたアルキルを意味する。「アリールアルコキシ」という用語は、アリールで置換されたアルコキシを意味する。
【0065】
本明細書において使用される「シクロアルキル」という用語は、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、より好ましくは3〜6個の炭素を有する、飽和および部分的に不飽和の環式炭化水素基を含み、ここでシクロアルキル基は更に、任意に置換されてよい。好ましいシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルを含むが、これらに限定されるものではない。
【0066】
「ヘテロアリール」という用語は、芳香族5-8員の単環式、8-12員の二環式、または11-14員の三環式の環システムで、単環式ならば1〜3個のヘテロ原子を、二環式ならば1〜6個のヘテロ原子を、または三環式ならば1〜9個のヘテロ原子を有するものを意味し、ここで該ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択され(例えば、単環、二環または三環であるならば、各々、炭素原子、1〜3、1〜6、または1〜9個のN、OもしくはSのヘテロ原子)、ここで各環の0、1、2、3または4個の原子は、置換基により置換されてよい。ヘテロアリール基の例は、ピリジル、フリルまたはフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニルまたはチエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリルなどである。「ヘテロアリールアルキル」という用語または「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを意味する。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを意味する。
【0067】
「ヘテロシクリル」という用語は、単環式ならば1-3個のヘテロ原子を、二環式ならば1-6個のヘテロ原子を、または三環式ならば1-9個のヘテロ原子を有する、非芳香族5-8員の単環式、8-12員の二環式、または11-14員の三環式の環システムを意味し、該ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択され(例えば単環、二環または三環であるならば、各々、炭素原子、および1〜3、1〜6、または1〜9個のO、NもしくはSのヘテロ原子)、ここで各環の0、1、2、3個の原子は、置換基により置換されてよい。ヘテロシクリル基の例は、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニルなどである。
【0068】
「置換基」という用語は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール基上の任意のその基の原子での「置換された」基を意味する。適当な置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルコキシ、チオアルオッキシ、アリールオキシ、アミノ、アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、アルカンスルホニル、アルキルカルボニル、およびシアノ基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0069】
本発明の1種または複数の態様の詳細は、添付図面および以下の説明に記されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに「特許請求の範囲」から明らかであると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】1個または複数の保存されたBCL-2相同(BH)ドメインを有するBCL-2ファミリーメンバーを表す。
【図2】BID依存性ミトコンドリアアポトーシスのモデルを表す。TNF-RI/Fasは、BIDの切断を誘導し、これはミトコンドリアへ移行し、アポトーシスの引金を引く。
【図3】オレフィン系側鎖を含むキラルα,α-二置換された非天然のアミノ酸の生成のための合成戦略を表す。
【図4】図4aは、ある非天然のアミノ酸の化学構造を表す。図4bは、オレフィンメタセシスによる、iおよびi+4ならびにiおよびi+7位での合成アミノ酸の架橋を表す。
【図5A】非天然のアミノ酸置換およびオレフィンメタセシスにより生成されたSAHB3化合物を表す(各々、SEQ ID NO:84-108)。
【図5B】本明細書に説明された試験において使用されるある架橋されたペプチドを表す(各々、SEQ ID NO:109-114)。
【図6】選択されたBCL-2ファミリーメンバーのBH3ドメインのα-ヘリックス性の程度を示す試験の結果を表す。
【図7】化学架橋は、未修飾のBID BH3ペプチドと比較し、SAHB3BID化合物のαヘリックスを増強することを示す試験結果を表す。
【図8】SAHB3BIDAポリペプチドのgly→glu変異体が、対応するgly含有ポリペプチドとの同様のヘリックスの接触を示す試験の結果を表す。
【図9】23 mer SAHB3BIDB(「SAHB3b」)から16 merへの切断は、α-ヘリックスの喪失を生じることを示す試験の結果を表す。
【図10A】インビトロトリプシンタンパク質分解の反応速度論は、SAHB3BIDA架橋により3.5倍遅延されることを示す試験の結果を表す。
【図10B】ペプチドのエクスビボ血清安定性の試験の結果を表し、これは、架橋したペプチドの半減期は未修飾のペプチドと比べ10倍延長することを明らかにしている。
【図10C】SAHB3BIDAは、BID BH3ペプチドと比べ経時的に比較的高い血清濃度が維持されることを示しているインビボ試験の結果を表す。
【図11A】SAHB3BIDは、蛍光偏光競合結合アッセイ法における、GST-BCL2への高い親和性結合を示す試験の結果を表す。
【図11B】SAHB3BID AおよびBの陰性対照GlyのGluへの点変異体は、比較的貧弱な結合体であることを示す試験の結果を表す。
【図11C】23 merから16 merへのSAHB3BIDBの切断は、Kiの6倍より大きい下落を生じ、これはこの切断された化合物のヘリックス性の割合の有意な減少と一致していることを示す試験の結果を表す。
【図11D】BCL-2蛍光偏光直接結合アッセイ法の結果を表し、これは、SAHB3BIDAの結合親和性の未修飾のBID BH3と比べ6倍よりも大きい増強を明らかにしている。
【図11E】BAX蛍光偏光直接結合アッセイ法の結果を表し、これは、架橋の組込みは、SAHB3BIDAおよびSAHB3BID(G→E)AのマルチドメインプロアポトーシスBCL-2ファミリーメンバーへの測定可能な結合を生じることを明らかにしている。未収食のBID BH3ペプチドは、結合を示さない。
【図11F】SAHB3BIDA結合の場合の15N標識されたBCL-XLの立体構造変化を明らかにするHSQCスペクトルを表し、これはBID BH3結合の場合に認められるものに類似しており、このことは、SAHB3BIDAは、BCL-XLの規定された疎水性ポケットに結合することを確認している。
【図12】精製されたマウス肝臓ミトコンドリア由来のSAHB3BID化合物により放出されたシトクロムcの割合を示す試験の結果を表す。
【図13】SAHB3BIDA-およびSAHB3BIDB誘導したシトクロムc放出が、未修飾のペプチドのそれよりもより迅速かつより強力であることを示す試験の結果を表している。
【図14】SAHB3BIDAのGlyのGluへの変異は、Bak依存型シトクロム放出を選択的に排除することを示す試験の結果を表し、これは図13に示されたSAHB3BIDA誘導したシトクロムc放出の作用の特異性を強調している。
【図15】ジャーカットT細胞系白血病細胞は、FITC-BID BH3およびFITC-BIDヘリックス6への曝露時に、蛍光標識を欠いているのに対し、ジャーカットT細胞系白血病細胞は、FITC-SAHB3BIDへの曝露時には、陽性FITCシグナルを明らかにしていること、ならびにこれらの結果は、これらの細胞のトリプシン処理により有意に変更されないことを示す試験の結果を表す。
【図16】図16aは、架橋されたペプチドFITC-SAHB3BIDAおよびSAHB3BID(G→E)Aに曝露されたジャーカットT細胞は、蛍光標識を明らかにしたのに対し、未修飾のBH3ペプチドFITC-BIDおよびFITC-BID(G→S)に曝露されたジャーカットT細胞は、明らかにしなかったことを示す試験の結果を表す。図16bは、FITC-SAHB3BIDAの細胞移入は、FACS分析により評価された場合、37℃で時間依存型であることを示す試験の結果を表す。
【図17A−B】4℃および37℃でFITC-ペプチド処理したジャーカットT細胞を示す試験の結果を表す。図17aは、FITC-BID BH3は、いずれかの温度で細胞が標識されなかったこと、ならびにFITC-SAHB3BIDAは、37℃では細胞を標識したが、4℃では標識しなかったことを示す。図17bは、FITC-BIDヘリックス6は、これらの細胞を標識するが、更に温度依存式に細胞の透過性を上げることを示している。しかし対照的に、FITC-SAHB3BIDAは、単に37℃でこれらの細胞を標識するが、細胞の透過性を上げることなく標識し、これはエンドサイトーシス経路を介したSAHB3BIDAの能動輸送と一致する。
【図17C】ジャーカットT細胞は、アジ化ナトリウムおよび2-デオキシグルコースを伴いまたは伴わずにプレインキュベーションされ、引き続きFITC-ペプチドで処理された場合に、いずれの条件でもFITC-BID BH3ポリペプチドによる標識を示さないことを示した試験の結果を表す。これらの細胞は、アジ化ナトリウムおよび2-デオキシグルコース条件下で、FITC-SAHB3BIDAについて、低下した標識を示し、ならびに両条件下で、FITC-BIDヘリックス6との標識を示した。これらの結果は、SAHB3BID移入に関するATP依存型細胞取込み(例えば、エンドサイトーシス経路)と一致する。
【図18】FITC-SAHB3BIDA取込みは、グリコサミノグリカンヘパリンによる細胞処理により阻害されなかったことを示す試験の結果を表し、これは、FITC-SAHB3BIDAの結合および取込み機構の間で、HIV TATおよびアンテナペディアペプチドのような他の細胞透過性ペプチド(CPP)と比べ、差異がないことを示している。
【図19】FITC-SAHB3BIDA化合物は、ジャーカットT細胞における小胞分布を伴う細胞質標識を示すのに対し、形質膜の蛍光は明らかではないことを示す試験の結果を表す。他方で、FITC-BID BH3は、細胞の細胞標識を示さず、およびFITC-BIDヘリックス6は、細胞を散在性に標識し、かつ著しい構造破壊を引き起こす。
【図20】FITC-SAHB3BIDAは、ジャーカットT細胞においてミトコンドリア膜マーカーと同時局在することを示す試験の結果を表す。
【図21】図21aおよび図21bは、FITC-SAHB3BIDAは、生存しているBCL-2を過剰発現しているジャーカットT細胞において、デキストラン標識されたエンドソームと同時局在するが、転移している(transferring)標識されたエンドソームとはしないことを示す試験の結果を表し、これは、FITC-SAHB3BIDAは液相ピノサイトーシスにより細胞へ移入されることを示している。図21cは、処理の24時間後に、FITC-SAHB3BIDAは、生存細胞において、MitoTrackerで標識されたミトコンドリアと同時局在することを示す試験の結果を表す。
【図22】SAHB3BIDAは、試験した白血病細胞株において、用量反応様式で、代謝抵抗の引金を引くのに対し、BID BH3およびSAHB3BID(G→E)Aは、本質的にこの用量範囲では作用を有さなかったことを示す試験の結果を表す。
【図23】SAHB3BIDAおよびSAHB3BIDBは10μMで、アポトーシスを、無傷のジャーカット細胞の最大50%誘導し、作用はBCL-2過剰発現により特異的に阻害された(黒色バー)ことを示す試験の結果を表す。未修飾のBID BH3ペプチドおよびglyのgluへの変異体は、未処理の対照との比較を基に、作用を有さなかった。
【図24】SAHB3BIDA、SAHB3BID(G→E)およびSAHB3BID(G→S)Aにより処理されたジャーカットBCL-2過剰発現している細胞の用量反応を示す試験の結果を表す。SAHB3BIDAおよびSAHB3BID(G→S)Aは、この用量範囲で、アポトーシスのBCL-2阻害を克服することができるのに対し、glyのgluへの点変異体は、この作用を有さなかった。
【図25】SAHB3BIDA処理された白血病細胞株REH、MV4;11、およびSEMK2は、特異的アポトーシス誘導を経験したのに対し、glyのgluへの点変異体SAHB3BID(G→E)Aは、これらの細胞に対する作用を有さなかったことを示す試験の結果を表す。
【図26】SAHB3BIDAおよびSAHB3BID(G→S)Aは両方共、NOD-SCIDマウスにおけるSEMK2白血病の成長を抑制し、SAHB3BID(G→S)AはSAHB3BIDAよりもより大きい効能を明らかにしたことを示す試験の結果を表す。
【図27A−B】SAHB3BIDAは、ビヒクルと比べ、NOD-SCIDマウスにおけるSEMK2白血病の進行を鈍らせることを示す試験の結果を表す。用量反応性作用が、図27aにおいて認められる。
【図27C−E】SAHB3BIDAは、ビヒクルと比べ、SCIDベージュマウスにおいて、RS4;11白血病の増殖を阻害し、SAHB3BIDA処理したマウスは、ビヒクル対照と比べ統計学的に有意な生存の延長を伴うことを示す動物試験の結果を表す。
【図27F】は再度、SAHB3BIDAは、白血病進行を示しているSAHB3BID(G→E)A処置およびビヒクル処置したマウスと比べ、SCIDベージュマウスにおいて、RS4;11白血病の退縮を引き起こすことを示す動物試験の結果を表す。
【図28】架橋され易いBCL-2ファミリーメンバータンパク質(各々、SEQ ID NO:1-83)の様々なαヘリックスドメインの例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
詳細な説明
