説明

定着装置

【課題】 大電流を流すことができ、しかも高電圧に耐えられ、しかも加熱部がコンパクトな定着装置を提供すること。
【解決手段】 トナー像を保持する画像定着媒体11に接し、前記トナー像に熱を加えてこれを前記画像定着媒体11に固着させる定着ローラ12と、前記画像定着媒体11を前記定着ローラ12に押し付ける押圧ローラ13とから成り、前記定着ローラ12は、熱伝導性を有し回転する第1の円筒体と、周縁部に溝を有する巻枠17及びこの巻枠17の前記溝に捲回され高周波電流を流される誘導コイル18とから成り、前記第1の円筒体の前記画像定着媒体11に接する前の位置に熱を生ぜしめる誘導加熱体と、から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機等の画像形成装置における定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置において、トナー像を記録紙などに固定するために定着装置が用いられる。
【0003】
定着装置においてトナー像を定着するためには、トナー像を加熱しなければならず、そのために定着ローラを加熱する必要があるが、この加熱を渦電流により行う加熱装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、この渦電流を発生するためのシートコイルを用いた定着装置等について、本出願人は先に出願した(特願2004−100395)。
【特許文献1】特開2002−182526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のシートコイルを用いる定着装置では、加熱部をコンパクトにすることが可能であるが、電流や耐圧の点で限界がある。
【0006】
本発明は上記のように問題点を解決すべくなされたもので、大電流を流すことができ、しかも高電圧に耐えられ、しかも加熱部がコンパクトな定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1によれば、トナー像を保持する画像定着媒体に接し、前記トナー像に熱を加えてこれを前記画像定着媒体に固着させる定着ローラと、前記画像定着媒体を前記定着ローラに押し付ける押圧ローラとから成り、前記定着ローラは、熱伝導性を有し回転する第1の円筒体と、周縁部に溝を有する巻枠及びこの巻枠の前記溝に捲回され高周波電流を流される誘導コイルとから成り、前記第1の円筒体の前記画像定着媒体に接する前の位置に熱を生ぜしめる誘導加熱体と、から成ることを特徴とする定着装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大電流を流すことができ、しかも高電圧に耐えられ、しかも加熱部がコンパクトな定着装置が得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に本発明一実施形態の定着装置の構成例を示す。図1において、定着装置10は、紙などの画像定着媒体11に接触し、画像を加熱によりこの画像定着媒体11に固定する定着ローラ12と、画像定着媒体11を裏面から定着ローラ11に押し付ける加圧ローラ13とから成る。
【0010】
定着ローラ12は、図示しないモータにより駆動され一定速度で回転する外部円筒体14と、この外部円筒体14と同一軸で外部円筒体14内に固定されている内部円筒体15と、この内部円筒体15内で、加圧ローラ13が定着ローラ12に押し付けられる部位の直前の位置に設けられる誘導加熱体16とから成る。
【0011】
誘導加熱体16は、以下に述べる断面H形状の巻枠17と、この巻枠17に巻かれた誘導コイル18とから成る。図示していないが、この誘導コイル18には高周波電源が接続され、この電源から供給される電流が誘導コイル18に流れて、誘導加熱体16付近の内部円筒体15に渦電流が流れ、加熱される。この熱は、矢印19方向に回転する外部円筒体14に伝えられる。
【0012】
外部円筒体14の加熱された部分が、画像定着媒体11に押しつけられるとき、画像定着媒体11上のトナー像を溶かしてこの上に定着させる。
【0013】
ここで、上記誘導加熱体の製造方法について図2(a)、(b)を用いて説明する。まず、絶縁材でできた断面H形状の巻枠17を用意し(図2(a))、これに1層として誘導コイル18を捲回する。その後、この誘導コイル18を自己融着させて固定し、その後巻枠17に巻かれた誘導コイル18を例えばテープにより挟むことにより、更に誘導コイル18を固定する(図2(b))。
【0014】
このようにして製造された誘導加熱体16を、内部円筒体15内の、外部円筒体14が画像定着媒体11に接触する前の位置に、できるだけ内部円筒体15に近づけて固定する。
