説明

安定化した抗RSV抗体液体製剤

【課題】呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染に伴う症状を予防、治療、又は改善する方法の提供。
【解決手段】呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原と免疫特異的に結合するシナジス(SYNAGIS(登録商標))又はその抗原結合フラグメントの液体製剤であって、貯蔵期間が長い場合であっても、安定性を示し、凝集が低レベルから未検出レベルであり、またシナジス(登録商標)又はその抗原結合フラグメントの生物学的活性を全く損失しないか非常にわずかな損失を示す製剤。RSV抗原と免疫特異的に結合するシナジス(登録商標)又はその抗原結合フラグメントの液体製剤であって、界面活性剤、無機塩及び/又は他の一般的な賦形剤を実質的に含まない製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.導入
本発明は、シナジス(SYNAGIS)(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤であって、安定性を示し、抗体の断片化が検出不可能から低いレベルであり、凝集が検出不可能から低いレベルであり、さらに長期保存中又は長期保存後でさえ、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの生物学的活性(例えば、治療効力)が全く失われないかほとんど失われない製剤に関する。詳細には、本発明は、界面活性剤及び/又は無機塩を実質的に含まない、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤に関する。本発明は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合フラグメントの液体製剤を用いて、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染に伴う症状を予防、治療、又は改善する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2002年6月14日出願の米国仮出願第60/388,921号に基づく優先権を有し、かつこれを主張する。また、この米国仮出願を参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0003】
2.発明の背景
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、乳幼児及び小児における重篤な下部気道疾患の主因である(Feigenら編、1987年、Textbook of Pediatric Infectious Diseases、WB Saunders, Philadelphia、1653-1675ページ;New Vaccine Development、Establishing Priorities、第1巻、1985年、National Academy Press、Washington DC、397-409ページ;及びRuuskanenら、1993年、Curr. Probl. Pediatr. 23:50-79)。RSV感染が毎年流行するという性質は世界中で明らかであるが、所与の季節におけるRSV疾患の発生件数及び重症度には、地域差がある(Hall, C.B.、1993年、Contemp. Pediatr. 10:92-110)。RSV感染は、北半球の温暖な地域では、通常、晩秋に始まり、晩春に終わる(Hall, C.B.、1995年、Mandell G.L., Bernnett J.E., Dolin R.編集、1995年、Principles and Practice of Infections Diseases、第4版、Churchill Livingstone, New York、1501-1519ページ)。米国では、RSV疾患によって、毎年9万人が入院し、さらに4,500人が死亡していると推計されている。主要なRSV感染は、生後6週間から2歳までの小児に発生することが最も多く、院内感染では、生後4週間でまれに発生する(Hallら、1979年、New Engl. J. Med. 300:393-396)。RSVを原因とした疾患は、幼年期細気管支炎では全体の75%にまでのぼり、また小児肺炎では全体の40%にまでのぼると推計されている(Cunningham, C.K.ら、1991年、Pediatrics 88:527-532)。RSV感染の危険が増大している小児には、早産児(Hallら、1979年、New Engl. J. Med. 300:393-396)と、気管支肺異形成症(Groothuisら、1988年、Pediatrics 82:199-203)、先天心疾患(MacDonaldら、New Engl. J. Med. 307:397-400)、先天性又は後天性免疫不全(Ograら、1988年、Pediatr. Infect. Dis. J. 7:246-249;及びPohlら、1992年、J. Infect. Dis. 165:166-169)、及び嚢胞性繊維症(Abmanら、1988年、J. Pediatr. 113:826-830)に罹患した小児とが含まれる。RSV感染で入院し、心臓病又は肺病を有する乳幼児の死亡率は、3%から4%である(Navasら、1992年、J. Pediatr. 121:348-354)。
【0004】
乳幼児及び小児と同様に、成人もRSVに感染する。RSVは、健常成人で主として上気道疾患を引き起こす。一部の成人(特に高齢者)には、以前に報告されてより高い頻度で症状性RSV感染に罹患することが最近明らかになった(Evans, A.S.編、1989年、Viral Infections of Humans. Epidemiology and Control、第3版、Plenum Medical Book, New York、525-544ページ)。養護施設の患者、及び施設に入っている若年成人の間での流行も数回報告されている(Falsey, A.R.、1991年、Infect. Control Hosp. Epidemiol. 12:602-608;及びGarvieら、1980年、Br.Med. J. 281:1253-1254)。最後に、RSVは、免疫抑制の個体、特に骨髄移植患者において重篤な疾患を引き起こす可能性をもつ(Hertzら、1989, Medicine 68:269-281)。
【0005】
確立したRSV疾病に対する治療オプションは限られたものである。下部気道における重度のRSV疾病には、しばしば、加湿酸素及び呼吸支援の施与を含めた、かなりの支持療法が必要とされる(Fieldsら編、1990年、Fields Virology、第2版第1巻、Raven Press, New York、1045-1072ページ)。感染治療用に承認されている唯一の薬は、抗ウイルス剤リバビリンである(American Academy of Pediatrics Committee on Infectious Diseases、1993年、Pediatrics 92:501-504)。リバビリンは、免疫能の正常な小児における重度のRSV疾病の経過を変更し、RSV肺炎及び細気管支炎の治療において有効であることが示されている(Smithら、1991年、New Engl. J. Med. 325:24-29)。しかし、リバビリンには、高費コスト、持続的なエアロゾル投与の必要性、及び、この薬剤に曝露される医療関係者や妊娠女性に対する潜在的危険を含めた、多くの制限がある。全米小児科学会伝染病特別部会(American Academy of Pediatrics Committee on Infectious Diseases)はリバビリンの使用に関する、推奨を改訂した。現在の推奨は、リバビリンを用いるかどうかの決定は、特定の臨床状況と、医師の経験とに基づくべきであるというものである(American Academy of Pediatrics. Summaries of Infectious Diseases. Pickering L.K.編、2000 Red Book:Report of the Committee on Infectious Diseases、第25版、Elk Grove Village, IL, American Academy of Pediatrics、2000年、483〜487ページ)。
【0006】
ワクチンによってRSV感染が予防されるかもしれないが、この適応症に対して認可されているワクチンはまだない。ワクチン開発に対する重大な障害は、安全性にある。免疫原性ではあるがホルマリン不活化されているワクチンで乳幼児を免疫処置したところ、意外にも、同様に調製された三価パラインフルエンザワクチンで免疫処置された乳幼児よりも、RSVによる下部気道疾患の発生が高頻度かつ深刻に引き起こされた(Kimら、1969年、Am. J. Epidemiol. 89:422-434;及びKapikianら、1969年、Am. J. Epidemiol. 89:405-421)。RSVワクチン候補のいくつかは放棄され、他のものは開発中である(Murphyら、1994年、Virus Res. 32:13-36)が、安全性の問題が解決されたとしても、なおワクチンの効果の改善もされなければならない。解決すべき問題は多く残っている。下部気道疾患の発生ピークが生後2〜5カ月にあるため、出生直後の新生児期に免疫処置を行う必要があろう。新生児期の免疫応答は未熟であり、また高力価のRSV抗体が母親から獲得されているため、ワクチンの免疫原性は、新生児期においては減弱したものであると予測できる(Murphyら、1988年、J. Virol. 62:3907-3910;及びMurphyら、1991年、Vaccine 9:185-189)。最後に、RSVの一次感染及び疾患は、その後のRSV疾患に対して十分な防御とならない(Hendersonら、1979年、New Engl. J. Med. 300:530-534)。
【0007】
RSV疾患の予防手法として、現在唯一承認されているのは、受動免疫処置である。IgGに防護的役割があることを示す初期の証拠が、フェレット(Prince, G.A.、博士論文、University of California, Los Angeles、1975年)、及びヒト(Lambrechtら、1976年、J. Infect. Dis. 134:211-217;及びGlezenら、1981年、J. Pediatr. 98:708-715)で、母性抗体(maternal antibody)を用いた観察から得られた。Hemmingら(Morellら編、1986年、Clinical Use of Intravenous Immunoglobulins、Academic Press, London、285〜294ページ)は、新生児敗血症が疑われる新生児における、静脈内投与免疫グロブリン(IVIG)の薬物動力学に関する研究を行っている間に、RSV感染の治療又は予防において、RSV抗体が有用である可能性を認めた。彼らは、呼吸分泌物からRSVが得られた乳幼児の1人がIVIG注入後に急速に回復したことに注目した。その後に行ったIVIGロット分析は、RSV中和抗体の力価が異常に高いことを明らかにした。この同じグループの研究者は、次に、RSV中和抗体が濃縮されている超免疫血清又は免疫グロブリンに、コットンラット及び霊長類をRSV感染から防御する効果があるかどうかを調べた(Princeら、1985年、Virus Res. 3:193-206;Princeら、1990年、J. Virol.64:3091-3092;Hemmingら、1985年、J. Infect. Dis. 152:1083-1087;Princeら、1983年、Infect. Immun. 42:81-87;及びPrinceら、1985年、J. Virol. 55:517-520)。これらの研究の結果は、予防用に投与したRSV中和抗体が、コットンラットにおける、RSVの呼吸気管内での複製を阻害したことを示唆した。治療用に投与した際には、RSV抗体によって、コットンラットと非ヒト霊長動物モデルとの両方で、肺におけるウイルス複製が減少した。さらに、免疫血清又は免疫グロブリンの受動的な注入は、その後にRSVに曝露されたコットンラットにおいて、肺での病態を促進しなかった。
【0008】
RSVのFタンパク質のA抗原部位にあるエピトープに対するヒト化抗体であるシナジス(登録商標)は、配列番号1〜3のアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)相補性決定領域(CDR)と、配列番号4〜6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)CDRとを含み、RSVシーズン(北半球では11月から4月まで)を通して、RSVによって引き起こされる重篤な下部気道疾患の予防用に、毎月の推奨用量を体重あたり15mg/kgとして、小児患者へ筋肉内投与することが承認されている。シナジス(登録商標)は、ヒト抗体配列(95%)とマウス抗体配列(5%)との複合体である。Johnsonら、1997年、J. Infect. Diseases 176:1215-1224及び米国特許第5824307号を参照のこと。また、これらの全内容を参照により本明細書に組み入れる。このヒト重鎖配列は、ヒトIgGの定常ドメインと、VH遺伝子Cor(Pressら、1970年、Biochem. J. 117:641-660)及びCess(Takashiら、1984年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:194-198)の可変フレームワーク領域とに由来する。このヒト軽鎖配列は、定常ドメインのC6と、VL遺伝子K104及びJ6−4(Bentleyら、1980年、Nature 288:5194-5198)の可変フレームワーク領域とに由来する。このマウス配列は、ヒト抗体フレームワークにマウス相補性決定領域を移植する際に用いたプロセスにおいて、マウスモノクローナル抗体Mab1129(Beelerら、1989年、J. Virology 63:2941-2950)から得られた。
【0009】
シナジス(登録商標)は、in vitroにおいて、RSVに対する特異的活性が高く(RespiGam(登録商標)の約50〜100倍)、さらに広範囲のRSV単離株を中和することが知られている。シナジス(登録商標)はヒト血漿から得られたものではないため、これを用いた予防処置には、血液由来の病原菌を伝播するおそれがない。
【0010】
シナジス(登録商標)は、当初、リン酸緩衝生理食塩水中シナジス(登録商標)濃度10mg/mlの静脈内投与用の液体として処方された。シナジス(登録商標)の凍結乾燥製剤は、この最初の液体製剤より、抗体を高い濃度(100mg/ml;6%(w/v)マンニトールを含む、50mMヒスチジン及び3.2mMグリシンの緩衝液(pH6.0)中に再構成後)にすることが可能であり、後に、筋肉内への使用が可能となるように生成された。シナジス(登録商標)の凍結乾燥製剤は、25mMヒスチジン、1.6mMグリシン、及び3%(w/v)マンニトールを含有するpH6.0の水溶液中54mg/mlのシナジス(登録商標)を凍結乾燥して調製する。シナジス(登録商標)の最初のPBS液体製剤及び凍結乾燥製剤は、第1相臨床試験において、健常成人で試験した。凍結乾燥製剤は、第1相試験から第4相試験まで、小児患者で試験した。シナジス(登録商標)は、成人にとって、15mg/kgから30mg/kgまでの用量で十分に許容されると認められており、また、小児にとっては、15mg/kgの用量で、安全かつRSV予防に効果があると認められている。この凍結乾燥製剤は、RSV疾患の危険が高い小児において、RSVによって引き起こされる重篤な下部気道疾患を予防するのに使用することが、1998年にFDAによって承認された。
【0011】
しかし、凍結乾燥製剤には、凍結乾燥のためプロセスが長くなっていること、この結果製造コストが高くなっていることを含めて、多くの制限がある。さらに、凍結乾燥製剤は、患者に投与する前に医療関係者によって、無菌かつ正確に再構成されなければならない。再構成ステップはそれ自体、ある特定の操作手順を必要とする。すなわち、(1)無菌希釈剤(すなわち、静脈内投与用5%ブドウ糖水溶液、及び筋肉内投与用水)を、凍結乾燥シナジス(登録商標)を含有するバイアルに、無菌的にゆっくり添加し、バイアルは、泡立たないように、極めて穏やかに30秒間旋回させなければならない;(2)再構成したシナジス(登録商標)は、溶液が透明になるまで、最低20分間、室温に静置する必要がある;さらに(3)再構成した製剤は、再構成後6時間以内に投与しなければならない。このような再構成の操作手順は扱いが難しく、さらに、再構成後の時間制限があることによって、適切に再構成されなかったり、又は再構成された用量が6時間以内に使用されなかった場合、廃棄しなければならないため、相当な無駄が生じ、この製剤を患者に投与する際に、非常に不便になる可能性がある。
【0012】
したがって、投与前に製剤を再構成する必要がないように、凍結乾燥製剤と同程度か、あるいはより高濃度の、シナジス(登録商標)液体製剤が必要である。これによって、医療関係者が患者にシナジス(登録商標)を投与するのが、はるかに迅速かつ簡便となる。
【0013】
以前の液体抗体製剤は有効期間が短く、保存中に、化学的不安定性及び物理的不安定性によって、抗体の生物学的活性を失う可能性がある。化学的不安定性は、脱アミド、光学不活性化、加水分解、酸化、β脱落又はジスルフィド交換によって引き起こされる可能性があり、また、物理的不安定性は、抗体変性、凝集、沈殿又は吸着によって引き起こされる可能性がある。これらの中で、凝集、脱アミド、及び酸化は、抗体分解の最も一般的な原因であることが知られている(Wangら、1988年、J. of Parenteral Science & Technology 42(Suppl):S4-S26;Clelandら、1993年、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4):307-377)。したがって、RSV感染予防に有効な、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの安定した液体製剤が必要である。
【発明の概要】
【0014】
3.発明の概要
本発明は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの高濃度液体製剤であって、界面活性剤、無機塩、及び/又は他の賦形剤の非存在下において、製造、調製、輸送、及び保存中に、安定であり、抗体断片化及び/又は凝集が検出不可能から低いレベルであり、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの生物学的活性が全く失われないかほとんど失われない製剤の開発に一部基づいている。本発明の液体製剤は、RSV感染又はその1若しくは複数の症状の予防、治療、管理、及び/又は改善のための、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの投与を容易にする。特に、本発明の液体製剤により、凍結乾燥投与剤形で必要とされたような、投与前の正確かつ無菌的な抗体又は抗体フラグメントの再構成を必要とせずに、無菌投与剤形のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを、医療従事者が迅速に投与することが可能となる。液体製剤は、凍結乾燥や、フリーズドライなど、長時間の乾燥ステップを必要としないため、このようなシナジス(登録商標)液体製剤は、凍結乾燥製剤より簡便かつコスト効率よく製造することもできる。この液体製剤を調製するプロセスでは、精製プロセス及び製剤プロセスの間、常時水相中において抗体の製剤化が行われる。液体製剤は、限定されるものではないが、例えば、凍結乾燥、フリーズドライ、噴霧乾燥、又は風乾ステップなどの乾燥ステップを含まないプロセスによって調製するのが好ましい。
【0015】
本発明は、界面活性剤、無機塩、糖、及び/又は他の一般的な賦形剤を実質的に含まないシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤であって、ヒスチジンと、濃度約15mg/ml以上のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントとを含む製剤を提供する。任意により、この製剤はさらにグリシンを含んでもよい。あるいは、本発明の製剤は、糖、ポリオール、並びに、限定されるものではないが、アルギニン、リジン、及びメチオニンなどのアミノ酸など、他の一般的な賦形剤をさらに含むこともできる。本発明は、界面活性剤、無機塩、糖、及び/又は、他の公知の賦形剤を実質的に含まない液体製剤であって、pHが約5.0〜約7.0の範囲、好ましくは約5.5〜6.5の範囲、より好ましくは約5.8〜約6.2の範囲、そして最も好ましくは約6.0であり、ヒスチジンと、濃度約15mg/ml以上のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントとを含む製剤も提供する。
【0016】
本発明は、シナジス(登録商標)の安定化した液体製剤であって、製造、調製、輸送、及び長期保存中に、抗体の凝集及び/又は断片化が検出不可能から低いレベルであり、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの生物学的活性が全く失われないかほとんど失われない製剤を含む。本発明は、改変されていないシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントに比べて、in vivo半減期が長くなっている改変型のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの安定な液体製剤であって、抗体の凝集及び/又は断片化が検出不可能から低いレベルであり、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの生物学的活性が全く失われないかほとんど失われない製剤を含む。
【0017】
本発明は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤であって、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)で評価した際、38℃〜42℃で安定である製剤を含む。本発明の液体製剤は、HSPECで評価した際、38℃〜42℃の温度範囲で少なくとも60日間(特定の実施形態では、120日間以内)、20℃〜24℃の範囲で少なくとも1年間、そして2℃〜8℃の範囲で少なくとも3年間安定である。本発明は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤であって、HPSECで測定した際、凝集が検出不可能から低いレベルである製剤も含む。好ましい実施形態では、本発明の液体製剤は、38℃〜42℃で少なくとも60日間安定であり、かつHPSECで測定した際、抗体凝集が検出不可能から低いレベルであり、さらに、例えばELISAなど、抗体結合アッセイで測定した際、基準抗体と比較して、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの生物学的活性が全く失われないかほとんど失われないものである。
【0018】
本発明は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤を調製する方法を提供する。本発明の液体製剤の調製において、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、調製中のどの時点でも水溶液中に保持される。言い換えれば、この液体製剤の調製では、例えば、凍結乾燥や、真空乾燥など、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントあるいはこの製剤それ自体を乾燥させるいかなるステップも用いられない。
【0019】
本発明は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤を調製する方法であって、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの精製分画を、適当な分子量(mw)カットオフ値(例えば、シナジス(登録商標)及びそのF(ab’)フラグメントには30kDカットオフ;また、Fabフラグメントなどのシナジス(登録商標)フラグメントには、10kDカットオフ)を有する半透膜を用いて、最終濃度約15mg/ml、約20mg/ml、約30mg/ml、約40mg/ml、約50mg/ml、約60mg/ml、約70mg/ml、約80mg/ml、約90mg/ml、約100mg/ml、約200mg/ml、約250mg/ml、又は約300mg/mlに濃縮すること、及び同じ膜を用いて濃縮抗体分画を製剤緩衝液(formulation buffer)中で透析ろ過することを含む方法を提供する。本発明の製剤緩衝液は、約1mMから約100mMまで、約10mMから約50mM、約20mMから約30mM、又は約23mMから約27mMの範囲の濃度で、また最も好ましくは約25mMの濃度でヒスチジンを含む。シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントにとって適切なpHを得るためには、まず、所望のpHより高いpHの緩衝水溶液が得られるように、ヒスチジン(及び、グリシンが添加されている場合には、グリシンも)を水に溶解し、その後HClを添加して、pHを所望の値まで低下させるのが好ましい。このようにすれば、無機塩の形成(例えば、ヒスチジンの供給源に塩酸ヒスチジンを用い、NaOHを添加することでpHを所望の値に引き上げた際のNaCl形成)を避けることができる。
【0020】
本発明の液体製剤は、0.2μフィルター又は0.22μフィルターを用いて、無菌ろ過によって無菌化してもよい。本発明の無菌液体製剤は、RSV感染又はそれに関連した1若しくは複数の症状を、予防、治療、又は改善するために、被験体に投与することができる。
【0021】
本発明は、例えば、医療従事者が用いるためのシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤を含むキットも提供する。本発明はさらに、本発明の液体製剤を投与することによって、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】精製シナジス(登録商標)を調製する概要を示す概略図である。
【図2】シナジス(登録商標)の液体製剤を、シナジス(登録商標)の凍結乾燥製剤と比較するための臨床試験フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
3.1 用語
本明細書において、上記のRSV抗原に免疫特異的に結合するシナジス(登録商標)及び/又はそのフラグメントのすべての液体製剤は、集合的に、「本発明の液体製剤」、「本発明のシナジス(登録商標)液体製剤」、又は「シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤」と称する。
【0024】
本明細書において、「サイトカイン受容体調節薬」という用語は、サイトカイン受容体のリン酸化、サイトカイン受容体と関連するシグナル伝達経路の活性化、及び/又はサイトカインなどの特定のタンパク質の発現をモジュレートする薬剤を指す。そのような薬剤は、サイトカイン受容体のリン酸化、サイトカイン受容体と関連するシグナル伝達経路の活性化、及び/又はサイトカインなどの特定のタンパク質の発現を直接的又は間接的にモジュレートできる。すなわち、サイトカイン受容体調節薬の例には、サイトカイン、サイトカインフラグメント、融合タンパク質、及び免疫特異的にサイトカイン受容体又はそのフラグメントに結合する抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、サイトカイン受容体調節薬の例にはペプチド、ポリペプチド(例えば、可溶性サイトカイン受容体)、融合タンパク質、免疫特異的にサイトカイン又はそのフラグメントに結合する抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、「シナジス(登録商標)フラグメント」及び「抗原結合性フラグメント」という用語、並びにシナジス(登録商標)に関する文脈で用いられる同様の用語は、免疫特異的にRSV抗原に結合するシナジスフラグメントを指す。シナジス(登録商標)フラグメントは、当業者に公知のいかなる技法でも生成できる。例えば、Fab及びF(ab’)フラグメントは、パパイン(Fabフラグメントを生成)又はペプシン(F(ab’)フラグメントを生成)などの酵素を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解による切断で生成できる。F(ab’)フラグメントは完全な軽鎖と、重鎖の可変部、CH1領域、及びヒンジ部とを含有している。このフラグメントは、好ましくはRSV抗原に、より好ましくはシナジス(登録商標)と同じエピトープに結合する。
【0026】
本明細書において、「有効量」という用語は、RSV感染の期間及び/若しくは重症度を軽減するのに、その1若しくは複数の症状を改善する、RSV感染の進行を予防するのに、又はRSV感染の退行を引き起こすのに十分な、あるいは、RSV感染又はその1若しくは複数の症状の発現、再発、発症、若しくは進行の予防をもたらすのに、又は、別の治療(例えば、別の治療薬)の予防効果及び/又は治療効果を促進するか、又は改善するのに十分な治療(例えば、予防薬又は治療薬)の量のことをいう。特定の実施形態では、有効量の治療薬又は予防薬は、ウイルス粒子の細胞への結合、ウイルス遺伝情報の細胞内への導入、ウイルスタンパク質の発現、新規ウイルス粒子の生成、及び細胞からのウイルス粒子の遊離などの、RSVの生活環の複数の過程のうち1又は複数を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%減少させる。別の特定の実施形態では、有効量の治療薬又は予防薬は、ウイルスの複製、増殖又は拡散を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%減少させる。
【0027】
本明細書において、「エピトープ」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、さらに最も好ましくはヒトにおいて、抗原性又は免疫原性活性を有するRSVポリペプチド又はタンパク質の一部分をいう。免疫原性活性を有するエピトープは、動物で抗体応答を引き起こすRSVポリペプチド又はタンパク質の一部分である。抗原活性を有するエピトープは、例えば、本明細書に記載のイムノアッセイなど当技術分野で周知の任意の方法により測定される、抗体が免疫特異的に結合するRSVポリペプチド又はタンパク質の一部分である。抗原エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。具体的には、シナジス(登録商標)のエピトープは、RSVのFタンパク質におけるA抗原部位である。
【0028】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、薬物用の希釈剤、ビヒクル、保存剤、結合剤、又は安定剤として一般的に用いられる不活性物質のことをいい、タンパク質(例えば、血清アルブミンなど)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、グリシン、ヒスチジンなど)、脂肪酸及びリン脂質(例えば、スルホン酸アルキル、カプリル酸など)、界面活性剤(例えば、SDS、ポリソルベート、非イオン表面活性剤など)、糖(例えば、スクロース、マルトース、トレハロースなど)、及びポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)が含まれるが、これらに限定されるものではない。Remington's Pharmaceutical Sciences(Joseph P. Remington, 第18版、Mack Publishing Co., Easton, PA)も参照のこと。この文献を、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。賦形剤は、タンパク質の安定性を増大させたり、タンパク質の溶解度を増強したり、粘着性を減少させたり、製剤に有益な物理学的特性を付与することが好ましい。
【0029】
本明細書において、「フラグメント」という用語は、別のポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基、少なくとも15個の連続したアミノ酸残基、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも80個の連続したアミノ酸残基;少なくとも90個の連続したアミノ酸残基、少なくとも100個の連続したアミノ酸残基、少なくとも125個の連続したアミノ酸残基、少なくとも150個の連続したアミノ酸残基、少なくとも175個の連続したアミノ酸残基、少なくとも200個の連続したアミノ酸残基、又は少なくとも250個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質(抗体を含む)を指す。特定の実施形態では、タンパク質又はポリペプチドのフラグメントは、タンパク質又はポリペプチドの少なくとも1つの機能を保持する。別の実施形態では、タンパク質又はポリペプチドのフラグメントは、タンパク質又はポリペプチドの少なくとも2、3、又は4つの機能を保持する。免疫特異的にRSV抗原に結合する抗体のフラグメントは、RSV抗原に対する結合能を保持することが好ましい。
【0030】
本明細書において、「融合タンパク質」という用語は、第1のタンパク質、ポリペプチド又はフラグメント、これらの類似体又は誘導体のアミノ酸配列と、異種タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列(すなわち、第1のタンパク質又は機能的フラグメント、これらの類似体又は誘導体とは異なる第2のタンパク質、ポリペプチド又はフラグメント、これらの類似体又は誘導体)とを含むポリペプチド又はタンパク質のことをいう。一実施形態では、融合タンパク質は、異種タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに融合した予防薬又は治療薬を含む。この実施形態によると、これらの異種タンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、予防薬又は治療薬と異なる種類であってもよいし、なくてもよい。
【0031】
本明細書において、「ヒト乳幼児」という用語は、月齢24カ月未満、好ましくは16カ月未満、12カ月未満、6カ月未満、3カ月未満、2カ月未満、又は1カ月未満のヒトのことをいう。
【0032】
本明細書において、「ヒト早産児」という用語は、40週間未満の妊娠期間、好ましくは35週間未満の妊娠期間で生まれた6月齢未満、好ましくは3月齢未満、より好ましくは2月齢未満、そして、最も好ましくは1月齢未満のヒトのことをいう。
【0033】
本明細書において、「高濃度」という用語は、抗体製剤中の、RSV抗原に免疫特異的に結合する抗体又はそのフラグメントに関して、50mg/ml又はそれより高い、好ましくは95mg/ml又はそれより高い濃度のことをいう。
【0034】
本明細書において、「宿主細胞」という用語には、核酸分子でトランスフェクト又は形質転換された被験体の細胞、及びそのような細胞の子孫又は潜在的子孫が含まれる。そのような細胞の子孫は、世代の継承中に起こりうる変異若しくは環境的影響のため、又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組み込みのため、核酸分子でトランスフェクトした親細胞と同一ではない可能性がある。
【0035】
本明細書において、「RSV抗原に免疫特異的に結合する」という用語、及び類似の用語は、そのRSV抗原に特異的に結合し、かつ他のポリペプチドには特異的に結合しない抗体又はそのフラグメントのことをいう。RSV抗原に免疫特異的に結合する抗体又はフラグメントは、近縁の抗原と交差反応してもよい。RSV抗原に免疫特異的に結合する抗体又はフラグメントは、他の抗原と交差反応しないのが好ましい。RSV抗原に免疫特異的に結合する抗体又はフラグメントは、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、等温滴定熱量測定、又は当業者に公知の他の技法で同定することができる。抗体又はその抗原結合性フラグメントは、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び酵素結合抗体免疫アッセイ(ELISA)などの実験技術を用いて測定されるように、それが交差反応するどの抗原よりも高い親和性で結合する場合に、特異的にRSV抗原に結合する。抗体特異性に関する議論については、例えば、Paul編集、1989年、Fundamental Immunology、第2版、Raven Press、New York、332-336ページを参照のこと。
【0036】
本明細書において、「併用(組み合わせ)」という用語は、複数の治療(例えば、予防薬及び/又は治療薬)を使用することをいう。「併用(組み合わせ)」という用語の使用においては、RSV感染に罹患した被験体に治療(例えば、予防薬及び/又は治療薬)を投与する順序が限定されない。第1の治療(例えば、予防薬又は治療薬)は、第2の治療(例えば、予防薬又は治療薬)の投与の前(例えば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)に、同時に、後(例えば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)にRSV感染に罹患した被験体に投与することができる。
【0037】
本明細書において、「無機塩」という用語は、酸の水素又は酸の一部又はすべてを、金属又は金属同様に作用する基で置換することで生じる、炭素を含有していない任意の化合物を指し、生物材料の医薬組成物中及び調製物中で、張度調整化合物として用いられることもある。最も一般的な無機塩は、NaCl、KCl、NaHPOなどである。
【0038】
「単離された」抗体又は「精製された」抗体は、このタンパク質が得られた細胞又は組織に由来する細胞性物質又は他の夾雑タンパク質を実質的に含まず、また化学合成された場合には、化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない。「細胞性物質を実質的に含まない」という言葉には、抗体製剤であって、その中でこの抗体ポリペプチド/タンパク質が、これを単離したか、又は組換え型として生成した細胞の細胞成分から分離されている抗体製剤が含まれる。すなわち細胞性物質を実質的に含まない抗体には、約30%、20%、10%、5%、2.5%、又は1%未満(乾燥重量で)の夾雑タンパク質を有する抗体製剤が含まれる。また、抗体が組換え型として生成された場合にも、それに培養液が実質的に含まれないこと、すなわち、培養液がタンパク質製剤の体積の約20%、10%、又は5%未満を占めることが好ましい。抗体が化学合成によって生成された場合には、それに化学前駆体又は他の化学物質が実質的に含まれない、すなわち、タンパク質合成に用いられる化学前駆体又は他の化学物質から分離されていることが好ましい。したがって、そのような抗体製剤は、目的の抗体以外の化学前駆体又は化合物を約30%、20%、10%、又は5%未満(乾燥重量で)有する。本発明の好ましい実施形態では、抗体は、単離されているか、又は精製されている。
【0039】
本明細書において、「凝集が検出不可能から低いレベル」という句は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)で測定されるタンパク質重量において、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、及び最も好ましくは0.5%未満の凝集物を含有する試料のことをいう。
【0040】
本明細書において、「断片化が検出不可能から低いレベル」という用語は、総タンパク質の80%、85%、90%、95%、98%、又は99%に等しいかまたそれより多いタンパク質を、例えば、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)で測定した際に、単一ピークに含み、あるいは、還元キャピラリーゲル電気泳動(rCGE)で2つピーク(重鎖と軽鎖)に含み(これらは、RSV抗原に免疫特異的に結合するシナジス(登録商標)又はそのフラグメントが分解していないことを示す)、かつそれぞれの総タンパク質の5%を超える、4%を超える、3%を超える、2%を超える、l%を超える、又は0.5%を超えるタンパク質を有する他の単一ピークを含まない試料のことをいう。本明細書において、「還元キャピラリーゲル電気泳動法(CGE)」という用語は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントにおけるジスルフィド結合を還元するのに十分な還元条件下におけるキャピラリーゲル電気泳動法のことをいう。
【0041】
本明細書において、「管理する」、「管理すること」、及び「管理」という用語は、RSV感染の治癒をもたらさない治療(例えば、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメント)から被験体が受ける有益な効果のことをいう。ある実施形態では、感染の進行又は悪化を防ぐように、RSV感染又はその症状を「管理する」1又は複数の治療(例えば、予防薬又は治療薬)が被験体に投与される。
【0042】
本明細書において、「改変」という用語は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの改変型に関する文脈で、当技術分野で公知のなんらか方法(例えば、下記の5.1.1章を参照)で、半減期が延長されるように改変されたシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントのことをいう。in vivo半減期が改善されたシナジス(登録商標)及びその抗原結合性フラグメント、並びにそれらを調製する方法は、共にL. Johnsonらによる、"Molecules with Extended Half-Lives, Compositions and Uses"と題する、2001年12月12日公開の国際公開WO02/060919号、及び2001年12月12日出願の米国特許出願10/020354号に開示されており、これらの全体を参照により本明細書に組み入れる。シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントに関して、「改変」という用語は、任意の種類の分子が共有結合でシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントに結合することで、改変されたシナジス(登録商標)又は抗原結合性フラグメントのこともいう。例えば、限定するものではないが、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG付加、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解による切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などによって改変することができる。
【0043】
本明細書において、「薬学的に許容される」という用語は、動物での使用、及び特にヒトにおける使用に関して、連邦政府又は州政府の監督官庁によって承認されているか、米国薬局方協会、欧州薬局方協会又は他の広く認知されている薬局方協会においてリストに記載されていることを意味する。
【0044】
本明細書において、「ポリオール」という用語は、通常の糖と比較して、多くの−OH基を含有する糖のことをいう。
【0045】
本明細書において、「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、RSV感染の再発、発症、発現又は進行を防止又は低減させること、あるいはRSV感染又はその1若しくは複数の症状の重症度及び/又は期間を抑制又は軽減することをいう。
【0046】
本明細書において、「予防薬」という用語は、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防するのに用いることができるいかなる薬剤のこともいう。ある実施形態では、「予防薬」という用語は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントのことをいう。これらの実施形態によると、この抗体又は抗体フラグメントを、本発明の液体製剤の成分とすることもできる。他のある実施形態では、「予防薬」という用語は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントのことを意味しない。さらに他の実施形態では、「予防薬」という用語は、RSV抗原に免疫特異的に結合するシナジス(登録商標)を除いて、抗体又はそのフラグメントを意味しない。予防薬は、RSV感染又はその症状の発症、発現、進行、及び/又は重症度を防止又は妨害するのに有用であると知られているか、かつて使用されたか、又は現在使用されていることが好ましい。
【0047】
本明細書において、「予防上有効な量」という用語は、RSV感染の発現、再発、発症又は進行の予防をもたらすのに十分な本発明の液体製剤の量のことをいう。特定の実施形態では、予防上有効な量の予防薬は、ウイルス粒子の細胞への結合、ウイルス遺伝情報の細胞内への導入、ウイルスタンパク質の発現、新規ウイルス粒子の生成、及び細胞からのウイルス粒子の遊離などの、RSVの生活環の複数の過程のうち1又は複数を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%減少させる。別の特定の実施形態では、予防上有効な量の予防薬は、ウイルスの複製、増殖又は発現を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%減少させる。
【0048】
本明細書において、「RSV抗原」という用語は、抗体が免疫特異的に結合するRSVタンパク質、ポリペプチド又はペプチドのことをいう。
【0049】
本明細書において、「糖」という用語は、多価アルコールである分子クラスのことをいう。糖は、一般的に炭水化物と呼ばれ、例えば、単糖、二糖、及び多糖など、異なる量の糖(サッカライド)単位を含有することができる。
【0050】
「小分子」という用語及び類似の用語には、ペプチド、ペプチドミメティックス、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、モルあたり約10000グラム未満の分子量をもつ有機又は無機化合物(すなわち、異種有機化合物及び/又は有機金属化合物を含む)、モルあたり約5000グラム未満の分子量をもつ有機又は無機化合物、モルあたり約1000グラム未満の分子量をもつ有機又は無機化合物、モルあたり約500グラム未満の分子量をもつ有機又は無機化合物、並びに塩、エステル、及びこれらの化合物の薬学的に許容される他の形態が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本明細書において、「安定性」及び「安定」という用語は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含む液体製剤に関して、所与の製造、調製、輸送、及び保存条件下における、熱及び化学物質による非折りたたみ、凝集、分解又は断片化に対する製剤中のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの耐性のことをいう。本発明の「安定」製剤は、所与の製造、調製、輸送、及び保存条件下において、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は99.5%以上の生物学的活性を保持する。シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの安定性を、限定されるものではないが、還元キャピラリーゲル電気泳動法(rCGE)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳働(SDS−PAGE)、及びHPSECを含めた当業者に公知の方法で、凝集、分解、又は断片化の程度によって、基準試料、すなわち5.6%マンニトールを含む47mMヒスチジン/3mMグリシン緩衝液(pH6.0)中に、100mg/mlに再構成した市販の凍結乾燥シナジス(登録商標)との比較において評価することができる。この基準試料は定常的にHPSECで、単一ピーク(≧97%領域)を与える。RSV抗原に免疫特異的に結合するシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含む液体製剤の総合的な安定性は、例えば、RSV特異的エピトープを用いたELISA及びラジオイムノアッセイを含めた様々な免疫学的アッセイによって評価することができる。
【0052】
本明細書において、「シナジス(登録商標)標準基準試料」という用語、又は、類似の用語は、Physicians' Desk Reference、第56版、2002年に記載にされているように、市販の凍結乾燥シナジス(登録商標)のことをいう。再構成シナジス(登録商標)は、例えば、賦形剤として、47mMヒスチジン、3.0mMグリシン、5.6%マニトールを含み、有効成分として、シナジス抗体を、100mg/mlの濃度の溶液として含むことができる。
【0053】
本明細書において、「被験体」及び「患者」という用語は、互換性を持って用いられる。本明細書において、「被験体」という用語は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、及びマウス)、及び霊長類(例えば、チンパンジー、マカクザルなどのサル、及びヒト)を含めた哺乳動物、並びに、より好ましくはヒトのことをいう。
【0054】
本明細書において、「界面活性剤を実質的に含まない」という用語は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの製剤であって、0.0005%未満、0.0003%未満、又は0.0001%未満の界面活性剤、及び/又は、0.0005%未満、0.0003%未満、又は0.0001%未満の界面活性剤含有する製剤のことをいう。
【0055】
本明細書において、「無機塩を実質的に含まない」という用語は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの製剤にであって、0.0005%未満、0.0003%未満、又は0.0001%未満の無機塩を含有する製剤のことをいう。
【0056】
本明細書において、「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造をもつ、すなわち、反対の溶解傾向をもつ基、通常、脂溶性の炭化水素鎖、及び水溶性イオン基で構成される有機物質のことをいう。表面活性基の電荷によって、アニオン性、カチオン性、及び非イオン性界面活性剤に界面活性剤を分類することができる。界面活性剤は、生物学的物質の様々な医薬組成物及び製剤において湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、及び分散剤としてしばしば用いられる。
【0057】
本明細書において、「治療薬」という用語は、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を治療、管理又は改善するのに用いることができるいかなる薬剤のこともいう。ある実施形態では、「治療薬」という用語は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントのことをいう。これらの実施形態によると、この抗体又は抗体フラグメントを、本発明の液体製剤の成分とすることができる。他のある実施形態では、「治療薬」という用語は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを意味しない。さらに他の実施形態では、「治療薬」という用語は、RSV抗原に免疫特異的に結合するシナジス(登録商標)を除いて、抗体又はそのフラグメントを意味しない。治療薬は、RSV感染又はその1又は複数の症状の治療、管理、又は改善するのに有用であると知られているか、かつて使用されたか、又は現在使用されていることが好ましい。
【0058】
本明細書において、「治療上有効な量」という用語は、RSV感染の進行、重症度及び/又は期間を短縮する又は改善する、並びに/あるいは、RSV感染に関連した1又は複数の症状を改善する本発明の液体製剤の量のことをいう。RSV感染の治療に関して、治療上有効な量とは、ウイルスの複製を抑制するか又は阻害するのに、ウイルスによる細胞の感染を阻害するか又は抑制するのに、ウイルス粒子の生成を阻害するか又は抑制するのに、ウイルス粒子の遊離を阻害するか又は抑制するのに、他の組織又は被験体にウイルスが拡散するのを阻害するか又は抑制するのに、あるいは感染に関連した1又は複数の症状を改善するのに、十分な治療薬の量のことをいう。特定の実施形態では、治療上有効な量の治療薬又は予防薬は、ウイルス粒子の細胞への結合、ウイルス遺伝情報の細胞内への導入、ウイルスタンパク質の発現、新規ウイルス粒子の生成、及び細胞からのウイルス粒子の遊離などの、RSVの生活環の複数の過程のうち1又は複数を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%減少させる。別の特定の実施形態では、治療上有効な量の治療薬又は予防薬は、ウイルスの複製、増殖又は発現を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%減少させる。
【0059】
本明細書において、「療法(therapy)」という用語は、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するのに用いることができるいかなるプロトコール、方法、及び/又は薬剤のことをいうことができる。ある実施形態では、「療法」という用語は、RSV感染の治療に有用な、当業者に公知の生物学的療法、及び/又は他の療法のことをいう。
【0060】
本明細書において、「治療する」、「治療すること」、及び「治療(treatment)」という用語は、RSV感染の進行、重症度、及び/又は期間を短縮又は改善する、並びに/あるいはRSV感染の1又は複数の症状を軽減又は改善することをいう。特定の実施形態では、それらの用語は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の複製の抑制又は阻害、他の組織又は被験体への呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の拡散の阻害又は抑制、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)による細胞の感染の阻害又は抑制、あるいは呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染に関連した1若しくは複数の症状の改善のことをいう。
【0061】
本明細書において、「プロトコール」には、投薬スケジュール及び投薬計画が含まれる。本明細書において、プロトコールとは、使用の方法であり、予防プロトコール及び治療プロトコールが含まれる。
【0062】
本明細書において、「T細胞受容体調節薬」という用語は、T細胞受容体のリン酸化、T細胞受容体に関連したシグナル伝達経路の活性化、及び/又はサイトカインなどの特定のタンパク質の発現をモジュレートする薬剤のことをいう。そのような薬剤は、T細胞受容体のリン酸化、T細胞受容体に関連したシグナル伝達経路の活性化、及び/又はサイトカインなどの特定のタンパク質の発現を、直接又は間接的にモジュレートすることができる。T細胞受容体調節薬の例には、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、及び免疫特異的にT細胞受容体かそのフラグメントに結合する抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、T細胞受容体調節薬の例には、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド(例えば、可溶性T細胞受容体)、融合タンパク質、及びT細胞受容体又はそのフラグメントのリガンドに免疫特異的に結合する抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
本明細書において、「生物学的活性が全く失われていないかほとんど失われていない」という用語は、限定されるものではないが、ELISA及びラジオイムノアッセイを含めた様々な免疫学的アッセイによって測定される、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの特異的結合能を含めた抗体活性のことをいう。一実施形態では、本発明の液体製剤のシナジス(登録商標)又は抗原結合性フラグメントは、RSV抗原に免疫特異的に結合する活性を、当業者に公知か、又は本明細書に記載した免疫学的アッセイによって測定した場合、基準抗体又は抗体フラグメントと比較して、約50%、好ましくは55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%保持する。例えば、液体製剤のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントがRSV抗原に免疫特異的に結合する活性を、シナジス(登録商標)参照標準と比較するのに、ELISAに基づくアッセイを用いることができる。このアッセイでは、プレートをRSV抗原によってコーティングし、設定した濃度のシナジス(登録商標)参照基準試料の結合シグナルを、同じ濃度の試験抗体又は抗体フラグメントの結合シグナルと比較する。
【0064】
4.図面の簡単な説明
図1は、精製シナジス(登録商標)を調製する概要を示す概略図である。
【0065】
図2は、シナジス(登録商標)の液体製剤を、シナジス(登録商標)の凍結乾燥製剤と比較するための臨床試験フローチャートである。
【0066】
5.発明の詳細な説明
本発明の液体製剤は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの即時使用できる製剤を提供する。この液体製剤は、被験体に投与するために、正確かつ無菌的に製剤を再構成する必要がなく、また、製剤を被験体に施す前に、しばらく溶液が透明になるまで待つこともない。これは医療従事者が製剤を被験体に投与する操作手順を簡便化する。その上、保存中の安定性が高いため、本発明の製剤は、長期貯蔵中のタンパク質凝集及び/又は断片化によって、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの生物学的活性へ悪影響を引き起こすことなく、約15mg/mlから約300mg/mlの範囲の濃度で、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含有することができる。そのような安定性により、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの有効性が確実となるだけでなく、被験体への有害な作用を引き起こす潜在的な危険も低減する。さらに、本発明の液体製剤の製造プロセスは、簡便化されており、液体製剤の製造の全段階が水溶液中で行われ、凍結乾燥やフリーズドライなどの乾燥プロセスを必要としないため、凍結乾燥形態の製造プロセスより効率的である。したがって、この製剤は費用効率でもよりすぐれている。
【0067】
5.1 シナジス(登録商標)液体製剤
本発明の液体製剤は、界面活性剤、無機塩、及び/又は他の賦形剤を実質的に含まず、なお長期保存中に高い安定性を示す抗体製剤を提供する。特定の実施形態では、そのような抗体製剤は均質である。本発明の製剤は、1〜100mMの濃度のヒスチジンと、約15mg/mlから約300mg/mlの濃度のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントと含む。一実施形態では、本発明の製剤は、水又は適当な溶剤以外の他の成分を含まない。別の特定の実施形態においては、半減期及び/又は親和性を改善した改変型シナジス(登録商標)抗体又はその抗原結合性フラグメントが、本発明の液体製剤中で用いられる。
【0068】
本発明の液体製剤に含まれているシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの濃度は、少なくとも15mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも35mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも45mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも55mg/m、少なくとも60mg/ml、少なくとも65mg/ml、少なくとも70mg/ml、少なくとも75mg/ml、少なくとも80mg/ml、少なくとも85mg/ml、少なくとも90mg/ml、少なくとも95mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも105mg/ml、少なくとも110mg/ml、少なくとも115mg/ml、少なくとも120mg/ml、少なくとも125mg/ml、少なくとも130mg/ml、少なくとも135mg/ml、少なくとも140mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/ml、少なくとも250mg/ml又は、少なくとも300mg/mlである。
【0069】
本発明の液体製剤に含まれているヒスチジンの濃度は、約1mMから約100mM、約10mMから約50mM、約20mMから約30mM、又は約23mMから約27mMの範囲で、最も好ましくは約25mmである。ヒスチジンは、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、又はこれらの混合物、の形態であることができるが、L−ヒスチジンが最も好ましい。ヒスチジンは、水和物の形態であってもよい。ヒスチジンは、塩酸塩(例えば、一塩酸塩及び二塩酸塩)、臭化水素塩、硫酸塩、酢酸塩など、薬学的に許容される塩の形態で用いられてもよい。ヒスチジンの純度は少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、及び最も好ましくは少なくとも99.5%であるべきである。
【0070】
製剤のpHは、製剤中で用いる特定の抗体の等電点(例えばシナジス(登録商標)の等電点は8.65〜9.43の範囲)とは異なっているべきであり、約5.0〜約7、好ましくは約5.5〜約6.5、より好ましくは約5.8〜約6.2の範囲でもよく、最も好ましくは約6.0である。
【0071】
ヒスチジン及びシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントに加えて、本発明の製剤は、150mM未満、100mM未満、50mM未満、3.0mM未満、2.0mM未満、又はl.8mM、及び最も好ましくはl.6mM以下の濃度でさらにグリシンを含むことができる。製剤中のグリシンの量は、抗体がその等電点において沈殿するのを避けるため、有意の緩衝作用が起きないようにするべきである。グリシンは、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、酢酸塩などの薬学的に許容される塩の形態で用いてもよい。グリシンの純度は、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは99.5%であるべきである。特定の実施形態では、グリシンは本発明の液体製剤に含まれていない。
【0072】
任意選択で、本発明の製剤は、糖(例えば、スクロース、マンノース、トレハロースなど)やポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)など、さらに他の賦形剤を含んでもよい。一実施形態では、他の賦形剤は糖である。特定の実施形態では、糖はスクロースであり、その濃度範囲は約1%と約20%の間、好ましくは約5%と約15%の間、より好ましくは約8%と10%の間である。別の実施形態では、他の賦形剤はポリオールである。しかし、本発明の液体製剤は、マンニトールを含有しないことが好ましい。特定の実施形態では、ポリオールはポリソルベート(例えば、Tween20(登録商標)(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート))であり、その濃度範囲は約0.001%と約1%の間、好ましくは約0.01%と約0.1%の間である。
【0073】
本発明の液体製剤は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)で測定したとき、38℃〜42℃の温度領域で少なくとも60日間安定であり、ただしある実施形態では、これは120日間以上ではなく、20℃〜24℃では、少なくとも1年間、2℃〜8℃(特に4℃で)では、少なくとも3年間、少なくとも4年間、又は少なくとも5年間、さらに−20℃では、少なくとも3年間、少なくとも4年間、又は少なくとも5年間にわたり安定である。すなわち、本発明の液体製剤は、上記に詳述した特定の期間の保存の後、本明細書の定義において、凝集及び/又は断片化が検出不可能又は低レベルである。好ましくは、上記に詳述した特定期間の保存後、HPSECで測定したとき、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、l%以下、及び最も好ましくは0.5%以下が凝集を形成する。さらに、本発明の液体製剤は、上記の条件での長期保存中、例えばシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントのRSV抗原結合性可能性を測定する酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)及びラジオイムノアッセイ、又は、例えばシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの補体活性化能を測定するC3a/C4aアッセイなどが含まれる様々な免疫学的アッセイによって評価した場合に、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの生物学的活性をほとんど失わない。本発明の液体製剤は、上記特定期間の保存後に、保存前の初期の生物学的活性の80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は99.5%以上を保持する。
【0074】
本発明の液体製剤は、単位投与剤形として調製することができる。例えば、1バイアルあたりの1単位用量は、濃度約15mg/mlから約300mg/mlの範囲にある、種々の濃度の、RSVに免疫特異的に結合するシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、15ml、又は20ml含有してもよい。必要なら、無菌希釈剤を各バイアルに添加することによって、望ましい濃度にこれらの調製を調整することができる。
【0075】
5.1.1.シナジス(登録商標)
本発明はシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含む液体製剤に関する。好ましい実施形態では、本発明は、広範囲なRSV単離株を中和するヒト化されたモノクローナル抗体であるシナジス(登録商標)の液体製剤を提供する。シナジス(登録商標)のアミノ酸配列は、例えば、Johnsonら、1997年、J. Infectious Disease 176:1215-1224,及び米国特許第5824307号に開示されており、そのVCDR及びVCDRを下記の表1に示す。シナジス(登録商標)の特性及び使用に関しては、例えば、他の出願に開示されており、例えば、2000年11月28日出願の米国特許出願第09/724396号;2001年11月28日出願の米国特許出願第09/996265号;2003年3月31日出願の米国特許出願第10/403180号を参照のこと。これらのすべてを参照により本明細書に組み入れる。
【表1】

【0076】
さらに、本発明は、半減期を改善した改変型シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの安定化液体製剤も包含する。詳細には、本発明は、被験体において、好ましくはヒトにおいて、3日間を超える、7日間を超える、10日間を超える、好ましくは15日間を超える、25日間を超える、30日間を超える、35日間を超える、40日間を超える、45日間を超える、2カ月を超える、3カ月を超える、4カ月を超える、又は、5カ月を超える半減期を有する改変型シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを包含する。シナジス(登録商標)及びその抗原結合性フラグメントの半減期を延長することによって、抗体又は抗原結合性フラグメント投与の量、及び/又は投与頻度を低減することが可能である。
【0077】
in vivoでの抗体の血清循環を延長するために、様々な技法を用いることができる。例えば、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)などの不活性なポリマー分子を、多機能リンカーを用いて又は用いずに、抗体のN末端若しくはC末端にPEGを部位特異的に結合させるか、又はリジンのもつイプシロンアミノ基を介して、抗体に結合することができる。生物学的活性の喪失が最小となる、直鎖状又は分枝鎖状のポリマー誘導体化を用いることができる。抗体にPEG分子の適切な結合を確実にするために、SDS−PAGE及び質量分析によって結合の度合いを詳しくモニターすることができる。反応しなかったPEGは、サイズ排除クロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーで抗体PEG結合体から分離することができる。PEGで誘導体化した抗体の結合活性及びin vivoでの有効性を、例えば、本明細書に記載のイムノアッセイなど、当業者に公知の方法で試験することができる。
【0078】
in vivoでの半減期を延長した抗体は、1又は複数のアミノ酸改変(すなわち、置換、挿入又は欠失)を、免疫グロブリン定常ドメイン、又はそのFcRn結合フラグメント(好ましくはFc又はヒンジFcドメイン・フラグメント)に導入することによって生成することができる。例えば、国際公開WO98/23289号;国際公開WO97/34631号、及び米国特許第6,277,375号を参照。これらそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れる。in vivo半減期を延長したシナジス(登録商標)及びその抗原結合性フラグメント、並びにそれらを調製する方法は、共にL. Johnsonらによる、"Molecules with Extended Half-Lives, Compositions and Uses"と題する、2001年12月12日公開の国際公開WO02/060919号、及び2001年12月12日出願の米国特許出願10/020354号に開示されており、これらの全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0079】
抗体又はその抗原結合性フラグメントを、in vivoでより安定にするため、すなわちin vivoにおける半減期を延長するため、抗体にアルブミンを結合することができる。この技法は当技術分野で周知であり、例えば、国際公開WO93/15199号、WO93/15200号、及びWO01/77137号;及び欧州特許第EP413622号を参照のこと。これらすべてを参照により本明細書に組み入れる。
【0080】
本発明はさらに、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG付加、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解による切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などで改変され、かつRSV抗原結合性活性を保持するシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤を含む。
【0081】
5.1.2.抗体複合体
本発明は、限定されるものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣薬、合成薬、無機分子、及び有機分子を含む1又は複数の基に結合したシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメント(in vivoでの半減期を延長した改変型を含めた)の液体製剤の使用も包含する。
【0082】
本発明は、融合タンパク質を生成するため、異種タンパク質又はポリペプチド(又は抗原結合性フラグメント、好ましくは少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個又は少なくとも100個のアミノ酸からなるポリペプチド)に組換えにより融合したか、又は化学的に結合した(共有結合及び非共有結合の両方を含める)シナジス(登録商標)の液体製剤の使用を包含する。融合は、必ず直接的である必要がなく、リンカー配列を介してなされてもよい。例えば、抗体は、in vitro又はin vivoで、特定の細胞表面受容体に特異的な別の抗体に融合又は結合することによって、異種ポリペプチドに特定の細胞型を標的化するのに用いることができる。異種ポリペプチドに融合又は結合した抗体は、当技術分野で公知の方法を用いて、in vitroイムノアッセイ及び精製方法において用いることもできる。例えば国際公開WO93/21232号;欧州特許第EP439095号;Naramuraら1994年、Immunol. Lett. 39:91-99;米国特許第5,474,981号;Gilliesら、1992年,PNAS 89:1428-1432;及び、Fellら、1991年J. Immunol. 146:2446-2452を参照のこと。これらを参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0083】
本発明はさらに、シナジス(登録商標)の抗原結合性フラグメントに融合又は結合された異種タンパク質、ペプチド、又はポリペプチドを含む組成物も含む。例えば、異種ポリペプチドを、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、又はF(ab)フラグメントに融合又は結合させることができる。抗体部分にポリペプチドを融合又は結合する方法は当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、及び第5,112,946号;欧州特許第EP307434号及び第EP367166号;国際公開WO96/04388号及びWO91/06570号、Ashkenaziら、1991年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535-10539;Zhengら、1995年、J. Immunol. 154:5590-5600;及びViiら、1992年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-11341を参照のこと(すべての引用文献を参照により、その全体を本明細書に組み入れる)。
【0084】
遺伝子シャッフリング、モチーフ・シャッフリング、エキソン・シャッフリング、及び/又はコドン・シャッフリング(集合的に「DNAシャッフリング」と呼ばれる)の技法を用いて、融合タンパク質をさらに生成することもできる。DNAシャッフリングは、シナジス(登録商標)又はそのフラグメントの活性を変化させる(例えばより高い親和性及びより低い解離速度を有する抗体又はその抗原結合性フラグメント)のに用いることができる。全般的には、米国特許第5,605,793号、第5,811,238号、第5,830,721号、第5,834,252号、及び第5,837,458号、並びにPattenら、1997年、Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33;Harayama、1998年、Trends Biotechnol. 16(2):76-82;Hanssonら、1999年、J. Mol. Biol. 287:265-76;及びLorenzo and Blasco, 1998年, Biotechniques 24(2):308-313を参照のこと。(これら特許及び刊行物の各々の全体を参照により本明細書に組み入れる)。シナジス(登録商標)若しくはその抗原結合性フラグメント、又はシナジス(登録商標)若しくはその抗原結合性フラグメントをコードする核酸に、誤りを起こしやすいPCR法、組み換えの前のランダムヌクレオチド挿入又は他の方法でランダム変異を導入し改変することができる。シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、1又は複数の異種分子の1又は複数の構成要素、モチーフ、節、部分、ドメイン、フラグメントなどで組換えることができる。
【0085】
さらに、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、精製を容易にするためにペプチドなどのマーカー配列に融合することができる。好ましい実施形態では、マーカー・アミノ酸配列は、市販の他の多数のものの中でもとりわけ、pQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA, 91311)に提供されているタグなどのヘキサヒスチジン・ペプチドである。例えば、Gentzら、1989年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されるように、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の精製を簡便にする。他の精製に有用なペプチドタグには、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する赤血球凝集素である「HA」タグ、(Wilsonら、1984年、Cell 37:767)及び「flag」タグが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
本発明は、診断用薬剤、検出可能薬剤、又は血清半減期の延長が望まれる他の任意の分子に結合したシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤も包含する。そのような抗体は、臨床試験手順の一部として、特定の治療の有効性を判定するためなど、RSV感染の発現又は進行をモニター、又は予後診断するのに有用となる可能性がある。そのような診断及び検出は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを、限定されるものではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼなどの様々な酵素;限定されるものではないが、ストレプトアビジン、ビオチン、及びアビジン/ビオチンなどの補欠分子族;限定されるものではないがウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン、フルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリンなどの蛍光物質;限定されるものではないが、ルミノールなどの発光物質;限定されるものではないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンなどの生物発光性物質;限定されるものではないがヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、及びテクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、及び117Tinなどの放射性物質;様々なポジトロン放射断層撮影を用いたポジトロン放出金属、非放射性常磁性金属イオン、並びに特異的な放射性同位元素で放射性標識された又は結合した分子を含む、検出可能な物質にカップリングすることによって、実行することができる。検出可能な物質は、直接シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントにカップリング又は結合することもできるし、又は、間接的に当技術分野で公知の技法を用いて中間体(例えば当技術分野で公知のリンカーなど)を介してカップリング又は結合することもできる。本発明によって、診断薬として使用される抗体に結合できる金属イオンに関しては、例えば、米国特許第4,741,900号を参照のこと。
【0087】
本発明はさらに、治療用部分に結合したシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの使用も包含する。抗体又は抗原結合性フラグメントは、例えば、細胞毒、例えば、細胞増殖抑制剤、若しくは細胞破壊薬、治療薬、又は放射性金属イオン、例えば、α放射体などの治療用部分に結合することができる。細胞毒又は細胞毒性薬剤には、細胞に有害な任意の薬剤が含まれる。これらの例には、パクリタクセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポサイド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジオキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロ試験ステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン、並びにこれらの類似体又はホモログが含まれる。治療用部分には、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、及び6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、ダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロエタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシスジクロロジアミン、プラチナ(II)(DDP)、シスプラチン);アントラサイクリン系(例えば、ダウノルビシン(以前ダウノマイシン)、ドキソルビシン);抗生物質類(例えば、ダクチノマイシン(以前アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC));アウリスタチン分子(例えば、アウリスタチンPHE、ブリオスタチン1、ソラスタチン10(Woykeら、Antimicrob. Agents Chemother. 46:3802-8(2002), Woykeら、Antimicrob. Agents Chemother. 45:3580-4(2001), Mohammadら、Anticancer Drugs 12:735-40(2001), Wallら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 266:76-80(1999), Mohammadら、Int. J. Oncol. 15:367-72(1999)を参照。これらすべてを参照により本明細書に組み入れる);有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン);ホルモン(例えば、グルココルチコイド、プロジェスタチン、アンドロゲン、及びエストロゲン);DNA修復酵素阻害剤(例えば、エトポシド又はトポテカン);キナーゼ阻害剤、(例えば、化合物ST1571、メシル酸イマチニブ(Kantarjianら、Clin Cancer Res. 8(7):2167 76(2002))、並びに、米国特許第6,245,759号、第6,399,633号、第6,383,790号、第6,335,156号、第6,271,242号、第6,242,196号、第6,218,410号、第6,218,372号、第6,057,300号、第6,034,053号、第5,985,877号、第5,958,769号、第5,925,376号、第5,922,844号、第5,911,995号、第5,872,223号、第5,863,904号、第5,840,745号、第5,728,868号、第5,648,239号、及び第5,587,459号に開示された化合物)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、R115777、BMS214662、並びに米国特許第6,458,935号、第6,451,812号、第6,440,974号、第6,436,960号、第6,432,959号、第6,420,387号、第6,414,145号、第6,410,541号、第6,410,539号、第6,403,581号、第6,399,615号、第6,387,905号、第6,372,747号、第6,369,034号、第6,362,188号、第6,342,765号、第6,342,487号、第6,300,501号、第6,268,363号、第6,265,422号、第6,248,756号、第6,239,140号、第6,232,338号、第6,228,865号、第6,228,856号、第6,225,322号、第6,218,406号、第6,211,193号、第6,187,786号、第6,169,096号、第6,159,984号、第6,143,766号、第6,133,303号、第6,127,366号、第6,124,465号、第6,124,295号、第6,103,723号、第6,093,737号、第6,090,948号、第6,080,870号、第6,077,853号、第6,071,935号、第6,066,738号、第6,063,930号、第6,054,466号、第6,051,582号、第6,051,574号、及び第6,040,305号に開示された化合物);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン、イリノテカン、SN38、トポテカン、9アミノカンプトテシン、GG211(GI 147211)、DX 895lf、IST622、ルビテカン、ピラゾロアクリジン、XR 5000、サイントピン、UCE6、UCE1022、TAN 1518A、TAN1518B、KT6006、KT6528、ED110、NB506、ED110、NB506、レベッカマイシン、及びブルガレイン)Hoescht dye 33342及びHoechst dye 33258、ニチジン(nitidine)、ファガロニン(fagaronine)、エピベルベリン(epiberberine)、コラリン(coralyne)、ベータラパコン、BC 4lなどのDNA副溝結合物質、並びに、これらの薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、クラスレート、及びプロドラッグが含まれるが、これらに限定されるものではない(例えば、Rothenberg, M.L., Annals of Oncology 8:837 855(1997);及びMoreauら、J. Med. Chem. 41:1631 1640(1998)参照)。治療用部分は、アンチセンス・オリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,277,832号、第5,998,596号、第5,885,834号、第5,734,033号、及び第5,618,709号に開示した化合物);免疫調節剤(例えば、抗体とサイトカイン);抗体(例えば、イリツキシマブ(リツキサン(登録商標))、カリキアマイシン(calicheamycin)(Mylotarg(登録商標))、イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin(登録商標))、及びトシツモマブ(Bexxar(登録商標));及びアデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、リン酸フルダラビン及び2−クロロデオキシアデノシン)でもよい。
【0088】
さらに、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、所与の生物学的反応を改変する治療用部分又は薬剤部分に結合させてもよい。治療用部分又は薬剤部分は、解釈を古典的な化学治療薬に限定するべきではない。例えば、薬剤部分は、望ましい生物学的活性があるタンパク質又はポリペプチドであってもよい。そのようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、プソイドモナスエキソトキシン、コレラトキシン、又はジフテリアトキシンなどの毒素、TNF、αインターフェロン、βインターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベータ、アポトーシス薬、例えば、TNF−α、TNF−β、AIM I(国際公開WO97/33899号参照)、AIM II(国際公開WO97/34911号参照)、Fasリガンド(Takahashiら, 1994, J. Immunol., 6:1567-1574)、VEGF(国際公開WO99/23105号参照)、又は、例えば、リンフォカイン(例えば、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−4(「IL−4」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12(IL−12)、インターフェロン−α、β、γ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、及び顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、又は増殖因子(例えば、成長ホルモン(「GH」))などの生物反応調節剤であってもよい。
【0089】
さらに、放射性金属イオン、例えば、213Biなどのα放射体、又は、限定されるものではないが、1311n、131LU、131Y、131Ho、131Smを含む放射性金属イオンをポリペプチドに結合するのに有用な大環状キレート剤などの治療用部分に、抗体を結合することができる。ある実施形態では、大環状キレート剤は、リンカーを介して抗体に結合可能な1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N,’N’’,N’’’四酢酸(DOTA)である。そのようなリンカー分は、一般的に当技術分野で公知であり、Denardoら、1998, Clin Cancer Res. 4(10):2483-90;Petersonら、1999, Bioconjug. Chem. 10(4):553-7;及びZimmermanら、1999, Nucl. Med. Biol. 26(8):943-50に記載されている。これらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0090】
抗体に治療用部分を結合する技法は周知であり、例えば、Arnonら、"Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら編、243-56(Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstromら、"Antibodies For Drug Delivery", Controlled Drug Delivery第2版Robinsonら編、623-53(Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review", Monoclonal Antibodies 84:Biological And Clinical Applications, Pincheraら編、475-506(1985);"Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら編、303-16(Academic Press 1985),及びThorpeら、1982, Immunol. Rev. 62:119-58を参照。
【0091】
あるいは、Segalによって、米国特許第4,676,980号(この全体を参照により本明細書に組み入れる)に記載されるように、二次抗体にシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを結合させて、抗体異種結合体を形成させることもできる。
【0092】
シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、固相担体に結合させてもよく、これは特に、標的抗原のイムノアッセイ又は精製に有用である。そのような固相担体には、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール又はポリプロピレンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントに結合される治療用部分又は薬剤は、被験体におけるRSV感染に望ましい予防効果又は治療効果を達成するように選ばれるべきである。どの治療用部分又は薬剤にシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントに結合するかを決める際、臨床医又は他の医学専門家は、感染の重症度及び被験体に関する条件を考慮するべきである。
【0094】
それに結合された治療用部分の有無にかかわらず、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、治療薬として用いることができる。
【0095】
5.2.抗体製剤の調製方法
本発明は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤を調製する方法を提供する。図1は精製シナジス(登録商標)を調製する概要を示す概略図である。本発明の液体製剤を調製する方法は、ならし培地(培養物の単一のロット又はプールされたロットのいずれか)から抗体を精製するステップ、並びに、精製シナジス(登録商標)を含有する分画を、適当な分子量(mw)カットオフ値(例えば、完全抗体分子及びそのF(ab’)フラグメントには30kDカットオフ;また、Fabフラグメントなどの抗体フラグメントには、10kDカットオフ)を有する半透膜を用いて、最終抗体濃度が約15mg/ml、約20mg/ml、約30mg/ml、約40mg/ml、約50mg/ml、約60mg/ml、約70mg/ml、約80mg/ml、約90mg/ml、約100mg/ml、約150mg/ml、約200mg/ml、約250mg/ml、又は約300mg/mlとなるように濃縮するステップ、並びに同じ膜を用いて濃縮抗体分画を製剤緩衝液中で透析ろ過するステップを含む。本発明の製剤緩衝液は、約1mMから約100mM、約10mMから約50mM、約20mMから約30mM、又は約23mMから約27mMの濃度で、また最も好ましくは約25mMの濃度でヒスチジンを含む。製剤は、さらに濃度100mM未満、50mM未満、3.0mM未満、2.0mM未満、又は1.8mM未満、そして最も好ましくは1.6mMのグリシンを含むことができる。製剤中のグリシンの量は、抗体がその等電点において沈殿するのを避けるため、有意な緩衝作用が起きないようにするべきである。製剤のpHは、約5.0〜約7.0、好ましくは約5.5〜約6.5、より好ましくは約5.8〜約6.2の範囲でよく、そして、最も好ましくは約6.0である。特定の抗体にとって適切なpHを得るためには、まず、所望のpHより高いpHの緩衝水溶液が得られるように、ヒスチジン(及び、グリシンが添加されている場合には、グリシンも)を水に溶解し、その後HClを添加して、pHを所望の値まで低下させるのが好ましい。このようにして、無機塩の形成(例えば、ヒスチジンの供給源に塩酸ヒスチジンを用い、NaOHを添加することでpHを所望の値に引き上げた際のNaCl形成)を避けることができる。
【0096】
本発明の液体製剤は、1回の使用のための液体製剤を1アリコート含むバイアルを調製することによって、単位投与剤形として調製することができる。例えば、1バイアルあたりの1単位用量は、濃度約15mg/mlから約300mg/mlの範囲にある、異なった濃度の、RSVに免疫特異的に結合するシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、15ml、又は20ml含有してもよい。必要なら、滅菌希釈剤を各バイアルに添加することによって、望ましい濃度にこれらの調製物を調整することができる。
【0097】
本発明の液体製剤は、無菌ろ過、放射線照射などを含めた、様々な滅菌方法で無菌化できる。最も好ましい実施形態では、透析ろ過された抗体製剤を、あらかじめ滅菌してある0.2μm又は0.22μmのマイクロフィルターを用いて、ろ過滅菌する。本発明の滅菌液体製剤は、RSV感染又はその1又は複数の症状を、予防、治療、管理、又は改善するために、被験体に投与することができる。
【0098】
本発明は凍結乾燥されていない液体製剤を対象としているが、均等物の目的として、所望であれば本発明の製剤を凍結乾燥してもよいことに注意すべきである。したがって、そのような凍結乾燥した製剤は、必要なく、したがって好ましくないが、本発明は、本発明の製剤の凍結乾燥した形態も包含する。
【0099】
5.3.シナジス(登録商標)を調製する方法
本発明の液体製剤に含まれるシナジス(登録商標)及びその抗原結合性フラグメントは、抗体を合成するために当技術分野で公知のいかなる方法でも調製することができ、具体的には、化学合成によって、好ましくは組換え発現技法によって調製することができる。
【0100】
シナジス(登録商標)の重鎖及び軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列は、例えば、Youngらによる、2000年11月28日出願の同時係属出願第09/724396号、及び2001年11月28日出願の第09/996265号から得ることができ、これら両出願を参照によりその全体を本明細書に組み入れる。Johnsonらによる米国特許第5,824,307号も参照されたい。ある実施形態では、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントをコードする核酸は、当技術分野で周知であるように、化学的に合成するか、又はオリゴヌクレオチドから組み立てることができ、その後、当技術分野で公知のPCR法、クローニング又は他の方法で増幅できる。
【0101】
抗体(シナジス(登録商標)などの)の組換え発現は、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターの構築を必要とする。抗体分子、又は抗体の重鎖若しくは軽鎖、あるいはそれらの抗原結合性フラグメントをコードするヌクレオチド配列を得た後、抗体分子生産用のベクターは、前節で論じたように当技術分野で周知の技法を用いて、組換えDNA技法で生成できる。抗体をコードする配列と、適切な転写制御シグナル及び翻訳制御シグナルとを含有する発現ベクターは、当業者に周知の方法を用いて構築できる。これらの方法には、例えばin vitroの組換えDNA技法、合成技法、及びin vivoの遺伝的組換えが含まれる。重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖及び軽鎖の両可変領域、重鎖及び/又は軽鎖可変領域のエピトープ結合フラグメント、あるいは、抗体の1又は複数の相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチド配列を、そのような発現用のベクターにクローニングすることができる。このように調製された発現ベクターは、その後の抗体発現のために、適当な宿主細胞に導入することができる。したがって、本発明は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を含む。
【0102】
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、すなわち重鎖由来のポリペプチドをコードする第1のベクターと、軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクターとで、共トランスフェクトすることができる。この2つのベクターは、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの発現を同程度にすることが可能となるように、同一の選択可能マーカーを含むこともできるし、又は、両方のプラスミドの維持が確実となるように異なった選択可能マーカーを含むこともできる。あるいは、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、かつ両方を発現することができる単一のベクターを用いることもできる。そのような状況では、軽鎖を重鎖の前に配置して、毒性のある遊離重鎖が過剰に発現されないようにするべきである(Proudfoot, Nature, 322:52, 1986;及びKohler, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:2 197, 1980)。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNAを含んでも、ゲノムDNAを含んでもよい。
【0103】
組換え抗体を長期間にわたり、高い収率で生産するためには、安定した発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定して発現する細胞系を構築することができる。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを用いるよりむしろ、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)と選択可能マーカーとによって制御されているDNAで、宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入に続いて、遺伝子操作した細胞を栄養価の高い培溶液中で1〜2日間増殖させ、その後選択培地に切り換えることができる。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を与えて、細胞がそれらの染色体にプラスミドを安定に組込み、増殖してコロニー(focus)を形成できるようにする。これらのコロニーは、次にクローン化され、それを倍化することによって細胞系が得られる。この方法は、抗体分子を発現する細胞系を構築するのに、有利に用いることができる。このように遺伝子操作された細胞系は、抗体分子と直接相互作用する組成物のスクリーニング及び評価を行う際に特に有用でありうる。
【0104】
それぞれtk細胞、hgprt細胞、aprt細胞で用いることのできる、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら, Cell, 11:223, 1977)、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:202, 1992)、そしてアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら, Cell, 22:8-17, 1980)を含む多くの選択系が使用可能であるが、これらに限定されるものではない。また、代謝拮抗剤耐性に基づいて、下記の遺伝子を選択することができる。メトトレキセートに対する耐性を与えるdhfr(Wiglerら, NatLl Acad. Sci. USA, 77:357, 1980及びO'Hareら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 78:1527, 1981);ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:2072, 1981);アミノグルコシドG−418に対する耐性を与えるneo(Wu and Wu, Biotherapy, 3:87-95, 1991;Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 32:573-596, 1993;Mulligan, Science, 260:926-932, 1993;及びMorgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem., 62:191-217, 1993;及びMay, TIB TECH, 11(5):155-2 15, 1993);及び、ハイグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerreら, Gene, 30:147, 1984)。組換えDNA技法の分野において周知の方法は、所望の組換クローンを選択するため、日常的に適用することができ、そのような方法は、例えば、Ausubelら(編), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY;Kriegler, 1990, Gene Transfer and Expression. A Laboratory Manual, Stockton Press, NY;Chapters 12 and 13, Dracopoliら(編), 1994, Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY;並びにColberre-Garapinら, J. Mol. Biol., 150:1, 1981に記載されている。これらを参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0105】
ベクターを増幅することで、抗体分子の発現レベルを増大させることができる(総説として、Bebbington and Hentschel, 1987, The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning, Vol.3. Academic Press, New Yorkを参照)。抗体を発現するベクター系のマーカーが増幅可能なものである場合には、宿主細胞培養中にある阻害剤のレベルを増大させることで、マーカー遺伝子のコピー数が増加されるであろう。増幅された領域に抗体遺伝子も存在するため、抗体産生も増大されるであろう(Crouseら, Mol., Cell. Biol., 3:257, 1983)。
【0106】
本発明の抗体分子を組換え発現で生成した場合、その抗体分子は、免疫グロブリン分子の精製に用いられる、当技術分野で公知のいかなる方法でも精製することができ、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、特にプロテインA精製後の特異的抗原用アフィニティクロマトグラフィーによって、そしてサイズクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解、又はタンパク質精製用のいかなる他の標準的な技法によってでも精製することができる。さらに、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、本明細書に記載されているか、又はそうでなければ当技術分野で精製を容易にすると知られている異種タンパク質、ポリペプチド又はペプチド配列に融合することができる。
【0107】
RSVに免疫特異的に結合する、シナジス(登録商標)の抗原結合性フラグメントは、公知の技法によって生成することができる。例えば、Fab及びF(ab’)フラグメントは、パパイン(Fabフラグメントを生成する)、又はペプシン(F(ab’)フラグメントを生成する)を用いて、免疫グロブリン分子をタンパク質分解することによって生成することができる。F(ab’)フラグメントは完全な軽鎖と、重鎖の可変部、CH1領域、及びヒンジ部とを含有している。
【0108】
5.4.抗体製剤の安定性及び凝集をモニターする方法
抗体製剤を含めた、タンパク質製剤の安定性を評価する様々な方法が利用可能であり、タンパク質の物理的、化学的構造に基づいた方法や、タンパク質の生物学的活性に基づいた方法がある。例えば、タンパク質の変性を検討するためには、電荷移動吸収、熱分析、蛍光分光法、円偏光二色性、NMR、HPSECなどの方法が利用可能である。例えば、Wangら, 1988, J. of Parenteral Science & Technology 42(supp):S4-S26を参照のこと。rCGE及びHPSECは、タンパク質凝集、タンパク質分解、及びタンパク質断片化の形成を評価する、最も一般的で、かつ最も単純な方法である。したがって、本発明の液体製剤の安定性は、これらの方法で評価することができる。
【0109】
例えば、本発明の液体製剤の安定性は、HPSEC又はrCGEによって評価することができ、この場合、ピークの領域占有率が、分解されていないシナジス(登録商標)又は分解されていないシナジス(登録商標)の抗原結合性フラグメントを表す。詳細には、約250μgのシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメント(約10mg/mlのシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含む液体製剤約25μl)を、TASK SW x1ガードカラム(6.0mm×4.0cm)に取り付けたTOSOH TSK G3000SWXLカラム(7.8mm×30cm)に注入する。シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、流速0.8〜1.0ml/分にて、0.1M硫酸ナトリウム及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する0.1Mリン酸水素二ナトリウムで、定組成溶出する。溶出するタンパク質は、280nmにおけるUV吸光度を用いて検出する。シナジス(登録商標)標準基準試料をコントロールとしてアッセイに含め、結果は、製品のモノマーが示すピーク領域の比率として、約12〜14分に観測されるボリュームピークを除いた他の全てのピークとの比較において示される。モノマーピークより早く溶出するピークは、凝集比率として記録される。
【0110】
本発明の液体製剤は、HPSEC又はrCGEで測定した場合に、凝集が検出不可能から低いレベルであり、すなわち、凝集が、タンパク質重量あたり5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、そして、最も好ましくは0.5%以下であり、かつ断片化が検出不可能から低いレベルであり、すなわち、完全抗体又はそのフラグメントを表すピーク領域が全ピーク領域の80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上、又は99.5%以上である。SDS−PAGEの場合には、放射性同位元素で標識されたか、又は染色された各バンドの密度又は放射能が測定でき、分解されていないシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを表す、バンドの%密度又は%放射能を得ることができる。
【0111】
本発明の液体製剤の安定性は、製剤中のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの生物学的活性を測定するいかなるアッセイでも評価できる。抗体の生物学的活性には、限定されるものではないが、抗原結合活性、補体活性化活性、Fc受容体結合活性などが含まれる。シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの抗原結合活性は、限定されるものではないがELISA、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロットなどを含む、当業者に公知のいかなる方法によっても測定することができる。補体活性化活性は、補体成分の存在下にて、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを、RSV抗原を発現している細胞と反応させる系において、C3a/C4aアッセイを行うことによって、測定できる。Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版、1988年)も参照されたい。(この文献を参照により、その全体を本明細書に組み入れる)。ELISAに基づくアッセイを用いて、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤がRSV抗原に免疫特異的に結合する活性を、シナジス(登録商標)標準基準試料と比較することができる。このアッセイでは、プレートをRSV抗原(具体的には、RSVのFタンパク質のA抗原部位)でコーティングし、設定した濃度のシナジス(登録商標)標準基準試料が示す結合シグナルを、同じ濃度のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤が示す結合シグナルと比較する。
【0112】
本発明の抗体液体製剤の純度は、例えば、HPSECなど、当業者に周知のいかなる方法で測定されてもよい。抗体液体製剤の滅菌は以下の通りにして評価できる。試験抗体液体製剤を通常の0.45μm孔系をもつ滅菌フィルターを通してろ過することによって、滅菌大豆カゼイン消化物培養液及び液状チオグリコレート培養液に接種する。Sterisure(商標)又はSteritest(商標)メソッドを用いる場合、滅菌操作によって各フィルター装置を、約100mlの滅菌大豆カゼイン消化物培養液又は液状チオグリコレート培養液で満たす。在来の方法を用いる場合には、曝露されたフィルターを滅菌操作で100mlの滅菌大豆カゼイン消化物培養液又は液状チオグリコレート培養液に移す。培養液を適当な温度でインキュベートし、14日間にわたって3回、細菌又は真菌が増殖している証拠があるか観察する。
【0113】
5.5.抗体製剤の予防及び治療用途
本発明は、抗体に基づく治療も対象としており、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するための本発明の液体抗体製剤を、被験体、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトに投与するものである。本発明の予防用及び治療用製剤は、ヒスチジンを含む溶液中に約15mg/mlから約300mg/mlの濃度のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含む。
【0114】
本発明の液体製剤は、RSV抗原に免疫特異的に結合する公知の抗体(例えば、無改変シナジス(登録商標))に比べ延長されたin vivo半減期をもつ改変シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含みうる。
【0115】
一実施形態では、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するための本発明の液体製剤を哺乳動物、好ましくはヒトに投与する。別の実施形態では、本発明の液体製剤を、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、嚢胞性繊維症、気管支肺異形成症、先天性心疾患、先天性免疫不全症、又は後天性免疫不全に罹患したヒトに、あるいは、骨髄移植の経験があるヒトに投与する。別の実施形態では、本発明の液体製剤を、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、ヒト乳幼児、好ましくはヒト早産児、又はRSV感染で入院の危険があるヒト乳幼児に投与する。別の実施形態では、本発明の液体製剤を、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、老人に投与する。さらに別の実施形態では、本発明の液体製剤を、施設又はグループホームにいる被験体(例えば、養護施設、又は孤児院)に投与する。
【0116】
本発明の液体製剤は、予防用又は治療用に、被験体の体内で局所的に、又は全身的に使用できる。本発明の製剤は、RSV感染の予防、治療、管理又は改善に有用な他の療法(例えば、シナジス(登録商標)以外の予防薬又は治療薬)と併用して、有利に利用することもできる。本発明の液体製剤と併用できる予防薬又は治療薬の非限定的な例に関しては、下記の5.6章を参照されたい。
【0117】
他の1又は複数の療法が使用されているとき、それらは、別々に任意の適切な形態で任意の適当な経路により投与することができる。本発明の液体製剤は、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するのに有用な他の1又は複数の療法(例えば、他の1又は複数の予防薬又は治療薬)と同時に、哺乳動物、好ましくはヒトに、投与することができる。「同時に」という用語は、複数の療法を正確に同じ時間に投与することに限定されず、むしろそれは、液体製剤中に含まれるシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントが他の治療と共に作用して、他の方法でそれらを投与した場合より向上した利益を提供することができるように、本発明の液体製剤と他の治療とを、ある時間間隔以内に順番に哺乳動物に投与することを意味する。例えば、本発明の液体製剤、及びRSV感染の予防、治療、管理又は改善に有用な他の1又は複数の予防薬又は治療薬は、同時に投与してもよいし、又は逐次に任意の順序で異なった時点で投与してもよく、ただし同時に投与しない場合には、望ましい治療効果又は予防効果が提供されるように、それらを時間的に十分近い範囲で投与するべきである。
【0118】
様々な実施形態で、本発明の液体製剤及びRSV感染又はその症状の予防、治療、管理又は改善に有用な他の1又は複数の療法(例えば、他の1又は複数の予防薬又は治療薬)は、1時間以内に、約1時間の間隔で、約1時間から約2時間の間隔で、約2時間から約3時間の間隔で、約3時間から約4時間の間隔で、約4時間から約5時間の間隔で、約5時間から約6時間の間隔で、約6時間から約7時間の間隔で、約7時間から約8時間の間隔で、約8時間から約9時間の間隔で、約9時間から約10時間の間隔で、約10時間から約11時間の間隔で、約11時間から約12時間の間隔で、24時間以内に、又は、48時間以内に投与される。好ましい実施形態では、本発明の液体製剤、及びRSV感染又はその症状の予防、治療、管理、又は改善に有用な他の1又は複数の療法(例えば、他の1又は複数の予防薬又は治療薬)は、患者の同一来院の間に投与される。他の実施形態では、本発明の液体製剤、及びRSV感染又はその症状の予防、治療、管理、又は改善に有用な他の1又は複数の療法(例えば、他の1又は複数の予防薬又は治療薬)は、約2〜4日の間隔で、約4〜6日の間隔で、約1週間の間隔で、約1〜2週間の間隔で、又は2週間以上離れた間隔で投与される。好ましい実施形態では、本発明の液体製剤、及びRSV感染又はその症状の予防、治療、管理、又は改善に有用な他の1又は複数の療法は、両方の薬剤が活性を有する時間枠の間に投与される。当業者であれば、投与された薬剤の半減期を測定することで、そのような時間枠を決定することができる。
【0119】
ある実施形態では、本発明の液体製剤、及びRSV感染又はその症状の予防、治療、管理、又は改善に有用な他の1又は複数の療法(例えば、他の1又は複数の予防薬又は治療薬)は、周期的に被験体に投与される。周期療法では、第1の治療をしばらく投与し、続いて第2の治療を投与し、及び/又は第3の治療をしばらく投与し、そしてこの逐次投与を反復する。周期療法は、1若しくは複数の療法に対する耐性の確立を低減し、1つの療法の副作用を回避若しくは低減し、及び/又は治療の有効性を改善できる。
【0120】
ある実施形態では、本発明の液体製剤、及びRSV感染又はその症状の予防、治療、管理、又は改善に有用な他の1又は複数の療法(例えば、他の1又は複数の予防薬又は治療薬)は、ほぼ3週間より短い周期、はぼ2週間に1回、ほぼ10日に1回、ほぼ毎週1回投与される。1周期は、1周期あたり約90分間以上、1周期あたり約1時間、1周期あたり約45分間の注入による療法(例えば、治療薬又は予防薬)の投与を含むことができる。各周期は、少なくとも1週間の休息、少なくとも2週間の休息、少なくとも3週間の休息を含むことができる。投与の周期数は、約1〜約12周期、より一般的には約2〜約10周期、より一般的には約2〜約8周期である。
【0121】
一般的には、種の起源又は種の反応性(抗体の場合)が患者の生物種と同じ製品を投与することが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、ヒト抗体又はヒト化抗体、フラグメント、誘導体、又は類似体を、ヒト患者に、治療用又は予防用に投与する。
【0122】
5.6.シナジス(登録商標)製剤との併用に有用な薬剤
本発明は、本発明の液体製剤を、それを必要とする被験体に単独投与すること、あるいは、シナジス(登録商標)以外の1又は複数の治療(例えば、1又は複数の予防薬又は治療薬)と併用投与することを含む、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、管理、治療、又は改善する方法を提供する。本発明は、本発明の液体製剤を、それを必要とする被験体に単独投与すること、あるいは、シナジス(登録商標)以外の1又は複数の治療(例えば、1又は複数の予防薬又は治療薬)と併用投与することを含む、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善する方法を提供する。本発明は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤と、シナジス(登録商標)以外の1又は複数の予防薬又は治療薬とを含む組成物、並びに該組成物を用いてRSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善する方法も提供する。治療薬又は予防薬には、小分子、合成薬、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、限定されるものではないが、アンチセンスヌクレオチド配列、三重らせん、RNA干渉(RNAi)、及び、生物学的活性を有するタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むDNAヌクレオチド及びRNAヌクレオチド)、抗体、合成若しくは天然の無機分子、模倣薬、並びに合成若しくは天然の有機分子が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
RSV感染又はその1若しくは複数の症状を、予防、管理、治療、又は改善するのに、有用であることが公知であるか、又は以前に用いられたか、若しくは現在用いられているどの療法も、本明細書に記載した本発明による液体製剤と併用することができる。RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、管理、治療、又は改善するのに、以前に用いられたか、若しくは現在用いられている治療に関する情報は、例えば、Gilmanら、Goodman and Gilman's:The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版、McGraw-Hill, New York、2001年;The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、Berkow, M.D.ら(編集)、第17版、Merck Sharp & Dohme Research Laboratories, Rahway, NJ、1999年;Cecil Textbook of Medicine、第20版、Bennett及びPlum(編)、W.B. Saunders, Philadelphia、1996年を参照のこと。そのような薬剤の例には、免疫調節剤、抗炎症薬(例えば、アドレノコルチコイド、コルチコイド(例えば、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニソロン、プレドニソン、ヒドロコルチゾン)、グルココルチコイド、ステロイド、非ステロイド抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、及びCOX−2阻害剤)、鎮痛剤、ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテルカスト、メチルキサンチン、ザフィルルカスト、及びジロイトン)、β2アゴニスト(例えば、アルブテロール、ビトルテロール、フェノテロール、イソエタリン、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルブタモール、テルブタリン、フォルモテロール、サルメテロール、サルブタモール、及びテルブタリン)、抗コリン作動薬(例えば、臭化イプラトロピウム、及び臭化オキシトロピウム)、サルファサラジン、ペニシラミン、ダプソン、抗ヒスタミン剤、抗マラリア薬(例えば、ハイドロキシクロロキン))、並びに抗ウイルス薬が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
特定の実施形態では、本発明の液体製剤は、モノクローナル抗体若しくはキメラ抗体と併用されるか、又は、例えば、抗体と相互作用するエフェクター細胞の数若しくは活性を増強する働きをもつリンフォカイン若しくは造血増殖因子(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−7、IL−9、IL−10、IL−12、並びにインターフェロンα、β、及びγなど)と併用される。本発明の液体製剤は、他のモノクローナル抗体若しくはキメラ抗体、又は、例えば、免疫応答を増強する働きをもつリンフォカイン若しくは造血増殖因子(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−7、IL−9、IL−10、IL−12、並びにインターフェロンα、β、及びγなど)と有利に併用することもできる。本発明の液体製剤は、例えば、抗ウイルス薬など、RSV感染の治療に用いられる1又は複数の薬物と有利に併用することもできる。本発明の液体製剤は、下記の薬物の1又は複数と併用することができる。すなわち、NIH−351(Gemini Technologies)、組換え型RSVワクチン(メディミューンワクチン社(Medlmmune Vaccines, Inc.)、2002年2月21日出願の米国出願第60/358934号、2003年2月21日出願の第10/373567号、2003年2月21日出願の第10/371099号、2003年2月21日出願の第10/371122号、2003年2月21日出願の第10/371264号、2003年4月25日出願の第60/466181号、及び2003年4月25日出願の第60/465811号、これらすべてを参照により本明細書に組み入れる)、RSVf−2(Intracel)、F−50042(Pierre Fabre)、T−786(Trimeris)、VP−36676(ViroPharma)、RFI−641(American Home Products)、VP−14637(ViroPharma)、PFP−1及びPFP−2(American Home Products)、RSVワクチン(Avant Immunotherapeutics)、並びにF−50077(Pierre Fabre)である。
【0125】
5.6.1.免疫調節剤
本発明の方法に従ってRSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するためには、当業者に周知の任意の免疫調節剤を用いることができる。免疫調節剤は、被験体における免疫応答の様相の1又は複数、あるいはすべてに影響を与えることができる。免疫応答の様相には、炎症反応、補体カスケード、白血球及びリンパ球の分化、増殖、及び/又はエフェクター機能、単球及び/又は好塩基球の数、並びに免疫系細胞間の細胞情報交換が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明のある実施形態では、免疫調節剤は、免疫応答の一様相に変化を与える。他の実施形態では、免疫調節剤は、免疫応答の複数の様相に変化を与える。本発明の好ましい実施形態では、免疫調節剤を被験体に投与することによって、被験体の免疫応答能力の1又は複数の様相を、抑制又は低下させる。本発明の別の実施形態では、免疫調節剤は被験体における免疫応答の1又は複数の様相を増強する。ある実施形態では、免疫調節剤は抗炎症薬ではない。特定の実施形態では、免疫調節剤は化学療法薬以外の薬剤である。
【0126】
免疫調節剤の例には、サイトカイン、ペプチドミメティクス、及び抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fvフラグメント、scFvフラグメント、Fab若しくはF(ab)フラグメント、又はエピトープ結合フラグメント)などのタンパク質性薬剤、核酸分子(例えば、アンチセンス核酸分子及び三重らせん核酸分子)、小分子、有機化合物、及び無機化合物などが含まれるが、これらに限定されるものではない。具体的に免疫調節剤には、メトトレキセート、レフルノミド、シクロホスファミド、サイトキサン、イムラン、シクロスポリンA、ミノサイクリン、アザチオプリン、抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニゾロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、ラパミシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナール、マロノニトリロアミド(malononitriloaminde)(例えば、レフルナミド(leflunamide))、T細胞受容体調節薬及び、サイトカイン受容体調節薬が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
T細胞受容体調節薬の例には、抗T細胞受容体抗体(例えば、抗CD4抗体(例えば、cM−T412(Boeringer)、IDEC−CE9.1(登録商標)(IDEC及びSKB)、mAB 4162W94、オルソクローン、及びOKTcdr4a(Janssen-Cilag))、抗CD3抗体(例えば、ヌビオン(Nuvion)(Product Design Labs)、OKT3(Johnson & Johnson)、又はリツキサン(IDEC))、抗CD5抗体(例えば、抗CD5リシン結合免疫複合体)、抗CD7抗体(例えば、CHH−380(Novartis))、抗CD8抗体、抗CD40リガンドモノクローナル抗体(例えば、IDEC−131(IDEC))、抗CD52抗体(例えば、CAMPATH 1H(Ilex))、抗CD2抗体、(例えば、MEDI−507(メディミューン社(MedImmune Inc.)、国際公開WO02/098370号、及びWO02/069904号))、抗CD11a抗体(例えば、ザネリム(Xanelim)(Genentech))、及び抗B7抗体(例えば、IDEC−114(IDEC)))、CTLA4−免疫グロブリン、及びLFA−3TIP(Biogen、国際公開WO93/08656号、及び米国特許第6,162,432号)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
サイトカイン受容体調節薬の例には、可溶性サイトカイン受容体(例えば、TNF−α受容体細胞外ドメイン又はその抗原結合性フラグメント、IL−1β受容体細胞外ドメイン又はその抗原結合性フラグメント、及びIL−6受容体細胞外ドメイン又はその抗原結合性フラグメント)、サイトカイン又はそのフラグメント(例えば、インターロイキンIL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−23、TNF−α、TNF−β、インターフェロン(IFN)−α、IFN−β、IFN−γ、及びGM−CSF)、抗サイトカイン受容体抗体、(例えば、抗IFN受容体抗体、抗IL−2受容体抗体(例えば、ゼナパックス(Protein Design Labs))、抗IL−3受容体抗体、抗IL−4受容体抗体、抗IL−6受容体抗体、抗IL−9受容体抗体、抗IL−10受容体抗体、抗IL−12受容体抗体、抗IL−13受容体抗体、抗IL−15受容体抗体、及び抗IL−23受容体抗体)、及び抗サイトカイン抗体(例えば、抗IFN抗体、抗TNF−α抗体、抗IL−1β抗体、抗IL−3抗体、抗IL−6抗体、抗IL−8抗体(例えば、ABX−IL−8(Abgenix))、抗IL−9抗体、抗IL−12抗体、抗IL−13抗体、抗IL−15抗体、及び抗IL−23抗体)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
特定の一実施形態では、サイトカイン受容体調節薬は、IFN、IL−2、IL−3、IL−4、IL−10、IL−12又はその抗原結合性フラグメントである。別の実施形態では、サイトカイン受容体調節薬は、抗IL−1β抗体、抗IL−6抗体、抗IL−9抗体、抗IL−12受容体抗体、又は抗TNF−α抗体である。別の実施形態では、サイトカイン受容体調節薬は、TNF−α受容体細胞外ドメイン、又はその抗原結合性フラグメントである。
【0130】
免疫調節剤には、ヘルパーT細胞亜集団(TH1又はTH2)とB細胞との相互作用を妨害して、中和抗体産生を阻害するものを選択することもできる。TH(ヘルパーT)細胞によるB細胞の活性化に必要な相互作用を妨害又は阻止し、さらに中和抗体の産生を阻止する抗体は、本発明の方法における免疫調節剤として有用である。例えば、T細胞によるB細胞の活性化には、B細胞上のCD40抗原に対する、ヘルパーT細胞上のCD40リガンドの結合、並びにB細胞上のB7抗原に対する、T細胞上のCD28及び/又はCTLA4リガンドの結合など、ある種の相互作用が起きる必要がある(Durieら、Immunol. Today、15(9):406-410(1994年))。これら両方の相互作用がないと、B細胞を活性化して、中和抗体の産生を誘導することができない。
【0131】
CD40リガンド(CD40L)−CD40相互作用は、ヘルパーT細胞の活性化と機能との両方で広範な活性を有するため、また、シグナル伝達経路における重複性がないため、免疫応答に対する望ましい阻害ポイントである。したがって、本発明の特定の実施形態では、CD40LとCD40との相互作用を、1又は複数の免疫調整剤を投与した時点で、一時的に阻害する。TH細胞上のCD40リガンドを阻害し、さらに、ヘルパーT細胞上のCD40リガンドによるB細胞上のCD40抗原への正常な結合を妨害する薬剤を用いて治療することによって、これを達成することができる。CD40リガンドに対する抗体(抗CD40L抗体)(Bristol-Myers Squibb社から購入可能;例えば、1993年8月18日公開の欧州特許出願第555880号を参照)、又は可溶性CD40分子が、本発明の方法による免疫調節剤として選択でき、かつ使用できる。
【0132】
TH1細胞と細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)との相互作用を阻害して、CTLが媒介する死滅作用を減弱させる免疫調節剤を選択することもできる。CD4及び/又はCD8T細胞の増殖、分化、活性、及び/又は機能を改変(例えば、阻害又は抑制)する免疫調節剤を選択することもできる。CD4及び/又はCD8T細胞の増殖、分化、活性、及び/又は機能を消耗又は変化させる免疫調節剤として、例えば、T細胞に特異的な抗体を用いることができる。
【0133】
一実施形態では、CD4ヘルパーT細胞のTH0、TH1、及び/又はTH2亜集団の1又は複数の生物学的活性(例えば、分化、増殖、及び/又はエフェクター機能)を減弱又は阻害する免疫調節剤を、本発明の方法に従って、RSV感染に罹患した被験体に投与する。そのような免疫調節剤の一例がIL−4である。IL−4は、TH1細胞の機能を犠牲にして、TH2細胞の抗原特異的な活性を促進する(例えば、Yokotaら、1986年、Proc. Natl. Acad. Sci., USA、83:5894-5898;及び米国特第5,017,691号を参照)。ヘルパーT細胞(特にTH1細胞及び/又はTH2細胞)の生物学的活性(例えば、増殖、分化、及び/又はエフェクター機能)に影響を与える免疫調節剤の他の例には、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−23、及びインターフェロン(IFN)γが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
別の実施形態では、本発明の方法に従って、RSV感染に罹患した被験体に投与される免疫調節剤は、抗原提示を阻止するサイトカインである。特定の実施形態では、本発明の方法で用いられる免疫調節剤はIL−10である。IL−10も細菌の除去に必要なマクロファージの作用を抑制又は阻害する。
【0135】
本発明に従って、1又は複数の免疫調節剤は、RSV感染に罹患した被験体に、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤の前に、後に、又は同時に投与する。当業者が認める必要性に従って、1又は複数の免疫調節剤を、RSV感染に罹患した被験体に、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤と併用投与して、免疫応答の1又は複数の様相を減弱又は阻害することが好ましい。特定の被験体における免疫応答の1又は複数の様相を測定して、それによって、前述の被験体に、いつ免疫調節剤を投与する必要があるかを決定するために、当業者に周知のいかなる技法を用いることもできる。好ましい実施形態では、被験体における平均リンパ球絶対数が、約500細胞/mm、好ましくは600細胞/mm、650細胞/mm、700細胞/mm、750細胞/mm、800細胞/mm、900細胞/mm、1000細胞/mm、1100細胞/mm、又は1200細胞/mmに維持される。別の好ましい実施形態では、RSV感染に罹患した被験体のリンパ球絶対数が、500細胞/mm未満、550細胞/mm未満、600細胞/mm未満、650細胞/mm未満、700細胞/mm未満、750細胞/mm未満、又は800細胞/mm未満である場合には、そのような被験体には免疫調節剤を投与しない。
【0136】
特定の実施形態では、1又は複数の免疫調節剤を、RSV感染に罹患した被験体に、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤と併用投与して、免疫応答の1又は複数の様相を一時的に減弱又は阻害する。免疫系における1又は複数の様相の、そのような一時的阻害又は減弱は、数時間、数日、数週間、又は数ヶ月続くことがある。免疫応答の1又は複数の様相における一時的阻害又は減弱は、数時間(例えば、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、14時間、16時間、18時間、24時間、36時間、又は48時間)、数日間(例えば、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、又は14日間)、又は数週間(例えば、3週間、4週間、5週間、又は6週間)にわたり続くことが好ましい。免疫応答における1又は複数の様相の、一時的な減弱又は阻害は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの液体製剤の予防効果及び/又は治療効果を促進する。
【0137】
好ましい実施形態では、免疫調節剤として用いられるタンパク質、ポリペプチド又はペプチド(抗体を含む)は、これらのタンパク質、ポリペプチド又はペプチドに対する免疫応答の可能性を低減させるために、レシピエントのタンパク質、ポリペプチド又はペプチドと同じ種に由来する。別の好ましい実施形態では、被験体がヒトである場合には、免疫調節剤として用いられるタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドも、ヒトの、又はヒト化されているタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドである。
【0138】
本発明の方法に従って、免疫調節活性を有するタンパク質、ポリペプチド、若しくはペプチドをコードする核酸分子、又は免疫調節活性を有するタンパク質、ポリペプチド、若しくはペプチドをRSV感染に罹患した被験体に投与することができる。さらに、本発明の方法に従って、免疫調節活性を有するタンパク質、ポリペプチド、若しくはペプチドの誘導体、類似体、若しくはフラグメントをコードする核酸分子、又は免疫調節活性を有するタンパク質、ポリペプチド、若しくはペプチドの誘導体、類似体、若しくはフラグメントを、RSV感染に罹患した被験体に投与することができる。そのような誘導体、類似体、及びフラグメントは、完全長で、かつ野生型のタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドの免疫調節活性を保持していることが好ましい。
【0139】
本発明の方法では、市販の、免疫調節剤として機能することが公知である薬剤を用いることが好ましい。薬剤の免疫調節活性は、in vitro及び/又はin vivoで、例えば、CTLアッセイ、増殖アッセイ、及び、共刺激性分子又はサイトカインなどの特定タンパク質の発現に関するイムノアッセイ(例えば、ELISA)を含めた、当業者に周知のいかなる技法によって決定してもよい。
【0140】
5.6.2.抗炎症薬
RSV感染又はその1若しくは複数の症状を、予防、治療、管理、又は改善する本発明の方法に従って、炎症性障害の治療に有用な薬剤を含めた、当業者に周知のいかなる抗炎症薬を用いることもできる。抗炎症薬の例には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイドの抗炎症薬、抗コリン作動薬(例えば、硫酸アトロピン、硝酸メチルアトロピン、及び臭化イプラトロピウム(アトロベント(商標))、β2アゴニスト(例えば、アルブテロール(VENTOLIN(商標)及びPROVENTIL(商標))、ビトルテロール(TORNALATE(商標))、レバルブテロール(XOPONEX(商標))、メタプロテレノール(ALUPENT(商標))、ピルブテロール(MAXAIR(商標))、テルブタリン(terbutlaine)(BRETHAIRE(商標)及びBRETHINE(商標))、アルブテロール(PROVENTI(商標)、REPETABS(商標)、及びVOLMAX(商標))、フォルモテロール(FORADIL AEROLIZER(商標))、サルメテロール(SEREVENT(商標)及びSEREVENT DISKUS(商標))、及びメチルキサンチン(例えば、テオフィリン(UNIPHYL(商標)、THEO−DUR(商標)、SLO−BID(商標)、及びTEHO−42(商標))が含まれるが、これらに限定されるものではない。NSAIDの例には、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ(CELEBREX(商標))、ジクロフェナク(VOLTAREN(商標))、エトドラク(LODINE(商標))、フェノプロン(NALFON(商標))、インドメタシン(INDOCIN(商標))、ケトロラク(TORADOL(商標))、オキサプロジン(DAYPRO(商標))、ナブメトン(RELAFEN(商標))、スリンダク(CLINORIL(商標))、トルメチン(TOLECTIN(商標))、ロフェコキシブ(VIOXX(商標))、ナプロキセン(ALEVE(商標)、NAPROSYN(商標))、ケトプロフェン(ACTRON(商標))、及びナブメトン(RELAFEN(商標))が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX−1及び/又はCOX−2)を阻害することによって機能する。ステロイド性抗炎症薬の例には、グルココルチコイド、デキサメサゾン(DECADRON(商標))、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン(MEDROL(商標)))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニソン(PREDNISONE(商標)とDELTASONE(商標))、プレドニソロン(PRELONE(商標)及びPEDIAPRED(商標))、トリアムシノロン、アザルフィジン、及びエイコサノイド阻害剤(例えば、プロスタグランジン、トロンボキサン、及びロイコトリエン(ロイコトリエンの非限定的な例と、そのような薬剤の通常用量とに関しては下記の表2を参照)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
5.6.3.抗ウイルス薬
RSV感染又はその1若しくは複数の症状を、予防、治療、管理、又は改善する本発明の方法に従って、当分野(特にRSV感染の治療、管理、又は改善に有用な分野)の技術者に周知のいかなる抗ウイルス薬を用いることもできる。抗ウイルス薬の例には、受容体へのウイルスの付着、ウイルスによる細胞内への内部移行、ウイルスの複製、又は細胞からのウイルスの放出を、阻害及び/又は抑制するタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質抗体、核酸分子、有機分子、無機分子及び小分子が含まれるが、これらに限定されるものではない。具体的に抗ウイルス薬には、ヌクレオシド類似体(例えば、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドキシウリジン、トリフルウリジン、及びリバビリン)、フォスカーネット、アマンタジン、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、リトナビル、αインターフェロン及び他のインターフェロン、並びにAZTが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
特定の実施形態では、抗ウイルス薬は、ウイルス抗原に対して免疫特異的な、シナジス(登録商標)以外の抗体薬剤である。本明細書において、「ウイルス抗原」という用語には、免疫応答を引き起こすことが可能な、いかなるRSVペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質(例えば、RSVのF糖タンパク及びRSVのG糖タンパク)も含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0143】
好ましい実施形態では、ウイルス感染がRSVであり、かつ抗ウイルス抗原は、シナジス(登録商標)以外の、免疫特異的にRSV抗原に結合する抗体である。ある実施形態では、抗RSV抗原抗体は、RSVのグループAのRSV抗原に結合する。他の実施形態では、抗RSV抗原抗体は、RSVのグループBのRSV抗原に結合する。他の実施形態では、抗RSV抗原抗体は、1つのグループのRSV抗原に免疫特異的に結合し、さらに他グループの類似抗原と交差反応する。特定の実施形態では、抗RSV抗原抗体は、RSV核タンパク質、RSVリンタンパク質、RSVマトリックスタンパク質、RSV疎水性小タンパク質、RSVのRNA依存性RNAポリメラーゼ、RSVのFタンパク質、及び/又はRSVのGタンパク質に結合する。これに追加の特定の実施形態では、抗RSV抗原抗体は、RSV核タンパク質、RSV核キャプシドタンパク質、RSVリンタンパク質、RSVマトリックスタンパク質、RSV付着糖タンパク質、RSV融合糖タンパク質、RSV核キャプシドタンパク質、RSVマトリックスタンパク質、RSV疎水性小タンパク質、RSVのRNA依存性RNAポリメラーゼ、RSVのFタンパク質、RSVのLタンパク質、RSVのPタンパク質、及び/又はRSVのGタンパク質に結合する。
【0144】
抗ウイルス治療薬並びにそれらの用量、投与経路、及び推奨使用法は、当技術分野で公知であり、Physician's Desk Reference(第57版、2003年)などの文献に記載されている。呼吸器ウイルス感染に関するさらなる情報は、Cecil Textbook of Medicine(第18版、1988年)において得ることができる。
【0145】
5.7.シナジス(登録商標)製剤を投与する方法
本発明は、有効量の本発明の液体製剤を被験体に投与することによって、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を治療、予防、及び改善する方法を提供する。この被験体は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、及びラットなど)、及び霊長類(例えば、マカクザルなどのサル、及びヒトなど)などの哺乳動物であることが好ましい。好ましい実施形態では、被験体はヒトである。別の好ましい実施形態では、被験体はヒト乳幼児、又はヒト早産児である。
【0146】
様々な送達系が既知であり、本発明の液体製剤を投与するのに使用可能である。本発明のシナジス(登録商標)液体製剤を投与する方法には、非経口投与(例えば、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、及び皮下投与)、硬膜外投与、局所投与、肺内投与及び、粘膜投与(例えば、鼻腔内経路及び経口経路)が含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、本発明の液体製剤を、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与し、また、好ましくは筋肉内投与する。この製剤は、好都合などんな経路で投与してもよく、例えば、注入又はボーラス注入によって、上皮細胞層又は粘膜皮膚細胞層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、及び腸粘膜)を介した吸収によって投与できるし、また、生物学的活性を有する他の薬剤と共に投与してもよい。全身投与することも、又は局所投与することもできる。さらに、例えば、吸入器又は噴霧装置を使用することによって、肺内投与を行うこともできる。
【0147】
本発明は、本発明の液体製剤を、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの量を表示した、アンプル及びサシェ(sachette)などの密封容器に包装することを提供する。本発明の液体製剤は、抗体又は抗体フラグメントの量及び濃度を表示した密封容器中に存在することが好ましい。本発明の液体製剤は、少なくとも15mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、250mg/ml、又は300mg/mlの濃度、そして最も好ましくは105mg/mlの濃度で、1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、15ml、又は20mlの量、そして最も好ましくは1.2mlの量で密閉容器に入れて供給することが好ましい。
【0148】
RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理又は改善するのに有効な本発明の液体製剤の量は、標準的な臨床技法で決定することができる。例えば、RSV感染に関連した症状を治療、予防、又は改善するのに有効なこの組成物の用量は、この製剤をコットンラットに投与し、10pfuのRSVにコットンラット曝露した後のRSV力価を測定し、このRSV力価を製剤が投与されなかったコットンラットから得られた力価と比較することで決定できる。この結果、10pfuのRSVに曝露されたコットンラットにおいて、10pfuのRSVに曝露されたが製剤を投与されていないコットンラットに比べて、RSV力価に2logの低下、すなわち99%の減少をもたらす用量が、この製剤における、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するためにヒトに投与できる用量である。この製剤における、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するのに有効な用量は、この製剤を動物モデル(例えば、コットンラット又はサル)に投与し、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの血清力価を測定することで決定できる。この結果、少なくとも1μg/ml、好ましくは2μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、25μg/ml、少なくとも35μg/ml、少なくとも40μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも75pg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも400μg/ml、又は少なくとも450μg/mlの血清力価をもたらす製剤の用量をRSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するためにヒトに投与することができる。さらに、最適用量範囲の特定を補助するために、任意選択で、in vitroアッセイを行うこともできる。
【0149】
この製剤において用いられるべき正確な用量は、投与経路とRSV感染の重症度に応じて異なり、医師の判断と、各患者の病状とに従って決定されるべきものである。有効量は、in vitroモデル又は動物モデル(例えば、コットンラット又はマカクザル)の試験系から得られる用量応答曲線から推定することもできる。
【0150】
抗体(例えば、シナジス(登録商標))、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び融合タンパク質に関しては、患者に投与される用量は、通常、患者の体重あたり約1mg/kgから30mg/kgである。患者に投与される用量は、好ましくは患者の体重あたり10mg/kgから20mg/kgであり、より好ましくは患者の体重あたり15mg/kgである。外来ポリペプチドに対する免疫応答のため、概してヒト抗体は、他の生物種からの抗体よりヒト体内における半減期が長い。したがって、ヒト抗体の投与は、より少ない用量において、かつより少ない頻度で行うことが可能である。さらに、本発明の液体製剤の投与の用量、体積、及び頻度は、この製剤中のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの濃度を増大させること、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの親和性及び/又は結合活性を増強すること、並びに/あるいはシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの半減期を長くすることによって減少させることもできる。
【0151】
小分子の用量の例には、被験体又は試料の重さ1キログラムあたりの小分子量で、ミリグラム量又はマイクログラム量(例えば、1キログラムあたり約1マイクログラムから1キログラムあたり約500ミリグラム、1キログラムあたり約100マイクログラムから1キログラムあたり約5ミリグラム、又は、1キログラムあたり約1マイクログラムから1キログラムあたり約50マイクログラム)が含まれる。
【0152】
特定の実施形態では、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、哺乳動物、好ましくはヒトに、本発明の安定な液体製剤を、RSV力価を低下させるのに有効な量で投与する。この実施形態によると、有効量の本発明の液体製剤によって、例えば、哺乳動物から痰試料中、又は肺の洗浄液中のRSV濃度によって測定される、肺におけるRSV力価が低下する。別の実施形態では、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するたのために、哺乳動物、好ましくはヒトに、本発明の液体製剤を、哺乳動物で免疫応答を誘導するのに有効な量で投与する。
【0153】
別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを30mg/kg以下、15mg/kg以下、10mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、又は0.5mg/kg以下で含む本発明の液体製剤の初回用量を、初回用量投与の20日後(好ましくは25、30、35、40日間後)でかつ後続用量投与の前に少なくとも1μg/ml、好ましくは少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも30μg/ml、少なくとも35μg/ml、又は少なくとも40μg/mlの血清力価を誘導するのに有効な量で投与する。特定の実施形態では、本発明の液体製剤は、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含み、初回用量投与の30日後でかつ後続用量投与の前に約40μg/mlの血清力価を誘導するように、約1mg/kgから約30mg/kgの初回用量が被験体に投与される。前述のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの血清力価は、初回用量投与の30日後で、かつ後続用量投与の前に、50μg/ml未満であることが好ましい。
【0154】
別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを30mg/kg以下、15mg/kg以下、10mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、又は0.5mg/kg以下で含む本発明の液体製剤の初回用量を、初回用量投与の20日後(好ましくは25、30、35、又は40日後)でかつ後続用量投与の前に、少なくとも1μg/ml、好ましくは少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、又は少なくとも25μg/mlの血清力価を誘導するのに有効な量で投与する。前述のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの血清力価は、初回用量投与の30日後でかつ後続用量投与の前に、30μg/ml未満であることが好ましい。
【0155】
別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、in vivo半減期が延長されている改変型シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを30mg/kg以下、15mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、又は0.5mg/kg以下で含む本発明の液体製剤の初回用量を、初回用量投与の25日後(好ましくは30、35、又は40日後)でかつ後続用量投与の前に少なくとも1μg/ml、好ましくは少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、又は少なくとも25μg/mlの血清力価を誘導するのに有効な量で投与する。前述のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの血清力価は、初回用量投与の30日後でかつ後続用量投与の前に、30μg/ml未満であることが好ましい。
【0156】
別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、in vivo半減期が延長されている改変型シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを30mg/kg以下、15mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、又は0.5mg/kg以下含む本発明の液体製剤の初回用量を、初回用量投与の25日後(好ましくは30、35、又は40日後)でかつ後続用量投与の前に少なくとも1μg/ml、好ましくは少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、又は少なくとも25μg/mlの血清力価を誘導するのに有効な量で投与する。前述のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの血清力価は、初回用量投与の30日後でかつ後続用量投与の前に、30μg/ml未満であることが好ましい。
【0157】
別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、in vivo半減期が延長されている改変型シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを約30mg/kg以下、15mg/kg以下(好ましくは、10mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、又は0.5mg/kg以下)含む液体製剤の初回用量を、初回用量投与の25日後(好ましくは30、35、又は40日後)でかつ後続用量投与の前に少なくとも30μg/ml、好ましくは少なくとも35μg/ml、少なくとも40μg/ml、又は少なくとも50μg/mlの血清力価を誘導するのに有効な量で投与する。
【0158】
一実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを30mg/kg以下、15mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、0.5mg/kg以下、又は0.01mg/kg以下で含む本発明の肺送達用液体製剤の初回用量を、初回用量投与の20日後(好ましくは25、30、35、又は40日間後)でかつ後続用量投与の前に、前述の哺乳動物の肺由来の挿管試料又は洗浄液中において肺タンパク質1mgあたり少なくとも20ng(好ましくは少なくとも40ng/mg、少なくとも60ng/mg、少なくとも80ng/mg、少なくとも50ng/mg、少なくとも75ng/mg、少なくとも100ng/mg、又は少なくとも150ng/mg)の力価を誘導するのに有効な量で投与する。前述のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの血清力価は、初回用量投与の30日後でかつ後続用量投与の前に、タンパク質あたり100ng/ml未満であることが好ましい。
【0159】
別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを10mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、又は0.5mg/kg以下で含む本発明の液体製剤の初回用量を、初回用量投与の20日後(好ましくは25、30、35、又は40日後)に少なくとも35μg/ml、少なくとも40μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも80μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも120μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、又は少なくとも300μg/mlの血清力価を誘導するのに有効な量で投与する。別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するために、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを約15mg/kg含む本発明の液体製剤の初回用量を、初回用量投与の20日後(好ましくは25、30、35、又は40日後)に少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも400μg/ml、又は少なくとも450μg/mlの血清力価を誘導するのに有効な量で投与する。本明細書において「約15mg/kg」という用語は、14mg/kgから16mg/kgの範囲のことをいう。
【0160】
別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1つの症状を予防するために、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含む本発明の液体製剤の用量を、この用量投与の30日後に10μg/ml未満、8μg/ml未満、5μg/ml未満、3μg/ml未満、1μg/ml未満、又は0.5μg/ml未満の予防上有効な血清力価を誘導するのに有効な量で投与する。前述の予防上有効な血清力価は、ヒトにおけるRSV感染の発生を減少させる血清力価か、又は10pfuのRSVに曝露された5日後における、曝露される前にこの用量を投与されなかったコットンラット体内のRSV力価に比べ、99%低下しているRSV力価を、10pfuのRSVに曝露された5日後にもたらすコットンラットにおける血清力価である。この治療組成物又は医薬組成物の用量は、10mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、若しくは0.5mg/kg以下のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含むことが好ましい。
【0161】
さらに別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を治療、管理、改善するために、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含む本発明の液体製剤の用量を、この用量投与の30日後に10μg/ml未満、8μg/ml未満、5μg/ml未満、3μg/ml未満、1μg/ml未満、又は0.5μg/ml未満の治療上有効な血清力価を誘導するのに有効な量で投与する。前述の治療上有効な血清力価は、ヒトにおけるRSV感染の重症度又は期間を減少させる血清力価か、又は10pfuのRSVに曝露された5日後における、曝露される前にこの用量を投与されなかったコットンラット体内のRSV力価に比べ、99%低下しているRSV力価を、10pfuのRSVに曝露された5日後にもたらすコットンラットにおける血清力価である。本発明の液体製剤の用量は、12mg/kg以下、10mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、又は0.5mg/kg以下の抗体又はその抗原結合性フラグメントを含むことが好ましい。
【0162】
特定の実施形態では、本発明の製剤を、RSVシーズンの直前又はRSVシーズン中に毎月投与する。別の実施形態では、この製剤を、RSVシーズンの直前又はRSVシーズン中に2カ月毎に投与する。さらに別の実施形態では、本発明の安定な製剤を、RSVシーズンの直前又はRSVシーズン中に一回投与する。「RSVシーズン」という用語は、RSV感染が最も起こりそうな季節をいう。RSVシーズンは、北半球では通常、11月に始まり4月まで持続する。
【0163】
一実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、約5mg/kg以下(好ましくは1.5mg/kg以下)のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含む液体製剤を、RSVシーズン中に5回、3回、又は1〜2回投与する。別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、本発明の液体製剤に含まれる約1.5mg/kgのシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを、RSVシーズン中に5回、毎月筋肉内投与する。別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、本発明の液体製剤に含まれる約3mg/kgのシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを、RSVシーズン中に3回、毎月筋肉内投与する。さらに別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、本発明の液体製剤に含まれる約5mg/kgのシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを、RSVシーズン中に1〜2回、毎月筋肉内投与する。
【0164】
特定の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、本発明の液体製剤に含まれる、in vivo半減期が延長されているシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメント約15mg/kgを、RSVシーズン中に5回、筋肉内投与する。一実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、本発明の液体製剤に含まれる約5mg/kg以下(好ましくは1.5mg/kg以下)のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを、RSVシーズン中に5回、3回、又は1〜2回投与する。別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、本発明の液体製剤に含まれる、in vivo半減期が延長されているシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメント約3mg/kgを、RSVシーズン中に3回、毎月筋肉内投与する。別の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトに、本発明の液体製剤に含まれる、in vivo半減期が延長されているシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメント約5mg/kgを、RSVシーズン中に2回、筋肉内投与する。
【0165】
5.8.生物学的アッセイ
5.8.1.本発明の抗体の免疫特異性
本発明の抗体又はそのフラグメントは、当業者に周知のさまざまな方法で特徴決定することができる。詳細には、本発明の液体製剤中の本発明の抗体又はその抗原結合性フラグメントを、呼吸器合胞体ウイルスのエピトープに対する免疫特異的結合能に関してアッセイすることができる。そのようなアッセイは、溶液中(例えば、Houghten、1992年、Bio/Techniques 13:412-421)、ビーズ上(Lam、1991年、Nature 354:82-84)、チップ上(Fodor、1993年、Nature 364:555-556)、細菌表面(米国特許第5,223,409号)、胞子表面(米国特許第5,571,698号、第5,403,484号、及び第5,223,409号)、プラスミド上(Cullら、1992年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869)、又は、ファージ上(Scott 及びSmith、1990年、Science 249:386-390;Cwirlaら、1990年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382;及びFelici、1991年、J. Mol. Biol. 222:301-310)(これらの引用文献それぞれの全体を参照により本明細書に組み入れる)で行うことができる。本発明の液体製剤中のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、その特異性及び親和性に関してアッセイすることができる。
【0166】
本発明のシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントは、RSV抗原に対する免疫特異的結合、及び他の抗原との交差反応性に関して、当技術分野で公知のいかなる方法でアッセイすることもできる。免疫特異的結合及び交差反応性を分析するのに使用できるイムノアッセイには、一部の例を挙げるだけでも、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降反応アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定法、蛍光免疫法、プロテインAイムノアッセイなどの技法を用いた競合アッセイ系及び非競合アッセイ系が含まれ、さらにこれらに限定されるものではない。これらのアッセイは、当技術分野で周知であり、かつ日常的に行われるものである(例えば、Ausubelら編、1994年、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照、この文献の全体を参照により本明細書に組み入れる)。
【0167】
5.8.2.in vitroアッセイ及びin vivoアッセイ
本発明の液体製剤又は併用治療薬の活性は、in vitro及び/又はin vivoで、様々なアッセイ又は適当な動物モデル系において試験することができる。
【0168】
RSV感染又はその1若しくは複数の症状を治療、管理、予防、又は改善するための本発明の液体製剤は、ウイルス複製を阻害する作用、又はin vitroアッセイにおいてウイルス負荷を減少させる作用に関して試験することができる。例えば、Johnsonら、1997年、Journal of Infectious Diseases 176:1215-1224 176:1215-1224に記載されているような、プラークアッセイによってウイルス複製をアッセイすることができる。本発明の方法に従って投与された本発明の液体製剤は、ウイルスポリペプチドの発現を阻害又はダウンレギュレートする効果に関してアッセイすることもできる。限定されるものではないが、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、及びRT−PCRを含めた当業者に公知の技法を用いて、ウイルスポリペプチドの発現、及び/又は、ウイルス力価を測定することができる。
【0169】
本発明の液体製剤は、ヒトで使用する前に、適当な動物モデル系で試験することができる。そのような動物モデル系には、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ラビットなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。当技術分野で周知のいかなる動物系を用いてもよい。治療手順のいくつかの様相が異なってもよく、そのような様相には、治療薬(例えば、予防薬及び/又は治療薬)の時間的投与計画、そのような治療薬を別々に投与するか、又は混合物として投与するか、及び治療薬投与の頻度が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0170】
動物モデルを用いて、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を治療、管理、予防、又は改善する本発明の方法の有効性を評価することができる。RSV感染のための動物モデルには例えば、Piedimonteら、Am J Physiol、1999年、277:L831-L840;McArthur-Vaughanら、J. Med. Primatol.、2002年、31(2):61-73;及びByrdら、Clin. Infect. Dis.、1997年、25(6):1363-8に記載されているものが含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、コットンラットに、本発明の方法によるシナジス(登録商標)を含む液体製剤を投与し、このコットンラットを、10pfuのRSVに曝露し、4日後又はそれ以降に犠牲にして、RSV力価及びシナジス(登録商標)血清力価を測定する。この結果、10pfuのRSVに曝露されたコットンラットにおいて、10pfuのRSVに曝露されたが製剤を投与されていないコットンラットに比べて、RSV力価に2logの低下、すなわち99%の減少をもたらす用量が、この製剤における、RSV感染又はその1若しくは複数の症状を治療、予防、又は改善するためにヒトに投与できる用量である。さらに、この実施形態では、犠牲にしたラットから得た組織(例えば、肺組織)に組織学的な変化がないかどうか調べることができる。
【0171】
本発明の方法に従った本発明の液体製剤の投与は、これがRSV感染の時間経過を少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、又は少なくとも99%減少させる効果に関して試験することができる。本発明の液体製剤は、これがRSV感染に罹患したヒトの生存期間を少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、又は少なくとも99%延長する効果に関して試験することもできる。さらに、本発明の液体製剤は、これがRSV感染に罹患したヒトの入院期間を少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、又は少なくとも99%短縮する効果に関して試験することもできる。当業者にとって公知の技法を用いて、本発明の液体製剤の機能を分析することができる。
【0172】
RSV感染又はその1若しくは複数の症状に対して、本明細書に開示された本発明の液体製剤がもつ予防効果及び/又は治療効果を評価するのに、当業者に公知のいかなるin vitroアッセイ、又はin vivoアッセイを用いることもできる。
【0173】
5.8.3.毒性アッセイ
本発明の予防プロトコール及び/又は治療プロトコールが有する毒性及び/又は有効性は、細胞培養又は実験動物において、例えば、LD50(集団の50%にとって致死となる用量)及びED50(集団の50%に治療上有効な用量)の測定など、標準的な薬学手法を行うことで決定できる。毒性作用をもつ用量と、治療効果をもつ用量との比が治療インデックスであり、LD50/ED50という比率として計算できる。大きな治療インデックスを示す治療が好ましい。毒性副作用を示す療法を用いることもできるが、非感染細胞に対する潜在的損傷を最小化して、それによって副作用を低減させるために、そのような薬剤の送達系が患部組織部位を標的とするような設計に注意が払われるべきである。
【0174】
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、予防薬及び/又は治療薬をヒトに使用するのための、様々な用量を処方するのに用いることができる。そのような薬剤の用量は、毒性を全く伴わないかほとんど伴わない、ED50を含めた循環濃度の範囲にあることが好ましい。用量は、使用される剤形及び投与経路によって、この範囲の中で変化してもよい。本発明の方法で用いられたいかなる治療に関しても、治療上有効な量を、まず細胞培養アッセイで推定することができる。動物モデルにおいて、用量が細胞培養で測定されたIC50(すなわち、症状の抑制が最大限度の半分に達する被験化合物の濃度)を含めた血漿中循環濃度の範囲になるように処方することができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するのに用いることができる。血漿中濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーで測定できる。
【0175】
5.9.キット
本発明はRSV感染又はその1若しくは複数の症状を予防、治療、管理、又は改善するたのための本発明の液体製剤を入れた1又は複数の容器を含む薬剤パック又はキットを提供する。特定の実施形態では、本発明の液体製剤は、限定されるものではないが、異種タンパク質、非相同ポリペプチド、非相同ペプチド、大分子、小分子、マーカー配列、検出可能な診断用薬剤、治療成分、薬物成分、放射性金属イオン、二次抗体、及び固相担体を含む別の成分と、組換えによって融合されているか、又は化学的に結合されているシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントを含む。
【0176】
本発明は上記の方法に使用可能なキットを提供する。一実施形態では、キットは、1又は複数の容器の中に、本発明の液体製剤を含む。別の実施形態では、キットは、1又は複数の容器の中に本発明の液体製剤を含み、さらに、他の1又は複数の容器の中に、RSV感染又はその1若しくは複数の症状の予防、管理又は治療に有用な他の1又は複数の予防薬又は治療薬を含む。キットはさらに、RSV感染を予防、治療、管理、又は改善する(例えば、本発明の液体製剤を単独で使用するか、又は別の予防薬若しくは治療薬と併用する)ための説明書や、投与方法に関わる副作用情報及び用量情報を含むことが好ましい。場合によっては、そのような容器は、医薬品又は生物製剤の製造、使用又は販売の規制を行う政府機関が規定した形態における、ヒトに投与のための製造、使用又は販売がこの政府機関によって承認されていることを示す通知を伴うことがある。
【実施例1】
【0177】
6.1.実施例1:安定性試験
25mMヒスチジン、1.6mMグリシン、及びシナジス(登録商標)を水性担体中に含むpH6の本発明の抗体製剤を、以下のプロトコールに従って調製した。
【0178】
緩衝液1kg:水800gに、ヒスチジン(遊離塩基)3.875gと及びグリシン0.12gを溶解した。pHを6N HClで6.0±0.2に調整した。水を加えて、総質量を1.0kg(qs)とした。
【0179】
透析ろ過:精製プロセス中のクロマトグラフィーステップの後、150g/Lとなるようにシナジス(登録商標)を濃縮した。濃縮産物は、製剤緩衝液中で透析ろ過した。製剤化した産物を、目標製造濃度である103±3g/Lに希釈した。
【0180】
安定性試験のため、2つの製剤を調製した。一方は105mg/mlのシナジス(登録商標)を含有し、もう一方は160mg/mlのシナジス(登録商標)を含有した。それぞれの製剤の安定性に関しては、2〜8℃で15カ月まで、38〜42℃で1年まで、保存中の凝集体形成及び崩壊の程度を、HPSECを用いて測定した。HPSEC分析に関しては、通常、0.1Mリン酸ナトリウム及び0.1M硫酸ナトリウムを含むpH6.8の移動相を備えたTosoHaas G3000WXLカラムを流速0.8ml/分で用いた。適当な体積中に250mgのタンパク質を含有する試料を、カラムに注入し、280nMのUV、及び/又は蛍光(励起280nm、及び発光340nm)でタンパク質ピークを検出した。
【0181】
表3に示す通り、データは、シナジス(登録商標)の各製剤を2〜8℃で15カ月保存した際、凝集に検出可能な増加がなかったことを示した。
【表2】

【0182】
製剤を38〜42℃で60日間保存した場合には、105mg/mlのシナジス(登録商標)を含有する製剤中では、凝集物に約1.5%の増加があるのが観測され、160mg/mlのシナジス(登録商標)を含有する製剤中では、2.0%の増加があるのが観測された。
【実施例2】
【0183】
6.2.実施例2:臨床試験
25mMヒスチジン及び1.6mMグリシンを含むpH6の水溶液中に100mg/mlのシナジス(登録商標)を含む本発明の液体製剤を、第I相試験平行群間二重盲検無作為化試験による、安全性試験及び忍容性試験について試験する。被験薬は、シナジス(登録商標)の液体(Liq)製剤と、シナジス(登録商標)の現在認可されている凍結乾燥(Lyo)製剤である。合計48人の志願者を、4つの処置グループの1つに無作為に割り付ける。
【0184】
グループ1:N=12、試験0日目及び30日目に、3mg/kgのシナジス(登録商標)(Liq)(IM)
グループ2:N=12、試験0日目及び30日目に、3mg/kgのシナジス(登録商標)(Lyo)(IM)
グループ3:N=12、試験0日目に、15mg/kgシナジス(登録商標)(Liq)(IV)
グループ4:N=12、試験0日目に、15mg/kgシナジス(登録商標)(Lyo)(IV)
【0185】
被験薬の各投与の前及び30分間後に、バイタルサインを調べる。有害事象は、被験薬の最終投与後30日間モニターし、重篤な有害事象は、試験60日目以降までモニターする。
【0186】
試験0日目に、投与前、注入終了時(IV投与グループのみ)、並びにIM注射、又は注入終了の0.25、0.5、1、4、8、及び12時間後に、シナジス(登録商標)血液濃度のためにすべての志願者から採血する。それに続いて、シナジス(登録商標)濃度測定用の血液試料を、試験5日目まで毎日、並びに試験7、14、21、30、37(IMグループのみ)、及び60日目に採取する。抗シナジス(登録商標)抗体のための血清試料は、試験0、7、14、21、30、37(IMグループのみ)、及び60日目に採取する。血清化学と、比率計数及び血小板計数を伴うCBCのための試料、並びに尿分析用尿試料は、試験0日目、及びシナジス(登録商標)の各投与後7日目(IVグループは試験7日目、またIMグループは試験7及び37日目)に採取する。尿中βHCG試験は、シナジス(登録商標)の投与日(IVグループは試験0日目、またIMグループは試験0及び30日目)に、各投与の前に行う。試験のフローチャートを、図2に示す。
【0187】
6.2.1.試験手順
A.志願者の選択
この試験における志願者は、健常成人男性又は成人女性である。志願者は、志願者の質問及び関心に対処する治験担当医師によるカウンセリングを受け、試験参加についての書面によるインフォームドコンセントを確実に行う。試験手順又は被験薬の投与を行う前に、書面によるインフォームドコンセントを得る。
【0188】
a.試験対象患者基準
志願者は以下の評価基準をすべて満たさなければならない:
1.男性又は女性である
2.被験薬の初回投与時に、18〜49才である
3.体重が150kg以上である
4.志願者から書面によるインフォームドコンセントが得られている
5.性交渉のある女性は、手術によって不妊となっていない限り、被験薬の初回投与前の14日間、避妊に有効な手段(経口避妊薬若しくは埋込型避妊薬、IUD、女性用コンドーム、殺精子剤付き隔膜、子宮頸キャップ、禁欲、性的パートナーによるコンドームの使用、又は不妊の性的パートナーが含まれる)を使用しなければならず、被験薬の最終投与後30日間にわたりそのような予防措置を用い続けることに同意しなければならず、かつ被験薬の初回投与前2日以内に血清妊娠試験を行って、陰性でなければならない
6.病歴及び身体検査において、健康である
7.プロトコールの必要に応じて、60日間の追跡調査期間を完遂することができる。
【0189】
b.除外基準
志願者は下記のいずれにも該当してはならない:
1.試験開始時における急性疾患
2.試験開始時における、99.5°F以上の発熱
3.試験0日目の前7日以内における、なんらかの薬物治療(避妊薬を除いて)
4.試験開始6カ月以内における400mL以上の献血
5.試験参加前60日以内における免疫グロブリン又は血液製剤の投与
6.このプロトコールにおける、被験薬の初回投与前120日以内から、被験薬の最終投与後60日後以降までの間の、なんらかの治験薬治療又は標準ワクチンの投与
7.免疫不全の病歴
8.被験薬のなんらかの成分に対するアレルギー疾患、又は悪化の可能性をもつアレルギー反応の病歴
9.この試験で志願者の安全性を危うくする可能性のある介入疾患における過去の病歴又は証拠
10.A、B若しくはC型肝炎ウイルス、又はHIV−1の感染を示す証拠
11.スクリーニング(試験参加前の21日以内でなければならない)において、下記いずれかに該当。CBC:Hgb<12.0gm/dl;WBC<4,000/mm;血小板数<120,000/mm(又は、実験室標準値);AST、ALT、BUN、クレアチニン>正常上限値;治験責任医師の見解において、臨床的に有意であると判断される、スクリーニングパネルにおける他の異常検査値;治験責任医師の見解において、検討結果の分析を混乱させる可能性があると判断される、スクリーニングパネルにおける他の異常検査値
12.授乳期間中の母親
13.過去2年以内のアルコール又は薬物乱用の病歴
14.なんらかの全身病に関する身体検査による証拠。
【0190】
B.無作為化
a.志願者の無作為化手順及び治療の割り当て
志願者は、スクリーニングに来院の際に、試験参加への適格性評価を行うために、治験責任医師による評価を受ける。スクリーニング検査を受けたすべての志願者に関するマスターログが保持される。インフォームドコンセントに署名し、かつ適格性基準を満たす志願者が試験に参加する。志願者が無作為化(試験0日目)のための治験実施施設に到着したとき、治験担当医師は志願者がすべての試験対象患者基準及び除外基準を満たすことを確認する。治験担当医師は、その後、患者識別番号(PID)を割り当てる。患者識別番号は、2か所の治験実施施設それぞれの内部で、治験実施施設1では#101から、治験実施施設2では#201から始まって、順番に割り当てられる。志願者は、PIDが割り当てられたときに、試験に参加したと見なされる。各治験実施施設の治験担当薬剤師に提供される無作為化リストに、その治験実施施設における4つの治療グループそれぞれへの志願者の配属が示されている。治験担当医師は、301−527−4217にファクシミリ伝送(ファックス)を行い、メディミューン(MedImmune)に、志願者が無作為化されたことを通知する。PIDが割り当てられても、なおどの被験薬も受けない志願者、被験薬の不完全な注入を受けた志願者、被験薬の両IM注射のうちいずれかを受けない志願者、又は、研究来院の少なくとも50%を完了していない志願者は、治験依頼者の判断で交替させることができる。有害事象のため脱落する志願者、又は健康状態が確認できない志願者は交替されない。有害事象以外の理由で、同意を撤回する志願者は、交替させることができる。交替志願者には新規のPIDが割り当てられる。交替された志願者に関しては、プロトコールに従って、安全性の追跡調査が継続される。
【0191】
b.盲検化
これは二重盲検試験である。IMグループ又はIVグループの中でも、どの志願者が凍結乾燥製剤に割り当てられたか、又は液体製剤に割り当てられたかに関する盲検性が維持される。シナジス(登録商標)の2つの製剤投与中における盲検性を維持するために、各治験実施施設の治験担当薬剤師は、治験実施施設における被験薬の調製を、治療ステーションから物理的に隔離し、かつ治験責任医師、又は試験の実施に直接関与するどの治験担当者からも、知見できないようにして行う。IM注射のためには、薬剤師は、液体、又は再構成凍結乾燥シナジス(登録商標)を算定した量で含む、同一の外見の5mL注射器を用意する。IV注入にためには、薬剤師は、液体、又は再構成凍結乾燥シナジス(登録商標)を算定した量で含む、同一の外見の200mL注入バックを用意する。標識は、シリンジ/バッグに、液体又は再構成凍結乾燥シナジス(登録商標)のどちらが含まれているか特定しない。志願者の試験治療配属を特定する無作為化リストを見ることができる人々は、薬局記録のみを調査する独立モニター、メディミューンにおける統計学者及び臨床供給マネージャー、並びに治験実施施設における治験担当薬剤師だけである。これらの人々は、無作為化情報をだれにも明らかにしてはいけない。志願者への試験治療が、治験担当医師に既知となった場合、治験担当医師はメディミューンに直ちに通知しなければならない。盲検性が失われた場合、そのような事例はすべて、試験報告書に記載される。
【0192】
C.被験薬
a.被験薬供給及び責任
治験依頼者は、適切な量の液体シナジス(登録商標)、凍結乾燥シナジス(登録商標)、及び希釈剤(滅菌注射用蒸留水)を治験担当医師に提供する。被験薬は、2℃から8℃(36°Fから46°F)で保存されるべきであり、凍結してはならない。
【0193】
液体シナジス(登録商標)は、1mLの体積(25mMヒスチジン、1.6mMグリシン、pH6.0)に100mgの無菌液体生成物を含有する3mLバイアルで提供される。
【0194】
凍結乾燥シナジス(登録商標)は、100mgの無菌凍結乾燥産物を含有する5mLバイアルで提供される。この凍結乾燥産物は、処方された場合(凍結乾燥前)には、25mMヒスチジン、1.6mMグリシン、及び3%(w/v)マンニトールを含有し、pH6.0である。
【0195】
治験担当薬剤師は、正確な薬物責任記録を保守しなければならない。試験完了時に、すべての被験薬責任記録は治験依頼者に返還される。未使用の被験薬はすべて、治験依頼者に返還される。
【0196】
b.治療計画
下記の治療計画を、この試験で用いる。
【表3】

【0197】
c.被験薬の注文及び調製
治験担当薬剤師は、投与用被験薬の用量を調製しなければならない。PID及び志願者の体重を示す被験薬処方箋が、治験担当医師(又は指名された人)によって薬剤師に送られる。治験担当薬剤師は、その後この情報を用いて、被験薬を調製する。
【0198】
投与用の液体シナジス(登録商標)、又は凍結乾燥シナジス(登録商標)を調製するために、薬剤師は、バイアルキャップのタブ部分を取り除いき、70%エタノール、又はそれに相当するものでゴム栓を清掃するべきである。バイアルには、通気するべきである。各志願者用の用量は、シナジス(登録商標)投与日の、志願者の体重(0.1キログラム単位で最も近い値)に基づいて、下記のようにして計算される。用量は、0.1ml単位で、最も近い値に整えるべきである。被験薬のすべての調製物は、シナジス(登録商標)のバイアルが入った後、6時間以内に投与しなければならない。6時間以内に投与されない場合、新規のバイアルを用いなければならない。
【0199】
液体シナジス(登録商標)の調製
(1)IM注射用:必要体積の液体シナジス(登録商標)(100mg/mL)は、5mL注射器を用いて、必要な数のバイアルの内容物をプールすることによって得られる
用量(mL)=[志願者の体重(kg)×用量レベル(3mg/kg)]÷薬物濃度(100mg/mL)
例:体重75.6kgの志願者は、2.3mLのシナジス(登録商標)の投与を受ける
(75.6kg×3mg/kg)÷100mg/mL=2.268mL(2.3mLに値を整える)
【0200】
(2)IV注入用:必要体積の液体シナジス(登録商標)(100mg/mL)は、20mL(又はさらに大きな)注射器を用いて、必要な数のバイアルの内容物をプールすることによって得られる
用量(mL)=[志願者の体重(kg)×用量レベル(15mg/kg)]÷薬物濃度(100mg/mL)
この体積の液体シナジス(登録商標)を、空の200mL注入バッグに注入し、最終濃度が20mg/mLシナジス(登録商標)となるように、4倍量の希釈剤を添加することによって、希釈剤で1:4に希釈する
例:体重71.4kgの志願者は、10.7mLのシナジス(登録商標)の投与を受ける
[(71.4kg×15mg/kg)÷100mg/mL=10.71mL(10.7mLに値を整える)]
及び、42.8mlの希釈剤(4×10.7)で、前注入体積は53.5mL
【0201】
凍結乾燥シナジス(登録商標)の調製
(1)IM注射用:最終濃度が100mg/mLシナジス(登録商標)となるように、1mlの希釈剤を、凍結乾燥シナジス(登録商標)のバイアルにゆっくり添加するべきである。泡立つのを避けながら、このバイアルを、穏やかに、30秒間回転させるべきである。シナジス(登録商標)が透明になるまで、再構成シナジス(登録商標)を最低20分間、室温で静置するべきである。必要体積の再構成凍結乾燥シナジス(登録商標)(100mg/mL)は、5mL注射器を用いて、必要な数だけのバイアルの内容物をプールすることによって得られる
用量(mL)=[志願者の体重(kg)×用量レベル(3mg/kg)]÷薬物濃度(100mg/mL)
例:体重75.6kgの志願者は、2.3mLのシナジス(登録商標)の投与を受ける
(75.6kg×3mg/kg)÷100mg/mL=2.268mL(2.3mLに値を整える)
【0202】
(2)IV注入用:最終濃度が20mg/mLシナジス(登録商標)となるように、5mlの希釈剤を、凍結乾燥シナジス(登録商標)のバイアルにゆっくり添加するべきである。泡立つのを避けながら、このバイアルを、穏やかに、30秒間回転させるべきである。シナジス(登録商標)が透明になるまで、再構成シナジス(登録商標)を最低20分間、室温で静置するべきである。必要体積の再構成凍結乾燥シナジス(登録商標)(20mg/mL)は、20mL(又はさらに大きな)注射器を用いて、必要な数だけのバイアルの内容物をプールし、この体積を空の200mL注入バッグに注入することによって得られる
用量(mL)=[志願者の体重(kg)×用量レベル(15mg/kg)]÷薬物濃度(20mg/mL)
例:体重71.4kgの志願者は、53.6mLのシナジス(登録商標)の投与を受ける
(71.4kg×15mg/kg)÷20mg/mL=53.55mL(53.6mLに値を整える)]
【0203】
d.被験薬の投与
IM及びIV治療グループ用被験薬は、それぞれ、同一の外見の5mL注射器、及び同一の外見の200mL注入バッグに入れて、薬局から分配される。
【0204】
IM注射
この被験薬は、標準的な無菌技法を用いて、IM注射で三角筋に(針が血管に入っていないことを確認した後)、投与する。志願者は注射後少なくとも30分間治験実施施設で観察下におく。
【0205】
IV注入
IVカテーテルは、薬物投与前に、利用しやすい静脈に標準的な挿入技法を用いて配置する。IVカテーテルの開通性は、USP注射用5%ブドウ糖を10〜25mL/時の流速でIVを持続注入することによって維持する。ブドウ糖注入を中断し、シナジス(登録商標)をタンパク質低結合性の0.22μmフィルターを通して、約1〜2mL/分の流速で注入する。シナジス(登録商標)を投与した後、IVチューブは、IVカテーテルが取り外されるまで、USP注射用5%ブドウ糖を10〜25mL/時の流速で流し、開口しておくべきである。
【0206】
e.併用薬
試験0日目から試験60日目までに、志願者が用いたすべての併用薬を症例記録表に記録する。志願者は下記のものの投与を受けてはならない:
1.免疫抑制性薬物の投与(吸入及び局所用コルチコステロイドは許容される)
2.試験参加の120日前から試験60日目までの治験薬
志願者が禁止された併用薬の投与を受けた場合、治験依頼者に通知しなければならない。志願者は、治験担当医師又はこの志願者の主治医によって必要と認められる、有害事象を治療するための薬物療法を受けることができる。
【0207】
D.志願者評価のスケジュール
PIDが割り当てられて、なんらかの被験薬の投与を受けたすべての志願者は、追跡調査の同意が破棄されない限り、投与された被験薬の投与回数にかかわらず、プロトコールに従って追跡調査される。来院又は評価プロトコールからの逸脱はすべて、治験依頼者に通知しなければならず、このような評価は、妥当な場合には、本来のスケジュールに可能な限り最も近い時に、計画を組み直すか、実施しなければならない。
【0208】
志願者は、試験来院時間のいかなる異常に関してでも、治験担当者に電話で報告すること、また、医学的評価が必要でかつ状況の緊急性を鑑みて可能である場合には、治験実施施設に来院することが指示される。治験実施施設以外の医療設備へ緊急来院した場合、また他の予定外の来院を行った場合、その医療記録は、治験担当医師によって取得される。スクリーニング及び治験中の来院手順のスケジュールを、表4に示し、各来院の詳細な説明をそれに続いて行う。
【表4】

【0209】
a.投与前のシナジス(登録商標)血清中濃度測定用に、注入終了時(IV投与グループのみ)と、注射後/注入終了後0.25、0.5、1、4、8、及び12時間とに採血する
b.女性のみ
c.ALT、AST、BUN、クレアチニン
d.IM投与グループのみ
e.各用量の前及び30分後に得られたバイタルサイン
f.各用量の30日後までの有害事象。試験60日目までの重篤有害事象
g.試験30日目は体重のみ。
【0210】
a.スクリーニング
注意:試験参加(試験0日目)前21日以内に、すべてのスクリーニング検査評価を行わなければならない。スクリーニング評価は、1回以上の来院で行ってもよい
1.書面によるインフォームドコンセント
2.適格性基準の確認
3.病歴のスクリーニング
4.身体検査によるスクリーニング
5.身長及び体重
6.尿分析
7.スクリーニングのための血液採取
・A型肝炎抗体、B型肝炎表面抗原、C型肝炎抗体のための血清
・血清βHCG(女性志願者のみ)
・化学パネル(AST、ALT、BUN、クレアチニン)
・比率計数及び血小板計数を伴うCBC
【0211】
試験0日目:用量1
来院1
1.適格性基準の確認
2.身長及び体重
3.尿分析
4.尿中βHCG(女性志願者のみ)
5.基底血液採取
・化学パネル(AST、ALT、BUN、クレアチニン)
・比率計数及び血小板計数を伴うCBC
・シナジス(登録商標)濃度測定用の血清
・抗シナジス(登録商標)抗体測定用の血清
6.無作為化及びPIDの割り当て
7.被験薬投与前のバイタルサイン(体温、血圧、脈搏数、呼吸速度)
注意:被験薬投与前に、上記すべてを完了しなければならない。
【0212】
1.被験薬の投与
2.注入終了後、又は注射後、30分間のバイタルサインモニター
3.有害事象と重篤有害事象のモニター
4.投与後の血液採取
・点滴終了直後(IV用量グループのみ)と、注射後/注入終了後0.25、0.5、1、4、8、及び12時間のシナジス(登録商標)濃度測定用の血清
【0213】
試験1日目:用量1 薬物動態学用試料の採取
来院2
1.24時間目のシナジス(登録商標)血清中濃度測定用の投与後の血液採取
2.有害事象及び重篤有害事象のモニター
【0214】
試験2日目:用量1 薬物動態学用試料の採取
来院3
1.48時間目のシナジス(登録商標)血清中濃度測定用の投与後の血液採取
2.有害事象と重篤有害事象のモニター
【0215】
試験3日目:用量1 薬物動態学用試料の採取
来院4
1.72時間目のシナジス(登録商標)血清中濃度測定用の投与後の血液採取
2.有害事象と重篤有害事象のモニター
【0216】
試験4日目:用量1 薬物動態学用試料の採取
来院5
1.96時間目のシナジス(登録商標)血清中濃度測定用の投与後の血液採取
2.有害事象と重篤有害事象のモニター
【0217】
試験5日目:用量1 薬物動態学用試料の採取
来院6
1.120時間目のシナジス(登録商標)血清中濃度測定用の投与後の血液採取
2.有害事象と重篤有害事象のモニター
【0218】
試験7日目:
来院7
1.尿分析
2.血液採取
・化学パネル(AST、ALT、BUN、クレアチニン)
・比率計数及び血小板計数を伴うCBC
・シナジス(登録商標)濃度測定用の血清
・抗シナジス(登録商標)抗体測定用の血清
3.有害事象と重篤有害事象のモニター
【0219】
試験14±1日目:
来院8
1.血液採取
・シナジス(登録商標)濃度測定用の血清
・抗シナジス(登録商標)抗体測定用の血清
2.有害事象と重篤有害事象のモニター
【0220】
試験21±1日目:
来院9
1.血液採取
・シナジス(登録商標)濃度測定用の血清
・抗シナジス(登録商標)抗体測定用の血清
2.有害事象と重篤有害事象のモニター
【0221】
試験30±1日目:
来院10
すべての志願者
1.血液採取
・シナジス(登録商標)濃度測定用の血清
・抗シナジス(登録商標)抗体測定用の血清
2.有害事象と重篤有害事象のモニター(IM投与グループの志願者のみ)
3.体重
4.尿中βHCG
5.被験薬投与前のバイタルサイン
6.被験薬の投与
7.注射30分間後のバイタルサインのモニター
【0222】
試験37±1日目:
来院11
IM投与グループの志願者のみ
1.尿分析
2.血液採取
・化学パネル(AST、ALT、BUN、クレアチニン)
・比率計数及び血小板計数を伴うCBC
・シナジス(登録商標)濃度測定用の血清
・抗シナジス(登録商標)抗体測定用の血清
3.有害事象と重篤有害事象のモニター
【0223】
試験60日目±2:
来院12
1.血液採取
・シナジス(登録商標)濃度測定用の血清
・抗シナジス(登録商標)抗体測定用の血清
2.有害事象のモニター
【0224】
E.志願者評価方法
a.ルーチン検査評価
スクリーニング中、及び試験中のルーチン検査試験は、各治験実施施設の臨床検査室で行われる。試験中の尿妊娠試験は、治験実施施設において認可された試験を用いて行われる。異常な検査結果については、できるだけ早く(好ましくは24〜48時間以内に)反復検査すべきである。
【0225】
b.薬物動態学及び免疫評価
シナジス(登録商標)血清濃度及び抗シナジス(登録商標)抗体の測定は、メディミューン社によってELISAで行われる。
【0226】
F.試験の完了及び追跡調査の断念
志願者は、試験60日目を通して追跡調査された時に試験を完了したとみなされる。志願者が試験60日目を通して試験追跡調査の手順を完了したかどうか症例記録表に特定するべきである。志願者は、試験60日目に志願者の状態を決定するだけの十分な情報がないというように、試験完了時までに接触が全く定められていない場合だけに、追跡調査からいなくなったとみなされる。治験担当医師は、研究期間中にいなくなった志願者との接触を回復させる試みを記録するべきである。いなくなった志願者との接触が回復した場合には、プロトコールに従って、追跡調査を再開するべきである。
【0227】
薬物動態学評価及び免疫評価は、ELISAによって測定されたシナジス(登録商標)血清濃度及び抗シナジス(登録商標)抗体に基づいて行われる。
【0228】
均等物
当業者ならば、本明細書に記載した発明の特定の実施形態に多数の均等物があることを理解するか、又は日常的な実験を用いるのみで確認することができる。そのような均等物も、本願の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0229】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許、及び特許出願を、個々の刊行物、特許、又は特許出願をそれぞれ参照により組み入れるように明確かつ個別に明示した場合と同様に、参照により本明細書に組み入れる。
【0230】
本明細書における引用、又は引用文献に関する議論は、それらが本発明の先行技術であると承認しているとして解釈するべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも15mg/mlのシナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメント、及び
(b)ヒスチジン、
を水性担体中に含み、界面活性剤、無機塩、又は他の賦形剤を実質的に含まない、液体シナジス(登録商標)製剤。
【請求項2】
水性担体が蒸留水である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
滅菌されている、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
均質である、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
pHが約5.5から約6.5までの範囲にある、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの濃度が少なくとも100mg/mlである、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの濃度が少なくとも110mg/mlである、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの濃度が少なくとも150mg/mlである、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの濃度が少なくとも160mg/mlである、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
ヒスチジンの濃度が約10mMから約30mMである、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
グリシンをさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
グリシンの濃度が3.0mM未満である、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
HPSECで測定して、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントが40℃で少なくとも100日間安定である、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
HPSECで測定して、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントがほぼ周囲温度で少なくとも1年間安定である、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
HPSECで測定して、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントが4℃で少なくとも3年間安定である、請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
HPSECで測定して、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントが4℃で3〜5年間安定である、請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
HPSECで測定して、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントが4℃で少なくとも5年間安定である、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
HPSECで測定して、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの2%未満が凝集体を形成する、請求項1に記載の製剤。
【請求項19】
HPSECで測定して、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの1%未満が凝集体を形成する、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
HPSECで測定して、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントの0.5%未満が凝集体を形成する、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項22】
賦形剤が糖である、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
糖がショ糖である、請求項22に記載の製剤。
【請求項24】
ショ糖の濃度が約1%から約20%である、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
賦形剤がマンニトール以外のポリオールである、請求項21に記載の製剤。
【請求項26】
ポリオールがポリソルベートである、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
ポリオールがTweenであり、その濃度が約0.001%から約1%である、請求項25に記載の製剤。
【請求項28】
各ステップで、シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントが水相中に存在する方法で調製された、請求項1に記載の製剤。
【請求項29】
乾燥ステップを有しない方法で調製された、請求項1に記載の製剤。
【請求項30】
凍結乾燥ステップを有しない方法で調製された、請求項1に記載の製剤。
【請求項31】
ヒトへの非経口投与に適し、請求項1又は3に記載の製剤を適当な容器中に含む、医薬単位投与剤形。
【請求項32】
シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントが、1mlから20mlの体積で約15mg/mlから約300mg/mlの濃度である、請求項31に記載の医薬単位投与剤形。
【請求項33】
シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントが、1.2mlの体積で100mg/mlの濃度である、請求項32に記載の医薬単位投与剤形。
【請求項34】
製剤が皮下投与に適している、請求項32に記載の医薬単位投与剤形。
【請求項35】
製剤が静脈内投与に適している、請求項32に記載の医薬単位投与剤形。
【請求項36】
製剤が筋内投与に適している、請求項32に記載の医薬単位投与剤形。
【請求項37】
ヒトへのエアロゾル投与に適し、請求項1又は3に記載の製剤を適当な容器中に含む、医薬単位投与剤形。
【請求項38】
シナジス(登録商標)又はその抗原結合性フラグメントが、1.1mlから1.3mlの体積で約15mg/mlから約300mg/mlの濃度である、請求項37に記載の医薬単位投与剤形。
【請求項39】
請求項1、2、又は3に記載の製剤を含む密封容器。
【請求項40】
被験体におけるRSV感染に関連した1又は複数の症状を予防、治療、又は改善する方法であって、予防上有効な量又は治療上有効な量の請求項1、3、29、30、又は31に記載の製剤を投与することを含む、上記方法。
【請求項41】
製剤を非経口投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
製剤を筋内投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
製剤を静脈内投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
製剤を皮下投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
製剤を鼻腔内投与する、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−100342(P2013−100342A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−15408(P2013−15408)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【分割の表示】特願2010−165408(P2010−165408)の分割
【原出願日】平成15年6月16日(2003.6.16)
【出願人】(504333972)メディミューン,エルエルシー (108)
【Fターム(参考)】