本発明は、一部、BCL-2ファミリータンパク質の架橋したαヘリックスドメインポリペプチドは、それらの未架橋の対応物よりも、改善された薬理学的特性を有する(例えば、増加した疎水性、タンパク質分解性切断に対する抵抗性、結合親和性、インビトロおよびインビボ生物学的活性)という発見を基にしている。更に驚くべきことに、架橋されたポリペプチドは、温度依存型およびエネルギー依存型の輸送機構(例えば、エンドサイトーシス、特異的液相ピノサイトーシス)により、細胞膜を透過することができることが発見された。 これらのポリペプチドは、ふたつの非天然のアミノ酸間にテザーを含み、このテザーは、ポリペプチドのαヘリックス二次構造を著しく増強する。一般にテザーは、1個または2個のヘリックスターンの長さ(すなわち、約3.4個または約7個のアミノ酸)にわたって伸びる。従って、iおよびi+3;iおよびi+4;または、iおよびi+7に位置したアミノ酸は、化学修飾および架橋の理想的な候補である。従って例えば、ペプチドが配列... Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa7、Xaa8、Xaa9....を有する場合、Xaa1とXaa4の間、またはXaa1とXaa5の間、またはXaa1とXaa8の間の架橋は、Xaa2とXaa5の間、またはXaa2とXaa6の間、またはXaa2とXaa9の間などの架橋のように有用である。加えてモデルポリペプチドは、ひとつはXaa1とXaa5の間、もうひとつはXaa9とXaa13の間に位置した、架橋の2個のセットの組込みにより調製された。この二重架橋は、二重結合メタセシス反応の慎重な立体化学制御により実現された。従って本発明は、配列を更に安定化するか、またはより長いポリペプチドの一配列の安定化を促進するための、ポリペプチド配列内の1個よりも多い架橋の組込みを包含している。これらのポリペプチドが、一部容易に合成するには余りにも長い場合は、独立して合成された架橋されたペプチドは、ネイティブケミカルライゲーションと称される技術により結合することができる(Bang, et al.、J. Am. Chem Soc.、126:1377)。
【0072】
新規の架橋ポリペプチドは、例えば、1個または複数のα-ヘリックスドメインを有するタンパク質またはポリペプチドを模倣または試験するために有用である。ファミリーメンバーが少なくとも1個のαヘリックスドメインを有するひとつのタンパク質ファミリーは、BCL-2タンパク質ファミリーである。これらのタンパク質は、細胞アポトーシス経路に関与している。一部のBCL-2ファミリーメンバーは、プロアポトーシス機能を有し、他のものは、抗アポトーシス機能を有し、更に他のものは、細胞状態の変化により機能を変化する。従ってBCL-2ファミリーメンバーの1個または複数のモチーフを模倣し、その結果様々なBCL-2関連した活性を変調する、安定化したポリペプチドを作製することが望ましい。
【0073】
SAHB3BID化合物パネルの化学合成
長さが変動するオレフィン側鎖を含むα,α-二置換された非天然のアミノ酸を、図3のスキームに従い合成した(Williams et al.、1991、J. Am. Chem. Soc.、113:9276;Schafmeister et al.、2000、J. Am. Chem Soc.、122:5891)。化学架橋したBID BH3ペプチドは、2個または4個の天然のアミノ酸の対応する合成アミノ酸との交換によりデザインされた(図4a)。置換は、個別の位置、すなわち「i、およびi+4位」または「i、およびi+7位」で行い、このことは、α-ヘリックスの同一面上に反応性残基を配置することにより架橋化学を促進する(図4b)。アポトーシスタンパク質の間で高度に保存されたアミノ酸は、X線結晶解析およびNMR試験を基にタンパク質-タンパク質相互作用において重要であることがわかったそれらの配列に加え(Muchmore et al.、1996、Nature、381:335;Sattler et al.、1997、Science、275:983)、ある環境(circimstances)において特異的には置き換えられず、保存されたアミノ酸は、活性を増強するように、他のアミノ酸(例えば、合成非天然のアミノ酸)と置き換えられる(この作用は、本明細書に説明されたSAHB3BID変異体において認められる)。SAHB3BID化合物は、固相ペプチド合成、それに続く合成アミノ酸の、それらのオレフィン含有側鎖を介した、オレフィンメタセシスを用いた架橋により生成された。生成されたSAHB3BID化合物の変種を、図5aに例示している。BID機能を変更することがわかっている特異的変異を組込んでいるSAHB3BID(SAHBA)変種(Wang et al.、1996、Genes Dev.、10:2859)も、生物学的実験における陰性対照として利用するために構築された(図5a)。選択された化合物のアミノ末端は更に、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはビオチン結合したリシンにより誘導体化し、各々、細胞透過性試験および生化学アッセイ法用の標識されたSAHB3BID化合物を生成する(図5a)。いくつかの合成において、C末端トリプトファンがその配列へ加えられ、精製および濃度決定を目的とするUV標識として役立ち;N末端グルタミン酸は、細胞透過を強力に促進するためにその化合物の全体のpIを増加する目的で、数個のペプチドを排除した(下記参照)。メタセシス法は、SAHB3BADおよびSAHB3BIMを含む代わりのSAHB3類の生成に、容易に適用された(図5a)。
【0074】
非天然のアミノ酸(5炭素オレフィン系アミノ酸のRおよびSエナンチオマー、ならびに8炭素オレフィン系アミノ酸のSエナンチオマー)は、核磁気共鳴(NMR)スペクトル(Varian Mercury 400)および質量分析(Micromass LCT)により特徴決定された。ペプチド合成は、固相条件リンクアミドAM樹脂(Novabiochem)、およびFmoc主鎖保護基ケミストリーを用い、手動または自動化されたペプチド合成装置(Applied Biosystems、モデル433A)上のいずれかにより行った。天然のFmoc保護されたアミノ酸(Novabiochem)のカップリングのために、アミノ酸の10当量および1:1:2モル比のカップリング試薬HBTU/HOBt(Novabiochem)/DIEAを使用した。非天然のアミノ酸(4当量)を、1:1:2モル比のHATU(Applied Biosystems)/HOBt/DIEAでカップリングした。オレフィンメタセシスは、脱気したジクロロメタンに溶解した10mM Grubbs触媒(Blackewell et al.、1994、前掲)(Strem Chemicals)を用い固相において行い、および室温で2時間反応した。選択された化合物のアミノ末端は更に、b-アラニンおよびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)[Sigma/DMF/DIEA]により誘導体化され、蛍光的に標識された化合物を生成した。C末端トリプトファンを、精製および濃度決定を目的とした、UV標識として利用するために組込まれ;SAHBA化合物は同じく、C末端トリプトファンおよびN末端グルタミン酸を伴わずに合成し、後者の修飾は、これらの分子の全体のpIを増加するために行った。メタセシスされた化合物の単離は、トリフルオロ酢酸依存性の脱保護および切断により実現され、エーテル沈殿し粗生成物を得、および逆相C18カラム(Varian)上で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(Varian ProStar)を行い純粋な化合物を得た。純粋な生成物の化学組成は、LC/MS質量分析(Agilent HPLCシステムとインターフェース接続したMicromass LCT)およびアミノ酸分析(Applied Biosystems、モデル420A)により確認した。
【0075】
図5bは、オレフィン系アミノ酸(5炭素オレフィン系アミノ酸のRおよびSエナンチオマーならびに8炭素オレフィン系アミノ酸のSエナンチオマー)の立体化学を含む、図5aのペプチドのサブセットを概略的に表す。
【0076】
SAHB3BID化合物は増強されたα-ヘリックス性を示す
本発明者らは、プロアポトーシスBH3ドメインのヘリックス性の割合を試験し、およびこれらの未修飾のペプチドは、溶液中で主にランダムコイルであり、α-ヘリックスの含量は全て25%未満である(図6)ことを発見した。簡単に述べると、化合物は、水性50mMリン酸カリウム溶液(pH7)に溶解し、25-50mMに濃縮した。CDスペクトルは、下記の標準測定パラメータを用い、Jasco J-710分光偏光計上で20℃で得た:波長、190-260nm;ステップ分解能、0.5nm;速度、20nm/秒;アキュムレーション(accumulations)、10;反応、1秒;バンド幅、1nm;経路長、0.1cm。各ペプチドのα-ヘリックスの含量は、平均残基分子楕円率[φ]222obsをモデルヘリックスであるデカペプチドについて報告された[φ]222obsで除算することにより算出した(Yang et al.、1986、Methods Enzymol.、130:208))。
【0077】
各場合において、化学架橋は、BIDのBH3ドメインのα-ヘリックスの割合を増加し、SAHB3BIDAおよびSAHB3BIDBは、5倍を超える増強を実現した(図7)。SAHB3BID(G→E)Aは、SAHB3BIDA陰性対照のGlyのGluへの点変異体であるが、SAHB3BIDAに対する類似のヘリックス含量を示した(図8)。従って全ての炭化水素架橋は、水溶液中で本質的にランダムコイルであるアポトーシスペプチドを、構造上主としてα-ヘリックスであるものへ転換することができる。興味深いことに、BID BH3ペプチドの安定化における4番目のヘリックスターンの重要性は、SAHB3BIDB 23 merが16 merであるSAHB3BID(tr)Bへ切断される場合に観察されたヘリックス性の減少により強調される(図9)。
【0078】
全ての炭化水素架橋はSAHB3BAD化合物のプロテアーゼ抵抗性を増加する
ペプチド骨格のアミド結合は、プロテアーゼによる加水分解を受け易く、これによりペプチド化合物をインビボにおける迅速な分解に対し脆弱とする。しかしペプチドヘリックス形成はアミド骨格を埋め、その結果これをタンパク質分解性切断から保護する。SAHB3BIDAに、インビトロトリプシンタンパク質分解を施し、未修飾のBID BH3ペプチドと比較して分解速度の何らかの変化について評価した。SAHB3BIDAおよび未修飾のペプチドを、トリプシンアガロースと共にインキュベーションし、かつこの反応を、遠心分離およびそれに続くHPLC注入により、様々な時点で反応停止し、280nmでの紫外線吸収により残存する基質を定量した。簡単に述べると、BID BH3およびSAHB3BIDA化合物(5mcg)を、トリプシンアガロース(Pierce)(S/E〜125)と共に、0分間、10分間、20分間、90分間、および180分間インキュベーションした。反応を、卓上遠心分離での高速遠心により停止し;分離された上清中の残存する基質を、HPLCを用いた220nmでのピーク検出により定量した。このタンパク質分解性反応は、一次反応速度論を示し、速度定数kは、ln[S]対時間のプロット(k=-1x勾配)から決定した(図10a)。実験は3通りで行い、SAHB3BIDAのトリプシン抵抗性の未修飾のペプチドと比べ3.5倍の増強を明らかにした。従って、α-ヘリックスのコア部分でそれらを埋めることによる、トリプシン感受性アミド結合の増強された保護は、より安定したペプチド性化合物をもたらし、その結果このような化合物を血清中で特に安定とすることができる。
【0079】
エクスビボにおける血清安定性試験について、FITC結合されたペプチドBID BH3およびSAHB3BIDA(2.5mcg)を、新鮮なマウス血清(20mL)と共に、0時間、1時間、2時間、4時間、8時間、および24時間37℃でインキュベーションした。血清標本を液体窒素中で新たに凍結し、凍結乾燥し、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する50:50アセトニトリル/水中で抽出し、その後励起/放出を495/530nmに設定した蛍光検出を用いHPLCを用いて定量することにより、無傷のFITC化合物のレベルを決定した。この分析の結果は、図10bに示した。
【0080】
SAHB3BIDAのインビボ安定性を調べるために、FITC結合したBID BH3ペプチドおよびSAHB3BIDAの10mg/kgを、NOD-SCIDマウスへ注射し、血液標本を、注射後0時間、1時間、4時間および22時間で採血した。その後新鮮な血清25μL中の無傷のFITC化合物のレベルを測定した。この分析の結果は図10cに表し、これはSAHB3BIDAは、22時間にわたり容易に検出可能であり、投入量の13%は、22時間後に依然測定可能であることを示している。対照的に、BID BH3は、わずかに12%が、注射後1時間で検出可能であった。
【0081】
SAHB3BID化合物は高親和性抗アポトーシス結合を維持する
マルチドメインアポトーシスタンパク質の結合ポケットとBID BH3ヘリックスの疎水性残基の間の重大な相互作用による干渉を避けるために、全ての炭化水素架橋は、BID BH3両親媒性ヘリックスの帯電面上に選択的に配置した。蛍光偏光競合的結合実験を行い、GST-BCL-2結合に関するFITC標識した未修飾のBID BH3ペプチドと競合するSAHB3BIDの効能を評価した。全てのSAHB3BID化合物は、GST-BCL2への高親和性結合を明らかにし、最大のヘリックス割合を伴うふたつの化合物であるSAHB3BIDAおよびBは、最高の親和性結合を同様に示す(図11a)。注目すべきは、SAHB3BIDAおよびBのGlyのGluへの変異は、先の試験から予想されるように、高親和性結合を排除する(図11b)。本発明者らは更に、SAHB3BIDAのGlyのSerへの変異は、このアッセイ法においてBCL-2結合を除去したことを決定した(データは示さず)。23 mer SAHB3BIDBの16 merへの切断は、BCL-2結合親和性の喪失を生じ、これは先に説明されたα-ヘリックスの減少と一致する(図11c)。
【0082】