【0015】
このようにして設けた定着装置では、誘導コイル18に流れる電流によって誘導加熱体16に近い位置の内部円筒体15により多くの渦電流が生じ加熱されて、画像定着媒体11上で搬送されたトナー像が溶かされ、画像定着媒体11上に永久的に固着される。
【0016】
本発明の上記実施形態によれば、巻枠の周縁部に捲回された誘導コイルは1層であり厚くはならないので、コンパクトな誘導加熱体が得られ、特に内部円筒体に効率的に渦電流を発生させることができる利点がある。
【0017】
又上記実施形態によれば、内部円筒体15を固定しておくことができるので、誘導加熱体16をできるだけ内部円筒体15に接して設けることができ、効率を向上させることができる。更に、巻枠17が曲げることが可能な材料により製造されていれば、内部円筒体15の内周に近づけて設置できるので、効率を上げることが可能である。
【0018】
ところで、上記実施形態では、誘導加熱体を定着ローラ12の内部に設けたが、外部円筒体14の外側に設けることもできる。図3にこのような本発明の他の実施形態について述べる。番号30〜38は、図1における番号10〜18に対応する。但しこの実施形態では、内部円筒体がなく、誘導加熱体36は、外部円筒体34の外側であって、外部円筒体34が画像定着媒体31に接する直前の位置に設けられる。
【0019】
巻枠37に捲回された誘導コイル38に図示しない高周波電源が接続され高周波電流が流されると、この誘導加熱体36に近い外部円筒体34の表面により多くの渦電流が発生し、熱を生ずる。この熱により、画像定着媒体31上のトナー像は永久的にこの画像定着媒体31上に固着される。
【0020】
この実施形態によれば、外部円筒体34に渦電流を生ぜしめ直接加熱するので上記の実施形態より更に効率がよい利点がある。
【0021】
なお、上記実施形態においては画像定着のための装置として定着ローラを用いた場合について説明したが、本発明はベルト状のものを用いてもよく一般的には定着手段であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明一実施形態の定着装置の構造を示す図。
【図2】本発明一実施形態の誘導加熱体を製造する工程を説明するための図。
【図3】本発明の他の実施形態の定着装置の構造を示す図。
【符号の説明】
【0023】
10,30・・・定着装置、
11,31・・・画像定着媒体、
12,32・・・定着ローラ、
13,33・・・加圧ローラ、
14,34・・・外部円筒体、
15・・・内部円筒体、
16,36・・・誘導加熱体、
17,37・・・巻枠、
18,38・・・誘導コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を保持する画像定着媒体に接し、前記トナー像に熱を加えてこれを前記画像定着媒体に固着させる定着手段と、
前記画像定着媒体を前記定着手段に押し付ける押圧ローラとから成り、
前記定着手段は、
熱伝導性を有し回転する第1の円筒体と、
周縁部に溝を有する巻枠及びこの巻枠の前記溝に捲回され高周波電流を流される誘導コイルとから成り、前記第1の円筒体の前記画像定着媒体に接する前の位置に熱を生ぜしめる誘導加熱体と、から成ることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
トナー像を保持する画像定着媒体に接し、前記トナー像に熱を加えてこれを前記画像定着媒体に固着させる定着手段と、
前記画像定着媒体を前記定着手段に押し付ける押圧ローラとから成り、
前記定着手段は、
熱伝導性を有し回転する第1の円筒体と、
この第1の円筒体の内部に固定して設けられる第2の円筒体と、
周縁部に溝を有する巻枠及びこの巻枠の前記溝に捲回され高周波電流を流される誘導コイルとから成り、前記第2の円筒体の内部に設けられ、前記第1の円筒体の前記画像定着媒体に接する前の位置に熱を生ぜしめる誘導加熱体と、から成ることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
トナー像を保持する画像定着媒体に接し、前記トナー像に熱を加えてこれを前記画像定着媒体に固着させる定着手段と、
前記画像定着媒体を前記定着手段に押し付ける押圧ローラとから成り、
前記定着手段は、
熱伝導性を有し回転する第1の円筒体と、
周縁部に溝を有する巻枠及びこの巻枠の前記溝に捲回され高周波電流を流される誘導コイルとから成り、前記第1の円筒体の外側に設けられ、この第1の円筒体の前記画像定着媒体に接する前の位置に熱を生ぜしめる誘導加熱体と、から成ることを特徴とする定着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate