定量化のための標的イオンパーキング
複数の標的イオン特性および電荷減少量が受信される。複数の標的イオン特性のそれぞれの特性に対応する試料のイオン化分子の一部が、第1の位置から第2の位置に伝送され、複数の選択されたイオン化分子を産生する。試薬イオンが、選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、第2の位置に伝送される。選択されたイオン化分子の荷電状態減少は、荷電状態減少量で停止され、第2の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する。標的イオン特性は、移動度または質量電荷比を含むことができる。検体定量情報は、複数の標準物質について標的イオンパーキングを行い、キャリブレーション関数を生み出し、試料について標的イオンパーキングを行い、試料中の検体の濃度を決定するためにキャリブレーション関数を用いることにより得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
エレクトロスプレーイオン化(ESI)ならびに他のイオン化法は、ペプチドおよびタンパク質を含む巨大分子から多価検体イオンを産生することができる。このことは、より低い質量対電荷の範囲を有する質量分析計による高質量分子のある特定の分析を可能にする。プロトン移動反応を含むイオン間電荷移動反応により反応することができる一価対イオンを含む反対電荷の対イオンを導入することが、検体イオンを、より高い質量電荷比を示すより低下した多価状態に移動させることも既知である。イオンパーキングは、質量分析において、実用的用途のためにイオン間移動反応を制御する方法である。慣習的に、イオンパーキングは、特定のイオンが優先的に保持または蓄積される一方で、選択されないイオンが中和するまで非摂動反応を受けるように、選択的様式でイオン間移動反応の速度を阻害することを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本明細書で使用される項の見出しは、編成目的のためにすぎず、決して本主題を限定するものとして解釈されるものではない。
【0003】
(データ処理方法)
(イオンパーキング)
Afeyanらの米国特許第6,627,875号(「Afeyan特許」)は、三次元イオントラップを用いたイオンパーキングの方法を開示する。本方法において、調整された波形が、試料分子からイオン化分子の一部を分離するために、三次元イオントラップのエンドキャップ電極に印加される。試薬イオンが、イオン化分子の一部と反応し、イオン化分子の一部の荷電状態を減少させる。最高質量電荷比を有する減少したイオン化分子が検出される。次に、これらのステップは、別の調整された波形に対して、質量スペクトルが規定されるまで、同一の物理的空間、チャンバ、または位置で繰り返される。
【0004】
同一の物理的空間、チャンバ、または位置でイオンパーキングを行う不利点の1つとして、低下した選択性が挙げられる。イオン化分子の一部内の全ての分子は一斉に電荷減少する。結果として、関心の質量の間のノイズまたは種は、選択性を減少させる関心の質量とともにパーキングする。
【0005】
種々の実施形態において、システムおよび方法は、イオン源から生成される複数のイオンの「選択的部分」についてイオンパーキングを行う。したがって、主に関心の化合物に対応するイオンは、イオンパーキングの前に選択される。関心の化合物に対応するイオンを、いくつかのイオン特性に基づいて選択することができる。イオン特性の1つは質量である。質量に基づく選択において、質量分析器は、イオンパーキングの前に関心のイオンを選択するために使用される。質量分析器は、四重極またはトラップを含むことができるが、それらに限定されない。
【0006】
選択のために用いることができる別のイオン特性は、移動度である。移動度に基づく選択において、移動度セルは、イオンパーキングの前に関心のイオンを選択するために使用される。多価イオンは、種間で著しく異なり得る移動度を有することが示されている。多価イオンは、タンパク質またはペプチドを含むことができるが、それらに限定されない。移動度セルは、低電界移動度セル、差動移動度分析器(DMA)、差動移動度分光分析(DMS)セル、または電界非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)セルを含むことができるが、それらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
当業者であれば、以下で説明される図面が例証目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、決して出願者の教示の範囲を限定することを目的としない。
【図1】図1は、本教示の実施形態を実装し得る、ハイブリッド四重極線形イオントラップシステム(QqQLIT)を含む標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図2】図2は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよびハイブリッド四重極線形イオントラップ(QqQLIT)を含む標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図3】図3は、本教示の実施形態を実装し得る、ハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)システムを含む標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である
【図4】図4は、本教示の実施形態を実装し得る、四重極線形イオントラップ(QLIT)を含む標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図5】図5は、本教示の実施形態を実装し得る、四重極線形イオントラップ飛行時間(QLITTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図6】図6は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極飛行時間(QqTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図7】図7は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極線形イオントラップ(QLIT)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図8】図8は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極線形イオントラップ飛行時間(QLITTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図9】図9は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる移動度セルおよびハイブリッドトリプル四重極線形イオントラップ(QqQLIT)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図10】図10は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる移動度セルおよびハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図11】図11は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる移動度セルおよびハイブリッド四重極線形イオントラップ(QqQLIT)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図12】図12は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる移動度セルおよびハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図13】図13は、本教示に従って、質量分析計を用いた、イオン移動度またはイオン質量に基づく標的イオンパーキングの方法を示すフローチャートである。
【図14】図14は、本教示に従って、質量分析計を用いて質量選択の前に移動度選択が行われる、イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法を示すフローチャートである。
【図15】図15は、本教示に従って、質量分析計を用いて移動度選択の前に質量選択が行われる、イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の1つ以上の実施形態を詳細に説明する前に、当業者であれば、本発明が、その適用において、以下の詳細記述に説明されるか、あるいは図面に示される構造の詳細、構成要素の配置、およびステップの配置に制限されないことを理解するであろう。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ種々の方法で実践されるか、あるいは実行されることが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明目的であり、制限するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0009】
図1は、本教示の実施形態を実装し得るハイブリッド四重極線形イオントラップシステム(QqQLIT)を含む標的イオンパーキングのためのシステム100を図示する。システム100は、プロセッサ110および質量分析計120を含む。プロセッサ110は、質量分析計120と双方向通信する。プロセッサ110は、コンピュータ、マイクロプロセッサ、または質量分析計120にデータおよび制御信号を送信し、質量分析計120からデータおよび制御信号を受信し、かつ情報を処理することができる任意のデバイスであることができるが、それらに限定されない。
【0010】
プロセッサ110は、標的化または単離される質量電荷比群を受信する。プロセッサ110は、荷電状態減少量も受信する。プロセッサ110は、例えば、これらの値をユーザから受信する。荷電状態減少量は、試料の標的化されたイオン化分子が減少し、その結果として、試料のイオン化分子と関連する観察されたm/z(質量電荷比)を増加させる、電荷(z)の数である。言い換えると、荷電状態減少量は、電荷減少反応が停止するレベルである。
【0011】
プロセッサ110の制御下で、質量分析計120は、イオン質量に基づく標的化されたイオンパーキングを行う。試料のイオン化分子は、質量分析計120のイオン化デバイス130により作成される。イオン化分子は、カーテンプレート132、オリフィス134、およびスキマー136を通過して四重極140に到達する。四重極140は、イオン化分子を集中させるために使用される。四重極150は、プロセッサ110により受信される質量電荷比のそれぞれに対応する試料のイオン化分子の一部を選択し、四重極150から四重極160に伝送する。四重極150は、例えば、四重極イオンガイドまたは質量フィルタであることができる。四重極160は、例えば、衝突セルである。例えば、プロセッサ110を用いて、標的化される質量電荷比のそれぞれに対応する試料のイオン化分子のそれぞれの一部を連続的に伝送するための四重極150に印加される高周波直流(RFDC)電圧を変化させることができる。
【0012】
四重極150により伝送される試料のイオン化分子のそれぞれの一部は、四重極160に蓄積される。試薬イオンは、蓄積されたイオン化分子を電荷減少させるために、四重極160内に伝送される。四重極160における電荷減少反応は、荷電状態減少量で停止し、四重極160内で複数のパーキングした標的イオンを産生する。結果として、システム100において、イオン化分子は、四重極150および四重極160のそれぞれで、別々の位置において質量選択され、パーキングする。
【0013】
電荷減少は、反応の阻害により、関心の化合物に対して停止される。これは、例えば、関心の化合物に関連するm/zでの共鳴励起により行われる。ここで、zは、関心の化合物に対する減少した電荷を示す。Zが減少後により低い値を有し、かつm(質量)が所与の化合物に対して一定であるため、パーキングはより高いm/z値で起こる。他のイオンは、分析の次の段階に移るまで反応し続ける。言い換えると、反応は有限時間継続する。典型的には、許可された反応時間は、数十ミリ秒に設定される。その期間後、全てのイオンは、例えば、質量分析セクションに移され、試薬イオンは、関心の化合物のイオンの方向と反対の方向に移動する。
【0014】
より高い圧力でこれらの動作を行うことにより効率および速度を向上させることができるので、四重極160は、電荷減少およびイオンパーキングにとって好ましい位置である。典型的には、四重極140および160は、例えば、四重極150およびチャンバ170よりもはるかに高い圧力を有する。四重極140および160内の圧力は、例えば、約1〜10ミリトールである。四重極150およびチャンバ170内の圧力は、例えば、約10〜100ミクロトールである。
【0015】
試薬イオンは、試料のイオン化分子と同様の経路をたどって四重極160に到達する。試薬イオンは、例えば、四重極150により四重極160に伝送される。標的イオンおよび試薬イオンは、例えば、連続的に導入される。
【0016】
標的イオンが電荷減少し、パーキングした後、それらは、さらなる処理のために四重極160から四重極170に移される。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。
【0017】
種々の代替実施形態において、四重極150は、プロセッサ110により受信される質量電荷比のそれぞれに対応するイオン化分子の試料の一部を選択し、四重極150から四重極160を通ってチャンバ170に伝送する。四重極150により伝送される試料のイオン化分子のそれぞれの一部は、チャンバ170に蓄積される。試薬イオンは、蓄積されたイオン化分子を電荷減少させるために、四重極170の中に伝送される。チャンバ170内の電荷減少は、荷電状態減少量で停止し、チャンバ170内で複数のパーキングした標的イオンを産生する。結果として、本実施形態において、イオン化分子は、四重極150により質量選択され、イオンチャンバ170内にパーキングする。
【0018】
チャンバ170を、四重極160またはチャンバ170に蓄積された減少したイオン化分子から質量スペクトルを決定するために使用することができる。チャンバ170は、例えば、四重極、イオントラップまたは線形イオントラップ質量分析計であることができるが、それらに限定されない。検出器180が、例えば、パーキングした標的化イオンを検出するために使用される。
【0019】
図2は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルとハイブリッド四重極線形イオントラップシステム(QqQLIT)とを含む、標的イオンパーキングのためのシステム200を図示する概略図である。
【0020】
システム200は、プロセッサ110および質量分析計220を含む。プロセッサ110は、標的化または単離されるイオン移動度群を受信する。プロセッサ110は、荷電状態減少量も受信する。
【0021】
プロセッサ110の制御下で、質量分析計220は、イオン移動度に基づいて標的イオンパーキングを行う。試料のイオン化分子は、質量分析計220のイオン化デバイス130により作成される。イオン化分子は、カーテンプレート132を通過して移動度セル210に入る。移動度セル210は、プロセッサ110により受信されるイオン移動度のそれぞれに対応する試料のイオン化分子の一部を選択するために使用される。移動度セル210は、オリフィス134の前に設置され、真空下ではない。結果として、イオン移動度に基づくイオン化分子の一部は、大気圧で選択される。真空チャンバの前に移動度セル210を配置することで、その効率が増加する。
【0022】
移動度選択されたイオン化分子の一部は、オリフィス134およびスキマー136を通過して四重極140に到達する。四重極140は、イオン化分子集中させるために使用される。四重極150は、イオン化分子の一部を四重極150から四重極160に伝送する。例えば、プロセッサ110は、無線周波数(RF)モードでのみ四重極150を動作するので、四重極150により質量選択が行われない。四重極150により伝送される試料のイオン化分子のそれぞれの一部は、四重極160に蓄積される。試薬イオンは、蓄積されたイオン化分子を電荷減少させるために、四重極160の中に伝送される。四重極160内の電荷減少は、荷電状態減少量で停止し、四重極160内に複数のパーキングした標的イオンを産生する。結果として、システム200において、イオン化分子は、移動度セル210および四重極160のそれぞれで、別々の位置において移動度選択され、パーキングする。
【0023】
標的イオンが電荷減少し、パーキングした後、それらは、さらなる処理のために四重極160から四重極170に移される。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。
【0024】
種々の実施形態において、かつ上述のように、電荷減少およびイオンパーキングは、チャンバ170内でも起こり得る。これらの実施形態において、イオン化分子は、移動度セル210内で移動度選択され、チャンバ170内にパーキングされる。
【0025】
種々の実施形態において、システム200は、イオン質量およびイオン移動度の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用される。プロセッサ110は、標的化または単離されるイオン移動度群および質量電荷比群を受信する。プロセッサ110は、荷電状態減少量も受信する。
【0026】
プロセッサ110の制御下で、質量分析計220は、イオン移動度およびイオン質量に基づいて標的イオンパーキングを行う。試料のイオン化分子は、質量分析計220のイオン化デバイス130により作成される。イオン化分子は、カーテンプレート132を通過して移動度セル210に入る。移動度セル210は、プロセッサ110により受信されるイオン移動度のそれぞれに対応する試料のイオン化分子の一部を選択するために使用される。
【0027】
移動度選択されたイオン化分子の一部は、オリフィス134およびスキマー136を通過して四重極140に到達する。四重極140は、イオン化分子に集中させるために使用される。四重極150は、プロセッサ110により受信される質量電荷比のそれぞれに対応する移動度選択されたイオン化分子の一部を選択し、四重極150から四重極160に伝送する。四重極150により伝送されるイオン化分子のそれぞれの一部は、四重極160に蓄積される。試薬イオンは、蓄積されたイオン化分子を電荷減少させるために、四重極160の中に伝送される。四重極160内の電荷減少は、荷電状態減少量で停止し、四重極160内に複数のパーキングした標的イオンを産生する。結果として、システム200の本実施形態において、イオン化分子は、移動度セル210、四重極150、および四重極160のそれぞれで、別々の位置において移動度選択され、質量選択され、パーキングされる。
【0028】
イオン移動度、イオン質量、またはイオン移動度およびイオン質量の両方に基づいて標的イオンパーキングを提供することができる多くの質量分析計構造が可能である。図3〜5は、イオン質量に基づく標的イオンパーキングの例示的な質量分析計構造を示す。図6〜12は、イオン移動度またはイオン移動度およびイオン質量の両方に基づく標的イオンパーキングの例示的な質量分析計構造を示す。
【0029】
図3は、本教示の実施形態を実装し得る、ハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)質量分析計320を含む標的イオンパーキングのためのシステム300を図示する概略図である。システム300において、四重極150は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0030】
図4は、本教示の実施形態を実装し得る、四重極線形イオントラップ(QLIT)質量分析計420を含む標的イオンパーキングのためのシステム400を図示する概略図である。システム400において、チャンバ470は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極140に対して、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。線形イオントラップ(LIT)チャンバ470は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0031】
システム400の種々の実施形態において、標的イオンパーキングをチャンバ470内で行うこともできる。しかしながら、四重極140のより高い圧力が効率および速度を向上させることができるため、四重極140は、イオンパーキングにとって好ましい位置である。システム400は、本質的には、図1のシステム100の低価格バージョンであり、四重極140とチャンバ470との間でイオンを往復させて操作することにより同様の機能を行うことができる。
【0032】
図5は、本教示の実施形態を実装し得る、四重極線形イオントラップ飛行時間(QLITTOF)質量分析計520を含む標的イオンパーキングのためのシステム500を図示する概略図である。システム500において、チャンバ470は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極140に対して、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0033】
図6は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極飛行時間(QqTOF)質量分析計620を含む標的イオンパーキングのためのシステム600を図示する概略図である。システム600において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0034】
種々の実施形態において、システム600を、イオン移動度およびイオン質量の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。四重極150は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0035】
図7は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極線形イオントラップ(QLIT)質量分析計720を含む標的イオンパーキングのためのシステム700を図示する概略図である。システム700において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極140で電荷減少し、パーキングする。線形イオントラップ(LIT)チャンバ470は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0036】
種々の実施形態において、システム700を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。チャンバ470は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極140に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0037】
図8は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極線形イオントラップ飛行時間(QLITTOF)質量分析計820を含む標的イオンパーキングのためのシステム800を図示する概略図である。システム800において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極140で電荷減少し、パーキングする。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0038】
種々の実施形態において、システム800を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。チャンバ470は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極140に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0039】
図9は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる、移動度セルおよびハイブリッド四重極線形イオントラップ(QqQLIT)質量分析計920を含む標的イオンパーキングのためのシステム900を図示する概略図である。システム900において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を減圧で選択および伝送するために使用される。減圧とは、例えば、1トール未満である。移動度セル210は、スキマー136と四重極150との間に設置される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。線形イオントラップ(LIT)チャンバ170は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0040】
種々の実施形態において、システム900を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。四重極150は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0041】
図10は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる、移動度セルおよびハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)質量分析計1020を含む標的イオンパーキングのためのシステム1000を図示する概略図である。システム1000において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を減圧で選択および伝送するために使用される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0042】
種々の実施形態において、システム1000を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。四重極150は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0043】
図11は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の後に行うことができる、移動度セルおよびハイブリッド四重極線形イオントラップ(QqQLIT)質量分析計1120を含む標的イオンパーキングのためのシステム1100を図示する概略図である。システム1100において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を減圧で選択および伝送するために使用される。移動度セル210は、四重極150および四重極160との間に設置される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。線形イオントラップ(LIT)チャンバ170は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0044】
種々の実施形態において、システム1100を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。四重極150は、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。移動度セル210は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン移動度に基づく質量選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0045】
図12は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の後に行うことができる、移動度セルおよびハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)質量分析計1220を含む標的イオンパーキングのためのシステム1200を図示する概略図である。システム1200において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を減圧で選択および伝送するために使用される。移動度セル210は、四重極150と四重極160との間に設置される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0046】
種々の実施形態において、システム1200を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づく標的イオンパーキングを行うために使用することができる。四重極150は、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。移動度セル210は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン移動度に基づく質量選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0047】
図13は、本教示に従って、質量分析計を用いた、イオン移動度またはイオン質量に基づく標的イオンパーキングの方法1300を示すフローチャートである。
【0048】
方法1300のステップ1310において、プロセッサを用いて、複数の標的イオン特性および電荷減少量が受信される。複数の標的イオン特性は、複数の標的イオン移動度または複数の標的質量電荷比を含むが、それらに限定されない。
【0049】
ステップ1320において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン特性のそれぞれのイオン特性に対応する分子の試料のイオン化分子の一部が、第1の位置から第2の位置に伝送され、複数の選択されたイオン化分子を産生する。標的イオン特性が複数の標的イオン移動度を含む場合、第1の位置は、例えば、移動度セルであることができる。標的イオン特性が複数の標的質量電荷比を含む場合、第1の位置は、例えば、四重極であることができる。標的イオン特性が複数の標的質量電荷比を含む場合、特定のRFDC電圧を四重極に印加することにより、イオン化分子のそれぞれの一部を選択し、第2の位置に伝送することができる。
【0050】
ステップ1330において、質量分析計を用いて、試薬イオンが、複数の選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、第2の位置に送信される。複数の試薬イオンは、例えば、第1の位置から第2の位置にも伝送される。例えば、四重極は、複数の試薬イオンを第1の位置から第2の位置に伝送するために使用される。第2の位置は、例えば、衝突セルであることができる。
【0051】
ステップ1340において、質量分析計を用いて、複数の選択されたイオン化分子の荷電状態減少が荷電状態減少量で停止し、第2の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する。種々の実施形態において、方法1300の質量分析計は、トリプル四重極、イオントラップ、または飛行時間分光分析を含むことができるが、それらに限定されない。
【0052】
種々の実施形態において、ステップ1340で産生された複数のパーキングした標的イオンを、さらなるイオン処理で用いることができる。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。種々の実施形態において、ステップ1340で産生された複数のパーキングした標的イオンを、質量分析/質量分析(MSMS)のために用いることができる。種々の実施形態において、ステップ1340で産生された複数のパーキングした標的イオンを、検体を特定するために用いることができる。
【0053】
種々の実施形態において、方法1300を定量化のために用いることができる。ステップ1320で説明された分子の試料は、既知の検体濃度を有する分子の標準群を含むことができる。次に、定量化を、追加の以下のステップに従って行うことができる。
【0054】
ステップ1350(図示されず)において、質量分析計を用いて、ステップ1340で見出された複数のパーキングした標的イオンの複数の質量電荷比が検出され、複数の質量電荷比の強度が測定される。
【0055】
ステップ1360(図示されず)において、質量分析計を用いて、既知の検体濃度を有する分子の追加の複数の標準群が分析され、追加の複数の標準群のそれぞれの標準群が試料として使用され、それぞれの標準群のためにステップ1320〜1350が繰り返される。プロセッサを用いて、検体濃度を複数の減少した質量電荷比の強度と関連付けるキャリブレーション関数がコンパイルされる。
【0056】
ステップ1370(図示されず)において、質量分析計を用いて、未知の検体濃度を有するイオン化分子の集団が分析され、試料として集団を用いて、ステップ1320〜1350が繰り返される。集団の検体の濃度は、プロセッサを用いて、複数の減少した質量電荷比の測定された強度およびキャリブレーション関数から決定される。
【0057】
方法1300における移動度セルまたは四重極の使用は、例えば、Afeyan特許に開示される方法と比較して、電荷減少したイオン化分子の選択性を向上させることができる。同様に、質量分析計の別々のチャンバで単離および電荷減少を行うことで、電荷減少の前にイオン化分子の荷電状態の全てを蓄積することを可能にし、それによって、例えば、Afeyan特許に開示される方法と比較して、方法1300の総合的な処理能力を向上させる。
【0058】
図14は、本教示に従って、質量分析計を用いた、質量選択の前に移動度選択が行われる、イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法1400を示すフローチャートである。
【0059】
方法1400のステップ1410において、プロセッサを用いて、複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量が受信される。
【0060】
ステップ1420において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する分子の試料のイオン化分子の一部が、第1の位置から第2の位置に伝送され、複数の移動度選択されたイオン化分子を産生する。
【0061】
ステップ1430において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する複数の移動度選択されたイオン化分子の一部が、第2の位置から第3の位置に伝送され、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生する。
【0062】
ステップ1440において、質量分析計を用いて、試薬イオンが、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、第3の位置に伝送される。
【0063】
ステップ1450において、質量分析計を用いて、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少が荷電状態減少量で停止し、第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する。種々の実施形態において、ステップ1450で産生された複数のパーキングした標的イオンを、さらなるイオン処理で用いることができる。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。
【0064】
図15は、本教示に従って、質量分析計を用いた、移動度選択の前に質量選択が行われる、イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法1500を示すフローチャートである。
【0065】
方法1500のステップ1510において、プロセッサを用いて、複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量が受信される。
【0066】
ステップ1520において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれの質量電荷比に対応する分子の試料のイオン化分子の一部が、第1の位置から第2の位置に伝送され、複数の質量選択されたイオン化分子を産生する。
【0067】
ステップ1530において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する複数の質量選択されたイオン化分子の一部が、第2の位置から第3の位置に伝送され、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生する。
【0068】
ステップ1540において、質量分析計を用いて、試薬イオンが、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、第3の位置に伝送される。
【0069】
ステップ1550において、質量分析計を用いて、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少が荷電状態減少量で停止し、第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する。種々の実施形態において、ステップ1550で産生された複数のパーキングした標的イオンを、さらなるイオン処理で用いることができる。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。
【0070】
出願者の教示が種々の実施形態と併せて説明される時、出願者の教示がそのような実施形態に限定されるよう意図されていない。反対に、出願者の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替物、修正物、および同等物を包含する。
【0071】
さらに、種々の実施形態の記載において、本明細書は、特定のステップの順序として方法および/またはプロセスを示した場合がある。しかしながら、該方法またはプロセスが、本明細書に記載する特定のステップの順序に依存しない限りにおいて、該方法またはプロセスは、記載する特定のステップの順序に限定されるべきではない。当業者が理解するように、他のステップの順序が可能であり得る。したがって、本明細書に記載する特定のステップの順序は、特許請求の範囲の制限と解釈されるべきではない。さらに、該方法またはプロセスに関する特許請求の範囲は、書かれた順序でのそれらのステップの実施に限定されるべきではなく、当業者は、該順序が変更されてもよく、それにもかかわらず、種々の実施形態の精神および範囲の範囲内にとどまることを容易に理解することができる。
【背景技術】
【0001】
エレクトロスプレーイオン化(ESI)ならびに他のイオン化法は、ペプチドおよびタンパク質を含む巨大分子から多価検体イオンを産生することができる。このことは、より低い質量対電荷の範囲を有する質量分析計による高質量分子のある特定の分析を可能にする。プロトン移動反応を含むイオン間電荷移動反応により反応することができる一価対イオンを含む反対電荷の対イオンを導入することが、検体イオンを、より高い質量電荷比を示すより低下した多価状態に移動させることも既知である。イオンパーキングは、質量分析において、実用的用途のためにイオン間移動反応を制御する方法である。慣習的に、イオンパーキングは、特定のイオンが優先的に保持または蓄積される一方で、選択されないイオンが中和するまで非摂動反応を受けるように、選択的様式でイオン間移動反応の速度を阻害することを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本明細書で使用される項の見出しは、編成目的のためにすぎず、決して本主題を限定するものとして解釈されるものではない。
【0003】
(データ処理方法)
(イオンパーキング)
Afeyanらの米国特許第6,627,875号(「Afeyan特許」)は、三次元イオントラップを用いたイオンパーキングの方法を開示する。本方法において、調整された波形が、試料分子からイオン化分子の一部を分離するために、三次元イオントラップのエンドキャップ電極に印加される。試薬イオンが、イオン化分子の一部と反応し、イオン化分子の一部の荷電状態を減少させる。最高質量電荷比を有する減少したイオン化分子が検出される。次に、これらのステップは、別の調整された波形に対して、質量スペクトルが規定されるまで、同一の物理的空間、チャンバ、または位置で繰り返される。
【0004】
同一の物理的空間、チャンバ、または位置でイオンパーキングを行う不利点の1つとして、低下した選択性が挙げられる。イオン化分子の一部内の全ての分子は一斉に電荷減少する。結果として、関心の質量の間のノイズまたは種は、選択性を減少させる関心の質量とともにパーキングする。
【0005】
種々の実施形態において、システムおよび方法は、イオン源から生成される複数のイオンの「選択的部分」についてイオンパーキングを行う。したがって、主に関心の化合物に対応するイオンは、イオンパーキングの前に選択される。関心の化合物に対応するイオンを、いくつかのイオン特性に基づいて選択することができる。イオン特性の1つは質量である。質量に基づく選択において、質量分析器は、イオンパーキングの前に関心のイオンを選択するために使用される。質量分析器は、四重極またはトラップを含むことができるが、それらに限定されない。
【0006】
選択のために用いることができる別のイオン特性は、移動度である。移動度に基づく選択において、移動度セルは、イオンパーキングの前に関心のイオンを選択するために使用される。多価イオンは、種間で著しく異なり得る移動度を有することが示されている。多価イオンは、タンパク質またはペプチドを含むことができるが、それらに限定されない。移動度セルは、低電界移動度セル、差動移動度分析器(DMA)、差動移動度分光分析(DMS)セル、または電界非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)セルを含むことができるが、それらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
当業者であれば、以下で説明される図面が例証目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、決して出願者の教示の範囲を限定することを目的としない。
【図1】図1は、本教示の実施形態を実装し得る、ハイブリッド四重極線形イオントラップシステム(QqQLIT)を含む標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図2】図2は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよびハイブリッド四重極線形イオントラップ(QqQLIT)を含む標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図3】図3は、本教示の実施形態を実装し得る、ハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)システムを含む標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である
【図4】図4は、本教示の実施形態を実装し得る、四重極線形イオントラップ(QLIT)を含む標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図5】図5は、本教示の実施形態を実装し得る、四重極線形イオントラップ飛行時間(QLITTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図6】図6は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極飛行時間(QqTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図7】図7は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極線形イオントラップ(QLIT)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図8】図8は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極線形イオントラップ飛行時間(QLITTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図9】図9は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる移動度セルおよびハイブリッドトリプル四重極線形イオントラップ(QqQLIT)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図10】図10は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる移動度セルおよびハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図11】図11は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる移動度セルおよびハイブリッド四重極線形イオントラップ(QqQLIT)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図12】図12は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる移動度セルおよびハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)システムを含む、標的イオンパーキングのためのシステムを図示する概略図である。
【図13】図13は、本教示に従って、質量分析計を用いた、イオン移動度またはイオン質量に基づく標的イオンパーキングの方法を示すフローチャートである。
【図14】図14は、本教示に従って、質量分析計を用いて質量選択の前に移動度選択が行われる、イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法を示すフローチャートである。
【図15】図15は、本教示に従って、質量分析計を用いて移動度選択の前に質量選択が行われる、イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の1つ以上の実施形態を詳細に説明する前に、当業者であれば、本発明が、その適用において、以下の詳細記述に説明されるか、あるいは図面に示される構造の詳細、構成要素の配置、およびステップの配置に制限されないことを理解するであろう。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ種々の方法で実践されるか、あるいは実行されることが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明目的であり、制限するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0009】
図1は、本教示の実施形態を実装し得るハイブリッド四重極線形イオントラップシステム(QqQLIT)を含む標的イオンパーキングのためのシステム100を図示する。システム100は、プロセッサ110および質量分析計120を含む。プロセッサ110は、質量分析計120と双方向通信する。プロセッサ110は、コンピュータ、マイクロプロセッサ、または質量分析計120にデータおよび制御信号を送信し、質量分析計120からデータおよび制御信号を受信し、かつ情報を処理することができる任意のデバイスであることができるが、それらに限定されない。
【0010】
プロセッサ110は、標的化または単離される質量電荷比群を受信する。プロセッサ110は、荷電状態減少量も受信する。プロセッサ110は、例えば、これらの値をユーザから受信する。荷電状態減少量は、試料の標的化されたイオン化分子が減少し、その結果として、試料のイオン化分子と関連する観察されたm/z(質量電荷比)を増加させる、電荷(z)の数である。言い換えると、荷電状態減少量は、電荷減少反応が停止するレベルである。
【0011】
プロセッサ110の制御下で、質量分析計120は、イオン質量に基づく標的化されたイオンパーキングを行う。試料のイオン化分子は、質量分析計120のイオン化デバイス130により作成される。イオン化分子は、カーテンプレート132、オリフィス134、およびスキマー136を通過して四重極140に到達する。四重極140は、イオン化分子を集中させるために使用される。四重極150は、プロセッサ110により受信される質量電荷比のそれぞれに対応する試料のイオン化分子の一部を選択し、四重極150から四重極160に伝送する。四重極150は、例えば、四重極イオンガイドまたは質量フィルタであることができる。四重極160は、例えば、衝突セルである。例えば、プロセッサ110を用いて、標的化される質量電荷比のそれぞれに対応する試料のイオン化分子のそれぞれの一部を連続的に伝送するための四重極150に印加される高周波直流(RFDC)電圧を変化させることができる。
【0012】
四重極150により伝送される試料のイオン化分子のそれぞれの一部は、四重極160に蓄積される。試薬イオンは、蓄積されたイオン化分子を電荷減少させるために、四重極160内に伝送される。四重極160における電荷減少反応は、荷電状態減少量で停止し、四重極160内で複数のパーキングした標的イオンを産生する。結果として、システム100において、イオン化分子は、四重極150および四重極160のそれぞれで、別々の位置において質量選択され、パーキングする。
【0013】
電荷減少は、反応の阻害により、関心の化合物に対して停止される。これは、例えば、関心の化合物に関連するm/zでの共鳴励起により行われる。ここで、zは、関心の化合物に対する減少した電荷を示す。Zが減少後により低い値を有し、かつm(質量)が所与の化合物に対して一定であるため、パーキングはより高いm/z値で起こる。他のイオンは、分析の次の段階に移るまで反応し続ける。言い換えると、反応は有限時間継続する。典型的には、許可された反応時間は、数十ミリ秒に設定される。その期間後、全てのイオンは、例えば、質量分析セクションに移され、試薬イオンは、関心の化合物のイオンの方向と反対の方向に移動する。
【0014】
より高い圧力でこれらの動作を行うことにより効率および速度を向上させることができるので、四重極160は、電荷減少およびイオンパーキングにとって好ましい位置である。典型的には、四重極140および160は、例えば、四重極150およびチャンバ170よりもはるかに高い圧力を有する。四重極140および160内の圧力は、例えば、約1〜10ミリトールである。四重極150およびチャンバ170内の圧力は、例えば、約10〜100ミクロトールである。
【0015】
試薬イオンは、試料のイオン化分子と同様の経路をたどって四重極160に到達する。試薬イオンは、例えば、四重極150により四重極160に伝送される。標的イオンおよび試薬イオンは、例えば、連続的に導入される。
【0016】
標的イオンが電荷減少し、パーキングした後、それらは、さらなる処理のために四重極160から四重極170に移される。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。
【0017】
種々の代替実施形態において、四重極150は、プロセッサ110により受信される質量電荷比のそれぞれに対応するイオン化分子の試料の一部を選択し、四重極150から四重極160を通ってチャンバ170に伝送する。四重極150により伝送される試料のイオン化分子のそれぞれの一部は、チャンバ170に蓄積される。試薬イオンは、蓄積されたイオン化分子を電荷減少させるために、四重極170の中に伝送される。チャンバ170内の電荷減少は、荷電状態減少量で停止し、チャンバ170内で複数のパーキングした標的イオンを産生する。結果として、本実施形態において、イオン化分子は、四重極150により質量選択され、イオンチャンバ170内にパーキングする。
【0018】
チャンバ170を、四重極160またはチャンバ170に蓄積された減少したイオン化分子から質量スペクトルを決定するために使用することができる。チャンバ170は、例えば、四重極、イオントラップまたは線形イオントラップ質量分析計であることができるが、それらに限定されない。検出器180が、例えば、パーキングした標的化イオンを検出するために使用される。
【0019】
図2は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルとハイブリッド四重極線形イオントラップシステム(QqQLIT)とを含む、標的イオンパーキングのためのシステム200を図示する概略図である。
【0020】
システム200は、プロセッサ110および質量分析計220を含む。プロセッサ110は、標的化または単離されるイオン移動度群を受信する。プロセッサ110は、荷電状態減少量も受信する。
【0021】
プロセッサ110の制御下で、質量分析計220は、イオン移動度に基づいて標的イオンパーキングを行う。試料のイオン化分子は、質量分析計220のイオン化デバイス130により作成される。イオン化分子は、カーテンプレート132を通過して移動度セル210に入る。移動度セル210は、プロセッサ110により受信されるイオン移動度のそれぞれに対応する試料のイオン化分子の一部を選択するために使用される。移動度セル210は、オリフィス134の前に設置され、真空下ではない。結果として、イオン移動度に基づくイオン化分子の一部は、大気圧で選択される。真空チャンバの前に移動度セル210を配置することで、その効率が増加する。
【0022】
移動度選択されたイオン化分子の一部は、オリフィス134およびスキマー136を通過して四重極140に到達する。四重極140は、イオン化分子集中させるために使用される。四重極150は、イオン化分子の一部を四重極150から四重極160に伝送する。例えば、プロセッサ110は、無線周波数(RF)モードでのみ四重極150を動作するので、四重極150により質量選択が行われない。四重極150により伝送される試料のイオン化分子のそれぞれの一部は、四重極160に蓄積される。試薬イオンは、蓄積されたイオン化分子を電荷減少させるために、四重極160の中に伝送される。四重極160内の電荷減少は、荷電状態減少量で停止し、四重極160内に複数のパーキングした標的イオンを産生する。結果として、システム200において、イオン化分子は、移動度セル210および四重極160のそれぞれで、別々の位置において移動度選択され、パーキングする。
【0023】
標的イオンが電荷減少し、パーキングした後、それらは、さらなる処理のために四重極160から四重極170に移される。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。
【0024】
種々の実施形態において、かつ上述のように、電荷減少およびイオンパーキングは、チャンバ170内でも起こり得る。これらの実施形態において、イオン化分子は、移動度セル210内で移動度選択され、チャンバ170内にパーキングされる。
【0025】
種々の実施形態において、システム200は、イオン質量およびイオン移動度の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用される。プロセッサ110は、標的化または単離されるイオン移動度群および質量電荷比群を受信する。プロセッサ110は、荷電状態減少量も受信する。
【0026】
プロセッサ110の制御下で、質量分析計220は、イオン移動度およびイオン質量に基づいて標的イオンパーキングを行う。試料のイオン化分子は、質量分析計220のイオン化デバイス130により作成される。イオン化分子は、カーテンプレート132を通過して移動度セル210に入る。移動度セル210は、プロセッサ110により受信されるイオン移動度のそれぞれに対応する試料のイオン化分子の一部を選択するために使用される。
【0027】
移動度選択されたイオン化分子の一部は、オリフィス134およびスキマー136を通過して四重極140に到達する。四重極140は、イオン化分子に集中させるために使用される。四重極150は、プロセッサ110により受信される質量電荷比のそれぞれに対応する移動度選択されたイオン化分子の一部を選択し、四重極150から四重極160に伝送する。四重極150により伝送されるイオン化分子のそれぞれの一部は、四重極160に蓄積される。試薬イオンは、蓄積されたイオン化分子を電荷減少させるために、四重極160の中に伝送される。四重極160内の電荷減少は、荷電状態減少量で停止し、四重極160内に複数のパーキングした標的イオンを産生する。結果として、システム200の本実施形態において、イオン化分子は、移動度セル210、四重極150、および四重極160のそれぞれで、別々の位置において移動度選択され、質量選択され、パーキングされる。
【0028】
イオン移動度、イオン質量、またはイオン移動度およびイオン質量の両方に基づいて標的イオンパーキングを提供することができる多くの質量分析計構造が可能である。図3〜5は、イオン質量に基づく標的イオンパーキングの例示的な質量分析計構造を示す。図6〜12は、イオン移動度またはイオン移動度およびイオン質量の両方に基づく標的イオンパーキングの例示的な質量分析計構造を示す。
【0029】
図3は、本教示の実施形態を実装し得る、ハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)質量分析計320を含む標的イオンパーキングのためのシステム300を図示する概略図である。システム300において、四重極150は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0030】
図4は、本教示の実施形態を実装し得る、四重極線形イオントラップ(QLIT)質量分析計420を含む標的イオンパーキングのためのシステム400を図示する概略図である。システム400において、チャンバ470は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極140に対して、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。線形イオントラップ(LIT)チャンバ470は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0031】
システム400の種々の実施形態において、標的イオンパーキングをチャンバ470内で行うこともできる。しかしながら、四重極140のより高い圧力が効率および速度を向上させることができるため、四重極140は、イオンパーキングにとって好ましい位置である。システム400は、本質的には、図1のシステム100の低価格バージョンであり、四重極140とチャンバ470との間でイオンを往復させて操作することにより同様の機能を行うことができる。
【0032】
図5は、本教示の実施形態を実装し得る、四重極線形イオントラップ飛行時間(QLITTOF)質量分析計520を含む標的イオンパーキングのためのシステム500を図示する概略図である。システム500において、チャンバ470は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極140に対して、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0033】
図6は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極飛行時間(QqTOF)質量分析計620を含む標的イオンパーキングのためのシステム600を図示する概略図である。システム600において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0034】
種々の実施形態において、システム600を、イオン移動度およびイオン質量の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。四重極150は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0035】
図7は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極線形イオントラップ(QLIT)質量分析計720を含む標的イオンパーキングのためのシステム700を図示する概略図である。システム700において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極140で電荷減少し、パーキングする。線形イオントラップ(LIT)チャンバ470は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0036】
種々の実施形態において、システム700を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。チャンバ470は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極140に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0037】
図8は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度セルおよび四重極線形イオントラップ飛行時間(QLITTOF)質量分析計820を含む標的イオンパーキングのためのシステム800を図示する概略図である。システム800において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極140で電荷減少し、パーキングする。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0038】
種々の実施形態において、システム800を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。チャンバ470は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極140に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0039】
図9は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる、移動度セルおよびハイブリッド四重極線形イオントラップ(QqQLIT)質量分析計920を含む標的イオンパーキングのためのシステム900を図示する概略図である。システム900において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を減圧で選択および伝送するために使用される。減圧とは、例えば、1トール未満である。移動度セル210は、スキマー136と四重極150との間に設置される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。線形イオントラップ(LIT)チャンバ170は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0040】
種々の実施形態において、システム900を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。四重極150は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0041】
図10は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の前に行うことができる、移動度セルおよびハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)質量分析計1020を含む標的イオンパーキングのためのシステム1000を図示する概略図である。システム1000において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を減圧で選択および伝送するために使用される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0042】
種々の実施形態において、システム1000を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。四重極150は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン質量に基づく移動度選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0043】
図11は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の後に行うことができる、移動度セルおよびハイブリッド四重極線形イオントラップ(QqQLIT)質量分析計1120を含む標的イオンパーキングのためのシステム1100を図示する概略図である。システム1100において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を減圧で選択および伝送するために使用される。移動度セル210は、四重極150および四重極160との間に設置される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。線形イオントラップ(LIT)チャンバ170は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0044】
種々の実施形態において、システム1100を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づいて標的イオンパーキングを行うために使用することができる。四重極150は、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。移動度セル210は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン移動度に基づく質量選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0045】
図12は、本教示の実施形態を実装し得る、移動度選択を減圧で行い、かつ質量選択の後に行うことができる、移動度セルおよびハイブリッド四重極飛行時間(QqTOF)質量分析計1220を含む標的イオンパーキングのためのシステム1200を図示する概略図である。システム1200において、移動度セル210は、イオン移動度に基づく試料のイオン化分子の一部を減圧で選択および伝送するために使用される。移動度セル210は、四重極150と四重極160との間に設置される。次に、イオン化分子の一部は、例えば、四重極160で電荷減少し、パーキングする。飛行時間(TOF)チャンバ370は、例えば、質量分析または断片化のために使用される。
【0046】
種々の実施形態において、システム1200を、イオン移動度およびイオン質の両方に基づく標的イオンパーキングを行うために使用することができる。四重極150は、イオン質量に基づく試料のイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。移動度セル210は、例えば、イオン化分子の一部が電荷減少し、パーキングする四重極160に対して、イオン移動度に基づく質量選択されたイオン化分子の一部を選択および伝送するために使用される。
【0047】
図13は、本教示に従って、質量分析計を用いた、イオン移動度またはイオン質量に基づく標的イオンパーキングの方法1300を示すフローチャートである。
【0048】
方法1300のステップ1310において、プロセッサを用いて、複数の標的イオン特性および電荷減少量が受信される。複数の標的イオン特性は、複数の標的イオン移動度または複数の標的質量電荷比を含むが、それらに限定されない。
【0049】
ステップ1320において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン特性のそれぞれのイオン特性に対応する分子の試料のイオン化分子の一部が、第1の位置から第2の位置に伝送され、複数の選択されたイオン化分子を産生する。標的イオン特性が複数の標的イオン移動度を含む場合、第1の位置は、例えば、移動度セルであることができる。標的イオン特性が複数の標的質量電荷比を含む場合、第1の位置は、例えば、四重極であることができる。標的イオン特性が複数の標的質量電荷比を含む場合、特定のRFDC電圧を四重極に印加することにより、イオン化分子のそれぞれの一部を選択し、第2の位置に伝送することができる。
【0050】
ステップ1330において、質量分析計を用いて、試薬イオンが、複数の選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、第2の位置に送信される。複数の試薬イオンは、例えば、第1の位置から第2の位置にも伝送される。例えば、四重極は、複数の試薬イオンを第1の位置から第2の位置に伝送するために使用される。第2の位置は、例えば、衝突セルであることができる。
【0051】
ステップ1340において、質量分析計を用いて、複数の選択されたイオン化分子の荷電状態減少が荷電状態減少量で停止し、第2の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する。種々の実施形態において、方法1300の質量分析計は、トリプル四重極、イオントラップ、または飛行時間分光分析を含むことができるが、それらに限定されない。
【0052】
種々の実施形態において、ステップ1340で産生された複数のパーキングした標的イオンを、さらなるイオン処理で用いることができる。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。種々の実施形態において、ステップ1340で産生された複数のパーキングした標的イオンを、質量分析/質量分析(MSMS)のために用いることができる。種々の実施形態において、ステップ1340で産生された複数のパーキングした標的イオンを、検体を特定するために用いることができる。
【0053】
種々の実施形態において、方法1300を定量化のために用いることができる。ステップ1320で説明された分子の試料は、既知の検体濃度を有する分子の標準群を含むことができる。次に、定量化を、追加の以下のステップに従って行うことができる。
【0054】
ステップ1350(図示されず)において、質量分析計を用いて、ステップ1340で見出された複数のパーキングした標的イオンの複数の質量電荷比が検出され、複数の質量電荷比の強度が測定される。
【0055】
ステップ1360(図示されず)において、質量分析計を用いて、既知の検体濃度を有する分子の追加の複数の標準群が分析され、追加の複数の標準群のそれぞれの標準群が試料として使用され、それぞれの標準群のためにステップ1320〜1350が繰り返される。プロセッサを用いて、検体濃度を複数の減少した質量電荷比の強度と関連付けるキャリブレーション関数がコンパイルされる。
【0056】
ステップ1370(図示されず)において、質量分析計を用いて、未知の検体濃度を有するイオン化分子の集団が分析され、試料として集団を用いて、ステップ1320〜1350が繰り返される。集団の検体の濃度は、プロセッサを用いて、複数の減少した質量電荷比の測定された強度およびキャリブレーション関数から決定される。
【0057】
方法1300における移動度セルまたは四重極の使用は、例えば、Afeyan特許に開示される方法と比較して、電荷減少したイオン化分子の選択性を向上させることができる。同様に、質量分析計の別々のチャンバで単離および電荷減少を行うことで、電荷減少の前にイオン化分子の荷電状態の全てを蓄積することを可能にし、それによって、例えば、Afeyan特許に開示される方法と比較して、方法1300の総合的な処理能力を向上させる。
【0058】
図14は、本教示に従って、質量分析計を用いた、質量選択の前に移動度選択が行われる、イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法1400を示すフローチャートである。
【0059】
方法1400のステップ1410において、プロセッサを用いて、複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量が受信される。
【0060】
ステップ1420において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する分子の試料のイオン化分子の一部が、第1の位置から第2の位置に伝送され、複数の移動度選択されたイオン化分子を産生する。
【0061】
ステップ1430において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する複数の移動度選択されたイオン化分子の一部が、第2の位置から第3の位置に伝送され、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生する。
【0062】
ステップ1440において、質量分析計を用いて、試薬イオンが、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、第3の位置に伝送される。
【0063】
ステップ1450において、質量分析計を用いて、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少が荷電状態減少量で停止し、第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する。種々の実施形態において、ステップ1450で産生された複数のパーキングした標的イオンを、さらなるイオン処理で用いることができる。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。
【0064】
図15は、本教示に従って、質量分析計を用いた、移動度選択の前に質量選択が行われる、イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法1500を示すフローチャートである。
【0065】
方法1500のステップ1510において、プロセッサを用いて、複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量が受信される。
【0066】
ステップ1520において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれの質量電荷比に対応する分子の試料のイオン化分子の一部が、第1の位置から第2の位置に伝送され、複数の質量選択されたイオン化分子を産生する。
【0067】
ステップ1530において、質量分析計を用いて、複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する複数の質量選択されたイオン化分子の一部が、第2の位置から第3の位置に伝送され、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生する。
【0068】
ステップ1540において、質量分析計を用いて、試薬イオンが、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、第3の位置に伝送される。
【0069】
ステップ1550において、質量分析計を用いて、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少が荷電状態減少量で停止し、第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する。種々の実施形態において、ステップ1550で産生された複数のパーキングした標的イオンを、さらなるイオン処理で用いることができる。さらなるイオン処理は、質量分析または断片化を含むことができるが、それらに限定されない。
【0070】
出願者の教示が種々の実施形態と併せて説明される時、出願者の教示がそのような実施形態に限定されるよう意図されていない。反対に、出願者の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替物、修正物、および同等物を包含する。
【0071】
さらに、種々の実施形態の記載において、本明細書は、特定のステップの順序として方法および/またはプロセスを示した場合がある。しかしながら、該方法またはプロセスが、本明細書に記載する特定のステップの順序に依存しない限りにおいて、該方法またはプロセスは、記載する特定のステップの順序に限定されるべきではない。当業者が理解するように、他のステップの順序が可能であり得る。したがって、本明細書に記載する特定のステップの順序は、特許請求の範囲の制限と解釈されるべきではない。さらに、該方法またはプロセスに関する特許請求の範囲は、書かれた順序でのそれらのステップの実施に限定されるべきではなく、当業者は、該順序が変更されてもよく、それにもかかわらず、種々の実施形態の精神および範囲の範囲内にとどまることを容易に理解することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的イオンパーキングの方法であって、
(a)プロセッサを用いて、複数の標的イオン特性と電荷減少量とを受信することと、
(b)質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン特性のそれぞれのイオン特性に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の選択されたイオン化分子を産生することと、
(c)前記質量分析計を用いて、前記複数の選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、複数の試薬イオンを前記第2の位置に伝送することと、
(d)前記質量分析計を用いて、前記複数の選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、複数のパーキングした標的イオンを前記第2の位置に産生することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の標的イオン特性は、複数のイオン移動度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の位置は、移動度セルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記移動度セルは、差動移動度分析器(DMA)、差動移動度分光分析(DMS)セル、または電界非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)セルのうちの1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の標的イオン特性は、複数のイオン質量電荷比を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の位置は、四重極を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の位置は、衝突セルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分子の試料は、既知の検体濃度を有する分子の標準群を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(e)前記複数のパーキングした標的イオンの複数の質量電荷比を検出し、前記複数の質量電荷比の強度を測定することと、
(f)前記質量分析計を用いて、既知の検体濃度を有する分子の追加の複数の標準群を分析し、試料として前記追加の複数の標準群のそれぞれの標準群を使用して、前記それぞれの標準群に対してステップ(b)〜(e)を繰り返すことと、前記プロセッサを用いて、検体濃度を前記複数の減少した質量電荷比の強度と関連付けるキャリブレーション関数をコンパイルすることと、
(g)前記質量分析計を用いて、未知の検体濃度を有するイオン化分子の集団を分析し、試料として前記集団を使用して、ステップ(b)〜(e)を繰り返すことと、前記プロセッサを用いて、複数の減少した質量電荷比の測定された強度と前記キャリブレーション関数とから、前記集団における検体の濃度を決定することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
標的イオンパーキングのためのシステムであって、
複数の標的イオン特性と電荷減少量とを受信するプロセッサと、
前記プロセッサと通信する質量分析計と
を含み、
前記質量分析計は、前記プロセッサからの制御信号に応答して、
(a)前記複数の標的イオン特性のそれぞれのイオン特性に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の選択されたイオン化分子を産生し、
(b)前記複数の選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、複数の試薬イオンを前記第2の位置に伝送し、
(c)前記複数の選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第2の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する、
システム。
【請求項11】
前記複数の標的イオン特性は、複数のイオン移動度を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の位置は、移動度セルを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の標的イオン特性は、複数のイオン質量電荷比を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の位置は、四重極を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の位置は、衝突セルを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記質量分析計は、トリプル四重極を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記質量分析計は、イオントラップを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記質量分析計は、飛行時間質量分析計を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
前記分子の試料は、既知の検体濃度を有する分子の標準群を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項20】
(d)前記質量分析計は、前記複数のパーキングした標的イオンの複数の質量電荷比を検出し、前記複数の質量電荷比の強度を測定し、
(e)前記質量分析計は、既知の検体濃度を有する分子の追加の複数の標準群を選択し、試料として前記追加の複数の標準群のそれぞれの標準群を使用して、それぞれの標準群に対してステップ(a)〜(d)を繰り返し、前記プロセッサは、検体濃度を複数の減少した質量電荷比の強度と関連付けるキャリブレーション関数をコンパイルし、
(f)前記質量分析計は、未知の検体濃度を有するイオン化分子の集団を選択し、試料として前記集団を用いて、ステップ(b)〜(e)を繰り返し、前記プロセッサは、複数の減少した質量電荷比の測定された強度と前記キャリブレーション関数とから、前記集団における前記検体の濃度を決定する、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法であって、質量選択の前に移動度選択が行われ、前記方法は、
プロセッサを用いて、複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量を受信することと、
質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の移動度選択されたイオン化分子を産生することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する前記複数の移動度選択されたイオン化分子の一部を、前記第2の位置から第3の位置に伝送し、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、試薬イオンを前記第3の位置に伝送することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生することと
を含む、方法。
【請求項22】
イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングのためのシステムであって、質量選択の前に移動度選択が行われ、前記システムは、
複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量を受信するプロセッサと、
前記プロセッサと通信する質量分析計と
を含み、
前記質量分析計は、前記プロセッサからの制御信号に応答して、
前記複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の移動度選択されたイオン化分子を産生し、
前記複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する前記複数の移動度選択されたイオン化分子の一部を、前記第2の位置から第3の位置に伝送し、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生し、
前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、試薬イオンを前記第3の位置に伝送し、
前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する、
システム。
【請求項23】
イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法であって、移動度選択の前に質量選択が行われ、前記方法は、
プロセッサを用いて、複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量を受信することと、
質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の質量選択されたイオン化分子を産生することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する前記複数の質量選択されたイオン化分子の一部を、前記第2の位置から第3の位置に伝送し、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、試薬イオンを前記第3の位置に伝送することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生することと
を含む、方法。
【請求項24】
イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングのためのシステムであって、移動度選択の前に質量選択が行われ、前記システムは、
複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量を受信するプロセッサと、
前記プロセッサと通信する質量分析計と
を含み、
前記質量分析計は、前記プロセッサからの制御信号に応答して、
前記複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の質量選択されたイオン化分子を産生し、
前記複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する前記複数の質量選択されたイオン化分子の一部を、前記第2の位置から第3の位置に伝送し、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生し、
前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、試薬イオンを前記第3の位置に伝送し、
前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する、
システム。
【請求項1】
標的イオンパーキングの方法であって、
(a)プロセッサを用いて、複数の標的イオン特性と電荷減少量とを受信することと、
(b)質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン特性のそれぞれのイオン特性に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の選択されたイオン化分子を産生することと、
(c)前記質量分析計を用いて、前記複数の選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、複数の試薬イオンを前記第2の位置に伝送することと、
(d)前記質量分析計を用いて、前記複数の選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、複数のパーキングした標的イオンを前記第2の位置に産生することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の標的イオン特性は、複数のイオン移動度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の位置は、移動度セルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記移動度セルは、差動移動度分析器(DMA)、差動移動度分光分析(DMS)セル、または電界非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)セルのうちの1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の標的イオン特性は、複数のイオン質量電荷比を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の位置は、四重極を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の位置は、衝突セルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分子の試料は、既知の検体濃度を有する分子の標準群を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(e)前記複数のパーキングした標的イオンの複数の質量電荷比を検出し、前記複数の質量電荷比の強度を測定することと、
(f)前記質量分析計を用いて、既知の検体濃度を有する分子の追加の複数の標準群を分析し、試料として前記追加の複数の標準群のそれぞれの標準群を使用して、前記それぞれの標準群に対してステップ(b)〜(e)を繰り返すことと、前記プロセッサを用いて、検体濃度を前記複数の減少した質量電荷比の強度と関連付けるキャリブレーション関数をコンパイルすることと、
(g)前記質量分析計を用いて、未知の検体濃度を有するイオン化分子の集団を分析し、試料として前記集団を使用して、ステップ(b)〜(e)を繰り返すことと、前記プロセッサを用いて、複数の減少した質量電荷比の測定された強度と前記キャリブレーション関数とから、前記集団における検体の濃度を決定することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
標的イオンパーキングのためのシステムであって、
複数の標的イオン特性と電荷減少量とを受信するプロセッサと、
前記プロセッサと通信する質量分析計と
を含み、
前記質量分析計は、前記プロセッサからの制御信号に応答して、
(a)前記複数の標的イオン特性のそれぞれのイオン特性に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の選択されたイオン化分子を産生し、
(b)前記複数の選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、複数の試薬イオンを前記第2の位置に伝送し、
(c)前記複数の選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第2の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する、
システム。
【請求項11】
前記複数の標的イオン特性は、複数のイオン移動度を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の位置は、移動度セルを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数の標的イオン特性は、複数のイオン質量電荷比を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の位置は、四重極を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の位置は、衝突セルを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記質量分析計は、トリプル四重極を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記質量分析計は、イオントラップを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記質量分析計は、飛行時間質量分析計を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
前記分子の試料は、既知の検体濃度を有する分子の標準群を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項20】
(d)前記質量分析計は、前記複数のパーキングした標的イオンの複数の質量電荷比を検出し、前記複数の質量電荷比の強度を測定し、
(e)前記質量分析計は、既知の検体濃度を有する分子の追加の複数の標準群を選択し、試料として前記追加の複数の標準群のそれぞれの標準群を使用して、それぞれの標準群に対してステップ(a)〜(d)を繰り返し、前記プロセッサは、検体濃度を複数の減少した質量電荷比の強度と関連付けるキャリブレーション関数をコンパイルし、
(f)前記質量分析計は、未知の検体濃度を有するイオン化分子の集団を選択し、試料として前記集団を用いて、ステップ(b)〜(e)を繰り返し、前記プロセッサは、複数の減少した質量電荷比の測定された強度と前記キャリブレーション関数とから、前記集団における前記検体の濃度を決定する、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法であって、質量選択の前に移動度選択が行われ、前記方法は、
プロセッサを用いて、複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量を受信することと、
質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の移動度選択されたイオン化分子を産生することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する前記複数の移動度選択されたイオン化分子の一部を、前記第2の位置から第3の位置に伝送し、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、試薬イオンを前記第3の位置に伝送することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生することと
を含む、方法。
【請求項22】
イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングのためのシステムであって、質量選択の前に移動度選択が行われ、前記システムは、
複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量を受信するプロセッサと、
前記プロセッサと通信する質量分析計と
を含み、
前記質量分析計は、前記プロセッサからの制御信号に応答して、
前記複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の移動度選択されたイオン化分子を産生し、
前記複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する前記複数の移動度選択されたイオン化分子の一部を、前記第2の位置から第3の位置に伝送し、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生し、
前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、試薬イオンを前記第3の位置に伝送し、
前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する、
システム。
【請求項23】
イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングの方法であって、移動度選択の前に質量選択が行われ、前記方法は、
プロセッサを用いて、複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量を受信することと、
質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の質量選択されたイオン化分子を産生することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する前記複数の質量選択されたイオン化分子の一部を、前記第2の位置から第3の位置に伝送し、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、試薬イオンを前記第3の位置に伝送することと、
前記質量分析計を用いて、前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生することと
を含む、方法。
【請求項24】
イオン移動度および質量選択に基づく標的イオンパーキングのためのシステムであって、移動度選択の前に質量選択が行われ、前記システムは、
複数の標的イオン移動度、複数の標的イオン質量電荷比、および電荷減少量を受信するプロセッサと、
前記プロセッサと通信する質量分析計と
を含み、
前記質量分析計は、前記プロセッサからの制御信号に応答して、
前記複数の標的イオン質量電荷比のそれぞれのイオン質量電荷比に対応する分子の試料のイオン化分子の一部を、第1の位置から第2の位置に伝送し、複数の質量選択されたイオン化分子を産生し、
前記複数の標的イオン移動度のそれぞれのイオン移動度に対応する前記複数の質量選択されたイオン化分子の一部を、前記第2の位置から第3の位置に伝送し、複数の移動度および質量選択されたイオン化分子を産生し、
前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態を減少させるために、試薬イオンを前記第3の位置に伝送し、
前記複数の移動度および質量選択されたイオン化分子の荷電状態減少を前記荷電状態減少量で停止させ、前記第3の位置に複数のパーキングした標的イオンを産生する、
システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−504061(P2013−504061A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527854(P2012−527854)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/056420
【国際公開番号】WO2011/031259
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509245740)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ (6)
【出願人】(510025522)アプライド バイオシステムズ (カナダ) リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/056420
【国際公開番号】WO2011/031259
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509245740)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ (6)
【出願人】(510025522)アプライド バイオシステムズ (カナダ) リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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