説明

官能基化N−置換ピロリドニウムイオン液体

本発明は、N−置換ピロリジノンに基づき、かつ種々の長さのリンカーによってピロリドン環から離れている側鎖アンモニウムカチオンが組み込まれているイオン液体として有用な化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本参照によりすべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される、2008年12月4日に出願の米国特許出願第12/328,078号明細書に基づく優先権および利益を主張する。
【0002】
本発明は、イオン液体として有用であるN−置換ピロリドニウム化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン液体は、約100℃以下で流体であるイオンから組成された液体である。イオン液体はごくわずかな蒸気圧を示し、揮発物の排出、ならびに、帯水層および飲料水の汚染などの環境への配慮による従来の工業用溶剤の使用を制限する規制上の圧力のますますの増加に伴って、従来の溶剤に対する代替として機能することが可能であるイオン液体の設計のために多くの研究が充てられている。
【0004】
イオン液体は、典型的には、N−アルキルピリジニウム、1,3−ジアルキルイミダゾリウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウムまたはトリアルキルスルホニウムカチオンなどの有機カチオンの塩から構成される。特許文献1には、例えば、種々の長さのリンカーによってピロリドン環から離れている側鎖アンモニウムカチオンを有するN−置換ピロリドンに基づいたイオン液体が記載されている。しかしながら、特に少なくとも部分的に再生可能な資源から調製され得るものといった、選択された用途における使用のために設計され得る他のイオン液体に対する要求が未だ存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,157,588号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の式1:
【化1】

〔式中
(a)Zは−(CH−であって、式中、nは2〜12の整数であり;
(b)Rは、Rは、各々、独立して、HまたはC〜C直鎖もしくは分岐アルキル基であり;
(c)Rは、−[(CH−X]−(CH−Y−Rであって、式中、XおよびYの各々は、独立してOまたはNRであり、rおよびpの各々は、独立して1〜4の整数であり、qは0〜8の整数であり、ならびに、RはHまたはC〜C直鎖もしくは分岐アルキル基であり;ならびに、
(d)Aは、レブリネート、[BF、[PF、[SbF、[CHCO、[HSO、[CFSO、[HCFCFSO、[CFHFCCFSO、[CF−O−CFHCFSO、[CFCFOCFHCFSO、[CFCFCFOCFHCFSO、[HCClFCFSO、[(CFSON]、[AlCl、[CFCO、[NO、[SO2−、Cl、Br、I、およびFからなる群から選択されるアニオンである〕
の構造により表される化合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、部分的にN−置換ピロリドンから誘導される化合物に関する。これらの化合物は、アニオンと、側鎖アンモニウムカチオンが種々の長さのリンカーによってピロリドン環から離れているカチオンとを含む。このリンカーは、本明細書に規定の式Iの記載においてはZと称されている。これらの化合物はイオン液体として有用であると共に、例えば、溶剤として、種々のタイプの反応(アルキル化反応など)用の触媒として、および、種々の気体(COなど)の吸収剤として用いられることが可能である。これらの化合物はまた、カチオン性部分、および、関連するアニオンのいくつかは、安価な再生可能なバイオマス原料の加水分解から入手され得るレブリン酸またはレブリン酸誘導体から容易に調製され得るという利点を有する。
【0008】
本明細書における組成物の記載においては、本明細書において多様に採用されているとおり一定の用語法について以下の定義構造が提供されている。
【0009】
「アルキル」基は、一般式C2n+1を有する一価の基(すなわち、1の原子価を有する)である。
【0010】
「バイオマス」は、任意のセルロース系またはリグノセルロース材料を指し、セルロースを含有する材料を含み、任意により、ヘミセルロース、リグニン、デンプン、オリゴ糖および/または単糖をさらに含む。バイオマスはまた、タンパク質および/または脂質などの追加の成分を含んでいてもよい。本明細書における使用に好適なバイオマスは、単一の資源に由来してもよく、または、2種以上の資源に由来する混合物であってもよい。このような資源としては、特に限定されないが、バイオエネルギー作物、農業残渣、都市固体廃棄物、産業固体廃棄物、製紙業由来のスラッジ、庭ごみ、木材および森林廃棄物が挙げられる。バイオマスの例としては、特に限定されないが、トウモロコシ子実、トウモロコシ穂軸、トウモロコシの皮などの穀物残渣、トウモロコシ茎葉、草、コムギ、コムギワラ、干草、稲藁、スイッチグラス、古紙、サトウキビバガス、モロコシ、大豆、製粉由来の残渣、木、枝、根、葉、ウッドチップ、おがくず、低木および潅木、野菜、果実、花および動物たい肥が挙げられる。
【0011】
「触媒」は、反応速度には作用するが反応平衡には作用せず、化学的に変化することなく反応から現れる物質である。
【0012】
「転化率」は、反応において生成物に転化される特定の反応体の重量割合を指す。
【0013】
「ヒドロカルビル」基は、炭素および水素のみを含有する1価の基である。
【0014】
「イオン液体」は、約100℃以下で流体である有機塩である。
【0015】
「レブリネート」イオンは、以下の式:
【化2】

の構造により表されるアニオンである。
【0016】
「金属触媒」は、少なくとも1種の金属、少なくとも1種のRaney(登録商標)金属、その化合物またはこれらの組み合わせを含む触媒である。担持金属触媒は、触媒物質が金属である担持触媒である。
【0017】
「金属促進剤」は、触媒に添加されて、反応におけるその物理的または化学的機能を高める金属化合物である。金属促進剤はまた、添加されて、望ましくない副反応を抑制すること、および/または、反応速度に作用することが可能である。
【0018】
「促進剤」は、触媒に添加されて、反応におけるその物理的または化学的機能を高める周期律表の元素である。促進剤はまた、添加されて、望ましくない副反応を抑制すること、および/または、反応速度に作用することが可能である。
【0019】
「ピロリジノン」は、用語「ピロリドン」と同義的に用いられ;「ピロリジン−2−オン」は、用語「2−ピロリドン」と同義的に用いられる。
【0020】
「選択性」は、反応の生成物の総重量(未反応反応体の重量を含む)における特定の反応生成物の重量割合を指す。
【0021】
本発明は、以下の式1:
【化3】

の構造によって表される化合物を提供し、式中、(a)Zは−(CH−であって、式中、nは2〜12の整数であり;(b)Rは、Rは、各々、独立して、HまたはC〜C直鎖もしくは分岐アルキル基であり;(c)Rは、−[(CH−X]−(CH−Y−Rであって、式中、XおよびYの各々は、独立してOまたはNRであり、rおよびpの各々は、独立して1〜4の整数であり、qは0〜8の整数であり、ならびに、RはHまたはC〜C直鎖もしくは分岐アルキル基であり;ならびに、(d)Aは、レブリネート、[BF、[PF、[SbF、[CHCO、[HSO、[CFSO、[HCFCFSO、[CFHFCCFSO、[CF−O−CFHCFSO、[CFCFOCFHCFSO、[CFCFCFOCFHCFSO、[HCClFCFSO、[(CFSON]、[AlCl、[CFCO、[NO、[SO2−、Cl、Br、I、およびFからなる群から選択されるアニオンである。
【0022】
種々の実施形態において、Z中のnは、2〜6の整数であってもよく、頻繁に2である。他の実施形態において、RおよびRの各々は、独立して、H、−CH、−CHCHまたは−CHCHCHであってもよく、頻繁に、Rは−CHであり、Rは−CHCHCHである。他の実施形態において、rおよびpは2〜4であり、より典型的には2である。他の実施形態においてqは0〜4であり、より典型的には0である。他の実施形態において、XおよびYは共にOであり、または、XおよびYは共にNRであり、より典型的にはYはOである。他の実施形態において、RはHであり、RおよびRは−CHであり、Rは、−(CH−O−(C)、−(CH−O−(CH)または−(CH−OHであり、ならびに、Aは、レブリネート、[CFHFCCFSOまたは[(CFSON]である。
【0023】
本明細書の化合物は、以下の式2(式中Z、RおよびRは上記に定義されているとおりである)の構造によって表されるピロリジン−2−オンから合成され得る。
【化4】

【0024】
N−ヒドロカルビルピロリジン−2−オンの合成
ピロリジン−2−オンは、反応(I):
【化5】

のとおり、レブリン酸、または、そのエステルを、式RN−Z−NHのジアミン
と、水素ガスおよび触媒の存在下に接触させることにより合成され得、ここで、Z、RおよびRは上記に定義されているとおりであり、RはH、−CH、−CHCHまたはC〜C直鎖もしくは分岐アルキル基である。他の実施形態において、ピロリジン−2−オンは、アンモニウムレブリネートなどのレブリン酸の塩を、式RN−Z−NHのジアミンと、水素ガスおよび触媒の存在下に接触させることにより合成され得る。種々の実施形態においては、本明細書における使用に好適なジアミンにおいて、Zは−(CH−であり得、式中、nは2〜12の整数であり、RおよびRの各々は、独立して、H、−CH、−CHCHまたはC〜C直鎖もしくは分岐アルキル基であり得る。
【0025】
反応(I)において形成されるピロリジン−2−オンは、各々が本参照によりすべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される米国特許第6,818,593号明細書または米国特許第6,900,337号明細書において教示されているか、または、これらから適用される方法および条件に従って合成されることが可能である。反応(I)に従うピロリジン−2−オンの合成に関して、反応開始時のジアミン対レブリン酸またはその塩もしくはエステルのモル比は、約0.01/1〜約100/1、または、約0.3/1〜約5/1であり得る。この還元性アミノ化反応に対する温度範囲は、約25℃〜約300℃、または、約75℃〜約200℃であり得る。この圧力は、約0.3MPa〜約20.0MPaまたは約1.3MPa〜約7.6MPaの範囲であり得る。この反応は、水などの非反応性溶剤媒体、または、アルコール、エーテルあるいはピロリドン中に実施され得る。あるいは、過剰量のジアミンを反応媒体とすることも可能である。
【0026】
反応(I)における使用に好適な触媒の主成分は、パラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、イリジウム、白金、ニッケル、コバルト、銅、鉄、オスミウム;これらの化合物;ならびに、これらの組み合わせからなる群からの金属から選択され得る。化学的促進剤は触媒の活性を増大させ得る。促進剤は、触媒構成成分の化学処理における任意のステップの最中に触媒中に組み込まれ得る。このプロセスのための好適な促進剤としては、錫、亜鉛、銅、金、銀およびこれらの組み合わせから選択される金属が挙げられる。好ましい金属促進剤は錫である。用いられることが可能である他の促進剤は、周期律表の第1族および第2族から選択される元素である。
【0027】
触媒は、担持されていても担持されていなくてもよい。担持触媒は、活性触媒物質が、吹付け、液浸または物理的混合、その後の乾燥、焼成、および、必要であれば、還元または酸化などの方法を通じた活性化などの多数の方法によって担持材料上に堆積されたものである。担持体として頻繁に用いられる材料は、大きい総表面積(外部および内部)を有し、触媒の単位重量当たりで高い濃度の活性部位をもたらすことが可能である多孔性固形分である。触媒担持体は、触媒物質の機能を増強させ得る。
【0028】
本明細書において有用な触媒担持体は、特に限定されないが、シリカ、アルミナおよびチタニアなどの酸化物;硫酸バリウム;炭酸カルシウム;ならびに、炭素を含む任意の固体不活性物質であることが可能である。この触媒担持体は、粉末、顆粒、ペレット等の形態であることが可能である。好ましい担持材料は、炭素、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、チタニア、チタニア−アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、これらの化合物およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。担持金属触媒はまた、1種以上の化合物から形成された担持材料を有していることが可能である。より好ましい担持体は、炭素、チタニアおよびアルミナである。さらに好ましい担持体は、100m/gを超える表面積を有する炭素である。さらに好ましい担持体は、200m/gを超える表面積を有する炭素である。好ましくは、炭素は、触媒担持体の5重量%未満である灰分を有し、ここで、灰分は、炭素の灰化後に残留する無機残渣(炭素の原重量の割合として表記される)である。
【0029】
担持触媒中の金属触媒の好ましい含有量は、金属触媒重量と担持体重量との和を基準として、担持触媒の約0.1重量%〜約20重量%である。より好ましい金属触媒含有量範囲は、担持触媒の約1重量%〜約10重量%である。金属触媒および担持体の組み合わせは、本明細書において言及されている金属のいずれか1種と、本明細書において言及されている担持体のいずれかとを含み得る。金属触媒および担持体の好ましい組み合わせとしては、炭素上のパラジウム、炭酸カルシウム上のパラジウム、硫酸バリウム上のパラジウム、アルミナ上のパラジウム、チタニア上のパラジウム、炭素上の白金、アルミナ上の白金、シリカ上の白金、シリカ上のイリジウム、炭素上のイリジウム、アルミナ上のイリジウム、炭素上のロジウム、シリカ上のロジウム、アルミナ上のロジウム、炭素上のニッケル、アルミナ上のニッケル、シリカ上のニッケル、炭素上のレニウム、シリカ上のレニウム、アルミナ上のレニウム、炭素上のルテニウム、アルミナ上のルテニウムおよびシリカ上のルテニウムが挙げられる。金属触媒および担持体のさらに好ましい組み合わせとしては、炭素上のパラジウム、アルミナ上のパラジウム、チタニア上のパラジウム、炭素上の白金、アルミナ上の白金、炭素上のロジウム、アルミナ上のロジウム、炭素上のルテニウムおよびアルミナ上のルテニウムが挙げられる。
【0030】
触媒担持材料に担持されていない触媒が未担持触媒である。未担持触媒は、白金黒またはRaney(登録商標)(W.R.Grace & Co.,Columbia MD)触媒であり得る。Raney(登録商標)触媒は、活性金属および溶出可能な金属(通常はアルミニウム)を含有する合金の選択的な溶出による調製の結果として、大きな表面積を有する。Raney(登録商標)触媒は、より大きな特定の領域によって高い活性度を有すると共に、低い温度での水素化反応を可能とする。Raney(登録商標)触媒の活性金属としては、ニッケル、銅、コバルト、鉄、ロジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、パラジウム;これらの化合物;およびこれらの組み合わせが挙げられる。促進剤金属もまた、ベースとなるRaney(登録商標)金属に添加されて、Raney(登録商標)触媒の選択性および/または活性に作用し得る。Raney(登録商標)触媒用の促進剤金属は、元素周期律表の第IIIA族から第VIIIA族、第IB族および第IIB族の遷移金属から選択され得る。促進剤金属の例としては、典型的には金属全体の重量の約2重量%で、クロム、モリブデン、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウムおよびパラジウムが挙げられる。
【0031】
本明細書における使用のためのレブリン酸は、バイオマスから入手され得る。バイオマスのレブリン酸への転化のために、バイオマスは、一連の1つ以上の反応器中で、好ましくは加圧下に高温で水および酸触媒と接触され得る。この基本的なプロセスは、例えば、各々が本参照によりすべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される、米国特許第5,608,105号明細書、米国特許第5,859,263号明細書、米国特許第6,054,611号明細書および米国特許第7,153,996号明細書に記載されている。一般に、バイオマス中のセルロースが、1つ以上の反応器中でレブリン酸およびギ酸エステルに転化される。バイオマスから生成されるレブリン酸はまた、例えば米国特許第7,153,996号明細書に記載されているとおり、レブリン酸のオレフィンとの反応を介してレブリン酸エステルに転化され得る。
【0032】
反応(I)における使用に好適なジアミンは、例えば、Huntsman(Houston TX)もしくはBASF(Mount Olive NJ)などの供給業者から商業的に入手され得るか、または、EllerおよびHenkes,Diamines and Polyamines[Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry(2002年)のチャプター8,Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.]、もしくは、Experimental Methods in Organic Chemistry,第3版のチャプター22[Moore,DalrympleおよびRodig(編)、(1982年)Saunders College Publishing,NY]に考察されているものなどの方法により合成されてもよい。
【0033】
ピロリジン−2−オンの形成は、バッチ、逐次バッチ(すなわち、一連のバッチ反応器)で、または、Fogler、Elementary Chemical Reaction Engineering,第2版[(1992年),Prentice−Hall,Inc.,N.J.,USA]において考察されているものなどの器具における連続モードで実施され得る。反応(I)に従って合成されるピロリジン−2−オンは、例えば蒸留によって回収されるか、または、固体酸触媒粒子が存在する場合には、これをろ過により除去して回収され得る。
【0034】
N−ヒドロカルビルピロリジン−2−オンの転化
本明細書の化合物は、ピロリジン−2−オンの非環窒素の4級化によって、以下の式3:
【化6】

(式中、Z、R、RおよびRの各々は上記に定義されているとおりであり、A’は、Cl、BrおよびIからなる群から選択される)
の構造により表される第4級アンモニウム化合物を得ることにより合成され得る。
【0035】
上記に記載の第4級アンモニウム化合物を形成するために、ピロリジン−2−オンが、式R−A(式中、Rは上記に記載のとおりであり、A’は、Cl、BrおよびIからなる群から選択される)を有するアルキル化ハロゲン化物と接触される。式R−A’の化合物は、商業的に入手することが可能であり、または、米国特許第2,913,496号明細書、米国特許第4,820,672号明細書または米国特許第6,136,586号明細書;Cardosoら,J.Polymer Sci.,Part B:Polymer Physics(1997年),35(3),第479〜488ページ;または、Lermitら,J.of the Chem.Soc.(1947年),第530〜3ページにおいて検討されているものなどの方法により調製されることが可能である。
【0036】
この四級化反応は、アセトニトリル、アセトンまたはジクロロメタンなどの不活性溶剤中に実施され得る。四級化は、任意により不活性雰囲気下での、反応体の還流によって達成され得る。反応体が引湿性である場合には、四級化反応、および/または、以下に記載のアニオン交換反応を水および空気が遮断された条件下で実施することが好ましい。アルキル化ハロゲン化物は、反応の開始時に、わずかな過剰量(例えば、約5重量%過剰量)で存在する。この反応は、約10℃〜約100℃の範囲内;または、約30℃〜約90℃の範囲内;または、約60℃〜約90℃の範囲内の温度で実施され得る。反応のための時間は、一般に、約1分間〜約72時間、または、約30分間〜約24時間である。このような目的のための使用に好適な四級化反応を実施する方法は、Organic Chemistry[MorrisonおよびBoyd(編)第3版(1973年);Allyn and Bacon,Inc.,Boston;チャプター23.5,第752〜753ページ]などの資料にさらに検討されている。
【0037】
アニオン交換
このように形成された第4級アンモニウム化合物は、次いで、M(式中、Mは、H、Li、K、Na、Ag、Mg、Ca、Ce、Ba、RbおよびSrからなる群から選択され、ならびに、Aは、[BF、[PF、[SbF、[CHCO、[HSO、[NO、[CFSO、[HCFCFSO、[CF−O−CFHCFSO、[CFCFOCFHCFSO、[CFCFCFOCFHCFSO、[CFHFCCFSO、[HCClFCFSO、[(CFSON]、[AlCl、[CFCO、[NO、[SO2−、Cl、Br、I、Fおよびレブリネートからなる群から選択されるアニオンである)と接触させられて、所望のアニオンの選択に応じて本明細書に記載の化合物が形成される。交換反応に先立って、過剰量のアルキル化剤が例えば蒸発によって除去されてもよい。加えて、第4級アンモニウム化合物は、アニオン交換の前に、溶剤で洗浄され、乾燥されてもよい。
【0038】
アニオン交換反応は、任意により不活性雰囲気下で第4級アンモニウム化合物をMと混合することにより実施され得る。アニオン交換反応は、約−20℃〜約100℃の範囲内の温度で、約1秒間〜約72時間の時間で実施され得る。この反応において有用な溶剤は、反応体および生成物に対して不活性であるべきであり、例えば、メタノール、エタノール、アセトンおよび/またはアセトニトリルが挙げられる。溶剤またはこれらの混合物の選択は、所望のアニオンを含有する化合物の反応混合物の残りからの分離を促進させることとなる。アニオン交換反応を高め得る追加の技術としては、国際公開第03/048078号パンフレットにおいて検討されているとおり、超音波処理が挙げられる。
【0039】
アニオン交換反応における使用に好適なフルオロアルキルスルホネートアニオンは、一般に、Kosharら[J.Am.Chem.Soc.(1953年)75:4595〜4596ページ]、米国特許出願第06/276,670号明細書および米国特許出願第06/276,671号明細書において検討されている方法に従って、過フッ素化末端オレフィンまたは過フッ素化ビニルエーテルから合成され得る。一実施形態においては、亜硫酸塩および重亜硫酸塩が、重亜硫酸塩およびホウ酸ナトリウムの代わりに緩衝剤として用いられ、他の実施形態においては、この反応は、ラジカル開始剤の不在下で実施される。アニオン交換反応の生成物は、減圧下での反応溶剤の蒸発、沈殿した塩を除去するための傾瀉および/またはろ過などの技術により回収され得る。
【0040】
1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1,1,2、3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、および1,1,2−トリフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)エタンスルホネートは、
・亜硫酸塩と重亜硫酸塩との混合物が緩衝剤として用いられ、粗1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートおよび1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート生成物が、水性反応混合物から凍結乾燥または噴霧乾燥によって単離され、
・粗1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートおよび1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート塩の抽出にアセトンが用いられ;ならびに、
・1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネートおよび1,1,2−トリフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)エタンスルホネートが冷却により反応混合物から結晶化される、Kosharの変形に従って合成され得る。
【0041】
本明細書に示されている式の各々は、(1)他の多様なラジカル、置換基または数値的係数のすべてを一定に保持しつつ、多様なラジカル、置換基または数値的係数の1つに対する規定の範囲内から選択を行うことにより、および、(2)その上での、他の多様なラジカル、置換基または数値的係数の各々に対する規定の範囲内から、他のものを一定にしつつ、同等の選択を実施することにより、その式において構築可能である個別の独立した化合物の各々およびすべてを記載している。範囲によって記載された群の構成要素の1つのみの多様なラジカル、置換基または数値的係数のいずれかに対する規定の範囲内でなされた選択に追加して、ラジカル、置換基または数値的係数の群全体の構成要素のすべて未満であってその2つ以上を選択することにより複数の化合物が記載されていてもよい。多様なラジカル、置換基または数値的係数のいずれかに対する規定の範囲内でなされた選択が(i)範囲によって記載されている群全体の構成要素の1つのみ、または(ii)群全体の構成要素のすべて未満であって2つ以上を含有するサブグループである場合、選択された構成要素は、選択されてサブグループを形成しない群全体の構成要素を除外することによって選択される。化合物または複数の化合物は、このような場合、除外されてサブグループを形成する構成要素が群全体に不在である場合に、その可変項に対する規定の範囲の群全体を参照する多様なラジカル、置換基または数値的係数の1つ以上の定義によって特徴付けられ得る。
【0042】
本発明の種々の実施形態において、イオン液体は、本明細書に記載されているか開示されている個別のカチオンのいずれかを選択すること、および、これと対を成す本明細書に記載されているか開示されている個別のアニオンのいずれかを選択することにより形成され得、それ故、形成されたイオン液体は、二酸化炭素の吸収などの本明細書に開示されている目的のいずれかに用いられ得る。従って、さらに他の実施形態において、イオン液体のサブグループは、本明細書に記載および開示されているカチオンの総群から、その総群の個別の構成要素のすべての種々の異なる組み合わせで任意のサイズのカチオンのサブグループを選択すること、および、これと、本明細書に記載および開示されているアニオンの総群から、その総群の個別の構成要素のすべての種々の異なる組み合わせで任意のサイズのアニオンのサブグループを対とすることにより形成され得る。既述のとおり選択を行うことによるイオン液体、または、イオン液体のサブグループの形成において、イオン液体またはサブグループは、選択のためにその総群から除外されるカチオンおよび/またはアニオンの群の構成要素の不在下に形成されることとなり、および、所望される場合には、この選択は、それ故、使用のために含まれる群の構成要素よりも使用から除外される総群の構成要素の観点からなされ得る。
【0043】
本明細書に記載の化合物はイオン液体として有用であり、普通、約100℃の温度以下では流体である。イオン液体の物理的および化学的特性は、カチオンの選択により影響される。例えば、カチオンの1本以上のアルキル鎖の鎖長を延長することで、イオン液体の融点、親水性/親油性、密度、粘度および溶媒和度などの特性が影響されることとなる。イオン液体の物理的および化学的特性に対するカチオンおよびアニオンの選択の影響は、WasserscheidおよびKeim[Angew.Chem.Int.Ed.,39,第3772〜3789ページ(2000年)]、ならびに、Sheldon[Chem.Commun.,第2399〜2407ページ(2001年)]などの資料においてさらに検討されている。本明細書に記載の化合物は、単相系または多相系において、溶剤として、種々の種類の反応(アルキル化反応など)用の触媒として、および、種々の気体(COなど)用の吸収剤として利用され得る。
【0044】
他の関連するN−置換ピロリドニウム化合物、および、二酸化炭素を吸収するためのこれを用いた方法が、各々が本参照によりすべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される、出願番号、代理人記録番号および名称によって以下に列挙されている同時出願中の、本発明の譲受人に譲渡された出願に開示されている。具体的には:
米国特許出願第12/328,057号明細書[CL4180 US NA(N−Substituted Pyrrolidonium Ionic Liquids)]、現在では、米国特許出願公開第2010/0xxxxxx号明細書;
米国仮特許出願第61/119,781[CL4349 US PRV(N−Substituted Pyrrolidonium Ionic Liquids with Expanded Linker)]、現在では、米国特許出願公開第2010/0xxxxxx号明細書;および
米国仮特許出願第61/119,783[CL4398 US PRV(Carbon Dioxide Removal and Ionic Liquid Compounds Useful Therein)]、現在では、米国特許出願公開第2010/0xxxxxx号明細書。
【実施例】
【0045】
本発明により提供される化合物、ならびに、有利な特質およびその効果を、以下に記載の一連の実施例に見ることが可能である。これらの実施例が基づいている本発明の実施形態は単なる代表例であり、本発明を例示するためのこれらの実施形態の選定が、これらの実施例において記載されていない材料、成分および反応体、ならびに/あるいは、条件、手順および体制が本発明の実施に好適ではないこと、または、これらの実施例において記載されていない主題が添付の特許請求の範囲の範囲およびその均等物から除外されることを示すものではない。
【0046】
実施例においては、以下の略語が用いられている:核磁気共嗚はNMRと略記されており;熱重量分析はTGAと略記されており;ガスクロマトグラフィはGCと略記されており;ガスクロマトグラフィ−質量分光測定はGC−MSと略記されており;薄層クロマトグラフィはTLCと略記されており;摂氏はCと略記されており;メガパスカルはMPaと略記されており;グラムは「g」と略記されており;ミリリットルは「mL」と略記されており;時間は「hr」と略記されている。
【0047】
材料
以下の材料を実施例において用いた。市販されている試薬および溶剤アセトニトリル(CAS登録番号75−05−8、99.8%純度)、2−クロロエタノール(CAS登録番号107−07−3、99%純度)、ジクロロメタン(CAS登録番号75−09−2、99.5%純度)、ジエチルエーテル(CAS登録番号60−29−7、99%純度)、2−クロロエチルエチルエーテル(CAS登録番号628−34−2、98%純度、Fluka product)、2−クロロエチルメチルエーテル(CAS登録番号627−42−9、98%純度)、エチルレブリネート(CAS登録番号539−88−8、99%純度)、酢酸エチル(CAS登録番号141−78−6、99.8%純度)、レブリン酸(CAS登録番号123−76−2、98%純度)、酸化銀(I)(CAS登録番号20667−12−3、99%純度)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(CAS登録番号82113−65−3、97%純度、Fluka product)、および、N,N−ジメチルエチレンジアミン(CAS登録番号108−00−9、98.0%純度、Fluka product)は、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin,USA)から入手し、さらに精製することなくそのまま用いた。
【0048】
カリウムヘキサフルオロプロパンスルホネート(CAS登録番号905298−79−5、95+%純度)を、米国特許出願第06/276,671号明細書に開示されている方法に準拠して調製した。ESCAT(登録商標)142触媒(活性炭素に担持された5重量%パラジウム)はEngelhard(現在ではBASF Catalysts,Iselin,NJ)から入手した。
【0049】
実施例1は、種々の例示的なイオン液体のその後の調製において用いた、1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−5−メチルピロリジン−2−オン(MeDMAP)中間体を調製する方法を示している。実施例2〜6は、このMeDMAP中間体に基づいている化合物のクラスを代表するいくつかの例示的なイオン液体の調製を記載している。
【0050】
実施例1
1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−5−メチルピロリジン−2−オン(MeDMAP)の合成
170.25g mol−1の分子量および式4:
【化7】

に示す構造を有する1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−5−メチルピロリジン−2−オン(MeDMAP)、C18Oを、エチルレブリネートのN,N−ジメチルエチレンジアミンの順環式還元性アミノ化を介して以下に記載のとおり(ならびに、米国特許第7,157,588号明細書において検討されているとおり)調製した。
【0051】
ガス飛沫同伴タービンインペラおよび電気加熱マントルを備える600mL Hastelloy(登録商標)C−276オートクレーブ反応器(Parr Model 2302 HC)に、150.0g(1.04mol)エチルレブリネート、192.6g(2.18mol)N,N−ジメチルエチレンジアミン、および、7.5g ESCAT(登録商標)142 5%Pd/C触媒を添加した。反応器を先ず窒素で、次いで水素でパージし、次いで、50psig(0.4MPa)水素で加圧し、反応混合物を150℃に加熱しながら600rpmで攪拌した。この反応温度に達したら、反応器を1000psig(7.0MPa)に水素でさらに加圧し、反応の最中は必要に応じて追加の水素を加えることによりこの圧力を維持した。
【0052】
これらの条件で6時間の後、反応器を冷却およびベントして、液体反応混合物を生成物の単離のために回収した。粗混合物をアスピレータ減圧を介してガラスフリットを通してろ過して触媒を除去し、続いて、副産物のエタノールおよび未反応のN,N−ジメチルエチレンジアミンを減圧中で除去した。残留した内容物を高真空(約0.05mmHg)下に20−cmのVigreauxカラムで分留して、85℃で、77%の単離収率で136.5gの無色透明の生成物を得た。生成物の純度は、GC/MS(MSDを備えたHP−6890)で測定したところ>99%であった。
【0053】
実施例2
1−(N,N,N−ジメチル(エチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド([MeDMEEAP][TFN])の合成
523.51g mol−1の分子量および式5に示す構造を有する1−(N,N,N−ジメチル(エチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド([MeDMEEAP][TFN])、C1527を以下のとおり調製した。
【化8】

【0054】
170.25g mol−1の分子量およびGC/MSで>99%の純度を有する1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−5−メチルピロリジン−2−オン(MeDMAP)、C18Oを実施例1において調製したまま用いた。窒素パージした還流凝縮器を備えた二首100mL丸底フラスコに、24.27g(0.143モル)MeDMAP、30.40g(0.280モル)2−クロロエチルエチルエーテル、および、反応溶剤として17.81gのアセトニトリルを添加した。コンデンサは、およそ16℃で維持した水とプロピレングリコールとの50重量%混合物で満たした再循環浴によって冷却した。反応混合物を還流下で85℃に加熱し、恒温油浴で窒素パージした。この反応温度を120hrの間維持し、この時点でMeDMAPの転化率は、H NMR分光法で約94.4%であった。
【0055】
次いで、反応混合物を熱的に反応停止させ、多段ジエチルエーテルで抽出し、酢酸エチル洗浄で出発材料を除去して中間生成物を精製した。ロータリーエバポレータを用いて減圧中で溶剤を除去し、次いで、中間生成物をターボ分子ポンプを用いて高真空(およそ10−6torr)下で乾燥させて、材料を約70〜80℃に一晩加熱した。この反応の得られた中間生成物である、278.82g mol−1の分子量を有する1−(N,N,N−ジメチル(エチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンクロリド([MeDMEEAP][Cl])、C1327Clを測定したところ、H NMR分光法で約95.1%の最終純度を有していた。
【0056】
500mL丸底フラスコ中で、11.50g(0.0413mol)のこの[MeDMEEAP][Cl]中間体をおよそ150mLの精製水中に溶解させ、氷浴中で冷やし、次いで、およそ150mLの水中に溶解させた12.81g(0.0456mol)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドと混合した。反応溶液を室温で一晩攪拌した後、得られたILを、IL生成物をジクロロメタンで有機相中に分配し続けながら、得られた塩酸および過剰量のビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドを各々が約15mLの多段水洗で抽出することにより精製した。ロータリーエバポレータを用いて減圧中で濾液から水を除去し、次いで、生成物をターボ分子ポンプを用いて高真空(およそ10−5torr)下で乾燥させて、材料を約70℃に一晩加熱した。得られた[MeDMEEAP][TfN]生成物の純度は、H NMR分光法で約95%と推定した。
【0057】
実施例3
1−(N,N,N−ジメチル(エチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンヘキサフルオロプロパンスルホネート([MeDMEEAP][HFPS])の合成
460.43g mol−1の分子量および式6に示す構造を有する1−(N,N,N−ジメチル(エチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンヘキサフルオロプロパンスルホネート([MeDMEEAP][HFPS])、C1526Sを以下のとおり調製した。
【化9】

【0058】
278.82g mol−1の分子量およびH NMR分光法で約95.1%の最終純度を有する1−(N,N,N−ジメチル(エチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチル−ピロリジン−2−オンクロリド([MeDMEEAP][Cl])、C1327Clを、実施例5において調製されたまま用いた。500mL丸底フラスコ中で、11.28g(0.0405mol)のこの95%[MeDMEEAP][Cl]中間体をおよそ100mLのアセトン中に溶解させ、次いで、およそ50mLのアセトン中に溶解した10.51g(0.0389mol)カリウムヘキサフルオロプロパンスルホネートを徐々に添加した。反応溶液を室温で一晩攪拌した後、IL生成物をフリット漏斗を通してろ過して得られた塩化カリウム結晶を除去した。濾液を約1週間かけて凝結させたところ追加の塩化カリウム結晶が形成され、これをフリット漏斗を通したろ過で除去した。ロータリーエバポレータを用いて減圧中で溶剤を除去し、次いで、生成物をターボ分子ポンプを用いて高真空(およそ10−5torr)下で乾燥させて、材料を約70℃に一晩加熱した。得られた[MeDMEEAP][HFPS]生成物の最終純度はH NMR分光法でおよそ98%であった。
【0059】
実施例4
1−(N,N,N−ジメチル(メチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド([MeDMMEAP][TFN])の合成
509.49g mol−1の分子量および式7に示す構造を有する1−(N,N,N−ジメチル(メチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド([MeDMMEAP][TFN])、C1425を以下のとおり調製した。
【化10】

【0060】
170.25g mol−1の分子量およびGC/MSで>99%の純度を有する1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−5−メチルピロリジン−2−オン(MeDMAP)、C18Oを実施例1において調製したまま用いた。窒素パージした還流凝縮器を備えた二首100mL丸底フラスコに、20.88g(0.123モル)MeDMAP、23.93g(0.253モル)2−クロロエチルメチルエーテル、および、反応溶剤として25.03gのアセトニトリルを添加した。コンデンサは、およそ16℃で維持した水とプロピレングリコールとの50重量%混合物で満たした再循環浴によって冷却した。反応混合物を還流下で85℃に加熱し、恒温油浴で窒素パージした。この反応温度を116hrの間維持し、この時点でMeDMAPの転化率は、H NMR分光法で約95.5%であった。
【0061】
約120hrの反応時間で反応混合物を熱的に反応停止させた。この反応の中間生成物である、264.79g mol−1の分子量を有する1−(N,N,N−ジメチル(メチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンクロリド([MeDMMEAP][Cl])、C1225Clを、次いで、多段ジエチルエーテル抽出(30〜40mLの増加量でおよそ220mL)で抽出して出発材料を除去した。次いで、この反応混合物をジクロロメタン中に溶解させ、酸性および中性アルミナを充填したカラムを通してろ過した。ロータリーエバポレータを用いて減圧中で濾液から溶剤を除去し、次いで、生成物をターボ分子ポンプを用いて高真空(およそ10−6torr)下で乾燥させて、材料を約70〜80℃に一晩加熱した。この塩化物塩中間体の最終純度は、H NMR分光法でおよそ96.4%であった。
【0062】
500mL丸底フラスコ中で、13.07g(0.0494mol)のこの[MeDMMEAP][Cl]中間体をおよそ150mLの精製水中に溶解させ、氷浴中で冷やし、次いで、およそ150mLの水中に溶解させた15.54g(0.0553mol)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドと混合した。反応溶液を室温で一晩攪拌した後、得られたILを、IL生成物をジクロロメタンで有機相中に分配し続けながら、得られた塩酸および過剰量のビス(トリフルオロメタン)−スルホンアミドを各々が約15mLの多段水洗で抽出することにより精製した。ロータリーエバポレータを用いて減圧中で濾液から水を除去し、次いで、生成物をターボ分子ポンプを用いて高真空(およそ10−5torr)下で乾燥させて、材料を約70℃に一晩加熱した。得られた[MeDMMEAP][TfN]生成物の純度は、H NMR分光法で約96%と推定した。
【0063】
実施例5
1−(N,N,N−ジメチル(メチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンヘキサフルオロプロパンスルホネート([MeDMMEAP][HFPS])の合成
460.43g mol−1の分子量および式8に示す構造を有する1−(N,N,N−ジメチル(メチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンヘキサフルオロプロパン−スルホネート([MeDMMEAP][HFPS])、C1526Sを以下のとおり調製した。
【化11】

【0064】
264.79g mol−1の分子量およびH NMR分光法で約96.4%の純度を有する1−(N,N,N−ジメチル(メチルエトキシ)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンクロリド([MeDMMEAP][Cl])、C1225Clを実施例4において調製したまま用いた。
【0065】
500mL丸底フラスコ中で、12.94g(0.0489mol)のこの96.4%[MeDMMEAP][Cl]中間体をおよそ100mLのアセトン中に溶解させ、次いで、14.59g(0.0540mol)カリウムヘキサフルオロプロパンスルホネートをこの混合物に徐々に添加した。反応溶液を室温で一晩攪拌した後、IL生成物をCelite(登録商標)を含有するフリット漏斗を通してろ過して得られた塩化カリウム結晶を除去した。ロータリーエバポレータを用いて減圧中で溶剤を除去し、次いで、[MeDMMEAP][HFPS]生成物をジクロロメタン中に溶解させ、塩基性および中性アルミナを含有するカラムを通してろ過した。メタノールおよびジクロロメタンを用いて、生成物をカラムから回収した。ロータリーエバポレータを用いて減圧中で溶剤を除去し、次いで、生成物をターボ分子ポンプを用いて高真空(およそ10−5torr)下で乾燥させて、材料を約70℃に一晩加熱した。得られた[MeDMMEAP][HFPS]生成物の最終純度はH NMR分光法でおよそ96%であった。
【0066】
実施例6
1−(N,N,N−ジメチル(ヒドロキシエチル)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド([MeDMHEAP][TFN])の合成
495.46g mol−1の分子量および式9に示す構造を有する1−(N,N,N−ジメチル(ヒドロキシエチル)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンビス(トリフルオロメタン)−スルホンアミド([MeDMHEAP][TFN])、C1323を以下のとおり調製した。
【化12】