FITC標識されたBID BH3ペプチドは、BCL-2へKD 220nMで結合し、一旦結合すると、標識されないBID BH3によるこの相互作用の交換は、IC50 838nMで生じる。このことは、BCL-2へのBH3結合は、その相互作用にとって好ましい全体の立体構造の変化の引金を引き、過剰量の標識されないペプチドが、予め結合されたFITC標識されたBID BH3と交換することの必要性を生じるようなモデルを裏付けている。本発明者らは、BAD BH3ドメインは、BCL-2結合について増強されたKD 41nMを有すること、ならびにこれは予め結合したFITC-BID BH3を、IC50 173nMで交換できることを更に示した。同様の実験において、SAHB3BIDAは、FITC-BID BH3をBCL-2から、IC50 62nMで交換することがわかり、これは未修飾のBID BH3ペプチドと比べ、交換効能の13倍を超える増加を反映している。これらのデータは、SAHB3BIDAは、未修飾のBH3ペプチドと比べ、BCL-2へ増強された親和性で結合することを確認し、ならびに化学架橋によるα-ヘリックス構造の前組織化は、標的結合に関する速度論的利点を提供することを示唆している。
【0083】
蛍光偏光による直接結合アッセイ法は、BID BH3ペプチドへの架橋の組込みは、未修飾のBID BH3ペプチドと比べ、SAHB3BIDAの、抗アポトーシスマルチドメインタンパク質BCL-2、およびプロアポトーシスマルチドメインタンパク質BAXの両方への、増強された結合親和性を生じたことを明らかにした(図11dおよび11e)。直接BCL-2蛍光偏光結合アッセイ法は、SAHB3BIDAのBCL-2結合親和性(KD、38.8nM)の、未修飾のBID BH3ペプチド(KD、269nM)と比べて、6倍の増強を明らかにした(図11d)。GlyのGluへの変異であるSAHBA(G→E)(KD、483nM)は、高親和性結合を排除し、有用な対照として使用した(図11d)。簡単に述べると、C末端欠失されたGST-BCL-2をコードしているプラスミドを含む大腸菌BL21(DE3)を、アンピシリン含有Luriaブロスにおいて培養し、0.1mM IPTGで誘導した。細菌ペレットを、溶解緩衝液(PBS中に1mg/mlリゾチーム、1%Triton X-100、0.1mg/ml PMSF、2μg/mlアプロチニン、2μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチンA)中に再懸濁し、音波処理した。20,000xgで20分間遠心後、上清を、グルタチオン-アガロースビーズ(Sigma)のカラムに負荷した。これらのビーズを、PBSで洗浄し、50mMグルタチオン、50mM Tris-HCl(pH8.0)で処理し、このタンパク質を溶離し、その後結合アッセイ緩衝液(140mM NaCl、50mM Tris-HCl[pH7.4])に対して透析した。蛍光化した(fluorescinated)化合物(25nM)を、GST-BCL2(25nM-1000nM)と共に、結合緩衝液中で室温でインキュベーションした。結合活性を、Perkin-Elmer LS50Bルミネセンス分光光度計上で、蛍光偏光により測定した。KD値は、Prismソフトウェア(Graphpad)を使用する、非線形回帰分析により決定した。完全長BAXタンパク質は、先に説明されたように調製し(Suzuki et al、Cell、103:645)、蛍光偏光アッセイ法を先に説明したように行った。
【0084】
SAHB3BIDAはBCL-XLに結合する
SAHB3BIDAが、抗アポトーシスマルチドメインタンパク質の指定された結合溝と特異的に相互作用するかどうかを決定するために、SAHB3BIDAの添加前および添加後の15N標識されたBCL-XLの二次元15N/1H異種核一量子相関(HSQC)スペクトルを記録し、対応するBID BH3/15N-BCL-XLスペクトルと比較した。簡単に述べると、C末端欠失されたBCL-XLをコードしているプラスミドを含む大腸菌BL21(DE3)は、15NH4Clを含有するM9-最小培地(Cambridge Isotope Laboratories)において培養し、均質な15N標識されたタンパク質を生成した。組換えタンパク質を、細菌から分離した。標識されないSAHB3BIDAおよびBID BH3ペプチドを生成し、先に説明したように精製した。以下の1:1複合体を、D2OまたはH2O/D2O(95:5)を溶媒とする50mMリン酸カリウム(pH7)、50mM塩化ナトリウム、5%DMSO中に0.1mMで調製した。15N-BCL-XL/未標識BID BH3、15N-BCL-XL/未標識SAHB3BIDA。二次元15N/1H異種核一量子相関スペクトルを、これらふたつの複合体について記録し、リガンド結合の場合の共鳴の変化を分析した。
【0085】
HSQCスペクトルの全般的類似性は、SAHB3BIDAの添加後にBCL-XLに生じた構造の変化は、BID BH3ペプチドにより認められたものとほぼ同一であることを示している(図11f)。
【0086】
SAHB3BID化合物はミトコンドリアシトクロムCの迅速かつ特異的放出を引き起こす
インビトロにおけるSAHB3BID化合物の生物学的活性を評価するために、シトクロムc放出アッセイ法を、精製されたマウス肝臓ミトコンドリアを用いて行った。ミトコンドリア(0.5mg/mL)を、SAHB3BID化合物1μMおよび100nMと共に40分間インキュベーションし、その後上清およびミトコンドリア画分を分離し、シトクロムc ELISA法を施した。バックグラウンドシトクロムc放出(10〜15%)を、各試料の総放出から減算し、実際のシトクロムc放出の割合(%)を決定した(図12)。同じ実験を、BID-BH3活性化に反応してミトコンドリアシトクロムcを放出しない、Bak-/-マウスから単離されたマウス肝臓ミトコンドリアについても同時に行い;その結果BAK-/-ミトコンドリアからのデータを、SAHB3BID処理に反応したBAK依存性シトクロムc放出の陰性対照として利用した。各々の場合において、二重架橋したSAHB3BIDE(これは、生物学的活性に重要なアミノ酸を欠くことがあり、その場合二重の架橋により適度に拘束される)を除き、未修飾のペプチドと比べ、SAHB3BID化合物1μMに反応したシトクロムc放出はほぼ倍加した(図12a)。BAK非依存型のシトクロムc放出が、SAHB3BIDA、SAHB3BIDB、および特にSAHB3BIDDによりこの用量で観察される。このシトクロムc放出は、α-ヘリックスの非特異的膜攪乱(membrane perturbing)作用を示すことがあるのに対し、SAHB3BID誘導したBAK非依存型のシトクロムc放出の成分の役割は、更に調べる価値がある。興味深いことに、BAK非依存型シトクロムc放出を最も顕著なレベル誘導するSAHB3BID化合物であるSAHB3BIDDは同じく、最も疎水性のSAHB3BID化合物であり;SAHB3BIDDは、逆相C18カラムから、95%アセトニトリル/5%水で溶離するのに対し、他のSAHB3BID化合物は50-75%アセトニトリルで溶離する。欠失したBH3ドメインを伴うBID変異体は、BAK非依存型シトクロムc動員を促進することができ(L. Scorrano et al、Dev Cell、2:55)、高度に疎水性のBIDヘリックス6が、この活性に関与している(L. Scorrano、S. J. Korsmeyer、未発表の結果)。SAHB3BIDDは、BIDヘリックス3および6の特徴を模倣することにより、BAK依存型および非依存型の両シトクロムc放出を示すことはもっともらしく見える。1/10の用量のSAHB3BIDAおよびBは、選択的BAK依存型シトクロムc放出活性を維持している(図12b)。特にSAHB3BIDBの効能は、最大活性化されたミリストイル化されたBIDタンパク質と比べ好ましく、これは用量30nMで、これらの条件下で、約65%のシトクロムcを放出する。
【0087】
ヘリックスの前組織化は、未修飾のペプチドと比べより迅速なシトクロムc放出の引金を引くことができるかどうかを決定するために、最も活性のあるSAHB3BID化合物AおよびBに、更なる速度論試験を施した。前記実験と同様に、野生型およびBak-/-マウス由来のマウス肝臓ミトコンドリアを、様々な濃度で、これらの化合物に曝露し、10分および40分間隔でシトクロムc放出についてアッセイした。未修飾のペプチドは、試験した最高用量(1μM)で、10分で10%未満の放出を引き起こしたのに対し、SAHB3BIDBは、この時点で400nMをわずかに下回る放出のEC50を有し、ほぼ最大のシトクロム放出は1μMであった(図13a)。同様にSAHB3BIDAは、10分間隔で著しいシトクロムc放出の引金を引く。40分でのシトクロムc放出のEC50は、未修飾のペプチドについて2.9μMであり、SAHB3BIDAおよびBについて、各々、310nMおよび110nMであった(図13b)。従ってSAHB3BIDAおよびBは、40分の時点でのシトクロムc放出活性の10〜25倍の増強を示す。BAK依存型シトクロムc放出は経時的に増加するのに対し、BAK非依存型放出は、10分および40分の時点の間では変化せず、このことはこの独特な放出は早期に生じ、および10分以内に最大に到達することを示唆している。注目すべきことに、陰性対照であるSAHB3BIDAのGlyのGluへの点変異体SAHB3BID(G→E)Aは、Bak非依存型シトクロムc放出のみを生じ、これはSAHB3BIDAは、Bak依存型ミトコンドリアアポトーシス経路を介してのみ機能することを確認している(図14)。まとめると、これらのシトクロムc放出データは、SAHB3BIDAおよびBは、BAK依存型シトクロムc放出を特異的に誘導することが可能であり、未修飾のペプチドと比べ顕著に増強された効能および速度論を伴うことを示している。
【0088】
SAHB3BID化合物は無傷の細胞に浸透する
フルオレセイン誘導体化されたSAHB3BID化合物、BID BH3ペプチド、およびBIDヘリックス6ペプチドを、ジャーカットT細胞系白血病細胞と共に4〜24時間インキュベーションし、引き続きFACS選別し、白血病細胞の標識の割合を決定した。細胞表面に結合した化合物による混乱を招く結果を避けるために、ジャーカット細胞は完全に洗浄し、最近の報告に従いトリプシンによる過剰切断を施した。試験した各化合物について、トリプシン消化後、FITCシグナルプロファイルに著しい変化は無く、このことはこれらのペプチドの場合、FITC標識された化合物のほとんどまたは全てが表面に結合されていないことを示唆している(図15)。BID BH3処理した細胞はFITC陰性であるのに対し、FITC-SAHB3BIDA処理およびFITC-SAHB3BID(G→E)A処理した両細胞は、FITCシグナルの右側シフトにより示されるように、FITC陽性であった(図16a)。これらの細胞透過性試験におけるFITC-SAHB3BIDAおよびFITC-SAHB3BID(G→E)Aの同様のプロファイルは、生物学的実験における陰性対照としての点変異体化合物を使用する場合に特に重要である。BIDヘリックス6は細胞透過性および膜攪乱性ペプチドであるが、これをこの実験のFITC標識に関する陽性対照として使用した。
【0089】
驚くべきことに、FITC-SAHB3BIDAは、エンドサイトーシス、温度依存型およびエネルギー依存型輸送経路を介し細胞へ侵入するように見えることが発見された。FITC-SAHB3BIDAの細胞移入は、時間依存様式で生じる(図16b)。細胞エンドサイトーシスが4℃での実験遂行(図17a、図17b)またはエネルギー毒アジ化ナトリウムおよび2-デオキシグルコース処理(図17c)により阻害される場合、細胞標識は、各々、阻害されるか、または著しく減弱された。注目すべきは、FITC-SAHB3BIDAで標識されたジャーカット細胞は37℃で、ヨウ化プロピジウム(PI)陰性であることであり、これはこの架橋されたペプチドは単なる透過性向上物質としては機能しないが(図17b);対照的に、FITC-BIDヘリックス6は、容易に両方の温度で浸透し、PI陽性の程度により証明されるように、細胞を効果的に透過性向上する(図17b)ことを確認している。これらのデータは、SAHB3BID化合物に関する侵入のエンドサイトーシス式の機序を裏付けており、転写のHIVトランス活性化因子(TAT)のような、他の細胞透過性ペプチド(CPP)に関する侵入の機序として細胞表面接着、それに続くエンドサイトーシスに言及している最近の報告と一致している。TATおよびアンテナペディアのような高塩基性のCPPは、細胞表面で負帯電したグリコサミノグリカンへの接着により濃縮されると考えられるのに対し、SAHB3BIDA移入は、ヘパリンにより用量反応様式で阻害されない(図18)。SAHB3BID両親媒性α-ヘリックスの生物物理特性は、静電気および/または脂質膜の相互作用を介した個別の細胞接触を促進することができる。
【0090】
SAHB3BIDAの細胞内局在を決定するために、共焦点顕微鏡実験を用いた。ジャーカットT細胞系白血病細胞を、先に説明されたFITC標識された化合物と共に、または血清代替品と共に、4時間インキュベーションし、引き続き37℃で更に16時間インキュベーションし、PBSで2回洗浄した後、スーパープロストプラス(superfrost plus)ガラススライド(Fisher)上で600RPMで5分間サイトスピンした。その後細胞を、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、PBSで洗浄し、核を対比染色するためにTO-PRO-3ヨウ素(100nM)(Molecular Probes)と共にインキュベーションし、Vectashield mounting 培地(Vector)で処理し、その後共焦点顕微鏡(BioRad 1024)により撮像した。二重標識実験について、固定した細胞を更に、TOM20に対する一次抗体と共に、TOPRO-3対比染色前に、ローダミン結合した二次抗体と共にインキュベーションした。ライブ共焦点顕微鏡については、ジャーカット細胞の二重標識は、FITC-SAHBA(10μM)およびMitoTracker(100nM、Molecular Probes)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)-デキストラン4.4kDもしくは70kD(25mcg/mL、Molecular Probes)、またはAlexa Fluor 594-トランスフェリン(25mcg/mL、Molecular Probes)と共に、4時間(デキストランおよびトランスフェリン)または24時間(MitoTracker)行った。光退色の制限のために、BCL-2を過剰発現しているジャーカット細胞を、ライブ共焦点顕微鏡に使用し、FITC造影を最適化した。ミトコンドリアのFITC-SAHBA標識は、BCL-2を過剰発現しているジャーカットよりもより明るく(SAHB活性に関する機序と一致)、その結果これらの細胞を用い、画像捕獲が促進された。処理されたジャーカットは、2回洗浄し、その後PBS中に再懸濁し、および湿った搭載調製物を、BioRad 1024(Beth Israel/Deaconess Center for Advanced Microscopy)またはZeiss LSM510レーザー走査型共焦点顕微鏡(Children's Hospital Boston Imaging Core)により分析した。
【0091】
固定された切片において、SAHB3BIDA化合物は、白血球細胞の細胞質周辺に局在化し、形質膜または表面に蛍光の証拠はなく;蛍光の小胞パターンは、オルガネラに特異的な局在を示している(図19aおよび19b)。FACSデータと一致し、FITC-BID BH3で処理したジャーカット細胞は、蛍光標識を示さなかった(図19c)。FITC-SAHB3BIDA処理した細胞は、選択的細胞内蛍光を示しかつそれらの細胞構造を維持するのに対し(図19a)、FITC-BIDヘリックス6処理した細胞は、散在性に標識され、破壊された細胞形態を明らかにしている(図19d)。FITC-SAHB3BIDAおよびミトコンドリア膜タンパク質Tom20に対する抗体を使用する同時局在化試験は、SAHB3BIDA蛍光の、SAHB3BIDの分子標的の予想された部位であるミトコンドリアとの広範な重複を明らかにした(図20)。
【0092】
SAHB処理の4時間後に行った生存細胞の撮像は、FITC-SAHBAのデキストラン(4.4kDまたは70kD)標識したエンドソームとの最初の同時局在(図21a)、しかしトランスフェリン標識したエンドソームとの非局在(図21b)を明らかにし、これは液相ピノサイトーシスによる細胞取込みと一致し(未発表参照番号27)、エンドサイトーシス経路が、TATおよびAntpペプチドについて決定された(未発表参照番号28)。24時間の時点で、細胞内FITC-SAHBAは、生存細胞におけるMitoTracker標識されたミトコンドリアとの増大された同時局在を示し(図21c)、これはミトコンドリア外膜タンパク質であるTom20に対する抗体を用い、固定された細胞において観察されたミトコンドリアの同時局在と一致する(図20)。まとめると、FACSデータおよび共焦点画像は、全ての炭化水素架橋は、SAHB3BIDA化合物を、無傷の細胞により移入される(例えば、エンドサイトーシス機序を介して)ようになることを明らかにしている。
【0093】
SAHB3BID化合物はB細胞、T細胞および混合型白血病(MLL)細胞においてアポトーシスの引金を引く
SAHB3BID化合物が培養物中で増殖する白血病細胞の増殖を停止することができるかどうかを評価するために、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド、MTTアッセイ法を、連続希釈したSAHB3BIDAを用い、培養物中のT細胞(ジャーカット)、B細胞(REH)および混合型白血病(MLL)細胞(MV4;11、SEMK2、RS4;11)について行った。SAHB3BIDAは、白血病細胞を、IC50が2.2μM(ジャーカット)、10.2μM(REH)、4.7μM(MV4;11)、1.6μM(SEMK2)、および2.7μM(RS4;11)で阻害した(図22a)。BID BH3ペプチドもSAHB3A(G→E)点変異体も、この用量範囲では作用を有さなかった(図22b、22c)。
【0094】
この代謝停止はアポトーシス誘導を表しているかどうかを評価するために、ジャーカット白血病細胞を、血清非含有培地において、10μMのSAHB3BIDAおよびSAHB3BIDB、SAHB3BID(G→E)AおよびSAHB3BID(G→EB、ならびに未修飾のBID BH3ペプチドで4時間処理し、その後血清含有培地(すなわち最終ペプチド濃度5μM)において16時間インキュベーションし、次にアネキシンV処理した細胞のフローサイトメトリー検出によりアポトーシスをアッセイした。SAHB3BIDAおよびBは、処理後20時間で40〜60%のアネキシンV陽性を示したのに対し、未修飾のペプチドおよびSAHB3BID点変異体は作用がなかった(図23aおよび23b)。担体試薬を伴う未修飾のBH3ペプチドまたは非特異的ミトコンドリア攪乱作用を伴う操作したヘリックスのいずれかを使用する同様の試験は、アポトーシスを活性化するためには200〜300μMの用量が必要であった。BCL-2を過剰発現するように操作されたジャーカット細胞を使用する追加の対照実験を引き続き行い、SAHB3BID誘導したアポトーシスは、過剰なBCL-2により減少されるかどうかを評価し、このことはこれらの化合物が、細胞内で、ミトコンドリアアポトーシス経路を通じ特異的に機能することを示唆すると考えられる。実際、10μMのSAHB3BIDAおよびBの「野生型」ジャーカット細胞に対するプロアポトーシス作用は、BCL-2を過剰発現している細胞においては除去された。しかしこの保護的作用は、SAHB3BIDAの用量漸増により克服することができるが、SAHB3BID(G→E)Aによっては克服されず(図24);加えて、BCL-2結合親和性を示さない(前記参照)SAHB3BIDAのglyからserへの点変異体(SAHB3BID(G→S)A)は、プロアポトーシスとして「野生型」およびBCL-2過剰発現しているジャーカット細胞において同等に有効である(図24)。SAHB3BIDAおよびSAHB3BID(G→E)Aを使用するアポトーシス誘導アッセイ法を更に、REH、MV4;11、およびSEMK2細胞株において行い、同様の結果を得た(図25)。まとめると、これらのデータは、SAHB3BID化合物は、増殖している白血病細胞に浸透しおよび殺傷することができることを示している。観察されたプロアポトーシス作用は、SAHB3BIDAのglyのgluへの変異およびBCL-2の細胞過剰発現により選択的に除去され、この知見は、SAHB3BID化合物は、指定されたミトコンドリアアポトーシス経路を介して機能することを強調している。
【0095】
SAHB3BIDAおよびSAHB3BID(G→S)Aはインビボにおける白血病抑制を示す
NOD-SCDIマウスに、300cGyの全身照射を施し、その後安定したルシフェラーゼ発現を示している4x106個SEMK2-M1白血病細胞を静脈内注射した。このマウスに、D-ルシフェリンの腹腔内注射後の全身のルミネセンスを定量する、In Vivo Imaging System(IVIS、Xenogen)を用い、白血病細胞生着について毎週モニタリングした。0日目に、白血病マウスを撮像し、その後1日目、2日目、3日目、5日目、6日目に、10mg/kgのSAHB3BIDA、SAHB3BID(G→S)Aの静脈内注射または無注射により処置した。全身のルミネセンスを、4および7日目に測定した。図26aを参照した、群間の腫瘍負荷の分析は、SAHB3BIDAおよびSAHB3BID(G→S)A化合物は、未処置の対照マウスと比べ、白血病を抑制することを明らかにしている。図26bを参照した、全身のルミネセンス画像は、7日目までのより低レベルのより局在化された疾患を示しているSAHB3BIDA処置したマウスと比べ、未処置群におけるより進行した白血病を明らかにしている(高レベルの白血病を示す赤の密集は、骨格系全体に認められる)。興味深いことに、BCL-2により隔絶されないG→S変異体は、白血球増殖の抑制において、親化合物SAHB3BIDAよりも、より強力であるように見える。
【0096】
更なる動物実験において、白血病マウス(前述のように作出)を0日目に造影し、その後1日目、2日目、3日目、6日目、および7日目に、10mg/kgのSAHB3BIDA、5mg/mlのSAHB3BIDA、またはビヒクル対照(D5W中5%DMSO)により、静脈内処置した。全身のルミネセンスを、4日目および8日目に測定した。図27aを参照した、群間の腫瘍負荷の分析は、未処置の対照マウスと比べ、SAHB3BIDAは用量依存式に白血病を抑制することを明らかにしている。図27bを参照した、全身のルミネセンス画像は、8日目までの白血行進行が顕著に鈍化しているSAHB3BIDA処置したマウスと比べ、未処置群におけるより進行した白血病を明らかにしている(赤の密集は高レベルの白血病を示す)。
【0097】
SCIDベージュマウスおよびRS4;11白血病細胞を代わりに使用した追加の動物実験において、SAHB3BIDA処置は、インビボにおける白血病細胞増殖を一貫して抑制した。インビボ白血病画像撮影のために、マウスを、イソフラン吸入(Abbott Laboratories)により麻酔をかけ、D-ルシフェリン(60mg/kg)(Promega)の腹腔内注射により同時に処置した。光子放出を、In Vivo Imaging System(Xenogen)を用いて撮像し(2分間の露光)、全身の生物発光を、光子フラックス(フォトン/秒)(Living Image Software、Xenogen)の積分により定量した。実験1日目に開始し、マウスには、SAHB3BIDA(10mg/ml)またはビヒクル(D5W中の5%DMSO)の毎日の尾静脈注射を7日間投与した。マウスは、1日目、3日目および5日目に撮像し、実験期間中は毎日生存をモニタリングした。SAHB3BIDAおよびビヒクル処置したマウスの生存分布は、Kaplan-Meier法を用いて決定し、およびログランク検定を用いて比較した。Fisherの正確確率検定を使用し、3〜5日目に治療に失敗したマウスの割合を比較し、ここで治療の失敗は進行または死亡として、成功は安定した疾患または退縮として定義した。満了したマウスには、屍検を施した(Rodent Histopathology Core、DF/HCC)。
【0098】
対照マウスは、1〜5日目の増加した生物発光フラックスにより定量した場合、白血病細胞増殖の進行の加速を明らかにした(図27c)。SAHB3A処置は、3日目以降の白血病拡大を抑制し、腫瘍退縮が5日目までに認められた。代表的マウス画像は、マウスの脾臓および肝臓の進行性白血病細胞浸潤を示しているが、SAHB3A処置マウスにおいては、処置の5日目までに、これらの解剖学的部位で疾患が退縮した(図27d)。このコホートにおける死へ至る時間の中央値は、対照動物について5日であるのに対し、SAHBA処置マウスで、7日間の処置期間に死亡例はなく、代わりに生存の中央値は11日であった(図27e)。SAHBA処置したマウスの組織学的試験は、この化合物の正常組織に対する明らかな毒性を示さなかった。SAHB3BIDA処置およびSAHB3BID(G→E)A処置したマウスを比較する追加の試験において、点変異体SAHBを受け取った動物は、腫瘍退縮を示さず(図27f)、SAHB3BIDAの抗白血病活性のインビボ特異性を強調している。
【0099】
ポリペプチド
場合によっては、本明細書に説明された炭化水素テザー(すなわち、架橋)は更に操作することができる。一例として、炭化水素アルケニルテザーの二重結合(例えば、ルテニウム触媒した閉環メタセシス(RCM)を用いて合成された)は、酸化され(例えば、エポキシ化またはジヒドロキシル化を介して)、以下の化合物のひとつを提供する。

エポキシド部分またはひとつの遊離ヒドロキシル部分のいずれかは、更に官能基化することができる。例えばエポキシドは、求核試薬により処理され、これは例えばタグ(例えば、放射性同位元素または蛍光タグ)の結合に使用することができる追加の官能性を提供する。このタグは、化合物の体内の所望の位置への指示(例えばヨウ素タグを使用する場合、化合物を甲状腺へ向かわせる)、または体内の化合物の位置の追跡を補助するために使用することができる。あるいは、追加の治療的物質を、官能基化されたテザーへ化学的に付着することができる(例えば、ラパマイシン、ビンブラスチン、タキソールなどの抗癌剤)。このような誘導体化は、代わりに、ポリペプチドのアミノもしくはカルボキシ末端の合成操作によるか、またはアミノ酸側鎖を介して実現することができる。
【0100】
炭化水素テザーが説明される一方で、他のテザーも想起される。例えば、このテザーは、エーテル、チオエーテル、エステル、アミンまたはアミド部分の1種または複数を含むことができる。場合によっては、天然のアミノ酸側鎖を、このテザーへ組込むことができる。例えば、テザーは、セリンのヒドロキシル、システインのチオール、リシンの第1級アミン、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸の酸、またはアスパラギンもしくはグルタミンのアミドなどの官能基とカップリングすることができる。従って、2個の非天然のアミノ酸のカップリングにより作製されたテザーを使用するよりもむしろ、天然のアミノ酸を用いテザーを作製することが可能である。天然のアミノ酸と共に1個の非天然のアミノ酸を使用することも可能である。
【0101】
更にテザーの長さは変動することが想起される。例えばα-ヘリックス二次構造上に比較的高度の拘束を提供することが望ましい場合には、より短い長さのテザーを使用することができるのに対し、α-ヘリックス二次構造上により少ない拘束を提供することが望ましい場合には、従って比較的長いテザーが望ましい。
【0102】
加えて、アミノ酸iからi+3、iからi+4;および、iからi+7に広がるテザーの例が、主としてα ヘリックスの単一面上にあるテザーを提供するために説明されているが、これらのテザーは、多くのアミノ酸の任意の組合せに広がるように合成することができる。
【0103】
場合によっては、αヘリックス二次構造の安定性を改善するために、α二置換されたアミノ酸がこのポリペプチドにおいて使用される。しかしモノ-α置換基(例えば、テザーアミノ酸)の使用も想起される場合は、α二置換されたアミノ酸は不要である。
【0104】
当業者に理解されるように、本明細書に説明された化合物の合成法は、当業者には明らかであると思われる。加えて所望の化合物を得るために、様々な合成工程を、別の手順または順番で行うことができる。本明細書に説明された化合物の合成において有用な合成化学の転換および保護基の方法論(保護および脱保護)は、当該技術分野において公知であり、ならびに例えばR. Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers (1989);T. W. Greene and P. G. M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、2d. Ed.、John Wiley and Sons(1991);L. Fieser and M. Fieser、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);および、L. Paquette編集、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)およびそれらの続版に説明されたものを含む。
【0105】
本発明のペプチドは、化学合成法により生成することができ、これは当業者に周知である。例えば、Fields et al.、Chapter 3、「Synthetic Peptides: A User's Guide」、Grant, W. H.編集 Freeman & Co.、New York、NY、1992、p.77を参照のこと。ここでペプチドは、例えばApplied Biosystems Peptide Synthesizer Model 430Aまたは431上で、側鎖が保護されたアミノ酸を使用する、t-BocまたはF-mocケミストリーのいずれかにより保護されたα-NH2による固相合成の自動Merrifield技術を用いて合成することができる。
【0106】
本明細書に説明されたペプチドを作製するひとつの方法は、固相ペプチド合成(SPPS)を使用する。C末端アミノ酸は、リンカー分子との、酸に不安定な結合を介して、架橋したポリスチレン樹脂に付着される。この樹脂は、合成に使用される溶媒中に不溶性であり、このことは、過剰な試薬および副産物の洗浄除去を、比較的単純かつ迅速なものとしている。N末端は、Fmoc基により保護され、これは酸の中で安定しているが、塩基により除去することができる。任意の側鎖の官能基は、塩基に安定し、酸に不安定な基により保護される。
【0107】
比較的長いペプチドは、未変性ケミカル連結を使用し、個々の合成ペプチドの結合により作製される。あるいは、比較的長い合成ペプチドは、周知の組換えDNA技術を用い合成することができる。このような技術は、詳述されたプロトコールを伴う周知の標準マニュアルにおいて提供される。本発明のペプチドをコードしている遺伝子を構築するために、そのアミノ酸配列は、逆に翻訳され、アミノ酸配列をコードしている核酸配列、好ましくはそこで遺伝子が発現される生物に最適であるコドンを伴う核酸配列を得ることができる。次に、典型的にはこのペプチドおよび必要ならば任意の調節エレメントをコードしているオリゴヌクレオチドの合成により、合成遺伝子が作製される。合成遺伝子は、適当なクローニングベクターへ挿入され、および宿主細胞へ形質移入される。その後このペプチドは、選択された発現システムおよび宿主に適した適当な条件下で発現される。このペプチドは、常法により精製および特徴決定される。
【0108】
これらのペプチドは、例えば、Advanced Chemtechから入手可能なハイスループット多チャネルコンビナトリアル合成装置の使用のように、ハイスループット、コンビナトリアル様式で作製することができる。
【0109】
図28a-28fは、架橋したペプチドを作製するために有用なドメインを含む様々なペプチドを表す。
【0110】
治療法
本発明は、異常な(例えば、不充分または過剰な)BCL-2ファミリーメンバー発現もしくは活性(例えば、外因性または内因性アポトーシス経路の異常)に関連した障害のリスクのある(または易罹患性である)被験者または障害を有する被験者を治療する、予防的および治療的の両方法を提供する。本明細書において使用される「治療」という用語とは、疾患、疾患の症状もしくは疾患への素因の治癒、回復、軽減、緩和、変更、救済、改善、改良、もしくは影響することを目的として、疾患、疾患の症状もしくは疾患への素因を有する患者への治療的物質の適用もしくは投与、または患者から単離された組織もしくは細胞株への治療的物質の適用もしくは投与と定義される。治療的物質は、小型分子、ペプチド、抗体、リボザイムおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されるものではない。
【0111】
一部のBCL-2型の障害は、少なくとも一部は、異常なレベルの1種または複数のBCL-2ファミリーメンバー(例えば、過剰もしくは過小発現)、または異常な活性を示す1種または複数のBCL-2ファミリーメンバーの存在により引き起こされることが可能である。従って、BCL-2ファミリーメンバーのレベルおよび/もしくは活性の減少またはBCL-2ファミリーメンバーのレベルおよび/もしくは活性の増強は、障害症状の改善をもたらすと考えられる。
【0112】
本発明のポリペプチドは、癌および新生物性状態を治療、予防、および/または診断するために使用することができる。本明細書において使用される「癌」、「過増殖物」および「新生物」という用語は、自律増殖能、すなわち迅速に繁殖する細胞増殖により特徴付けられる異常な状態または条件を有する細胞を意味する。過増殖性および新生物性の病態は、病原性として、すなわち病態の特徴もしくは構成として分類することができるか、または非病原性として、すなわち正常からは逸脱しているが病態には関連していないとして分類することができる。この用語は、組織病理学的型または侵襲の段階に関わりなく、全ての種類の癌性増殖または腫瘍形成性プロセス、転移性組織または悪性転換された細胞、組織もしくは臓器を含むことを意味する。「病原性過増殖性」細胞は、悪性腫瘍増殖を特徴とする病態において生じる。非病原性過増殖性細胞の例は、創傷修復に関連した細胞の増殖を含む。
【0113】
細胞の増殖および/または分化の障害の例は、癌、例えば癌腫、肉腫、または転移性障害を含む。本化合物(すなわちポリペプチド)は、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、このような癌の転移などの管理のための新規治療的物質として作用することができる。転移性腫瘍は、乳房、肺、肝臓、結腸および卵巣起源のものを含むが、これらに限定されるものではない、多数の原発性腫瘍型から生じる。
【0114】
癌または新生物の状態の例は、線維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食道癌、直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭部および頸部の癌、皮膚癌、脳腫瘍、扁平上皮癌、皮脂腺癌腫、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、直腸細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、線毛上皮癌、精上皮腫、胎生期癌、ウイルムス腫瘍、頚癌、精巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭癌、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、稀突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫、またはカポジ肉腫を含むが、これらに限定されるものではない。
【0115】
増殖性障害の例は、造血系新生物性障害を含む。本明細書において使用される「造血系新生物性障害」という用語は、例えば、骨髄系、リンパ系もしくは赤血球系統、またはそれらの細胞の前駆体から生じる、造血起源の過形成細胞および/または新形成細胞が関連した疾患を含む。好ましくはこれらの疾患は、分化不良の急性白血病、例えば赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生じる。骨髄系障害の追加例は、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)を含むが、これらに限定されるものではなく(Vaickus, L. (1991) Crit Rev. in Oncol./Hemotol. 11:267-97において検証);リンパ系悪性疾患転移は、B細胞系ALLおよびT細胞系ALLを含む急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛様細胞性白血病(HLL)およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を含むが、これらに限定されるものではない。悪性リンパ腫の追加例は、非ホジキンリンパ腫およびそれらの変種、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大型顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン疾患およびリード-スターンバーグ疾患を含むが、これらに限定されるものではない。
【0116】
乳房の細胞増殖性および/または分化性の障害の例は、例えば上皮過形成、硬化性腺疾患、および小管乳頭腫などを含む、増殖性乳房疾患;例えば、線維腺腫などの間質性腫瘍、葉状腫瘍、および肉腫、ならびに大管乳頭腫のような上皮腫瘍などの、腫瘍;原位置の腺管癌(パジェット病を含む)および原位置の小葉癌を含む原位置(非侵襲性)癌腫、ならびに侵襲性腺管癌、侵襲性小葉癌、髄様癌、膠様癌(粘液性癌腫)、管状腺癌、および侵襲性乳頭状癌を含むが、これに限定されない侵襲性(浸潤する)癌腫、ならびにその他の悪性新生物を含む、乳房の癌腫を含むが、これらに限定されるものではない。男性乳房の障害は、女性化乳房および癌腫を含むが、これらに限定されるものではない。
【0117】
肺の細胞増殖性および/または分化性の障害の例は、新生物随伴症状を含む気管支原性癌、気管支肺胞癌、気管支類癌腫などの腫瘍、その他の腫瘍、および転移性腫瘍;炎症性胸膜滲出、非炎症性胸膜滲出、気胸を含む胸膜の病理、ならびに単発性線維性腫瘍(胸膜線維腫)および悪性中皮腫を含む胸膜腫瘍を含むが、これらに限定されるものではない。
【0118】
結腸の細胞増殖性および/または分化性の障害の例は、非新生物性ポリープ、腺癌、家族性症候群、結腸直腸の発癌、結腸直腸癌、および類癌腫を含むが、これらに限定されるものではない。
【0119】
肝臓の細胞増殖性および/または分化性の障害の例は、結節過形成、腺腫、および肝臓の原発性癌および転移性腫瘍を含む悪性腫瘍を含むが、これらに限定されるものではない。
【0120】
卵巣の細胞増殖性および/または分化性の障害の例は、体腔上皮腫瘍、漿液性腫瘍、粘液性腫瘍、内膜性腫瘍、透明細胞腺癌、嚢胞腺癌、ブレンナー腫瘍、表面上皮腫瘍などの、卵巣腫瘍;成熟(良性)奇形腫、単皮膚性奇形腫、未熟な悪性奇形腫、未分化胚細胞腫、内胚葉洞腫瘍、絨毛癌などの、生殖細胞腫瘍;顆粒卵胞膜細胞腫、胸膜線維腫、アンドロブラストーマ、hill細胞腫瘍、および性腺芽種などの、性索間質性腫瘍;ならびに、クルーケンベルグ腫瘍などの転移性腫瘍を含むが、これらに限定されるものではない。
【0121】
本明細書に説明されたポリペプチドは、過活性細胞死または生理的発作などに起因した細胞死により特徴付けられる状態を、治療、予防または診断するために使用することもできる。早期のまたは望ましくない細胞死、あるいは望ましくないもしくは過剰な細胞増殖により特徴付けられる状態のいくつかの例は、低細胞/低形成状態、無細胞/無形成状態、または高細胞/高形成状態を含むが、これらに限定されるものではない。例の一部は、ファンコーニ貧血、再生不良性貧血、サラセミア、先天性好中球減少症、骨髄形成異常を含むが、これらに限定されるものではない血液疾患を含む。
【0122】
アポトーシスの減少に作用する本発明のポリペプチドを使用し、望ましくないレベルの細胞死を伴う障害を治療することができる。従って、本発明の抗アポトーシスペプチドを使用し、ウイルス感染症に随伴した細胞死につながるもののような障害、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に随伴した感染症を治療することができる。多種多様な神経疾患は、神経の特異的セットの段階的喪失により特徴付けられ、ならびにこの感染の抗アポトーシスペプチドを、これらの障害の治療に使用することができる。このような障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性軸索硬化症(ALS)、色素性網膜炎、脊髄性筋萎縮症、および脳変性の様々な形を含む。これらの疾患における細胞喪失は、炎症反応を引き起こさず、アポトーシスは、細胞死の機序であるように見える。加えて、多くの血液疾患が、減少した血液細胞の生成に関連している。これらの障害は、慢性疾患に関連した貧血、再生不良性貧血、慢性好中球減少症、および骨髄異形成症候群を含む。骨髄異形成症候群および再生不良性貧血の一部などの血液細胞生成の障害は、骨髄内の増加したアポトーシス細胞死に関連している。これらの障害は、アポトーシスを促進する遺伝子の活性化、間質細胞もしくは造血系生存因子の後天性欠乏、または毒素および免疫応答メディエーターの直接作用の結果である。細胞死に関連したふたつの一般的障害は、心筋梗塞および心臓発作である。両障害において、虚血の中心部分の細胞は、血流の急激な喪失事象において引き起こされるが、これは壊死の結果迅速に死滅するように見える。しかし中央の虚血帯の外側の細胞は、より長期にわたり死滅し、形態学的にはアポトーシスにより死滅するように見える。本発明の抗アポトーシスペプチドを使用し、望ましくない細胞死に関連したこのような障害を全て治療することができる。
【0123】
本明細書に説明されたポリペプチドにより治療することができる免疫障害のいくつかの例は、臓器移植時の拒絶反応、関節炎、狼瘡、IBD、クローン病、喘息、多発性硬化症、糖尿病などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0124】
本明細書に説明されたポリペプチドにより治療することができる神経障害のいくつかの例は、アルツハイマー病、ダウン症、オランダ型遺伝性脳出血性アミロイド症、反応性アミロイドーシス、家族性アミロイドーシス、蕁麻疹および難聴を伴うネフロパシー、マックル-ウェルズ症候群、特発性骨髄腫;マクログロブリン血症随伴性骨髄腫、家族性アミロイド型多発性ニューロパシー、家族性アミロイド性心筋症、弧発性心アミロイド、全身老人性アミロイドーシス、成人発症型糖尿病、インスリノーマ、弧発性心房性アミロイド、甲状腺の髄様癌、家族性アミロイドーシス、アミロイドーシスによる遺伝性脳出血、家族性アミロイド型多発性ニューロパシー、スクレーピー、クロイツフェルト-ヤコブ病、ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー症候群、ウシ海綿脳症、プリオン依存型疾患、およびハンチントン病を含むが、これらに限定されるものではない。
【0125】
本明細書に説明されたポリペプチドにより治療することができる内分泌障害のいくつかの例は、糖尿病、甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、副甲状腺機能低下症、性腺機能低下症などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0126】
本発明の化合物および方法で治療または予防することができる心臓血管系障害(例えば炎症障害)の例は、アテローム動脈硬化症、心筋梗塞、心臓発作、血栓症、動脈瘤、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心臓突然死、高血圧性心疾患;細動脈硬化症、小血管疾患、ネフロパシー、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、高脂血症、黄色腫症、喘息、高血圧、気腫および慢性肺疾患などの、非冠状動脈疾患;または、介入的手技に関連した心臓血管系の状態(「手技による血管外傷」)、例えば血管形成術、シャント、ステント、合成もしくは天然の切除移植片、留置カテーテル、バルブもしくは他の埋込み可能な用具の留置後の再狭窄を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい心臓血管系障害は、アテローム動脈硬化症、心筋梗塞、動脈瘤、および心臓発作を含む。
【0127】
薬学的組成物および投与経路
本明細書において使用される、本明細書に説明した式の化合物を含む本発明の化合物は、それらの薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグを含むように定義される。「薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグ」は、レシピエントへの投与の場合に、本発明の化合物を(直接または間接に)提供することが可能であるような、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、または他の誘導体を意味する。特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、このような化合物が哺乳類に投与された場合に、本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増大する(例えば、経口投与された化合物が血中により迅速に吸収されることを可能にすることにより)か、または親種と比べ親化合物の生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への送達を増強するものである。好ましいプロドラッグは、水への溶解度または消化管膜を通る能動輸送を増強する基が、本明細書に説明された式の構造に付加されている誘導体を含む。
【0128】
本発明の化合物は、選択的生物学的特性を増強する適当な官能性を付加することにより修飾されてもよい。このような修飾は、当該技術分野において公知であり、かつ所定の生物学的区画(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的透過を増大し、経口のアベイラビリティを増加し、注射による投与を可能にするために溶解度を増加し、代謝を変更しおよび排泄率を変更するものを含む。
【0129】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機および有機の酸および塩基に由来するものを含む。適当な酸塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩を含む。適当な塩基に由来する塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびN-(アルキル)4+塩を含む。本発明は、本明細書に明らかにされた化合物の塩基性窒素含有基の四級化も想起している。水または油へ溶解性または分散性の生成物は、このような四級化により得ることができる。
【0130】
本明細書に説明された式の化合物は、例えば、注射により、静脈内、動脈内、皮内、腹腔内、筋肉内もしくは皮下に;または、経口、口腔内、鼻腔内、経粘膜、局所的、眼用調製物、もしくは吸入により、用量約0.001〜約100mg/kg体重の範囲で、もしくは具体的薬物の必要要件に従い、投与することができる。本明細書の方法は、所望のまたは言及された作用を実現するのに有効な量の化合物または化合物組成物を投与することを企図している。典型的には、本発明の薬学的組成物は、1日に約1〜約6回で、あるいは連続注入として投与される。このような投与は、慢性または急性の療法として使用することができる。単位剤形を製造するために担体物質と一緒にすることができる活性成分の量は、治療される宿主および投与の具体的様式に応じて変動すると考えられる。典型的調製物は、約5%〜約95%の活性化合物(w/w)を含有すると考えられる。あるいは、このような調製物は、約20%〜約80%の活性化合物を含有する。
【0131】
先に言及したものよりもより低いまたはより高い投与量が、必要なこともある。任意の特定の患者に関する具体的用量および治療方式は、使用される具体的化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、排泄率、併用薬、疾患、状態または症状の重症度および経過、患者の疾患、状態または症状に対する素因、および治療担当医の判断を含む、様々な要因によって決まると考えられる。
【0132】
患者の状態の改善時には、必要ならば、本発明の化合物、組成物または組合せの維持量が投与されてよい。その後改善された状態が維持されるレベルへ、用量または投与頻度、または両方が、症状の関数として減量される。しかし患者は、疾患症状の何らかの再発を基に、長期にわたり断続的治療を必要とすることができる。
【0133】
本発明の薬学的組成物は、本明細書に説明された式の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩;例えば、モルヒネまたはコデインを含む、追加の物質;ならびに、任意の薬学的に許容される担体、補助剤またはビヒクルを含有する。本発明の別の組成物は、本明細書に説明された式の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩;および、薬学的に許容される担体、補助剤またはビヒクルを含有する。本明細書に描かれた組成物は、本明細書に描かれた式の化合物に加え、存在するならば追加の治療的物質を、BCL-2ファミリーメンバー依存性の障害またはそれらの症状を含む、疾患または疾患症状の変調を実現するための有効量含有する。
【0134】
「薬学的に許容される担体または補助剤」という用語は、患者へ本発明の化合物と一緒に投与することができ、ならびに化合物の治療量を送達するのに十分な用量で投与した場合にそれらの薬理学的活性を破壊せずおよび無毒であるような、担体または補助剤を意味する。
【0135】
本発明の薬学的組成物中で使用することができる薬学的に許容される担体、補助剤およびビヒクルは、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)、例えばd-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネートなど、薬学的剤形で使用される界面活性剤、例えばTweensまたは他の同様の高分子送達マトリックス、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和した植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含むが、これらに限定されるものではない。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンのようなシクロデキストリン類も、本明細書に説明された式の化合物の送達を増強するために、有利に使用することができる。
【0136】
本発明の薬学的組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所的、直腸、鼻腔内、口腔内、膣内または埋込み式貯蔵庫を介して投与してもよく、好ましくは経口投与または注射による投与である。本発明の薬学的組成物は、任意の通常の無毒の薬学的に許容される担体、補助剤またはビヒクルを含んでもよい。場合によってはこの製剤のpHは、薬学的に許容される酸、塩基または緩衝液により、製剤された化合物またはその送達型の安定性を増強するように調節される。本明細書において使用される非経口という用語とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、陰嚢内、鞘内、病巣内および頭蓋内の注射または注入技術を含む。
【0137】
この薬学的組成物は、無菌の注射可能な調製物の形、例えば、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液であることができる。この懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤(例えばTween 80など)および懸濁化剤を使用し、当該技術分野において公知の技術に従い製剤することができる。無菌の注射可能な調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール溶液のような、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な液体または懸濁液であってもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒の中で使用されるものは、マンニトール、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒として、通常利用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の(bland)不揮発油を使用することができる。オリーブ油またはひまし油、特にそれらのポリオキシエチレン型のような、天然の薬学的に許容される油分である、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注射可能な調製物において有用である。これらの油性溶液または懸濁液は、乳剤および/または懸濁剤のような、薬学的に許容される剤形の製剤において通常使用される、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、またはカルボキシメチルセルロースもしくは同様の分散剤を含むこともできる。薬学的に許容される固形、液体、または他の剤形の製造において通常使用される、他の通常使用される界面活性剤、例えばTweensまたはSpansおよび/または他の同様の乳化剤またはバイオアベイラビリティ増加剤も、製剤目的で使用することができる。
【0138】
本発明の薬学的組成物は、カプセル剤、錠剤、乳剤および水性懸濁剤、分散剤および液剤を含むが、これらに限定されるものではない任意の経口的に許容される剤形で、経口投与することができる。経口使用するための錠剤の場合、通常使用される担体は、乳糖およびコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も、典型的には添加される。カプセル剤での経口投与のためには、有用な希釈剤は、乳糖および無水コーンスターチである。水性懸濁剤および/または乳剤が経口的に投与される場合は、活性成分は、油相中に懸濁または溶解され、乳化剤および/または懸濁化剤と組合わせられる。望ましいならばある甘味剤および/または矯味矯臭剤および/または着色剤を添加することができる。
【0139】
本発明の薬学的組成物は、直腸投与のために、坐剤の形で投与することもできる。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温では固形であるが直腸温度で液体であり、その結果直腸中で溶融し活性成分を放出するような、適当な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製することができる。このような物質は、ココアバター、ビーズワックスおよびポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されるものではない。
【0140】
本発明の薬学的組成物は、鼻腔用エアゾールまたは吸入により投与することができる。このような組成物は、薬学的製剤の技術分野において周知の技術に従い調製され、ならびにベンジルアルコールまたは他の適当な保存剤、バイオアベイラビリティを促進するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の当該技術分野において公知の溶解剤もしくは分散剤を使用し、生理食塩水中の溶液として調製されてよい。
【0141】
本発明の組成物が、本明細書に説明された式の化合物と1種または複数の追加の治療的または予防的物質の組合せを含有する場合、化合物および追加の物質の両方は、単剤療法様式で通常投与される用量の約1〜100%、より好ましくは約5〜95%の間の用量レベルで存在しなければならない。追加の物質は、反復投与様式の一部として、本発明の化合物とは個別に投与されてもよい。あるいはこれらの物質は、単独の組成物中に本発明の化合物と一緒に混合された、単位剤形の一部であってもよい。
【0142】
スクリーニングアッセイ法
本発明は、1種または複数のBCL-2ファミリータンパク質の活性を変調するポリペプチド、または1種または複数のBCL-2ファミリータンパク質に結合するポリペプチド(例えば少なくとも1個のBH相同ドメインを有するペプチド)を同定する方法(同じく本明細書において「スクリーニングアッセイ法」と称される)を提供する。
【0143】
本明細書に説明されたポリペプチドの結合親和性は、例えば滴定結合アッセイ法を用いて決定することができる。BCL-2ファミリーポリペプチドまたはBHドメインを含むポリペプチド(例えば、BID、BAK、BAXなど)は、ポリペプチドまたはそれらの断片(例えば、BID、BAD、BAK、BAXなど)を含む蛍光標識されたBH3のような基質の存在下で、変動する濃度の候補化合物(すなわちポリペプチド)(例えば、1nM、10nM、100nM、1μM、10μM、100μM、1mM、および10mM)に曝露することができる。その後候補化合物の各濃度での作用が分析され、様々な濃度での候補化合物のBCL-2ファミリー結合活性に対する作用が決定され、これには候補化合物のKiを算出するために使用することができる。この候補化合物は、競合的または非競合的様式で、BCL-2型活性を変調することができる。直接結合アッセイ法も、BCL-2ファミリータンパク質と蛍光標識された候補化合物の間で行い、結合相互作用に関するKdを決定することができる。候補化合物は、例えば、精製されたミトコンドリアからのシトクロムcの引金を引くことにおけるそれらの用量反応を測定することにより、インビトロにおける生物学的活性についてスクリーニングすることもできる。細胞透過性スクリーニングアッセイ法も想起され、これは蛍光標識された候補化合物が、無傷の細胞に適用され、その後細胞の蛍光について顕微鏡またはハイスループット細胞蛍光検出により、アッセイされる。
【0144】
本明細書に説明されたアッセイ法は、個々の候補化合物と共に行うか、または複数の候補化合物と共に行うことができる。アッセイ法が複数の候補化合物で行われる場合、このアッセイ法は、候補化合物の混合物を使用し行うか、または単独の候補化合物を有する各反応と平行反応で試行することができる。被験化合物または物質は、当該技術分野において公知であるコンビナトリアルライブラリー法の多くの手法を用いて得ることができる。
【0145】
ひとつの態様において、アッセイ法は、BCL-2ファミリータンパク質またはそれらの生物学的活性部分を発現している細胞を、候補ポリペプチドと接触し、および被験化合物のBCL-2型活性を変調する能力を決定する(例えば、内因性または外因性の細胞死経路を介し、場合によってはアポトーシスを増加し、および別の場合にはアポトーシスを減少する)細胞を用いたアッセイ法である。細胞内で被験化合物のBCL-2型活性を変調する能力を決定することは、例えばミトコンドリアからのシトクロムc放出のモニタリング、または他の関連のある物理的読値(例えば、アネキシンV染色、MTTアッセイ法、カスパーゼ活性アッセイ法、TUNELアッセイ法)により実現することができる。
【0146】
ひとつの態様において、アッセイ法は、生化学アッセイ法であり、これによりアポトーシス経路における新規または公知の相互作用のパートナーを精製または同定するために、架橋したポリペプチドは、アフィニティー樹脂へ連結される。
【0147】
本明細書に引用された全ての参考文献は、印刷物、電子的、コンピュータで読取り可能な保存媒体または他の形にかかわらず、事実上それらの全体が本明細書に参照として組入れられており、これは要約、記事、雑誌、刊行物、テキスト、学術論文、インターネットのウェブサイト、データベース、特許および特許公報を含む。
【0148】
その他の適用
本明細書に説明されたペプチドの生物学的関連のある適用は多数であり、以下の細胞コンパートメントベースの例により示されるように、容易に明らかであると思われる。
(1)細胞表面−HIV-1タンパク質gp41の重要なヘリックス領域を示す天然のペプチド(例えば、C-ペプチド、T-20ペプチド)は、ウイルス融合を防止し、その結果HIV感染性を妨げることを示している。ヘリックスペプチドは、多くのウイルス宿主細胞感染症(例えば、デング、C型肝炎、インフルエンザ)のパラダイムに必須である融合機序に参加し、その結果これらの重要なヘリックス領域の炭化水素ステープル式アナログは、ウイルス融合を阻害することにより、有効な抗生物質として機能することができる。全般的に、シグナル伝達経路を活性化または阻害するためにヘリックス境界面を用い、細胞表面と相互作用するリガンドは、本明細書に説明したポリペプチドの追加の適用を表している。
【0149】
(2)膜内−受容体二量体およびオリゴマー形成は、リガンド誘導した受容体活性化およびシグナル伝達の主要な特徴である。膜貫通ヘリックスドメインは、このような必須のオリゴマー形成反応に広く参加し(例えば、上皮増殖因子受容体[EGFR]ファミリー)、およびこれらの密な膜内のヘリックスの会合を促進する特異的ペプチド配列が、定義されている。オリゴマー形成を介したこのような受容体の異常な活性化は、疾患病理に関与している(例えばerbBおよび癌)。従って適当な状況において、膜貫通ヘリックス間相互作用の活性化または阻害は、治療上の恩恵があると考えられる。
【0150】
(3)細胞質ゾル−細胞質ゾルの標的は、可溶性タンパク質標的、ならびにミトコンドリア、小胞体、ゴルジ網、リソソーム、およびペルオキシソームを含む特異的細胞質ゾル内オルガネラに会合したものを含む。アポトーシスの分野において、炭化水素ステープル式のBCL-2ファミリードメインに関して、複数の細胞質ゾルおよびミトコンドリアアポトーシスタンパク質標的が存在する。プロアポトーシスタンパク質のBH3オンリーサブグループ内で、BH3ドメインの2種の主要なサブセットが同定された。(1)BID様BH3(例えば、BIM)、これはアポトーシス「アクチベーター」であり、ミトコンドリアにおけるBAKオリゴマー形成およびシトクロムc放出を誘導する;ならびに、(2)BAD様BH3、これは抗アポトーシスマルチドメインタンパク質を選択的に標的化するアポトーシス「増感剤」であり、閾値下のレベルで活性化するドメインが最大有効であるようにすることができる。BH3オンリータンパク質のプロアポトーシス、対、抗アポトーシスマルチドメインファミリーメンバーに対する識別できる結合に加え、BH3ドメインは、抗アポトーシスタンパク質間の示差的結合を示す。例えば、BADは、抗アポトーシスBCL-2へ優先的に結合するのに対し、BIMは、抗アポトーシスMCL-1を標的化することが明らかにされている。これらの選択的相互作用の同定および探索は、異なるBCL-2ファミリーメンバーは、異なる種類の癌に関与しているので、決定的に重要である。例えば、BCL-2過剰発現は、濾胞性リンパ腫および概して化学療法抵抗性の発達の原因であるのに対し、MCL-1は、多発性骨髄腫の病理進行において重要な役割を果たすと考えられている。多くのBH3ドメインを構造的に安定しおよび細胞透過性亢進物質に転換する能力は、癌細胞におけるアポトーシス経路を探索しかつ示差的に操作する重要な機会を提供すると考えられる。細胞質ゾルまたは細胞質ゾルオルガネラ内のヘリックス依存型相互作用の更なる標的化が想起されている。
【0151】
(4)核−核転写因子およびそれらの修飾タンパク質は、核タンパク質および核酸とのペプチドのヘリックス相互作用を基に生理的プロセスの宿主を駆動する。核相互作用に携わる炭化水素ステープル式ペプチドの生成の実現可能性が、本発明者らの、ピコモルの親和性でMDM2と相互作用する炭化水素ステープル式p53ペプチドのパネルの合成により、最近明らかにされている。核内のタンパク質-タンパク質相互作用の変調に加え、タンパク質-核酸相互作用も、明らかな標的である。ホメオドメイン、基本的ヘリックス-ループ-ヘリックス、核受容体、およびジンクフィンガー含有タンパク質などの複数の転写因子ファミリーは、それらのペプチドヘリックスを介して、DNAと直接相互作用し、遺伝子転写を活性化または阻害する。例として、ホメオドメインタンパク質は、全ての多細胞生物における増殖および分化の遺伝子プログラムを調節する必須の転写因子のファミリーである。これらのタンパク質は、ホメオドメインと称される、保存されたDNA結合モチーフを共有しており、これは60個のアミノ酸長のペプチドを含み、これは3個のα-ヘリックスを形成し、その3番目は、DNAの主要溝との直接接触を形成している。アポトーシスタンパク質のBH3ドメインのように、このホメオドメインは、示差的結合特異性および生理的活性を促進するために、ホモログ間で十分な変動を伴う、決定的なエフェクターモチーフである。タンパク質-DNA相互作用は、複雑かつ広範であることができ、これにより転写事象の試験および選択的修飾を目的として、小型分子の開発に対するチャレンジを示す。高等生物において、ホメオドメインタンパク質は、発達時に高度に発現され、ボディプランを特定し、かつ組織分化を指示する。特異的ホメオタンパク質(例えばCDX4)の過剰発現は、組織特異的分化プログラムを活性化し、例えば、マウス胚性幹細胞からの血液形成を生じる。典型的には未分化の細胞において発現されたホメオドメインタンパク質の異常なアップレギュレーション、または通常分化細胞において発現されるこのようなタンパク質の不適切なダウンレギュレーションのような、ホメオティック遺伝子発現の脱制御は、癌の発達および維持に貢献し得る。例えば、小児肺胞横紋筋肉腫において、PAX3またはPAX7 DNA結合ドメインのフォークヘッドのトランス活性化ドメインへの融合は、細胞の形質転換に関与し;いくつかのHOX遺伝子のDNA結合ドメインに関与している転位は、白血病の病理進行に連結している。従って細胞送達のために、ホメオドメインペプチドのような、転写因子ヘリックスを化学的に安定化する能力は、健常および疾患の生物学的プロセスの大きさに寄与する多様な転写プログラムの研究および変更のためのケミカルツールボックスを得る可能性を有する。
【0152】
多くの本発明の態様が説明されている。しかし、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、様々な修飾を行うことができることは理解されると思われる。従って他の態様も、特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

の、式中、各R1およびR2が、独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
R3が、アルキル、アルケニル、アルキニル;[R4-K-R4]nであり;その各々が、0〜6個のR5で置換され;
R4が、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;
R5が、ハロゲン、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kが、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

であり;
R6が、H、アルキル、または治療的物質であり;
nが、1〜4の整数であり;
xが、2〜10の整数であり;
各yが独立して、0〜100の整数であり;
zが、1〜10の整数であり;ならびに
各Xaaが独立して、アミノ酸であるポリペプチドであって;
水溶液中で、実質的にαヘリックス二次構造を有する、ポリペプチド。
【請求項2】
BCL-2ファミリーポリペプチドに結合する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
抗アポトーシスポリペプチドである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項4】
BH1ドメイン、BH2ドメインまたはBH3ドメインに結合する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項5】
ミトコンドリア細胞死を活性化する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項6】
細胞死を活性化する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項7】
細胞死を阻害する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項8】
BH3ドメインを含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項9】
xが、2、3または6である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項10】
各yが独立して、3〜15の間の整数である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項11】
R1およびR2が各々独立して、HまたはC1-C6アルキルである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項12】
R1およびR2が各々独立して、C1-C3アルキルである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項13】
R1およびR2の少なくとも一方がメチルである、請求項11記載のポリペプチド。
【請求項14】
R1およびR2がメチルである、請求項12記載のポリペプチド。
【請求項15】
R3がアルキルである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項16】
xが3である、請求項14記載のポリペプチド。
【請求項17】
R3がC8アルキルである、請求項15記載のポリペプチド。
【請求項18】
xが6である、請求項14記載のポリペプチド。
【請求項19】
R3がC11アルキルである、請求項17記載のポリペプチド。
【請求項20】
R3がアルケニルである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項21】
xが3である、請求項18記載のポリペプチド。
【請求項22】
R3がC8アルケニルである、請求項20記載のポリペプチド。
【請求項23】
xが6である、請求項19記載のポリペプチド。
【請求項24】
R3がC11アルケニルである、請求項19記載のポリペプチド。
【請求項25】
R3が直鎖アルキル、アルケニル、またはアルキニルである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項26】
R3が[R4-K-R4]であり;および、R4が直鎖アルキル、アルケニル、またはアルキニルである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項27】
SEQ ID NO:1のアミノ酸配列と少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項28】
R3がアルキルまたはアルケニルである、請求項15記載のポリペプチド。
【請求項29】
R1またはR2の少なくとも一方がアルキルである、請求項15記載のポリペプチド。
【請求項30】
R1またはR2の各々が独立して、HまたはC1-C3アルキルである、請求項11記載のポリペプチド。
【請求項31】
R1およびR2がメチルである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項32】
xが3または7であり、およびzが0である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項33】
R3がC8またはC11のアルキルまたはアルケニルである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項34】
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項35】
細胞膜を介して輸送される、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項36】
細胞膜を介して能動輸送される、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項37】
蛍光部分または放射性同位元素を更に含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項38】
23個のアミノ酸を含み;
R1およびR2がメチルであり;
R3がC8アルキル、C11アルキル、C8アルケニル、またはC11アルケニルであり;ならびに
xが2、3または6である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項39】
アフィニティー標識を更に含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項40】
標的化部分を更に含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項41】
ビオチン部分を更に含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項42】
図5に記されたポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項43】
式(III)のポリペプチドを生成する方法であって、式(II)

のポリペプチドを提供する工程;および
式(II)の化合物を触媒で処理し、閉環メタセシスを促進し、これにより式(III)

の化合物を提供する工程:
式中、各R1およびR2が、独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル;ヘテロアリールアルキル;またはヘテロシクリルアルキルであり;
各nが独立して、1〜15の整数であり;
xが2、3または6であり;
各yが独立して、0〜100の整数であり;
zが1〜3の整数であり;および
各Xaaが独立してアミノ酸であり;ならびに
ポリペプチドが水溶液中で、αヘリックス構造を含む工程を含む、方法。
【請求項44】
ポリペプチドが、BCL-2ファミリーメンバーのポリペプチドに結合する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
触媒がルテニウム触媒である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
閉環メタセシスに続いて、還元剤または酸化剤を提供する工程を更に含む、請求項43記載の方法。
【請求項47】
還元剤がH2であるか、または酸化剤が四酸化オスミウムである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
請求項1記載の化合物を被験者へ投与することを含む、被験者を治療する方法。
【請求項49】
追加の治療的物質を投与する工程を更に含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
請求項1記載の化合物を被験者へ投与することを含む、被験者の癌を治療する方法。
【請求項51】
追加の治療的物質を投与することを更に含む、請求項45記載の方法。
【請求項52】
式(I)である、請求項1記載の化合物のライブラリー。
【請求項53】
アポトーシス促進のための候補化合物を同定する方法であって:
ミトコンドリアを提供する工程;
ミトコンドリアを、請求項1記載の化合物と接触する工程;
シトクロムc放出を測定する工程;および
請求項1記載の化合物の存在下のシトクロムc放出を、請求項1記載の化合物の非存在下のシトクロムc放出と比較する工程を含み、請求項1記載の化合物の存在下のシトクロムc放出の増加が、アポトーシス促進のための候補化合物として請求項1記載の化合物を同定する、方法。
【請求項54】
式(IV)

の、式中、各R1およびR2が、独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
R3が、アルキル、アルキニル、アルキニル;[R4-K-R4]n、または天然のアミノ酸側鎖であり;その各々が、0〜6個のR5で置換され;
R4が、アルキル、アルキニル、またはアルキニルであり;
R5が、ハロゲン、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kが、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

であり;
R6が、H、アルキル、または治療的物質であり;
R7が、アルキル、アルケニル、アルキニル;[R4-K-R4]n、または天然のアミノ酸側鎖であり;その各々が、0〜6個のR5で置換され;
nが、1〜4の整数であり;
xが、2〜10の整数であり;
各yが独立して、0〜100の整数であり;
zが、1〜3の整数であり;ならびに
各Xaaが独立して、アミノ酸である、ポリペプチドであって:
;ならびに
水溶液中で、実質的にαヘリックス二次構造を有する、ポリペプチド。
【請求項55】
式(I)

の、式中、各R1およびR2が、独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
R3が、アルキル、アルケニル、アルキニル;[R4-K-R4]nであり;その各々が、0〜6個のR5で置換され;
R4が、アルキル、アルキニル、またはアルキニルであり;
R5が、ハロゲン、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kが、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

であり;
R6が、H、アルキル、または治療的物質であり;
nが、1〜4の整数であり;
xが、2〜10の整数であり;
各yが独立して、0〜100の整数であり;
zが、1〜3の整数であり;ならびに
各Xaaが独立して、アミノ酸である、ポリペプチドであって:
;ならびに
円偏光二色性により決定される場合、水溶液中で少なくとも5%のαヘリックス性を有する、ポリペプチド。
【請求項56】
円偏光二色性により決定される場合、少なくとも35%のαヘリックス性を有する、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項57】
円偏光二色性により決定される場合、少なくとも50%αヘリックス性である、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項58】
円偏光二色性により決定される場合、少なくとも60%αヘリックス性を有する、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項59】
円偏光二色性により決定される場合、少なくとも70%αヘリックス性を有する、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項60】
円偏光二色性により決定される場合、少なくとも80%αヘリックス性を有する、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項61】
円偏光二色性により決定される場合、少なくとも90%αヘリックス性を有する、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項62】
式(I)

の、式中、各R1およびR2が、独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり;
R3が、アルキル、アルケニル、アルキニル;[R4-K-R4]nであり;その各々が、0〜6個のR5で置換され;
R4が、アルキル、アルキニル、またはアルキニルであり;
R5が、ハロゲン、アルキル、OR6、N(R6)2、SR6、SOR6、SO2R6、CO2R6、R6、蛍光部分、または放射性同位元素であり;
Kが、O、S、SO、SO2、CO、CO2、CONR6、または

であり;
R6が、H、アルキル、または治療的物質であり;
nが、1〜4の整数であり;
xが、2〜10の整数であり;
各yが独立して、0〜100の整数であり;
zが、1〜3の整数であり;ならびに
各Xaaが独立して、アミノ酸である、ポリペプチドであって;

式(IV)

の、式中、R1、R2、Xaa、x、yおよびzが全て、先に式(I)について定義されたものであるポリペプチドと比較して、円偏光二色性により決定されたαヘリックス性の少なくとも1.25倍の増加を有するポリペプチド。
【請求項63】
式(IV)のポリペプチドと比較して、円偏光二色性により決定されたαヘリックス性の少なくとも1.5倍の増加を有する、式(I)である、請求項62記載のポリペプチド。
【請求項64】
式(IV)のポリペプチドと比較して、円偏光二色性により決定されたαヘリックス性の少なくとも1.75倍の増加を有する、式(I)である、請求項62記載のポリペプチド。
【請求項65】
式(IV)のポリペプチドと比較して、円偏光二色性により決定されたαヘリックス性の少なくとも2.0倍の増加を有する、式(I)である、請求項62記載のポリペプチド。
【請求項66】
式(IV)のポリペプチドと比較して、円偏光二色性により決定されたαヘリックス性の少なくとも2.5倍の増加を有する、式(I)である、請求項65記載のポリペプチド。
【請求項67】
式(IV)のポリペプチドと比較して、円偏光二色性により決定されたαヘリックス性の少なくとも3倍の増加を有する、式(I)である、請求項65記載のポリペプチド。
【請求項68】
式(IV)のポリペプチドと比較して、円偏光二色性により決定されたαヘリックス性の少なくとも4倍の増加を有する、式(I)である、請求項65記載のポリペプチド。
【請求項69】
アポトーシスを阻害する候補化合物を同定する方法であって:
ミトコンドリアを提供する工程;
ミトコンドリアを、請求項1記載の化合物と接触する工程;
シトクロムc放出を測定する工程;ならびに
請求項1記載の化合物の存在下のシトクロムc放出を、請求項1記載の化合物の非存在下のシトクロムc放出と比較する工程を含み、請求項1記載の化合物の存在下のシトクロムc放出の減少が、アポトーシス阻害の候補化合物として請求項1記載の化合物を同定する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図27D】
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【図27E】
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【図27F】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図28D−1】
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【図28D−2】
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【図28D−3】
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【図28E】
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【図28F】
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【図28G】
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【図28H】
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【公開番号】特開2012−116836(P2012−116836A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266427(P2011−266427)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【分割の表示】特願2006−540005(P2006−540005)の分割
【原出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(399052796)デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (36)
【出願人】(507244910)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (18)
【Fターム(参考)】