【0067】
170.25g mol−1の分子量およびGC/MSで>99%の純度を有する1−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−5−メチルピロリジン−2−オン(MeDMAP)、C18Oを実施例1において調製したまま用いた。
【0068】
窒素パージした還流凝縮器を備えた二首100mL丸底フラスコに、16.97g(0.0997モル)MeDMAP、15.92g(0.198モル)2−クロロエタノール、および、反応溶剤として18.63gのアセトニトリルを添加した。コンデンサは、およそ16℃で維持した水とプロピレングリコールとの50重量%混合物で満たした再循環浴によって冷却した。反応混合物を還流下で85℃に加熱し、恒温油浴で窒素パージした。この反応温度を100hrの間維持し、次いで、反応混合物を熱的に反応停止させ、ターボ分子ポンプを用いて高真空(およそ10−5torr)下で乾燥させて、材料を約70℃に一晩加熱した。この反応の中間生成物である、250.77g mol−1の分子量を有する1−(N,N,N−ジメチル(ヒドロキシエチル)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンクロリド([MeDMHEAP][Cl])、C1123Clは、H NMR分光法で95.6%の最終純度を有していると測定された。
【0069】
500mL丸底フラスコ中で、13.75g(0.0548mol)のこの[MeDMMEAP][Cl]中間体をおよそ150mLの精製水中に溶解させ、氷浴中で冷やし、次いで、およそ150mLの水中に溶解させた15.95g(0.0567mol)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドと混合した。反応溶液を室温で一晩攪拌した後、得られたILを、IL生成物をジクロロメタンで有機相中に分配し続けながら、得られた塩酸および過剰量のビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドを各々が約15mLの多段水洗で抽出することにより精製した。ロータリーエバポレータを用いて減圧中で濾液から水を除去し、次いで、生成物をターボ分子ポンプを用いて高真空(およそ10−5torr)下で乾燥させて、材料を約70℃に一晩加熱した。得られた[MeDMMEAP][TfN]生成物の純度は、H NMR分光法で97.8%と推定した。
【0070】
実施例7
1−(N,N,N−ジメチル(ヒドロキシエチル)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンレブリネート[MeDMHEAP][Lev])
330.42g mol−1の分子量および式10に示す構造を有する1−(N,N,N−ジメチル(ヒドロキシエチル)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンレブリネート([MeDMHEAP][Lev])、C1630を以下のとおり調製した。
【化13】

【0071】
250.77g mol−1の分子量および95.6%の最終純度を有する1−(N,N,N−ジメチル(ヒドロキシエチル)アミノエチル)−5−メチルピロリジン−2−オンクロリド([MeDMHEAP][Cl])、C1123Clを実施例5に記載のとおり調製した。
【0072】
500mLエルレンマイヤーフラスコ中で、およそ150mLの精製水中に溶解させた12.550(0.0500mol)のこの[MeDMHEAP][Cl]中間体を、5.794g(0.0250mol)酸化銀(I)と6.433g(0.0554mol)レブリン酸とのおよそ200mLの精製水中のスラリーと組み合わせた。室温で一晩攪拌した後、反応混合物をCelite(登録商標)を含有するフリット漏斗を通してろ過して、塩化銀生成物および残存酸化銀(I)を除去した。ロータリーエバポレータを用いて減圧中で濾液から水を除去し、次いで、生成物をメタノール中に2回溶解させ、Celite(登録商標)を含有するフリット漏斗を通してろ過して、残存する塩化銀および酸化銀(I)を除去し、次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧中で蒸発させてメタノール溶剤を除去した。次いで、生成物をターボ分子ポンプを用いて高真空(およそ10−5torr)下で乾燥させ、材料を2日間約70℃に加熱した。得られた[MeDMHEAP][Lev]生成物はH NMR分光法で98.9%純度であった。
【0073】
本明細書において数値の範囲が言及されているか設けられている場合、この範囲は、その端点、ならびに、この範囲内のすべての個別の整数および少数を包含し、また、その中のより狭い範囲であって、これらの端点ならびに内部の整数および少数のすべての種々の可能な組み合わせにより形成されて、同様に規定された範囲内の値のより大きな群のサブグループを形成するより狭い範囲の各々を、これらのより狭い範囲の各々が明確に言及されているかのように包含する。本明細書において、規定された値よりも大きく数値の範囲が規定されている場合、この範囲は、それにもかかわらず、有限であり、本明細書に記載されている本発明の文脈の範囲内で使用可能である値によるその上限において有界である。本明細書において、規定された値よりも小さく数値の範囲が規定されている場合、この範囲は、それにもかかわらず、ゼロ以外の値によるその下限において有界である。
【0074】
この明細書において、使用の文脈によって、そうではないと明示的に規定されているか、または、反対に示されていない限りにおいて、本明細書において言及されている量、サイズ、範囲、配合量、パラメータ、ならびに他の数量および特徴は、特に「約」という用語によって修飾されている場合、正確である必要性はなく、また、許容誤差、換算因数、端数処理、計測誤差等を反映して、ならびに、本発明の文脈内で、規定された値に対して柔軟的かつ/または操作可能な等価を有する既定の値からはずれた値の、既定された値への算入を反映して、近似値であってもよく、および/または、規定値よりも(所望に応じて)大きくても、または小さくてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式1:
【化1】

〔式中
(a)Zは−(CH−であって、ここでnは2〜12の整数であり;
(b)Rは、Rは、各々、独立して、HまたはC〜C直鎖もしくは分岐アルキル基であり;
(c)Rは、−[(CH−X]−(CH−Y−Rであって、ここでXおよびYの各々は、独立してOまたはNRであり、rおよびpの各々は、独立して1〜4の整数であり、qは0〜8の整数であり、そしてRはHまたはC〜C直鎖もしくは分岐アルキル基であり;そして
(d)Aは、レブリネート、[BF、[PF、[SbF、[CHCO、[HSO、[CFSO、[HCFCFSO、[CFHFCCFSO、[CF−O−CFHCFSO、[CFCFOCFHCFSO、[CFCFCFOCFHCFSO、[HCClFCFSO、[(CFSON]、[AlCl、[CFCO、[NO、[SO2−、Cl、Br、I、およびFからなる群から選択されるアニオンである〕
の構造によって表される化合物。
【請求項2】
Zが−(CH−であって、ここでnが2〜6の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
qが0〜4である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
qが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
rおよびpが2〜4である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
rおよびpが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
独立してとられるRおよびRが、H、−CH、−CHCHおよび−CHCHCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
およびRが−CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
が、−(CH−O−(C)、−(CH−O−(CH)、または−(CH−OHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
が、レブリネート、[CFHFCCFSOまたは[(CFSON]である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
XおよびYがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
XおよびYがNRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
XおよびYの一方がOであり、そしてXおよびYの他方がNRである、請求項1に記載の化合物。

【公表番号】特表2012−514576(P2012−514576A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539727(P2011−539727)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/066739
【国際公開番号】WO2010/065833
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】